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特許7404063刃先調整装置、塗工装置、塗工装置の刃先調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】刃先調整装置、塗工装置、塗工装置の刃先調整方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20231218BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019233298
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021102177
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】當麻 隼也
(72)【発明者】
【氏名】見津 葵樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 賀規
(72)【発明者】
【氏名】隈下 翔五
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-018340(JP,A)
【文献】特開2003-275652(JP,A)
【文献】特開2019-107606(JP,A)
【文献】特開2010-201404(JP,A)
【文献】特開平10-337519(JP,A)
【文献】特許第3777404(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイの先端にある刃先に当接される測定子によって、前記刃先の位置を測定する測定手段と、
前記測定手段を前記ダイに固定する固定部材と、
を有し、
前記ダイは、ウエブが前後方向に下周面を走行するバックアップロールの下方に配され、前記ウエブに第1塗工液と第2塗工液とを積層して塗工する積層ダイであって、
第1本体と、
前記第1本体の後面に組み合わさり、縦断面三角形に形成された中間本体と、
前記中間本体の後面に組み合わさる第2本体と、
を含み、
前記第1本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第1刃先が形成され、
前記中間本体の上部の先端部に、上面が平面形状の中間刃先が形成され、
前記第2本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第2刃先が形成され、
前記第1刃先と前記第2刃先の間に、前記中間刃先が配され、
前記測定子は、前記第1刃先と前記中間刃先と第2刃先に当接されている、
刃先調整装置。
【請求項2】
ダイの先端にある刃先に当接される測定子によって、前記刃先の位置を測定する測定手段と、
前記測定手段を前記ダイに固定する固定部材と、
を有し、
前記ダイは、ウエブが前後方向に下周面を走行するバックアップロールの下方に配され、前記ウエブに塗工液を塗工するダイであって、
第1本体と、
前記第1本体の後面に組み合わさる第2本体と、
を含み、
前記第1本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第1刃先が形成され、
前記第2本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第2刃先が形成され、
前記測定子は、前記第1刃先と第2刃先に当接されている、
刃先調整装置。
【請求項3】
前記測定手段は、ダイヤルゲージ、又はデジタルゲージである、
請求項1又は2に記載の刃先調整装置。
【請求項4】
ウエブが前後方向に下周面を走行するバックアップロールと、
前記バックアップロールの下方に配され、前記ウエブに第1塗工液と第2塗工液とを積層して塗工する積層ダイと、
を有した塗工装置において、
前記積層ダイは、
第1本体と、
前記第1本体の後面に組み合わさり、縦断面三角形に形成された中間本体と、
前記中間本体の後面に組み合わさる第2本体と、
前記第1本体の後面に設けられた前記第1塗工液の第1液溜め部と、
前記第1液溜め部から前記第1本体と前記中間本体の間にある前記第1塗工液の第1液通路と、
前記第1液通路の上端にあるスリット状の前記第1塗工液の第1吐出口と、
前記第1本体と前記中間本体に挟まれた第1シムと、
前記第2本体の前面に設けられた前記第2塗工液の第2液溜め部と、
前記第2液溜め部から前記中間本体と前記第2本体の間にある前記第2塗工液の第2液通路と、
前記第2液通路の上端にあるスリット状の前記第2塗工液の第2吐出口と、
前記中間本体と前記第2本体に挟まれた第2シムと、
刃先調整装置と、
を有し、
前記第1本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第1刃先が形成され、
前記中間本体の上部の先端部に、上面が平面形状の中間刃先が形成され、
前記第2本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第2刃先が形成され、
前記第1刃先と前記第2刃先の間に、前記中間刃先が配され、
前記刃先調整装置は、
前記第1刃先と前記中間刃先と前記第2刃先に当接される測定子によって、前記第1刃先と前記中間刃先と前記第2刃先の位置を測定する測定手段と、
前記測定手段を前記積層ダイに固定する固定部材と、
を有する塗工装置。
【請求項5】
前記第1本体の後面に前記中間本体が固定され、
前記中間本体の後面に前記第2本体が固定されている、
請求項に記載の塗工装置。
【請求項6】
請求項に記載の塗工装置の刃先調整方法であって、
前記固定部材を用いて前記測定手段を前記第1本体に固定し、
前記第1刃先と前記中間刃先と第2刃先に前記測定子を当接して、前記第1刃先と前記中間刃先と第2刃先の位置を予め設定した基準位置に調整する、
塗工装置の刃先調整方法。
【請求項7】
請求項に記載の塗工装置の刃先調整方法であって、
前記固定部材を用いて前記測定手段を前記第1本体に固定し、
前記第1刃先の位置を予め設定した基準位置に調整し、
前記中間刃先を前記測定子に当接しつつ、前記基準位置より高い位置に上昇させ、その後に前記中間刃先を前記基準位置に戻す、
塗工装置の刃先調整方法。
【請求項8】
前記中間刃先の位置を前記基準位置に調整した後に、
前記第2刃先を前記測定子に当接しつつ、前記基準位置より高い位置に上昇させ、その後に前記第2刃先を前記基準位置に戻す、
請求項に記載の塗工装置の刃先調整方法。
【請求項9】
前記中間刃先と前記第2刃先を前記測定子に当接しつつ、前記中間刃先と前記第2刃先を、前記基準位置より高い刃先設置位置に上昇させる、
請求項6又は8に記載の塗工装置の刃先調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先調整装置、その刃先調整装置を有する塗工装置、その塗工装置の刃先調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗工液をウエブに塗工するダイの先端は、三角状に尖り、その先端に刃先が形成されている。そして、刃先の間にある吐出口から塗工液を吐出し、バックアップロールなどで搬送されているウエブに塗工液を塗工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-337519号公報
【文献】特許第3777404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吐出口の両側にある刃先の位置がずれると、目的の塗工厚でウエブに塗工液を塗工できないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、吐出口の両側にある刃先の位置を、目的の位置に簡単に調整できる刃先調整装置、塗工装置、塗工装置の刃先調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の実施形態は、ダイの先端にある刃先に当接される測定子によって、前記刃先の位置を測定する測定手段と、前記測定手段を前記ダイに固定する固定部材と、を有し、前記ダイは、ウエブが前後方向に下周面を走行するバックアップロールの下方に配され、前記ウエブに第1塗工液と第2塗工液とを積層して塗工する積層ダイであって、第1本体と、前記第1本体の後面に組み合わさり、縦断面三角形に形成された中間本体と、前記中間本体の後面に組み合わさる第2本体と、を含み、前記第1本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第1刃先が形成され、前記中間本体の上部の先端部に、上面が平面形状の中間刃先が形成され、前記第2本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第2刃先が形成され、前記第1刃先と前記第2刃先の間に、前記中間刃先が配され、前記測定子は、前記第1刃先と前記中間刃先と第2刃先に当接されている、刃先調整装置である。
【0007】
本発明の第2の実施形態は、ダイの先端にある刃先に当接される測定子によって、前記刃先の位置を測定する測定手段と、前記測定手段を前記ダイに固定する固定部材と、を有し、前記ダイは、ウエブが前後方向に下周面を走行するバックアップロールの下方に配され、前記ウエブに塗工液を塗工するダイであって、第1本体と、前記第1本体の後面に組み合わさる第2本体と、を含み、前記第1本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第1刃先が形成され、前記第2本体の上部の先端部に、上面が平面形状の第2刃先が形成され、前記測定子は、前記第1刃先と第2刃先に当接されている、刃先調整装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、刃先調整装置の固定部材を用いて測定手段をダイに固定し、この測定手段に含まれている測定子をダイの先端にある刃先に当接させ、この測定子によって刃先の位置を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す塗工装置の側面図である。
図2】塗工装置の背面図である。
図3】積層ダイの分解斜視図である。
図4】支持部材の斜視図である。
図5】積層ダイの縦断面図である。
図6】積層ダイの刃先の拡大縦断面図である。
図7】刃先調整装置の斜視図である。
図8】刃先調整装置を付けた状態の積層ダイの縦断面図である。
図9】3個の刃先調整装置を取り付けた状態の積層ダイの前面図である。
図10】第3の調整工程の拡大縦断面図ある。
図11】第4、第5の調整工程の拡大縦断面図ある。
図12】第6、第7の調整工程の拡大縦断面図ある。
図13】第8の調整工程の拡大縦断面図ある。
図14】変更例1の調整工程の拡大縦断面図ある。
図15】刃先調整装置を付けた状態の変更例2の積層ダイの縦断面図である。
図16】刃先調整装置を付けた状態の変更例4のダイの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの塗工装置10と、その塗工装置10の刃先調整装置150について図1図14を参照して説明する。長尺状のウエブWとしては、フィルム、金属箔、金属メッシュ、紙、布帛などである。また、本実施形態の塗工装置10は、ウエブWに対し異なる第1塗工液と第2塗工液を積層して塗工するものである。ここで異なる塗工液とは、互いに全く成分の異なる塗工液でなく、成分は同じであるが粘度が異なる塗工液も含まれるものとする。
【0011】
(1)塗工装置10
塗工装置10の構成について、図1を参照して説明する。塗工装置10は、図1に示すように、所定の回転速度で回転するバックアップロール12と、バックアップロール12の下方に配された積層ダイ14と、積層ダイ14の下方に配されたベンド装置16とを有している。バックアップロール12の回転軸18は水平方向に配され、ウエブWがバックアップロール12の下周面を前進で走行する。
【0012】
(2)積層ダイ14
次に、積層ダイ14の構造について図1図6を参照して説明する。積層ダイ14の基部20は、直方体であり、ウエブWの幅方向、すなわち、左右方向に延びている。この基部20の上面前部から第1本体22が一体に立設されている。第1本体22の後方には第1シム70、中間本体24が配され、中間本体24の後方には第2シム80、第2本体26が配されている。以下各部材について順番に説明していく。
【0013】
図3図5に示すように、第1本体22の前面は垂直面であり、上面は前方ほど下方に傾斜した第1傾斜面30が形成されている。第1傾斜面30の上端部、すなわち第1本体22の後面上端部には図6に示すように、第1刃先34が左右方向に延びている。この第1刃先34の上面は平面形状である。図3図5に示すように、第1本体22の後面は垂直面であり、第1液溜め部32が左右方向に延びている。第1液溜め部32の左右方向における中央部には第1塗工液が供給される第1供給口36が水平方向に貫通している。第1本体22の左右一対の側面には、図1図3に示すように、左右一対の支持軸38,38が左右方向に突出している。
【0014】
中間本体24は、図3図5に示すように、第1本体22の後方に第1シム70を挟んで配され、縦断面形状が図1に示すように三角状であり、上部に行くほど細くなっている。中間本体24の上端部は、図6に示すように左右方向に延びた中間刃先40が形成されている。この中間刃先40の上面は平面形状である。中間本体24は、第1本体22と一体となった基部20の後部の上方に配され、図1に示すように、複数の第1締結ボルト90で固定されている。そして、図5に示すように、この基部20の後部には、左右方向に沿って所定間隔毎に第1押圧ネジ孔41が上下方向に貫通している。第1押圧ボルト42が、第1押圧ネジ孔41を上下方向に貫通し、その上端が中間本体24の下面に当たり支持している。
【0015】
図2図3図5に示すように、基部20の後面には、左右方向に沿って所定間隔毎に複数(図面では4個)の支持部材28がボルトによって着脱自在に固定されている。支持部材28は、図4に示すように直方体のブロック44と、ブロック44の幅方向における中央から斜め上方に後方に向かって突出した支持突出部46からなる。この支持突出部46は直方体であり上面が平らである。ブロック44には左右一対のボルト孔48が前後方向に貫通し、図2に示すように固定ボルト49によって基部20の後面に固定される。また、ブロック44の上端部にはフランジ部50が前方に延設されている。このフランジ部50は、基部20の後端部上端に載置される。支持突出部46には、ボルト孔52とボルト孔54が貫通している。
【0016】
図2図3図5に示すように、中間本体24の後方に第2シム80を挟んで配された第2本体26は、直方体であって、斜めに傾斜して伸びた支持突出部46の上方に配される。第2本体26の上部であって、前上端部から後上端部に向かって第2傾斜面60が形成されている。第2本体26の上端部、すなわち、第2傾斜面60の上端部には図6に示すように第2刃先64が左右方向に設けられている。この第2刃先64の上面は平らである。第2本体26の前面は平らな面であって、中間本体24の後面と組み合わさり、第2締結ボルト100で固定される。また、第2本体26の前面には左右方向に第2液溜め部62が形成されている。左右方向に延びた第2液溜め部62の中央には第2塗工液を供給する第2供給口66がほぼ前後方向に貫通している。図5に示すように、第2本体26は、支持突出部46の上方に位置し、支持突出部46のボルト孔54に下方から螺合した第2押圧ボルト58で支持されている。また、中間本体24と第2本体26は、支持突出部46のボルト孔52に下方から螺合した中間押圧ボルト56で支持されている。第2本体26の後面には、図1図3に示すように左右一対の取手68が設けられている。
【0017】
第1シム70は、図5に示すように、第1本体22の後面と中間本体24の前面との間に配されている。第1シム70は、図3に示すように、第1液溜め部32を周囲に配されるものであり、第1液溜め部32の左側に配された左側部72、右側に配された右側部74、下部に配された下側部76とが一体となった形状となっている。この第1シム70には、所定間隔毎にシム孔78が貫通している。
【0018】
第2シム80は、図5に示すように、中間本体24の後面と第2本体26の前面との間に配されている。第2シム80は、図3に示すように、第2液溜め部62を周囲に配されるものであり、第2液溜め部62の左側に配された左側部82、右側に配された右側部84、下側に配された下側部86とが一体となった形状となっている。この第2シム80には、所定間隔毎にシム孔88が開口している。
【0019】
第1本体22、第1シム70、中間本体24は、複数の第1締結ボルト90によって一体に固定されている。第1締結ボルト90は、第1本体22の左右両側に設けられた第1締結孔92、第1シム70に設けられたシム孔78、中間本体24の前面に設けられた中間第1締結孔に螺合される。なお、第1締結ボルト90の頭が突出しないように、第1締結孔92は第1本体22の前面に座繰りされている。
【0020】
第2本体26、第2シム80、中間本体24は、複数の第2締結ボルト100によって一体に固定されている。第2締結ボルト100は、第2本体26に設けられた第2締結孔102、第2シム80に設けられたシム孔88、中間本体24の後面に設けられた中間第2締結孔104に螺合される。なお、第2締結ボルト100の頭が突出しないように、第2締結孔102は第2本体26の後面に座繰りされている。
【0021】
(3)ベンド装置16
次に、ベンド装置16と積層ダイ14の関係について説明する。
【0022】
ベンド装置16は、積層ダイ14の下方に設けられたほぼ直方体であり、上面の左右両側部から左右一対の腕部110,110が立設されている。一方、第1本体22の左右両側部から支持軸38が突出しているため、この支持軸38を腕部110が回転自在に支持している。
【0023】
ベンド装置16内部には、上下動部112設けられ、この上下動部112の上端部には、円柱型のダイ押圧部114が設けられている。上下動部112が有するコッターが水平に移動して、ダイ押圧部114を上下動させる。
【0024】
(4)積層ダイ14の組み立て方法
次に、積層ダイ14の組み立て方法について説明する。
【0025】
ベンド装置16の上面から突出した左右一対の腕部110,110の間に第1本体22を取り付ける。
【0026】
次に、基部20の後面に、左右方向に間隔を開けて支持部材28を複数取り付ける。この場合に、支持部材28のブロック44の後端部にあるフランジ部50が、基部20の後端部に乗るようにし、ボルト孔48に固定ボルト49を螺合して基部20に固定する。
【0027】
次に、第1本体22に、第1シム70を挟んで中間本体24を配する。そして、複数の第1締結ボルト90で第1本体22、第1シム70、中間本体24を一体に固定する。この場合に、中間本体24は、基部20の上方に位置している。
【0028】
次に、中間本体24に、第2シム80を挟んで第2本体26を配する。このときに、第2本体26には左右一対の取手68が設けられているため、作業者はこの取手68を持って第2シム80を持ちやすい。そして、複数の第2締結ボルト100で第2本体26、第2シム80、中間本体24を一体に固定する。これによって、第1本体22、中間本体24、第2本体26が、第1シム70と第2シム80を挟持した状態で一体に固定される。
【0029】
次に、第1締結ボルト90と第2締結ボルト100を若干緩め、第1押圧ボルト42、中間押圧ボルト56、第2押圧ボルト58を上下動させて、第1刃先34、中間刃先40、第2刃先64が図6に示すように同一面上、即ち水平になるように調整する。その前、第1締結ボルト90と第2締結ボルト100を締めて固定する。
【0030】
これにより、第1液溜め部32の上方であって、第1本体22と中間本体24との間には第1液通路120が形成され、その上端部がスリット状の第1吐出口122が形成される。第2液溜め部62の上方であって中間本体24と第2本体26の間に第2液通路124が形成され、その上端部にはスリット状の第2吐出口126が形成される。
【0031】
(5)バックアップロール12、積層ダイ14、ベンド装置16の位置関係
バックアップロール12、積層ダイ14、ベンド装置16の位置関係について図1図5図6を参照して説明する。
【0032】
図6に示すように、積層ダイ14の第1本体22の第1刃先34の上面の前部を、回転軸18の中心Oの真下に位置させている。このようにすると、第1刃先34の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔が最も接近し、この接近した位置が最も塗工圧がかかることになる。そのため、この最も塗工圧の高い位置で塗工する。すなわち、第1刃先34の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔が、塗工間隔となり、塗工厚が決定される。特に、第1刃先34の上面と第2刃先64の上面を同じ高さに設定されているのでウエブWがスムーズに走行する。また、図6に示すように、第2刃先64の上面の後部とバックアップロール12の下周面との間隔をA、第2刃先64の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔をB、中間刃先40の上面の後部と下周面との間隔をC、中間刃先40の上面の前部と下周面との間隔をD、第1刃先34の上面の後部と下周面との間隔をE、第1刃先34の上面の前部と下周面との間隔をFとすると、A>B>C>D>E>Fとなり、ウエブWにかかる塗工圧が次第に上昇し、Fの最も塗工圧が高い位置で塗工できる。
【0033】
一方、第1吐出口122、第2吐出口126から吐出される第1塗工液、第2塗工液の圧力によって、積層ダイ14の上端部が、左右方向の中央ほど下方に湾曲する。この湾曲を防止するため、ベンド装置16のダイ押圧部114によって、積層ダイ14の基部20の下面を押圧する。本実施形態では、図2に示すように、このダイ押圧部114の押圧位置は、左右方向の中央であって、かつ、図5に示すように、前後方向においてはバックアップロール12の回転軸18の中心Oの真下の位置としている。なぜ、バックアップロール12の回転軸18の中心Oの真下の位置を押圧するかを説明する。上記したように、バックアップロール12の回転軸18の中心Oの真下の位置に対応する第1刃先34の上面の前部とバックアップロール12の下周面との間隔が最も接近し、この接近した位置が最も塗工圧がかかる。そのため、前後方向においてはこの部分で湾曲が最も発生しやすくなる。そこで本実施形態では、前後方向においてバックアップロール12の回転軸18の中心O(第1刃先34の上面の前部)の真下の位置を押圧して、湾曲を防止している。
【0034】
また、基部20と第1本体22をベンドさせると、第1本体22に固定された中間本体、第2本体も同時にベンドさせることができる。
【0035】
(6)刃先調整方法
塗工装置10において2層に塗工液を塗工する場合に、図6に示すような第1刃先34の上面と中間刃先40の上面と第2刃先64の上面とを面一に調整する必要がある。図7に示す刃先調整装置150を用いる刃先調整方法について説明する。
【0036】
まず、この刃先調整装置150について説明する。刃先調整装置150は、固定部材152と、この固定部材152に設けられている測定装置154とよりなる。
【0037】
金属製の固定部材152は逆L字状であって、縦部材156と、この縦部材156の上端から水平に延びた横部材158とよりなる。縦部材156は、積層ダイ14の第1本体22の前面にボルトやネジなどによって垂直方向に固定される。また、横部材158は、縦部材156を積層ダイ14に取り付けた場合に、第1本体22と中間本体24と第2本体26の上端よりも上方に位置している。
【0038】
測定装置154は、ダイヤルゲージであって、横部材158の先端部に垂直方向に固定されている。測定装置154の表示部160は、円板状の目盛りを回転する指針を有し、この表示部160は、横部材158の先端の上方に配されている。表示部160からは下方に延びた円柱状のゲージ本体162は、横部材158を貫通している。円筒状のゲージ本体162の下部には、直線状に上下動する測定子164が設けられている。この測定子164が上下動することによって、表示部160においてその上下動した距離が表示される。測定子164の下面の大きさは、第1刃先34の上面、中間刃先40の上面、第2刃先64の上面の全てに接触できる大きさである。
【0039】
この刃先調整装置150を用いて、第1刃先34、中間刃先40、第2刃先64の上面を同一平面上に調整する方法について説明する。まず、積層ダイ14の上方に配するバックアップロール12を、積層ダイ14から外れた位置に移動させておく。
【0040】
第1に、刃先調整装置150の縦部材156を第1本体22の前面にボルトで垂直方向に取り付ける。この場合に、図9に示すように、刃先調整装置150を、第1本体22の両側部と中央部の合計3カ所にそれぞれ取り付ける。
【0041】
第2に、第1本体22の高さを、所定の高さになるように腕部110,110の高さを調整して設定する。
【0042】
第3に、刃先調整装置150の先端に設けられた測定装置154の測定子164を、図10に示すように、第1本体22の第1刃先34の上面に当接させる。測定子164のこの位置が、基準位置の高さとなる。なお、中間刃先40、第2刃先64は、この基準位置よりも低い位置に下げておく。これにより、第1刃先34の調整に障害とならない。
【0043】
第4に、第1本体22に設けられている第1押圧ボルト42を調整することにより中間本体24を上昇させ、基準位置にある測定子164に、図11の2点鎖線に示すように、中間刃先40を当接させそのまま測定子164を押し上げる。なお、第2刃先64は、この基準位置よりも低い位置に下げておく。これにより、中間刃先40の調整に障害とならない。
【0044】
第5に、第1押圧ボルト42を調整して、図11の実線に示すように、中間本体24を下げていき、それと共に測定子164が下がって、基準位置になった位置で中間本体24を固定する。
【0045】
第6に、支持突出部46にある第2押圧ボルト58を調整することにより、図12の2点鎖線に示すように、第2本体26を上昇させ、基準位置にある測定子164に、第2刃先64を当接させ、そのまま測定子164を押し上げる。
【0046】
第7に、第2押圧ボルト58を調整して、第2本体26を下げていき、それと共に測定子164が下がって、図12の2点鎖線に示すように、基準位置になった位置で第2本体26を固定する。
【0047】
第8に、図13に示すように、第1刃先34、中間刃先40、第2刃先64が同一面上に固定できる。その後、刃先調整装置150を、第1本体22から取り外し、バックアップロール12を所定の位置に移動させる。これによって、ウエブWに塗工を行うことができる。
【0048】
(7)塗工装置10の動作状態
塗工装置10の塗工状態について説明する。図1においてウエブWがバックアップロール12の下周面を前進(図1において右から左に走行)させる。
【0049】
まず、第1液溜め部32には、第1供給口36から第1塗工液が供給される。また、第2液溜め部62には第2供給口66から第2塗工液が供給される。
【0050】
次に、第2液溜め部62から第2液通路124、第2吐出口126を通って第2塗工液が吐出され、前進するウエブWに塗工される。
【0051】
次に、第1液溜め部32から第1液通路120を通って第1吐出口122から第1塗工液が吐出される。そして、さらに前進するウエブWに塗工された第2塗工液の上に第1塗工液が積層され塗工される。
【0052】
(8)効果
上記実施形態によれば、塗工前に、第2本体26の前面に刃先調整装置150の縦部材156を取り付け、測定装置154によって第1刃先34、中間刃先40、第2刃先64の高さが基準位置における同一平面上になるように簡単に調整できる。
【0053】
また、刃先調整装置150が、積層ダイ14の幅方向において、左側部、中央部、右側部にそれぞれ設けられているため、幅方向においても第1刃先34、中間刃先40、第2刃先64の位置がずれない。
【変更例】
【0054】
上記実施形態の変更例について説明する。
【0055】
(1)変更例1
上記実施形態では、第1刃先34、中間刃先40、第2刃先64を同一平面上にしたが、これに加えて、基準位置の第1刃先34に対し、中間刃先40と第2刃先64が基準位置より高くなるように調整できる。
【0056】
この場合には、上記実施形態で示すように、第1刃先34、中間刃先40、第2刃先64を同一平面上に調整した後、第1押圧ボルト42を用いて中間本体24と第2本体26を図14に示すように、測定装置154の指針を見ながら上昇させる。これにより第1刃先34に対し、中間刃先40と第2刃先64が基準位置より目的の刃先設定位置αだけ高くなる。
【0057】
(2)変更例2
上記実施形態では、積層ダイ14として、第1本体22の下部に基部20が設けられたものを用いたが、これに代えて図15に示すように、基部20が無く、第1本体22に中間本体24がボルトで固定され、中間本体24に第2本体26が固定された積層ダイ14であってもよい。
【0058】
(3)変更例3
上記実施形態では、第1本体22、中間本体24、第2本体26の3つからなる積層ダイ14を用いたが、これに限らず4つ以上のダイ本体を持つ積層ダイであってもよい。
【0059】
(4)変更例4
上記実施形態では、第1本体22、中間本体24、第2本体26よりなる積層ダイ14で、ウエブWに2つの塗工層を塗工したが、これに代えて図16に示すように、第1本体22と第2本体26よりなる単層の塗工層を塗工するダイ14であってもよい。この場合であっても、第1本体22と第2本体26の刃先の高さを刃先調整装置150で調整できる。
【0060】
(5)変更例5
上記実施形態では、積層ダイ14は縦向きの方向に設置されていたが、これに代えて水平、斜めに積層ダイ14を設置してもよい。
【0061】
(6)変更例6
上記実施形態では、測定装置154として、ダイヤルゲージを用いたが、これに変えて測定値をデジタルで表示するデジタルゲージであってもよい。
【0062】
(7)その他
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10・・・塗工装置、12・・・バックアップロール、14・・・積層ダイ、16・・・ベンド装置、18・・・回転軸、20・・・基部、22・・・第1本体、24・・・中間本体、26・・・第2本体、28・・・支持部材、34・・・第1刃先、40・・・中間刃先、64・・・第2刃先、70・・・第1シム、80・・・第2シム、150・・・刃先調整装置、152・・・固定部材、154・・・測定装置、156・・・縦部材、158・・・横部材、160・・・表示部、162・・・ゲージ本体、164・・・測定子.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16