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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】断熱容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B65D81/38 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020011837
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116115
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安本 考広
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102622(JP,A)
【文献】特開2018-104068(JP,A)
【文献】特開2018-193122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面板、
下面板、
複数の側面板、および
前記上面板と、前記下面板と、前記側面板とにより形成された断熱空間を備え、
前記複数の側面板はそれぞれ、
真空断熱側面パネルと、
前記真空断熱側面パネルを収容する側面ケースと、を備え、
前記真空断熱側面パネルは、前記側面ケース内にて、前記断熱空間側の第1の側壁および当該第1の側壁に隣接する第2の側壁に接し、かつ前記第2の側壁と対向する第3の側壁と離間するように配置されており、
前記複数の側面板はそれぞれ、一方の側面板の前記第1の側壁が他方の側面板の前記第2の側壁と接するように、配置されており、
前記真空断熱側面パネルと当該真空断熱側面パネルを収容する側面ケースとの間に隙間を有する、断熱容器。
【請求項2】
前記真空断熱側面パネルは、前記第1および第2の側壁以外の全ての側壁と離間するように配置されている、請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記第3の側壁と前記真空断熱側面パネルとの隙間に配置された弾性体を備える、請求項1または2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記第1および第2の側壁以外の全ての側壁と前記真空断熱側面パネルとの隙間に配置された弾性体を備える、請求項2に記載の断熱容器。
【請求項5】
前記上面板は、真空断熱上面パネルと、前記真空断熱上面パネルを収容する上面ケースと、を備え、前記真空断熱上面パネルは、前記上面ケース内にて、少なくとも前記断熱空間側の壁に接するように配置されており、
前記下面板は、真空断熱下面パネルと、前記真空断熱下面パネルを収容する下面ケースと、を備え、前記真空断熱下面パネルは、前記下面ケース内にて、少なくとも前記断熱空間側の壁に接するように配置されており、
前記複数の側面板の上端および下端はそれぞれ、前記上面板および下面板に接しており、前記真空断熱側面パネルは、前記側面ケース内にて、上壁および下壁の少なくとも一方に接している、請求項1~4のいずれか1項に記載の断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡スチロール等の断熱材を用いた定温保管用の断熱容器が知られている。近年、凍結細胞等を保管または輸送する場合、前記断熱容器は、極低温領域での温度維持が要求される。このような凍結細胞等の定温保管用の断熱容器に発泡スチロール等の断熱材を用いた場合、発泡スチロール等の断熱性能では、断熱材の厚さが大きくなる、大量の蓄熱材を使用する必要があるといった問題がある。この結果、断熱容器の重量が大きくなる。
【0003】
そこで、凍結細胞等の保管・輸送においては、断熱性能に優れた断熱容器が要求されている。なかでも、真空断熱材は、厚み方向の熱伝導率が極めて低い。それゆえ、真空断熱パネルを使用した断熱容器が注目されている。
【0004】
例えば特許文献1,2には、真空断熱パネルを使用した断熱容器が開示されている。
【0005】
特許文献1には、折り畳み式保冷保温容器が開示されている。そして、当該容器の壁部を構成する断熱体は、真空断熱パネルとしての第一断熱材と第二断熱材とがカバー材内に収容された構成となっている。
【0006】
また、特許文献2に開示された断熱容器では、壁部を構成する断熱体が、真空断熱パネルとしての真空断熱要素と、前記真空断熱要素に組み合わされた断熱要素と、を備えている。そして、前記真空断熱要素および前記断熱要素は共に外皮によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-201438号公報
【文献】特開2011-102622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1または2に記載の断熱容器は、カバー材または外皮といったケース内に真空断熱パネルおよび他の断熱材の集合物が収容された構成となっている。当該集合物は、ケースと隙間なく収容されている。このため、特許文献1および2に記載の技術では、ケースから真空断熱パネルを取り外すことが困難であるという問題があることが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0009】
また、特許文献1および2に記載の断熱容器では、真空断熱パネルの損傷を防ぎ、かつ側壁同士の接合部分での熱の漏洩を防止する点で改善の余地がある。
【0010】
本発明の一態様は、(i)外部衝撃による真空断熱パネルの損傷を防ぎ、かつ側壁同士の接合部分での熱の漏洩を防止するとともに、(ii)側壁を構成する真空断熱側面パネルについて側面ケースから真空断熱パネルの出し入れが容易であり、出し入れ時に真空断熱パネルを損傷することを防ぐことができる断熱容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る断熱容器は、上面板、下面板、複数の側面板、および前記上面板と、前記下面板と、前記側面板とにより形成された断熱空間を備え、前記複数の側面板はそれぞれ、真空断熱側面パネルと、前記真空断熱側面パネルを収容する側面ケースと、を備え、前記真空断熱側面パネルは、前記側面ケース内にて、前記断熱空間側の第1の側壁および当該第1の側壁に隣接する第2の側壁に接し、かつ前記第2の側壁と対向する第3の側壁と離間するように配置されており、前記複数の側面板はそれぞれ、一方の側面板の前記第1の側壁が他方の側面板の前記第2の側壁と接するように、配置されている構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、(i)外部衝撃による真空断熱パネルの損傷を防ぎ、かつ側壁同士の接合部分での熱の漏洩を防止するとともに、(ii)側壁を構成する真空断熱側面パネルについて側面ケースから真空断熱パネルの出し入れが容易であり、出し入れ時に真空断熱パネルを損傷することを防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る定温保管容器の概略構成を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体の前提的構成を概略的に示す水平断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体の概略構成を示す水平断面図である。
図4】本発明の実施形態2に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体の概略構成を示す水平断面図である。
図5】本発明の実施形態2に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体の変形例の概略構成を示す水平断面図である。
図6】601~603は、本発明の実施形態3に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体の概略構成を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る定温保管容器100(断熱容器)の概略構成を示す分解斜視図である。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態に係る定温保管容器100は、断熱容器本体10と、断熱容器本体10を収容する外箱20と、を備えている。外箱20は、断熱容器本体10が収容される外箱本体20aと、外箱本体20aを閉塞する蓋部20bと、を備えている。外箱本体20aおよび蓋部20bの材料は、特に限定されないが、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリオレフィン系樹脂発泡体などの発泡樹脂、プラスチック段ボール、紙製ダンボールなどの段ボールが好ましく、断熱性の観点からポリスチレン系樹脂発泡体、ポリオレフィン系樹脂発泡体などの発泡樹脂がより好ましい。また、外箱20は、発泡樹脂と段ボールとを組み合わせて構成してもよい。さらに、外箱20は、外装材を備えていてもよく、外装材は、例えば、繊維製シートの一方の面にアルミ蒸着されたアルミ蒸着シートで構成されている。外箱20は、断熱容器本体10を適合して収容する寸法に形成される。断熱容器本体10は、外箱20に収容される。
【0016】
断熱容器本体10は、直方体の箱形状であり、側面を構成する側面板1~4と、下面を構成する下面板5と、上面を構成する上面板6と、を備えている。側面板1~4は、断熱容器本体10の角部A~D(接合部分)にて、互いに端部が隣り合うように接合されている。断熱容器本体10では、側面板1~4、下面板5、および上面板6により、断熱空間Eが形成されている(図3参照)。なお、ここでは、断熱容器本体10における下面板5側を下側とし、その反対側(すなわち、上面板6側)を上側とする。また、側面板1~4各々について、下側から上側へ向かう方向を高さ方向とし、当該高さ方向および側面板の厚さ方向の両方に垂直な方向を幅方向とする。
【0017】
断熱容器本体10では、側面板1~4、下面板5、および上面板6は、真空断熱パネルを備えている。外部衝撃による真空断熱パネルの損傷を防ぐために、これらの真空断熱パネルは、保護ケースに収容されている。当該保護ケースは、真空断熱パネルの寸法に適合した寸法に設定されている。真空断熱パネルの寸法に適合した寸法とは、1つの真空断熱パネルが収容されることを想定して設計された保護ケースの寸法を意味する。当該寸法は、保護ケースの体積に対する真空断熱パネルの占有体積の割合が50%以上100%未満、好ましくは70%以上98以下、より好ましくは80%以上95%以下となる寸法である。また、前記保護ケースの材料は、真空断熱パネルの保護に使用される従来公知の材料であればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。なお、断熱容器本体10においては、側面板1~4、下面板5、および上面板6のうち少なくとも隣り合う2つのパネルが真空断熱パネルを備えていればよい。
【0018】
図2は、本実施形態に係る定温保管容器100に備えられた断熱容器本体10の前提的構成を概略的に示す水平断面図である。図2に示されるように、前提的構成としての断熱容器本体10’では、側面板1~4はそれぞれ、真空断熱側面パネル11、21、31、および41と、側面ケース12、22、32および42と、を備えている。なお、以下、真空断熱側面パネル11、21、31、および41は、真空断熱側面パネル11~41と称することもある。また、側面ケース12、22、32および42は、側面ケース12~42と称することもある。
【0019】
側面ケース12~42はそれぞれ、真空断熱側面パネル11~41を収容するためのケースであり、前記保護ケースに対応する。側面ケース12~42はそれぞれ、真空断熱側面パネル11~41の寸法に適合した寸法で設計されている。
【0020】
ここで、図2に示されるように、通常、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、側面ケース12~42の中心に配置される。このため、断熱容器本体10の角部A~Dにおいて、真空断熱側面パネル11~41同士の間に隙間が生じる。通常、真空断熱側面パネルは、各パネルで寸法のバラツキが大きい。このため、角部A~Dにおける真空断熱側面パネル11~41同士の隙間にもバラツキが生じる。さらに、側面ケース12~42の寸法は、真空断熱側面パネルの寸法のバラツキ範囲の中で最大寸法に適合して設計される。このため、角部A~Dにおける真空断熱側面パネル11~41同士の隙間が大きくなる。
【0021】
このように真空断熱側面パネル11~41同士に隙間が生じるため、断熱容器本体10’では、側面板1~4の接合部分(角部A~D)にて熱の漏洩が生じる。
【0022】
また、このような熱の漏洩を防止するために、真空断熱側面パネル11~41それぞれが側面ケース12~42に隙間なく収容されるように側面ケース12~42の寸法を設定することが考えられる。しかし、この場合、側面ケース12~42それぞれから真空断熱側面パネル11~41を出し入れすることが困難である。さらには、出し入れする時に、真空断熱側面パネル11~41が損傷するおそれがある。
【0023】
本実施形態に係る定温保管容器100は、次の(1)および(2)の両方の効果を奏する。(1)側面ケース12~42により真空断熱側面パネル11~14の損傷を防ぎ、かつ側面板1~4同士の接合部分での熱の漏洩を防止する。(2)側面板1~4について側面ケース12~42それぞれから真空断熱側面パネル11~41の出し入れが容易になる。図3は、本実施形態に係る定温保管容器100に備えられた断熱容器本体10の概略構成を示す水平断面図である。
【0024】
図3に示されるように、断熱容器本体10の側面板1~4において、真空断熱側面パネル11~41は、側面ケース12~42内にて、次の(a)および(b)の両方の要件を満たすように配置されている。(a)真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、断熱空間E側の第1側壁12a~42aおよび第1側壁12a~42aに隣接する第2側壁12b~42bに接する。(b)真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、第2側壁12b~42bと対向する第3側壁12c~42cと離間する。なお、第1側壁12a~42aは、第1側壁12a、22a、32aおよび42aを意図する。また、第2側壁12b~42bは、第2側壁12b、22b、32b、および42bを意図する。
【0025】
ここで、前記(a)の要件において、真空断熱側面パネル11~41が第1側壁12a~42aまたは第2側壁12b~42bに接する構成は、接する状態について、特に限定されない。例えば、当該構成は、真空断熱側面パネル11~41の面全体に隙間なく第1側壁12a~42aまたは第2側壁12b~42bが密着した状態であってもよい。また、当該構成は、弾性接着剤等により真空断熱側面パネル11~41と第1側壁12a~42aまたは第2側壁12b~42bとが接着した状態であってもよい。さらに、当該構成は、真空断熱側面パネル11~41の凹凸面に第1側壁12a~42aまたは第2側壁12b~42bが接した状態であってもよい。一般的に、真空断熱パネルは、断熱材料からなる芯材と、芯材を収容する袋状の外包材(外装フィルム等)と、を備え、外包材の内部が真空状態に維持されている。外包材の形態等に応じて、真空断熱側面パネル11~41の外面は、凹凸面または平面になり得る。
【0026】
また、前記(a)および(b)の両方の要件を満たすように配置された状態が維持されていれば、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、側面ケース12~42に対して任意の公知の形態で配置され得る。例えば、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、弾性接着剤等の接着剤、または両面テープによって、側面ケース12~42に対して配置されていてもよい。このような真空断熱側面パネル11~41の側面ケース12~42に対する配置形態は、定温保管容器100の使用状況(運搬または移動の有無等)に応じて適宜設定し得る。
【0027】
さらに、断熱容器本体10では、複数の側面板1~4はそれぞれ、一方の側面板の第1側壁が他方の側面板の第2側壁と接するように、配置されている。より具体的には、図3に示されるように、側面板1~4はそれぞれ、次の(c)~(f)を満たすように配置されている。(c)角部Aにおいて、側面板1の第1側壁12aが側面板2の第2側壁22bと接する。(d)角部Bにおいて、側面板2の第1側壁22aが側面板3の第2側壁32bに接する。(e)角部Cにおいて、側面板3の第1側壁32aが側面板4の第2側壁42bに接する。(f)角部Dにおいて、側面板4の第1側壁42aが側面板1の第2側壁12bに接する。
【0028】
上述のように、断熱容器本体10では、前記(a)および(b)の要件を満たすように、真空断熱側面パネル11~41が側面ケース12~42内にて配置されているとともに、前記(c)~(f)の要件を満たすように側面板1~4が配置されている。それゆえ、断熱容器本体10では、側面板1~4の接合部分(角部A~D)それぞれにおいて、真空断熱側面パネル11~41同士は隙間なく接することになる。このため、断熱容器本体10では、(1)側面ケース12~42により真空断熱側面パネル11~14の損傷を防ぎ、かつ側面板1~4同士の接合部分での熱の漏洩を防止できる。
【0029】
さらに、(b)真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、第2側壁12b~42bと対向する第3側壁12c~42cと離間する。この離間により、真空断熱側面パネル11~41とこれら真空断熱側面パネルを収容する側面ケース12~42との間に隙間が生じる。その結果、(2)側面板1~4について側面ケース12~42それぞれから真空断熱側面パネル11~41の出し入れが容易になる。また、側面ケース12~42それぞれから出し入れする時に、真空断熱側面パネル11~41を損傷することを防ぐことができる。
【0030】
なお、本実施形態では、側面ケース12~42にて、真空断熱側面パネル11~41それぞれが少なくとも第3側壁12c~42cと離間していれば、前記(2)の効果を奏し得る。図3に示されるように、第3側壁12c~42cに加えて、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、第1側壁12a~42aと対向する第4側壁12d~42dと離間することが好ましい。すなわち、好ましくは、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、第1側壁12a~42aおよび第2側壁12b~42b以外の全ての側壁(第3側壁12c~42cおよび第4側壁12d~42d)と離間するように配置されている。なお、第4側壁12d~42dは、第4側壁12d、22d、32d、および42dを意図する。上記の構成により、真空断熱側面パネル11~41と側面ケース12~42との間の隙間が大きくなる。それゆえ、側面板1~4について側面ケース12~42それぞれから真空断熱側面パネル11~41の出し入れがより一層容易になる。
【0031】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0032】
図4は、本実施形態に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体10Aの概略構成を示す水平断面図である。図4に示されるように、断熱容器本体10Aは、弾性体13~43を備えた点が前記実施形態1と異なる。
【0033】
図4に示されるように、断熱容器本体10Aの角部Aにおいて、真空断熱側面パネル11と第3側壁12cとの隙間に弾性体13が配置されている。同様に、角部B~Dそれぞれにおいて、真空断熱側面パネル21~41と第3側壁22c~42cとの隙間に弾性体23~43が配置されている。
【0034】
例えば、側面ケース12~42それぞれの側壁に接着剤または両面テープを設けて真空断熱側面パネル11~41を位置固定した場合、輸送などにより定温保管容器が振動したとき、真空断熱側面パネル11~41が破損するおそれがある。具体的には、定温保管容器の振動により、真空断熱側面パネル11~41と側面ケース12~42との固定部にて、真空断熱側面パネル11~41の外装フィルムが破損するおそれがある。
【0035】
本実施形態では、真空断熱側面パネル11~41と第3側壁12c~42cとの隙間に弾性体13~43が配置されている。弾性体13~43により、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、第2側壁12b~42b側へ付勢された状態となる。そして、この付勢によって、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、側面ケース12~42内にて位置が固定される。このように、本実施形態では、側面ケース12~42それぞれの側壁に接着剤または両面テープを設けずに、真空断熱側面パネル11~41がそれぞれ、側面ケース12~42内にて位置が固定される。このため、定温保管容器の振動による、真空断熱側面パネル11~41の外装フィルムの破損を防止することができる。
【0036】
さらに、真空断熱側面パネル11~41と第3側壁12c~42cとの隙間に弾性体13~43を配置することにより、より簡便に、側面ケース12~42に対して真空断熱側面パネル11~41を位置固定できる。
【0037】
なお、真空断熱側面パネル11~41それぞれを第1側壁12a~42a側へ付勢できれば、弾性体13~43の材料は、特に限定されず、公知の技術を適用し得る。真空断熱パネル11~41への衝撃の緩和や断熱性の観点から、弾性体13~43の材料は、好ましくは樹脂製の弾性体であり、より好ましくは、発泡ポリエチレンや発泡プロピレンなどの発泡ポリオレフィン;軟質発泡ウレタン;エチレンプロピレンゴム発泡体などのゴム発泡体である。
【0038】
図5は、本実施形態に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体10Aの変形例の概略構成を示す水平断面図である。図5に示されるように、変形例としての断熱容器本体10Bでは、弾性体13’~43’はそれぞれ、第1側壁12a~42aおよび第2側壁12b~42b以外の全ての側壁と真空断熱側面パネル11~41との隙間に配置されている。具体的には、真空断熱側面パネル11~41と第3側壁12c~42cとの隙間に配置される弾性体13~43に加え、弾性体13’~43’はそれぞれ、真空断熱側面パネル11~41と第4側壁12d~42dの隙間にも配置されている。
【0039】
これにより、真空断熱側面パネル11~41はそれぞれ、第2側壁12b~42b側に加え、第1側壁12a~42a側へも付勢された状態となる。このため、より強固に、側面ケース12~42に対して真空断熱側面パネル11~41を位置固定できる。なお、第1側壁12a~42aおよび第2側壁12b~42b以外の全ての側壁と真空断熱側面パネル11~41との隙間に配置される弾性体13’~43’は、図5では、それぞれ第4側壁12d~42dに対して1個ずつである場合を図示するが、これに限定されず、複数個を配置することもできる。また、弾性体13’~43’の形状も限定されず、板状であってもよく、真空断熱側面パネル11~41と第4側壁12d~42dの隙間を全面に亘って埋める構成とすることもできる。
【0040】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0041】
図6の601~603は、本実施形態に係る定温保管容器に備えられた断熱容器本体10C~10Eの概略構成を示す垂直断面図である。なお、図6の601~603では、下面板5および上面板6と側面板2および4との関係が示されている。下面板5および上面板6と側面板1および3との関係は、図6の601~603に示された関係と同様であるので、説明を省略する。断熱容器本体10C~10Eは、下面板5および上面板6の構成に特徴がある。
【0042】
図6の601に示されるように、断熱容器本体10Cでは、側面板2および4の下端および上端はそれぞれ、下面板5の上面および上面板6の下面に接している。下面板5は、真空断熱下面パネル51と、真空断熱下面パネル51を収容する下面ケース52と、を備えている。そして、真空断熱下面パネル51は、下面ケース52内にて、少なくとも断熱空間E側の上壁52aに接するように配置されている。また、上面板6は、真空断熱上面パネル61と、真空断熱上面パネル61を収容する上面ケース62と、を備えている。そして、真空断熱上面パネル61は、上面ケース62内にて、少なくとも断熱空間E側の下壁62aに接するように配置されている。
【0043】
下面ケース52および上面ケース62はそれぞれ、上述した保護ケースに対応する。下面ケース52および上面ケース62はそれぞれ、真空断熱下面パネル51および真空断熱上面パネル61の寸法に適合する寸法で設計されている。
【0044】
また、断熱容器本体10Cでは、真空断熱側面パネル21および41はそれぞれ、側面ケース22および42内にて、下壁22eおよび42eと上壁22fおよび42fとの何れか一方に接している。より具体的には、真空断熱側面パネル21は、側面ケース22内にて、下壁22eに接している。また、真空断熱側面パネル41は、側面ケース42内にて、上壁42fに接している。これにより、断熱容器本体10Cでは、側面板2と下面板5との接合部分および側面板4と上面板6との接合部分での熱の漏洩を防止できる。
【0045】
なお、図6の601に示す構成は、複数の側面板1~4の真空断熱側面パネル11~41それぞれが側面ケース12~42内にて上壁および下壁の何れが一方に接している構成である。この構成である限り、側面ケース12~42の上壁または下壁に接している真空断熱側面パネル11~41の数は、1~3に自由に設定することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る定温保管容器では、断熱容器本体は、複数の側面板1~4の真空断熱側面パネル11~41それぞれが側面ケース12~42内にて上壁のみに接している構成であってもよい。図6の602に示されるように、断熱容器本体10Dでは、真空断熱側面パネル21および41はそれぞれ、側面ケース22および42内にて、上壁22fおよび42fに接している。これにより、断熱容器本体10Dでは、側面板2および4と上面板6との接合部分での熱の漏洩を防止できる。
【0047】
また、本実施形態に係る定温保管容器では、断熱容器本体は、複数の側面板1~4の真空断熱側面パネル11~41それぞれが側面ケース12~42内にて下壁のみに接している構成であってもよい。図6の603に示されるように、断熱容器本体10Eでは、真空断熱側面パネル21および41はそれぞれ、側面ケース22および42内にて、下壁22eおよび42eに接している。これにより、断熱容器本体10Dでは、側面板2および4と下面板5との接合部分での熱の漏洩を防止できる。
【0048】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
(まとめ)
本発明の態様1に係る断熱容器(定温保管容器100、断熱容器本体10)は、上面板6、下面板5、複数の側面板1~4、および前記上面板6と、前記下面板5と、前記側面板1~4とにより形成された断熱空間Eを備え、前記複数の側面板1~4はそれぞれ、真空断熱側面パネル11~41と、前記真空断熱側面パネル11~41を収容する側面ケース12~42と、を備え、前記真空断熱側面パネル11~41は、前記側面ケース12~42内にて、前記断熱空間E側の第1の側壁(第1側壁12a~42a)および当該第1の側壁に隣接する第2の側壁(第2側壁12b~42b)に接し、かつ前記第2の側壁と対向する第3の側壁(第3側壁12c~42c)と離間するように配置されており、前記複数の側面板1~4はそれぞれ、一方の側面板1~4の前記第1の側壁(第1側壁12a~42a)が他方の側面板1~4の前記第2の側壁(第2側壁12b~42b)と接するように、配置されている構成である。
【0050】
本発明の態様2に係る断熱容器(定温保管容器100、断熱容器本体10)は、態様1において、前記真空断熱側面パネル11~41は、前記第1および第2の側壁(第1側壁12a~42aおよび第2側壁12b~42b)以外の全ての側壁(第3側壁12c~42c、第4側壁12d~44d)と離間するように配置されている構成である。
【0051】
本発明の態様3に係る断熱容器(定温保管容器100、断熱容器本体10A)は、態様1または2において、前記第3の側壁(第3側壁12c~42c)と前記真空断熱側面パネル11~41との隙間に配置された弾性体13~43を備える構成である。
【0052】
本発明の態様4に係る断熱容器(定温保管容器100、断熱容器本体10B)は、態様2において、前記第1および第2の側壁(第1側壁12a~42aおよび第2側壁12b~42b)以外の全ての側壁(第3側壁12c~42c、第4側壁12d~44d)と前記真空断熱側面パネル11~41との隙間に配置された弾性体13~43を備える構成である。
【0053】
本発明の態様5に係る断熱容器(定温保管容器100、断熱容器本体10C~10E)は、態様1~4の何れかにおいて、前記上面板6は、真空断熱上面パネル61と、前記真空断熱上面パネル61を収容する上面ケース62と、を備え、前記真空断熱上面パネル61は、前記上面ケース62内にて、少なくとも前記断熱空間E側の壁(下壁62a)に接するように配置されており、前記下面板5は、真空断熱下面パネル51と、前記真空断熱下面パネル51を収容する下面ケース52と、を備え、前記真空断熱下面パネル51は、前記下面ケース52内にて、少なくとも前記断熱空間E側の壁(上壁52a)に接するように配置されており、前記複数の側面板1~4の上端および下端はそれぞれ、前記上面板6および下面板5に接しており、前記真空断熱側面パネル11~41は、前記側面ケース12~42内にて、上壁22f・42fおよび下壁22e・42eの少なくとも一方に接している構成である。
【符号の説明】
【0054】
1、2、3、4 側面板
5 下面板
6 上面板
10、10A、10B、10C、10D、10E 断熱容器本体
11、21、31、41 真空断熱側面パネル
12、22、32、42 側面ケース
12a、22a、32a、42a 第1側壁
12b、22b、32b、42b 第2側壁
12c、22c、32c、42c 第3側壁
12d、22d、32d、42d 第4側壁
22e、42e 下壁
22f、42f 上壁
13、23 弾性体
51 真空断熱下面パネル
52 下面ケース
52a 上壁(断熱空間側の壁)
61 真空断熱上面パネル
62 上面ケース
62a 下壁(断熱空間側の壁)
100 定温保管容器(断熱容器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6