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特許7404080排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20231218BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20231218BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20231218BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20231218BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231218BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231218BHJP
【FI】
C02F1/461 Z ZAB
C02F11/06 B
B01D53/62
B01D53/78
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020006286
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112705
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-153115(JP,A)
【文献】特開2004-342412(JP,A)
【文献】特開2019-160458(JP,A)
【文献】特表2010-504616(JP,A)
【文献】特開2007-90232(JP,A)
【文献】特表2013-517129(JP,A)
【文献】特開2001-23677(JP,A)
【文献】特開2010-33884(JP,A)
【文献】特開2004-176622(JP,A)
【文献】特開2007-117996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 - 1/48
3/00 - 3/34
11/00 - 11/20
1/58 - 1/64
H01M 8/00 - 8/0297
8/08 - 8/2495
8/04 - 8/0668
B01J 10/00 - 12/02
14/00 - 19/32
B01D 53/34 - 53/85
53/92
53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対する処理を行う排水処理装置であって、
前記被処理水が処理された後の処理水とアノード側の電極を接触させ、発電を行う発電部と、
燃焼装置で生じた排ガスを、前記発電部のカソード側へ供給する排ガス供給手段と
電子受容体を、前記発電部のカソード側へ供給する電子受容体供給手段と、を備え
前記処理水は、硫化水素または硫化水素イオンを含むことを特徴とする、排水処理装置。
【請求項2】
前記排ガスの温度を調整する温度調整機構を備えることを特徴とする、請求項に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記温度調整機構は、前記排ガスの温度を100度以下に調整することを特徴とする、請求項2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記燃焼装置は、排水処理で生じた汚泥を焼却するものであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の排水処理装置。
【請求項5】
被処理水に対する処理を行う排水処理方法であって、
前記被処理水が処理された後の処理水とアノード側の電極を接触させ、発電を行う発電工程と、
電子受容体および燃焼装置で生じた排ガスを、前記発電工程のカソード側へ供給する供給工程と、を備え
前記処理水は、硫化水素または硫化水素イオンを含むことを特徴とする、排水処理方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の排水処理装置と、
燃焼装置と、を備える処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置及び排水処理方法に関するものである。また、本発明は、排水処理装置と燃焼装置を備える処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理水を処理する排水処理としては、様々な処理方法が知られている。このような排水処理は、被処理水に含まれる成分や、排出される被処理水の量などのように、被処理水自体に係る物性上の特徴や、処理効率とコストのバランスなどのように、排水処理を実施するための設備や運用に係る特徴などを考慮し、処理方法が選択されている。
また、排水処理においては、異なる排水処理方法を複数組み合わせることで、排水処理の効率化を図ることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機物を含む被処理水の処理として、被処理水中に一対の電極を浸漬し、電気化学処理を行った後、被処理水を生物処理する排水処理について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-330182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、電気化学処理と生物処理とを組み合わせた排水処理においては、それぞれの処理ごとに反応効率のよい反応を進行させ、排水処理全体としての処理効率を向上させることが可能となる。その一方で、一般的に、電気化学処理は電力消費に係るランニングコストの負担が大きいという課題がある。特許文献1に記載された排水処理では、電気化学処理単独よりはランニングコストの低減が可能とされている。しかしながら、特許文献1に記載された排水処理では、排水処理の系外から電気化学処理及び生物処理に係るエネルギーを供給する必要がある。したがって、排水処理時における更なる省エネルギー化が求められている。
【0006】
近年、排水処理時における設備駆動電力を抑え、省エネルギー化に優れるものとするために、排水処理の工程上でエネルギーの回収・利用が可能な技術が検討されている。
このような技術の一つとして、生物処理により発生したバイオガスを利用したエネルギーの回収が行われているが、バイオガスの貯留・精製設備や、バイオガスの燃焼により得られた熱エネルギーをガスエンジンやガスタービンを介して電気エネルギーに変換する設備など、付帯設備が必要となる。したがって、排水処理において、より簡便かつ効率的にエネルギーを回収・利用する技術が求められている。
【0007】
排水処理においてエネルギーを簡便かつ効率的に回収する技術としては、排水処理工程上に電極を設け、電極反応により直接電気エネルギーを回収することが考えられる。この際、電極反応によるエネルギー回収と同時に、処理水に対する電気化学処理を行うことができ、排水処理の効率向上と省エネルギー化の実現が期待できる。
【0008】
一方、本発明者らは、排水処理工程上に電極を設けて電極反応を行う際、カソード側のpH上昇が生じ、電極反応効率が低下するという課題があることを見出した。
【0009】
本発明の課題は、排水処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用を可能とするとともに、電極反応効率の低下を抑制することができる排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、排水処理において、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて発電(電極反応)を行うことにより、効率的なエネルギーの回収・利用が可能となること、及び、燃焼装置からの排ガスを供給することで、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制し、電極反応の効率低下を抑制することが可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムである。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の排水処理装置は、被処理水に対する処理を行う排水処理装置であって、被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電部と、燃焼装置で生じた排ガスを、発電部へ供給する供給手段とを備えるという特徴を有する。
【0012】
本発明の排水処理装置は、排水処理装置に電極を用いた発電部を設置することで、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する供給手段を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【0013】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、燃焼装置は、排水処理で生じた汚泥を焼却するものであるという特徴を有する。
この特徴によれば、燃焼対象を容易に得ることができるとともに、汚泥処理に係る既設の燃焼装置を利用することができる。これにより、本発明の排水処理装置のために、新たに燃焼装置を設ける必要がなく、イニシャルコストを大幅に低減することが可能となる。
【0014】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、排ガスの温度を調整する温度調整機構を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、発電部へ供給する排ガスの温度を調整することができ、熱による電極の劣化や電解質溶液の蒸発(気化)による減少など、発電に係る不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明の排水処理方法としては、被処理水に対する処理を行う排水処理方法であって、被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電工程と、燃焼装置で生じた排ガスを、発電工程へ供給する供給工程とを備えるという特徴を有する。
本発明の排水処理方法は、排水処理において電極を用いた発電工程を設けることで、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する供給工程を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【0016】
また、上記課題を解決するための本発明の処理システムとしては、被処理水に対する処理を行う排水処理装置と、物質の燃焼を行う燃焼装置と、を備える処理システムであって、排水処理装置は、被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電部と、燃焼装置で生じた排ガスを、発電部へ供給する供給手段とを備えるという特徴を有する。
本発明の処理システムは、排水処理装置と燃焼装置とを備え、排水処理装置には電極を用いた発電部を設置することで、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する供給手段を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、処理システムとして発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排水処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用を可能とするとともに、電極反応効率の低下を抑制することができる排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施態様における排水処理装置の概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様の排水処理装置における供給手段を示す概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様の排水処理装置における供給手段の別態様を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様における排水処理装置の概略説明図である。
図5】本発明の第2の実施態様における排水処理装置の別態様を示す概略説明図である。
図6】本発明の第3の実施態様における排水処理装置の概略説明図である。
図7】本発明の第4の実施態様における処理システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムの実施態様を詳細に説明する。本発明における排水処理方法は、本発明における排水処理装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムについては、本発明に係る排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の排水処理装置及び処理システムにおいて、処理対象である被処理水は、処理を経ることで電極反応が可能な物質を生成するものであれば特に限定されない。電極反応が可能な物質としては、例えば、還元性物質が挙げられる。また、具体的な被処理水の例としては、例えば、食品工場、化学工場、紙パルプ工場等の各種工場から排出される工業排水や、下水などの生活排水などが挙げられる。なお、以下の実施態様においては、被処理水として、処理を経ることで還元性物質が生成するものについて主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
また、本発明において、被処理水中に含まれる還元性物質とは、電子供与体として機能するものであればよく、特に限定されない。ある物質が電子供与体として機能するか否かは、電子受容体として機能する物質(以下、単に「電子受容体」と呼ぶ)との組み合わせによって相対的に決まるものである。つまり、本発明における還元性物質は、電子受容体よりも電子を放出しやすいもの、すなわち電子受容体よりも酸化還元電位が低いものとすることが挙げられる。例えば、電子受容体として酸素を用いた場合、本発明における還元性物質は、酸素よりも酸化還元電位が低いものであればよく、このような還元性物質としては、硫化水素、水素、アンモニアなどが挙げられる。
【0022】
〔第1の実施態様〕
[排水処理装置]
図1は、本発明の第1の実施態様における排水処理装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様における排水処理装置1Aは、図1に示すように、処理槽2と、発電部3と、供給手段4とを備えるものである。また、排水処理装置1Aは、処理槽2に被処理水Wを導入する導入配管L1と、処理槽2と発電部3を接続し、処理槽2で被処理水Wが処理された後の処理水W1を発電部3に供給する接続配管L2と、電極反応後の処理水W2を発電部3から排出する排出配管L3とを備えている。さらに、排出配管L3の後段には、反応槽5が接続されている。
【0023】
(処理槽)
処理槽2は、被処理水Wに対して処理を行うための槽である。
処理槽2で行う処理は、被処理水W中に含まれる処理対象に合った処理であり、処理後の処理水W1中に還元性物質を含むものであれば、特に制限されない。例えば、生物処理、化学処理(薬剤添加、オゾン処理など)などが挙げられるが、人体に対して有害な物質の使用及び生成を伴うことがなく、かつ比較的低コスト処理が可能な生物処理とすることが望ましい。
さらに、生物処理としては、例えば、嫌気的な環境下での生物処理(嫌気処理)として、酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵や、脱窒菌により硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理や、硫酸還元菌により硫酸の還元を行う硫酸還元処理等が挙げられる。また、好気的な環境下での生物処理(好気処理)として、活性汚泥を用いる活性汚泥処理などが挙げられる。なお、生物処理としては、曝気動力が不要で、余剰汚泥がほとんど発生しないことなど、導入のメリットが高いことから、嫌気処理が好ましい。さらに、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。
【0024】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理水W中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0025】
処理槽2で処理された被処理水Wは還元性物質を含有する処理水W1となり、接続配管L2を介して、発電部3へ導入される。
【0026】
(発電部)
発電部3は、処理水W1中の還元性物質を電子供与体として発電を行うためのものである。
本実施態様の発電部3は、図1に示すように、処理槽2の後段に設けられ、第1のセル31a及び第2のセル31bと、セル31a、31bの間を仕切るように設けられたイオン交換体35と、セル31a、31bにそれぞれ配置された電極33a、33bとを備えている。ここで、第1のセル31aは、処理槽2から接続配管L2を介して導入された処理水W1が電極33aに接触するように形成されており、第1のセル31aに配置された電極33aはアノードとして機能する。一方、第2のセル31bは、電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されており、第2のセル31bに配置された電極33bはカソードとして機能する。また、電極33a、33bは導線により外部回路と接続されている(不図示)。これにより、発電部3において、還元性物質が電子供与体として作用することで発生する電気エネルギーの回収及び利用が可能となる。
【0027】
第1のセル31aは、電極33aを備え、処理水W1が電極33aに接触するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、図1に示すように、接続配管L2を介して処理水導入口32aから導入された処理水W1を一時的に貯留可能なスペースを有し、電極33aに接触した後の処理水W2を処理水排出口32bから排出するための排出配管L3を備えるものとすること等が挙げられる。これにより、処理水W1中の還元性物質は電子供与体として電極33aに電子を供与した後、排出配管L3を介して速やかに排出される。
なお、接続配管L2及び/又は排出配管L3に、バルブ等の流量調整機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33aに接触させる処理水W1の量及び流速を調整し、電極33aに対する物質移動速度を制御することが可能となる。
【0028】
排出配管L3を介して排出された処理水W2は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L3の後段に、処理水W2を更に処理するための反応槽5を設け、処理水W3として系外へ排出するものとしてもよい。反応槽5としては、処理水W2が系外あるいは河川への放流が可能な水質となるように処理できるものであれば特に限定されない。例えば、曝気槽やpH調整槽などが挙げられる。
【0029】
第2のセル31bは、電極33bを備え、処理水W1中の還元性物質に対する電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。
【0030】
ここで、電子受容体の形態は、気体、液体のいずれであってもよい。なお、液体としては、固体薬剤を溶解させた溶液であってもよく、気体を混合(溶解)させた溶液であってもよい。
特に、電極33bを配置する第2のセル31b内は電子受容体の溶液で満たすものとすることが挙げられる。これにより、後述する供給手段4による電極反応効率の低下を抑制する機能が効果的に発揮される。
【0031】
本実施態様において電子受容体の具体的な例については、例えば、気体としては、酸素及び酸素を含む気体が挙げられる。なお、酸素を含む気体とは、空気のように混合物として酸素を含むものや、二酸化炭素のように化合物を構成する元素として酸素を含むものが挙げられる。電子受容体として気体を用いた場合、反応後に排出したものの処理が不要(あるいは容易)であることや、入手に係るコストを低減できるという利点がある。なお、これらの利点を最大限活用するためには、電子受容体として、空気を用いることが特に好ましい。
また、本実施態様において電子受容体の他の例としては、例えば、液体として、溶存酸素を含む溶液や、フェリシアン化カリウム水溶液のような酸化剤の水溶液等が挙げられる。電子受容体として液体を用いた場合、電子受容体として効果の高い化合物(酸化剤)の取り扱いが容易となるため、発電効率をより向上させることができるという利点がある。なお、発電効率を向上させるという観点からすると、電子受容体としては、フェリシアン化カリウム水溶液を用いることが特に好ましい。
【0032】
第2のセル31bとしては、例えば、図1に示すように、第2のセル31bに、液体を貯留可能なスペースを設け、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bとして、それぞれ電子受容体の溶液の供給及び反応後の溶液の排出が可能なものを設けることが挙げられる。また、第2のセル31bの他の例としては、第2のセル31bに、気体状の電子受容体(酸素、空気など)を電極33bに対して供給するために、気体を供給するための電子受容体供給口34a及び反応後の気体を排出するための電子受容体排出口34bを設けることが挙げられる。これにより、電極33aからの電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取ることができ、電極33aと電極33bの間に電流が流れて発電が行われる。また、反応後の電子受容体は電子受容体排出口34bを介して速やかに発電部3の外部に排出される。
なお、電子受容体供給口34a及び/又は電子受容体排出口34bにバルブ等の流量調整機構を設け、第2のセル31bにおける電子受容体の濃度を調整できるものとしてもよい。さらに、電極33aにおける反応により生成した電子量に応じた電子受容体濃度が維持されるように流量調整機構を制御する制御機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33b間の電子移動に係る反応効率の低下を抑制し、発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0033】
図1において、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bは、それぞれ1つずつ設けたものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを複数設けるものとしてもよい。特に、電子受容体として酸素を含む気体を用いた場合、電極33bにおける反応によって水が生成する。したがって、電子受容体排出口34bを複数設ける場合、例えば、気体を排出するものと液体を排出するものをそれぞれ分けて設けること等が挙げられる。
【0034】
イオン交換体35は、イオンを透過することのできる公知の構成であればよく、特に限定するものではない。特に、電極33a(アノード側)で発生する水素イオンを透過することのできる陽イオン交換膜とすることが挙げられる。これにより、電極33a(アノード側)から電極33b(カソード側)へ水素イオンが移動することで、電極33bでの電子受容体の反応効率を高めることができ、発電効率を向上させることができる。また、イオン交換体35は、酸素透過性が低いものとすることがより好ましい。これにより、電極33b(カソード側)に供給される電子受容体(特に酸素)が電極33a側に移動することを抑制し、電極33aにおける電子供与体の反応効率が酸素により低下することを抑制することが可能となる。
なお、図1において、イオン交換体35は、電極33a及び電極33bと別体として設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、イオン交換能を有する材料と電極33a及び/又は電極33bを一体とすること等が挙げられる。これにより、発電部3全体を小型化することが可能となるとともに、メンテナンス作業に係る時間短縮が可能となる。
【0035】
電極33aは、処理水W1中の還元性物質から電子を回収する電極であり、いわゆるアノードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33aは、処理槽2で処理された後の処理水W1と接触するように第1のセル31a内に配置されている。
【0036】
電極33aとしては、アノードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33aの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33aにおける還元性物質の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33aの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33aの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33aとしては、発電効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33aとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0037】
電極33bは、電極33aの対極であって、電子受容体へ電子を受け渡す電極であり、いわゆるカソードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33bは、第2のセル31b内に配置されている。
【0038】
電極33bとしては、カソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33bの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33bにおける電子受容体の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
特に、本実施態様の電極33bとしては、発電効率を鑑み、多孔質体からなるものを用いることが好ましい。例えば、電極33bとしては、多孔質体であるカーボンペーパーやカーボンクロスのような炭素繊維を用いることのほか、発泡金属、多孔質金属、金属メッシュを用いることが挙げられる。
【0039】
第2のセル31b内に供給される電子受容体が気体(空気)である場合、電極33bは、一方の面は気体と接するが、もう一方の面は処理水W1と接する。このため、電極33bは、いわゆるエアカソードとして適した形態とすることが好ましい。エアカソードとして適した形態としては、例えば、気体透過性と不透水性の両方の性質を備えることが挙げられる。電極33bが気体透過性を備えた形態とすることにより、電子受容体である気体を電極33bで効果的に反応させることが可能となる。また、電極33bが不透水性を備えることにより、第1のセル31a内の処理水W1が電極33bを透過し、第2のセル31b内に流入することを抑制することが可能となる。このような電極33bの具体例としては、炭素繊維からなるものや、金属メッシュ表面に対して気体透過性及び不透水性を有する材料の塗布あるいはフィルムの積層等の表面処理を行ったもの等が挙げられる。なお、ここでの不透水性とは、水を通さないことを指し、例えば、電極33bを防水化、撥水化、疎水化、あるいは止水化することについても、不透水性を備えることに含まれるものである。
【0040】
以下、排水処理装置における発電について詳細に説明する。
図1に基づき、本発明の第1の実施態様の排水処理装置における発電に係る反応及び工程を説明する。本実施態様の配管における発電に係る反応及び工程は、被処理水Wを嫌気処理することで生成した還元性物質を電子供与体として用い、酸素や酸化剤を含む溶液を電子受容体として用いるものについて説明するものである。
なお、図1に基づく反応及び工程に係る説明は、本実施態様における発電の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。また、以下の説明は、処理槽2から発電部3に係る反応及び工程について述べたものであり、その他の構成(導入配管L1、排出配管L3及び反応槽5など)に係る反応及び工程については説明を省略している。さらに、反応R1~R4及び工程S1~S3の表記については、説明のために番号を付したものであり、反応及び工程順序を特定するものではない。
【0041】
図1に示すように、処理槽2に導入された被処理水Wは、処理槽2内の嫌気性微生物(酸生成菌及びメタン生成菌)により嫌気処理される(工程S1)。このとき、メタンのほかに、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が生成する。
【0042】
処理槽2で処理され、還元性物質を含む処理水W1は、接続配管L2を介して発電部3における第1のセル31a内に導入される(工程S2)。ここで、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が電極33aに接触することで、還元性物質が電子供与体として機能し、電極33aへ電子が供与される。このとき、電子供与体として機能する還元性物質として、硫化水素を例にとると、電極33aにおける反応(反応R1)は、以下の反応式(式1)で示される。
【数1】
【0043】
また、硫化水素の一部は硫化水素イオンとして反応する。このときの反応は、以下の反応式(式2)で示される。
【数2】
【0044】
式1及び式2で示されるように、反応R1において、処理槽2で処理された後の処理水W1に含まれる硫化水素は電極33aに電子を供与するとともに、硫化水素自身は酸化処理されることで無害化、無臭化する。このため、本実施態様の排水処理装置は、発電とともに、脱硫・脱臭が可能となるという効果も奏する。なお、硫化水素以外の有害物質・臭気物質である還元性物質(アンモニア等)についても、同様に電子供与体として機能し、反応が進行することで、無害化・無臭化が可能になる。
【0045】
式1及び式2に示された反応式に基づき、電極33aにおける反応が進行した後、電子は電極33aから導線を介して電極33bへ移動する(反応R2)。なお、このとき、電極33aにおける反応で生成した水素イオンは、イオン交換体35を介して第2のセル31b側へ移動する(反応R3)。
【0046】
一方、第2のセル31bには、電子受容体供給口34aから電子受容体(溶液)を導入する(工程S3)。ここで、反応R2により、電極33aから電極33bに移動した電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取る。また、このとき、反応R3により、イオン交換体35を介して第2のセル31b側に移動した水素イオンも電子受容体と反応する。このときの電極33bにおける反応(反応R4)は、以下の反応式(式3)で示される。なお、式3における酸素が、電子受容体に相当する。
【数3】
【0047】
上述した反応R1~R4及び工程S1~S3に基づき、電極33aと電極33bの間に電流が流れる。これにより、本実施態様の排水処理装置における発電が行われる。
また、発電により得られた電気エネルギーは、電極33a及び電極33bに接続した外部回路を通じて回収・利用することができる。なお、電気エネルギーの利用については、特に限定されない。例えば、排水処理装置の設備駆動に用いるものであってもよく、排水処理装置外で利用するものであってもよい。
【0048】
本実施態様の排水処理装置における電極反応では、反応R3によりカソード側に水素イオン(H)が移動することで、式3に基づく反応R4が進行する。しかし、反応R3ではイオン交換体35を介して水素イオンが移動するため、カソード側である電極33bに対し、式3に基づく反応における十分な水素イオンが供給される前に、電極反応が進行することがある。このとき、電極33bでは、式3に基づく水(HO)を生成する反応ではなく、水酸化物イオン(OH)が生成する反応が進行し、電極33b(カソード側)ではpH上昇が起こる。これにより、電極反応(発電)効率が低下するという問題が生じる。
【0049】
このため、本実施態様における排水処理装置1Aに、発電部3におけるカソード側のpH上昇を抑制するための手段を設けることが好ましい。pH上昇を抑制する手段としては、例えば、酸性成分を添加することが挙げられる。ここで、pH上昇を抑制する手段としては、薬剤として酸性成分を添加する手段を新設すること以外に、より好ましい例として、既設装置等から排出される排出物を活用できる構成とすることが挙げられる。これにより、排水処理装置1Aの省コスト化や省エネルギー化が可能となる。
既設装置等から排出される排出物を活用し、pH上昇を抑制する手段としては、例えば、各種燃焼装置で生じた排ガスを排水処理装置1Aに供給することが挙げられる。燃焼装置で生じた排ガスには、二酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)などが含まれており、これらの排ガス成分は水溶液に溶解すると酸性を示すことが知られている。したがって、燃焼装置で生じた排ガスを活用することで、発電部3におけるpH上昇を抑制することが可能となる。
【0050】
(供給手段)
供給手段4は、発電部3に対して燃焼装置で生じた排ガスを供給し、pH上昇を抑制することで、電極反応効率の低下を抑制するためのものである。
供給手段4としては、発電部3に対して燃焼装置で生じた排ガスを供給することができるものであればよく、特に限定されない。なお、本実施態様における供給手段4としては、カソード側である電極33bを配した第2のセル31b内に排ガスを供給するものとすることが特に好ましい。このような供給手段4としては、第2のセル31bに直接排ガスを供給するための構造を設けるものや、電子受容体とともに排ガスを供給する構造を設けるもの等が挙げられる。
【0051】
供給手段4の具体例としては、発電部3内の第2のセル31bに、燃焼装置で生じた排ガスを供給する機構を直接設けることが挙げられる。
図2は、本実施態様の供給手段4として、第2のセル31bに排ガスを供給する機構を直接設ける際の概略説明図である。なお、図2は、排水処理装置1Aにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0052】
図2に示すように、供給手段4として、第2のセル31bに排ガス供給口41を設け、排ガス供給口41には、燃焼装置(不図示)で発生した排ガスを供給するための配管42を接続することが挙げられる。ここで、図2における破線の矢印は、排ガスの流入方向を示している。また、図2では、供給手段4として、第2のセル31bの上部に排ガス供給口41を設け、排ガスを供給するものを図示しているが、これに限定されるものではない。供給手段4の他の例としては、例えば、排ガス供給口41を第2のセル31bの下部に設け、排ガスが第2のセル31b内の下方から上方に向かって上昇するように供給するものとすることなどが挙げられる。
【0053】
排ガス供給口41及び配管42は、気体の供給・移送に係る公知の構成を用いることができ、具体的な構造は特に限定されない。
また、配管42は、燃焼装置で生じた排ガスを移送するためのものであればよく、燃焼装置と直接接続するものであってもよく、間接的に接続するものであってもよい。
【0054】
供給手段4としては、図2に示すように、発電部3に対し、排ガス供給口41と配管42を設けるものに限定されない。例えば、供給手段4として、電子受容体の貯留箇所や電子受容体を供給するライン上に配管42を接続し、排ガスを電子受容体供給口34aから電極33bに対して供給するものとしてもよい。これにより、排ガス供給口41を別体として設ける必要がなくなるため、装置構成の簡略化が可能となる。
【0055】
なお、本実施態様において、供給手段4と接続する燃焼装置自体の構造や、燃焼装置で燃焼させる対象などについては特に限定されない。
燃焼装置としては、物質の燃焼を行うことができる公知の構成を用いることができる。燃焼装置としては、本実施態様における排水処理装置1Aのために新設するものとしてもよいが、コスト面を鑑み、既設の燃焼装置を利用するものとしてもよい。例えば、ごみ焼却施設における燃焼装置のほか、バイオガス等のガス燃焼による発電施設における燃焼装置などが挙げられる。
また、燃焼装置で燃焼させる物質としては、炭素成分、硫黄成分、窒素成分の少なくとも1つ以上を含み、燃焼後に、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物など、水溶液に溶解することで酸性を示す成分を含む排ガスを生じるものであればよく、具体的な物質としては特に限定されない。
【0056】
燃焼装置の例としては、排水処理の処理過程で生じた排出物を燃焼対象とするものが挙げられる。これにより、排水処理における一連の処理過程の中で発電を行うことに加え、電極反応(発電)効率の低下抑制に係る工程も併せて実施することが可能となる。このため、排水処理装置1Aとして、エネルギーの回収・利用効率が向上するとともに、省コスト化が可能となる。
このような燃焼装置の具体的な例としては、例えば、排水処理で生じた汚泥を焼却するものが挙げられる。これにより、燃焼対象を容易に得ることができるとともに、汚泥処理に係る既設の燃焼装置を利用することができる。さらに、本発明の排水処理装置のために、新たに燃焼装置を設ける必要がなく、イニシャルコストを大幅に低減することが可能となる。
また、燃焼対象を汚泥とした場合、汚泥には有機物が多く含まれるため、燃焼処理により二酸化炭素を多く含む排ガスが発生する。近年、環境への影響を鑑み、二酸化炭素の排出規制が厳しくなっている。このため、二酸化炭素を含む排ガスを発電部3に供給することで、発電部3における電極反応効率の低下を抑制するとともに、二酸化炭素が発電部3内の電解質溶液に溶解するため、二酸化炭素の系外への排出を抑制することが可能となるという効果も奏する。
【0057】
本実施態様の供給手段4の別の態様としては、排ガスの温度を調整するための機構を備えるものとしてもよい。
燃焼装置で生じた排ガスの温度は、100度を超えることもあることが知られている。一方、本実施態様における排水処理装置1Aの発電部3は、水溶液中に配置した電極による電気化学反応を実施するものであり、100度を超える排ガスをそのまま供給すると、電極の劣化を速めるとともに、発電部3内の電解質溶液が蒸発(気化)することで、電極反応効率の低下が生じるなど、熱による不具合が発生するおそれがある。したがって、排ガスの温度を調整し、発電部3に供給することが好ましい。
【0058】
図3は、本実施態様における供給手段4として、排ガスの温度を調整する機構を設けた際の概略説明図である。なお、図3は、排水処理装置1Aにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0059】
図3に示すように、排ガスの温度を調整する機構として、配管42上に温度調整機構43を設け、排ガスの温度調整を行うことが挙げられる。より具体的には、温度調整機構43により、排ガスの温度を100度以下に冷却すること等が挙げられる。これにより、排ガスを発電部3(第2のセル31b)内に供給した際に、熱による不具合が発生することを抑制することが可能となる。
【0060】
温度調整機構43としては、ガス(排ガス)の温度調整が可能なものであればよく、公知の構成を用いることができる。温度調整機構43の一例としては、空気等の気体や冷却水等の液体を用いた熱交換器が挙げられる。また、温度調整機構43の他の例としては、本実施態様の排水処理装置1Aにおける処理槽2や反応槽5に対し、排ガスを用いた加温が可能となるように排ガスの配管等の配置を行うことが挙げられる。これにより、処理槽2や反応槽5を加温処理した後に冷却された排ガスを、配管42を介して発電部3に供給することで、電極反応効率の低下を抑制するとともに、排水処理装置1A全体としての省エネルギー化が可能となる。
【0061】
本実施態様における排水処理装置1Aは、被処理水W中の還元性物質を電子供与体として用い、電気化学反応(電極反応)により発電を行い、エネルギーを回収・利用するものである。一般に、電気化学反応を行う場合、実際に電気化学反応を行う箇所(発電部3)以外へ電子が移動することで、電気化学反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、本実施態様における排水処理装置1Aは電気化学反応を行う箇所(発電部3)以外を絶縁処理することが好ましい。絶縁処理の具体例としては、例えば、処理槽2及び反応槽5を絶縁体の上部に設置することのほか、処理槽2及び反応槽5の外壁あるいは内壁を絶縁体で構成することや、処理槽2及び反応槽5の外壁あるいは内壁を絶縁材料でコーティングすることなどが挙げられる。また、導入配管L1、接続配管L2及び排出配管L3の絶縁処理としては、例えば、それぞれの配管を絶縁体からなるものとすることや、それぞれの配管に絶縁材料をコーティングすること等が挙げられる。
【0062】
以上のように、本実施態様の排水処理装置及び排水処理方法により、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する供給手段を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【0063】
以下、本発明の排水処理装置における処理槽2、発電部3及び反応槽5の別態様について例示する。
【0064】
〔第2の実施態様〕
図4は、本発明の第2の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。また、図5は、本発明の第2の実施態様における排水処理装置の別態様を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る排水処理装置1Bは、処理槽2が、酸生成槽21とメタン発酵槽22からなるものである。また、発電部3が、処理槽2(酸生成槽21及びメタン発酵槽22)に設けられた循環流路上に設けられるものである。ここで、図4図5に示す排水処理装置1Bは、それぞれ発電部3の設置箇所が異なるものを示している。なお、供給手段4としては、第1の実施態様に示した供給手段4のうち、いずれを適用するものであってもよく、特に限定されない。また、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0065】
本実施態様における排水処理装置1Bは、図4及び図5に示すように、処理槽2は、接続配管L4により接続された酸生成槽21とメタン発酵槽22からなり、循環配管L5により酸生成槽21とメタン発酵槽22間には循環流路が形成されており、また、循環配管L6によりメタン発酵槽22内における循環流路が形成されているものである。
なお、図4に示す排水処理装置1Bにおいては、発電部3が循環配管L5上に設けられている。一方、図5に示す排水処理装置1Bにおいては、発電部3が循環配管L6上に設けられている。
【0066】
本実施態様における処理槽2は、酸生成槽21及びメタン発酵槽22を備えるものである。また、酸生成槽21及びメタン発酵槽22は、内部に収容する微生物により、被処理水Wを嫌気処理するための反応槽である。なお、酸生成槽21及びメタン発酵槽22は、嫌気的条件の維持のために、天井を有し、閉じた空間を形成していることが好ましい。
【0067】
酸生成槽21は、導入配管L1により導入される被処理水Wに対し、内部に収容する酸生成菌(主として嫌気性の酸生成菌)により、糖、蛋白質及び油分などの固体や高分子有機物を分解して、単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸を生成する酸生成処理を行うものである。酸生成槽21で処理された被処理水Wは、接続配管L4を介してメタン発酵槽22へ供給される。
【0068】
なお、酸生成槽21は、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、菌が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0069】
メタン発酵槽22は、接続配管L4により供給される酸生成槽21で処理された被処理水Wに含まれる単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸等からメタンを生成するメタン発酵処理を行うものである。メタン発酵処理は、浮遊法、固定床法、流動床法、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法、EGSB(Expanded Granular Sludge Bed)法等により保持されたメタン生成菌により溶存酸素のない嫌気性雰囲気で行うものである。
【0070】
メタン発酵槽22には、嫌気処理に適した嫌気性菌が存在するグラニュール層が形成される。そして、酸生成槽21から被処理水Wがメタン発酵槽22内に導入されると、グラニュール層に含まれる嫌気性菌によってメタン発酵が行われる。その結果、メタン発酵槽22内では、メタン及び二酸化炭素を主成分とするガスが発生するとともに、還元性物質を含む処理水W1を生成する。なお、メタン発酵槽22の内部には気固液分離手段であるセトラー23が設けられていてもよい。メタン発酵槽22内で発生したガスは槽外に放出又は回収される(不図示)。また、メタン発酵槽22で生成された処理水W3は排出配管L7を介して処理系外に排出される。
【0071】
なお、メタン発酵槽22は、さらに付帯する各種設備を設けることができる。例えば、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、菌が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0072】
メタン発酵槽22は、メタン発酵槽22内で発生したガスのうち、メタンガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備えるものとすることが好ましい。これにより、発電部3による発電以外に、被処理水Wから有用なエネルギー源であるメタンガスを回収して有効利用することが可能となる。なお、メタンガスの活用として、ガス燃焼による発電を行う場合、このガス燃焼に用いる燃焼装置から排出される排ガスを、本実施態様における供給手段4により供給される排ガスとして用いるものとしてもよい。これにより、排水処理により生じた排出物を用いて、発電部3の電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
また、メタン発酵槽22は、メタン発酵槽22内で発生したガスのうち、二酸化炭素ガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備え、発電部3における電子受容体供給口34aから第2のセル31b内へ二酸化炭素ガスを導入可能な手段を備えるものとしてもよい。これにより、二酸化炭素ガスを電子受容体として有効利用し、電子受容体の供給コストを低減させことが可能となる。また、上述した二酸化炭素を導入可能な手段は、供給手段4と別体で設けるものであってもよく、供給手段4の一部と重なるものであってもよい。これにより、第2のセル31b内には二酸化炭素が安定して供給されるため、カソード側のpH上昇をより確実に抑制することが可能となる。
【0073】
さらに、本実施態様におけるメタン発酵槽22は、循環配管L5及び/又は循環配管L6を備えている。循環配管L5は、メタン発酵槽22上部の被処理水Wを酸生成槽21に供給するものであり、酸生成槽21とメタン発酵槽22間の循環流路を形成するものである。また、循環配管L6は、メタン発酵槽22上部の被処理水Wをメタン発酵槽22下部に供給するものであり、メタン発酵槽22内における循環流路が形成されている。
【0074】
本実施態様における発電部3は、循環配管L5及び循環配管L6により形成される循環流路上に設けられるものである。
【0075】
図4に示すように、循環配管L5上に発電部3を設けるものについては、メタン発酵槽22からの処理水W1を第1のセル31aに供給し、電極33aにおける反応後の処理水W2は、循環配管L5を介して、酸生成槽21に供給される。このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように水素イオン濃度が上昇し、pHが酸性を示す溶液となる。一般に、酸生成槽21内の反応を好適に進行させるためには、酸生成槽21内のpHは酸性寄りにあることが好ましいことが知られている。したがって、発電部3から酸生成槽21に排出される被処理水Wは、酸生成槽21内の反応を好条件下で進行するためのpH調整剤として利用するものとしてもよい。また、酸生成槽21側の循環配管L5上に、バルブなどの流量調整機構や活性炭などの吸着処理手段を設けるものとしてもよい。これにより、発電部3から排出される処理水W2が酸生成槽21内に流入することで酸生成槽21内のpH範囲が適切な範囲から外れる場合、処理水W2の流入量を制御することや酸生成槽21内の被処理水WのpHを制御することができ、酸生成槽21内の反応に対する阻害を抑制することが可能となる。
【0076】
また、図5に示すように、循環配管L6上に発電部3を設けるものについては、メタン発酵槽22上部からの処理水W1を第1のセル31aに供給し、電極33aにおける反応後の処理水W2は、循環配管L6を介して、メタン発酵槽22下部に供給される。このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように溶存する硫化水素の濃度が低下した溶液となる。メタン発酵槽22内のグラニュール層に含まれるメタン菌は、硫化水素により代謝を阻害されることが知られている。このため、発電部3からメタン発酵槽22下部に排出される処理水W2は、メタン発酵を阻害することなくメタン発酵槽22内を循環することができるという効果を奏する。
【0077】
なお、本実施態様の排水処理装置1Bにおいて、排出配管L7を介して排出された処理水W3は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L7の後段に、第1の実施態様に示した反応槽5を設けるものとしてもよい。これにより、反応槽5による処理を経ることで更に被処理水Wに対する処理効率を向上させ、排水処理装置1Bから被処理水Wを系外に放出することが可能となる。
【0078】
また、本実施態様の排水処理装置1Bにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電を行うことが可能である。
【0079】
以上のように、本実施態様における排水処理装置1B及び排水処理装置1Bを用いた排水処理方法は、処理槽2を酸生成槽21及びメタン発酵槽22とで構成することにより、それぞれの処理(酸生成処理及びメタン発酵)に適した条件下で排水処理を行うことができるため、排水処理効率をより向上させることができる。
【0080】
また、本実施態様における排水処理装置1Bは、発電部3の設置箇所を処理槽2(酸生成槽21及びメタン発酵槽22)に設けられた循環流路上とすることにより、第1のセル31a側に供給された処理水W1を、反応後、もう一度処理槽2(酸生成槽21又はメタン発酵槽22)に供給することになる。したがって、被処理水Wが繰り返し処理されることになり、発電部3から排出される処理水W2に対しても排水処理を向上させることが可能となる。また、このとき発電部3から排出される処理水W2を処理槽2(酸生成槽21又はメタン発酵槽22)に再導入することで、処理槽2における反応を好条件下で進行させることを可能とするという効果も奏する。
【0081】
〔第3の実施態様〕
図6は、本発明の第3の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る排水処理装置1Cは、図6に示すように、第1の実施態様に係る排水処理装置1Aにおいて、反応槽5を曝気槽51とし、曝気槽51と発電部の第2のセル31bに設けられた電子受容体供給口34aとを接続配管L8で接続するものである。なお、本実施態様における排水処理装置1Cにおける供給手段4は、上述した供給手段4を適宜選択することができる。また、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0082】
本実施態様における排水処理装置1Cは、曝気槽51内の処理水W2を発電部3に供給して、発電部3における電子受容体として用いるものである。なお、接続配管L8により発電部3に供給されるもの以外の処理水W2については、処理水W3として系外へ排出する。
【0083】
曝気槽51は、曝気装置52により、槽内に導入された処理水W2に対し、酸素を含む気体(酸素、空気など)の曝気を行い、好気性微生物による好気処理や溶存酸素による酸化反応を進行させるものである。
本実施態様における曝気槽51は、図6に示すように、発電部3の第1のセル31aから排出された処理水W2が導入され、導入された処理水W2に対して曝気を行うものに限定されない。曝気槽51の他の例としては、例えば、処理槽2から直接処理水W1を導入し、曝気を行うもの等が挙げられる。
【0084】
曝気装置52は、酸素を含む気体を曝気槽51内の処理水W2に供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、曝気処理において広く用いられているものとして、ブロワーと曝気管の組み合わせからなるもの等が挙げられる。
【0085】
曝気槽51内には、曝気装置52により酸素を含む気体が導入されるため、曝気槽51内の処理水W2は、溶存酸素を含む液体となっている。したがって、接続配管L8を介して発電部3の第2のセル31b内に導入した処理水W2は、発電部3における電子受容体となる。これにより、排水処理装置1C内における処理工程で発生するものを有効活用した発電を行うことができる。
【0086】
発電部3において電子受容体として用いられた後の処理水W3は、電子受容体排出口34bから排出される。このとき、排出された処理水W3は河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出された処理水W3を曝気槽51に返送し、再度曝気処理を行うものとしてもよい。これにより、系外へ放流する処理水W3の水質制御をより確実に行うことが可能となる。
【0087】
また、本実施態様の排水処理装置1Cにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電を行うことが可能である。
【0088】
以上のように、本実施態様における排水処理装置1C及び排水処理装置1Cを用いた排水処理方法は、排水処理装置1C内で進行する処理工程で生じたものを、発電部3における電子供与体及び電子受容体として利用することができ、発電に係るランニングコストを低減させることが可能となる。
【0089】
〔第4の実施態様〕
[処理システム]
本発明における処理システムは、排水処理装置と燃焼装置を組み合わせたものである。特に、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することができる排水処理装置と、物質を燃焼処理するための燃焼装置とを組み合わせることで、エネルギーの効率的な回収・利用を可能とするものである。
【0090】
図7は、本発明の第4の実施態様における処理システムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様における処理システム100は、図7に示すように、排水処理装置1と燃焼装置10とを備えるものである。
【0091】
本実施態様の処理システム100における排水処理装置1は、被処理水に対する処理を行うとともに、発電を行うものである。
本実施態様における排水処理装置1としては、被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電部を備えるものが挙げられる。更に、燃焼装置で生じた排ガスを、前記発電部へ供給する供給手段を備えるものが挙げられる。これにより、排水処理における一連の処理過程の中で効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する供給手段を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
このような排水処理装置1としては、上述した第1~第3の実施態様における排水処理装置1A~1C等が挙げられる。なお、図7における排水処理装置1としては、上述した排水処理装置1Aと同様の構造を用いるものとしている。
【0092】
本実施態様における排水処理装置1の各構造に係る詳細な説明は省略するが、供給手段4における配管42は、図7に示すように、燃焼装置10と直接接続するものとすることが好ましい。これにより、処理システム100としての構成を簡略化することができ、省コスト化や省エネルギー化が可能となる。
【0093】
本実施態様の処理システム100における燃焼装置10は、物質の燃焼を行うものである。また、燃焼装置10で生じた排ガスは排水処理装置1に供給されるものである。
本実施態様における燃焼装置10としては、物質の燃焼を行うことができる公知の構成を用いることができる。燃焼装置としては、本実施態様における処理システム100のために新設するものとしてもよく、既設の燃焼装置を利用するものとしてもよい。
また、燃焼装置10で燃焼させる物質としては、炭素成分、硫黄成分、窒素成分の少なくとも1つ以上を含み、燃焼後に、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物など、水溶液に溶解することで酸性を示す成分を含む排ガスを生じるものであればよく、具体的な物質としては特に限定されない。
【0094】
燃焼装置10の例としては、排水処理装置1における処理過程で生じた排出物を燃焼対象とするものが挙げられる。これにより、排水処理における一連の処理過程の中で発電を行うことに加え、電極反応(発電)効率の低下抑制に係る工程も併せて実施することが可能となる。このため、処理システム100として、エネルギーの回収・利用効率が向上するとともに、省コスト化が可能となる。
このような燃焼装置10の具体的な例としては、例えば、排水処理装置1で生じた汚泥を焼却するものや、排水処理装置1で生じたバイオガスを燃焼するもの等が挙げられる。これにより、燃焼対象を容易に得ることができるとともに、既設の燃焼装置を利用することができ、イニシャルコストを大幅に低減することが可能となる。特に、燃焼対象を汚泥とした場合、汚泥には有機物が多く含まれるため、燃焼処理により二酸化炭素を多く含む排ガスが発生する。近年、環境への影響を鑑み、二酸化炭素の排出規制が厳しくなっている。このため、二酸化炭素を含む排ガスを発電部3に供給することで、発電部3における電極反応効率の低下を抑制するとともに、二酸化炭素が発電部3内の電解質溶液に溶解するため、二酸化炭素の系外への排出を抑制することが可能となるという効果も奏する。
【0095】
以上のように、本実施態様の処理システムにおいて、排水処理装置と燃焼装置とを組み合わせ、排水処理装置には電極を用いた発電部を設置することで、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する供給手段を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、処理システムとして発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【0096】
なお、上述した実施態様は、排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムの一例を示すものである。本発明に係る排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムは、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る排水処理装置及び排水処理方法並びに処理システムを変形してもよい。
【0097】
例えば、本実施態様における排水処理装置は、複数の発電部を備えるものとしてもよい。例えば、第1の実施態様に示した発電部と、第2の実施態様に示した発電部の両方を備えること等が挙げられる。これにより、排水処理装置内での被処理水Wの処理工程を有効活用した発電を複数箇所で行うことが可能となるとともに、排水処理効率と発電効率の両方を向上させることが可能となる。
【0098】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置の電極33a及び電極33bを、電極33a及び電極33bの表面が露出した状態で筐体内に配置し、発電部3から取り出し可能とした電極ユニットとして発電部3に設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33bのメンテナンス時において、発電部3から取り出すことが容易となるため、メンテナンス作業が容易となる。
【0099】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置は、発電部3として、処理槽2(メタン発酵槽22)内のセトラー23部分に電極33a及び電極33bを設けるものとしてもよい。なお、セトラー23近傍に電極33a及び電極33bを設けるものであってもよく、セトラー23そのものを電極33a及び電極33bとして利用するものであってもよい。これにより、発電部3が処理槽2内に組み込まれる形となるため、より一層の設備の小型化が可能となる。
【0100】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置は、電極33bを曝気槽51内に設け、曝気槽51が発電部3の第2のセル31bとして機能するものとしてもよい。これにより、発電部3と反応槽5(曝気槽51)を一体化し、より一層の設備の小型化が可能となる。
【0101】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置は、絶縁機構を設けるものとしてもよい。絶縁機構は、発電部3で反応する処理水W1以外の処理水(処理水W2)を絶縁することができるものであればよく、特に限定されない。
絶縁機構による絶縁手段としては、例えば、発電部3の電極33aと処理水W2との電気的な接触(液絡)の解消あるいは液絡時間の短縮が挙げられる。このような液絡解消手段又は液絡時間の短縮手段の例としては、処理水W2の流れを不連続(断続的)とする手段や、処理水W2に空気などの絶縁体を介在させる手段、あるいはこれらの手段を組み合わせるもの等が挙げられる。これにより、発電部3で生成した電子が電極33a及び電極33bの間以外に流れることを防ぎ、発電効率を向上させるものである。
なお、本実施態様における排水処理装置は、第1の実施態様に示したような排水処理装置を構成する構造物(処理槽や配管)に係る絶縁を併せて行うものとしてもよい。これにより、より一層の絶縁効果を得ることができ、発電部3における発電効率を向上させることが可能となる。
【0102】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置は、一部の構造を省略し、装置構成をより簡略化するものとしてもよい。
省略可能な構造としては、例えば、イオン交換体35が挙げられる。これにより、発電部3の簡略化が可能となるとともに、メンテナンス作業が容易となる。
また、省略可能な構造の他の例としては、第2のセル31bにおける電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bが挙げられる。これにより、発電部3をより簡略化することが可能となる。このとき、電極33bの一面が処理水W1又はイオン交換体35に接触し、もう一方の面が全体的に外気(空気)に直接接触する構造とすること等が挙げられる。さらに、外気側の電極33b表面に交換又は洗浄容易な通気性素材を設けることが好ましい。これにより、塵などの固体不純物が電極33b表面に付着することを抑制することができる。
【0103】
さらに、例えば、本実施態様における処理システムは、第1~第3の実施態様に示した排水処理装置に限定されるものではなく、上述した排水処理装置の構成のいずれを用いるものとしてもよい。これにより、処理システムとして、排水処理装置と燃焼装置の組み合わせを適宜選択し、エネルギーの回収・利用に係る効率を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の排水処理装置及び排水処理方法は、被処理水を処理する排水処理に利用される。特に、被処理水を処理することにより還元性物質が発生する排水処理において、好適に利用されるものである。
【0105】
また、本発明の処理システムは、被処理水を処理する排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施する排水処理装置と燃焼装置を組み合わせて、エネルギーの回収・利用を行うことのできる処理システムとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0106】
1A,1B,1C 排水処理装置、10 燃焼装置、100 処理システム、2 処理槽、21 酸生成槽、22 メタン発酵槽、23 セトラー、24 pH調整手段、3 発電部、31a 第1のセル、31b 第2のセル、32a 処理水導入口、32b 処理水排出口、33a,33b 電極、34a 電子受容体供給口、34b 電子受容体排出口、35 イオン交換体、4 供給手段、41 排ガス供給口、42 配管、43 温度調整機構、5 反応槽、51 曝気槽、52 曝気装置、L1 導入配管、L2 接続配管、L3,L7 排出配管、L4,L8,L9 接続配管、L5,L6 循環配管、W 被処理水、W1,W2,W3 処理水
図1
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図7