(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】マスクとその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20231218BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
A41D13/11 A
(21)【出願番号】P 2020040718
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 武
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016904(JP,A)
【文献】登録実用新案第3209649(JP,U)
【文献】特開2010-007212(JP,A)
【文献】米国特許第06615838(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部を有するマスクにおいて、
一端側に耳掛け部として開口部が形成され、他端に外方へ膨らんだ湾曲形状部が形成されたシート状のマスク半体の2枚が前記湾曲形状部で接合され、前記接合された湾曲形状部が前記2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出するようにされ、
前記マスク半体は、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層された繊維シートとの積層からな
り、
前記弾性及び通気性を有する除膜ポリウレタンフォームシートと前記繊維シートとは、前記湾曲形状部で互いに接着され、他部分で互いに非接着であることを特徴とするマスク。
【請求項2】
口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部を有するマスクにおいて、
一端側に耳掛け部として開口部が形成され、他端に外方へ膨らんだ湾曲形状部が形成されたシート状のマスク半体の2枚が前記湾曲形状部で接合され、前記接合された湾曲形状部が前記2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出するようにされ、
前記マスク半体は、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層された繊維シートとの積層からなり、
前記繊維シートの表面が着用者の顔面に接触することを特徴とするマスク。
【請求項3】
前記弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートは伸び率が200%~500%、前記繊維シートは伸び率が100~500%であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記繊維シートには、繊維径が1~1000nmのナノファイバーが含まれることを特徴とする請求項1
から3の何れか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記繊維シートは、前記湾曲形状部から前記耳掛け部としての開口部の手前の位置まで存在し、前記耳掛け部としての開口部の周囲では存在しないことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のマスク。
【請求項6】
一端側に耳掛け部として開口部が形成され、他端に外方へ膨らんだ湾曲形状部が形成されたシート状のマスク半体の2枚が前記湾曲形状部で接合され、前記接合された湾曲形状部が前記2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出するようにされたマスクの製造方法において、
前記マスク半体の素材を、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層した繊維シートとで構成し、
2枚の前記弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートの間に、前
記繊維シートを2枚重ねて挟み、
その状態で前記マスク半体の形状に打ち抜き、
前記マスク半体の形状における前記湾曲形状部を熱圧着し、2枚の前記弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その間に挟まれた前記繊維シートの2枚を、前記湾曲形状部で接合することを特徴とするマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部を有するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクとして、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆うガーゼや不織布からなる本体部に、ゴム紐等からなる別部材の耳掛け部を取り付けたものが広く知られている。また、中央部の裁断線を縫い合わせることにより鼻の高さに合う膨出形状にしたマスクが提案されている(特許文献1)。また、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆う本体部を低反発のポリウレタンフォームで構成したマスクが提案されている(特許文献2)。また、内面素材の両面に基材シートを積層して縦および横方向の伸縮性を付与した3層構造からなる一枚の通気性シート材で構成したマスクが提案されている(特許文献3)。
【0003】
しかし、従来のマスクは、それぞれのマスクが目的としている問題については改善するものの、他の問題を有している。例えば、本体部と耳掛け部が別体のマスクにあっては、本体部と耳掛け部の一体化等の工数が必要なために高価になる問題がある。また、ガーゼや不織布からなるマスクにあっては、顔面との接触部に隙間を生じやすく、さらに接触部での摩擦抵抗が低いために使用中にずれやすい問題がある。また、低反発のポリウレタンフォームからなるマスクにあっては、除膜処理がなされない場合、通気性が低いために不快に感じる問題や、低反発のポリウレタンフォーム自体が高価なため、マスクが高価になる問題がある。また、3層構造のマスクは製造工数が多いために高価になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭53-4799号公報
【文献】特開2008-136754号公報
【文献】特開2007-14577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、使用中にずれにくく、通気性が良好で花粉等の遮断性が高く、かつ使用感に優れ、しかも製造工数が少なくて済むマスクとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部を有するマスクにおいて、一端側に耳掛け部として開口部が形成され、他端に外方へ膨らんだ湾曲形状部が形成されたシート状のマスク半体の2枚が前記湾曲形状部で接合され、前記接合された湾曲形状部が前記2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出するようにされ、前記マスク半体は、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層された繊維シートとの積層からなることを特徴とする。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートは伸び率が200%~500%、前記繊維シートは伸び率が100~500%であることを特徴とする。
【0008】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、前記繊維シートには、繊維径が1~1000nmのナノファイバーが含まれることを特徴とする。
【0009】
第4の態様は、第1の態様から第3の態様の何れか一態様において、前記弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと前記繊維シートとは、前記湾曲形状部で互いに接着され、他部分で互いに非接着であることを特徴とする。
【0010】
第5の態様は、第1の態様から第4の態様の何れか一態様において、前記繊維シートは、前記湾曲形状部から前記耳掛け部としての開口部の手前の位置まで存在し、前記耳掛け部としての開口部の周囲では存在しないことを特徴とする。
【0011】
第6の態様は、一端側に耳掛け部として開口部が形成され、他端に外方へ膨らんだ湾曲形状部が形成されたシート状のマスク半体の2枚が前記湾曲形状部で接合され、前記接合された湾曲形状部が前記2枚のマスク半体を広げた際にマスク外方へ膨出するようにされたマスクの製造方法において、前記マスク半体の素材を、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層した繊維シートとで構成し、2枚の前記弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートの間に、前記ナノファイバーからなる繊維シートを2枚重ねて挟み、その状態で前記マスク半体の形状に打ち抜き、前記マスク半体の形状における前記湾曲形状部を熱圧着し、2枚の前記弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その間に挟まれた前記繊維シートの2枚を、前記湾曲形状部で接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層された繊維シートが、マスク中央の湾曲形状部で接合されているため、マスクの使用中に内側の繊維シートがずれにくい。
また、外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層された繊維シートとの間には接着層が存在せず、マスク中央の湾曲形状部で接合されているだけであるため、接着層による通気性阻害がなく、マスクの使用感に優れる。
さらに、外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層された繊維シートとは、マスク中央の湾曲形状部を除いて接着されていないため、使用時に外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートが伸ばされても、内側の不織布シートについては伸ばされず、伸ばされることにより一部で破れたり、部分的に目が粗くなったりすることがなく、花粉等の遮断性が低下したり、装着感が悪くなったりする虞がない。
また、外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシートと、その内面に積層された繊維シートとの複層からなるため、花粉等の遮断性が高い。
【0013】
本発明のマスクは、打ち抜きと接合で製造できるため、製造装置が汎用されている廉価なものであり、しかも製造が簡単で、製造工数が少なくて済み、マスクを安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態のマスクの内面側を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態のマスクの外面側を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第一実施形態のマスクにおいて2枚のマスク半体を重ねた状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施形態のマスクを製造する際の工程を示す図である。
【
図5】本発明の第二実施形態のマスクの内面側を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第二実施形態のマスクの外面側を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第二実施形態のマスクにおいて2枚のマスク半体を重ねた状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第二実施形態のマスクを製造する際の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のマスクの実施形態について、図面を用いて説明する。
図1乃至
図3に示す第一実施形態のマスク10Aは、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部13Aを有するものであり、2枚のシート状のマスク半体11A,11Aを接合したものからなる。マスク半体は、右顔を覆う右顔用のマスク半体と左顔を覆う左顔用のマスク半体に対応する。
【0016】
前記マスク半体11Aは、外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aと、その内面に積層された内側の繊維シート25Aの積層からなる。
【0017】
弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aは、弾性を有する高通気性のポリウレタンフォームのシート状のものである。高通気性のポリウレタンフォームとしては、通気性が100cm3/(cm2・s)以上、好適には200~400cm3/(cm2・s)が良く、セル膜が除膜されて、上記通気性を示すものでもよい。ポリウレタンフォームの除膜は、ポリウレタンフォームのセル膜除去であり、公知の除膜処理、例えば溶剤によってセル膜を溶解する方法、爆発によりセル膜を破壊する方法等により行われる。なお、通気性は、JIS L1096A法に準拠して、フラジール型通気性試験機にて測定を行う。
【0018】
弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aは、伸び率(JIS K6400-5:2004ダンベル2号型)が200%~500%、セル数(JIS K6400-1:2004付属書1(参考))が40個/25mm~110個/25mmのものがより好ましい。伸び率を前記範囲とすれば、マスク10Aの周縁が顔面により良好に密着し、顔面との間に隙間を生じにくくなると共に、耳掛け部が切れにくくなり、耳が痛くなり難い。
また、セル数を前記範囲とすれば、息苦しさを軽減することができ、より良好な装着感が得られる。セル数が40個/25mm未満であれば、花粉などの集じん率が低下し、セル数が110個/25mmより多いポリウレタンフォームは、製造が困難であり現実的でない。
【0019】
さらに、繊維シート25Aをポリウレタンフォームシート21Aの内側に配置することにより、外側の伸縮弾性を有するポリウレタンフォームシート21Aが内側の繊維シート25Aを顔に押し付けるため、花粉等を遮断する効果が高くなる。
【0020】
弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系の何れでもよいが、ポリエステル系とすれば、2枚のマスク半体11A,11Aの接合を溶着で行うことができ、健康面に心配のある接着剤を用いなくても接合することができる。
【0021】
弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aの厚みは1~4mmが好ましい。厚みが1mmよりも薄い場合には扱いにくく、顔面へマスク11を装着する際などに破断し易くなる。一方、厚みが4mmよりも厚い場合には、嵩張るために扱いにくくなると共に、マスクのコストが高くなる。
【0022】
繊維シート25Aは、不織布又はナノファイバーを用いることができる。不織布は、ナノファイバーが積層されていない不織布、又は不織布にナノファイバーを積層した不織布、あるいはナノファイバー単独のいずれも使用できる。不織布にさらにナノファイバーが積層可能であり、その場合、花粉やウィルスの除去が可能となる。
【0023】
不織布としては、オレフィン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維等からなる不織布である。繊維は、溶融紡糸、乾式紡糸、乾式紡糸等により製造され、製造方法は限定されない。また、繊維の断面は、単層断面、多層断面、芯鞘、中空断面、分割構造等があげられる。紡糸後、繊維を分割する工程により得られる極細繊維も有用である。不織布は、乾式法、湿式法、スパンポンド法、メルトブロー法(メルトブローン法とも称される)、エアレイド法のいずれの紡糸方法で得られたものでもよい。繊維同士の結合方法は、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法のいずれの紡糸方法でも良い。
【0024】
(不織布の繊維径)
不織布は、目付量にもよるが、繊維径が小さくなるほど、異物の捕集効率が向上するが、自身を通過する空気の圧力損失が大きくなり、息苦しくなる。不織布は、繊維径が大きくなるほど、異物の捕集効率が低下するが、自身を通過する空気の圧力損失が小さくなる。不織布は、繊維径が0.5μm~40μmの範囲にある繊維で構成することが好ましく、より好適には、1μm~20μmである。不織布は、繊維の繊維径が前述の範囲にあると、好適な異物の捕集効率と、圧力損失の低減とを両立でき呼吸がしやすくなる。
【0025】
(不織布の目付量)
不織布は、目付量が大きくなるほど、異物の捕集効率が向上するが、自身を通過する空気の圧力損失が大きくなる。不織布は、目付量が小さくなるほど、異物の捕集効率が低下するが、自身を通過する空気の圧力損失が小さくなる。不織布は、目付量が5g/m2~40g/m2の範囲にある繊維で構成することが好ましい。不織布は、目付量が前述の範囲にあると、好適な異物の捕集効率と、圧力損失の低減とを両立でき呼吸がしやすくなる。
【0026】
(不織布の厚さ)
不織布は、厚さが大きくなるほど、異物の捕集効率が向上するが、自身を通過する空気の圧力損失が大きくなる。不織布は、厚さが小さくなるほど、異物の捕集効率が低下するが、自身を通過する空気の圧力損失が小さくなる。不織布は、厚さが0.1mm~0.4mmの範囲が好ましい。不織布は、厚さが前述の範囲にあると、好適な異物の捕集効率と、圧力損失の低減とを両立でき呼吸がしやすくなる。
【0027】
ナノファイバーの形成は、電界紡糸法により行うことができる。その際、ポリマー溶液をノズルから不織布等の基材の片面に直接噴霧し、蛛の巣状をしたナノファイバー繊維層を、不織布等の基材の片面に接着した状態で形成する。電解紡糸法では直流高電圧電源とインフュージョンポンプ、ステンレスニードルシリンジ、及び金属コレクタからなる装置を使用する。ニードルシリンジの先端ノズルからは、ポリマー溶液を噴射する。ノズルと金属コレクタは対極に帯電しており、ポリマー溶液をシリンジから噴射すると、コレクタ上に置かれた基材上に、ナノファイバー繊維が堆積、層を形成することによりシート状にできる。ナノファイバーの材質は、電解紡糸法でナノファイバーを形成できるものであれよく、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン-6,6,ナイロン-4,6のような熱可塑性樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、コラーゲンのような生分解性ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアニリン、パラアミド、ポリ酢酸ビニル、アセチルセルロース(アセテート)等を挙げることができる。
【0028】
ナノファイバーの繊維径は、1~1000ナノメートル(nm)、好ましくは10~800ナノメートル(nm)である。目付量は0.10~0.80g/m2、が好ましい。目付量を小にするとナノファイバーの間隔が大になってナノファイバー間をウィルスが通過する虞があり、逆に目付量を大にするとナノファイバーの間隔が小になって通気性が低下するようになる。
【0029】
マスク半体11Aの形状は、マスク10Aの左右方向中間位置で2分割された形状からなり、一端111A側に耳掛け部13Aとして開口部131Aが形成され、他端112Aに外方へ膨らんだ湾曲形状部15Aが形成されている。図示の実施形態では、
図3に示すように、マスク半体11Aにおける左右(長さ方向)のほぼ中間位置M1から前記湾曲形状部15Aが形成されている他端112Aへ向かって幅(使用時の上下幅)が拡大した形状からなる。
【0030】
耳掛け部13Aとしての開口部131Aは貫通孔からなり、マスク10Aを顔面へ装着する際に耳が挿入されて耳に引っかけられる大きさに形成されている。開口部131Aの形状は、耳の挿入が可能な大きさの孔であればよく、特に限定されない。例えば、円形、四角形、楕円形等、適宜の形状の孔を挙げる。
【0031】
湾曲形状部15Aは、2つのマスク半体11A,11Aを接合する部分である。湾曲形状部15Aは、外方へ膨らんだ湾曲形状(すなわちほぼ円弧形状)とされているため、マスク半体11Aの2枚を湾曲形状部15Aで接合した後、2枚のマスク半体11A、11Aを広げた際に前記接合された湾曲形状部15Aがマスク外方へ膨出するようになる。また、接合された湾曲形状部15Aは、マスク10Aの左右中間位置にあり、マスク10Aを顔面に装着した際に鼻先および口と対応する位置にあるため、前記外方への膨出によりマスク10Aが鼻の位置で外方へ膨らんだ状態となり、鼻柱の付近でマスクの縁が顔面に密着しやすくなり、マスク10Aの周縁が顔面に密着すると共に、鼻孔や口周囲に空間が形成され、呼吸がしやすくなる。なお、湾曲形状部15Aは、全ての部分が湾曲した形状になっていなくてもよく、一部が直線状になっていてもよい。特に鼻柱から鼻先に当接する部分の一部が直線状になっていれば、より良好な装着感が得られる。
【0032】
湾曲形状部15A、15Aにおける接合は、溶着、ホットメルト等によって行われる。溶着には、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着等がある。特に、熱溶着等の溶着による接合は、接着剤のように健康に心配がある溶剤を使用しなくてもよいため、好ましいものである。なお、接合を溶着で行う場合、マスク半体11Aを構成する弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aは、ポリエステル系ポリウレタンフォームで構成されるのが好ましい。ポリエステル系ポリウレタンフォームは、熱溶着に好適である。
【0033】
マスク10Aにおいて、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aと繊維シート25Aとは、湾曲形状部15A以外の部分で互いに非接着であり、弾性及び通気性を有する除膜ポリウレタンフォームシート21Aと繊維シート25Aの間に接着層が存在しない。そのため、接着層による通気性阻害がなく、マスクの使用感に優れたものになる。
【0034】
さらに、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aと繊維シート25Aは、湾曲形状部15A以外の部分で互いに非接着のため、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Aに引っ張られて繊維シート25Aの繊維と繊維のすき間が目開くことがない。このため、繊維シート25Aのフィルター機能が維持される。
【0035】
マスク10Aの製造を、
図4を用いて説明する。マスク10Aの製造は、
図4の(4-1)に示すように、2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート211A、211Aの間に、繊維シート251A、251Aを2枚重ねて挟む。ここで使用する弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート211A及び繊維シート251Aは、マスク半体11Aよりも大の寸法からなり、前記マスク10Aの説明で示した材質と同一である。
【0036】
2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート211A、211A間に繊維シート251A、251Aを2枚挟んだ状態で、プレス装置により前記マスク半体11Aの形状に打ち抜き、
図4の(4-2)に示す2枚のマスク半体11A、11Aを重なった状態で形成する。打ち抜き形成した2枚のマスク半体11A、11Aは、マスク半体の形状をした2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21A、21A間に、マスク半体の形状をした繊維シート25A、25Aの2枚が挟まれた積層状態となっている。
【0037】
前記2枚のマスク半体11A、11Aが積層状態で、マスク半体11A、11Aにおける湾曲形状部15A、15Aを、加熱圧縮装置により熱圧着し、
図4の(4-3)に示すように、前記湾曲形状部15で、2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21A、21Aとその間の2枚の繊維シート25A、25Aを接合してマスク10Aを得る。
【0038】
図5乃至
図7に示す第二実施形態のマスク10Bは、口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部13Bを有するものであり、外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Bと、その内面に積層された内側の繊維シート25Bの積層からなる2枚のシート状のマスク半体11B,11Bを、接合したものからなる。
【0039】
マスク半体21Bの形状は、
図1乃至
図3と同様、マスク10Bの左右方向中間位置で2分割された形状からなり、一端111B側に耳掛け部13Bとして開口部131Bが形成され、他端112Bに外方へ膨らんだ湾曲形状部15Bが形成されている。
【0040】
第二実施形態のマスク10Bでは、内側の繊維シート25Bは、湾曲形状部15Bから耳掛け部13Bとしての開口部131Bの手前の位置まで存在し、耳掛け部13Bとしての開口部131Bの周囲では存在せず、その他は第一実施形態のマスク10Aと同様である。
【0041】
第二実施形態のマスク10Bは、鼻及び口の部分を、外側の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Bと、その内面に積層された内側の繊維シート25Bとで覆うため、花粉等の遮断性が高く、また、耳掛け部分は、弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21Bのみで構成されているため、耳に対する圧迫感等の不快感が小さく、使用感がより良好となる。また、内側の繊維シート25Bの使用量が減るため、マスクのコスト低減効果が得られる。
【0042】
第二実施形態のマスク10Bの製造について
図8を用いて説明する。
図8の(8-1)に示すように、2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート211B、211Bの間に、繊維シート251B、251Bを2枚重ねて挟む。ここで使用する2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート211Bは、マスク半体11Bよりも大の寸法からなり、前記第一実施形態のマスク10Aの説明で示した材質と同一である。一方、繊維シート251Bは、前記マスク半体11Bにおける湾曲形状部15Bから耳掛け部13Bとしての開口部131Bの手前の位置までの大きさからなり、前記第一実施形態のマスク10Aで説明した材質と同一である。
【0043】
2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート211B、211Bの間に繊維シート251B、251Bを2枚挟んだ状態で、プレス装置により前記マスク半体11Bの形状に打ち抜き、
図8の(8-2)に示す2枚のマスク半体11Bを重なった状態で形成する。打ち抜き形成した2枚のマスク半体11Bは、マスク半体の形状をした2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21B、21B間に、マスク半体の形状をした繊維シート25B、25Bの2枚が挟まれた積層状態となっている。なお、打ち抜きは、ナノファイバーからなる繊維シート251Bが、前記マスク半体11Bにおける湾曲形状部15Bから耳掛け部13Bとしての開口部131Bの手前の位置までとなるように打ち抜き位置を調整する。
【0044】
前記2枚のマスク半体11B、11Bが積層状態で、マスク半体11B、11Bにおける湾曲形状部15B、15Bを、加熱圧縮装置により熱圧着し、
図8の(8-3)に示すように、前記湾曲形状部15Bで、2枚の弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート21B、21Bとその間の2枚の繊維シート25B、25Bを接合してマスク10Bを得る。
【実施例】
【0045】
・実施例1
高通気性の軟質ポリウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製、品名:MF-60、ポリエステル系、伸び率:400%、セル数:60個/25mm、除膜されたフォーム)を厚み2mmのシートに裁断した2枚の弾性及び通気性を有する除膜ポリウレタンフォームシート(通気性500cm
3/(cm
2・s)、平面寸法20×15cm)間に、繊維シート(三井化学社製、品名:MPER04、材質:ポリプロピレン、繊維径:0.2μm、目付量:20g/m
2、厚み0.16mm、平面寸法20×15cm)を2枚重ねて挟んだ状態とし、その状態で打ち抜きにより、
図4の(4-2)に示した形状のマスク半体11A、11Aを2枚形成した。この2枚のマスク半体11A、11Aを重ねた状態で湾曲形状部15A、15Aを熱板で挟み、湾曲形状部15A、15Aを熱溶着により接合し、
図4の(4-3)に示した2枚のマスク半体11A、11Aが重なった折りたたみ状態のマスク10Aを形成した。折りたたみ状態のマスク10Aは、使用時にマスク半体11A、11Aを拡げることにより、
図1及び
図2に示した状態の使用時のマスク10Aとなる。
【0046】
このように、本発明のマスクは、使用中にずれにくく、通気性が良好で花粉等の遮断性が高く、かつ使用感に優れ、しかも汎用されている廉価な製造装置を用いて製造工数が少なくて済むため、コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0047】
10A、10B マスク
11A、11B マスク半体
13A、13B 耳掛け部
131A、131B 開口部
15A、15B 湾曲形状部
21A、21B 弾性及び通気性を有するポリウレタンフォームシート
25A、25B 繊維シート