(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】身体装着用保冷具およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20231218BHJP
A41D 23/00 20060101ALI20231218BHJP
A61F 7/10 20060101ALI20231218BHJP
C08J 9/12 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D23/00 D
A61F7/10 330P
A61F7/10 330S
C08J9/12 CES
(21)【出願番号】P 2019236572
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 拓嗣
(72)【発明者】
【氏名】米永 伸之
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04326533(US,A)
【文献】特開2011-038214(JP,A)
【文献】特開平10-259513(JP,A)
【文献】特開2012-040182(JP,A)
【文献】特開2015-091920(JP,A)
【文献】登録実用新案第3175214(JP,U)
【文献】登録実用新案第3182147(JP,U)
【文献】米国特許第05005374(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/005
A41D 23/00
A61F 7/10
C08J 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成されると共に、可撓変形可能な連結部を介して連結された複数の保冷部を有する蓄冷体と、
前記蓄冷体における前記保冷部に設けられ、該蓄冷体の外面を覆う断熱体と、を備え、
前記保冷部が断熱体で覆われた蓄冷体は非透水性の収容袋に収容され、該収容袋によって前記蓄冷体における前記保冷部の外面が外気から隔てられていると共に、前記蓄冷体の前記連結部が身体に巻き付けるように可撓変形可能に構成され
、
前記蓄冷体を収容した前記収容袋は脱気されている
ことを特徴とする身体装着用保冷具。
【請求項2】
帯状に形成されると共に、可撓変形可能な連結部を介して連結された複数の保冷部を有する蓄冷体と、
前記蓄冷体における前記保冷部に設けられ、該保冷部の外面を覆う断熱体と、を備え、
前記保冷部が断熱体で覆われた蓄冷体は非透水性の収容袋に収容され、該収容袋によって前記蓄冷体における前記保冷部の外面が外気から隔てられていると共に、前記蓄冷体の前記連結部が身体に巻き付けるように可撓変形可能に構成され、
前記蓄冷体を収容した前記収容袋は脱気されており、
前記蓄冷体は、樹脂フィルムからなる包材に蓄冷剤を充填したものである
ことを特徴とする身体装着用保冷具。
【請求項3】
前記保冷部が断熱体で覆われた蓄冷体を収容した前記収容袋が、布製の外袋に挿脱可能に収容されている請求項
1または2に記載の身体装着用保冷具。
【請求項4】
前記断熱体の厚みは、身体装着用保冷具を装着部位に装着する際に該装着部位を向く側より反対側を大きくした請求項1
または2に記載の身体装着用保冷具。
【請求項5】
帯状に形成されると共に、可撓変形可能な連結部を介して連結された複数の保冷部を有する蓄冷体と、
前記蓄冷体における前記保冷部に設けられ、該蓄冷体の外面を覆う断熱体と、を備え、
前記蓄冷体における前記保冷部の外面が外気から隔てられていると共に、前記蓄冷体の前記連結部が身体に巻き付けるように可撓変形可能に構成され
、
前記断熱体の厚みは、身体装着用保冷具を装着部位に装着する際に該装着部位を向く側より反対側を大きくした
ことを特徴とする身体装着用保冷具。
【請求項6】
帯状に形成されると共に、可撓変形可能な連結部を介して連結された複数の保冷部を有する蓄冷体と、
前記蓄冷体における前記保冷部に設けられ、該保冷部の外面を覆う断熱体と、を備え、
前記蓄冷体における前記保冷部の外面が外気から隔てられていると共に、前記蓄冷体の前記連結部が身体に巻き付けるように可撓変形可能に構成され、
前記蓄冷体は、樹脂フィルムからなる包材に蓄冷剤を充填したものであ
り、
前記断熱体の厚みは、身体装着用保冷具を装着部位に装着する際に該装着部位を向く側より反対側を大きくした
ことを特徴とする身体装着用保冷具。
【請求項7】
前記断熱体は、超臨界状態の流体を発泡剤として発泡させたポリオレフィン系樹脂発泡体シートからなり、厚みが0.3mm~10mm の範囲で、気泡径が5μm~250μmの範囲で、密度が20kg/m
3~100kg/m
3の範囲である請求項1~6の何れか一項に記載の身体装着用保冷具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の装着部位を冷すことができる身体装着用保冷具およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏季や熱所等の高温環境において、冷却効果や涼感効果を得るための身体装着用の保冷具が、例えば、特許文献1として提案されている。特許文献1に開示の保冷具は、アルミ蒸着シート、輻射熱カットシートおよび緩衝材を積層した保冷袋に凍った保冷体を収容すると共に、通気性や吸水性を有するポケットに保冷袋を装入し、該ポケットを使用者の首等の装着部位に巻き付けることで該装着部位を冷して、冷却効果や涼感効果を得るよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の保冷具は、保冷袋を構成する輻射熱カットシートおよび緩衝材の一部を切欠き、該切欠部から露出するアルミ蒸着シートを装着部位に直接接触させることで、保冷時間を長くするよう構成されている。しかしながら、前記保冷具は、前記切欠部からアルミ蒸着シートが外部に露出することから、保冷体と外気や装着部位との温度差によってアルミ蒸着シートの外面に結露が生じ、その結露水によってベたついて装着感が低下する問題が指摘される。また、輻射熱カットシートおよび緩衝材を切欠いているため、該切欠部での断熱性が低下して保冷体が溶け易くなり、保冷時間を長びかせる効果は低いものであった。
【0005】
すなわち本発明は、結露を防いで装着感の低下を防止すると共に、保冷時間を長くすることができる身体装着用保冷具およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の第1の手段は、
帯状に形成されると共に、可撓変形可能な連結部を介して連結された複数の保冷部を有する蓄冷体と、
前記蓄冷体における前記保冷部に設けられ、該保冷部の外面を覆う断熱体と、を備え、
前記蓄冷体における前記保冷部の外面が外気から隔てられていると共に、前記蓄冷体の前記連結部が身体に巻き付けるように可撓変形可能に構成されたことを要旨とする。
このように、蓄冷体における保冷部の外面を断熱体で覆って断熱性を高めると共に、該保冷部の外面が外気から隔てられているよう構成したので、外面に結露を生じ難く、結露に起因して装着感が低下するのを防止することができる。また、断熱性に優れるので、蓄冷体の冷熱が逃げ難く、保冷時間を長くすることができる。更に、蓄冷体は、複数の保冷部を可撓変形可能な連結部で連結した帯状に構成してあるので、装着部位の形状に合わせて蓄冷体が変形して身体装着用保冷具を装着部位に巻き付けることができ、接触面積を大きくして冷却効果や涼感効果を向上することができる。
【0007】
第2の手段は、
前記保冷部が断熱体で覆われた蓄冷体は非透水性の収容袋に収容され、該収容袋によって前記保冷部の外面が外気から隔てられていることを要旨とする。
このように、断熱体で覆われた蓄冷体を、非透水性の収容袋に収容しているので、断熱体の外面に結露が生じたとしても、その結露水が身体装着用保冷具の外面に滲み出すのを収容袋によって防止することができ、装着感が低下するのを防ぐことができる。
【0008】
第3の手段は、
前記保冷部が断熱体で覆われた蓄冷体を収容した前記収容袋が、布製の外袋に挿脱可能に収容されていることを要旨とする。
このように、保冷部が断熱体で覆われた蓄冷体を収容した収容袋を、布製の外袋に収容したことにより、良好な肌触り感や装着感を得ることができる。
【0009】
第4の手段は、
前記蓄冷体を収容した前記収容袋は脱気されていることを要旨とする。
このように、収容袋の内部は脱気されているので、収容袋内に存在する空気によって身体装着用保冷具の変形が阻害されるのを抑制することができ、身体装着用保冷具を装着部位の形状に合うように容易に変形させることができる。また、脱気された収容袋の内部は湿気も少なく、収容袋内で結露するのを抑制することができる。
【0010】
第5の手段は、
前記断熱体の厚みは、身体装着用保冷具を装着部位に装着する際に該装着部位を向く側より反対側を大きくしたことを要旨とする。
このように、断熱体は、装着部位に向く側より反対側の厚みを大きくしているので、装着時における装着部位側での結露を防止したもとで、装着時に外気に晒される装着部位側とは反対側から蓄冷体の冷熱が逃げるのを抑制することができ、保冷時間をより長くすることができる。
【0011】
第6の手段は、
前記断熱体は、超臨界状態の流体を発泡剤として発泡させたポリオレフィン系樹脂発泡体シートからなり、厚みが0.3mm~10mmの範囲で、気泡径が5μm~250μmの範囲で、密度が20kg/m3~100kg/m3の範囲であることを要旨とする。
このように、超臨界状態の流体を発泡剤として発泡させたポリオレフィン系樹脂発泡体シートからなる断熱体は、柔軟で非透水性を有するので、断熱体によって身体装着用保冷具の変形が妨げられることはなく、また断熱体の内面側に結露が生じたとしても、その結露水が外面側に滲み出すのを防ぐことができ、装着感が低下するのを防止することができる。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の第7の手段は、
帯状に形成されると共に、可撓変形可能な連結部を介して連結された複数の保冷部を有する蓄冷体に、前記保冷部の外面を覆うようにシート状の断熱体を巻き付け、
前記保冷部が断熱体で覆われた蓄冷体を、非透水性の収容袋に開口部から挿入、該収容袋の開口部を封止して密封することを要旨とする。
このように、外面に結露を生じ難く、結露に起因して装着感が低下することなく保冷時間を長くし得る身体装着用保冷具を簡単に製造することができる。
【0013】
第8の手段は、
前記収容袋の内部を脱気した状態で、前記収容袋の開口部を封止する。
このように、収容袋の内部を脱気した状態で開口部を封止することで、密封された収容袋内に存在する空気の量を少なくすることができ、内部空気によって変形が阻害され難い身体装着用保冷具を製造することができる。また、収容袋の内部を脱気することで、収容袋内における空気中に含まれる湿気も除去することができるので、収容袋内で結露し難い身体装着用保冷具を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る身体装着用保冷具およびその製造方法によれば、外面に結露が生ずるのを抑制して、装着感が低下するのを防止すると共に、保冷時間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例の身体装着用保冷具を示す概略平面図である。
【
図2】実施例の身体装着用保冷具を示す概略側面図である。
【
図3】
図2のA-A線で破断した断面を説明する模式図である。
【
図4】実施例の蓄冷体を一部破断して示す概略平面図である。
【
図5】実施例の蓄冷体の一部に断熱体を巻き付けた状態で示す概略平面図である。
【
図6】
図5のB-B線で破断した断面を説明する模式図である。
【
図7】実施例の断熱保冷体を示す概略平面図である。
【
図8】実施例の断熱保冷体を収容した収容袋の内部を脱気し、ヒートシールする状態を示す説明図である。
【
図9】実施例に係る身体装着用保冷具の装着状態を示す説明図である。
【
図10】別実施例の断熱保冷体を示す概略側面図である。
【
図11】別実施例の断熱保冷体の一部を長手方向に沿って破断した断面を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る身体装着用保冷具およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【0017】
図1~
図3に示すように、実施例の身体装着用保冷具10は、蓄冷体12と、該蓄冷体12の外面を覆う断熱体14と、該断熱体14で覆われた蓄冷体12を収容する収容袋16とを備える。実施例の身体装着用保冷具10は、更に収容袋16が挿脱可能な布製の外袋18を備え、該外袋18に、断熱体14で覆われた蓄冷体12を収容した収容袋16を収容した状態で、身体装着用保冷具10は、使用者の身体である首や頭等の装着部位に巻き付けるようにして装着される(
図9参照)。なお、以後の説明において、蓄冷体12が断熱体14で覆われたものを断熱保冷体20と指称すると共に、該断熱保冷体20が収容袋16に収容されたものを密封保冷体22と指称するものとする。
【0018】
図4に示すように、前記蓄冷体12は、柔軟な樹脂フィルムからなる包材24に蓄冷剤26を充填したものである。実施例では、一層または二層で構成された樹脂フィルムからなる包材24に蓄冷剤26を充填した後、ウェルダー加工やヒートシール加工等により充填口を封止すると共に、長手方向の複数箇所を短手方向に封止することで、蓄冷剤26が充填されている複数の保冷部24aが、シール加工等によって形成された連結部24bを介して連結された帯状の連包形態に形成されている。連結部24bには蓄冷剤26が存在しないので可撓変形が容易であり、装着部位に身体装着用保冷具10を装着する際には、該装着部位の形状に合わせて連結部24bが可撓変形することで蓄冷体12が変形し、装着部位に対する身体装着用保冷具10の接触面積を大きくし得る。前記包材24の素材としては、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン等、冷却によっても柔軟性が損なわれないフィルムであれば、公知の各種素材を用いることができる。なお、包材24を構成するフィルムの厚みは、50~150μm程度が好ましい。50μmよりも薄いと破れる恐れがあり、また150μmよりも厚いと柔軟性が低下する。
【0019】
前記蓄冷剤26としては、例えば、水、アルコール、カルボキシメチルセルロース等が混合されて、冷却状態においても可撓性を有するゲル状のものが好適に用いられるが、冷却状態において凍結するものであってもよい。なお、蓄冷剤26は、前記密封保冷体22を冷蔵庫や冷凍庫に収納することで冷されて冷却状態とすることができる。
【0020】
前記断熱体14としては、断熱性および柔軟性を有するシート状の素材が用いられる。実施例では、
図3、
図7に示すように、シート状の断熱体14を前記蓄冷体12における各保冷部24aの外側に夫々巻き付けて、該蓄冷体12における全ての保冷部24aの外面を断熱体14で覆った状態で、身体装着用保冷具10を装着部位に装着する際に該装着部位を向く第1面側Nでは断熱体14が1重となると共に、該第1面側Nとは反対の第2面側Sでは断熱体14が3重に重なるよう構成されて、身体装着用保冷具10における第1面側Nより第2面側Sの断熱体14の厚みが大きくなるようにしてある。すなわち、身体装着用保冷具10を装着部位に装着した状態で、装着部位に接触する側での断熱性を維持すると共に、装着時に外気に晒される側での断熱性を高めて、蓄冷体12の冷熱が逃げるのを抑制し得るよう構成される。また、実施例の身体装着用保冷具10は、
図5、
図6に示すように、前記断熱体14を、蓄冷体12における各保冷部24a毎に分割して巻き付けて、隣り合う保冷部24a,24aを連結する連結部24bの一部を覆わないようして、該連結部24bでの可撓変形を阻害しないよう構成される。
【0021】
ここで、実施例では、前記断熱体14として、超臨界状態の流体を発泡剤として発泡させる超臨界法によって得られる独立気泡構造のポリオレフィン系樹脂発泡体をシート状に形成した発泡体シートが用いられている。このような超臨界法による断熱体14は、互いに独立した微細な気泡を有しているので、非透水性があり、また0.028W/m・k以下の低い熱伝導率を達成することができ、断熱性の観点から好ましいものである。断熱体14は、厚みが0.3mm~10mmの範囲にあることが好ましい。すなわち、厚みが0.3mm未満であると、実施例のように身体装着用保冷具10の第1面側Nの断熱体14が1重である構成では充分な断熱効果が得られ難くなる一方で、厚みが10mmより大きいと、身体装着用保冷具10の第2面側Sで断熱体14が3重で重なる構成では断熱体14の厚さが嵩み、身体装着用保冷具10が大型化するおそれがある。断熱体14は、下記方法で測定した気泡径が300μm以下、より好適には5μm~250μmの範囲にあることが好ましく、このように気泡径が微細なことで断熱性を向上させることができる。なお、気泡径は、断熱体14の厚み中央をスライスして形成された中央部における断面をマイクロスコープにより撮影し、得られた画像から気泡の直径を30個測定し、その平均した値(μm)である。
【0022】
また、断熱体14は、JIS K7112に準拠して測定した密度が、20kg/m3~100kg/m3の範囲であることが好ましく、より好ましくは25kg/m3~50kg/m3の範囲であり、このような密度の断熱体14を用いることで、軽量かつ柔軟性に優れた身体装着用保冷具10とし得る。なお、前記条件を満たす発泡体シートとして、例えば、超臨界法によって得られる独立気泡構造のポリオレフィン系(特にPP(ポリプロピレン系))の発泡体をシート状に形成した、株式会社イノアックコーポレーション製の商品名FOLECがあり、該発泡体シートを断熱体14として用いることができる。また、断熱体14としては、超臨界法によらない軟質ウレタンフォームを用いることができる。
【0023】
前記収容袋16は、非透水性でヒートシール性を有する樹脂フィルムから筒状に形成されたものであって、開口部16aから前記断熱保冷体20を挿入した後に、該開口部16aをヒートシール(封止)することで密封されている。実施例の身体装着用保冷具10は、断熱保冷体20を収容袋16に収容して密封することで、前記蓄冷体12における全ての保冷部24aの外面を外気から隔てるよう構成される。また、収容袋16の内部は脱気されて、袋内の空気および湿気が低減されている。収容袋16の素材としては、前記蓄冷体12を構成する包材24と同様に、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン等、冷却によっても柔軟性が損なわれないフィルムであれば、公知の各種素材を用いることができる。
【0024】
図1、
図2に示すように、前記外袋18は、前記密封保冷体22を挿入可能な挿入口28aが形成された袋本体28と、該袋本体28に設けられた連結手段30とを備える。実施例の挿入口28aは、袋本体28の長手方向に沿って形成された切れ目からなり、該切れ目を開いて袋本体内に密封保冷体22を挿入するよう構成される。なお、挿入口28aは、袋本体28の短手方向に沿って形成された切れ目等、帯状となっている密封保冷体22を袋本体28に挿脱可能な各種の形態を採用することができる。使用者の装着部位に接触する外袋18を布製とすることで、樹脂フィルム(収容袋16)が装着部位に直接接触しないので装着時における肌触り感が良好となる。
【0025】
前記連結手段30は、袋本体28における長手方向の端部から延出する帯片30a,30aと、係合手段としての面ファスナー30b,30bとから構成されている。この実施形態では、袋本体28における長手方向の両端部に帯片30aが設けられると共に、各帯片30aに面ファスナー30bが設けられており、該面ファスナー30bによって帯片30a同士を連結することで、身体装着用保冷具10を装着部位に巻き付けた状態で固定し得るようになっている(
図9参照)。なお、面ファスナー30b,30bは、帯片30aの一方に設けられた複数のフックを有するフック面部と、帯片30aの他方に設けられた複数のループを有するループ面部とから構成されて、フックとループとを係合することで連結する公知の係合手段である。また、少なくとも片方の面ファスナー30bを、該袋本体28の長手方向に所定長さで延在するように設けるようにすることで、装着部位の外形寸法に応じて両面ファスナー30b,30bの係合位置を変えることで、該装着部位に身体装着用保冷具10をフィットさせることができる。ここで、帯片30aの一方を省略して、面ファスナー30bを袋本体28に設けることも可能である。また、係合手段としては、面ファスナー30b,30bの他に、ボタンと孔、フックと係合部等の組み合わせからなる各種の係合手段を用いることができる。すなわち、連結手段30は、身体装着用保冷具10を装着部位に巻き付けた状態で固定し得る形態であれば、各種の構成を採用可能である。
【0026】
次に、実施例に係る身体装着用保冷具10の製造方法について説明する。樹脂フィルムからなる包材24に連結部24bで連結された複数の保冷部24aの夫々に蓄冷剤26が充填されている連包形態の蓄冷体12(
図4参照)を用意する。また、保冷部24aの全部および該保冷部24aを隣接する保冷部24aに連結する連結部24bの一部を覆い得る幅で、保冷部24aを略2重に巻くことができる長さの帯状の断熱体14を保冷部24aの数と同数だけ容易し、該帯状の断熱体14を、
図5に示すように、蓄冷体12における保冷部24aに対応する位置の外側に巻き付ける。この場合に、帯状の断熱体14における長手方向の一端側を略保冷部24aの幅分だけ折り返して2重となるように重ね合わせ、該折り返した部分が保冷部24aの厚み方向の一方の面に接触するようにした状態で、該帯状の断熱体14の長手方向の他端部側を断熱体14が2重となっている部位の外側に更に重ねるようにして巻き付ける。そして、帯状の断熱体14の長手方向の他端部を、断熱体14における内側に重なる面に接着剤や両面テープ等の接着手段により接着する。これにより、
図7に示すように、保冷部24aにおける厚み方向の一方の面(第2面側S)には、断熱体14が3重で重なり、他方の面(第1面側N)には、断熱体14が1重となるように、保冷部24aの外面が断熱体14で覆われる。なお、帯状の断熱体14は、柔軟性を有しており、任意に曲げることができ、巻き付け工程や接着工程においての取り扱いが容易である。
【0027】
前記帯状の断熱体14の巻き付け工程を、保冷部24aの数だけ繰り返す。このとき、各保冷部24aの外面を覆う断熱体14が相互に接触しないようにして、蓄冷体12における連結部24bの一部が断熱体14で覆われないようすることで、
図7に示す断熱保冷体20が得られる。
【0028】
ここで、前記帯状の断熱体14を、保冷部24aにおける厚み方向の一方の側が3重で、他方の側が1重となるような筒状に予め形成しておき、該筒状の断熱体14に保冷部24aを挿入するようにして、該保冷部24aの外面を断熱体14で覆うように取り付けるようにすることができる。また、蓄冷体12の全長より長い帯状の断熱体14を、前述したと同様に、保冷部24aにおける厚み方向の一方の側が3重で、他方の側が1重となるように蓄冷体12に巻き付けたり、蓄冷体12の全長より長い帯状の断熱体14を、前述したと同様の筒状に形成し、該筒状の断熱体14に蓄冷体12を挿入したりすることで、一度の工程によって蓄冷体12における全ての保冷部24aの外面を断熱体14で覆うようにすることもできる。なお、蓄冷体12の全長より長い帯状の断熱体14で蓄冷体12の外側を覆う場合は、該断熱体14における蓄冷体12の各連結部24bに対応する位置に、予めミシン目等の折曲容易化部を形成しておくことで、蓄冷体12の変形容易性を低下させるのを防ぐことができる。
【0029】
前記蓄冷体12が断熱体14で覆われた前記断熱保冷体20を、長手方向の一端が開口する収容袋16に、開口部16aから挿入して収容する。そして、
図8(a),(b)に示すように、開口部16aをヒートシール手段(封止手段)32でヒートシールする前に、収容袋16の内部を真空ポンプ等の吸引手段34によって脱気し、この脱気状態で収容袋16の開口部16aをヒートシール手段32でヒートシールして密封する。収容袋16に断熱保冷体20を収容して密封する収容・密封工程は、例えば、縦形または横形の製袋機充填機を用いて行うことができる。すなわち、ロール状の供給源から引き出した帯状のフィルムを、製袋手段によって幅方向両端縁部を合掌状に重ね合わせて筒状フィルムに成形し、該筒状フィルムに向けて断熱保冷体20を供給手段によって供給し、前記合掌状に重ね合わせた筒状フィルムの重合部を縦シール手段によって縦シールし、該縦シールされた筒状フィルムを移送方向と交差する方向に横シール手段によって横シール・切断することで、収容袋16に断熱保冷体20が収容された密封保冷体22を得ることができる。なお、収容袋16の内部の脱気は、横シール手段で横シールする前の筒状フィルムの開口部から内部空気を吸引すればよい。
【0030】
そして、前記収容・密封工程によって得られたは密封保冷体22を、布製の外袋18における袋本体28に挿入口28aから挿入することで、
図1に示す身体装着用保冷具10が得られる。
【0031】
実施例の身体装着用保冷具10によれば、蓄冷体12は、複数の保冷部24aの夫々の外面が断熱体14で覆われているので断熱性が高く、また収容袋16によって保冷部24aの外面が外気から隔てられているので、身体装着用保冷具10を装着部位に装着した使用時において外面に結露が生じ難く、結露に起因して装着感が低下するのを防止することができる。また、蓄冷体12を、柔軟な樹脂フィルムからなる包材24に形成されて蓄冷剤26が充填されている複数の保冷部24aが連結部24bを介して連結した帯状となる形態としてあるので、装着部位の形状に合わせて蓄冷体12が変形して身体装着用保冷具10を装着部位に巻き付けることができ、接触面積を大きくして冷却効果や涼感効果を向上することができる。更に、蓄冷体12の外側を覆う断熱体14を、連結部24bに対応する部位で分割しているので、断熱体14によって蓄冷体12の変形が阻害されることもなく、良好な装着感を得ることができる。
【0032】
前記断熱体14で覆った蓄冷体12を非透水性の収容袋16に収容しているので、断熱体14の外面に結露が生じたとしても、その結露水が身体装着用保冷具10の外面に滲み出すのを収容袋16によって防止することができ、装着感が低下するのを防ぐことができる。また、前記蓄冷体12の包材24が破損等した場合であっても、蓄冷剤26が外部に滲み出すのを収容袋16で防止することができる。
【0033】
実施例の身体装着用保冷具10は、断熱保冷体20を収容した収容袋16の内部は脱気されているので、収容袋内に存在する空気によって身体装着用保冷具10の変形が阻害されるのを抑制することができ、身体装着用保冷具10を装着部位の形状に合うように容易に変形させることができる。また、脱気された収容袋16の内部は湿気も少なく、収容袋内で結露するのを抑制することができる。更にまた、断熱保冷体20を収容袋16に収容した密封保冷体22を、布製の外袋18に収容しているので、装着部位には樹脂フィルムが接触することはなく、良好な肌触り感や装着感を得ることができる。
【0034】
また、実施例の身体装着用保冷具10は、蓄冷体12を覆う断熱体14の厚みを、装着部位に向く側より反対側の厚みを大きくしているので、装着部位側での結露を防止したもとで、装着部位側とは反対側から蓄冷体12の冷熱が逃げるのをより抑制することができ、保冷時間をより長くすることができる。更に、断熱体14として、超臨界状態の流体を発泡剤として発泡させたポリオレフィン系樹脂発泡体からなる柔軟で非透水性を有する発泡体シートを用いているので、断熱体14によって身体装着用保冷具10の変形が妨げられることはなく、また断熱体14の内面側に結露が生じたとしても、その結露水が外面側に滲み出すのを防ぐことができ、装着感が低下するのを防止することができる。
【0035】
前記身体装着用保冷具10の製造方法によれば、蓄冷体12における保冷部24aの外面が断熱体14で覆われて収容袋16に収容された密封保冷体22を、製袋充填機を用いて容易に製造することができる。また、収容袋16の内部を脱気して開口部16aをヒートシールして密封することで、収容袋16の内部に存在する空気の量を減少させることができるので、内部空気によって変形するのが(蓄冷体12が連結部24bで可撓変形するのが)阻害されることのない身体装着用保冷具10を製造することができる。また、脱気によって収容袋内部の湿気も低減し得るので、収容袋内での結露の発生を抑制し得る身体装着用保冷具10を製造することができる。
【0036】
(別実施例)
図10、
図11は、身体装着用保冷具10を構成する断熱保冷体36の別実施例を示すものであって、前記蓄冷体12を覆う断熱体14の外面を樹脂フィルム38によりラミネート加工したものであって、その他の構成は実施例と同じである。別実施例の断熱保冷体36は、発泡体シートからなる断熱体14の外面が樹脂フィルム38でラミネートされているので、身体装着用保冷具10を装着する際に折り曲げたり変形させたりすることで断熱体14が破断等するのを抑制することができ、耐久性を向上することができる。また、断熱体14の外面をラミネートすることで、該断熱体14に非透水性を付与し得るので、断熱体14の素材として非透水性のものを用いることが可能となる。
【0037】
(実験)
実施例に係る身体装着用保冷具を構成する断熱保冷体または密封保冷体について、断熱体の第1面側および第2面側での厚みを変えた実施例1~4と、断熱体で覆われていない蓄冷体のみからなる比較例1および第2面側にのみ断熱体を設けた比較例2の夫々について、保冷時間、冷えの体感、保持温度帯および結露(べたつき)に関して評価を行った。なお、実施例1~4および比較例1~2の蓄冷体は、形状および大きさが同じに形成されている。また、実験で用いた収容袋についても、全て同じものである。また、断熱体としては、前記株式会社イノアックコーポレーション製のFOLECを用いた。
(1)実施例1は、厚さ1.8mmの断熱体を、実施例と同様に第1面側(装着部位に向く側)が1重で、第2面側(装着部位に向く側とは反対側)が3重となるように蓄冷体に巻き付けることで、断熱体の厚みが第1面側で1.8mmとなり、第2面側で5.4mmとなる断熱保冷体を、収容袋に収容して密封保冷体としたものである。
(2)実施例2は、厚さ1.8mmの断熱体を、第1面側および第2面側の何れも1重となるように蓄冷体に巻き付けることで、断熱体の厚みが第1面側および第2面側で何れも1.8mmとなる断熱保冷体を、収容袋に収容して密封保冷体としたものである。
(3)実施例3は、実施例2と同じ断熱保冷体を収容袋に収容していない断熱保冷体そのものである。
(4)実施例4は、厚さ2.0mmの断熱体を、第1面側および第2面側の何れも1重となるように蓄冷体に巻き付けることで、断熱体の厚みが第1面側および第2面側で何れも2.0mmとなる断熱保冷体を、収容袋に収容して密封保冷体としたものである。
(5)比較例1は、断熱体で覆われていない蓄冷体そのものである。
(6)比較例2は、蓄冷体における第2面側のみを、厚さ1.8mmの断熱体で覆ったものを、収容袋に収容したものである。
なお、前記実施例1~4および比較例1~2で特定される実験対象となる断熱保冷体や密封保冷体等については、以下、実験物と指称する。
【0038】
保冷時間は、蓄冷体を冷却状態とした実験物を、外気温40℃の下で吊した状態で放置し、実験物の表面温度を測定し、30℃を超えるまでの時間を保持時間とした。
冷えの体感は、蓄冷体を冷却状態とした実験物を被験者の首に巻き、被験者が冷た過ぎると感じた際は冷え過ぎとした。
保持温度帯は、保冷時間の実験と同じ条件で、実験物の表面温度が30℃を超えるまでの間で、安定した温度を保持している温度帯を保持温度とした。
結露(べたつき)は、保冷時間の実験と同じ条件で、実験物の表面に水滴が多く発生し、下部へ水滴が落下したものを有とした。
これらの実験の結果を以下の表1に示す。
【0039】
【0040】
前記実験の結果から分かるように、実施例1~4に係る実験物は、保冷時間および冷えの体感が、比較例より改善されることが確認できる。また、実施例1~4に係る実験物は、保持温度帯が、比較例より高く、これによって冷え過ぎとなるのが防止されていることが分かる。更に、実施例1~4に係る実験物は、結露の発生を防止し得ることも確認できる。すなわち、蓄冷体の保冷部の外面を断熱体で覆うことで、蓄冷体を断熱体で覆っていない場合および蓄冷体の外側の一部のみを断熱体で覆っている場合に比べて、保持時間を格段に長くすることができると共に、結露の発生も防止し得ることが分かる。
【0041】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
(1)実施例や別実施例では、蓄冷体、断熱体、収容袋および外袋で身体装着用保冷具を構成したが、収容袋を省略して、蓄冷体、断熱体および外袋で身体装着用保冷具を構成したり、収容袋を省略して、蓄冷体、断熱体および収容袋で身体装着用保冷具を構成したり、収容袋および外袋を省略して、蓄冷体と断熱体とで身体装着用保冷具を構成することができる。なお、収容袋を省略する構成において、蓄冷体における各保冷部の外面を覆う断熱体における連結部側の端部の開口を、夫々シールしたり接着したりして閉成することで、各保冷部の外面の全体を断熱体で覆って外気から隔てることができる。
(2)実施例では、断熱体が身体装着用保冷具の第1面側では1重で、第2面側では3重となるよう構成したが、第1面側より第2面側での断熱体の厚さが大きくなる組み合わせであれば、例えば、第1面側が1重で、第2面側では2重以上となる組み合わせ、第1面側が2重で、第2面側では3重以上となる組み合わせ等、各種の組み合わせを採用することができる。
(3)実施例では、一定の厚みのシート状の断熱体を用いたが、予め厚みが異なるシート状の断熱体を形成し、該断熱体を蓄冷体に1重で巻くことで、第1面側より第2面側での断熱体の厚さが大きくなる構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0042】
12 蓄冷体,14 断熱体,16 収容袋,16a 開口部,18 外袋
24a 保冷部,24b 連結部