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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G03G21/16 133
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020014168
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120718
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-185779(JP,A)
【文献】特開2019-159144(JP,A)
【文献】特開2011-145658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/385-2/415
2/43-2/47
29/00-29/70
G03G 13/00
13/04
13/045
13/056
15/00
15/04-15/043
15/047
15/056
21/16-21/18
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤で記録材に画像形成が可能なカートリッジを有する画像形成部と、
前記画像形成部の上方に設けられ、第1の回転軸を中心として回動可能な原稿読取部と、
を備え、
前記画像形成部は、上方から前記カートリッジを着脱可能とする開口部と、前記第1の回転軸と平行な第2の回転軸を中心として回動可能とされ、前記開口部を開放した開状態と、前記開口部を閉塞する閉状態と、を取りうるカバー部材と、を有し、
前記原稿読取部は係合部、前記カバー部材は摺動面を有し、
前記原稿読取部に力を作用させ、前記原稿読取部を回動させることで、前記係合部は前記摺動面と摺動しつつ、前記摺動面を介して前記係合部から力を作用させ、前記カバー部材を回動させる画像形成装置であって、
前記摺動面は、前記第1の回転軸に直交する断面において、前記画像形成装置における前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸が設けられた一端側から前記一端側と対向する反対側に向かうほど前記原稿読取部に近づく第1の部分を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記摺動面の第1の部分は、平面であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記摺動面の第1の部分は、曲面であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記摺動面は、前記第1の部分に続き、前記原稿読取部の前記カバー部材と対向する面までの距離が一定となる第2の部分を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記摺動面は、前記第1の部分の正面側の端部に連続し、前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に直交する断面が、前記正面側に向かうほど前記原稿読取部との距離が長くなる第2の部分を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記摺動面は、前記第2の部分の前記正面側の端部に連続し、前記カバー部材との間に前記係合部が侵入するような隙間がないように形成されている規制部を有することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記開状態における前記原稿読取部と前記カバー部材との距離は、前記閉状態における前記原稿読取部と前記カバー部材との距離よりも短いことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記原稿読取部は、下面に設けられた第1の突き当て部を有し、
前記カバー部材は、前記摺動面の前記第2の部分の上面に設けられた第2の突き当て部を有し、
前記第1の突き当て部は、前記閉状態のときに前記第2の突き当て部と当接することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記原稿読取部は、下面に設けられた第1の突き当て部を有し、
前記カバー部材は、前記摺動面の前記規制部の上面に設けられた第2の突き当て部を有し、
前記第1の突き当て部は、前記閉状態のときに前記第2の突き当て部と当接することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1の回転軸は、前記第2の回転軸よりも正面側から遠い位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記カバー部材は、前記画像形成部により画像が形成された記録材が排出される排出部を含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成部は、モノクロ印刷を行うことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、画像形成部の上部に画像読取部を具備する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成部の上部に画像読取部が備えられ、画像形成部と画像読取部との間に排出された記録紙を積載する積載部を備えた小型・中型の画像形成装置がある。このような画像形成装置では、画像形成部における例えば紙詰まりの処理や、内部の清掃、消耗部品の交換等のメンテナンスを行うために、画像形成部の内部にアクセスするための開放機構が必要となる。
【0003】
このため、画像形成部と画像読取部との間のスペースを十分に確保して、画像形成部の上部に設けられた上蓋部材を開閉する方式が提案されている。また、画像読取部と画像形成部の上部に設けられた上蓋部材とが、画像形成部の本体に対して回動可能に支持され、画像形成部の下面に形成されたレール部材と上蓋部材とを連結した画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような画像形成装置では、画像読取部の開閉動作に連動して上蓋部材を開閉させることにより、画像形成部内部を開放している。これにより、従来の画像形成装置の開閉機構は、装置本体内にアクセスが容易となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-137994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、画像読取部の上蓋部材の開閉動作に連動して画像読取部を移動させるため、同時に持ち上げる部材の重量が増え、持ち上げるために必要な力が大きくなり、ユーザビリティに課題がある。特に、画像読取部を持ち上げるために必要な力が一番大きくなる、開け始めの位置、すなわち初動時における負荷が大きくなる。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、画像形成部の内部にアクセスする際に上蓋部材(カバー部材)及び画像読取部(原稿読取部)を持ち上げるために必要な力が一番大きい開け始めの位置での負荷を低減させ、ユーザビリティを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)現像剤で記録材に画像形成可能なカートリッジを有する画像形成部と、前記画像形成部の上方に設けられ、第1の回転軸を中心として回動可能な原稿読取部と、を備え、前記画像形成部は、上方から前記カートリッジを着脱可能とする開口部と、前記第1の回転軸と平行な第2の回転軸を中心として回動可能とされ、前記開口部を開放した開状態と、前記開口部を閉塞する閉状態と、を取りうるカバー部材と、を有し、前記原稿読取部は係合部、前記カバー部材は摺動面を有し、前記原稿読取部に力を作用させ、前記原稿読取部を回動させることで、前記係合部は前記摺動面と摺動しつつ、前記摺動面を介して前記係合部から力を作用させ、前記カバー部材を回動させる画像形成装置であって、前記摺動面は、前記第1の回転軸に直交する断面において、前記画像形成装置における前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸が設けられた一端側から前記一端側と対向する反対側に向かうほど前記原稿読取部に近づく第1の部分を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成部の内部にアクセスする際にカバー部材及び画像読取部を持ち上げるために必要な力が一番大きい開け始めの位置での負荷を低減させ、ユーザビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1、2の複合機の斜視図及び断面図
図2】実施例1の閉状態の連結構成を示す断面図及び要部斜視図
図3】実施例1の開動作初動時の連結構成を示す断面図及び開状態の連結構成を示す断面図
図4】実施例2の閉状態の連結構成を示す断面図及び要部斜視図
図5】実施例2の開動作初動時の連結構成を示す断面図及び開状態の連結構成を示す断面図
図6】実施例2変形例の閉状態の連結構成を示す断面図及び開状態の連結構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0012】
以下に、画像形成装置の全体構成、スキャナ(原稿読取部)と上蓋部材(カバー部材)との連結構成、スキャナと上蓋部材の開閉動作、の順で説明を行う。ここでは、画像形成装置としてレーザービームプリンタを例示している。
【0013】
[画像形成装置の全体構成]
実施例1の画像形成装置について説明する。図1に、画像形成部(以下、プリンタ2という)の上部に画像読取部(以下、スキャナ3という)を具備する画像形成装置(以下、複合機1という)を示す。図1(a)は、複合機1の斜視図であり、図1(b)は、プリンタ2の内部構造の断面図である。複合機1の前後方向、左右方向及び上下方向を図1に矢印で示す。また、複合機1の前側を正面側ともいい、後側を背面側ともいう。
【0014】
図1(a)に示すように、複合機1は、大きく分けてプリンタ2と、スキャナ3とを備える。スキャナ3は、原稿を載置する原稿台3aと、原稿台上蓋3bと、原稿自動送り部3cとを有する。なお、図1(b)以降では原稿自動送り部3cの描画を省略している。スキャナ3はプリンタ2の上に位置しており、プリンタ2の排出部である排出積載部113は上下方向においてスキャナ3とプリンタ2との間に配置されている。
【0015】
なお複合機1は、第1の状態である閉状態と第2の状態である開状態を取り得るように構成されている。第1の状態である閉状態は、プリンタ2の開口2a(開口部)を上蓋部材6で覆い、閉塞した状態(図2)である。一方、第2の状態である開状態は、複合機1の原稿読取部であるスキャナ3の一端、さらにはカバー部材である上蓋部材6の一端を上方に移動させ、プリンタ2の開口2aを開放した状態(図1)である。つまり開状態では、開口2aからプリンタ2の内部に収容されたプロセスカートリッジ101が視認でき、プロセスカートリッジ101へアクセス可能な状態である。
【0016】
(スキャナ)
スキャナ3は、プリンタ2に対して、背面側に設けられた第1の回転軸である回動中心軸Aを中心として回動可能に取り付けられている。スキャナ3は、スキャナ3及びプリンタ2の重さ及び重心の位置に応じて、閉状態から所定の角度、開くようになっている。例えばスキャナ3は、閉状態から45°~50°の角度開くことができる。スキャナ3は、閉状態では、正面側において支持部材(不図示)によりプリンタ2とスキャナ3との間が連結され、支持されている。部分3dは原稿台3aの排出積載部113に対向する面の正面側の部分であり、ユーザは例えば部分3dに手を添えてスキャナ3を持ち上げて開状態とすることとなる。スキャナ3は、例えば公知のフラットベット型のスキャナであり、内部構造についても従来のフラットベット型スキャナと同様であるので、説明を省略する。
【0017】
(プリンタ)
次に、プリンタ2の内部構造について説明する。図1(b)に示すように、プリンタ2は、プロセスカートリッジ101が装着されていることにより、電子写真方式によりトナー画像が形成され、トナー画像を記録材である用紙Pに記録するレーザープリンタであり、例えばモノクロ印刷を行う。プロセスカートリッジ101は開口2aの上方から着脱可能である。プロセスカートリッジ101には、筐体内に像担持体である感光ドラム122が回転可能に設けられており、帯電した感光ドラム122の表面に画像情報に応じた光が照射され潜像が形成される。感光ドラム122上に形成された潜像はトナー(現像剤)により現像されてトナー像が形成され、形成されたトナー像が用紙Pに転写される。プリンタ2には、感光ドラム122に対して光を照射すためのレーザスキャナユニット123が設けられている。また、給紙カセット105内に収納された用紙Pは、ホストコンピュータ(不図示)から送信されたプリント信号に基づいて、給紙ローラ126と用紙分離部107とにより一枚ずつ分離されて搬送路に給送される。分離された用紙Pは、感光ドラム122と感光ドラム122に圧接された転写ローラ109とにより形成された転写ニップ部に搬送される。
【0018】
一方、ホストコンピュータから送信された画像情報に基づいてレーザスキャナユニット123は、感光ドラム122に光を照射して画像情報に応じた潜像が形成する。感光ドラム122上に形成された潜像は、トナーにより現像されることによってトナー像として可視化され、転写ニップ部において、トナー像が用紙Pに転写される。未定着のトナー像が転写された用紙Pは、定着フィルム110と、定着フィルム110に圧接された加圧ローラ111とから形成される定着ニップ部に搬送され、トナー像が定着される。トナー像が定着された用紙Pは、排出ローラ対112により搬送され、プリンタ2の上方に設けられた排出積載部113に排出される。
【0019】
プリンタ2は、上述した各部を筐体内部に収納しており、スキャナ3側(原稿読取部側)すなわちプリンタ2の上部に開口2aが設けられている。ユーザは、開口2aを開放した状態でプリンタ2内部にアクセスすることが可能である。ユーザは、開口2aを開放することにより、例えばプロセスカートリッジ101を着脱したり、用紙Pの紙詰まりを解消したりする(ジャム処理)ことができる。複合機1は、開口2aを覆うための上蓋部材6を備えており、上蓋部材6の一部は排出積載部113となっている。上蓋部材6は、プリンタ2に対して、背面側に設けられた第2の回転軸である回動中心軸Bを中心として回動可能に取り付けられている。ここで、スキャナ3の回動中心軸Aと上蓋部材6の回動中心軸Bとは、ともに背面側に設けられているものの、前後方向において異なる位置に設けられている。スキャナ3の回動中心軸Aの方が、上蓋部材6の回動中心軸Bよりも正面側から離れた位置に設けられている。
【0020】
(連結部)
複合機1には、スキャナ3の正面側を上方へ移動させるようにしてスキャナ3を回動中心軸Aで回動させる動作に連動して回動中心軸Bを中心として回動することで上蓋部材6が開状態となるようにスキャナ3と上蓋部材6とを連結する連結部60を設けている。連結部60は、例えば図1(a)に示すように、スキャナ3及び上蓋部材6の左端部と右端部とに設けられている。なお、連結部60は1箇所設けられていてもよいし、複数箇所、3箇所以上設けられていてもよい。
【0021】
[スキャナと上蓋部材との連結構成]
図2を用いて、スキャナ3と上蓋部材6との連結部60について説明する。図2(a)は、スキャナ3が閉じた位置にあり上蓋部材6が開口2aを覆った状態である閉状態における連結部60を示す断面図である。図2(b)は、閉状態時の連結構成を示す要部斜視図である。図2(a)に示すように、排出積載部113は、プリンタ2の筐体の一部として、上蓋部材6に設けられている。また、上蓋部材6は、プリンタ2の枠体7に対して回動中心軸Bの周りに回動することによって開閉可能に設けられている。上蓋部材6をプリンタ2の本体に対して上方に持ち上げて回動させ、開口2aを開放することによって、プリンタ2内部にアクセスすることができる。上蓋部材6の回動中心軸B近傍には、上蓋部材6が開状態となったとき、開状態を保持するために、上蓋部材6が所定の角度まで回動して開状態となったときにロックされるストッパ(不図示)が設けられている。上蓋部材6の回動中心軸Bは、スキャナ3の回動中心軸Aとスキャナ3の回動方向に距離を隔てて配置されている。
【0022】
スキャナ3には、原稿台3aの下面に第1の突き当て部である突き当て部31が設けられている。一方、上蓋部材6の上面には第2の突き当て部である突き当て部61が設けられている。上蓋部材6が閉状態のとき、スキャナ3の突き当て部31と上蓋部材6の突き当て部61とは当接している。このときプリンタ2は、複合機1の動作中(例えば印刷中)に意図せずに上蓋部材6が持ち上がって開くことを防止することができるように構成されている。なお、ストッパの閉状態におけるロック状態は、ユーザが上蓋部材6を開状態とするために上蓋部材6を押し上げる力で解除することができる程度にロックされている。
【0023】
図2(b)を用いて連結部60について詳細に説明する。連結部60は、スキャナ3に設けられた係合部であるリンク部32と上蓋部材6に設けられたレール部62とを含む。上蓋部材6の上面には斜面のカム形状を有するレール部62が形成され、レール部62の一部に孔部63が形成されている。一方、スキャナ3(原稿台3a)の下面には上蓋部材6に向かって突出した、先端にピン用孔部32aを有するリンク部32が形成されている。上蓋部材6のレール部62に設けられた孔部63に、スキャナ3のリンク部32の先端を通し、リンク部32のピン用孔部32aにリンクピン4を通し、リンクピン4の抜けやずれを規制するピン規制部4aをリンク部32に嵌める。これにより、スキャナ3と上蓋部材6とが連結される。スキャナ3と上蓋部材6とが連結部60によって連結されたことにより、スキャナ3の開閉動作と連動して上蓋部材6も回動する。
【0024】
上蓋部材6のレール部62は、第1の部分62aと、第2の部分62bと、規制部62cとを有している。第1の部分62aの下面(排出積載部113に対向する面)を面Cとし、第2の部分62bの下面(排出積載部113に対向する面)を面Dとする。リンクピン4は上蓋部材6のレール部62の面C又は面Dに接触する。スキャナ3に力を作用させ、スキャナ3を回動させることで、リンクピン4が面C、面Dと摺動しつつ、面C、面Dを介してリンク部32から力を作用させ、上蓋部材6は、回動する。第1の部分62aは、回動中心軸A,Bに直交する断面において、回動中心軸A,Bが設けられた背面側(一端側)から背面側と対向する正面側(反対側)に向かうほどスキャナ3に近づく(スキャナ3との距離が短くなる)ように傾斜している。実施例1では、第1の部分62aは直線状に傾斜するように、言い換えれば平面となるように構成している。
【0025】
第2の部分62bは、第1の部分62aに連続し、スキャナ3の下面に略平行、言い換えれば、スキャナ3の下面との距離が一定となっている。規制部62cは、リンクピン4がレール部62から抜けてしまい、スキャナ3と上蓋部材6との連結が解除されないようにリンクピン4の移動範囲を規制している。上述した上蓋部材6の突き当て部61は規制部62cの上面に設けられている。
【0026】
[スキャナと上蓋部材の開閉動作]
図3を用いて、スキャナ3の移動に連動した上蓋部材6の開閉動作について説明する。図3(a)は、スキャナ3を上方へ移動させ、回動させ始めた直後の位置(以下、初期動作時ともいう)における連結部60を示す断面図である。図3(b)は、スキャナ3を上方に持ち上げ、上蓋部材6を開位置とした状態(開状態時)における連結部60を示す要部断面図である。図3(a)に示すように、スキャナ3を上方へ移動させ、回動させ始めた直後に、レール部62とリンクピン4とが面C(摺動面)で当接するため、スキャナ3を回動させる動作と連動して上蓋部材6の回動も開始される。このとき、レール部62の第1の部分62aが斜面形状になっているため、レール部62とリンクピン4とが当接する面Cに加わる垂直抗力F1は、回動中心軸Aを中心として回動するスキャナ3の接線方向に対し角度αを有している。このため、ユーザがスキャナ3及び上蓋部材6を持ち上げる際の力はF1・cosαとなる。
【0027】
図3(b)に示すように、スキャナ3が開いた状態では、レール部62の第2の部分62bとリンクピン4とが面D(摺動面)で当接する。このとき、スキャナ3の突き当て部31と上蓋部材6の突き当て部61との間には、隙間E1が設けられる。すなわち、上蓋部材6が閉状態のときにはスキャナ3の突き当て部31と上蓋部材6の突き当て部61とが当接していた状態から、開状態となって隙間E1が生じる。なお、隙間E1は、レール部62の形状と回動中心軸A及び回動中心軸Bの距離に応じて決定される量である。
【0028】
このように、スキャナ3を開け始めた直後(初動動作時)に、レール部62とリンクピン4とが当接する面Cに加わる垂直抗力F1が、スキャナ3の開閉方向に対し角度αを有している。このため、スキャナ3を開け始めるときに持ち上げるために必要な力が低減する。特に、スキャナ3を持ち上げるために必要な力が一番重い開け始めの位置での負荷を抑えて持ち上げるために必要な力を低減させることができる。これにより、スキャナ3の開閉動作に連動して上蓋部材6を開閉させることで、上蓋部材6をスキャナ3とともに持ち上げる際の重量が増えても、持ち上げるために必要な力の増加が抑えられ、ユーザビリティを向上させることができる。
【0029】
ここで、スキャナ3の開閉動作に連動して上蓋部材6を開閉させたことで、ユーザが上蓋部材6を直接押して閉じる必要がなくなることで、上蓋部材6を所定位置に確実に閉じることができないおそれがある。実施例1では、スキャナ3が閉じた位置では、スキャナ3の突き当て部31と上蓋部材6の突き当て部61が当接するようにレール部62が形成されている。そのため、スキャナ3が閉じた位置においては、上蓋部材6が、突き当て部31を介してスキャナ3に押されて閉じるため、所定位置で確実に閉じることができる。
【0030】
なお、実施例1ではスキャナ3が閉じた位置においては、スキャナ3の突き当て部31と上蓋部材6の突き当て部61とを当接させたが、突き当て部31と突き当て部61との間に僅かに隙間を設ける構成であっても良い。その場合は、上蓋部材6が僅かに開いた位置でも上蓋部材6が閉じた状態を維持する位置でストッパがロックされるように設定し、かつ、上蓋部材6を閉じる側に引き込むように構成にしておけばよい。
【0031】
以上、実施例1によれば、画像形成部の内部にアクセスする際にカバー部材及び画像読取部を持ち上げるために必要な力が一番大きい開け始めの位置での負荷を低減させ、ユーザビリティを向上させることができる。
【実施例2】
【0032】
実施例2のスキャナ103、プリンタ102、上蓋部材106、連結部160について説明する。実施例1で説明した構成と同様の構成については同符号を付与することにより説明を省略する。
【0033】
[スキャナと上蓋部材との連結構成]
図4を用いて、スキャナ103と上蓋部材106との連結部160について説明する。図4(a)はスキャナ103が閉じた位置にあり上蓋部材106が開口2aを覆った状態である閉状態における連結部160を示す断面図である。図4(b)は、閉状態時の連結構成を示す要部斜視図である。スキャナ103は、原稿台3aの下面に突き当て部131が設けられている。一方、上蓋部材106の上面には突き当て部161が設けられている。スキャナ103及び上蓋部材106が閉状態のとき、スキャナ103の突き当て部131と上蓋部材106の突き当て部161とは当接している。また、実施例1と同様に、閉状態においてストッパ(不図示)がロック状態となる。そのため、複合機1の動作中に意図せずに上蓋部材106が持ち上がって開くことを防止することができる。
【0034】
連結部160は、スキャナ103に設けられたリンク部132と上蓋部材106に設けられたレール部162とを含む。上蓋部材106の上面には略円弧形状のカム形状を有するレール部162が形成され、レール部162の一部に孔部163が形成されている。一方、スキャナ103の原稿台3aの下面には、先端にピン用孔部132aを有するリンク部132が形成されている。上蓋部材106のレール部162に設けられた孔部163に、スキャナ103のリンク部132の先端を通し、リンク部132のピン用孔部132aにリンクピン4を通し、ピン規制部4aをリンク部132に嵌める。これにより、スキャナ103と上蓋部材106とが連結される。スキャナ103と上蓋部材106とが連結部160によって連結されたことにより、スキャナ103の開閉動作と連動して上蓋部材106も回動する。
【0035】
上蓋部材106のレール部162は、第1の部分162aと、第2の部分162bとを有している。第1の部分162aは、回動中心軸A,Bに直交する断面において、回動中心軸A,Bが設けられた背面側から背面側と対向する正面側に向かうほどスキャナ3に近づく(スキャナ103との距離が短くなる)ように傾斜している。実施例2では、第1の部分162aは曲線状、詳細には円弧状に傾斜するように、言い換えれば曲面になるように構成している。第2の部分162bは、第1の部分162aに連続し、回動中心軸A,Bに直交する断面が、回動中心軸A,Bが設けられた背面側から背面側と対向する正面側に向かうほどスキャナ3から遠ざかる(スキャナ103との距離が長くなる)ように構成されている。実施例2では、第2の部分162bは曲線状、詳細には円弧状に傾斜するように構成している。つまり、第1の部分62aの下面(排出積載部113に対向する面)を面G(摺動面)、第2の部分162bの下面(排出積載部113に対向する面)を面H(摺動面)、レール部162が上蓋部材106の上面に最も近づいた部分を面Gと面Hとの境界、としている。したがってリンクピン4は、上蓋部材106のレール部162の面G又は面Hに接触する。
第2の部分162bの前側の端部の上面には、突き当て部161が形成されている。
【0036】
第1の部分162a及び第2の部分162bが円弧形状となっているため、第1の部分162aの後側の端部及び第2の部分162bの前側の端部の境界部には面と面とのつなぎ目となる辺(稜線)がない。これにより、リンクピン4がレール部162に沿って摺動し、スキャナ103と上蓋部材106をスムーズに連動させることができる。
【0037】
[スキャナと上蓋部材の開閉動作]
図5を用いて、スキャナ103の移動に連動した上蓋部材106の開閉動作について説明する。図5(a)は、スキャナ103を上方へ移動させ、回動させ始めた直後の位置(初動動作時)における連結部160を示す断面図である。図5(b)は、スキャナ103を上方に持ち上げ、上蓋部材6を開き位置とした位置(開状態時)における連結部160を示す要部断面図である。図5(a)に示すように、スキャナ103を上方へ移動させ、回動させ始めた直後に、レール部162とリンクピン4とが部分162aの面Gで当接するため、スキャナ103を回動させる動作と連動して上蓋部材106の回動も開始される。このとき、レール部162の部分162aが略円弧形状になっているため、レール部162とリンクピン4とが当接する面Gに加わる垂直抗力F2は、スキャナ103の開閉方向に対し角度βを有している。このため、ユーザがスキャナ103及び上蓋部材106を持ち上げる際の力はF2・cosβとなる。
【0038】
図5(b)に示すように、スキャナ103が開いた状態では、レール部162とリンクピン4とが部分162bの面Hで当接する。このとき、スキャナ103の突き当て部131と上蓋部材106の突き当て部161との間には、僅かに隙間E2を設けるように、レール部162の略円弧形状が形成されている。このように、実施例1と同様に、スキャナ103を開け始めた直後(初動動作時)に、レール部162とリンクピン4とが当接する面Gに加わる垂直抗力F2が、回動中心軸Aを中心として回動するスキャナ103の接線方向に対し角度βを有している。このため、スキャナ103を開け始めるときに持ち上げるために必要な力が低減され、ユーザビリティを向上させることができる。
【0039】
ここで、スキャナ103に連動して上蓋部材106を開閉させたことで、ユーザが上蓋部材106を直接押して閉じる必要がなくなることで、上蓋部材106を所定位置に確実に閉じることができないおそれがある。また、スキャナ103に関しては、複合機1の占有高さや安定性の面を考慮すると、開き角度を可能な限り小さくした方が好ましい。他方、上蓋部材106に関しては、プリンタ102内部にアクセスし易いことを考慮すると、開き角度を大きくとることが望ましい。実施例2では、レール部162を略円弧形状にして、スキャナ103が閉じた位置では、スキャナ103の突き当て部131と上蓋部材106の突き当て部161とが当接するように、略円弧形状が設定されている。一方、スキャナ103が開いた位置では、スキャナ103の突き当て部131と上蓋部材106の突き当て部161とは僅かに隙間E2を設けるように、略円弧形状が設定されている。そのため、スキャナ103が閉じた位置では、上蓋部材106がスキャナ103に押されて閉じるため、所定位置に確実に閉じることができる。一方、スキャナ103が開いた位置では、スキャナ103と上蓋部材106との距離E2が、スキャナ103の閉状態時における位置関係とほぼ変わらないため、スキャナ103と上蓋部材106の開き角度がほぼ同じになる。これにより、複合機1の占有高さや安定性を損なうことなくプロセスカートリッジ101に対するアクセスや用紙Pのジャム処理などが容易となる。
【0040】
なお、実施例2ではスキャナ103が閉じた位置では、スキャナ103の突き当て部131と上蓋部材106の突き当て部161とを当接させた。しかし、実施例1と同様に、突き当て部131と突き当て部161との間に僅かに隙間を設ける構成であっても良い。
【0041】
[変形例]
実施例2の変形例であるスキャナ103、プリンタ102、上蓋部材206、連結部260について説明する。前述した構成と同様の構成については同符号を付与することにより説明を省略する。
【0042】
[スキャナと上蓋部材との連結構成]
図6を用いて、スキャナ103と上蓋部材206との連結部260について説明する。図6(a)はスキャナ103が閉じた位置における連結部260を示す断面図である。スキャナ103は、原稿台3aの下面に突き当て部231が設けられている。一方、上蓋部材206の上面には突き当て部261が設けられている。スキャナ103及び上蓋部材206が閉状態のとき、スキャナ103の突き当て部231と上蓋部材206の突き当て部261とは当接している。
【0043】
連結部260は、スキャナ103に設けられたリンク部232と上蓋部材206に設けられたレール部262とを含む。上蓋部材206の上面には略円弧形状のカム形状を有するレール部262が形成されている。なお、レール部262には実施例2と同様に、リンク部232の先端を通す孔部(不図示)が設けられている。一方、スキャナ103の原稿台3aの下面には、先端にピン用孔部(不図示)を有するリンク部232が形成されている。上蓋部材206のレール部262の孔部にリンク部232の先端を通し、リンク部232のピン用孔部にリンクピン4を通して、ピン規制部(不図示)をリンク部232に嵌める。これにより、スキャナ103と上蓋部材206とが連結される。スキャナ103と上蓋部材206とが連結部260によって連結されたことにより、スキャナ103の開閉動作と連動して上蓋部材206も回動する。
【0044】
上蓋部材206のレール部262は、規制部262dと、上蓋部材206の上面に対して円弧状に傾斜した第1の部分262aと、第1の部分262aよりも正面側に円弧状に傾斜した第2の部分262bと、上面に突き当て部261が形成された規制部262cとを有している。第1の部分262aは、回動中心軸A,Bに直交する断面において、回動中心軸A,Bが設けられた背面側から背面側と対向する正面側に向かうほどスキャナ3に近づく(スキャナ103との距離が短くなる)ように傾斜している。第2の部分262bは、回動中心軸A,Bに直交する断面において、回動中心軸A,Bが設けられた背面側から背面側と対向する正面側に向かうほどスキャナ3から遠ざかる(スキャナ103との距離が長くなる)ように傾斜している。規制部262cは、第2の部分262bに連続し、規制部262cと上蓋部材6の上面との間にリンクピン4が侵入するような隙間がないように形成されている。このようにして規制部262cは、リンクピン4がレール部262から抜けてしまい、スキャナ103と上蓋部材206との連結が解除されないようにリンクピン4の移動範囲を規制している。ここで、複合機1の正面側において、スキャナ103の原稿台3aの下面から上蓋部材206の排出積載部113までの距離を、スキャナ103と上蓋部材206との距離Jとする。
【0045】
[スキャナと上蓋部材の開閉動作]
図6(b)を用いて、スキャナ103と上蓋部材206の開閉動作について説明する。図6(b)は、スキャナ103を上方に持ち上げ、上蓋部材6を開位置とした状態における連結部260を示す要部断面図である。図6(b)に示すように、スキャナ103が開いた状態で、レール部262の部分262bとリンクピン4とがL部で当接する。このとき、スキャナ103と上蓋部材206との距離は距離Kとなり、距離Kが距離Jより小さくなるように、レール部262の略円弧形状が形成されている(K<J)。距離Kが距離Jよりも小さいということは、スキャナ103が開いた角度(回動した角度でもある)よりも上蓋部材206が開いた角度(回動した角度でもある)の方が大きいことを意味する。変形例の連結部260を設けることによって、スキャナ103を回動させる角度が大きくない場合でも、上蓋部材206を可能な限り回動させることができるため、プリンタ102内部へのアクセスが容易となり作業性が向上する。
【0046】
このように、変形例においても実施例2と同様の効果を得ることができる。また、変形例では、スキャナ103と上蓋部材206との距離が、スキャナ103が閉じた状態(距離J)よりスキャナ103が開いた状態(距離K)の方が小さくなるように、レール部262の略円弧形状が形成されている。このため、スキャナ103の開き角度より上蓋部材206の開き角度が大きくなる。これにより、複合機1の占有高さや安定性を損なうことなく、プロセスカートリッジ101へのアクセスや用紙Pのジャム処理などが更に容易となる。
【0047】
なお、レール部については、例えば、実施例1の直線状に傾斜した部分62aに実施例2の円弧状の部分162bが連続し、更に、変形例の部分262cが連続した構成としてもよい。また、実施例2の円弧状の部分162aに実施例1のスキャナ3の下面に平行な部分62bと規制部62cとが連続した構成としてもよい。
【0048】
以上、実施例2及び変形例によれば、画像形成部の内部にアクセスする際にカバー部材及び画像読取部を持ち上げるために必要な力が一番大きい開け始めの位置での負荷を低減させ、ユーザビリティを向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
2 プリンタ
2a 開口
3 スキャナ
6 上蓋部材
32 リンク部
62a 第1の部分
A 回動中心軸
B 回動中心軸
C,D 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6