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特許7404061分岐サドル継手を用いた止水構造および分岐サドル継手
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】分岐サドル継手を用いた止水構造および分岐サドル継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/06 20060101AFI20231218BHJP
   F16L 47/02 20060101ALI20231218BHJP
   F16L 41/16 20060101ALI20231218BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20231218BHJP
   F16L 55/11 20060101ALI20231218BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16L41/06
F16L47/02
F16L41/16
F16L55/00 Z
F16L55/11
E03B7/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019231133
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099130
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】檜物 友和
(72)【発明者】
【氏名】橋津 健二
(72)【発明者】
【氏名】濱田 祐行
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 竜一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-214839(JP,A)
【文献】特許第5484090(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/06
F16L 47/02
F16L 41/16
F16L 55/00
F16L 55/11
E03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために前記本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手を用いた止水構造であって、前記止水構造には前記分岐サドル継手とプラグとキャップとが用いられ、
前記分岐サドル継手は、
分岐孔を有し、断面が円弧形状のサドル部と、
前記分岐孔の周縁部から円筒状に立ち上がり上端が開口した分岐管部とを含み、前記分岐管部は中間位置から分岐された枝管部を含み、
前記分岐管部の開口から略中実円筒形状のプラグが挿入された後に、上面側が閉じた略中空円筒形状のキャップにより前記分岐管部の前記開口を封止することにより、前記分岐管部の開口が止水状態とされ、
前記分岐管部は、その外周に前記キャップのキャップ雌ねじ部に螺合する管部雄ねじ部を備え、その内周に前記プラグのプラグ雄ねじ部に螺合する管部雌ねじ部を備え、
前記分岐管部は、前記キャップの内周面と前記分岐管部の外周面とに圧接されるキャップ環状パッキンを保持する分岐管パッキン保持部を備え、
前記プラグは、前記プラグ雄ねじ部を備えない非ねじ部を備え、前記非ねじ部に前記分岐管部の内周面に圧接されるプラグ環状パッキンを保持する溝状のプラグパッキン保持部を備え、
前記止水状態において、前記キャップ環状パッキンと前記プラグ環状パッキンとは、前記分岐管部の管中心軸に沿った高さ方向が異なる位置であることを特徴とする、止水構造
【請求項2】
前記止水状態において、前記プラグ環状パッキンは、前記キャップ環状パッキンよりも高さ位置が低いことを特徴とする、請求項1に記載の止水構造
【請求項3】
前記止水状態において、前記プラグ環状パッキンが圧接される前記分岐管部の肉厚は、前記キャップ環状パッキンが圧接される前記分岐管部の肉厚よりも厚いことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の止水構造
【請求項4】
前記プラグの上端面には、前記プラグを回転させるための治具が取り外し可能に挿入されるプラグ孔を備え、前記プラグ孔の前記上端面からの深さ寸法は、前記プラグ孔の方が前記プラグパッキン保持部の位置よりも深いことを特徴とする、請求項1~請求項のいずれかに記載の止水構造
【請求項5】
前記プラグ孔は、その開口側に大径部を備え、前記プラグパッキン保持部の位置は、前記大径部より下方であることを特徴とする、請求項に記載の止水構造
【請求項6】
合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために前記本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、
分岐孔を有し、断面が円弧形状のサドル部と、
前記分岐孔の周縁部から円筒状に立ち上がり上端が開口した分岐管部とを含み、前記分岐管部は中間位置から分岐された枝管部を含み、
前記分岐管部の開口から略中実円筒形状のプラグが挿入された後に、上面側が閉じた略中空円筒形状のキャップにより前記分岐管部の前記開口を封止することにより、前記分岐管部の開口が止水状態とされ、
前記分岐管部は、その外周に前記キャップのキャップ雌ねじ部に螺合する管部雄ねじ部を備え、その内周に前記プラグのプラグ雄ねじ部に螺合する管部雌ねじ部を備え、
前記分岐管部は、前記キャップの内周面と前記分岐管部の外周面とに圧接されるキャップ環状パッキンを保持する分岐管パッキン保持部を備え、
前記プラグは、前記プラグ雄ねじ部を備えない非ねじ部を備え、前記非ねじ部に前記分岐管部の内周面に圧接されるプラグ環状パッキンを保持する溝状のプラグパッキン保持部を備え、
前記止水状態において、前記キャップ環状パッキンと前記プラグ環状パッキンとは、前記分岐管部の管中心軸に沿った高さ方向が異なる位置であり、
前記分岐管部の内周面は、前記高さ方向の上から下へ、第一非ねじ部、前記第一非ねじ部に滑らかに続く前記第一非ねじ部よりも直径の小さな第二非ねじ部、前記管部雌ねじ部、が設けられ、
前記プラグパッキン保持部に保持された前記プラグ環状パッキンの外径よりも第一非ねじ部の直径が小さく、
前記プラグの外周面は、前記高さ方向の上から下へ、第一雄ねじ部、前記第一雄ねじ部よりも直径が小さく雄ねじを備えない前記プラグパッキン保持部、前記第一雄ねじ部と同じねじ規格の第二雄ねじ部、が設けられ、前記プラグ雄ねじ部は前記第一雄ねじ部と前記第二雄ねじ部とを含んで構成され、
前記分岐管部の開口上面よりも深く前記プラグの下端面を挿入すると前記第二雄ねじ部が前記管部雌ねじ部に当接し、前記プラグを回転させて前記プラグ雄ねじ部を前記管部雌ねじ部に螺合させて、前記プラグ環状パッキンが前記第一非ねじ部に到達した第一止水状態を経て、前記プラグ環状パッキンが前記第二非ねじ部に到達して前記第一止水状態よりも止水状態が強い第二止水状態になることを特徴とする、分岐サドル継手。
【請求項7】
前記第二雄ねじ部が前記管部雌ねじ部に当接した状態から前記プラグ環状パッキンが前記第一非ねじ部に到達し始める状態までの前記プラグの回転数N(1)として、
前記プラグ環状パッキンが前記第一非ねじ部に到達し始める状態から前記第二非ねじ部に到達し始める状態までの前記プラグの回転数N(2)として、
N(1)、N(2)≦5であることを特徴とする、請求項に記載の分岐サドル継手。
【請求項8】
N(1)=3~5、N(2)=2~4であることを特徴とする、請求項に記載の分岐サドル継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分岐サドル継手に関し、特に、合成樹脂製の本管から岐管を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手において、本管から岐管に流水させている(プラグが開栓状態の)ときの分岐サドル継手における止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の水道配水管の本管から分岐を取り出すための管の分岐方法として、EF(ElectroFusion)サドル継手およびEFサドル付分水栓などの電気融着接合タイプの分岐サドル継手を使用した方法が公知である。
このように水道本管から家庭内配管への給水用の枝管への分岐に用いられているサドル型分岐継手は使用状況によっては、本管側が不断水状態であっても本管側を流れる水道水が分岐管側へ流入することを止める(開栓状態のプラグを閉栓状態に変更する)ことができるように構成されている。このようなサドル型分岐継手の一例が特許第5484090号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1に開示されたサドル型分岐継手(EFサドル継手、分岐サドル継手と同じ)は、本管に融着されるサドル部と、このサドル部から突出した分岐管部本体及び分岐管部本体の中間位置で分岐管部本体から分岐された枝管部からなる分岐管部とを有する継手本体と、前記分岐管部本体内に内蔵されたシールプラグとを備え、このシールプラグが、分岐管部本体内面に沿って設けられた雌ねじ筒部に螺合される雄ねじ部と、この雄ねじ部の端面から段状に縮径した状態で本管方向に延出する柱状のシール部とを備えるとともに、本管側にねじ込まれ、シール部が分岐管部本体の本管側端部に設けられたシール孔部に嵌り込み、前記シール部の周面に設けられたOリング嵌合溝に嵌着された本管側用Oリングがシール孔部と、シール部との隙間を水密に塞ぐことによって本管側から分岐管部側への流体の流れ込みを止めるようにしたサドル型分岐継手であって、前記シール孔部に入り込み、本管側から前記本管側用Oリングにかかる水圧を緩和する補助シールパッキンが、前記シール部の先端面に先端面から外周側に外縁がはみ出すように固着されていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5484090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1に開示されたサドル型分岐継手において、本管から岐管に流水させている(本願のプラグに相当するシールプラグが開栓状態の)ときの分岐サドル継手における止水は、分岐管部本体内に内蔵されたシールプラグがその一端に備える雄ねじ部(雌ねじ筒部の雌ねじに螺合)を有し、一端面近傍の外周面に穿設された第1Oリング嵌合溝に分岐管部開口端側用Oリングとして嵌合された第1Oリングがシール筒部の内周面に圧接されて、シールプラグを開栓状態にした場合において、本管側から分岐管部本体内に入り込んだ水の分岐管部本体からの漏水を防ぐようになっている。さらに、雌ねじ筒部は、内面に(シールプラグがその一端に備える雄ねじ部に螺合する)雌ねじが設けられるとともに、一端側の外周面にキャップが螺合する雄ねじが設けられている。キャップは、雌ねじ筒部の雄ねじに螺合する雌ねじを備えた雌ねじ筒部と、雌ねじ筒部の一端を閉鎖する蓋部とを備え、蓋部の内壁面に雌ねじ筒部の上端面に圧接されるリング状のシールパッキンを備えている。シールプラグを開栓状態とした後に、キャップの雌ねじと雌ねじ筒部の雄ねじとを螺合させてシールパッキンが雌ねじ筒部の上端面に圧接されるまで、キャップをねじ込んで、分岐管部本体の端部を止水状態に封鎖している。このように、特許文献1に開示された分岐サドル継手においては、シールパッキンが雌ねじ筒部の上端面に圧接されて止水状態を実現している。
【0005】
しかしながら、シールパッキンは、キャップをねじ込んでキャップの雌ねじ筒部の上端面に圧接させているためにシールパッキンの圧力はキャップの締付の度合いによって変動するので、キャップの締付が不十分であった場合には、シールパッキンによる止水性が低下する可能性がある。
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手を用いた止水構造および分岐サドル継手であって、本管から岐管に流水させている(プラグ開栓状態の)ときの分岐サドル継手における止水性能の良好な分岐サドル継手を用いた止水構造および分岐サドル継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る分岐サドル継手は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る分岐サドル継手は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために前記本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手であって、分岐孔を有し、断面が円弧形状のサドル部と、前記分岐孔の周縁部から円筒状に立ち上がり上端が開口した分岐管部とを含み、前記分岐管部は中間位置から分岐された枝管部を含み、前記分岐管部の開口から略中実円筒形状のプラグが挿入された後に、上面側が閉じた略中空円筒形状のキャップにより前記分岐管部の前記開口を封止することにより、前記分岐管部の開口が止水状態とされ、前記分岐管部は、その外周に前記キャップのキャップ雌ねじ部に螺合する管部雄ねじ部を備え、その内周に前記プラグのプラグ雄ねじ部に螺合する管部雌ねじ部を備え、前記分岐管部は、前記キャップの内周面と前記分岐管部の外周面とに圧接されるキャップ環状パッキンを保持する分岐管パッキン保持部を備え、前記プラグは、前記分岐管部の内周面に圧接されるプラグ環状パッキンを保持するプラグパッキン保持部を備え、前記止水状態において、前記キャップ環状パッキンと前記プラグ環状パッキンとは、前記分岐管部の管中心軸に沿った高さ方向が異なる位置である。
【0007】
好ましくは、前記止水状態において、前記プラグ環状パッキンは、前記キャップ環状パッキンよりも高さ位置が低いように構成することができる。
さらに好ましくは、前記止水状態において、前記プラグ環状パッキンが圧接される前記分岐管部の肉厚は、前記キャップ環状パッキンが圧接される前記分岐管部の肉厚よりも厚いように構成することができる。
【0008】
さらに好ましくは、前記分岐管部の内周面は、前記高さ方向の上から下へ、第一非ねじ部、前記第一非ねじ部に滑らかに続く前記第一非ねじ部よりも直径の小さな第二非ねじ部、前記管部雌ねじ部、が設けられ、前記プラグパッキン保持部に保持された前記プラグパッキンの外径よりも第一非ねじ部の直径が小さく、前記プラグの外周面は、前記高さ方向の上から下へ、第一雄ねじ部、前記第一雄ねじ部よりも直径が小さく雄ねじを備えない前記プラグパッキン保持部、前記第一雄ねじ部と同じねじ規格の第二雄ねじ部、が設けられ、前記プラグ雄ねじ部は前記第一雄ねじ部と前記第二雄ねじ部とを含んで構成され、前記分岐管部の開口上面よりも深く前記プラグの下端面を挿入すると前記第二雄ねじ部が前記管部雌ねじ部に当接し、前記プラグを回転させて前記プラグ雄ねじ部を前記管部雌ねじ部に螺合させて、前記プラグ環状パッキンが前記第一非ねじ部に到達した第一止水状態を経て、前記プラグ環状パッキンが前記第二非ねじ部に到達して前記第一止水状態よりも止水状態が強い第二止水状態になるように構成することができる。
【0009】
さらに好ましくは、前記第二雄ねじ部が前記管部雌ねじ部に当接した状態から前記プラグ環状パッキンが前記第一非ねじ部に到達し始める状態までの前記プラグの回転数N(1)として、前記プラグ環状パッキンが前記第一非ねじ部に到達し始める状態から前記第二非ねじ部に到達し始める状態までの前記プラグの回転数N(2)として、N(1)、N(2)≦5であるように構成することができる。
さらに好ましくは、N(1)=3~5、N(2)=2~4であるように構成することができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記プラグの上端面には、前記プラグを回転させるための治具が取り外し可能に挿入されるプラグ孔を備え、前記プラグ孔の前記上端面からの深さ寸法は、前記プラグ孔の方が前記プラグパッキン保持部の位置よりも深いように設けられるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記プラグ孔は、その開口側に大径部を備え、前記プラグパッキン保持部の位置は、前記大径部より下方であるように設けられるように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手を用いた止水構造および分岐サドル継手であって、本管から岐管に流水させている(プラグ開栓状態の)ときの分岐サドル継手における止水性能の良好な分岐サドル継手を用いた止水構造および分岐サドル継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る分岐サドル継手100(キャップ300を含む)の三面図およびこの分岐サドル継手100に用いられるプラグ200の二面図である。
図2】(A)図1に示した分岐サドル継手100(プラグ200およびキャップ300を含む)の側面図(半断面図)であって、(B)その分解図(半断面図)である。
図3】(A)図2(B)に示したプラグ200の詳細な側面図(半断面図)であって、(B)図2(B)に示した分岐サドル継手100の分岐管部150の詳細な側面図(半断面図)である。
図4】本発明の実施の形態に係る分岐サドル継手100の分岐管部150にプラグ200を嵌入する手順を説明するための断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る分岐サドル継手100を用いて不断水状態の本管側を流れる水を分岐管側へ流入することを止めた(開栓状態のプラグを閉栓状態に変更した)状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る分岐サドル継手100、およびこの分岐サドル継手100に加えてプラグ200およびキャップ300を用いた分岐サドル継手100の止水構造について、この分岐サドル継手100(キャップ300を含む)の三面図およびこの分岐サドル継手100に用いられるプラグ200の二面図を示す図1、この分岐サドル継手100(プラグ200およびキャップ300を含む)の側面図(半断面図)を示す図2(A)およびその分解図(半断面図)を示す図2(B)、ならびに、図2(B)に示したプラグ200の詳細な側面図(半断面図)を示す図3(A)および図2(B)に示した分岐サドル継手100の分岐管部150の詳細な側面図(半断面図)を示す図3(B)を参照して、詳しく説明する。なお、図2(A)は本管から岐管に流水させている(プラグ200が開栓状態である)止水状態を示す。
【0014】
なお、以下において、径、直径、外径、内径については、いずれも円形形状の径方向の寸法であるために、明確に区別しないで説明する場合がある。また、これらの径方向の寸法についての符号にはD(N)(Nは自然数)を用いる。
これらの図を参照して、この分岐サドル継手100は、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の熱融着可能な合成樹脂によって形成される本管(図示しないが後述する分岐孔110Hを介して分岐管部150に接続される配管)から分岐管(図示しないが後述する分岐管部150の中間位置から分管孔190Hを介して分岐された枝管部190に接続される配管)を取り出す際に、本管の外周面に電気融着接合されるEFサドル継手である。この分岐サドル継手100は、本管はたとえば水道配管に限定されるものではなく上述した多岐の用途に用いられる本管に使用されるとともに、既設配管からの分岐、新規配管からの分岐、配管使用状態における分岐、配管未使用状態における分岐に用いることも可能である。
【0015】
この分岐サドル継手100は、本管と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成されるサドル部110および分岐管部150を備える。本実施の形態においては、限定されるものではないが、サドル部110および枝管部190を含む分岐管部150のそれぞれは、ポリエチレンによって形成される。さらに、限定されるものではないが、本管の呼び径は75、100、150程度であって、分岐管の呼び径は50程度である。また、分岐サドル継手100、プラグ200、キャップ300、パッキン(キャップ環状パッキ
ン156Pおよびプラグ環状パッキン256P)については、この分岐サドル継手について通常用いられる公知の素材が適宜採用されている。
【0016】
これらの図に示すように、この分岐サドル継手100は、分岐孔110Hを有し、断面が円弧形状のサドル部110と、分岐孔110Hの周縁部から円筒状に立ち上がり上端が開口した分岐管部150とを含む。この分岐管部150は中間位置から分管孔190Hを介して分岐された枝管部190を含む。そして、分岐管部150の上方の開口150Hから略中実円筒形状のプラグ200が挿入された後に、上面側が閉じた略中空円筒形状のキャップ300により分岐管部150の上方の開口150Hを封止することにより、分岐サドル継手100が止水状態(本管から岐管に流水させている(プラグ200が開栓状態である)止水状態)とされる。
【0017】
分岐管部150は、その外周にキャップ300のキャップ雌ねじ部302に螺合する管部雄ねじ部152を備え、その内周にプラグ200のプラグ雄ねじ部204(より詳しくは第一雄ねじ部204Fおよび同じねじ規格の第二雄ねじ部204S)に螺合する管部雌ねじ部154を備える。さらに、分岐管部150は、キャップ300の内周面304と分岐管部150の外周面157とに圧接されるキャップ環状パッキン156Pを保持する分岐管パッキン保持部156を備える。プラグ200は、分岐管部150の内周面(より詳しくは第二非ねじ部162S)に圧接されるプラグ環状パッキン256Pを保持するプラグパッキン保持部256を備える。本管から岐管に流水させている(プラグ200が開栓状態である)止水状態において、この分岐サドル継手100は、キャップ環状パッキン156Pおよびプラグ環状パッキン256Pにより止水されている。そして、特徴的であるのは、キャップ環状パッキン156Pとプラグ環状パッキン256Pとは、分岐管部150の管中心軸に沿った高さ方向が(より詳しくは距離Gだけ)異なる位置である。
【0018】
特に、このような止水状態において、プラグ環状パッキン256Pは、キャップ環状パッキン156Pよりも高さ位置が(距離Gだけ)低い。さらに、このような止水状態において、プラグ環状パッキン256Pが圧接される分岐管部(より詳しくは分岐管部150の内周面の一部である第二非ねじ部162S)の肉厚t(4)は、キャップ環状パッキン156Pが圧接される分岐管部150(より詳しくは分岐管部150の外周面157)の肉厚t(2)よりも厚い。
【0019】
さらに詳しくこの止水状態を実現する構成について説明する。
この分岐管部150の内周面は、高さ方向の上から下へ、第一非ねじ部162F、第一非ねじ部162Fに滑らかに続く第一非ねじ部162Fよりも直径の小さな第二非ねじ部162S、管部雌ねじ部154が設けられている。ここで、第一非ねじ部162Fの直径(内径)をD(2)とし第二非ねじ部162Sの直径(内径)をD(4)とする。なお、プラグパッキン保持部256に保持されたプラグ環状パッキン256Pの外径よりも第一非ねじ部162Fの直径D(2)が小さく、上述したように第二非ねじ部162Sの直径D(4)は第一非ねじ部162Fの直径D(2)よりもさらに小さい(プラグ環状パッキン256Pの外径>D(2)>D(4))。
【0020】
一方、プラグ200の外周面は、高さ方向の上から下へ、第一雄ねじ部204F、第一雄ねじ部204Fよりも直径が小さく雄ねじを備えないプラグパッキン保持部256、第一雄ねじ部204Fと同じねじ規格の第二雄ねじ部204Sが設けられている。以下において、プラグ雄ねじ部204は第一雄ねじ部204Fと第二雄ねじ部204Sとを含んで構成されているものとして説明する。
【0021】
分岐管部150の開口上面158よりも深くプラグ200の下端面210を挿入してプラグ200を下降させると第二雄ねじ部204Sが管部雌ねじ部154に当接する。この状態は、プラグ200の雄ネジ204と分岐管部150の雌ねじ154とが当接し合っている状態であって、プラグ200を回転させてこれらの雄ネジ204と雌ねじ154とを螺合させない限り下降が一旦停止している状態であり、図4(A)に示す状態である。
【0022】
次に、プラグ200を回転させてプラグ雄ねじ部204を管部雌ねじ部154に螺合させて、プラグ環状パッキン256Pが第一非ねじ部162Fに到達した第一止水状態となる。この第一止水状態は、図4(B)に示す状態と図4(C)に示す状態との中間状態で
あって、プラグ環状パッキン256Pが第一非ねじ部162Fに当接して止水されている状態である。この第一止水状態においては、プラグ環状パッキン256P(の外径部分)が第一非ねじ部162Fの直径D(2)の部分で保持されている。
【0023】
さらに、プラグ200を回転させてプラグ雄ねじ部204を管部雌ねじ部154に螺合させると、プラグ環状パッキン256Pが第二非ねじ部162Sに到達して第一止水状態よりも止水状態が強い第二止水状態となる。この第二止水状態は、図4(D)に実線で示す状態(または図4(C)に示す状態と図4(D)に実線で示す状態との中間状態)であって、プラグ環状パッキン256Pが第二非ねじ部162Sに当接して止水されている状態である。この第二止水状態においては、プラグ環状パッキン256P(の外径部分)が(第一非ねじ部162Fの直径D(2)よりも直径の小さい)第二非ねじ部162Sの直径D(4)の部分で保持されている。第一非ねじ部162Fの直径D(2)よりも第二非ねじ部162Sの直径D(4)が小さいために、第一止水状態よりも第二止水状態の方が止水状態は強い。
【0024】
図4(D)に示すように、プラグ200を回転させることによりプラグ200の上端面220の高さ位置が分岐管部150の開口上面158の高さ位置と略一致するまで、プラグ雄ねじ部204を管部雌ねじ部154に螺合させてプラグ200を分岐管部150に挿入した後に、二点鎖線で示すようにキャップ300のキャップ雌ねじ部302を分岐管部150の管部雄ねじ部152に螺合させると、キャップ環状パッキン156Pがキャップ300の内周面304と分岐管部150の外周面157とに圧接されて、第二止水状態よりも止水状態がさらに強い第三止水状態になる。
【0025】
なお、このように(キャップ300を装着する前に)プラグ200を人手により容易に回転させるために、プラグ200の上端面220には、プラグ200を回転させるための治具(図示しない)が取り外し可能に挿入されるプラグ孔230を備える。プラグ孔230の上端面220からの深さ寸法L(7)は、プラグ孔230の方がプラグパッキン保持部256の位置よりも深い。より詳しくは、プラグ200の上端面220からのプラグ孔230の深さ寸法L(7)は、プラグ孔230の上端面220からのプラグパッキン保持部256の深さ寸法(L(31)+L(33)/2)よりも大きく、プラグ孔230下端がプラグパッキン保持部256よりも下方に位置する。
【0026】
さらに詳しくは、このプラグ孔230は、その開口側(上端面220側)に大径部232を備え、プラグパッキン保持部256の位置は、この大径部232より下方である。より詳しくは、この大径部232は、内径D(5)の大径部自体と後述するトルク伝達領域236(内径D(7))へ続く面取り部233とから形成されている。プラグ孔230の上端面220からのプラグパッキン保持部256の深さ寸法(L(31)+L(33)/2)は、大径部232における大径部自体の深さ寸法L(91)または面取り部233を含む深さ寸法L(9)よりも大きく、プラグ孔230の大径部232がプラグパッキン保持部256よりも上方に位置する。
【0027】
このように、プラグパッキン保持部256の深さ寸法(L(31)+L(33)/2)は、プラグ200の上端面220からのプラグ孔230の深さ寸法L(7)よりも小さく、および/または、大径部232における大径部自体の深さ寸法L(91)または面取り部233を含む深さ寸法L(9)よりも大きい。
なお、このプラグ孔230は、その下端にも下端大径部234(内径D(9))を備え、開口側の大径部232と下端大径部234との間のトルク伝達領域236において、プラグ200を回転させるための治具からのトルクを受ける。
【0028】
以上のような構造を備えた、分岐サドル継手100をプラグ200およびキャップ300を用いた止水手順について、図4を参照してさらに詳しく説明する。
図4(A)はプラグ雄ねじ部204と管部雌ねじ部154とが螺合を開始する状態を、図4(B)はプラグ200が回転されてプラグ雄ねじ部204が管部雌ねじ部154に螺合してプラグ200が下降してプラグ環状パッキン256Pが分岐管部150の第一非ねじ部162F(内径D(2))に到達した(瞬間の)状態を、図4(C)はプラグ200がさらに回転されてプラグ雄ねじ部204が管部雌ねじ部154にさらに螺合してプラグ
200がさらに下降してプラグ環状パッキン256Pが分岐管部150の第二非ねじ部162S(内径D(4))に到達した(瞬間の)状態を、図4(D)はプラグ200がさらに回転されてプラグ雄ねじ部204が管部雌ねじ部154にさらに螺合してプラグ200がさらに下降してプラグ200の上端面220の高さ位置が分岐管部150の開口上面158の高さ位置と略一致した螺合完了の状態を、それぞれ示す。
【0029】
上述した通り、第一止水状態は図4(B)に示す状態と図4(C)に示す状態との中間状態であって、第二止水状態は図4(D)に実線で示す状態(または図4(C)に示す状態と図4(D)に実線で示す状態との中間状態)であって、第三止水状態は図4(D)に実線で示す状態に加えて二点鎖線で示す状態である。
ここで、図4(A)に示す状態(第二雄ねじ部204が管部雌ねじ部154に当接した状態)からプラグ200が回転数N(1)だけ回転されると、プラグ環状パッキン256Pが第一非ねじ部162Fに到達し始める図4(B)に示す状態に移行する。次に、図4(B)に示す状態(プラグ環状パッキン256Pが第一非ねじ部162Fに到達し始める状態)からプラグ200が回転数N(2)だけさらに回転されると、プラグ環状パッキン256Pが第二非ねじ部162Sに到達し始める図4(C)に示す状態に移行する。
【0030】
このとき、いずれの回転数N(1)も回転数N(2)も、5回転以下である。さらに、回転数N(1)=3~5であって、回転数N(2)=2~4である。このような回転数であると、作業者が負担に感じない回数であるために好ましい。
なお、プラグ200の露出長およびプラグ雄ねじ部204と管部雌ねじ部154との螺合長は図示した通りである。
【0031】
次に、図5を参照して、本管側が不断水状態であっても本管側を流れる水が分岐管側へ流入することを止める(開栓状態のプラグ200を閉栓状態に変更する)手順について説明する。なお、図5はプラグ200を閉栓状態に変更した状態の断面図であって、図5(A)が全体図、図5(B)が図5(A)における5B部分の拡大図、図5(C)が図5(B)における5C部分の拡大図である。
【0032】
図4(D)の実線に示す状態(すなわちキャップ300で分岐管部150の上方の開口150Hがキャップ300により封止されていない状態)で、プラグ200をさらに回転させて、図5(C)の白抜き矢示で示すように、分岐管部150の座部170にプラグ200の当接部270が当接するまで下降させる。この場合において、座部170および/または当接部270を圧着により容易に変形する易変形性を備えた素材で形成することにより、プラグ200を下降させて当接部270を座部170に押し当てることによって変形してつぶれた座部および/または当接部との間で本管から流入する水を止水することができる。
【0033】
<実施例>
以下に一例であるが、本管の呼び径が75、100、150であって、分岐管の呼び径が50である場合の寸法の一例を示す。なお、寸法公差は記載していないとともに一部の数値については四捨五入している場合がある。
D(1):プラグ雄ねじ部204の規格径(M50×P2)
D(3)=44.2mm
D(5)=24mm
D(7)=PCD17mm(6×N(N=4)キリのセンター位置)
D(9)=21mm
D(11)=43.5mm
D(13)=47.6mm
LP=75mm
L(1)=50mm
プラグ雄ねじ部204の長さ(M50×P2)
(プラグパッキン保持部256には雄ねじ部なし)
L(3)=14mm(L(31)=9mm、L(33)=5mm)
L(5)=6mm
L(7)=40.5mm
L(9)=9mm(L(91)=7mm、L(93)=2mm)
L(11)=6mm
プラグ環状パッキン:P42規格
D(2)=50.9mm
D(4)=50.1mm
D(6)=41mm
D(12)=D(11)に対応
D(14)=D(13)に対応
L(2)=30mm
L(4)=6mm
L(6)=9mm
L(8)-L(2):管部雌ねじ部154の長さ(M50×P2)
(分管孔190Hには雌ねじ部なし)
L(10)=132mm
キャップ環状パッキン:P56規格
t(2)=3.1mm
t(4)=7.7mm
【0034】
以上のようにして、この分岐サドル継手100(およびプラグ200)によると、本管から岐管に流水させている(プラグ200が開栓状態である)止水状態において、キャップ環状パッキン156Pおよびプラグ環状パッキン256Pにより止水されている。このとき、キャップ環状パッキン156Pとプラグ環状パッキン256Pとは、分岐管部150の管中心軸に沿った高さ方向が(より詳しくは距離Gだけ)異なる位置であって、プラグ環状パッキン256Pは、キャップ環状パッキン156Pよりも高さ位置が(距離Gだけ)低い。さらに、このような止水状態において、プラグ環状パッキン256Pが圧接される分岐管部(より詳しくは分岐管部150の内周面の一部である第二非ねじ部162S)の肉厚t(4)は、キャップ環状パッキン156Pが圧接される分岐管部150(より詳しくは分岐管部150の外周面157)の肉厚t(2)よりも厚い。しかも、キャップ環状パッキン156Pは、キャップ300の内周面304と分岐管部150の外周面157とに圧接されているために、本管側からの水圧は分岐管部150本体の鉛直上方へ向けて作用してキャップ300に上方へ力が作用して螺合しているキャップ300が上方への力を受けたとしても雌ねじ筒部の上端面に圧接されているのではなく(上下方向に圧接されているのではなく)キャップ300の内周面304と分岐管部150の外周面157とに圧接されているために(径方向に圧接されているために)キャップ環状パッキン156Pの止水性が低下することを抑制することができる。
【0035】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、合成樹脂製の本管から分岐を取り出すために本管の外周面に電気融着接合される分岐サドル継手に好ましく、本管から岐管に流水させている(プラグ開栓状態の)ときに良好な止水性能を実現させることができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0037】
100 分岐サドル継手
110 サドル部
150 分岐管部
190 枝管部
200 プラグ
300 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5