(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンにおける熱アブレーションによって形成された障害部の視覚化
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231218BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20231218BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20231218BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 390
A61B18/12
A61B34/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019227070
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-10-26
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-103434(JP,A)
【文献】特表2016-527934(JP,A)
【文献】特開2004-344672(JP,A)
【文献】特開2001-190587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0317360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング(MRI)可視化のためのシステムにおける、磁気共鳴イメージング(MRI)可視化方法であって、
前記システムに備えられるプロセッサが、
MRI画像内の熱的に誘導された障害部の位置を、
前記障害部を生成する際に適用される熱エネルギーの関数として、前記障害部が前記MRI画像に出現することが予想されるときに、
前記熱的に誘導された障害部のモデルを解決することと、前記解決されたモデルをピクセル値の空間パターンへと変換することと、によって、前記障害部を表現するMRIピクセル値の空間パターンを導出することと、
前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンと
畳み込むことと、
前記
畳み込みされたMRI画像内の極大値を発見することと、
前記
畳み込みされたMRI画像内の前記極大値の位置を前記障害部の前記位置として提示することと、
によって、特定する
処理を実行することを含む、可視化方法。
【請求項2】
前記MRIピクセル値の空間パターンを導出することは、
前記プロセッサが、前記ピクセル値の空間パターンを正規化することを更に含む、請求項1に記載の可視化方法。
【請求項3】
前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンと
畳み込むことは、
前記プロセッサが、前記MRI画像のセグメント化された領域を
畳み込むことを含む、請求項1に記載の可視化方法。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記特定された位置を前記画像上に重ね合された前記MRI画像を保存することを含む、請求項1に記載の可視化方法。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記
畳み込みされたMRI画像をメモリに保存することを含む、請求項1に記載の可視化方法。
【請求項6】
磁気共鳴イメージング(MRI)可視化のためのシステムであって、
プロセッサであって、MRI画像上の熱的に誘導された障害部の位置を、
前記障害部を生成する際に適用される熱エネルギーの関数として、前記障害部が前記MRI画像に出現することが予想されるときに、
前記熱的に誘導された障害部のモデルを解決することと、前記解決されたモデルをピクセル値の空間パターンへと変換することと、によって、前記障害部を表現するMRIピクセル値の空間パターンを導出することと、
前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンと
畳み込むことと、
前記
畳み込みされたMRI画像内の極大値を発見することと、
によって、特定するように構成されている、プロセッサと、
前記障害部の前記位置としてマークされた前記極大値の位置と共に前記MRI画像を記憶するように構成されたメモリと、を備える、システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記ピクセル値の空間パターンを正規化するように更に構成されている、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記MRI画像のセグメント化された領域を
畳み込むことによって、前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンと
畳み込むように構成されている、請求項
6に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記
畳み込みされたMRI画像を前記メモリ内に保存するように更に構成されている、請求項
6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療用磁気共鳴画像法(MRI)に関し、詳細には心臓MRIに関する。
【背景技術】
【0002】
MRI画像の診断価値を改善するための様々な技術が、特許文献において提案されている。例えば、米国特許第5,003,979号には、多次元磁気共鳴イメージング(MRI)を利用して、女性の乳癌をその境界の特徴を含めて非侵襲的に識別及び評価するための画像処理、パターン認識、及びコンピュータグラフィックスのシステム及び方法が記載されている。そのシステム及び方法は、フィッシャー線形分類器を使用して組織を分類し、続いて精密化して癌の境界形状を示すものである。その結果、診断及び癌腫の大きさの分析を支援する高度情報コンテンツの表示となる。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2012/0027278号には、計画画像内の解剖学的構造とその中の介入標的領域とを含んだ対象のモデルを介入ガイド画像データにマッピングするための方法、システム、及びコンピュータ可読媒体について記載されている。1つの方法によれば、解剖学的構造を含んだ対象の初期内側表現対象モデル(m-rep)が、対象の少なくとも第1のインスタンスの画像データに基づいて作成される。m-repは、対象の1つ以上の生検前MR画像に基づいて作成されてもよい。患者固有のm-repが、対象の少なくとも第2のインスタンスの計画画像データに基づいて初期のm-repを変形することによって作成され、対象の少なくとも第2のインスタンスが患者に関連付けられる。計画画像に登録された画像において、m-rep内の介入標的領域が識別される。患者固有のm-repは、計画画像から変形された、対象の少なくとも第2のインスタンスの介入ガイド画像データと相関される。介入標的領域は、計画画像内のm-repと介入ガイド画像内のm-repとの間の変換に従って、介入ガイド画像に転送される。
【0004】
米国特許第6,310,477号には、造影剤の注入前に取得された3次元(3D)MR画像、及び造影剤の注入後に取得される拡張3D MR画像について記載されている。これらの2つの画像が登録され、次いで、背景を除去するために、また障害部ボクセルを強調するために減算される。障害部対象は、隣接する障害部対象を接続することによって識別される。次いで、離散的なデジタル画像内にある任意の連続的な障害部対象の体積及び表面積が計算される。各障害部対象ごとに体積と表面積との比を決定することによって、悪性の障害部が同定される。この比が予め設定された閾値を下回ったとき、悪性腫瘍が同定される。
【0005】
米国特許出願公開第2010/0021031号には、解剖学的体積内の疾患の評価を支援するために、参照画像データと共にコンピュータ支援検知(CAD)を使用して取得された関心領域(ROI)を処理する方法が記載されている。ROI及び参照画像データを取得した後、各ROIに関連する追加情報が自動的に計算される。可視化に使用するために、ROIのサブセットが選択される。次いで、ROIは、相互作用的な連結図において観察者に提示されるが、各図は、ROIの特定の態様を最適に提示し、サブセット内へのROIの包含を視覚的パラメータにマッピングするものである。開示される方法は、MRI画像に適用されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、磁気共鳴イメージング(MRI)可視化方法を提供し、当該方法は、MRI画像内の熱的に誘導された障害部の位置を、障害部を生成する際に適用される熱エネルギーの関数として、障害部がMRI画像内に出現すると予想されるときに、障害部を表現するMRIピクセル値の空間パターンを導出することによって特定することを含む。MRI画像は、ピクセル値の空間パターンとマッチングされる。マッチングされたMRI画像内で極大値が発見され、その極大値の位置が、障害部の位置として、マッチングされたMRI画像内に提示される。
【0007】
いくつかの実施形態では、MRIピクセル値の空間パターンを導出することは、熱的に誘導された障害部のモデルを解決することと、解決されたモデルをピクセル値の空間パターンへと変換することと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、MRIピクセル値の空間パターンを導出することは、ピクセル値の空間パターンを正規化することを更に含む。
【0009】
ある実施形態において、MRI画像をピクセル値の空間パターンとマッチングさせることは、MRI画像をピクセル値の空間パターンと畳み込むことを含む。別の実施形態では、MRI画像をピクセル値の空間パターンとマッチングさせることは、MRI画像のセグメント化された領域をマッチングさせることを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、可視化方法は、特定された位置を画像上に重ね合されたMRI画像を保存することを更に含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、可視化方法は、マッチングされたMRI画像をメモリに保存することを更に含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、磁気共鳴イメージング(MRI)可視化のためのシステムが提供され、当該システムはプロセッサとメモリとを含む。プロセッサは、MRI画像上の熱的に誘導された障害部の位置を、(a)障害部を生成する際に適用される熱エネルギーの関数として、障害部がMRI画像内に出現すると予想されるときに、障害部を表現するMRIピクセル値の空間パターンを導出することと、(b)MRI画像をピクセル値の空間パターンとマッチングさせることと、(c)マッチングされたMRI画像内の極大値を発見することと、によって、特定するように構成されている。メモリは、障害部の位置としてマークされた極大値の位置と共にMRI画像を記憶するように構成されている。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態による、磁気共鳴イメージング(MRI)ガイドアブレーションシステムの概略的な絵画図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、RF誘導障害部モデル及び結果として得られるMRIピクセル値の正規化空間パターンの概略的な絵画図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、RF誘導障害部モデル及び結果として得られるMRIピクセル値の正規化空間パターンの概略的な絵画図である。
【
図3】本発明の実施形態による、画像を
図2の機能と畳み込みした後のMRI画像における向上した障害部視認性の概略的な絵画図である。
【
図4】本発明の実施形態による、
図2のMRIピクセル値の正規化空間パターンを導出するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態による、MRI画像における障害部視認性を向上させるための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
磁気共鳴イメージング(MRI)画像は通常、異なる組織特性及び組成を表現するグレースケールピクセルを含む。組織の高周波(RF)アブレーションなどの熱的なアブレーションの間及びその後、障害部の生成が原因で、MRI画像においてこのような組織のグレースケール値の変化が生じる。しかしながら、その変化は小さい場合もあり、かつ/又は、モーションアーチファクト及び画像ノイズなどの他の効果によってマスクされることもあり、これによって、心臓障害部などの障害部のMRI可視化が困難になる。
【0016】
以下に記載される本発明の実施形態は、熱的に誘導された障害部の位置を特定及び可視化する方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、障害部の位置は、例えば、画像内の種々の心臓位置にわたって、MRIピクセル値の正規化空間パターンをMRI画像とマッチングさせることによって、例えば畳み込むことによって特定される。MRIピクセル値の空間パターンは、障害部がMRI画像内に出現すると予想されるときにその障害部を表現する。畳み込み値が最も高いピクセル位置は、畳み込みされたMRI障害部画像内の中心位置に対応するが、これは、畳み込みがMRI画像におけるノイズ効果を低減するためである。ユーザーは、今後使用するために、メモリ内の画像上に視覚化された障害部の位置が重ね合されたアップロード済みのMRI画像を保存してもよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、MRIピクセル値の正規化空間パターンは、(a)熱的に誘発された障害部モデルを解決することと、(b)以下に記載されるように、MRIピクセル値の空間パターンへと解を変換することと、(c)MRIピクセル値の空間パターンを正規化することと、によって導出される。
【0018】
任意選択の実施形態では、周囲の畳み込み位置が結果として、畳み込みされたMRI画像内に障害部の形状を出現させる。したがって、開示される技術は、以下に記載されるように、畳み込みを用いて障害部拡大MRI画像を生成することによって、MRIの障害部可視化を更に改善し得る。いくつかの実施形態では、蓄積された熱エネルギーの関数として、画像化された障害部のピクセル値の予想される変化のモデルが提供される。開示される方法は、MRIピクセル値の正規化空間パターン(すなわち、計算された重み付け分布)を提供する。
【0019】
開示される方法では、障害部のMRIピクセル値は、蓄積された熱エネルギーの単調関数である(すなわち、アブレーションされた組織のピクセル値など、MRIによって画像化された組織の視覚的特性は、蓄積されたアブレーションエネルギーと共に単調に変化する)と仮定される。アブレーション誘導のピクセルMRI関数を記述する1つ以上の方程式が、組織表面を冷却するための灌流速度、RF電流密度、並びに血液及び組織の熱伝導率などのパラメータを使用して、熱伝搬推定に基づいて構築される。次いで、開示されるモデル(すなわち、1つ以上の上記の方程式)が、プロセッサを用いて解決され、得られた解が、後述するようにピクセル値に変換され、次いで重み付け関数を生成するために正規化される。
【0020】
ある実施形態では、この畳み込みは、計算時間を低減するために、またアーチファクトを発生すること(例えば、無関係な特徴を誤って障害部と識別すること)を回避するために、障害部が予想されるMRI画像の領域内で実施される。このような領域を定義するために、MRI画像は、専用ソフトウェアを実行するプロセッサによって、かつ/又はユーザーによって手動で、最初にセグメント化されてもよい。
【0021】
プロセッサは、上記で概説されたプロセッサ関連のステップ及び機能の各々をプロセッサによって実行することを可能にする特定のアルゴリズムを収容したソフトウェアでプログラムされる。
【0022】
開示される技術は、アブレーションによって形成された障害部のMRI画像における可視化を強化し、したがって、MRI画像の診断価値を改善し得るものである。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、磁気共鳴イメージング(MRI)ガイドアブレーションシステム20の概略的な絵画図である。システム20は、医師42がアブレーション処置を実施している間に患者30を撮像するように構成されたMRIスキャナ22を備える。システム20は、例えば、コンソール26内に位置するプロセッサ41を更に備える。処置中に、プロセッサ41は、以降に詳細に説明するように、MRIスキャナによる画像取得を制御する。
【0024】
アブレーションを実施するために、医師42は、アブレーションカテーテル24を使用する。典型的には、カテーテル24は、アブレーション電極25を備え、患者30の体内のカテーテルの位置及び向きを示す追跡信号を出力する追跡センサ27を更に備える。例えば、追跡センサ27は、磁気センサを備えてもよい。処置中に、1つ以上の磁場発生器(図示せず)が、MRIスキャナによって生成されるものとは異なる周波数で磁場を発生させることができ、それによってセンサ27内に電圧が誘導される。これらの誘導電圧は、電気的インターフェース43を介して、プロセッサ41によって受信される。誘導電圧に基づいて、プロセッサは、カテーテルの位置及び向きを特定する。そのような磁気的追跡技術は、例えば、米国特許第5,391,199号、同第5,443,489号、同第6,788,967号、同第6,690,963号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、及び同第6,177,792号に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
代替的に又は付加的に、システム20は、カテーテルの位置及び/又は向きを追跡するための任意の他の好適な追跡技術を実施するために使用され得る、任意の他のタイプのセンサを備えてもよい。例えば、開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号、及び同第5,944,022号に記載されているようなインピーダンスベースの追跡技術を実装するために、インピーダンスセンサが使用されてもよい。
【0026】
システム20は、1つ以上の体表面電極36を更に備えており、これらの体表面電極は、追跡信号が取得される患者30の心臓周期の位相を示す心電(ECG)信号を出力するものである。これらのECG信号は、ケーブル38及びECGインターフェース45を介して、プロセッサ41に伝送される。代替的に又は付加的に、プロセッサ41は、カテーテル24内のECGセンサによって取得された心内ECG信号を受信してもよい。
【0027】
処置中、医師を誘導するのを支援するために、MRIスキャナによって取得された画像がディスプレイ40上に表示されてもよい。
【0028】
プロセッサ41は通常、本明細書に記載されている機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされた汎用コンピュータである。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に若しくは追加的に、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。具体的に言えば、プロセッサ41は、以下に更に記載されているように、開示されるステップをプロセッサ41が実行することを可能にする専用アルゴリズムを稼働させる。
【0029】
MRIスキャンにおける熱アブレーションによって形成された障害部の探索
図2A及び
図2Bは、本発明の実施形態による、RF誘導障害部モデル35及び結果として得られるMRIピクセル値50の正規化空間パターンの概略的な絵画図である。
【0030】
モデル35は、熱伝搬の仮定に基づいたものである。熱源は、電極25によって組織49に注入されるRF電流63によるジュール加熱を含む。このモデルは、RF電流密度が、逆数のr2のモデルのように電極25からの距離と共に低下することを想定したものであってもよく、あるいは、電流密度の降下のより精密なモデルを用いるものであってもよい。冷却潅注流60が組織表面61及び血液62を冷却するが、組織の現在の熱伝導率は、組織49へのより深い熱伝搬65を引き起こす。モデル35の解S(r)は、RFアブレーションの結果として組織49の中に蓄積された熱エネルギーの三次元分布(すなわち、関数)を与えるものである。
【0031】
熱方程式に基づく組織壊死モデルの例が、米国特許第9,846,765号に記載されており、この特許において、ある実施形態では、温度マップは、計算され、器官の医用画像上にオーバーレイされる熱アブレーションに起因する、標的器官内のシミュレーション熱拡散を示す。米国特許第9,846,765号の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。代替的に、任意の他の好適なモデルが用いられてもよい。
【0032】
開示される方法は、以下に記載されるように、障害部のピクセルMRI値が蓄積されたエネルギーの単調関数である(すなわち、組成など、MRI画像化されている組織の特性が、蓄積されたアブレーションエネルギーと共に単調に変化する)と更に想定している。本開示の文脈において、この想定は、モデル35の解をピクセルMRI値の関数へと変換するために使用される。この変換は、分析的に行われてもよく、あるいは、例えば、経験的に導出されるルックアップテーブルによって行われてもよい。
【0033】
例えば、ピクセル値の空間パターンpV(r)は、解の加法関数pV(r)=pV0(r)+α・S(r)であってもよく、式中、pV0(r)はアブレーション前のピクセル値であり、αは当てはめられたパラメータである{正しいか?}。代替的に、別の好適な関数又は関係式が用いられ得る。
【0034】
このような変換及び正規化により、プロセッサ41は、ピクセル値50の正規化空間パターンを計算する。結果として得られる関数50は、最大値を1とする重み関数であり、典型的には、その最大値からの半径方向距離(例えば、ミリメートルで与えられる)の関数として低下する。しかしながら、一例として、一般的に、組織特性が十分な程度に空間的に不均一である場合、ピクセル値の正規化空間パターンは、いかなる対称性も持たなくてよく、むしろ空間ベクトルrの一般的な関数であってよい。
【0035】
図2A及び
図2Bに示される例示的な図は、単に概念を明確化する目的のために選択されているに過ぎない。関数50の形状は、組織の熱伝導率など、モデル35の仮定の変化に基づいて変化し得る。
【0036】
図3は、本発明の実施形態による、MRI画像を
図2の関数と畳み込みした後のMRI画像における向上した障害部視認性の概略的な絵画図である。画像ノイズが原因で、エリア53内の領域55Aに見られる障害部の位置にいくらかの不確実性が存在し得る。MRIピクセル値50の正規化空間パターンは、障害部を示すMRIノイズ画像の領域55Aと畳み込まれる(54)。
【0037】
図示のように、結果として得られるMRI画像の障害部拡大領域55Bは、障害部の正確に特定された中心位置57を有している。位置57は、畳み込みされた平滑な(すなわち、より低ノイズの)画像の極大MRI値である。上述のように、領域55Aは、画像全体との畳み込みを実行することを回避するために、対応するMRI画像上でセグメント化を実行することによって規定され得る。
【0038】
任意選択的に、畳み込みされたMRI画像が生成される(低減された画像ノイズ及び障害部境界のより明確な描出を示している)(すなわち、障害部が強調された画像)。
【0039】
図4は、本発明の実施形態による、
図2のMRIピクセル値50の正規化空間パターンを導出するための方法を概略的に示すフローチャートである。提示される実施形態によるアルゴリズムは、モデル解決ステップ70において、プロセッサ41が、高周波(RF)誘導障害部モデル35を解決することで始まるプロセスを実行する。次に、解変換ステップ72において、プロセッサ41が、上記のように、ピクセル値の空間パターンに解を変換する。最後に、正規化ステップ74において、プロセッサ41がピクセル値の空間パターンを正規化して、ピクセル値50の正規化空間パターンを取得する。
【0040】
図4に示される例示的なフロー図は、純粋に概念を分かりやすくするために選択されたものである。本実施形態はまた、より単純化されたフローチャートを提供するために本明細書では意図的に本開示から省略されている、近似などのアルゴリズムの付加的なステップを含む。
【0041】
図5は、本発明の実施形態による、MRI画像における障害部視認性を向上させるための方法を概略的に示すフローチャートである。このアルゴリズムは、提示された実施形態によれば、MRI画像アップロードステップ80において、RFアブレーションされた組織を示す少なくとも1つのMRI画像(例えば、領域55Aと類似の領域を含んだ画像)をプロセッサ41がアップロードすることで始まるプロセスを実行する。次に、障害部位置検出ステップ82において、アップロードされた障害部の画像の中心位置57上で正確に識別するために、モデルはピクセル値50の正規化空間パターンをアップロードされたMRI画像と畳み込みする(すなわち、開示される解決済みの障害部モデルを適用する)。次いで、障害部可視化ステップ84において、プロセッサ41は、熱的に誘導された障害部の検出済みの中心位置(例えば、位置57)と共に、アップロードされたMRI画像をユーザーに提示する。
【0042】
任意選択的に、障害部強調画像提示ステップ86において、プロセッサ41は、障害部強調MRI画像を生成し、その障害部強調MRI画像(例えば、領域55Bと類似した領域を含んだ画像)をユーザーに提示する。最後に、障害部強調MRI画像保存ステップ88において、プロセッサ41は、障害部強調MRI画像をメモリに保存してもよい。
【0043】
本実施形態はまた、より単純化されたフローチャートを提供するために本明細書では意図的に本開示から省略されている、アップロードされたMRI画像にセグメント化を適用することなど、アルゴリズムの付加的なステップを含む。
【0044】
本明細書に記載されている実施形態は、主に、心臓MRIの用途に対処するものであるが、本明細書に記載されている方法及びシステムはまた、他の器官におけるEFアブレーションされた障害部のMRI可視化など、他の用途においても用いられ得る。更に、開示された方法は、レーザーアブレーション、超音波アブレーション、又はマイクロ波アブレーションなどの他のアブレーション方法によって誘導される障害部のMRI可視化に必要な変更を加えて実施されてもよい。
【0045】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形形態及び修正形態を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) 磁気共鳴イメージング(MRI)可視化方法であって、
MRI画像内の熱的に誘導された障害部の位置を、
前記障害部を生成する際に適用される熱エネルギーの関数として、前記障害部が前記MRI画像に出現することが予想されるときに、前記障害部を表現するMRIピクセル値の空間パターンを導出することと、
前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンとマッチングさせることと、
前記マッチングされたMRI画像内の極大値を発見することと、
前記マッチングされたMRI画像内の前記極大値の位置を前記障害部の前記位置として提示することと、
によって、特定することを含む、可視化方法。
(2) 前記MRIピクセル値の空間パターンを導出することは、
前記熱的に誘導された障害部のモデルを解決することと、
前記解決されたモデルを前記ピクセル値の空間パターンへと変換することと、を含む、実施態様1に記載の可視化方法。
(3) 前記MRIピクセル値の空間パターンを導出することは、前記ピクセル値の空間パターンを正規化することを更に含む、実施態様1に記載の可視化方法。
(4) 前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンとマッチングさせることは、前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンと畳み込むことを含む、実施態様1に記載の可視化方法。
(5) 前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンとマッチングさせることは、前記MRI画像のセグメント化された領域をマッチングさせることを含む、実施態様1に記載の可視化方法。
【0047】
(6) 前記特定された位置を前記画像上に重ね合された前記MRI画像を保存することを含む、実施態様1に記載の可視化方法。
(7) 前記マッチングされたMRI画像をメモリに保存することを含む、実施態様1に記載の可視化方法。
(8) 磁気共鳴イメージング(MRI)可視化のためのシステムであって、
プロセッサであって、MRI画像上の熱的に誘導された障害部の位置を、
前記障害部を生成する際に適用される熱エネルギーの関数として、前記障害部が前記MRI画像に出現することが予想されるときに、前記障害部を表現するMRIピクセル値の空間パターンを導出することと、
前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンとマッチングさせることと、
前記マッチングされたMRI画像内の極大値を発見することと、
によって、特定するように構成されている、プロセッサと、
前記障害部の前記位置としてマークされた前記極大値の位置と共に前記MRI画像を記憶するように構成されたメモリと、を備える、システム。
(9) 前記プロセッサは、前記MRIピクセル値の空間パターンを、
前記熱的に誘導された障害部のモデルを解決することと、
前記解決されたモデルを前記ピクセル値の空間パターンへと変換することと、
によって、導出するように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサは、前記ピクセル値の空間パターンを正規化するように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
【0048】
(11) 前記プロセッサは、前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンと畳み込むことによって、前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンとマッチングさせるように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサは、前記MRI画像のセグメント化された領域をマッチングさせることによって、前記MRI画像を前記ピクセル値の空間パターンとマッチングさせるように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサは、前記マッチングされたMRI画像を前記メモリ内に保存するように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。