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74040983,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒
<図1>
  • -3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/36 20060101AFI20231218BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20231218BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20231218BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20231218BHJP
   B01J 29/48 20060101ALI20231218BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 29/141 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20231218BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231218BHJP
   C07D 307/08 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
B01J23/36 Z
B01J21/06 Z
B01J23/30 Z
B01J23/66 Z
B01J29/48 Z
B01J38/02
C07C29/141
C07C31/20 B
C07B61/00 300
C07D307/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020024591
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021126639
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】平井 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】梶川 泰照
(72)【発明者】
【氏名】冨重 圭一
(72)【発明者】
【氏名】中川 善直
(72)【発明者】
【氏名】田村 正純
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/146978(WO,A1)
【文献】特開2017-051941(JP,A)
【文献】特開2018-065764(JP,A)
【文献】特開2013-224267(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188843(WO,A1)
【文献】特開2013-181026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/36
B01J 21/06
B01J 23/30
B01J 23/66
B01J 29/48
B01J 38/02
C07C 29/141
C07C 31/20
C07B 61/00
C07D 307/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる反応に用いられる触媒であって、下記金属触媒(1)及び下記金属触媒(2)を含有する、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
金属触媒(1):下記M1及びM2を金属種とし、担体に担持された触媒
金属触媒(2):レニウムを金属種とし、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ、酸化タングステン、及び酸化セリウムからなる群より選択される二種以上の金属酸化物を含む担体に担持された触媒であり、前記金属酸化物は酸化タングステン及び/又はジルコニアを含む触媒
M1:周期表の第4~6周期に属し且つ第5~7族に属する元素、及び鉄からなる群より選択される1以上
M2:周期表の第4~6周期に属し且つ第9~11族に属する元素、ルテニウム、及びオスミウムからなる群より選択される1以上
【請求項2】
前記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及びジルコニアを含む、請求項1に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
【請求項3】
前記金属触媒(1)におけるM1がレニウムであり、M2が金である、請求項1又は2に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
【請求項4】
前記金属触媒(1)における担体が酸化セリウムである、請求項1~のいずれか1項に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
【請求項5】
水素との反応によりジヒドロフランを還元させる反応に用いられる触媒であって、下記金属触媒(2)を含有する、ジヒドロフランの還元反応用触媒。
金属触媒(2):レニウムを金属種とし、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ、酸化タングステン、及び酸化セリウムからなる群より選択される二種以上の金属酸化物を含む担体に担持された触媒であり、前記金属酸化物は酸化タングステン及び/又はジルコニアを含む触媒
【請求項6】
前記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及びジルコニアを含む、請求項に記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
【請求項7】
水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程を含み、前記工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、請求項1~のいずれか1項に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒の存在下で進行させることを特徴とする、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
【請求項8】
前記工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、1段目
で前記金属触媒(1)の存在下反応を行い、2段目で前記金属触媒(2)の存在下反応を行うか、又は、前記金属触媒(1)及び前記金属触媒(2)の混合触媒の存在下で進行させる、請求項に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
【請求項9】
エリスリトールを脱水環化して3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを得る工程を、前記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程の前に有する、請求項又はに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料とした水素による還元反応に用いられる触媒、及び該触媒を用いた還元物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4-ブタンジオール等のジオール類は、ポリエステルやポリウレタンの原料等に用いられる重要な化合物である。また、テトラヒドロフラン(THF)は、合成反応の溶媒等として用いられる重要な化合物である。
【0003】
例えば、1,4-ブタンジオールは、ブタジエンを基質としてパラジウム触媒と酢酸を用いて1位及び4位をジアセトキシ化した後、還元、加水分解を経て製造する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。他に、マレイン酸やコハク酸のエステルや無水物を還元して製造する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
一方で、現在、化学製品を製造するために、主に石油等の化学燃料資源が大量に消費されている。即ち、現在の社会においては、炭素が一方的に地中から大気に放出されているのが現状である。このため、地球温暖化や化石燃料資源の枯渇等の問題が生じており、このような問題に対して、近年では、植物の光合成の力を借りて炭素の再生使用及び循環を行う、いわゆるバイオマス(例えば、セルロース、グルコース、植物油等の植物由来の資源)を活用した持続可能な社会の構築が求められつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-82191号公報
【文献】特開平10-152450号公報
【文献】特開平10-192709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~3では、1,4-ブタンジオールの製造に当たり、原料として、化学燃料資源であるブタジエン、マレイン酸エステル、コハク酸エステル等を用いている。このように、バイオマス由来の原料を用いて1,4-ブタンジオールを製造することができる触媒や方法が求められる。
【0007】
ところで、反応用触媒には貴重な金属種が用いられる場合が多い。このため、反応用触媒には再生使用が可能であることが求められる。
【0008】
従って、本開示の目的は、バイオマス由来の原料を用いて、1,4-ブタンジオール等の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物を高い選択率で得ることができ、且つ再生使用が可能な触媒(還元反応用触媒)及び当該触媒を用いた3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、バイオマス由来の原料から製造することができる3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを原料とする反応において、特定の触媒を用いて水素と反応させると、1,4-ブタンジオール等の還元物が高選択率で生成し、且つ再生使用が可能であることを見出した。本開示は、これらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0010】
本開示は、水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる反応に用いられる触媒であって、下記金属触媒(1)及び下記金属触媒(2)を含有する、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒を提供する。
金属触媒(1):下記M1及びM2を金属種とし、担体に担持された触媒
金属触媒(2):下記M1を金属種とし、金属種が異なる二種以上の金属酸化物を含む担体に担持された触媒
M1:周期表の第4~6周期に属し且つ第5~7族に属する元素、及び鉄からなる群より選択される1以上
M2:周期表の第4~6周期に属し且つ第9~11族に属する元素、ルテニウム、及びオスミウムからなる群より選択される1以上
【0011】
上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及び/又はジルコニアを含むことが好ましい。
【0012】
上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及びジルコニアを含むことが好ましい。
【0013】
上記金属触媒(1)におけるM1がレニウムであり、M2が金であることが好ましい。
【0014】
上記金属触媒(1)における担体は酸化セリウムであることが好ましい。
【0015】
上記金属触媒(2)におけるM1はレニウムであることが好ましい。
【0016】
また、本開示は、水素との反応によりジヒドロフランを還元させる反応に用いられる触媒であって、下記金属触媒(2)を含有、ジヒドロフランの還元反応用触媒を提供する。
金属触媒(2):下記M1を金属種とし、金属種が異なる二種以上の金属酸化物を含む担体に担持された触媒
M1:周期表の第4~6周期に属し且つ第5~7族に属する元素、及び鉄からなる群より選択される1以上
【0017】
上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及び/又はジルコニアを含むことが好ましい。
【0018】
上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及びジルコニアを含むことが好ましい。
【0019】
また、本開示は、水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程を含み、上記工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、請求項1~6のいずれか1項に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒の存在下で進行させることを特徴とする、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法を提供する。
【0020】
上記工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、1段目で上記金属触媒(1)の存在下反応を行い、2段目で上記金属触媒(2)の存在下反応を行うか、又は、上記金属触媒(1)及び上記金属触媒(2)の混合触媒の存在下で進行させることが好ましい。
【0021】
上記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法は、エリスリトールを脱水環化して3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを得る工程を、上記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程の前に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本開示の還元反応用触媒によれば、バイオマス由来の原料を用いて、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物が高い選択率で得ることが可能であり、且つ、上記還元反応用触媒は再生使用が可能である。このため、バイオマス由来の原料を用いた場合、環境に与える負荷が小さく、持続可能な社会の構築に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】トリクルベッド反応器を使用した場合の、本開示の製造方法の一実施形態における還元工程の一例を示すフロー図である。
図2】2,5-ジヒドロフランの還元反応において、金属触媒(2)におけるレニウム担持量と転化率及び生成物の選択率との関係を示すグラフである。
図3】2,5-ジヒドロフランの還元反応において、金属触媒(2)におけるタングステン担持量と転化率及び生成物の選択率との関係を示すグラフである。
図4】2,5-ジヒドロフランの還元反応における反応温度と転化率及び生成物の選択率との関係を示すグラフである。
図5】2,5-ジヒドロフランの還元反応における水素圧力と転化率及び生成物の選択率との関係を示すグラフである。
図6】2,5-ジヒドロフランの還元反応における水素圧力と反応時間の関係を示すグラフである。
図7】2,5-ジヒドロフランの還元反応における反応時間と転化率の関係を示すグラフである。
図8】1,4-アンヒドロエリスリトールの反応における転化率及び各生成物の選択率の経時変化を示すグラフである。
図9】実施例17で使用した後の触媒について行ったTG-DTA測定により得られたスペクトルである。
図10】WO3-ZrO2及びReOX/WO3-ZrO2について水素を用いて行った昇温反応法により得られたスペクトルである。
図11】Re種について行ったL3-edge XANES分析により得られたスペクトルを示す。
図12】L3-edge XANES分析により得られたスペクトルにおけるホワイトライン領域と平均価数の間の詳細の線形関係を示すグラフである。
図13】触媒についてX線回折法による分析を行って得られたXRDパターンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<還元反応用触媒>
本開示の一実施形態に係る還元反応用触媒は、水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる反応に用いられる触媒(3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒)である。上記還元反応用触媒は、金属触媒(1)及び金属触媒(2)を含有する。金属触媒(1)及び金属触媒(2)は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、上記還元反応用触媒は、金属触媒(1)及び金属触媒(2)以外の他の触媒を含んでいてもよい。
【0025】
[金属触媒(1)]
金属触媒(1)は、M1及びM2を金属種とし、担体に担持された触媒である。金属触媒(1)は、一つの担体にM1及びM2の両方が担持されている触媒である。なお、金属触媒(1)におけるM1を「M1a」と称する場合がある。上記M1a、M2、及び担体は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0026】
上記M1(M1a)は、周期表の第4~6周期に属し且つ第5~7族に属する元素、及び鉄からなる群より選択される1以上である。具体的には、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)が挙げられる。中でも、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、レニウムが好ましく、特に好ましくはレニウムである。M1として挙げられたこれらの金属は、一般にヒドロキシ基(OH基)を持つ化合物と親和性が高く、反応性が高い傾向があるという共通の性質を有する。
【0027】
上記M2は、周期表の第4~6周期に属し且つ第9~11族に属する元素、ルテニウム、及びオスミウムからなる群より選択される1以上である。具体的には、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)が挙げられる。中でも、金、イリジウムが好ましい。M2として挙げられたこれらの金属は、水素との親和性が高く、還元作用の高い金属群であるという共通の性質を有する。中でも、金、イリジウム(特に、金)は、1,4-ブタンジオール等の還元物を得るための中間体である2,5-ジヒドロフランへの還元作用が適度であり、2,5-ジヒドロフランを高選択率で得られる傾向がある。
【0028】
上記金属触媒(1)に含まれるM1a及びM2の態様は、特に限定されないが、例えば、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体として担体に担持された状態で含まれる態様等が挙げられる。
【0029】
上記担体としては、触媒に使用される公知乃至慣用の担体を使用することができ、特に限定されないが、例えば無機酸化物や活性炭等の無機物担体、イオン交換樹脂等の有機物担体等が挙げられる。中でも、反応活性の観点で、活性炭、無機酸化物が好ましく、焼成に付して容易に再活性化させることができる観点から、無機酸化物が特に好ましい。
【0030】
上記活性炭としては、公知乃至慣用の活性炭を使用することができ、特に限定されず、植物系、鉱物系、樹脂系等の何れの原料から得られる活性炭も使用することができる。上記活性炭としては、例えば、商品名「Vulcan XC72」(CABOT社製)、商品名「BP2000」(CABOT社製)、商品名「Shirasagi FAC-10」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)、商品名「Shirasagi M」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)、商品名「Shirasagi C」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)、商品名「Carboraffin」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0031】
上記無機酸化物としては、公知乃至慣用の無機酸化物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、酸化セリウム(CeO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、硫酸化ジルコニア、リン酸化ジルコニア、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化モリブデン(MoO2、MoO3)、酸化バナジウム(VO、V25)、酸化タングステン(W23、WO2、WO3)、酸化スズ(SnO、SnO2、SnO3)、酸化レニウム(ReO2、ReO3、Re27)、酸化ニオブ(Nb25)、これら無機酸化物の二種以上の複合体(例えば、ゼオライト、チタノシリケート等)等が挙げられる。中でも、固体塩基性を示すものが好ましく、シリカ、ジルコニア、硫酸化ジルコニア、リン酸化ジルコニア、チタニア、チタノシリケート、アルミナ、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化レニウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化マグネシウムが好ましい。
【0032】
上記無機酸化物としては、例えば、商品名「TIO-4」(チタニア、日本アエロジル(株)製)、商品名「500A」(マグネシア、宇部興産(株)製)、商品名「G-6」(シリカ、富士シリシア化学(株)製)、商品名「KHO-24」(アルミナ、住友化学(株)製)、商品名「ジルコニア」(和光純薬工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0033】
上記担体としては、中でも、特定の還元物の選択率がより優れる観点で、酸化セリウムが好ましい。
【0034】
従って、上記金属触媒(1)としては、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、及びレニウムからなる群から選択された1以上の金属種(特に、レニウム)と、金とが、酸化セリウムに担持された触媒であることが好ましい。
【0035】
上記担体の比表面積は、特に限定されないが、上記金属種が良好に分散され、これらの凝集を抑制することができ、単位重量当たりの触媒活性を向上することができる点で、50m2/g以上(例えば、50~1500m2/g、好ましくは100~1000m2/g)が好ましい。上記担体の比表面積が上記範囲内であると、単位重量当たりの触媒活性がより向上する傾向がある。
【0036】
上記担体の平均粒径は、特に限定されないが、反応性の点や、連続流通形式で反応を実施する場合の過剰な圧力損失を伴わない点で、100~10000μmが好ましく、より好ましくは1000~10000μmである。また、上記担体の形状は、粉末状、粒状、成型(成型体状)等のいずれであってもよく、特に限定されない。
【0037】
上記M1aの担体への担持量は、特に限定されないが、M1aとM2と担体の総量(100重量%)に対して、0.01~50重量%が好ましく、より好ましくは0.05~30重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%、特に好ましくは0.15~3重量%である。上記M1aの担持量が0.01重量%以上であると、特定の還元物の選択率がより向上する傾向がある。一方、上記M1aの担持量が50重量%以下であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が向上し、特定の還元物の収率が向上する傾向がある。これは、上記M1aの担持量が、上記範囲内において少ないほど担体に担持されているM2の粒径が小さくなる傾向があり、これによって触媒の活性度、触媒寿命、及び特定の還元物の選択率が比較的高くなるためと推測される。なお、上記担持量は、金属換算(例えば、M1aが酸化物として担持されている場合は酸化物を構成する金属原子換算)であり、M1aとして二種以上の金属種を使用する場合にはこれらの総量である。
【0038】
金属触媒(1)におけるM1aに対するM2の割合(モル比)[M2/M1a]は、特に限定されないが、0.002~50が好ましく、より好ましくは0.005~10、さらに好ましくは0.01~5、特に好ましくは0.02~0.7である。上記M2の使用量は、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる温度や時間等に応じて、上記範囲内で適宜調整することができる。なお、上記モル比におけるM1aとM2のモル数は、金属換算(例えば、M1a及びM2が酸化物として担持されている場合は酸化物を構成する金属原子換算)であり、M1a及びM2として二種以上の金属種を使用する場合にはこれらの総量である。また、レニウムと金との割合(モル比)[Au/Re]が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0039】
M1a及びM2の担体への担持方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の担持方法により担体に担持させることができる。具体的には、例えば、含浸法、共沈法、析出沈殿法等が挙げられる。中でも、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が向上し、特定の還元物の収率が向上する観点から、M1aの担持方法は含浸法、M2の担持方法は含浸法、析出沈殿法が好ましい。
【0040】
上記含浸法でM1aを担持させる場合、M1aを含有する溶液(例えば、M1aがレニウムの場合には過レニウム酸アンモニウムの水溶液等)を担体又はM2が担持された担体に含浸させた後、乾燥、焼成(好ましくは空気中での焼成)を行い、さらに必要に応じて水素等により還元することにより担持させてもよい。なお、上記含浸法において、上述のM1aを含有する溶液の濃度や、担体への含浸、及び乾燥処理や焼成処理の施用回数を調整することにより、M1aの担持量を制御することができる。また、上記含浸法において、M1aを含有する溶液を含浸させる際の温度、該溶液を含浸させた担体を乾燥させる際の温度、焼成する際の温度は、特に限定されない。また、上記還元は、反応初期の活性を高めたり、触媒性能をより十分に引き出すことが可能であったりする観点から、共沈法や析出沈殿法においても行ってもよい。上記担体を乾燥させた後、焼成する際の温度又は還元する際の温度は、特に限定されないが、例えば、水素雰囲気において250~550℃が好ましく、より好ましくは300~500℃である。上記還元処理の後、必要に応じて、パッシベーションを行ってもよい。パッシベーションを行うことにより、上記還元反応用触媒の取り扱いが容易となる傾向がある。なお、パッシベーションは公知乃至慣用の方法で実施することができ、特に限定されないが、例えば、室温付近の温度で酸素雰囲気に曝露することによって実施することができる。
【0041】
上記含浸法でM2を担持させる場合、上述の含浸法でM1aを担持させる方法と同様に担持させることができ、M2を含有する溶液(例えば、M2が金の場合には塩化金酸の水溶液等)を担体又はM1aが担持された担体に含浸し、乾燥、焼成(好ましくは空気中での焼成)を行い、さらに必要に応じて水素等により還元すること等が挙げられる。より具体的には、例えば、担体に対して、さらにM2を含有する溶液を含浸させ、乾燥させ、焼成した後、さらに必要に応じて水素等により還元する方法等が挙げられる。なお、M2を含有する溶液を含浸させる際の温度、該溶液を含浸させた担体を乾燥させる際の温度、焼成する際の温度、及び還元する際の温度は特に限定されない。また、上述のM1aを含有する溶液を含浸させた後の還元処理と、M2を含有する溶液を含浸させた後の還元処理とは、例えば、両溶液の含浸後、水素雰囲気において加熱(例えば、加熱温度は100~700℃が好ましく、より好ましくは200~600℃)することにより、同時に実施することもできる。
【0042】
上記析出沈殿法でM2を担持させる場合、例えば、M2を含有する溶液(例えば、M2が金の場合には塩化金酸の水溶液等)を、必要に応じてアルカリ水溶液によりpHを調整し(例えば、pHを6~10に調整し)、これに、上記担体又はM1aが担持された担体を加え、所定時間経過後、水洗し、乾燥、焼成(好ましくは空気中での焼成)を行った後、さらに必要に応じて水素等により還元する方法等が挙げられる。なお、アルカリ水溶液によりpHを調整する際の温度、担体を乾燥させる際の温度、焼成する際の温度、及び還元する際の温度は特に限定されない。
【0043】
上記金属触媒(1)の好ましい調製法としては、好ましくは、(i)担体にM1aとM2をそれぞれ含浸法により逐次的に担持させる方法、(ii)担体にM2を析出沈殿法により担持させた後、M1aを含浸法により担持させる方法、(iii)担体にM1aを含浸法により担持させた後、M2を析出沈殿法により担持させる方法、(iv)共沈法によりM2が担持した担体を調製し、これにM1aを含浸法により担持させる方法等が挙げられる。なお、上記(i)において、含浸法により担持させる順序は、M1aの担持が先であってもよいし、M2の担持が先であってもよい。
【0044】
上記金属触媒(1)の平均粒径は、特に限定されないが、反応性の点や、連続流通形式で反応を実施する場合の過剰な圧力損失を伴わない点で、100~10000μmが好ましく、より好ましくは1000~10000μmである。また、金属触媒(1)の形状は、特に限定されないが、例えば、粉末状、粒状、成型(成型体状)等が挙げられる。
【0045】
[金属触媒(2)]
金属触媒(2)は、M1を金属種とし、金属種が異なる二種以上の金属酸化物を含む担体に担持された触媒である。なお、金属触媒(2)における担体は上記M2を担持していない。また、金属触媒(2)におけるM1は、金属触媒(1)におけるM1と同じ金属種であってもよく、異なる金属種であってもよい。金属触媒(2)におけるM1を「M1b」と称する場合がある。上記M1bは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
上記M1(M1b)は、周期表の第4~6周期に属し且つ第5~7族に属する元素、及び鉄からなる群より選択される1以上であり、上述の金属触媒(1)におけるM1aと同様のものが挙げられる。上記金属触媒(2)におけるM1bとしては、中でも、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、レニウムが好ましい。特に、特定の還元物を高選択率、高収率で得られる観点からレニウムが好ましい。
【0047】
上記金属触媒(2)に含まれるM1bの態様は、特に限定されないが、例えば、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体として担体に担持された状態で含まれる態様等が挙げられる。
【0048】
上記M1bの担体への担持量は、特に限定されないが、M1bと担体の総量(100重量%)に対して、0.01~60重量%が好ましく、より好ましくは0.05~50重量%、さらに好ましくは0.1~20重量%である。上記M1bの担持量が0.01重量%以上であると、特定の還元物の選択率がより向上する傾向がある。一方、上記M1bの担持量が60重量%以下であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が向上し、特定の還元物の収率が向上する傾向がある。なお、上記担持量は、金属換算(例えば、M1bが酸化物として担持されている場合は酸化物を構成する金属原子換算)であり、M1bとして二種以上の金属種を使用する場合にはこれらの総量である。
【0049】
上記担体は、金属種が異なる二種以上(特に、二種)の金属酸化物を含む。即ち、上記担体は、構成する金属元素が異なる金属酸化物を二種以上含む。
【0050】
上記担体に使用される二種以上の金属酸化物としては、触媒に使用される公知乃至慣用の金属酸化物担体を使用することができ、上述の金属触媒(1)における担体として例示及び説明された金属酸化物が挙げられる。上記金属酸化物としては、中でも、シリカ、ジルコニア、チタニア、チタノシリケート、アルミナ、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化レニウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化マグネシウムが好ましい。特定の還元物の選択率がより向上する観点からは、酸化タングステン及び/又はジルコニアを含むことが好ましい。特に、還元物として1,4-ブタンジオールを高選択率、高収率で得たい場合は、1,4-ブタンジオールを得るための中間体である2,5-ジヒドロフランから同中間体である2,3-ジヒドロフランへの異性化を促進する観点から、ジルコニアを含むことが好ましく、酸化タングステン及びジルコニアを含むことが特に好ましい。
【0051】
従って、1,4-ブタンジオールを高選択率、高収率で得たい場合、上記金属触媒(2)としては、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、及びレニウムからなる群から選択された1以上の金属種(特に、レニウム)が、酸化タングステン及び/又はジルコニア(特に、酸化タングステン及びジルコニア)を含む担体に担持された触媒であることが好ましい。
【0052】
上記金属酸化物がジルコニアを含む場合、上記担体中のジルコニアの含有割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、40~99.9質量%が好ましく、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~98質量%、特に好ましくは80~95質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、2,5-ジヒドロフランの転化率及び1,4-ブタンジオール及びその前駆体の選択率がより向上する傾向がある。また、上記金属酸化物がジルコニアを含む場合、上記担体中の他の金属酸化物の含有割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、0.1~60質量%が好ましく、より好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは2~30質量%、特に好ましくは5~20質量%である。
【0053】
上記金属酸化物が酸化タングステンを含む場合、上記担体中の酸化タングステンの含有割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、0.1~60質量%が好ましく、より好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは2~30質量%、特に好ましくは5~20質量%である。また、上記金属酸化物が酸化タングステンを含む場合、上記担体中の他の金属酸化物の含有割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、40~99.9質量%が好ましく、より好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~98質量%、特に好ましくは80~95質量%である。
【0054】
上記担体中の金属酸化物の合計割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。また、上記担体中の炭素の含有割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0055】
上記担体の比表面積は、特に限定されないが、上記金属種が良好に分散され、これらの凝集を抑制することができ、単位重量当たりの触媒活性を向上することができる点で、50m2/g以上(例えば、50~1500m2/g、好ましくは100~1000m2/g)が好ましい。上記担体の比表面積が上記範囲内であると、単位重量当たりの触媒活性がより向上する傾向がある。
【0056】
上記担体の平均粒径は、特に限定されないが、反応性の点や、連続流通形式で反応を実施する場合の過剰な圧力損失を伴わない点で、100~10000μmが好ましく、より好ましくは1000~10000μmである。また、上記担体の形状は、粉末状、粒状、成型(成型体状)等のいずれであってもよく、特に限定されない。
【0057】
上記二種以上の金属酸化物を含む担体は、市販品を用いることもできるが、公知乃至慣用の方法により製造することもできる。具体的には、例えば、含浸法、共沈法、析出沈殿法等が挙げられる。中でも、含浸法により得られた担体は、W種の表面濃度が高いことによるものと推測され、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が向上し、特定の還元物の収率が向上する観点から、含浸法により製造することが好ましい。
【0058】
上記含浸法で上記担体を製造する場合、上記二種以上の金属酸化物のうちの一種における金属種を含む化合物を含有する溶液(例えば、金属酸化物が酸化タングステンを含む場合にはメタタングステン酸アンモニウム水和物の水溶液等)を他の金属酸化物に含浸させた後、乾燥、焼成(好ましくは空気中での焼成)を行い、さらに必要に応じて水素等により還元することにより担持させてもよい。なお、上記含浸法において、上述の化合物を含有する溶液の濃度や、金属酸化物への含浸、及び乾燥処理や焼成処理の施用回数を調整することにより、金属酸化物の割合を制御することができる。また、上記含浸法において、上記溶液を含浸させる際の温度、該溶液を含浸させた担体を乾燥させる際の温度、焼成する際の温度は、特に限定されない。また、上記還元は、反応初期の活性を高めたり、触媒性能をより十分に引き出すことが可能であったりする観点から、共沈法や析出沈殿法においても行ってもよい。上記担体を乾燥させた後、焼成する際の温度又は還元する際の温度は、特に限定されないが、例えば、水素雰囲気において250~550℃が好ましく、より好ましくは300~500℃である。上記還元処理の後、必要に応じて、パッシベーションを行ってもよい。パッシベーションを行うことにより、上記還元反応用触媒の取り扱いが容易となる傾向がある。なお、パッシベーションは公知乃至慣用の方法で実施することができ、特に限定されないが、例えば、室温付近の温度で酸素雰囲気に曝露することによって実施することができる。
【0059】
M1bの担体への担持方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の担持方法により担体に担持させることができる。具体的には、例えば、含浸法、共沈法、析出沈殿法等が挙げられる。中でも、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が向上し、特定の還元物の収率が向上する観点から、含浸法が好ましい。なお、M1bを含浸法で担体に担持させる際の好ましい条件は、上述の金属触媒(1)におけるM1aの含浸法と同様である。
【0060】
上記金属触媒(2)の平均粒径は、特に限定されないが、反応性の点や、連続流通形式で反応を実施する場合の過剰な圧力損失を伴わない点で、100~10000μmが好ましく、より好ましくは1000~10000μmである。また、金属触媒(2)の形状は、特に限定されないが、例えば、粉末状、粒状、成型(成型体状)等が挙げられる。
【0061】
上記還元反応用触媒は、上記金属触媒(1)及び金属触媒(2)を含む。金属触媒(1)と金属触媒(2)の含有割合(重量比)[金属触媒(1)/金属触媒(2)]は、特に限定されないが、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率及び特定の還元物の選択率を向上させることができる観点から、0.03~10が好ましく、より好ましくは0.07~5、さらに好ましくは0.1~2である。
【0062】
金属触媒(1)を、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる触媒として用いることで、1,4-アンヒドロエリスリトールの脱酸素脱水(DODH)反応により、2,5-ジヒドロフランを高転化率及び高選択率で得ることができる。そして、金属触媒(2)を、2,5-ジヒドロフランと水素とを反応させる触媒として用いることで、1,4-ブタンジオール又はテトラヒドロフランを高選択率で得ることができる。特に、金属触媒(2)における担体として酸化タングステン及びジルコニアを含む金属酸化物を用いることで、2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへの異性化がより促進され、高転化率及び高選択率で1,4-ブタンジオールを得ることができる。
【0063】
金属触媒(1)及び金属触媒(2)を用いて、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応により1,4-ブタンジオールが得られる反応機構は、下記式(I)のように推定される。
【化1】
【0064】
金属触媒(1)及び金属触媒(2)は、反応終了後に、焼成等の再活性化処理を施すことによって再利用することができる。金属触媒(2)は、担体として無機酸化物を用いているため、反応終了後の金属触媒(2)を焼成に付すことができる。金属触媒(2)を焼成することにより、触媒表面の沈殿物が除去されるものと推測され、触媒活性を回復させることができる。また、金属触媒(1)の担体が無機酸化物である場合、反応終了後の金属触媒(1)についても焼成により再活性化処理を行うことができる。さらに、この場合、反応終了後の金属触媒(1)及び金属触媒(2)を混合したまま焼成して再活性化することができる。金属触媒(1)を焼成に付すことより、混合触媒の活性を大幅に回復させることができる。 再活性化処理は、金属触媒(1)及び金属触媒(2)についてそれぞれで行ってもよいし、混合触媒として行ってもよいし、一方のみについて行ってもよい。
【0065】
焼成は、例えば、空気中で加熱(例えば、加熱温度100~500℃、好ましくは200~400℃)することにより行うことができる。昇温温度が上記範囲内であると、得られた触媒を用いた際の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率がより維持される傾向がある。再活性化された触媒は、反応後にさらに再活性化処理を施して使用することができる。再使用回数は、例えば2~3回である。
【0066】
上述のように、上記還元反応用触媒を用いた水素との反応により、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元物を製造することができる。
【0067】
[3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン]
上記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランは、下記式(1)で表される化合物である。3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランは、式(1)に示されるように、エリスリトールの1位と4位の水酸基が脱水縮合して形成された構造を有する化合物である。3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランとしては、1,4-アンヒドロエリスリトール(3,4-ジヒドロキシオキソラン)、1,4-アンヒドロトレイトールが存在する。
【化2】
【0068】
上記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランは、例えば、化学合成により製造された3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランであってもよいし、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導される3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランであってもよく、特に限定されない。上記発酵技術で誘導される3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランとしては、例えば、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されたエリスリトールを原料として使用し、該エリスリトールの分子内脱水反応により生成される3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン等が挙げられる。上記分子内脱水反応は、公知乃至慣用の方法により実施することができ、特に限定されない。なお、上記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランとしては、後述の還元工程を経た結果得られる反応混合物から回収した3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン(未反応の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン)を再利用することもできる。
【0069】
[還元物]
3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応では、通常、2,5-ジヒドロフラン、2,3-ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、3-ヒドロキシテトラヒドロフラン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1-ブタノール、2-ブタノール、γ-ブチロラクトン、アセタール等の多種の化合物が生成し得る。しかしながら、上記還元反応用触媒を用いた3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応によれば、特定の還元物を高選択率で得ることができ、且つ上記還元反応用触媒は使用後の再活性化により再利用することができる。例えば、金属触媒(2)として、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、及びレニウムからなる群から選択された1以上の金属種(特に、レニウム)が、ジルコニア(特に、酸化タングステン及びジルコニア)を含む担体に担持された触媒を用いた場合は、上記触媒は再利用可能でありながら、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率が高く(例えば、94%以上)且つ1,4-ブタンジオールが高選択率(例えば、43%以上)で生成する。
【0070】
[水素]
上記水素(水素ガス)は、実質的に水素のみの状態で使用することもできるし、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス等により希釈した状態で使用することもできる。また、後述の還元工程を経た結果得られる反応混合物から回収した水素(未反応の水素)を再利用することもできる。
【0071】
<3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法>
水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程を含み、上記工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、上記還元反応用触媒の存在下で進行させることにより、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物を製造することができる。なお、本明細書において、「水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程」を、「還元工程」と称する場合がある。
【0072】
上記還元工程において、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、上記還元反応用触媒(固体)の存在下、気体状の(気化させた)3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる気固二相系の反応であってもよいし、上記還元反応用触媒(固体)の存在下、液状の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを反応させる気液固三相系の反応であってもよい。特に、炭素-炭素結合の開裂による炭素数が小さい(例えば3以下)の化合物の生成を抑制する観点からは、上記反応を気液固三相系で進行させることが好ましい。
【0073】
より具体的には、上記還元工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、例えば、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを必須成分として含む原料液と水素とを反応器中に封入して、上記還元反応用触媒の存在下で加熱することによって進行させることができる。上記還元工程では、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、1段目で金属触媒(1)の存在下反応を行い、2段目で金属触媒(2)の存在下反応を行ってもよいし、金属触媒(1)及び金属触媒(2)の混合触媒の存在下で進行させてもよい。前者の場合、1段目では3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とが反応して2,5-ジヒドロフランが生成し、2段目で2,5-ジヒドロフランを2,3-ジヒドロフランに異性化させた後に水素とが反応して1,4-ブタンジオールが生成するものと推測されるが、1段目と2段目におけるそれぞれの素反応をより高収率で行なうことが可能となり、単一の触媒で行なうよりも工業的に高い選択率で1,4-ブタンジオールを製造することが可能となる。また、金属触媒(1)と金属触媒(2)とを混合して使用する必要がないため、使用後は金属触媒(1)と金属触媒(2)を区別して取り出して再活性化することが可能である。一方、後者の場合、一段階で1,4-ブタンジオールを高転化率及び高選択率で製造することが可能となる。また、金属触媒(1)の担体が無機酸化物である場合、金属触媒(1)及び金属触媒(2)を混合したまま焼成して再活性化することができる。なお、上記還元工程において上記還元反応用触媒は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0074】
上記原料液は、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの他に、例えば、水や有機溶媒等の溶媒を含有していてもよいし、溶媒を実質的に含有していなくてもよい。上記有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール等のアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,4-ジオキサン等が挙げられる。上記原料液としては、中でも、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応性に優れる点で、1,4-ジオキサンが好ましい。なお、上記溶媒は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0075】
上記原料液における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの濃度(原料液100重量%に対する3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上(例えば、5~100重量%)が好ましく、より好ましくは8重量%以上(例えば、8~90重量%、8~70重量%)、さらに好ましくは10重量%以上(例えば、10~60重量%)である。上記濃度が5重量%以上であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が向上する傾向がある。一方、上記濃度が90重量%以下であると、粘度が高くなりすぎず、操作が容易となる傾向がある。
【0076】
上記還元反応用触媒中の金属触媒(1)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン100重量部に対して、0.1~300重量部が好ましく、より好ましくは1~200重量部、さらに好ましくは5~150重量部である。上記使用量が上記範囲内であると、触媒を使用することによる効果がより十分に得られ、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率、特定の還元物(特に、1,4-ブタンジオール)の選択率がより向上する傾向がある。
【0077】
上記還元反応用触媒中の金属触媒(2)の使用量(含有量)は、特に限定されないが、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン100重量部に対して、0.1~300重量部が好ましく、より好ましくは1~200重量部、さらに好ましくは5~150重量部である。上記使用量が上記範囲内であると、触媒を使用することによる効果がより十分に得られ、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの転化率、特定の還元物(特に、1,4-ブタンジオール)の選択率がより向上する傾向がある。
【0078】
反応終了後は、上記触媒をろ過等により除去する工程を設けることが好ましい。また、その後、金属触媒(1)、金属触媒(2)、又はこれらの混合触媒(触媒混合物)を取り出し、焼成等による再活性化工程を設けることが好ましい。再活性化工程における詳細な焼成の方法は上述の通りである。
【0079】
3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応は、固体酸の共存下で進行させてもよい。即ち、上記原料液は、上述の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン、溶媒のほか、固体酸を含有していてもよい。なお、固体酸とは、ブレンステッド酸及び/又はルイス酸(ブレンステッド酸及びルイス酸のいずれか一方又は両方)の特性を示す固体であり、ハメットの酸度関数(H0)が6.8以下のものである。上記固体酸としては、公知乃至慣用の固体酸を使用することができ、特に限定されないが、例えば、担体(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト、シリカ-アルミナ等)に無機酸類、有機酸類(例えば、有機スルホン酸類等)を担持した固体;ガリウムシリケート、アルミノシリケート、ボロシリケート等の結晶性金属シリケート(例えば、プロトン型のゼオライトであるH-ZSM-5等);ヘテロポリ酸又はその塩;担体(例えば、シリカ、アルミナ等)にヘテロポリ酸又はその塩を担持した固体;酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)等の酸性の金属酸化物;カルボキシル基、スルホン酸基等の酸基を有するポリマー(例えば、陽イオン交換樹脂等)等が挙げられる。上記固体酸としては、市販品を利用することもできる。固体酸の共存下で反応を進行させることにより、上述の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を促進させることができる。なお、上記固体酸は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0080】
還元工程において固体酸を用いる場合、上記固体酸の使用量(含有量)は、特に限定されないが、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン100重量部に対して、0.1~50重量部が好ましく、より好ましくは1~20重量部である。固体酸を共存させた場合には、反応終了後、当該固体酸をろ過等により除去する工程を設けることが好ましい。
【0081】
上記還元反応においては、上記還元反応用触媒の効果を阻害しない範囲でその他の成分を共存させてもよい。即ち、上記原料液は、上記還元反応用触媒の効果を阻害しない範囲でその他の成分(例えば、アルコール類等)を含有していてもよい。また、上記原料液には、例えば、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの原料(3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランやその原料等)に由来する不純物が含まれる場合があるが、このような不純物は触媒を劣化させるおそれがあるため、公知乃至慣用の方法(例えば、蒸留、吸着、イオン交換、晶析、抽出等)により、原料液から除去することが好ましい。
【0082】
上記原料液は、特に限定されないが、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと、必要に応じて溶媒や固体酸、その他の成分を混合することにより得られる。混合には、公知乃至慣用の撹拌機等を使用することができる。
【0083】
上記反応(3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応)に付す水素と3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランのモル比[水素(mol)/3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン(mol)]は、特に限定されないが、1~100が好ましく、より好ましくは1~50、さらに好ましくは1~30である。上記モル比が1以上であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が向上する傾向がある。一方、上記モル比が100以下であると、未反応の水素を回収するための用役コストが軽減される傾向がある。
【0084】
上記反応における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応温度は、特に限定されないが、50~250℃が好ましく、より好ましくは60~220℃、さらに好ましくは70~200℃、さらに好ましくは100~180℃、特に好ましくは120~150℃である。反応温度が50℃以上であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が向上する傾向がある。一方、反応温度が250℃以下であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの分解が生じにくく、特定の還元物の収率が向上する傾向がある。なお、反応温度は、上記反応において一定(実質的に一定)となるように制御されていてもよいし、段階的又は連続的に変化するように制御されていてもよい。
【0085】
上記反応における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応時間は、特に限定されないが、0.1~200時間が好ましく、より好ましくは0.2~150時間、さらに好ましくは0.5~100時間である。反応時間が0.1時間以上であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が向上する傾向がある。一方、反応時間が200時間以下であると、特定の還元物の選択率が向上する傾向がある。
【0086】
上記反応における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応圧力(3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応における水素分圧)は、特に限定されないが、0.1MPa以上(例えば、0.1~50MPa)が好ましく、より好ましくは1MPa以上(例えば、1~30MPa)、さらに好ましくは3MPa以上(例えば、3~20MPa)、さらに好ましくは5MPa以上(例えば、5~15MPa)である。反応圧力が0.1MPa以上(特に、5MPa以上)であると、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの反応率(転化率)が向上する傾向がある。一方、反応圧力が50MPaを超えると、反応器が高度な耐圧性を備える必要があるため、製造コストが高くなる傾向がある。
【0087】
上記反応は、回分形式、半回分形式、連続流通形式等の任意の形式により実施することができる。また、所定量の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランから得られる還元物の量を増加させたい場合には、反応終了後の未反応の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを分離回収してリサイクルするプロセスを採用してもよい。このリサイクルプロセスを採用すれば、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを所定量使用したときの特定の還元物の生成量を高めることができる。
【0088】
上記還元工程においては、反応器として公知乃至慣用の反応器を使用することができ、例えば、回分式反応器、流動床反応器、固定床反応器等が使用できる。上記固定床反応器としては、例えば、トリクルベッド反応器を使用できる。トリクルベッド反応器とは、固体触媒が充填された触媒充填層を内部に有し、該触媒充填層に対して液体(還元工程では、例えば、上記原料液)と気体(還元工程では、水素)とを共に、反応器の上方から下向流(気液下向並流)で流通する形式の反応器(固定床連続反応装置)である。
【0089】
図1は、トリクルベッド反応器を使用した場合の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法における還元工程の一例を示すフロー図である。図1において、1は反応器(トリクルベッド反応器)、2は原料液の供給ライン、3は水素の供給ラインを示す。また、4は反応混合物取り出しライン、5は高圧気液分離器、6は水素リサイクルラインを示す。以下、図1を参照しながら、トリクルベッド反応器を使用した3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法を簡単に説明する。
【0090】
まず、トリクルベッド反応器1の上方から原料液と水素とを連続的に供給し、その後、反応器の内部で原料液中の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素とを、触媒充填層における触媒(還元反応用触媒)の存在下で反応させ、還元物(反応生成物)を生成させる。そして、当該還元物を含む反応混合物をトリクルベッド反応器1の下方の反応混合物取り出しライン4から連続的に取り出し、その後、必要に応じて、高圧気液分離器5により該反応混合物から水素を分離した後、精製工程にて還元物を精製・単離する。また、高圧気液分離器5により分離した水素は、水素リサイクルライン6を通じて、再度トリクルベッド反応器1に供給して反応に再利用することもできる。
【0091】
反応器としてトリクルベッド反応器を採用すると、原料である3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを気化することなく、気液固三相系で反応を進行させることができるため、コスト面で有利である。また、トリクルベッド反応器中では、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを含む原料液が触媒表面に薄膜を形成しながら下方に流通するため、原料液と水素の界面(気液界面)から触媒表面までの距離が短く、原料液に溶解した水素の触媒表面への拡散が容易となり、特定の還元物を効率的に生成することができる。また、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素の反応生成物からの触媒の分離プロセスも不要で、触媒の再生処置も容易であるため、製造プロセスが簡便でありコスト面で優れる。
【0092】
なお、上記トリクルベッド反応器の材質や形状、サイズ(例えば、塔径や塔長等)等は、特に限定されず、公知乃至慣用のトリクルベッド反応器の中から、反応の規模等に応じて適宜選択することができる。また、上記トリクルベッド反応器は、単一の反応管により構成されるものであってもよいし、複数の反応管により構成された多段反応器であってもよい。上記トリクルベッド反応器が多段反応器である場合の反応管の数は、適宜選択でき、特に限定されない。また、上記トリクルベッド反応器が多段反応器である場合には、当該反応器は、複数の反応管が直列に設置されたものであってもよいし、複数の反応管が並列に配置されたものであってもよい。
【0093】
さらに、トリクルベッド反応器の内部における触媒充填層は、必要に応じて、例えば、反応熱による過熱を抑制するために2以上の位置に分割(分離)して配置してもよい。
【0094】
3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法は、上記還元工程以外にも、必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、原料液と水素を反応器に供給する前に、原料液を調製・精製する工程、反応器から排出(流出)された反応混合物(例えば、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン、水素、及び還元物等の生成物の混合物)を分離・精製する工程等が挙げられる。なお、これらの工程は、上記還元工程とは別ラインで実施してもよく、上記還元工程と一連の工程として(インラインで)実施してもよい。また、上述のように、上記還元工程の前及び/又は後に、再活性化工程を有していてもよい。
【0095】
3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法は、例えば、還元工程の前に、該工程における原料の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを生成させる工程を含んでいてもよい。例えば、上記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを生成させる工程としては、特に、エリスリトールの分子内脱水反応(分子内脱水環化反応)により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン(特に、1,4-アンヒドロエリスリトール)を生成させる工程(「脱水反応工程」と称する場合がある)が好ましい。
【0096】
[脱水反応工程]
上記脱水反応工程におけるエリスリトールの分子内脱水反応は、周知の方法により実施することができ、特に限定されないが、例えば、酸触媒の存在下でエリスリトールを加熱することにより進行させることができる。なお、上記脱水反応工程は、上記還元工程とは別ラインで実施してもよいし、上記還元工程と一連の工程として実施してもよい。
【0097】
上記脱水反応工程において原料として使用されるエリスリトールは、特に限定されず、化学合成により製造されたエリスリトールであってもよいし、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されるエリスリトールであってもよい。中でも、環境への負荷を低減する観点からは、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されるエリスリトールを使用することが好ましい。また、当該脱水反応工程により得られた反応混合物から回収したエリスリトール(未反応のエリスリトール)を再利用することもできる。
【0098】
上記脱水反応工程において使用される酸触媒としては、公知乃至慣用の酸を使用することができ、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、縮合リン酸、臭化水素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸等の無機酸;p-トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸;陽イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカアルミナ、ヘテロポリ酸(例えば、リンモリブデン酸等)等の固体酸等が挙げられる。中でも、生成物等からの分離及び再生処理が容易である点で、固体酸が好ましい。なお、上記酸触媒としては市販品を使用することもでき、例えば、固体酸の市販品として商品名「Amberlyst」(ダウ・ケミカル社製)、商品名「ナフィオン」(デュポン(株)製)等が例示される。なお、酸(酸触媒)は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0099】
上記反応(分子内脱水反応)は、溶媒の非存在下で進行させることもできるし、溶媒の存在下で進行させることもできる。上記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール;1,4-ジオキサン等のエーテル;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の高極性の有機溶媒等が挙げられる。中でも、反応性に優れる点、及び取り扱いや廃棄が容易である点で、溶媒として水を少なくとも含有することが好ましい。なお、溶媒は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0100】
上記反応(分子内脱水反応)の反応温度(加熱温度)は、特に限定されないが、40~240℃が好ましく、より好ましくは80~200℃、さらに好ましくは120~180℃である。反応温度を上記範囲に制御することによって、エリスリトールの分子内脱水反応をより効率的に進行させることができる。なお、反応温度は、反応において一定(実質的に一定)となるように制御されていてもよいし、段階的又は連続的に変化するように制御されていてもよい。
【0101】
上記反応(分子内脱水反応)の時間(反応時間)は、特に限定されないが、1~100時間が好ましく、より好ましくは2~50時間、さらに好ましくは3~30時間である。反応時間が1時間未満であると、エリスリトールの反応率(転化率)が十分に上がらない場合がある。一方、反応時間が100時間を超えると、コスト面で不利となる場合がある。
【0102】
上記反応(分子内脱水反応)は、空気雰囲気下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下等のいずれの雰囲気下においても実施することができる。特に、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの選択率向上の観点からは、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。また、上記反応(分子内脱水反応)は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれにおいても実施することができる。特に、エリスリトールの転化率向上の観点からは、加圧下で実施することが好ましい。例えば、水を溶媒として使用する場合には、加圧下で反応を実施することにより反応温度を100℃以上に高くできるため、エリスリトールの転化率を効率的に高めることができる。
【0103】
上記反応(分子内脱水反応)は、回分形式、半回分形式、連続流通形式等の任意の形式により実施することができる。
【0104】
上記脱水反応工程により、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランが生成する。このようにして得られた3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランは、その後、上記還元工程における原料として使用されるが、脱水反応工程により得られた反応混合物から公知乃至慣用の方法(例えば、蒸留、吸着、イオン交換、晶析、抽出等)により単離した上で使用することもできるし、上記反応混合物から単離することなく(必要に応じて酸触媒等を取り除いた上で)使用することもできる。
【0105】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0106】
以下、実施例により本開示の実施形態をさらに具体的に説明する。
【0107】
製造例1
[触媒(ReOX/C)の製造]
過レニウム酸アンモニウム(アルドリッチ社製)0.0383gを、70~90℃の蒸留水15mLに溶解させ、水溶液を作製した。次いで、カーボンブラック(商品名「Vulcan XC72」、CABOT社製)0.8870gに、液だまりができないように上記過レニウム酸アンモニウム水溶液を5回に分けて全量加え、70~90℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。これを乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させて、触媒(ReOX/C)を製造した。レニウムの担持量を3質量%とした。
【0108】
製造例2
[触媒(ReOX/TiO2)の製造]
過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4、美津和化学薬品(株)製)を、80℃の蒸留水に溶解させ、過レニウム酸アンモニウム水溶液を作製した。次いで、チタニア(商品名「P25」、日本アエロジル(株)製、BET比表面積47m2/g)に、液だまりができないように上記過レニウム酸アンモニウム水溶液を5回に分けて全量加え、80℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。これを乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させて、触媒(ReOX/TiO2)を得た。レニウムの担持量を3質量%とした。ここで、上記触媒(ReOX/TiO2)において、Reの価数は一定ではない、又は不安定であるため、「ReOx」と記載している。以下の触媒についても同様である。
【0109】
製造例3
[触媒(ReOX/ZrO2)の製造]
チタニアの代わりに、ジルコニア(商品名「RC-100P」、第一稀元素化学工業(株)製、BET比表面積62m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/ZrO2)を製造した。レニウムの担持量を3質量%とした。
【0110】
製造例4
[触媒(ReOX/Al23)の製造]
チタニアの代わりに、アルミナ(商品名「Alu C805」、日本アエロジル(株)製、BET比表面積87m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/Al23)を製造した。レニウムの担持量を3質量%とした。
【0111】
製造例5
[触媒(ReOX/SiO2)の製造]
チタニアの代わりに、シリカ(商品名「G-6」、富士シリシア化学(株)製、BET比表面積535m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/SiO2)を製造した。レニウムの担持量を3質量%とした。
【0112】
製造例6
[触媒(ReOX/HZSM5)の製造]
チタニアの代わりに、ゼオライト(商品名「HZSM-5」、ズードケミー社製、Si/Al2比90、BET比表面積390m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/HZSM5)を製造した。レニウムの担持量を3質量%とした。
【0113】
製造例7
[触媒(ReOX/MgO)の製造]
チタニアの代わりに、マグネシア(商品名「500A」、宇部興産(株)製、BET比表面積34m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/MgO)を製造した。レニウムの担持量を3質量%とした。
【0114】
製造例8
[触媒(ReOX/TiO2-ZrO2)の製造]
チタニアの代わりに、チタニアとジルコニアの混合物(第一稀元素化学工業(株)製、チタニアの割合30質量%、BET比表面積148m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/TiO2-ZrO2)を製造した。レニウムの担持量を1質量%とした。
【0115】
製造例9
[触媒(ReOX/SiO2-ZrO2)の製造]
チタニアの代わりに、シリカとジルコニアの混合物(第一稀元素化学工業(株)製、シリカの割合10質量%、BET比表面積136m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/SiO2-ZrO2)を製造した。レニウムの担持量を1質量%とした。
【0116】
製造例10
[触媒(ReOX/CeO2-ZrO2)の製造]
チタニアの代わりに、酸化セリウムとジルコニアの混合物(第一稀元素化学工業(株)製、酸化セリウムの割合50質量%、BET比表面積136m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/CeO2-ZrO2)を製造した。レニウムの担持量を1質量%とした。
【0117】
製造例11
[触媒(ReOX/WO3-ZrO2)の製造]
チタニアの代わりに、酸化タングステンとジルコニアの混合物(第一稀元素化学工業(株)製、酸化タングステンの割合10質量%、BET比表面積103m2/g)を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/WO3-ZrO2)を製造した。レニウムの担持量を1質量%とした。
【0118】
製造例12
[触媒(ReOX/WO3/TiO2)の製造]
チタニア(商品名「P25」、日本アエロジル(株)製、BET比表面積47m2/g)に、液だまりができないようにメタタングステン酸アンモニウム水和物(Strem Chemicals社製)の水溶液を5回に分けて全量加え、80℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。これを乾燥機内にて80℃で12時間乾燥させ、次いで500℃で3時間焼成して、担体(WO3/TiO2)を得た。上記担体におけるタングステンの担持量は5質量%であった。また、過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4、美津和化学薬品(株)製)を、80℃の蒸留水に溶解させ、過レニウム酸アンモニウム水溶液を作製した。そして、上記担体(WO3/TiO2)に、液だまりができないように上記過レニウム酸アンモニウム水溶液を5回に分けて全量加え、80℃で加熱及び攪拌して、含浸させた。これを乾燥機内にて100℃で12時間乾燥させ、次いで500℃で3時間焼成して、触媒(ReOX/WO3/TiO2)を得た。レニウムの担持量を1重量%とした。
【0119】
製造例13
[触媒(ReOX/WO3/Al23)の製造]
チタニアの代わりに、アルミナ(商品名「Alu C805」、日本アエロジル(株)製、BET比表面積87m2/g)を用いたこと以外は製造例12と同様にして、担体(WO3/Al23)及び触媒(ReOX/WO3/Al23)を製造した。上記担体におけるタングステンの担持量は5質量%であった。レニウムの担持量を1重量%とした。
【0120】
製造例14
[触媒(ReOX/WO3-ZrO2)の製造]
製造例11で得られた触媒(ReOX/WO3-ZrO2)を、1,4-ジオキサン中で140℃で1時間の条件で還元して、触媒(ReOX/WO3-ZrO2)を得た。
【0121】
製造例15
[触媒(ReOX/WO3/ZrO2)の製造]
チタニアの代わりに、ジルコニア(商品名「RC-100P」、第一稀元素化学工業(株)製、BET比表面積62m2/g)を用いたこと以外は製造例12と同様にして、担体(WO3/ZrO2)及び触媒(ReOX/WO3/ZrO2)を製造した。上記担体におけるタングステンの担持量は5質量%であった。レニウムの担持量を1重量%とした。
【0122】
製造例16
[触媒(ReOX/WO3-ZrO2)の製造]
硝酸酸化ジルコニウム二水和物(関東化学(株)製)とメタタングステン酸アンモニウム水和物(Strem Chemicals社製)の水溶液を撹拌しつつ80℃とし、そこへアンモニア水溶液(富士フイルム和光純薬(株)製、0.1M)を添加し、触媒を共沈させた。次いで、沈殿物をろ過して採取し、乾燥機内にて80℃で12時間乾燥させ、次いで500℃で3時間焼成して、担体(WO3-ZrO2)(タングステンの担持量5質量%、BET比表面積62m2/g)を得た。
そして、チタニアの代わりに、上記担体(WO3-ZrO2)を用いたこと以外は製造例12と同様にして、触媒(ReOX/WO3-ZrO2)を製造した。レニウムの担持量を1質量%とした。
【0123】
実施例1(担体の検討)
[2,5-ジヒドロフランの還元]
ガラス製のオートクレーブ用内筒にスターラーチップと、触媒150mgと、1,4-ジオキサン4gと、2,5-ジヒドロフラン150mgと、水30mgとを入れた。上記オートクレーブ用内筒を190mLオートクレーブ(高圧回分式反応装置)に入れ、蓋をした。次いで、オートクレーブの内部に1MPaの水素を張り込んだ後に排気する操作を3回繰り返し、内部の空気をオートクレーブから追い出した。このオートクレーブに、140℃で8MPa(水素圧力:8MPa)を示すよう、室温で5.5MPaを示すように水素を充填した。なお、上記触媒として、表1に示すように各製造例で得られた触媒を用いた。
続いて、上記オートクレーブをマグネットスターラー付加熱装置にセットし、反応器内部(オートクレーブ内部)の温度が140℃になるように加熱し、反応温度を140℃に維持しながら4時間(Reaction time=4h)攪拌した。その後、室温まで冷却し、オートクレーブ内部の水素を解放し、放圧した。
反応後の溶液は、ガスクロマトグラフィー(ガスクロマトグラフ装置:「GC-2014」((株)島津製作所製)、GCカラム:TC-WAX、DB-FFAP、検出器:FID)を用いたFID分析及びGC-MSにより分析した。これより、2,5-ジヒドロフランの転化率、生成物の選択率を算出した。分析結果を表1に示す。なお、検出されたが化合物の特定を行っていない生成物の合計選択率を“Others”として記載した。
【0124】
【表1】
【0125】
表1に示すように、触媒としてReOX/TiO2を用いた場合(Entry 2)、1,4-ブタンジオール及びその前駆体(2,3-ジヒドロフラン、2-ヒドロキシテトラヒドロフラン、及びアセタール)の合計の選択率が40%未満であり、炭素を担体とした触媒ReOX/Cを用いた場合(Entry 1)よりも低かった。それでも、Entry 2及びReOX/ZrO2を用いた場合(Entry 3)は、触媒としてReOX/Al23、ReOX/SiO2、ReOX/HZSM5、及びReOX/MgOをそれぞれ用いた場合(Entry 4~7)よりも2,5-ジヒドロフランの転化率及び1,4-ブタンジオール及びその前駆体の合計の選択率が高かった。また、ReOX/ZrO2を用いた場合(Entry 3)は、ReOX/TiO2を用いた場合(Entry 2)よりも、2、5-ジヒドロフランの転化率についてわずかに高い活性を示した。しかしながら、Entry 2及びEntry 3における1,4-ブタンジオールの選択率は20%前後であり、テトラヒドロフランの選択率と同程度であった。
【0126】
ReOX/Al23及びReOX/HZSM5を用いた場合(Entry 4及びEntry 6)の主な生成物は、2,5-ジヒドロフラン又は2,3-ジヒドロフランからの不均化生成物であるテトラヒドロフランやフランであった。ReOX/SiO2及びReOX/MgOを用いた場合(Entry 5及びEntry 7)の主生成物はテトラヒドロフランであった。ReOX/MgOを用いた場合(Entry 7)、2,5-ジヒドロフランから異性化した2,3-ジヒドロフランも他の主生成物であった。2,3-ジヒドロフランはReOX/Al23及びReOX/SiO2を用いた場合(Entry 4及びEntry 5)でも生成した。ReOX/Al23、ReOX/SiO2、及びReOX/MgOを用いた場合(Entry 4、Entry 5、及びEntry 7)、表1には示されていないが、2,3-ジヒドロフランと水の付加物又はアルコールとの付加物であるアセタールも検出された。また、ReOX/Al23及びReOX/MgOを用いた場合(Entry 4及び7)、2,3-ジヒドロフランの生成がある程度認められるものの1,4-ブタンジオールの選択率が低いことから、2,3-ジヒドロフランから1,4-ブタンジオールの生成について非常に低い活性を示すものと推測された。ReOX/HZSM5を用いた場合(Entry 6)、2,3-ジヒドロフランは検出されず、1,4-ブタンジオールを形成するための第一段階である、2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへの異性化について活性を示さなかった。
【0127】
Entry 1~7に示されるように、レニウム金属を担持する担体として酸化物を単独で用いた触媒(Entry 2~7)は、1,4-ブタンジオールの選択率について、担体として炭素を用いた場合(Entry 1)よりも低い活性を示した。
【0128】
一方、触媒としてReOX/TiO2-ZrO2を用いた場合(Entry 8)、2,5-ジヒドロフランの転化率が比較的高く、1,4-ブタンジオールの選択率は担体として単独の酸化物を用いた場合(Entry 2~7)の中で最も高い値(Entry 2)と同じ値を示し、且つ転化率はこのEntry 2よりも高い値を示した。触媒として製造例11で得られたReOX/WO3-ZrO2を用いた場合(Entry 11)、ReOX/Cを用いた場合(Entry 1)と同じく94%もの高い2,5-ジヒドロフラン転化率を示した。触媒として製造例11で得られたReOX/WO3-ZrO2を用いた場合(Entry 11)、担体として他の二種の酸化物を用いた他の場合(Entry 8~10及び12~13)よりも、2,5-ジヒドロフランの転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率が高かった。
【0129】
Entry 8, 9, 11, 及び14~16は、それぞれ、担体における二種の金属酸化物のうちの一方のみを担体として用いた場合に対して、1,4-ブタンジオールの選択率が高かった。また、Entry 10, 12, 及び13は、それぞれ、担体における二種の担体酸化物のうちの一方のみを担体として用いた場合の比較例に対して、テトラヒドロフランの選択率が高かった。
【0130】
製造例11で得られたReOX/WO3-ZrO2に還元処理を施して用いた場合(Entry 14)、還元処理を行わなかった場合(Entry 11)よりも低い活性を示し、1,4-ブタンジオールの選択率が低下したが、2-ヒドロキシテトラヒドロフラン等の他の1,4-ブタンジオールを得るための中間体やアセタールの選択率は増加した。この結果から、ReOX/WO3-ZrO2において存在する、高い価数のレニウム種が、2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへの異性化について高い触媒活性を示す活性サイトがあると推測される。
【0131】
製造例17
レニウムの担持量が0.2質量%、0.5質量%、3質量%、4質量%とそれぞれなるように、過レニウム酸アンモニウムの量を変更したこと以外は製造例11と同様にして、四種の触媒(ReOX/WO3-ZrO2)を製造した。
【0132】
実施例2(レニウム担持量の検討)
[2,5-ジヒドロフランの還元]
触媒として、製造例17で得られた四種の触媒、製造例11で得られた触媒(レニウム担持量:1質量%)、及び酸化タングステンとジルコニアの混合物(第一稀元素化学工業(株)製、酸化タングステンの割合10質量%、BET比表面積103m2/g)(レニウム担持量:0質量%)の計六種をそれぞれ用いたこと、及び、水の量を40mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして、2,5-ジヒドロフランの還元反応を行い、レニウム担持量の2,5-ジヒドロフランの転化率及び生成物の選択率への影響を調べた。分析結果を図2に示す。
【0133】
図2に示すように、転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率が最も高い、最適なレニウムの担持量は1質量%であった。レニウム担持量が0質量%から1質量%に増加するに連れて、転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率が劇的に増加した。しかしながら、レニウム担持量が1質量%を超えたあとはテトラヒドロフランの生成が増加した。
【0134】
製造例18
タングステンの担持量が1質量%、3質量%、4質量%、10質量%、20質量%とそれぞれなるように、メタタングステン酸アンモニウム水和物の量を変更したこと以外は製造例15と同様にして、五種の触媒(ReOX/WO3/ZrO2)を製造した。
【0135】
実施例3(タングステン担持量の検討)
[2,5-ジヒドロフランの還元]
触媒として、製造例18で得られた五種の触媒、製造例3で得られた触媒(タングステン担持量:0質量%)、製造例11で得られた触媒(タングステン担持量:10質量%)、製造例15で得られた触媒(タングステン担持量:5質量%)、及び製造例16で得られた触媒(タングステン担持量:5質量%)の計九種をそれぞれ用いたこと、及び、水の量を40mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして、2,5-ジヒドロフランの還元反応を行い、タングステン担持量の2,5-ジヒドロフランの転化率及び生成物の選択率への影響を調べた。分析結果を図3に示す。なお、図3において、製造例11で得られた触媒における担体を用いた場合を「com」と示した。また、図3における、タングステン担持量が5質量%であるデータは、製造例15で得られた触媒を用いた例のものである。
【0136】
図3に示すように、タングステン担持量が5質量%までは、触媒(ReOX/WO3/ZrO2)の活性は、タングステン担持量が増加するに連れて増加した。タングステン担持量3~5質量%の間では、1,4-ブタンジオール及びその前駆体(アセタール及び2-ヒドロキシテトラヒドロフラン)の選択率がさらに高かった。タングステン担持量が5質量%を超えると、テトラヒドロフランの選択率が急激に増加した。また、異なる方法で調製した酸化タングステン-ジルコニア担体は異なる結果を示した。担体を含浸法により調製した製造例15(タングステン担持量:5質量%)の触媒は、市販の担体を用いて作製した製造例11の触媒(タングステン担持量:10質量%)と同様の活性を示した。また、図3には結果が示されていないが、担体を共沈法により調製した製造例16の触媒(タングステン担持量:5質量%)は、市販の担体を用いて作製した製造例11の触媒(タングステン担持量:10質量%)よりも活性が低かった。このように、担体の製法によっても触媒活性は異なる結果となった。
【0137】
実施例4(反応温度の検討)
[2,5-ジヒドロフランの還元]
反応温度を、393K、403K、413K、及び433Kに変更したこと、及び、水の量を40mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして、2,5-ジヒドロフランの還元反応を行い、反応温度の2,5-ジヒドロフランの転化率及び生成物の選択率への影響を調べた。分析結果を図4に示す。
【0138】
図4に示すように、393Kから413Kまでは、反応温度が高いほど転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率が増加した。一方、反応温度が413Kを超えると、テトラヒドロフランの選択率が劇的に増加した。
【0139】
実施例5(水素圧力の検討)
[2,5-ジヒドロフランの還元]
水素圧力を、2MPa、4MPa、及び8MPaのそれぞれに変更したこと、及び、水の量を40mgとし、また、反応時間について、0~4時間(reaction time=0~4h)の間で適宜選択したこと以外は、実施例1と同様にして、2,5-ジヒドロフランの還元反応を行った。このようにして、水素圧力と反応時間の、2,5-ジヒドロフランの転化率及び生成物の選択率への影響を調べた。分析結果を図5及び表2に示す。
【0140】
【表2】
【0141】
反応時間を4時間とし、水素圧力を変動させた際の分析結果を図5に示す。図5及び表2によれば、水素圧力が2MPaから8MPaまで増加するに連れて、転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率が増加した。水素圧力が8MPaの場合は、テトラヒドロフランの選択率が高かったが、反応時間が短くても転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率が高く、反応速度が速かった。また、水素圧力が2MPaと低い場合は1,4-ブタンジオールの選択率が低く及びγ-ブチロラクトンの選択率が高いが、1,4-ブタンジオール、アセタール、2-ヒドロキシテトラヒドロフラン、及びγ-ブチロラクトンの合計の選択率と、フラン及びテトラヒドロフランの合計の選択率は、水素圧力が異なる場合であっても類似していた。このことから、γ-ブチロラクトンは2,5-ジヒドロフランの転化において、2-ヒドロキシテトラヒドロフランやアセタールのように、1,4-ブタンジオールを生成するための中間体である可能性がある。
【0142】
水素圧力の対数をx軸、反応速度の対数をy軸としてプロットしてグラフを作成し、近似直線を引いて水素圧力に関する反応次数を求めた(図6)。水素圧力に関する反応次数は0.94であった。これは、律速段階は水素種に関する反応であり、当該反応は水素の活性化又は水素種による還元である可能性であることを示している。なお、各水素圧力条件において、反応時間をx軸、転化率をy軸としてプロットしてグラフを作成し、近似直線を引いて、その傾きより原料の消費速度を算出し、反応速度とした(図7)。そして、本実施例における検討により、最適な反応条件は、反応温度413K(140℃)、水素圧力8MPaであることが分かった。
【0143】
製造例19
[触媒(ReOX-Au/CeO2)の製造]
テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O、富士フイルム和光純薬(株)製)0.027gを、20℃の蒸留水250mLに溶解させ、テトラクロロ金(III)酸水溶液を作製した。上記テトラクロロ金(III)酸水溶液を80℃に加熱した後、商品名「HS」(酸化セリウム、第一稀元素化学工業(株)製)3.947gを加え、酸化セリウムを懸濁させた。そして、懸濁したテトラクロロ金(III)酸水溶液のpHが8になるまで0.1Mのアンモニア水溶液を添加し、4時間攪拌して金水酸化物を析出させた。その後、吸引ろ過により金水酸化物が担持した酸化セリウムを回収し、これを、乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させた後、空気雰囲気下で1℃/minの速度で昇温させ、400℃で4時間焼成して、金が担持した酸化セリウム[Au/CeO2]を得た。
他方、過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4、シグマアルドリッチ社製)0.052gを、20℃の蒸留水10mLに溶解させ、過レニウム酸アンモニウム水溶液を作製した。次いで、上記で得られた[Au/CeO2]3.564gに、液だまりができないように上記過レニウム酸アンモニウム水溶液を5回に分けて全量加え、80℃で加熱及び攪拌して、含浸させた後、これを乾燥機内にて110℃で一晩乾燥させた。その後、空気雰囲気下で1℃/minの速度で昇温させ、400℃で4時間焼成し、レニウムの担持量が1重量%、[Au/Re]=0.3である触媒(ReOX-Au/CeO2)を得た。
【0144】
製造例20
[触媒(ReOX/CeO2)の製造]
チタニアの代わりに、酸化セリウム(商品名「HS」、第一稀元素化学工業(株)製))を用いたこと以外は製造例2と同様にして、触媒(ReOX/CeO2)を製造した。レニウムの担持量を1質量%とした。
【0145】
実施例6
[1,4-アンヒドロエリスリトールの還元]
ガラス製のオートクレーブ用内筒にスターラーチップと、触媒と、1,4-ジオキサン4gと、1,4-アンヒドロエリスリトール300mgとを入れた。上記オートクレーブ用内筒を190mLオートクレーブ(高圧回分式反応装置)に入れ、蓋をした。次いで、オートクレーブの内部に1MPaの水素を張り込んだ後に排気する操作を3回繰り返し、内部の空気をオートクレーブから追い出した。このオートクレーブに、140℃で8MPa(水素圧力:8MPa)を示すよう、室温で5.5MPaを示すように水素を充填した。
続いて、上記オートクレーブをマグネットスターラー付加熱装置にセットし、反応器内部(オートクレーブ内部)の温度が140℃になるように加熱し、反応温度を140℃に維持しながら24時間(Reaction time=24h)攪拌した。その後、室温まで冷却し、オートクレーブ内部の水素を解放し、放圧した。
反応後の溶液は、実施例1と同様にして、ガスクロマトグラフィーを用いたFID分析及びGC-MSにより分析した。これより、1,4-アンヒドロエリスリトールの転化率、生成物の選択率を算出した。分析結果を表3に示す(Entry 1~4)。
なお、上記反応に用いた触媒及びその量は表3に示す通りである。ReOX-Au/CeO2は製造例19で得られたもの、ReOX/WO3-ZrO2は製造例11で得られたもの、ReOX/CeO2は製造例20で得られたものである。二種の触媒を使用した例では、二種の触媒の物理混合物を用いた。
【0146】
実施例7
[ジヒドロフランの還元]
ガラス製のオートクレーブ用内筒にスターラーチップと、触媒150mgと、1,4-ジオキサン4gと、2,5-ジヒドロフラン又は2,3-ジヒドロフラン150mgと、水30mgとを入れた。上記オートクレーブ用内筒を190mLオートクレーブ(高圧回分式反応装置)に入れ、蓋をした。次いで、オートクレーブの内部に1MPaの水素を張り込んだ後に排気する操作を3回繰り返し、内部の空気をオートクレーブから追い出した。このオートクレーブに、140℃で8MPa(水素圧力:8MPa)を示すよう、室温で5.5MPaを示すように水素を充填した。
続いて、上記オートクレーブをマグネットスターラー付加熱装置にセットし、反応器内部(オートクレーブ内部)の温度が140℃になるように加熱し、反応温度を140℃に維持しながら4時間(Reaction time=4h)攪拌した。その後、室温まで冷却し、オートクレーブ内部の水素を解放し、放圧した。
反応後の溶液は、実施例1と同様にして、ガスクロマトグラフィーを用いたFID分析及びGC-MSにより分析した。これより、2,5-ジヒドロフラン及び2,3-ジヒドロフランの転化率、生成物の選択率を算出した。分析結果を表3に示す(Entry 5~13)。
なお、上記反応に用いた触媒及びその量は表3に示す通りである。ReOX-Au/CeO2は製造例19で得られたもの、ReOX/WO3-ZrO2は製造例11で得られたもの、WO3-ZrO2は製造例11で使用した酸化タングステンとジルコニアの混合物、ZrO2は製造例3で使用したジルコニア、MgOは製造例7で使用したマグネシアである。
【0147】
【表3】
【0148】
実施例8
[ジヒドロフランの還元]
水素圧力を表4に示すように変更したこと以外は、実施例7のEntry 7と同様にして、2,5-ジヒドロフランの還元反応を行った。分析結果を表4に示す(Entry 1~3)。なお、表4のEntry 3は表3のEntry 7に相当する。
【0149】
【表4】
【0150】
表3に示すように、ReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の物理混合物を触媒として用いることにより、1,4-アンヒドロエリスリトールから1,4-ブタンジオールを製造することができた(Entry 1)。しかしながら、ReOX/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の物理混合物を用いた場合、1,4-アンヒドロエリスリトールの転化率が極めて低く、触媒活性が低かった(Entry 2)。これは、ReOX/WO3-ZrO2単体を触媒として用いた場合も1,4-アンヒドロエリスリトールの転化率が極めて低かったため(Entry 4)、1,4-アンヒドロエリスリトールから2,5-ジヒドロフランへの脱酸素脱水反応において、水素の活性化のためにAu等の金属種M2が促進剤として必須であることを示している。ReOX/CeO2とReOX/Cの共触媒の触媒メカニズムとは異なり、CeO2上のRe種は、ReOX/WO3-ZrO2の担体上で活性化された水素種により還元されなかった。ReOX/CeO2の還元を促進する能力について、担体のCとWO3-ZrO2の違いは、導電性に関連がある可能性がある。C担体は水素分子からH+とともに生じた電子を、酸化物担体よりも容易に移動させることができるものと推測される。よって、金属触媒(2)であるReOX/WO3-ZrO2は2,5-ジヒドロフランから1,4-ブタンジオールへ転化する機能のみを有するものと考えられる。 そして、1,4-アンヒドロエリスリトールから2,5-ジヒドロフランへの脱酸素脱水反応は金属触媒(1)であるReOX-Au/CeO2により進行するものと考えられる。
【0151】
2,5-ジヒドロフランの転化に関して、Reを担持していないWO3-ZrO2(Entry 7)及びZrO2(Entry 8)は非常に低い活性を示し、主生成物はジヒドロフランが不均化して副生するテトラヒドロフラン及びフランであった。さらに、WO3-ZrO2を用いた2,5-ジヒドロフランの反応において、転化率とテトラヒドロフラン及びフランの選択率は、水素圧力によって変わらなかった(表4のEntry 1~3)。これは、水素圧力はジヒドロフランの不均化に影響しなかったことを示している。水素圧力が高い条件においてWO3-ZrO2を用いた場合、2,3-ジヒドロフラン及びその水素化生成物であるアセタールの量は非常に少なかったが、これらの中間体はReを担持しない状況下では続く工程で開環することができなかった。なお、フランは、一般的に金属触媒と水素の存在下で容易に水素化されてテトラヒドロフランとなるため、望ましくない副生物である。また、ReOX/WO3-ZrO2を用いた場合テトラヒドロフランの選択率が高くなるが(Entry 6)、これはWO3-ZrO2がある程度活性を示すことによるものであることが分かった(Entry 7)。Reを担持しないWO3-ZrO2を用いた場合、2,3-ジヒドロフラン及び1,4-ブタンジオールの生成はほとんど確認されなかった。これは、Re種は、1,4-ブタンジオールを生成する反応における初期工程である、2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへの転化を触媒する機能を有することを示している。また、ReOX-Au/CeO2は2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへの転化を一部触媒することができたが(Entry 5)、2,3-ジヒドロフランから2-ヒドロキシテトラヒドロフランへの水素化を触媒することは困難である。ReOX/WO3-ZrO2を用いた場合の1,4-ブタンジオール及びその前駆体のトータル収率は、ReOX-Au/CeO2を用いた場合よりも高かった。これは、2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへの異性化が主に/WO3-ZrO2担体上のRe種により触媒されていることを示している。
【0152】
2,3-ジヒドロフランの還元反応では、ReOX/WO3-ZrO2、WO3-ZrO2、及びZrO2を用いた場合(Entry 10~12)、2,3-ジヒドロフラン(沸点:323K)の蒸発や2,3-ジヒドロフランの重合によるものと思われるが、カーボンバランスが低かった。このことは、ReOX-Au/CeO2は、ReOX/WO3-ZrO2と組み合わせて用いられた1,4-アンヒドロエリスリトールの還元反応において2,3-ジヒドロフランの重合を抑制することを示している。ReOX-Au/CeO2は、2,5-ジヒドロフランの還元反応と同様に、2,3-ジヒドロフランから2-ヒドロキシテトラヒドロフランやアセタールへの水素化を部分的に触媒することができたが(Entry 9)、活性及び2-ヒドロキシテトラヒドロフランに由来する生成物の収率は、ReOX/WO3-ZrO2を用いた場合(Entry 10)よりも低かった。これは、2,3-ジヒドロフランの水素化は、主にReOX/WO3-ZrO2によって触媒されることを示唆している。
【0153】
2,3-ジヒドロフランから2-ヒドロキシテトラヒドロフラン及びその誘導体への水素化において、酸度は重要である。MgO(Entry 13)などの塩基性担体は、酸性担体であるZrO2(Entry 12)及びWO3-ZrO(Entry 11)よりも格段に活性が低かった。さらに、おそらくZrO2よりも強いWO3-ZrO2の酸度によると思われるが、WO3をZrO2に添加することにより転化率が増加した。一方で、これらの触媒を用いた場合ではフランが検出されなかったことから、酸性の触媒により1,4-ブタンジオールを脱水するためと思われるが、WO3の添加によりテトラヒドロフランが生成した。酸性の触媒による脱水もまたγ-ブチロラクトンの選択率の増加及び2-ヒドロキシテトラヒドロフランの選択率の低下の原因となる可能性がある。Re種がWO3-ZrO2上に担持した状態では、1,4-ブタンジオールの選択率が劇的に増加した(Entry 10)。これは、2-ヒドロキシテトラヒドロフラン由来の生成物から1,4-ブタンジオールへの水素化は主にWO3-ZrO2上のRe種に触媒されることを示している。CeO2上のRe種は水素化活性がずっと低かったためである(Entry 9)。
【0154】
実施例9(反応時間の検討)
[1,4-アンヒドロエリスリトールの還元]
反応時間を表5に示すように変更したこと以外は、実施例6のEntry 1と同様にして、1,4-アンヒドロエリスリトールの還元反応を行った。分析結果を図7及び表5に示す(Entry 1~6)。なお、表5のEntry 4は表3のEntry 1に相当する。
【0155】
【表5】
【0156】
図8は、ReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の混合物を触媒として用いた際の1,4-アンヒドロエリスリトールの反応における転化率及び各生成物の選択率の経時変化を示す。表5及び図8に示すように、1,4-ブタンジオールとテトラヒドロフランの選択率は転化率の上昇に伴って増加した。反応初期では中間体である2,5-ジヒドロフラン、4-ヒドロキシブタナール由来のアセタール(表5には示されていない)が検出されたが、これらの選択率は経時に伴って低下し、次第に転化したものと考えられる。1,4-ブタンジオールの選択率が最も高かったのは、反応時間が32時間であるEntry 5の55%であった。
【0157】
本実施例における検討により、金属触媒(1)及び金属触媒(2)を組み合わせて用いた1,4-アンヒドロエリスリトールの還元反応は、金属触媒(1)により触媒された1,4-アンヒドロエリスリトールから2,5-ジヒドロフランへの脱酸素脱水反応と、金属触媒(2)により触媒された2,5-ジヒドロフランから1,4-ブタンジオールへの還元反応より構成される反応経路を有するものと推測された。推測される2,5-ジヒドロフランから1,4-ブタンジオールへの還元反応の具体的な反応経路は、2,5-ジヒドロフランの転化において、まず金属触媒(2)上の金属種M1が2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへの異性化を触媒し、次に金属触媒(2)における担体が2,3-ジヒドロフランから2-ヒドロキシテトラヒドロフラン又はその誘導体への水素化を触媒し、最後に金属触媒(2)上の金属種M1が2-ヒドロキシテトラヒドロフラン由来の中間体から1,4-ブタンジオールへの水素化を触媒するというものである。
【0158】
実施例10(触媒の再利用検討)
[1,4-アンヒドロエリスリトールの還元]
表6に示すように準備した触媒を用いたこと以外は、実施例6のEntry 1と同様にして、1,4-アンヒドロエリスリトールの還元反応を行った。分析結果を表6に示す(Entry 1~8)。
【0159】
【表6】
【0160】
触媒としては、実施例6のEntry 1と同様にReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の物理混合物を用いた。Entry 1では未使用の触媒を用い、Entry 2ではEntry 1で使用した触媒をそのまま使用した。一度使用済みの触媒を使用した場合(Entry 2)、転化率はほぼ同じであったにもかかわらず、1,4-ブタンジオールの選択率は、未使用の触媒を使用した場合(Entry 1)の53%から25%に劇的に低下した。Entry 2では2,5-ジヒドロフランやアセタールなどの中間体の選択率が増加していることから、1,4-ブタンジオールの選択率が低下した理由はReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の活性が反応後で低下していることによるものであることを示す。
【0161】
ReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の混合触媒は焼成により触媒表面の沈殿物を除去し触媒活性を回復させることができる。Entry 1で使用後の触媒についてTG-DTA測定(昇温速度:10K/min、サンプル重量:10mg)を行った結果を図9に示す。図9によれば、450~650Kにおいて重量減少が生じ、DTA信号にピークが観測されることから、触媒表面の沈殿物は上記温度範囲で除去され得ることが分かる。よって、焼成温度を573Kとした(Entry 3~6)。表6に示すように、転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率が高い観点から、最適な焼成条件はEntry 5及び6の573K、3時間であった。二回目の触媒使用では、573Kにおいて1時間(Entry 3)と3時間(Entry 5)の焼成条件の違いでは、転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率はほぼ同じであった。573K1時間の焼成条件で焼成した三回目の触媒使用(Entry 4)では、1,4-アンヒドロエリスリトールの転化率は二回目の触媒使用(Entry 3)よりも低下しており、テトラヒドロフランの選択率の増加に伴って1,4-ブタンジオールの選択率は低下したが、Entry 2に比べると充分に再活性化されていることが示されている。一方、573K3時間の焼成条件で焼成した三回目の触媒使用(Entry 6)では、転化率は低下せず100%であり、1,4-ブタンジオールの選択率の低下も小さかった。よって、ReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2は573Kでの焼成によって再利用することができ、触媒活性を回復させることができた。
【0162】
Entry 7では、触媒として、Entry 1で使用したReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の物理混合物を240mgに、未使用のReOX-Au/CeO2を60mg追加したものを使用した。Entry 7の転化率及び1,4-ブタンジオールの選択率はEntry 1と同等であることから、未使用の触媒を使用後の触媒に補充することで未使用の触媒と同等レベルに活性度を回復させることができることが分かる。このことは、触媒混合物の不活性化は主にReOX-Au/CeO2により起こることを示している。一方、Entry 8では、触媒として、Entry 1で使用したReOX-Au/CeO2とReOX/WO3-ZrO2の物理混合物を240mgに、未使用のReOX/WO3-ZrO2を60mg追加したものを使用した。Entry 1で使用した触媒をそのまま使用したEntry 2に対して、Entry 8では、転化率は劇的に低下し、テトラヒドロフランの選択率が増加した。このことから、触媒混合物の不活性化の原因はReOX/WO3-ZrO2によるものではないことが分かる。よって、焼成により主にReOX-Au/CeO2の活性を触媒混合物中で回復させることができる。
【0163】
WO3-ZrO2及びReOX/WO3-ZrO2について水素を用いた昇温反応法による分析を行った。結果を図10及び表7に示す。図10において、(a)はWO3-ZrO2、(b)は製造例11で得られたReOX/WO3-ZrO2のグラフである。表7には、特定の温度範囲における水素消費量を示した。(a)WO3-ZrO2では723~1000Kでブロードなピークを示し、これはWO3-ZrO2中のWO3の還元を示す。このブロードピークにおける水素消費量は0.007mmolであり(Entry 1)、(b)ReOX/WO3-ZrO2の水素消費量(Entry 2)と同じである。図10に示す(b)ReOX/WO3-ZrO2のグラフにおける585Kと690Kの2つのピークはRe種の還元を示すと判断される。Re種の還元は、反応温度において高い水素圧力とすることにより生じさせることができる。後述のL3-edge XANES分析により、反応中ではRe種の平均価数が+7から+4まで還元されるものと推測された。
【0164】
【表7】
【0165】
表6のEntry 1での使用後のReOX/WO3-ZrO2及び様々な価数のレニウムについて、L3-edge XANES分析を行った。そのスペクトル図11に、ホワイトライン領域と平均価数の間の詳細の線形関係を図12及び表8に示す。図11及び図12において、(a)はRe粉末、(b)はReO2、(c)はReO3、(d)はRe27、(e)は使用後のReOX/WO3-ZrO2をそれぞれ示す。表8及び図12に示す(a)~(d)の価数及びホワイトラインの関係から、(e)使用後のReOX/WO3-ZrO2における平均Re価数を求め、その値は+3.1であった。すなわち、1,4-アンヒドロエリスリトール還元反応の前後において、ReOX/WO3-ZrO2における平均Re価数は+7から約+3まで減少した。よって、Re種の一部は、4-ヒドロキシブタナールから1,4-ブタンジオールに水素化することができる金属状態へと還元されたが、高い価数のRe種の他の一部は2,5-ジヒドロフランから2,3-ジヒドロフランへ異性化させることができる状態に還元されることはなかった。
【0166】
【表8】
【0167】
ReOX/WO3-ZrO2及びReOX/Cの触媒担体について、NH3-TPD分析により酸性度を測定した。結果を表9に示す。WO3-ZrO2におけるNH3量は炭素担体よりも多く、これはWO3-ZrO2の酸性度が炭素担体よりも高いことを示している。しかし、1,4-アンヒドロエリスリトールの反応においてReOX-Au/CeO2と結合しているReOX/Cの酸性度は、ReOX/WO3-ZrO2よりもずっと高いはずである。このように、触媒中における担体の酸性度は2-ヒドロキシテトラヒドロフラン誘導体を得るための2,3-ジヒドロフランの水素化に必要であるが、触媒活性において重要な要素ではないかもしれない。
【0168】
【表9】
【0169】
ジルコニア又は酸化タングステン及びジルコニアがReを担持した触媒について、X線回折法による分析を行った。XRDパターンを図13に示す。図13において、(a)はReOX/ZrO2(製造例3)、(b)はReOX/WO3-ZrO2(製造例11)、(c)はReOX/WO3/ZrO2(製造例15)、(d)はReOX/WO3-ZrO2(製造例16)をそれぞれ示す。なお、Reは担持量が少なく、また担体表面での広がり性能が大きいため、ピークを示さなかった。(a)のZrO2では28°及び32°にピークを示す単斜晶結晶構造(m-ZrO2)であるが、(d)の共沈法で準備されたWO3-ZrO2におけるZrO2は30°にピークを示し、正方晶結晶構造(t-ZrO2)を有していた。
【0170】
市販のZrO2、WO3-ZrO2(製造例11で使用)、WO3/ZrO2(製造例15で製造)、WO3-ZrO2(製造例16で製造)、及び炭素担体(製造例1で使用)の各種担体について、BET比表面積を測定した。結果を表10に示す。含浸法で準備された、m-ZrO2を含むWO3/ZrO2(Entry 3)と、共沈法で準備された、t-ZrO2を含むWO3-ZrO2(Entry 4)とは、BET比表面積は類似していた。ここで、m-ZrO2を含むWO3/ZrO2を担体として用いた2,5-ジヒドロフランの還元反応(実施例1のEntry 15)では、t-ZrO2を含むWO3-ZrO2を担体として用いた場合(実施例1のEntry 16)よりも高い活性を示している(表1)。一方で、1,4-ブタンジオール又はその前駆体への合計選択率、及び、テトラヒドロフラン、その前駆体、又はフランへの合計選択率は、同等であった(表1)。このことから、ZrO2の結晶構造は触媒中において重要ではないことが分かる。なお、含浸法により準備されたWO3-ZrO2は共沈法により準備されたWO3/ZrO2よりもW種の表面濃度が高いことから、触媒活性の相違はW種の表面濃度に起因するものと推測される。
【0171】
【表10】
【0172】
表中の略号は、以下の化合物を示す。
1,4-BuD:1,4-ブタンジオール
THF:テトラヒドロフラン
2,3-DHF:2,3-ジヒドロフラン
2,5-DHF:2,5-ジヒドロフラン
1-BuOH:1-ブタノール
GBL:γ-ブチロラクトン
2-HTHF:2-ヒドロキシテトラヒドロフラン
Acetal A:下記式(A)で表される化合物
Acetal B:下記式(B)で表される化合物
Acetal C:下記式(C)で表される化合物
Conv.:転化率(Conversion)
C.B.:Carbon Balance
【化3】
【0173】
なお、上記実施例において、カーボンバランス(C.B.)は下記式(1)により求めた。C.B.が実験誤差を考慮して100±10%の範囲内であるとき、Carbon Basisによる転化率及び選択率はそれぞれ下記式(2)及び下記式(3)により計算求め、この場合のC.B.はそれぞれの結果に示さなかった。一方、C.B.が明らかに100%よりも低い場合(90%未満)、Carbon Basisによる転化率及び選択率はそれぞれ下記式(4)及び下記式(5)により求めた。収率はいずれの場合も式(6)より求めた。
C.B.(%)={残存基質の量(C-mol)+検出された生成物の合計量(C-mol)}/原料として用いた基質の量(C-mol)×100 (1)
転化率(%)=検出された生成物の合計量(C-mol)/{残存基質の量(C-mol)+検出された生成物の合計量(C-mol)}×100 (2)
物質Aの選択率(%)=物質Aの生成量(C-mol)/検出された生成物の合計量(C-mol)×100 (3)
転化率(%)=100-検出された生成物の合計量(C-mol)/検出された生成物の合計量(C-mol)×100 (4)
物質Aの選択率(%)=物質Aの生成量(C-mol)/{原料として用いた基質の量(C-mol)-残存基質の量(C-mol)}×100 (5)
【0174】
以上のまとめとして、本開示の構成及びそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
[付記1]水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる反応に用いられる触媒であって、下記金属触媒(1)及び下記金属触媒(2)を含有する、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
金属触媒(1):下記M1及びM2を金属種とし、担体に担持された触媒
金属触媒(2):下記M1を金属種とし、金属種が異なる二種以上の金属酸化物を含む担体に担持された触媒
M1:周期表の第4~6周期に属し且つ第5~7族に属する元素、及び鉄からなる群より選択される1以上
M2:周期表の第4~6周期に属し且つ第9~11族に属する元素、ルテニウム、及びオスミウムからなる群より選択される1以上
[付記2]上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及び/又はジルコニアを含む、付記1に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記3]上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及びジルコニアを含む、付記1に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記4]上記金属触媒(1)におけるM1は、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、及びレニウムからなる群より選択される1以上(好ましくはレニウム)を含む、付記1~3のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記5]上記金属触媒(1)におけるM2は、金及び/又はイリジウム(好ましくは金)を含む、付記1~4のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記6]上記金属触媒(1)におけるM1がレニウムであり、M2が金である、付記1~5のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記7]上記金属触媒(1)におけるM1は金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体(好ましくは金属酸化物)として担体に担持された状態で含まれる、付記1~6のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記8]上記金属触媒(1)におけるM2は金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体(好ましくは金属酸化物)として担体に担持された状態で含まれる、、付記1~7のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記9]上記金属触媒(1)における担体は無機物担体(好ましくは活性炭及び/又は無機酸化物)を含む、付記1~8のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記10]上記金属触媒(1)における担体は無機酸化物を含む、付記1~9のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
【0175】
[付記11]上記無機酸化物は固体塩基性を示すもの(好ましくは、シリカ、ジルコニア、硫酸化ジルコニア、リン酸化ジルコニア、チタニア、チタノシリケート、アルミナ、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化レニウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、及び酸化マグネシウムからなる群より選択される1以上、より好ましくは酸化セリウム)を含む、付記10に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記12]上記金属触媒(1)における担体が酸化セリウムである、付記1~11のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記13]上記金属触媒(1)における担体の比表面積は50m2/g以上(好ましくは50~1500m2/g、より好ましくは100~1000m2/g)である、付記1~12のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記14]上記金属触媒(1)における担体の平均粒径は100~10000μm(好ましくは1000~10000μm)である、付記1~13のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記15]上記金属触媒(1)における上記M1の担体への担持量は、M1とM2と担体の総量(100重量%)に対して、0.01~50重量%(好ましくは0.05~30重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.15~3重量%)である、付記1~14のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記16]上記金属触媒(1)におけるM1に対するM2の割合(モル比)[M2/M1a](好ましくはレニウムと金との割合(モル比)[Au/Re])は、0.002~50(好ましくは0.005~10、より好ましくは0.01~5、さらに好ましくは0.02~0.7)である、付記1~15のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記17]上記金属触媒(1)におけるM1は含浸法により上記担体に担持されたものを含む、付記1~16のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記18]上記金属触媒(1)におけるM2は含浸法及び/又は析出沈殿法(好ましくは含浸法)により上記担体に担持されたものを含む、付記1~17のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記19]上記金属触媒(1)の平均粒径は100~10000μm(好ましくは1000~10000μm)である、付記1~18のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記20]上記金属触媒(2)におけるM1はバナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、及びレニウム(好ましくはレニウム)を含む、付記1~19のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
【0176】
[付記21]上記金属触媒(2)におけるM1がレニウムである、付記1~20のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記22]上記金属触媒(2)におけるM1は金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体(好ましくは金属酸化物)として担体に担持された状態で含まれる、付記1~21のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記23]上記金属触媒(2)におけるM1の担体への担持量は、M1と担体の総量(100重量%)に対して、0.01~60重量%(好ましくは0.05~50重量%、より好ましくは0.1~20重量%)である、付記1~22のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記24]上記金属触媒(2)における担体は、金属種が異なる二種の金属酸化物からなる、付記1~23のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記25]上記金属触媒(2)における担体中の金属酸化物の合計割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、50質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)である、付記1~24のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記26]上記金属触媒(2)における担体中の炭素の含有割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、10質量%以下(好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下)である、付記1~25のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記27]上記金属触媒(2)における担体の比表面積は、50m2/g以上(好ましくは50~1500m2/g、より好ましくは100~1000m2/g)である、付記1~26のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記28]上記金属触媒(2)における担体の平均粒径は、100~10000μm(好ましくは1000~10000μm)である、付記1~27のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記29]上記金属触媒(2)における上記二種以上の金属酸化物を含む担体は、含浸法により一の金属酸化物に他の金属酸化物が担持されたものである、付記1~28のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記30]上記金属触媒(2)におけるM1は含浸法により上記担体に担持されたものを含む、付記1~29のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
【0177】
[付記31]上記金属触媒(2)の平均粒径は100~10000μm(好ましくは1000~10000μm)である、付記1~30のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記32]上記金属触媒(1)と上記金属触媒(2)の含有割合(重量比)[金属触媒(1)/金属触媒(2)]は0.03~10(好ましくは0.07~5、より好ましくは0.1~2)である、付記1~31のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記33]上記金属触媒(1)及び/又は上記金属触媒(2)は焼成により再活性化されたものである、付記1~32のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒。
【0178】
[付記34]水素との反応によりジヒドロフランを還元させる反応に用いられる触媒であって、下記金属触媒(2)を含有、ジヒドロフランの還元反応用触媒。
金属触媒(2):下記M1を金属種とし、金属種が異なる二種以上の金属酸化物を含む担体に担持された触媒
M1:周期表の第4~6周期に属し且つ第5~7族に属する元素、及び鉄からなる群より選択される1以上
[付記35]上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及び/又はジルコニアを含む、付記34に記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記36]上記金属触媒(2)における二種以上の金属酸化物は、酸化タングステン及びジルコニアを含む、付記34に記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記37]上記金属触媒(2)におけるM1はバナジウム、クロム、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、及びレニウム(好ましくはレニウム)を含む、付記34~36のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記38]上記金属触媒(2)におけるM1がレニウムである、付記34~37のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記39]上記金属触媒(2)におけるM1は金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体(好ましくは金属酸化物)として担体に担持された状態で含まれる、付記34~38のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記40]上記金属触媒(2)におけるM1の担体への担持量は、M1と担体の総量(100重量%)に対して、0.01~60重量%(好ましくは0.05~50重量%、より好ましくは0.1~20重量%)である、付記34~39のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
【0179】
[付記41]上記金属触媒(2)における担体は、金属種が異なる二種の金属酸化物からなる、付記34~40のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記42]上記金属触媒(2)における担体中の金属酸化物の合計割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、50質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)である、付記34~41のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記43]上記金属触媒(2)における担体中の炭素の含有割合は、上記担体の総量(100重量%)に対して、10質量%以下(好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下)である、付記34~42のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記44]上記金属触媒(2)における担体の比表面積は、50m2/g以上(好ましくは50~1500m2/g、より好ましくは100~1000m2/g)である、付記34~43のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記45]上記金属触媒(2)における担体の平均粒径は、100~10000μm(好ましくは1000~10000μm)である、付記34~44のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記46]上記金属触媒(2)における上記二種以上の金属酸化物を含む担体は、含浸法により一の金属酸化物に他の金属酸化物が担持されたものである、付記34~45のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記47]上記金属触媒(2)におけるM1は含浸法により上記担体に担持されたものを含む、付記34~46のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記48]上記金属触媒(2)の平均粒径は100~10000μm(好ましくは1000~10000μm)である、付記34~47のいずれか1つに記載のジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記49]付記34~48のいずれか1つに記載の2,5-ジヒドロフランの還元反応用触媒。
[付記50]付記1~49のいずれか1つに記載の1,4-ブタンジオール製造用触媒。
【0180】
[付記51]水素との反応により3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程を含み、上記工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、付記1~33のいずれか1項に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランの還元反応用触媒の存在下で進行させることを特徴とする、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
[付記52]上記工程における3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランと水素との反応を、1段目で上記金属触媒(1)の存在下反応を行い、上記2段目で上記金属触媒(2)の存在下反応を行うか、又は、上記金属触媒(1)及び上記金属触媒(2)の混合触媒の存在下で進行させる、付記10に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
[付記53]エリスリトールを脱水環化して3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを得る工程を、上記3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフランを還元させる工程の前に有する、付記51又は52に記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
[付記54]金属触媒(1)及び/又は金属触媒(2)を再活性化処理に付す工程を有する、付記51~53のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
[付記55]1,4-ブタンジオールの製造する付記51~54のいずれか1つに記載の3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン還元物の製造方法。
【符号の説明】
【0181】
1:トリクルベッド反応器
2:原料液供給ライン
3:水素供給ライン
4:反応混合物取り出しライン
5:高圧気液分離器
6:水素リサイクルライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13