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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】注出具
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20231218BHJP
   B65D 47/38 20060101ALI20231218BHJP
   B65D 5/74 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B65D41/34 110
B65D47/38
B65D5/74 010
B65D5/74 020D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020033840
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133989
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-209103(JP,A)
【文献】特開2000-309356(JP,A)
【文献】実開昭56-175462(JP,U)
【文献】特開2006-1556(JP,A)
【文献】特開2017-30808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0173644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
B65D 47/38
B65D 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が充填された容器本体(C)の注出孔(C2)に装着される注出具本体(A)と、該注出具本体(A)に着脱可能に装着されるオーバーキャップ(B)と、を備え、前記オーバーキャップ(B)が前記注出具本体(A)に打栓により組み付けられる注出具であって、
前記注出具本体(A)は、前記注出孔(C2)から注出される内容液を案内する注出筒(4)と、前記注出筒(4)内に設けられる注出口(5)の周囲に薄肉弱化部(16)を介して切断可能に連設されると共に外周面に凹溝から成る複数の第1歯部(18)及び周突設された第1係着突部(14)が形成された栓体(10)と、を有し、
前記オーバーキャップ(B)は、前記複数の第1歯部(18)に係合すると共に前記薄肉弱化部(16)を切断して前記栓体(10)を前記注出具本体(A)から分離させる切断力を前記栓体(10)に伝達する凸リブから成る複数の第2歯部(24)と、前記栓体(10)を保持する第2係着突部(26)を内周面に有して分離後の前記栓体(10)が移行する移行筒(23)と、を備え、
前記第1歯部(18)と前記第2歯部(24)とが周方向に位置決めされた状態で係合していることを特徴とする注出具。
【請求項2】
複数の第1歯部(18)のうち、互いに軸対称となる2箇所の位置に配置された一組の第1歯部(18)は、他の箇所に配置された第1歯部(18)よりも幅広寸法で形成され、且つ前記複数の第1歯部(18)に係合する複数の第2歯部(24)のうち、前記一組の第1歯部(18)に対応して配置された一組の第2歯部(24)が他の箇所に配置された第2歯部(24)よりも幅広寸法で形成されている請求項1記載の注出具。
【請求項3】
オーバーキャップ(B)を構成する外周壁(21)の下端と、注出孔(C2)の内縁部が湾曲状に形成され、前記外周壁(21)の周囲に配置されたカール部(C5)とを有して構成されるバージン機構が設けられている請求項1又は2記載の注出具。
【請求項4】
オーバーキャップ(B)を構成する外周壁(21)の下端に連設されたフラップ片(7)と、前記フラップ片(7)を覆う注出孔(C2)の内縁部とを有して構成されるバージン機構が設けられている請求項1又は2記載の注出具。
【請求項5】
オーバーキャップ(B)を構成する外周壁(21)の下端に破断可能に形成された破断部(7b)を介して連設されたフラップ片(7)と、前記フラップ片(7)を覆う注出孔(C2)の内縁部と、前記オーバーキャップ(B)の開栓操作時に前記フラップ片(7)の回転を規制して前記破断部(7b)に破断を生じさせる規制壁(8)とを有して構成されるバージン機構が設けられ、注出筒(4)の下方の外周側にリング状に形成されたフランジ(1)には破断した前記フラップ片(7)を収容する環状溝(1b)が設けられている請求項1又は2記載の注出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートン容器等に取り付けられて内溶液を注出する注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲーベルトップ型の紙容器に設けられた孔に取り付けるためのフランジを下部周囲に備えた筒状部からなる注出口本体と、この注出口本体の筒状部に被冠するキャップとからなり、注出口本体にプルリングが備えられ、そのプルリングを引っ張ることによって注出口本体内に薄肉部を介して設けられた封止膜をその薄肉部から切断して注ぎ口を形成するように構成された注出具は、従来から知られている(例えば、特許文献1)。
この注出具では、キャップの側壁に、不正開封防止用のバージン機構としての開封用帯状部が破断可能に連設されており、開封用帯状部を周方向に引っ張って取り除くと、キャップ上方部とキャップ下方部の間に空隙が形成されることから、この空隙の有無を見れば注出具が開封されたか否かを判別できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-267410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の記載の注出具では、開栓時に、プルリングを備えた封止膜の除去及び不正開封防止用の開封用帯状部の除去の双方行う必要があるため、開栓操作が煩雑であるという問題がある。
また開栓後には、注出口本体から除去したプルリングを備えた封止膜及び不正開封防止用の開封用帯状部の双方を、ゴミとして別途処理しなければならないという問題もある。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、簡単な操作でゴミを発生させることなく開栓することができると共に不正開封防止用のバージン機構をも備える注出具を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
内容液が充填された容器本体の注出孔に装着される注出具本体と、注出具本体に着脱可能に装着されるオーバーキャップと、を備え、前記オーバーキャップが前記注出具本体に打栓により組み付けられる注出具であって、
注出具本体は、注出孔から注出される内容液を案内する注出筒と、注出筒内に設けられる注出口の周囲に薄肉弱化部を介して切断可能に連設されると共に外周面に凹溝から成る複数の第1歯部及び周突設された第1係着突部が形成された栓体と、を有し、
オーバーキャップは、複数の第1歯部に係合すると共に薄肉弱化部を切断して栓体を注出具本体から分離させる切断力を栓体に伝達する凸リブから成る複数の第2歯部と、栓体を保持する第2係着突部を内周面に有して分離後の栓体が移行する移行筒と、を備え、
前記第1歯部と前記第2歯部とが周方向に位置決めされた状態で係合していることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、オーバーキャップを回転させて開栓操作を行うと、栓体が切断されて注出具本体を構成する注出筒の内側に注出口を形成することができると共に、切断後の栓体をオーバーキャップ内に移行させて保持することができる。
【0007】
また本発明の他の手段は、本発明の主たる手段に、複数の第1歯部のうち、互いに軸対称となる2箇所の位置に配置された一組の第1歯部は、他の箇所に配置された第1歯部よりも幅広寸法で形成され、且つ前記複数の第1歯部に係合する複数の第2歯部のうち、前記一組の第1歯部に対応して配置された一組の第2歯部が他の箇所に配置された第2歯部よりも幅広寸法で形成されている、との手段を加えたものである。
【0008】
また本発明の他の手段は、上記手段に、オーバーキャップを構成する外周壁の下端と、注出孔)の内縁部が湾曲状に形成され、外周壁の周囲に配置されたカール部とを有して構成されるバージン機構が設けられている、との手段を加えたものである。
また上記手段に、オーバーキャップを構成する外周壁の下端に連設されたフラップ片と、フラップ片を覆う注出孔の内縁部とを有して構成されるバージン機構が設けられている、との手段を加えたものである。
あるいは、上記手段に、オーバーキャップを構成する外周壁の下端に破断可能に形成された破断部を介して連設されたフラップ片と、フラップ片を覆う注出孔の内縁部と、オーバーキャップの開栓操作時にフラップ片の回転を規制して破断部に破断を生じさせる規制壁とを有して構成されるバージン機構が設けられ、注出筒の下方の外周側にリング状に形成されたフランジには破断したフラップ片を収容する環状溝が設けられている、との手段を加えたものである。
上記手段では、未開栓の注出具であるか又は既に開栓された注出具であるかを視覚的に容易に判断することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、オーバーキャップを注出本体部に打栓した際、オーバーキャップの移行筒が注出本体部の栓体に案内される構成であることから、オーバーキャップを注出本体部に確実に装着することができる。
またオーバーキャップを回転させて開栓操作を行った際、注出本体部から切断された栓体を、オーバーキャップ側の移行筒で確実に保持することができるため、開栓操作時におけるゴミの発生を防止することができる。
【0010】
またオーバーキャップを回転させるだけで栓体が切断して注出筒内に注出口が形成されるため、開栓操作を容易化することができる。
【0011】
更には不正な開封を未然に防止するバージン機構を備えることにより、未開栓の注出具であるか又は既に開栓された注出具であるかを容易に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例を示す注出具であり、(a)は初期閉栓状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図2図1(b)のII部分の拡大断面図である。
図3図2のIII-III線における平断面図である。
図4】第1実施例の注出具を容器本体に使用した一例として、初期閉栓状態を示す斜視図である。
図5】(a)は第1実施例に示す注出具の再閉栓(リキャップ)状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図6】第1実施例に示す注出具を容器本体に使用した一例として、再閉栓(リキャップ)状態を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施例を示す注出具であり、(a)は初期閉栓状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図8】第2実施例の注出具を容器本体に使用した一例として、初期閉栓状態を示す斜視図である。
図9】(a)は第2実施例を示す注出具の再閉栓(リキャップ)状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図10】第2実施例に示す注出具を容器本体に使用した一例として、再閉栓(リキャップ)状態を示す斜視図である。
図11】本発明の第3実施例を示す注出具であり、(a)は初期閉栓状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図12】(a)は第3実施例を示す注出具の再閉栓(リキャップ)状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す注出具であり、(a)は初期閉栓状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図、図2図1(b)のII部分の拡大断面図、図3図2のIII-III線における平断面図、図4は第1実施例の注出具を容器本体に使用した一例として、初期閉栓状態を示す斜視図、図5の(a)は第1実施例に示す注出具の再閉栓(リキャップ)状態を示す平面図、図5の(b)は(a)の縦断面図、図6は第1実施例に示す注出具を容器本体に使用した一例として、再閉栓(リキャップ)状態を示す斜視図、図6は第1実施例に示す注出具を容器本体に使用した一例として、再閉栓(リキャップ)状態を示す斜視図である。
【0014】
図1乃至図5において、Aは注出具本体、Bは注出具本体を覆うオーバーキャップ、Cは注出具本体Aが装着される容器本体であり、本発明の注出具は注出具本体AとオーバーキャップBとを有して構成され、合成樹脂材料を使用したインジェクション成形により形成されている。
図4に示すように、容器本体Cは、例えばゲーベルトップ型のカートン容器であり、容器本体Cの傾斜状の天面C1には注出具本体Aを装着する円形の孔からなる注出孔C2が形成されている。注出孔C2の内縁部は上下方向に揺動可能に形成された自由端であり、周方向の複数の箇所には径方向を切り込み方向とする複数の切り込みC3が放射状に配置されている。尚、切り込みC3を有さない構成としても良い。
【0015】
図1(b)に示すように、注出具本体Aは有頂筒状の部材であり、外周側にリング状に形成されたフランジ1と、フランジ1の内縁に形成された下段差2と、下段差2の内周端から円筒状に立設されたネジ壁部3と、ネジ壁部3の上端に起立設された注出筒4と、この注出筒4内に一体に設けられた栓体10とを有して構成されている。フランジ1の上面には環状溝から成る保持凹部1aが周設されており、この保持凹部1aにおいて容器本体Cの天面C1を溶着により固定することが可能となっている。またネジ壁部3の外周面には雄ネジ3aは螺刻されている。
【0016】
図2に示すように、注出筒4は、円筒状の基部4aと、基部4aから上端に向かって拡径して外側に湾曲形成されたリップ部4bを有して構成され、リップ部4b下方のネジ壁部3の内壁には容器本体C内に収容されている内容液を注出させる注出口5を備える。
【0017】
栓体10は頂部が閉鎖された有頂筒状から成る中空の部材であり、上部側に細径筒状に形成して成る設けられた細径部11と、下部側に拡径筒状に形成して成る拡径部13と、細径部11と拡径部13との間に設けられた上段差部12とを具備して注出口5を閉塞している。
拡径部13は、中段の位置に径方向外側向かって周突設された第1係着突部14と、下端にリング状に連設された栓フランジ部15とを有して形成されている。ネジ壁部3の内壁には注出口5を形成する薄肉弱化部16がリング状に周設されており、この薄肉弱化部6を介して栓フランジ部15の外周端とネジ壁部3の内壁との間が一体に連設されている。
【0018】
図2又は図3に示すように、栓体10の細径部11の外周面には縦長状の凹溝から成り、切断機構の一部を構成する第1歯部18が、周方向6箇所の位置に等間隔で形成されている。6箇所の第1歯部18のうち、互いに軸対称となる2箇所の位置に配置された一組の第1歯部18は、他の4箇所の位置に配置された第1歯部18よりも幅広寸法で形成されている。
尚、本実施例では、第1歯部18を周方向6箇所の位置に設けた場合を示して説明するが、第1歯部18の個数は6箇所に限らず、栓体10の形状や大きさに合わせて適宜変更することができる。
【0019】
図1(a)(b)又は図2に示すように、オーバーキャップBは、円板状の頂壁20と、頂壁20の外周縁に垂下設された外周壁21を有して構成され、外周壁21の表面には、複数の縦溝を周方向に一定の間隔で並設して構成される滑り止め用のローレット22が刻設されている。また外周壁21の内周面には、注出具本体A側のネジ壁部3に形成されている雄ネジ3aに螺合可能な雌ネジ25が刻設されている。
【0020】
またオーバーキャップBを構成する頂壁20の内面には、注出筒4と細径部11との間に挿入されて栓体10を切断し且つ切断後の栓体10を保持する移行筒23と、移行筒23の内周面に縦長状の凸リブとして突設され、栓体10の外周面に形成された第1歯部18に対して周方向において係合可能に構成された第2歯部24が、周方向6箇所の位置に等間隔で形成されている。第2歯部24は、第1歯部18と共に切断機構を構成し、6箇所の第2歯部24のうち、キャップ軸Oに対し互いに軸対称となる2箇所の位置に配置された一組の第2歯部24は、他の4箇所の位置に配置された第2歯部24よりも幅広寸法で形成されている。この幅広寸法で形成された一組の第2歯部24は、栓体10側に幅広寸法で形成された一組の第1歯部18と共に、周方向における位置決めを行うものである。
尚、本実施例では、第2歯部24が、栓体10に形成された第1歯部18と同数で且つ周方向の計6箇所に設けているが、これらは同数であれば6箇所に限られるものではなく、例えば軸対称となる2箇所の位置に設ける構成であってもよい。
【0021】
また図2に示すように、移行筒23の第2歯部24よりも下方の位置に設けられた下端内周には、栓体10に周突設された第1係着突部14を乗り越えて、拡径部13の外周面に係着する第2係着突部26が周設されている。
【0022】
次に、注出具の容器本体Cへの取り付けについて説明する。
注出具の容器本体Cへの取り付けは、オーバーキャップBを注出具本体Aに打栓し、注出具本体AにオーバーキャップBを組み付けて一体化させた状態で行う。
この際、図2に示すように、オーバーキャップBの移行筒23が注出本体部Aの栓体10の拡径部13によって案内される。そして、オーバーキャップB側の移行筒23の第2係着突部26が、注出具本体A側の栓体10の第1歯部18よりも下方の位置に形成されている第1係着突部14を下方に乗り越えるため、移行筒23を拡径部13に嵌合させることができる。これにより、注出具の状態をオーバーキャップBが注出具本体Aに一体的に組み付き、注出口5が閉塞された初期閉栓状態に設定することができる。
この初期閉栓状態では、ネジ壁部3側の雄ネジ3aと移行筒23側の雌ネジ25との螺合が完了した状態に設定される。尚、打栓時に雄ネジ3aと雌ネジ25との螺合が確実に行われるようにするため、雄ネジ3a及び雌ネジ25を多条ネジで形成する構成が好ましい。
【0023】
続いて、初期閉栓状態に設定された注出具は、開放状態にある容器本体Cの底部から傾斜状の天面C1の裏面に送られ、注出孔C2を通じてオーバーキャップBのみを突出させる。そして、フランジ1の上面を、天面C1の裏面に接触させ状態において、例えば超音波溶着手段などを用いて、フランジ1の上面と天面C1の裏面との間を熱溶着させる。尚、容器本体Cを構成する天面C1に、フランジ1の上面に形成された保持凹部1aに対して一様に溶着させると、リング状のシール部C4が形成され、液漏れを確実に防止することが可能である。
【0024】
ここで、図1及び図4に示すように、注出孔C2の内径は、ネジ壁部3の外径寸法と同寸法又はそれよりも若干大きな寸法で形成されている。また注出孔C2の内縁部は、複数の切り込みC3によって周方向において分断されている。このため、オーバーキャップBを注出孔C2から突出させると、注出孔C2の内面がオーバーキャップBの外周壁21に接触すると共に、注出孔C2の内縁部が起立して成る複数のカール部C5が形成される。すなわち、オーバーキャップBは、周方向に配置された複数のカール部C5の中心から外部に向けて突出した状態にある。
尚、注出具が装着された容器本体Cは、製造ラインの充填工程において、内容液が容器本体Cの底部から充填され後、続く閉塞工程において底部が閉塞される。
【0025】
次に、容器本体に装着された注出具の使用について説明する。
図4に示すように、初期閉栓状態にある注出具では、オーバーキャップBの周囲に起立する複数のカール部C5が現れ、オーバーキャップBの外周壁21の下端はカール部C5の裏に隠れて見えない状態にある。よって、このようなカール部C5又は外周壁21の下端の状態を確認することにより、注出具は未開封の初期閉栓状態に設定されていると判断することができる。
【0026】
注出具の栓体10を開栓するには、図1(a)(b)及び図4の初期閉栓状態において、外周壁21のローレット22を把持してオーバーキャップBを螺脱方向に回転させる。
すると、移行筒23の内周面に形成されている第2歯部24を介して、これに嵌合している栓体10の外周面に形成された第1歯部18に回転力が伝達されることから、オーバーキャップBと共に栓体10を一緒に回転させることができる。この回転により、オーバーキャップBは、雄ネジ3a及び雌ネジ25とのネジ送り作用によって上方に移動するが、移行筒23の第2係着突部26が栓体10の第1係着突部14を係着し、拡径部13の外周面に嵌合しているので、栓体10がオーバーキャップBの回転に伴って上方に引き上げられる。
【0027】
オーバーキャップBの回転が進むと、栓体10に加わる回転力と引き上げ力との相互作用による切断力により、栓体10は薄肉弱化部16に沿って周方向に切断されるため、注出筒4の内側に注出口5を開口形成することができる(開栓状態)。更にオーバーキャップBの回転を進めると、薄肉弱化部16に沿って注出筒4の内周端と栓体10の栓フランジ部15の外周端との間を完全に分離させることができる。分離した栓体10は、第1係着突部14と移行筒23の第2係着突部26とが係着する状態で引き上げられるため、栓体10を注出具本体A側からオーバーキャップB側の移行筒23内に移行させて保持することができると共に、この状態で栓体10をオーバーキャップBと共に注出具本体Aから取り外すことができる。よって、ゴミを発生させることなく注出具を開栓することができる。尚、栓体10側の第1係着突部14と移行筒23側の第2係着突部26とは、分離後の栓体10をオーバーキャップB内に移行させて確実に保持する。
【0028】
そして、オーバーキャップBを螺脱させて取り除き、注出具本体Aを完全に露出させることにより、注出筒4の内側に開口する注出口5を介して容器本体C内の内容液を注出させることができる。
【0029】
内容液を注出した後、再びオーバーキャップBを注出具本体Aに再装着して螺合させると、 図5(a)(b)及び図6に示すように、オーバーキャップB側の移行筒23が注出筒4の内周に密着するため、容器本体Cを再閉栓状態に設定することができる(リキャップ)。
【0030】
再閉栓状態では、注出孔C2の内縁部が、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端とフランジ1の下段差2との間に挟持される。このため、注出孔C2の内縁部からカール部C5を消滅させてフラット化することができると共に、これまでカール部C5の裏に隠れていた外周壁21の下端が、注出孔C2の内縁部の上に出現する状態に設定することができる。よって、このような注出孔C2の内縁部の状態又は外周壁21の下端の状態を確認することにより、注出具は一度開栓された後に再閉栓状態に設定されたものであると判断することができる。
【0031】
第1実施例では、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端と注出孔C2の内縁部は、未開栓の注出具であるか又は既に開栓された注出具であるかを示すバージン機構として機能している。
【0032】
図7は本発明の第2実施例を示す注出具であり、(a)は初期閉栓状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図、図8は第2実施例の注出具を容器本体に使用した一例として、初期閉栓状態を示す斜視図、図9の(a)は第2実施例を示す注出具の再閉栓(リキャップ)状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図、図10は第2実施例に示す注出具を容器本体に使用した一例として、再閉栓(リキャップ)状態を示す斜視図である。
【0033】
第2実施例に示す注出具が上記第1実施例と異なる点は、バージン機構を構成する注出孔C2の内縁部と、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端の構成にあり、その他の構成及び効果は上記第1実施例同様である。以下では第1実施例と同一部材については同一の符号を付して説明する。
【0034】
図7(a)(b)及び図8に示すように、オーバーキャップBには、初期閉栓状態において、外周壁21の下端から注出具本体A側の下段差2を介してフランジ1に至る複数(本実施例では8ケ)のフラップ片7が周方向に間欠的に形成されている。外周壁21の下端とフラップ片7との間は薄肉状の連結部7aで連設されており、フラップ片7は連結部7aを起点に開放端側が上下方向に揺動可能に形成されている。
尚、第2実施例に示す容器本体Cの天面C1上に形成された注出孔C2は、その内縁部に複数の切り込みC3を有さない構成である。ただし、第1実施例同様に、注出孔C2の内縁部に複数の切り込みC3を有する構成であっても良い。
【0035】
第1実施例同様に、オーバーキャップBを注出具本体Aに一体的に組み付かせて初期閉栓状態に設定した注出具を、容器本体Cを構成する傾斜状の天面C1の注出孔C2からオーバーキャップBのみを突出させると共に、フランジ1の上面と注出孔C2の内縁部の下面との間を熱溶着して装着する。
この状態では、フラップ片7が注出孔C2の内縁部とフランジ1の下段差2との間に傾斜姿勢で配置され、上方からは、フラップ片7の先端部は注出孔C2の内縁部に覆われ、その全体を確認することができない状態に見える。よって、このようなフラップ片7の状態を確認することにより、注出具は未開封の初期閉栓状態に設定されていると判断することができる。
【0036】
第1実施例度同様に、オーバーキャップBを螺脱方向に回転させて注出具本体Aから取り外すと、オーバーキャップBと共に栓体10を注出具本体Aから取り外すことができる。この際、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端に設けられたフラップ片7は、注出孔C2の内縁部とフランジ1との間をすり抜けて外部に抜け出る。
【0037】
次に、図9(a)(b)及び図10に示すように、再びオーバーキャップBを注出具本体Aに装着した再閉栓状態では、注出孔C2の内縁部はフラット化され、フラップ片7はその全体が注出孔C2の内縁部の上面に現れる状態に設定される。よって、このようなフラップ片7の状態又は注出孔C2の内縁部の状態を確認することにより、注出具は一度開栓された後に再閉栓状態に設定されたものであると判断することができる。
【0038】
第2実施例では、注出孔C2の内縁部とオーバーキャップBを構成する外周壁21の下端に設けられたフラップ片7とは、未開栓の注出具であるか又は既に開栓された注出具であるかを示すバージン機構として機能している。
【0039】
図11は本発明の第3実施例を示す注出具であり、(a)は初期閉栓状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図、図12の(a)は第3実施例を示す注出具の再閉栓(リキャップ)状態を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
【0040】
第3実施例に示す注出具が上記第1実施例及び第2実施例と異なる点も、バージン機構を構成する注出孔C2の内縁部と、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端との構成にあり、その他の構成及び効果は上記第1又は第2実施例同様である。以下では第1実施例及び第2実施例と同一部材については同一の符号を付して説明する。
【0041】
図11(a)(b)に示すように、オーバーキャップBには、初期閉栓状態において、外周壁21の下端から注出具本体A側の下段差2を介してフランジ1に至る複数(本実施例では8ケ)のフラップ片7が周方向に間欠的に形成されている。外周壁21の下端とフラップ片7との間は破断可能に設けられた薄肉状の破断部7bで連設されており、フラップ片7は破断部7bを起点に開放端側が上下方向に揺動可能に形成されている。
ネジ壁部3の下端に連設されたフランジ1上には、リング状に陥没形成された環状溝1bが形成されており、この環状溝1bの内壁に下段差2が環状に形成されている。下段差2上には複数(本実施例では8ケ)の規制壁8が周方向に間欠的に形成されており、周方向に隣接する規制壁8と規制壁8の間にオーバーキャップBに設けられたフラップ片7が配置されている。フラップ片7の周方向に両側面は、周方向において隣接する規制壁8に対向している。
【0042】
第1及び第2実施例同様に、初期閉栓状態に設定した注出具を、容器本体Cを構成する傾斜状の天面C1の注出孔C2からオーバーキャップBのみを突出させた状態に設定し、フランジ1の上面と注出孔C2の内縁部の下面との間を熱溶着して装着する。
この状態では、フラップ片7が注出孔C2の内縁部とフランジ1側の下段差2との間に傾斜姿勢で介在しており、上方からは、注出孔C2の内縁部がフラップ片7によって上方に持ち上げられた状態に見える。よって、このようなフラップ片7の状態を確認することにより、注出具は未開封の初期閉栓状態に設定されていると判断することができる。
【0043】
第1、第2実施例度同様に、オーバーキャップBを螺脱方向に回転させて注出具本体Aから取り外すと、オーバーキャップBと共に栓体10を注出具本体Aから取り外すことができる。この際には、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端に設けられたフラップ片7の側面が、隣接配置された規制壁8に当接してその回転が規制される。そして、この状態から更に強くオーバーキャップBを螺脱方向に回転させると、図12(a)(b)に示すように、外周壁21の下端とフラップ片7とを連設する破断部7bに破断が生じる。このため、フラップ片7を、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端から分離させて環状溝1bに収容することができる。これにより、フラップ片7が注出孔C2の内縁部とフランジ1側の下段差2との間から除去されることから、注出孔C2の内縁部をフラット化させることができる。よって、このようなオーバーキャップBからフラップ片7が除去された状態又はフラット化された注出孔C2の内縁部の状態を確認することにより、注出具は一度開栓された後に再閉栓状態に設定されたものであると判断することができる。
【0044】
第3実施例では、注出孔C2の内縁部、オーバーキャップBを構成する外周壁21の下端に設けられたフラップ片7、及びオーバーキャップBの開栓操作においてフラップ片7の回転を規制して破断部7bに破断を生じさせる規制壁8とは、未開栓の注出具であるか又は既に開栓された注出具であるかを示すバージン機構として機能している。
【0045】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0046】
例えば、上記実施例では、切断機構として、栓体10に第1歯部18を形成し、移行筒23に第1歯部18に係合可能な第2歯部24を形成した場合を示して説明したが、栓体10に第1歯部を形成し、移行筒23に第1歯部を形成する構成であっても良い。
【0047】
また上記実施例では、容器本体Cの天面C1とフランジ1との溶着を、フランジ1の上面に環状溝の保持凹部1aを形成して行う場合を示して説明したが、保持凹部1aを有しない状態で溶着される態様であっても良い。
【0048】
また上記実施例では、第1歯部18を凹溝で形成し、第2歯部24を凸リブで形成した場合を示して説明したが、例えば第1歯部18を凸リブで形成し、第2歯部24を凹溝で形成する構成でも良いし、互いに噛み合う構成であればどのような構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、特にゲーベルトップ型のカートン容器に装着される注出具の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 : フランジ
1a : 保持凹部
1b : 環状溝
2 : 下段差
3 : ネジ壁部
3a : 雄ネジ
4 : 注出筒
4a : 基部
4b : リップ
5 : 注出口
6 : 薄肉弱化部
7 : フラップ片
7a : 連結部
7b : 破断部
8 : 規制壁
10 : 栓体
11 : 細径部
12 : 上段差部
13 : 拡径部
14 : 第1係着突部
15 : 栓フランジ部
16 : 薄肉弱化部
18 : 第1歯部
20 : 頂壁
21 : 外周壁
22 : ローレット
23 : 移行筒
24 : 第2歯部
25 : 雌ネジ
26 : 第2係着突部
A : 注出具本体
B : オーバーキャップ
C : 容器本体
C1 : 天面
C2 : 注出孔
C3 : 切り込み
C4 : シール部
C5 : カール部
O : キャップ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12