(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】植物賦活剤
(51)【国際特許分類】
A01N 37/42 20060101AFI20231218BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20231218BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A01N37/42
A01N25/02
A01P21/00
(21)【出願番号】P 2020001060
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019226370
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 勝也
(72)【発明者】
【氏名】植村 謙太
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-113139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0207454(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107251683(CN,A)
【文献】特表2016-528272(JP,A)
【文献】国際公開第2014/088002(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/
A01N 25/
A01P 21/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸また
はその塩と、フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上とを含むことを特徴とする植物賦活剤。
【請求項2】
前記フェノール系抗酸化剤が、ブチルヒドロキシアニソールである請求項
1記載の植物賦活剤。
【請求項3】
前記フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上が、有効成分量に対して重量比で1/2~5倍量の割合で添加されている請求項1
または2記載の植物賦活剤。
【請求項4】
植物の茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられる請求項1~
3のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【請求項5】
前記植物賦活剤は、アブラナ科植物に対して使用される請求項1~
4のいずれか1項に記載の植物賦活剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物賦活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物植物や園芸植物の供給効率を向上させること等を目的として、植物の生長を調整する技術が開発されてきた。温度条件や日照条件の最適化や施肥などの対策に加え、生長促進、休眠抑制、ストレス抑制等の植物生長調節作用を有する植物賦活剤を用いて植物を賦活させる方法が報告されている。
【0003】
特許文献1には、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩もしくはエステルを有効成分として含むことを特徴とする植物賦活剤が報告されている。特許文献1に記載の植物賦活剤は、優れた抵抗性誘導効果および生長促進効果を有するが、非常に不安定ですぐに分解してしまうという問題があった。
【0004】
分解は、酸化によるものと推測されるが、この分解を抑制するための有効な手立てがなく、酸化を防止するための技術が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法で製造される植物賦活剤は、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩もしくはエステルを有効成分として含むものであり、このため、大気中で容易に酸化されるといった課題がある。長期的に安定して植物賦活剤としての効果を発現させるために、容易に酸化されず、植物賦活剤としての効果を維持することのできる植物賦活剤が求められている。
【0007】
本発明は、酸化を防止するための抗酸化剤を含むが、優れた病害抵抗性および生長促進効果のある植物賦活剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と、フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも1種以上とを含むことを特徴とする植物賦活剤に関する。
【0009】
さらに具体的には、本発明は、
以下の式:
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
R1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
R2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と、フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上とを含むことを特徴とする植物賦活剤に関する。
【0010】
前記フェノール系抗酸化剤が、ブチルヒドロキシアニソールであることを特徴とする植物賦活剤が好ましい。
【0011】
前記フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上が、有効成分量に対して重量比で1/2~5倍量の割合で添加されている植物賦活剤が好ましい。
【0012】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1の炭化水素基の炭素数が8~10であり、R2のアルキル基の炭素数が4~6であるオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0013】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0014】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が、炭素数9の直鎖炭化水素基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸である植物賦活剤が好ましい。
【0015】
前記オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸である植物賦活剤が好ましい。
【0016】
なお、前記オキソ脂肪酸の誘導体としては、オキソ脂肪酸のエステルが望ましい。また、前記オキソ脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを使用できる。
【0017】
前記植物賦活剤が、植物の茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられる植物賦活剤であることが好ましい。
【0018】
前記植物賦活剤が、アブラナ科植物に対して使用される植物賦活剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の植物賦活剤は、有効成分の安定性に優れ、かつ、優れた病害抵抗性および生長促進効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
植物賦活剤
本発明の植物賦活剤は、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と、フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上とを含むことを特徴とする。
【0021】
より具体的には、本発明の植物賦活剤は、
以下の式:
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
R1:6~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
R2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と、フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上とを含むことを特徴とする。なお、オキソ脂肪酸や上記式(I)で示される構造式を有する化合物としては、そのすべての幾何異性体および立体異性体を含む。
【0022】
本発明における「植物賦活」とは、何らかの形で植物の生長活動を活性化または維持するように調整することを意味するものであり、生長促進(茎葉の拡大、塊茎塊根の生長促進等を包含する概念である)、休眠抑制、植物のストレス(例えば病害など)に対する抵抗性を誘導、付与し、抗老化等の植物生長調節作用を包含する概念である。
【0023】
本発明の植物賦活剤は、植物を賦活させるための有効成分としてオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩を含む。例えば、オキソ脂肪酸としてはケトオクタデカジエン酸などが挙げられる。例えば、ケトオクタデカジエン酸としては、具体的には、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸(9-oxoODA)、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)、5-オキソ-6,8-オクタデカジエン酸、6-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、8-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、10-オキソ-8,12-オクタデカジエン酸、11-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、12-オキソ-9,13-オクタデカジエン酸および14-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸ならびにそれらの異性体等が挙げられる。本明細書における「有効成分」とは、このようなオキソ脂肪酸を意味している。ケトオクタデカジエン酸のようなオキソ脂肪酸には植物の生長を活性化する特性があり、したがって、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩を有効成分として含む本発明の植物賦活剤を植物の茎葉または根の一部に接触させることで、植物に生長促進効果を付与することができる。また、このオキソ脂肪酸は、抵抗性誘導に関係するサリチル酸経路を活性化することができるため、植物に施用することで植物に抵抗性を誘導することができる。
【0024】
前記オキソ脂肪酸の誘導体としてはエステルが望ましい。また、オキソ脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを使用できる。
【0025】
本発明の植物賦活剤に含有されるフェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上は、植物賦活剤中の有効成分の分解を抑制する抗酸化剤として作用している。この結果、本発明の植物賦活材が安定化される。すなわち、このような抗酸化剤を含有することにより、植物賦活剤の製剤化時の処理や、流通、保存に対して、賦活効果の低下や、保存安定性の低下が防止され、植物賦活剤施用時の植物賦活剤としての有効性が確保される。植物賦活剤の安定化に寄与する抗酸化剤の好ましい例は、上述のように、フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸(ビタミンC)およびトコフェロール(ビタミンE)である。しかし、トコフェロールに限定されず、他のビタミンE、例えば天然または合成の、ビタミンE同族体、抗酸化活性を有するビタミンEの種々の誘導体や類縁化合物も使用し得る。また、本発明のアスコルビン酸(ビタミンC)は、アスコルビン酸の酸化型や異性体を含む。また、フェノール系抗酸化剤の例としては、ブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。しかし、抗酸化性を有する他のフェノール類抗酸化物質も使用可能である。
【0026】
本発明の抗酸化剤の添加によっても、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩を含む植物賦活剤が有する優れた病害抵抗性および生長促進効果が、低下したり、失われたりすることはない。さらに、抗酸化剤の添加は、施用される植物体に対して悪影響を及ぼさない。したがって、本発明の抗酸化剤の添加によって、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩を含む植物賦活剤の優れた賦活効果はそのままで、植物賦活剤中での有効成分の分解が抑制されることによって、植物賦活剤における長期にわたる安定した賦活効果の維持が達成され得る。
【0027】
本発明において、抗酸化剤は、植物賦活剤中の有効成分量に対して重量比で5倍量以下程度の割合で、添加され得る。本発明の植物賦活剤中に含まれ得る抗酸化剤の好ましい濃度は、施用する植物種とその状態に依存し得るが、割合が5倍量を超える場合は、施用される植物体に薬害を生じる恐れがある。抗酸化剤の濃度の下限は特に限定されないが、有効成分量に対して重量比で1/2倍量以上程度が好ましい。本発明の好ましい一実施形態において、抗酸化剤の割合は、有効成分量に対して重量比で1/2~5倍量である。
【0028】
ここで、本発明における有効成分量とは、本発明の植物賦活剤に含有されるオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩の量を示すものである。例えば本発明の植物賦活剤の有効成分量は、0.01~0.2g/L程度である。本発明の植物賦活剤は、このような有効成分量に対して、重量比で1/2~5倍量である抗酸化剤を含有している。この程度の抗酸化剤を添加することにより、有効成分の植物賦活剤中での分解が顕著に抑制され、その賦活効果が長期間維持され得る。
【0029】
本発明の植物賦活剤には、必要に応じて、植物賦活剤として使用するのに適した相溶性の界面活性剤および/または希釈剤もしくは担体が含有されていてもよい。これらの添加成分としては、農業上容認可能な薬剤であれば特に限定されない。また、界面活性剤や希釈剤、担体以外の、農薬製剤などに通常用いられる成分がさらに含有されていてもよい。
【0030】
また、本発明の植物賦活剤には、有効成分としてオキソ脂肪またはその誘導体もしくはその塩に加えて、ジャスモン酸経路の抵抗性遺伝子の発現を誘導するジャスモン酸前駆体12/10-オキソ-フィトジエン酸(12/10-OPDA)を含んでいてもよい。施用される植物体においてサリチル酸経路およびジャスモン酸経路の両方が相互補完的に活性化されて、さらに賦活効果の高い植物賦活剤が得られ得る。
【0031】
本発明の植物賦活剤は、任意の方法で植物に施用することができる。例えば、植物の茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として使用され得る。また、本発明の植物賦活剤は、多孔質構造体やカプセル内に包含されたり、シート等に含侵されたりして、徐放性の薬剤として使用されてもよい。施用された植物において、本発明の植物賦活剤は、植物生長促進効果および例えば病害などのストレスに対する抵抗性を付与する。
【0032】
本発明の植物賦活剤を施用することのできる植物は、特に限定されるものではなく、植物一般に対して良好に用いることができるが、好ましい植物としては、アブラナ科の植物が挙げられる。しかし、例えば、イネ科、マメ科、ナス科、バラ科、ヒユ科、またはアオイ科の植物に対しても施用され得る。また、施用の対象となる植物は野生型の植物に限定されず、例えば変異体や形質転換体等であってもよい。また、それぞれの植物の品種も特に限定されない。
【0033】
また、本発明の植物賦活剤は、強力な抵抗性誘導効果を示す植物賦活剤として利用できることを見出しており、さまざまな植物の成長促進効果や果実の収量増加効果、病害抑制効果を示すことを知見している。例えば病害抑制に関して効果のある具体的な例としては、キュウリ、スイカ、メロン、カボチャなどウリ科の葉の灰色カビ病、つる割れ病、つる枯病、ベト病、トマト、ナス、ジャガイモなどナス科の青枯れ病、萎凋病、半身萎凋病、立枯病、褐色根腐病、バラやイチゴなどバラ科植物のうどん粉病、黒星病、灰色カビ病、炭疽病、ホウレンソウなどヒユ科のベト病、ハクサイ、キャベツ、コマツナなどアブラナ科の黒腐病、軟腐病、斑点細菌病、リゾクトニア病、ニンジンなどセリ科の白絹病、イネ科植物のいもち病などに有効である。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
実施例1
植物賦活剤の調製
水1Lに炭酸カリウム(富士フイルム和光純薬(株)、特級)を18g、また、リン酸水素二カリウムを23.3gそれぞれ添加して、塩基性の水溶液を調整した。次いで、オキソ脂肪酸として、ケトオクタデカジエン酸である13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)((9Z,11E)-13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、ケイマンケミカル社製、100μg/100μLエタノール溶液)の222mLを788mLの塩基性水溶液に添加して、0.022%の13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸を含む水溶液を調製した。得られた溶液を試験用植物賦活剤とした。
【0036】
ビタミンCおよびビタミンEの添加および加速試験
上記で得られた試験用植物賦活剤1L(有効成分量 222mg)に、680mgのビタミンC(関東化学(株)製)および480mgのビタミンE(ナカライテスク(株)製)を添加した。得られた溶液をバイオシェーカー(登録商標)(タイテック(株)製のBR-23UM)を用いて、54℃の加速試験を行い、5週間放置した(25℃換算で約2年相当。吉岡澄江著、「医薬品の安定性」を参考)。加速試験の前後で有効成分濃度をUVで測定し、加速試験の前の有効成分濃度に対する加速試験後の有効成分濃度の割合(有効成分濃度変化%)を、加速試験の前後のUVの面積比から算出した。
【0037】
実施例2
上記で得られた試験用植物賦活剤1L(有効成分量 222mg)に、フェノール系抗酸化剤であるブチルヒドロキシアニソール(キシダ化学(株)製)を480mg添加した。得られた植物賦活剤をバイオシェーカー(登録商標)(タイテック(株)製のBR-23UM)を用いて、54℃の加速試験を行い、5週間放置した(25℃換算で約2年相当。吉岡澄江著、「医薬品の安定性」を参考)。加速試験の前後で有効成分濃度をUVで測定し、加速試験の前の有効成分濃度に対する加速試験後の有効成分濃度の割合(有効成分濃度変化%)を、加速試験の前後のUVの面積比から算出した。
【0038】
実施例3
上記で得られた試験用植物賦活剤1L(有効成分量 222mg)に、ビタミンCを1110mg添加した。得られた溶液をバイオシェーカー(登録商標)(タイテック(株)製のBR-23UM)を用いて、54℃の加速試験を行い、5週間放置した(25℃換算で約2年相当。吉岡澄江著、「医薬品の安定性」を参考)。加速試験の前後で有効成分濃度をUVで測定し、加速試験の前の有効成分濃度に対する加速試験後の有効成分濃度の割合(有効成分濃度変化%)を、加速試験の前後のUVの面積比から算出した。
【0039】
実施例4
上記で得られた試験用植物賦活剤1L(有効成分量 222mg)に、ビタミンEを480mg添加した。得られた溶液をバイオシェーカー(登録商標)(タイテック(株)製のBR-23UM)を用いて、54℃の加速試験を行い、5週間放置した(25℃換算で約2年相当。吉岡澄江著、「医薬品の安定性」を参考)。加速試験の前後で有効成分濃度をUVで測定し、加速試験の前の有効成分濃度に対する加速試験後の有効成分濃度の割合(有効成分濃度変化%)を、加速試験の前後のUVの面積比から算出した。
【0040】
比較例1
上記で得られた試験用植物賦活剤1L(有効成分量 222mg)をバイオシェーカー(登録商標)(タイテック(株)製のBR-23UM)を用いて、54℃の加速試験を行い、5週間放置した(25℃換算で約2年相当。吉岡澄江著、「医薬品の安定性」を参考)。加速試験の前後で有効成分濃度をUVで測定し、加速試験の前の有効成分濃度に対する加速試験後の有効成分濃度の割合(有効成分濃度変化%)を、加速試験の前後のUVの面積比から算出した。
【0041】
実施例1~4および比較例1で得られた有効成分濃度変化%の結果を次の表1に示す。
【0042】
【0043】
表1に示されるように、抗酸化剤を添加しなかった比較例1では、植物賦活剤中の有効成分であるオキソ脂肪酸の濃度は、加速試験前と比較して加速試験5週間後に低下しており、オキソ脂肪酸が加速試験により分解していることがわかる。一方、本発明の抗酸化剤を添加した実施例1~4の植物賦活剤では、オキソ脂肪酸の濃度は、加速試験5週間後でも良好に維持されていた。これは、実施例1~4では、抗酸化剤の添加によりオキソ脂肪酸の分解が顕著に抑制されたことを示している。この結果から、本発明の抗酸化剤を含む植物賦活剤が植物を賦活させるための有効成分であるオキソ脂肪酸の安定化に対して優れた効果を示していることがわかる。
【0044】
上記の結果より、本発明のフェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸およびトコフェロールから選ばれる少なくとも一種以上を含む植物賦活剤が有効成分の安定化に対して顕著な効果を示していることがわかる。