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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】車両用のブレーキ液圧制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/36 20060101AFI20231218BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20231218BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20231218BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20231218BHJP
【FI】
B60T8/36
B60T8/171 Z
F16F15/08 E
F16F15/08 B
G01P15/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019221050
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021088327
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】コーラー インゴ
(72)【発明者】
【氏名】クナウアー トーマス
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-187062(JP,A)
【文献】特開2010-012850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0102888(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007057043(DE,A1)
【文献】特開2018-008674(JP,A)
【文献】特開2008-230589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0192689(US,A1)
【文献】特開2015-185755(JP,A)
【文献】特開2008-062848(JP,A)
【文献】特開2013-038146(JP,A)
【文献】特開2008-094334(JP,A)
【文献】特開2011-238638(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0087043(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/36
B60T 8/171
B60T 17/00-17/22
F16F 15/08
G01P 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用のブレーキ液圧制御ユニット(60)であって、
ブレーキ液の流路が形成されている基体(61)と、
前記基体(61)に設けられた前記ブレーキ液の調圧機構(37、38)と、
前記調圧機構(37、38)を収容するハウジング(70)と、
前記調圧機構(37、38)に電気的に接続され、該調圧機構(37、38)の動作を制御する制御基板(51)と、
を備え、
一端が前記ハウジング(70)の貫通孔(71)に挿入されて前記基体(61)に結合され、他端(90a)が該ハウジング(70)及び前記制御基板(51)の間に突出する固定部材(90)によって、前記ハウジング(70)は、前記基体(61)に固定され、
前記制御基板(51)には、前記車両(100)に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するセンサ(39)が実装され、
前記制御基板(51)は、該制御基板(51)と前記固定部材(90)の前記他端(90a)との間に介在するダンパ(95)によって制振される、
ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項2】
前記ダンパ(95)及び前記固定部材(90)は、熱伝導材料である、
請求項1に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項3】
前記制御基板(51)の前記センサ(39)よりも前記ダンパ(95)に近い箇所に、発熱部品(52)が実装された、
請求項2に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項4】
前記ダンパ(95)は、前記制御基板(51)の前記発熱部品(52)が実装された箇所の裏側に対向する、
請求項3に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項5】
前記ダンパ(95)は、前記制御基板(51)の前記発熱部品(52)が実装された箇所に対向する、
請求項3に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項6】
前記ダンパ(95)は、前記制御基板(51)の前記センサ(39)が実装された箇所の裏側に対向する、
請求項1に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項7】
前記制御基板(51)の前記センサ(39)が実装された箇所と前記ダンパ(95)が対向する箇所との間の領域の表裏両面に、部品が実装されていない、
請求項1に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項8】
前記ダンパ(95)及び前記固定部材(90)は、導体であり、
前記ダンパ(95)は、前記制御基板(51)のグランド部(54)に対向する、
請求項1~4、6、7の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項9】
前記調圧機構(37、38)は、前記ハウジング(70)の外側に突出する複数のピン(76)の少なくとも一部を介して前記制御基板(51)に電気的に接続され、
前記制御基板(51)の前記ハウジング(70)から遠ざかる方向への移動が、前記複数のピン(76)のみによって規制されている、
請求項1~8の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項10】
前記センサ(39)は、慣性計測センサである、
請求項1~9の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項11】
前記調圧機構(37、38)は、前記流路に設けられたポンプ(31)を駆動するモータ(38)を含む、
請求項1~10の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項12】
前記調圧機構(37、38)は、前記流路を開閉する調圧バルブ(36)を駆動するコイル(37)を含む、
請求項1~11の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項13】
前記車両(100)は、鞍乗型車両である、
請求項1~12の何れか一項に記載のブレーキ液圧制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するセンサが制御基板に実装された車両用のブレーキ液圧制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキシステムをアンチロックブレーキ動作させるためのブレーキ液圧制御ユニットが知られている。このブレーキ液圧制御ユニットは、車両の搭乗者がブレーキ操作部を操作している状態において、液圧回路内のブレーキ液の圧力を増減させて、車輪に発生する制動力を調整する。例えば、ブレーキ液圧制御ユニットは、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、その流路のブレーキ液の調圧機構と、その調圧機構を収納するハウジングと、その調圧機構を制御する制御装置の制御基板と、を備えている。また、制御基板は、銅等で形成された金属製配線と、その金属製配線に電気的に接続する状態で実装された電子部品と、を備えている。金属製配線及び電子部品等によって電子回路が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-8674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のブレーキ液圧制御ユニットにおいて、車両に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するセンサを制御基板に実装しようとする場合、制御基板に生じる振動が起因して、センサの計測値にノイズが生じかねない。一方、制御基板の保持を強固にする場合には、ブレーキ液圧制御ユニットの大型化、部品点数の増加等を招きかねない。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、車両用のブレーキ液圧制御ユニットの制御基板に実装された、車両に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するセンサの耐振動性を、簡易な構造で向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブレーキ液圧制御ユニットは、車両用のブレーキ液圧制御ユニットであって、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、前記基体に設けられた前記ブレーキ液の調圧機構と、前記調圧機構を収容するハウジングと、前記調圧機構に電気的に接続され、該調圧機構の動作を制御する制御基板と、を備え、一端が前記ハウジングの貫通孔に挿入されて前記基体に結合され、他端が該ハウジング及び前記制御基板の間に突出する固定部材によって、前記ハウジングは、前記基体に固定され、前記制御基板には、前記車両に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するセンサが実装され、前記制御基板は、該制御基板と前記固定部材の前記他端との間に介在するダンパによって制振される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るブレーキ液圧制御ユニットでは、車両に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するセンサが実装された制御基板が、その制御基板と、ハウジングを基体に固定されるための固定部材と、の間に介在するダンパによって制振される。そのため、車両用のブレーキ液圧制御ユニットにおいて、センサの計測値に生じるノイズの抑制を、既存の固定部材を流用して実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットを側方から見た、一部断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットにおける、制御基板へのセンサの実装と制振構造の一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットにおける、制御基板へのセンサの実装と制振構造の一例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットにおける、制御基板へのセンサの実装と制振構造の一例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットにおける、制御基板へのセンサの実装と制振構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について、図面を用いて説明する。
なお、以下では、本発明に係るブレーキ液圧制御ユニットが自動二輪車に適用される場合を説明するが、本発明に係るブレーキ液圧制御ユニットは自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に適用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーが跨がって搭乗する車両を意味し、例えば、自転車、自動三輪車、バギー等が含まれる。なお、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、本発明に係るブレーキ液圧制御ユニットは、鞍乗型車両以外の他の車両(例えば、自動車、トラック等)に採用されてもよい。また、以下では、車両用のブレーキシステムが2系統の液圧回路を備えている場合を説明しているが、車両用のブレーキシステムの液圧回路の数は2系統に限定されない。車両用のブレーキシステムは、1系統のみの液圧回路を備えていてもよく、また、3系統以上の液圧回路を備えていてもよい。
【0010】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係るブレーキ液圧制御ユニットは、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0011】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係る車両用のブレーキシステムを説明する。
【0012】
<車両用のブレーキシステムの構成及び動作>
実施の形態に係るブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【0013】
図1及び図2に示されるように、ブレーキシステム10は、車両100に搭載される。車両100は、例えば、自動二輪車等の鞍乗型車両であり、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を含む。
【0014】
ブレーキシステム10は、ブレーキレバー11と、ブレーキ液が充填されている第1液圧回路12と、ブレーキペダル13と、ブレーキ液が充填されている第2液圧回路14と、を含む。ブレーキレバー11は、ハンドル2に設けられており、使用者の手によって操作される。第1液圧回路12は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキレバー11の操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものである。ブレーキペダル13は、胴体1の下部に設けられており、使用者の足によって操作される。第2液圧回路14は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキペダル13の操作量に応じたブレーキ力を生じさせるものである。
【0015】
例えば、第1液圧回路12と第2液圧回路14とは、同じ構成になっている。そのため、以下では、代表して、第1液圧回路12の構成を説明する。
【0016】
第1液圧回路12は、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)を動作させるホイールシリンダ24と、を含む。
【0017】
第1液圧回路12において、マスタシリンダ21及びホイールシリンダ24は、マスタシリンダ21と基体61に形成されているマスタシリンダポートMPとの間に接続される液管、基体61に形成されている主流路25、及び、ホイールシリンダ24と基体61に形成されているホイールシリンダポートWPとの間に接続される液管を介して連通する。また、基体61には、副流路26が形成されている。ホイールシリンダ24のブレーキ液は、その副流路26を介して、主流路25の途中部である主流路途中部25aに逃がされる。また、基体61には、増圧流路27が形成されている。マスタシリンダ21のブレーキ液は、その増圧流路27を介して、副流路26の途中部である副流路途中部26aに供給される。
【0018】
主流路25のうちの主流路途中部25aよりもホイールシリンダ24側の領域には、インレットバルブ28が設けられている。副流路26のうちの副流路途中部26aよりも上流側の領域には、上流側から順に、アウトレットバルブ29と、ブレーキ液を貯留するアキュムレータ30と、が設けられている。また、副流路26のうちの副流路途中部26aよりも下流側の領域には、ポンプ31が設けられている。主流路25のうちの主流路途中部25aよりもマスタシリンダ21側の領域には、切換バルブ32が設けられている。増圧流路27には、増圧バルブ33が設けられている。なお、以下では、インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、切換バルブ32及び増圧バルブ33を区別せずに総称する場合、調圧バルブ36と称する。
【0019】
また、主流路25のうちの切換バルブ32よりもマスタシリンダ21側の領域には、マスタシリンダ21のブレーキ液の液圧を検出するためのマスタシリンダ液圧センサ34が設けられている。また、主流路25のうちのインレットバルブ28よりもホイールシリンダ24側の領域には、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を検出するためのホイールシリンダ液圧センサ35が設けられている。
【0020】
つまり、主流路25は、インレットバルブ28を介してマスタシリンダポートMP及びホイールシリンダポートWPを連通させるものである。また、副流路26は、ホイールシリンダ24のブレーキ液を、アウトレットバルブ29を介してマスタシリンダ21に逃がす流路の一部又は全てと定義される流路である。また、増圧流路27は、マスタシリンダ21のブレーキ液を、増圧バルブ33を介して副流路26のうちのポンプ31の上流側に供給する流路の一部又は全てと定義される流路である。
【0021】
インレットバルブ28は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁バルブである。アウトレットバルブ29は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部26aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁バルブである。切換バルブ32は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁バルブである。増圧バルブ33は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部26aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁バルブである。
【0022】
第1液圧回路12のポンプ31と、第2液圧回路14のポンプ31とは、共通のモータ38によって駆動される。モータ38は、本発明における「調圧機構」に相当する。
【0023】
基体61と、基体61に設けられている各部材(インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、アキュムレータ30、ポンプ31、切換バルブ32、増圧バルブ33、マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35、モータ38等)と、センサ39と、制御装置(ECU)50の後述される制御基板51と、によって、ブレーキ液圧制御ユニット60が構成される。
【0024】
センサ39は、車両100に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するものである。センサ39は、好ましくは、3軸の角度又は角速度、及び、3軸の加速度を計測する慣性計測センサである。3軸の角度又は角速度、及び、3軸の加速度の全てが検知されてもよく、また、3軸の角度又は角速度、及び、3軸の加速度の一部のみが検知され、残りの検知されない物理量が演算によって取得されてもよい。また、センサ39は、加速度、角度又は角速度に実質的に換算可能な他の物理量を計測するものであってもよい。
【0025】
制御装置50は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置50の一部は、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。なお、ブレーキ液圧制御ユニット60では、制御装置50の少なくとも一部が、後述される制御基板51で構成されている。
【0026】
例えば、通常状態では、制御装置50によって、インレットバルブ28、アウトレットバルブ29、切換バルブ32、及び増圧バルブ33が非通電状態に制御される。その状態で、ブレーキレバー11が操作されると、第1液圧回路12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3が制動される。また、ブレーキペダル13が操作されると、第2液圧回路14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4が制動される。
【0027】
制御装置50には、各センサ(マスタシリンダ液圧センサ34、ホイールシリンダ液圧センサ35、車輪速センサ、センサ39等)の出力が入力される。制御装置50は、その出力に応じて、調圧バルブ36に付設された後述されるコイル37、モータ38等の動作を司る指令を出力して、少なくともアンチロックブレーキ動作を実行する。
【0028】
例えば、制御装置50は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第1液圧回路12において、インレットバルブ28を通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を通電状態に制御し、切換バルブ32を非通電状態に制御し、増圧バルブ33を非通電状態に制御しつつ、モータ38を駆動する。また、制御装置50は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第2液圧回路14において、インレットバルブ28を通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を通電状態に制御し、切換バルブ32を非通電状態に制御し、増圧バルブ33を非通電状態に制御しつつ、モータ38を駆動する。
【0029】
また、例えば、制御装置50は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第1液圧回路12において、インレットバルブ28を非通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を非通電状態に制御し、切換バルブ32を通電状態に制御し、増圧バルブ33を通電状態に制御しつつ、モータ38を駆動する。また、制御装置50は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる動作を実行する。その際、制御装置50は、第2液圧回路14において、インレットバルブ28を非通電状態に制御し、アウトレットバルブ29を非通電状態に制御し、切換バルブ32を通電状態に制御し、増圧バルブ33を通電状態に制御しつつ、モータ38を駆動する。
【0030】
また、制御装置50は、センサ39の出力に基づく制御信号を、例えば、ブレーキ液圧制御ユニット60、車両100の推進力を制御する制御ユニット(図示省略)等に出力して、車両100の挙動を制御する。制御装置50は、センサ39の出力に応じて、例えば、走行中の車両100に生じている進行方向加速度又は車幅方向加速度に応じた制動力をブレーキ液圧制御ユニット60に生じさせる制御信号を出力してもよく、また、走行中の車両100に生じているロール角又はロール角速度に応じた制動力をブレーキ液圧制御ユニット60に生じさせる制御信号を出力してもよく、また、走行中の車両100に生じているピッチ角又はピッチ角速度に応じた制動力をブレーキ液圧制御ユニット60に生じさせる制御信号を出力してもよい。また、制御装置50は、センサ39の出力に応じて、例えば、車両100が停止する路面の勾配に応じた制動力をブレーキ液圧制御ユニット60に生じさせる制御信号を出力してもよい。
【0031】
<ブレーキ液圧制御ユニットの構成>
実施の形態に係るブレーキシステムのブレーキ液圧制御ユニットの構成について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットを側方から見た、一部断面図である。
【0032】
基体61は、例えばアルミニウム等の金属で形成されており、例えば略直方体の形状をしている。なお、基体61の各面は、段差部を含んでいてもよく、また、曲面部を含んでいてもよい。
【0033】
図3に示されるように、基体61には、モータ38が取り付けられている。このモータ38の出力軸41には、モータ38の出力軸41と共に回転する偏心体42が取り付けられている。偏心体42が回転すると、偏心体42の外周面に押し付けられているポンプ31のプランジャが往復動することで、ブレーキ液がポンプ31の吸込側から吐出側に搬送される。
【0034】
また、基体61には、ハウジング70が取り付けられている。ハウジング70は、例えば樹脂で形成されており、例えば略直方体の形状をしている。ハウジング70は、開口部が基体61に閉塞された状態で基体61に取り付けられ、内部にモータ38を収納している。モータ38は、出力軸41が設けられている側とは反対側の端部に、端子43を備えている。端子43は、ハウジング70の底面を貫通し、ハウジング70に立設されているピン76に電気的に接続され、そのピン76を介して、ハウジング70の外側に配置された制御基板51に電気的に接続される。なお、モータ38が取り付けられる部材は、基体61に限定されない。例えば、モータ38がハウジング70に取り付けられていてもよい。
【0035】
ハウジング70の底面には、固定部材90が挿入される貫通孔71が形成されている。固定部材90は、例えば、基体61に形成された雌ネジに結合するボルトであってもよく、また、基体61に形成された穴に圧入されるピンであってもよい。固定部材90は、一端が貫通孔71に挿入されて基体61に結合され、他端がハウジング70の外側、つまり、ハウジング70と制御基板51との間に突出する状態で取り付けられる。その他端には、貫通孔71より大径の膨出部91が形成されており、その膨出部91が、ハウジング70の底面を直接、又は、ワッシャ等を介して間接的に基体61に向かって押圧することで、ハウジング70が基体61に固定される。ハウジング70の開口部と基体61とが接着されていてもよい。
【0036】
また、基体61には、調圧バルブ36を駆動するコイル37が、調圧バルブ36毎に取り付けられている。調圧バルブ36は、基体61に形成された流路を開閉するための弁体(図示省略)と、その弁体と連動して往復動作するプランジャ(図示省略)と、を含む。コイル37は、そのプランジャが挿入される開口部が基体61に対向する状態で、つまり、立てられた状態で基体61に取り付けられる。コイル37への通電によって磁力が発生すると、図3に示される状態において、そのプランジャが上下方向に移動し、それに伴う弁体の動作によって流路が開閉される。コイル37は、本発明における「調圧機構」に相当する。
【0037】
コイル37は、ハウジング70に収納されている。ハウジング70の内面には、突起72が形成されている。固定部材90によって基体61にハウジング70が固定されると、突起72がコイル37の頂部を基体61に向かって押圧することで、コイル37が基体61に固定される。基体61とコイル37とが接着されていてもよい。コイル37の基体61に遠い側の端部には、ピン76が立設されている。ピン76は、ハウジング70の底面を貫通し、ハウジング70の外側に配置された制御基板51に電気的に接続される。
【0038】
制御基板51は、プリント基板であり、表面に銅等で形成された金属製配線と、その金属製配線に電気的に接続するように表面に実装された電子部品52と、を備えている。そして、金属製配線及び電子部品52等によって電子回路が構成されている。また、制御基板51には、センサ39が実装されている。電子部品52は、本発明における「発熱部品」に相当する。
【0039】
制御基板51には、貫通孔53が形成されている。貫通孔53には、ハウジング70の外側に突出するピン76の先端が挿入される。これにより、コイル37及びモータ38が制御基板51の電子回路に電気的に接続される。また、その挿入により、制御基板51がピン76に保持されることとなって、制御基板51が固定される。なお、ハウジング70に、更に、電気的な導通部として機能しないピン76が立設され、そのピン76の貫通孔53への挿入によって、制御基板51の固定が補助されてもよい。ブレーキ液圧制御ユニット60では、制御基板51のハウジング70から遠ざかる方向への移動が、ピン76の制御基板51への係合のみによって規制されている。
【0040】
ハウジング70の外側には、制御基板51を覆う制御基板カバー80が取り付けられる。制御基板カバー80は、開口部がハウジング70の底面によって閉塞された状態でハウジング70に固定される。その固定は、機械的な係合であってもよく、また、接着であってもよい。
【0041】
<制御基板へのセンサの実装と制振構造>
実施の形態に係るブレーキシステムのブレーキ液圧制御ユニットにおける、制御基板へのセンサの実装と制振構造について説明する。
図4図7は、それぞれ、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットにおける、制御基板へのセンサの実装と制振構造の一例を示す図である。なお、図4図7では、制御基板51の周辺の一部の部材又は部分のみを図示している。
【0042】
一例では、図4に示されるように、固定部材90の、ハウジング70の貫通孔71に挿入されない側の端部90aは、ハウジング70の外側、つまり、ハウジング70と制御基板51との間に突出する。端部90aの頂部によって、ダンパ95が支承される。ダンパ95は、緩衝性が優れた部材(例えば、ゴム、シリコン、バネ等)である。ダンパ95は、一つの部材で構成されていてもよく、また、複数の部材で構成されていてもよい。固定部材90及びダンパ95が、熱伝導材料で且つ導体であるとよい。ダンパ95は、制御基板51のグランド部54に対向している。グランド部54は、制御基板51の電子回路のグランド部として作用するものであるとよい。ダンパ95は、グランド部54に当接していてもよく、ダンパ95に支承された他の部材がグランド部54に当接していてもよい。また、制御基板51には、センサ39が実装されている。また、制御基板51のダンパ95に対向する箇所(つまり、グランド部54)の裏側、つまり、制御基板51のセンサ39よりもダンパ95に近い側に、電子部品52が実装されている。制御基板51のダンパ95に対向する箇所の裏側に、電子部品52以外の発熱する部品が設けられていてもよい。つまり、発熱部品で発生する熱が、ダンパ95及び固定部材90を介して、基体61に逃がされる。また、制御基板51の電子回路は、ダンパ95及び固定部材90を介して、基体61にグランドされる。
【0043】
他の一例では、図5に示されるように、固定部材90の、ハウジング70の貫通孔71に挿入されない側の端部90aは、ハウジング70の外側、つまり、ハウジング70と制御基板51との間に突出する。端部90aの頂部によって、ダンパ95が支承される。ダンパ95は、緩衝性が優れた部材(例えば、ゴム、シリコン、バネ等)である。ダンパ95は、一つの部材で構成されていてもよく、また、複数の部材で構成されていてもよい。固定部材90及びダンパ95が、熱伝導材料であるとよい。ダンパ95は、制御基板51の電子部品52が実装された箇所に対向している。ダンパ95は、電子部品52に当接していてもよく、ダンパ95に支承された他の部材が電子部品52に当接していてもよい。また、制御基板51には、センサ39が実装されている。センサ39は、制御基板51の電子部品52よりもダンパ95に遠い側に実装されている。制御基板51のダンパ95に対向する箇所に、電子部品52以外の発熱する部品が設けられていてもよい。つまり、発熱部品で発生する熱が、ダンパ95及び固定部材90を介して、基体61に逃がされる。
【0044】
他の一例では、図6に示されるように、固定部材90の、ハウジング70の貫通孔71に挿入されない側の端部90aは、ハウジング70の外側、つまり、ハウジング70と制御基板51との間に突出する。端部90aの頂部によって、ダンパ95が支承される。ダンパ95は、緩衝性が優れた部材(例えば、ゴム、シリコン、バネ等)である。ダンパ95は、一つの部材で構成されていてもよく、また、複数の部材で構成されていてもよい。固定部材90及びダンパ95が、導体であるとよい。ダンパ95は、制御基板51のグランド部54に対向している。グランド部54は、制御基板51の電子回路のグランド部として作用するものであるとよい。ダンパ95は、グランド部54に当接していてもよく、ダンパ95に支承された他の部材がグランド部54に当接していてもよい。また、制御基板51には、センサ39が実装されている。また、センサ39は、制御基板51のダンパ95に対向する箇所(つまり、グランド部54)の裏側に実装されている。つまり、制御基板51の電子回路は、ダンパ95及び固定部材90を介して、基体61にグランドされる。
【0045】
一例では、図7に示されるように、固定部材90の、ハウジング70の貫通孔71に挿入されない側の端部90aは、ハウジング70の外側、つまり、ハウジング70と制御基板51との間に突出する。端部90aの頂部によって、ダンパ95が支承される。ダンパ95は、緩衝性が優れた部材(例えば、ゴム、シリコン、バネ等)である。ダンパ95は、一つの部材で構成されていてもよく、また、複数の部材で構成されていてもよい。固定部材90及びダンパ95が、導体であるとよい。ダンパ95は、制御基板51のグランド部54に対向している。グランド部54は、制御基板51の電子回路のグランド部として作用するものであるとよい。ダンパ95は、グランド部54に当接していてもよく、ダンパ95に支承された他の部材がグランド部54に当接していてもよい。また、制御基板51には、センサ39が実装されている。センサ39は、制御基板51のダンパ95に対向する箇所(つまり、グランド部54)又はその裏側に隣接する箇所に実装されている。つまり、制御基板51のセンサ39が実装された箇所とダンパ95に対向する箇所との間の領域の表裏両面に、部品が実装されていない。つまり、制御基板51の電子回路は、ダンパ95及び固定部材90を介して、基体61にグランドされる。
【0046】
<ブレーキ液圧制御ユニットの効果>
実施の形態に係るブレーキシステムのブレーキ液圧制御ユニットの効果について説明する。
【0047】
ブレーキ液圧制御ユニット60では、ブレーキ液の流路が形成されている基体61と、基体61に設けられたブレーキ液の調圧機構(例えば、コイル37、モータ38等)と、調圧機構を収容するハウジング70と、調圧機構に電気的に接続され、その調圧機構の動作を制御する制御基板51と、を備える。また、一端がハウジング70の貫通孔71に挿入されて基体61に結合され、他端90aがハウジング70及び制御基板51の間に突出する固定部材90によって、ハウジング70は、基体61に固定される。また、制御基板51には、車両100に生じている少なくとも加速度、角度又は角速度を計測するセンサ39が実装される。また、制御基板51は、制御基板51と固定部材90の他端90aとの間に介在するダンパ95によって制振される。そのため、ブレーキ液圧制御ユニット60において、センサ39の計測値に生じるノイズの抑制を、既存の固定部材90を流用して実現することが可能である。
【0048】
好ましくは、ダンパ95及び固定部材90は、熱伝導材料である。そのように構成されることで、センサ39の計測値に生じるノイズを抑制するための構造を用いて、例えば、制御基板51の電子回路の放熱性を向上することが可能となる。特に、制御基板51のセンサ39よりもダンパ95に近い箇所に、発熱部品(例えば、電子部品52等)が実装されているとよく、また、ダンパ95が、制御基板51の発熱部品が実装された箇所の裏側に対向するとよく、また、ダンパ95が、制御基板51の発熱部品が実装された箇所に対向するとよい。それらのように構成されることで、制御基板51の電子回路の放熱性が更に向上する。
【0049】
好ましくは、ダンパ95は、制御基板51のセンサ39が実装された箇所の裏側に対向する。また、好ましくは、制御基板51のセンサ39が実装された箇所とダンパ95が対向する箇所との間の領域の表裏両面に、部品が実装されていない。それらのように構成されることで、センサ39の耐振動性が向上する。
【0050】
好ましくは、ダンパ95及び固定部材90は、導体であり、ダンパ95は、制御基板51のグランド部54に対向する。そのように構成されることで、センサ39の計測値に生じるノイズを抑制するための構造を用いて、制御基板51の電子回路を基体61にグランドさせることが可能となる。
【0051】
好ましくは、調圧機構(例えば、コイル37、モータ38等)は、ハウジング70の外側に突出する複数のピン76の少なくとも一部を介して制御基板51に電気的に接続される。また、制御基板51のハウジング70から遠ざかる方向への移動が、複数のピン76のみによって規制されている。制御基板51のハウジング70から遠ざかる方向への移動が、複数のピン76のみによって規制される構成を採用することで、ブレーキ液圧制御ユニット60の組立性を向上することが可能である。そして、そのような構成では、センサ39の耐振動性が懸念される。つまり、上述の効果は、制御基板51のハウジング70から遠ざかる方向への移動が、複数のピン76のみによって規制される構成において特に顕著である。
【0052】
好ましくは、車両100は、鞍乗型車両である。鞍乗型車両では、他の車両と比較して大きな倒れ角、振動等が生じ得る。つまり、上述の効果は、車両100が鞍乗型車両である場合において特に顕著である。
【0053】
以上、実施の形態に係るブレーキ液圧制御ユニットついて説明したが、本発明に係るブレーキ液圧制御ユニットは、実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【0054】
例えば、以上では、ダンパ95が固定部材90に支承されている場合を説明したが、ダンパ95が制御基板51に支承されていてもよい。また、固定部材90及び制御基板51の一方に支承されているダンパ95が、その他方に常時接触していてもよく、また、振動時のみ接触してもよい。また、ダンパ95は、固定部材90又は制御基板51に直接支承されていてもよく、また、固定部材90又は制御基板51に設けられた部材によって支承されていてもよい。
【0055】
例えば、以上では、ハウジング70にコイル37及びモータ38が収納される場合を説明したが、ハウジング70にコイル37及びモータ38の一方のみが収納されていてもよく、また、他の調圧機構が収納されていてもよい。
【0056】
例えば、図4図5及び図7では、センサ39が、制御基板51を基準とするダンパ95の反対側に実装されている場合を図示したが、センサ39が、制御基板51を基準とするダンパ95と同じ側に実装されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 ブレーキシステム、12 第1液圧回路、14 第2液圧回路、31 ポンプ、36 調圧バルブ、37 コイル、38 モータ、39 センサ、43 端子、50 制御装置、51 制御基板、52 電子部品、53 貫通孔、54 グランド部、60 ブレーキ液圧制御ユニット、61 基体、70 ハウジング、71 貫通孔、72 突起、76 ピン、80 制御基板カバー、90 固定部材、90a 端部、91 膨出部、95 ダンパ、100 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7