(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】オープンラック式の気化装置
(51)【国際特許分類】
F17C 9/02 20060101AFI20231218BHJP
F28D 3/02 20060101ALI20231218BHJP
F28D 3/04 20060101ALI20231218BHJP
F28F 3/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F17C9/02
F28D3/02
F28D3/04
F28F3/00 301Z
(21)【出願番号】P 2020049128
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】河田 一也
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202320(JP,A)
【文献】特開2010-271128(JP,A)
【文献】実開昭62-099761(JP,U)
【文献】特開2012-052730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
F28D 3/02
F28D 3/04
F28F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを前記液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させることにより前記液化ガスを気化させるオープンラック式の気化装置であって、
液化ガスが内部を流れるように構成された複数の伝熱パネルと、
上向きに開口した箱構造を有しているとともに、周壁に形成された流入口を通じて流入するとともに上向きの開口領域を通じて溢れ出した前記加熱用液体を前記複数の伝熱パネルの外面に流下させるように配置された複数のトラフと、
前記加熱用液体を前記複数のトラフに分配するように構成されたマニホールドと、
前記流入口から流入した前記加熱用液体が通過するオリフィス孔が形成されたオリフィス板と、
前記流入口と前記オリフィス孔との重畳面積の変更を許容するように、前記周壁に対する前記オリフィス板の固定位置を変更可能に構成されている固定部と、
前記オリフィス板の傾動を規制するように前記流入口の下側に設けられた規制部材と、を備え、
前記固定部は、前記周壁に対する前記オリフィス板の前記固定位置を前記トラフの幅方向において変更可能に構成されており、
前記オリフィス板は、前記オリフィス板の下縁が前記規制部材に乗った状態で前記規制部材に沿って前記トラフの幅方向に移動可能である、気化装置。
【請求項2】
液化ガスを前記液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させることにより前記液化ガスを気化させるオープンラック式の気化装置であって、
液化ガスが内部を流れるように構成された複数の伝熱パネルと、
上向きに開口した箱構造を有しているとともに、周壁に形成された流入口を通じて流入するとともに上向きの開口領域を通じて溢れ出した前記加熱用液体を前記複数の伝熱パネルの外面に流下させるように配置された複数のトラフと、
前記加熱用液体を前記複数のトラフに分配するように構成されたマニホールドと、
前記流入口から流入した前記加熱用液体が通過するオリフィス孔が形成されたオリフィス板と、
前記流入口と前記オリフィス孔との重畳面積の変更を許容するように、前記周壁に対する前記オリフィス板の固定位置を変更可能に構成されている固定部と、を備え、
前記周壁には、互いに異なる位置に形成された複数の位置決め孔が形成され、
前記固定部は、前記複数の位置決め孔それぞれに挿入可能に構成された挿通部材を含み、
前記オリフィス板は、前記挿通部材によって支持されるように構成されている
、気化装置。
【請求項3】
前記周壁には、前記複数の位置決め孔のうちの1つと他のもう1つの位置決め孔とを連通させる連通孔が形成されている、請求項
2に記載の気化装置。
【請求項4】
前記周壁のうち前記複数の位置決め孔を含む領域に対向する位置で前記周壁から離間した状態で保持されているとともに前記複数の位置決め孔に対応して形成された複数の支持孔が形成された開孔板を更に備え、
前記オリフィス板は、前記周壁と前記開孔板との間に配置され、
前記オリフィス板には、前記挿通部材の挿通を許容する挿通開口が形成され、
前記挿通部材は、前記複数の位置決め孔のうち1つに対応する支持孔及び挿通開口に挿通されることにより、前記オリフィス板を支持する、請求項
2又は
3に記載の気化装置。
【請求項5】
前記複数の位置決め孔を覆うように前記周壁の外面に取り付けられたカバー部材を更に備えている、請求項
2乃至
4のいずれか1項に記載の気化装置。
【請求項6】
液化ガスを前記液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させることにより前記液化ガスを気化させるオープンラック式の気化装置であって、
液化ガスが内部を流れるように構成された複数の伝熱パネルと、
上向きに開口した箱構造を有しているとともに、周壁に形成された流入口を通じて流入するとともに上向きの開口領域を通じて溢れ出した前記加熱用液体を前記複数の伝熱パネルの外面に流下させるように配置された複数のトラフと、
前記加熱用液体を前記複数のトラフに分配するように構成されたマニホールドと、
前記流入口から流入した前記加熱用液体が通過するオリフィス孔が形成されたオリフィス板と、
前記流入口と前記オリフィス孔との重畳面積の変更を許容するように、前記周壁に対する前記オリフィス板の固定位置を変更可能に構成されている固定部と、
前記流入口を左右に挟むように前記周壁に配置されているとともに上下方向に延設された
一対の規制部材
と、を備え、
前記オリフィス板は、前記一対の規制部材の間で前記一対の規制部材に沿って上下方向に変位可能であるとともに、前記オリフィス板が上下方向に変位するときにおいて、前記一対の規制部材により、前記周壁から離間する方向及び前記周壁に沿う方向における前記オリフィス板の傾動が規制される、気化装置。
【請求項7】
前記固定部は、前記オリフィス板を前記周壁に押し付けるように構成されている、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンラック式の気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上向きに開口した箱構造を有しているトラフから溢れ出した加熱用液体を用いて液化ガスを気化させるオープンラック式の気化装置は既知である(特許文献1を参照)。特許文献1の気化装置は、液化ガスが内部を上向きに流れるように構成された複数の伝熱パネルと、液化ガスよりも高温の加熱用液体をこれらの伝熱パネルの外面に流下させるように構成された複数のトラフとを有している。これらのトラフに加熱用液体を分配するためにマニホールドが配置されている。これらのトラフへの加熱用液体の供給量を調整するために、マニホールドから複数のトラフへの加熱用液体の供給経路には調整弁が設けられている。
【0003】
調整弁によって調整された流量の加熱用液体がトラフに供給される。加熱用液体の供給量がトラフの容積を超えると、加熱用液体は、上向きの開口領域を通じてトラフから溢れ出し、伝熱パネルの外面に供給される。加熱用液体が伝熱パネルの外面を流下している間、加熱用液体は、液化ガスに熱を与え、液化ガスが気化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の気化装置は、調整弁を用いて、複数のトラフへの加熱用液体の供給量を調整しているけれども、現状において、調整弁に対するメンテナンス及び調整弁のコストを削減することが求められている。
【0006】
本発明は、オリフィス板によりトラフへの加熱用液体の流入量を調整可能にする気化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係るオープンラック式の気化装置は、液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させることにより前記液化ガスを気化させるように構成されている。気化装置は、液化ガスが内部を流れるように構成された複数の伝熱パネルと、上向きに開口した箱構造を有しているとともに、周壁に形成された流入口を通じて流入するとともに上向きの開口領域を通じて溢れ出した前記加熱用液体を前記複数の伝熱パネルの外面に流下させるように配置された複数のトラフと、前記加熱用液体を前記複数のトラフに分配するように構成されたマニホールドと、前記流入口から流入した前記加熱用液体が通過するオリフィス孔が形成されたオリフィス板と、前記流入口と前記オリフィス孔との重畳面積の変更を許容するように、前記周壁に対する前記オリフィス板の固定位置を変更可能に構成されている固定部と、前記オリフィス板の傾動を規制するように前記流入口の下側に設けられた規制部材と、を備えている。前記固定部は、前記周壁に対する前記オリフィス板の前記固定位置を前記トラフの幅方向において変更可能に構成されている。前記オリフィス板は、前記オリフィス板の下縁が前記規制部材に乗った状態で前記規制部材に沿って前記トラフの幅方向に移動可能である。
【0008】
上記の構成によれば、トラフへの流量調整にオリフィス板が用いられるので、メンテナンスに係る労力及び製造コストは軽減される。周壁に対するオリフィス板の固定位置が変更されると、流入口に対するオリフィス孔の重畳面積が変わる。この結果、流入口から流入する加熱用液体に対する抵抗が変わる。詳細には、重畳面積が大きければ、流入口から流入した加熱用液体に対する抵抗が小さくなり、トラフへの加熱用液体の流入量は大きくなる。逆に、重畳面積が小さければ、トラフへの加熱用液体の流入量は小さくなる。したがって、このオリフィス板により、トラフへの加熱用液体の流入量を調整することができる。また、トラフごとにオリフィス板の固定位置を変えることにより、トラフごとに加熱流体の流入量を変更することが可能になる。
【0010】
オリフィス板の固定位置が幅方向に変更されると、流入口及びオリフィス孔が重なり合う開口の幅寸法が変わる。流入口に対するオリフィス孔の相対的な位置がトラフの幅方向に変更可能であるので、流入口とオリフィス孔との重畳面積(ひいては、トラフに流入する加熱用液体に対する抵抗)をオリフィス板で変更することができる。さらに、オリフィス板の傾動は、規制部材によって規制されているので、オリフィス板を傾動させることなくオリフィス板の位置を変更することが可能になる。
【0011】
本発明の他の局面に係るオープンラック式の気化装置は、液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させることにより前記液化ガスを気化させるように構成されている。気化装置は、液化ガスが内部を流れるように構成された複数の伝熱パネルと、上向きに開口した箱構造を有しているとともに、周壁に形成された流入口を通じて流入するとともに上向きの開口領域を通じて溢れ出した前記加熱用液体を前記複数の伝熱パネルの外面に流下させるように配置された複数のトラフと、前記加熱用液体を前記複数のトラフに分配するように構成されたマニホールドと、前記流入口から流入した前記加熱用液体が通過するオリフィス孔が形成されたオリフィス板と、前記流入口と前記オリフィス孔との重畳面積の変更を許容するように、前記周壁に対する前記オリフィス板の固定位置を変更可能に構成されている固定部と、を備えている。前記周壁には、互いに異なる位置に形成された複数の位置決め孔が形成されている。前記固定部は、前記複数の位置決め孔それぞれに挿入可能に構成された挿通部材を含んでいる。前記オリフィス板は、前記挿通部材によって支持されるように構成されている。
【0012】
上記の構成によれば、挿通部材が挿通される位置決め孔を複数の位置決め孔のうち1つから他のもう1つに変更すると、周壁における挿通部材の位置が変更される。オリフィス板は、挿通部材によって支持されるので、挿通部材の位置の変更により、周壁におけるオリフィス板の位置が変更される。この結果、流入口に対するオリフィス孔の相対的な位置も変わり、流入口とオリフィス孔との重畳面積(ひいては、トラフに流入する加熱用液体に対する抵抗)をオリフィス板で変更することができる。
【0013】
上記の構成に関して、前記周壁には、前記複数の位置決め孔のうちの1つと他のもう1つの位置決め孔とを連通させる連通孔が形成されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、連通孔を通じて、1つの位置決め孔に接続された挿通部材を他のもう1つの位置決め孔に移動することにより、周壁に対するオリフィス板の固定位置を変更することができる。このとき、挿通部材をオリフィス板及び周壁から取り外す必要がないので、挿通部材の紛失を防止できる。
【0015】
上記の構成に関して、気化装置は、前記周壁のうち前記複数の位置決め孔を含む領域に対向する位置で前記周壁から離間した状態で保持されているとともに前記複数の位置決め孔に対応して形成された複数の支持孔が形成された開孔板を更に備えていてもよい。前記オリフィス板は、前記周壁と前記開孔板との間に配置されていてもよい。前記オリフィス板には、前記挿通部材の挿通を許容する挿通開口が形成されていてもよい。前記挿通部材は、前記複数の位置決め孔のうち1つに対応する支持孔及び挿通開口に挿通されることにより、前記オリフィス板を支持してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、挿通部材が、位置決め孔及びこの位置決め孔に対応する支持孔に挿通されると、挿通部材は、周壁と開孔板とによって両持ち支持される。両持ち支持された挿通部材によって、オリフィス板は、周壁と開孔板との間で支持される。
【0017】
上記の構成に関して、気化装置は、前記複数の位置決め孔を覆うように前記周壁の外面に取り付けられたカバー部材を更に備えていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、周壁の複数の位置決め孔は、カバー部材によって覆われているので、トラフに供給された加熱用液体がこれらの位置決め孔を通じて漏出することが防止される。
【0019】
本発明の他の局面に係るオープンラック式の気化装置は、液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させることにより前記液化ガスを気化させるように構成されている。気化装置は、液化ガスが内部を流れるように構成された複数の伝熱パネルと、上向きに開口した箱構造を有しているとともに、周壁に形成された流入口を通じて流入するとともに上向きの開口領域を通じて溢れ出した前記加熱用液体を前記複数の伝熱パネルの外面に流下させるように配置された複数のトラフと、前記加熱用液体を前記複数のトラフに分配するように構成されたマニホールドと、前記流入口から流入した前記加熱用液体が通過するオリフィス孔が形成されたオリフィス板と、前記流入口と前記オリフィス孔との重畳面積の変更を許容するように、前記周壁に対する前記オリフィス板の固定位置を変更可能に構成されている固定部と、前記流入口を左右に挟むように前記周壁に配置されているとともに上下方向に延設された一対の規制部材と、を備えている。前記オリフィス板は、前記一対の規制部材の間で前記一対の規制部材に沿って上下方向に変位可能であるとともに、前記オリフィス板が上下方向に変位するときにおいて、前記一対の規制部材により、前記周壁から離間する方向及び前記周壁に沿う方向における前記オリフィス板の傾動が規制される。
【0020】
上記の構成によれば、オリフィス板の傾動は、規制部材によって規制されているので、オリフィス板を傾動させることなくオリフィス板の位置を変更することが可能になる。
【0021】
上記の構成に関して、前記固定部は、前記オリフィス板を前記周壁に押し付けるように構成されていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、オリフィス板は、固定部によって周壁に押し付けられるので、流入口から流入した加熱用液体の一部がオリフィス板に衝突しても、オリフィス板は周壁から離間しにくい。したがって、オリフィス板と周壁との間の境界への加熱用液体の流入が抑制される。
【発明の効果】
【0023】
上述の気化装置は、オリフィス板によりトラフへの加熱用液体の流入量を調整可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態のオープンラック式の気化装置の概略的な斜視図である。
【
図5】トラフへの加熱用液体の流入量の調整に用いられるオリフィス板の概略図である。
【
図6】オリフィス板の固定に用いられる固定部の概略図である。
【
図7】オリフィス板の固定に用いられる固定部の概略図である。
【
図8】側板に取り付けられた規制部材の概略的な横断面図である。
【
図9】オリフィス孔、流入口及び挿通開口の間の位置関係の概略図である。
【
図10】オリフィス孔、流入口及び挿通開口の間の位置関係の概略図である。
【
図14】第2実施形態の位置決め孔の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
図1は、オープンラック式の気化装置(ORV)100の概略的な斜視図である。
図2は、気化装置100の概略的な縦断面図である。気化装置100が
図1及び
図2を参照して説明される。
【0026】
気化装置100は、液化天然ガス(以下、「液化ガス」と称される)を液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させ、液化ガスを気化させるように構成されている。熱交換の結果得られた気相の天然ガスは、以下の説明において「気化ガス」と称される。本実施形態において、加熱用液体として海水が用いられている。代替的に、気化ガスよりも高い温度を有する液体が加熱用液体として利用されてもよい。
【0027】
気化装置100は、上述の熱交換が行われる複数の伝熱パネル113と、これらの伝熱パネル113の外面に加熱用液体を供給するように構成された複数のトラフ130とを備えている。気化装置100は、これらの伝熱パネル113に液化ガスを分配するように構成された下マニホールド111と、これらの伝熱パネル113内で生じた気化ガスが流入する上マニホールド112とを更に備えている。気化装置100は、上述のトラフ130への加熱用液体の供給に用いられるポンプ121、マニホールド122及び複数の供給管123を更に有している。
【0028】
複数の伝熱パネル113は、立設した姿勢で配置され、間隔を空けて整列されている。これらの伝熱パネル113それぞれは、下ヘッダ管114、上ヘッダ管115及び複数の伝熱管116を有している。下ヘッダ管114及び上ヘッダ管115は、伝熱パネル113の整列方向に対して略直角の方向に延設されている。上ヘッダ管115は、下ヘッダ管114から上方に離間した位置に配置され、伝熱パネル113の上端を形成している。一方、下ヘッダ管114は、伝熱パネル113の下縁を形成している。複数の伝熱管116は、立設した姿勢で配置され、下ヘッダ管114及び上ヘッダ管115の延設方向に整列されている。これらの伝熱管116は、下ヘッダ管114から上方に延設され上ヘッダ管115に接続されている。
【0029】
下マニホールド111は、伝熱パネル113の整列方向に延設されている。下マニホールド111の周面に形成された複数の流出口(図示せず)には、下ヘッダ管114の一端部が接続されている。下マニホールド111は、液化ガスを供給するポンプ(図示せず)にも接続されている。
【0030】
上マニホールド112は、下マニホールド111から上方に離間した位置で、伝熱パネル113の整列方向に延設されている。上マニホールド112の周面に形成された複数の流入口(図示せず)には、上ヘッダ管115の一端部が接続されている。上マニホールド112は、気化ガスを利用する所定の需要先又は気化ガスを貯留するタンクにも接続されている(図示せず)。
【0031】
ポンプ121は、加熱用液体を供給するように構成されている。ポンプ121は、管路(図示せず)を介してマニホールド122の流入口に接続されている。
【0032】
マニホールド122は、伝熱パネル113の整列方向に延設されている。マニホールド122の周面には複数の流出口125が形成されている。これらの流出口125は、マニホールド122の延設方向において間隔を空けて形成されている。これらの流出口125には、複数の供給管123の基端が接続されている。これらの供給管123は、流出口125からトラフ130に向けて延設され、これらの供給管123の先端は複数のトラフ130に接続されている。
【0033】
これらのトラフ130のうち1つの概略的な断面図が
図3に示されている。
図4は、トラフ130の概略的な側面図である。
図1乃至
図4を参照してトラフ130が説明される。
【0034】
複数のトラフ130は、伝熱パネル113の整列方向において間隔を空けて配置され、伝熱パネル113と交互に並んでいる。これらのトラフ130の高さ位置に関して、トラフ130は、上ヘッダ管115よりも低い位置に配置されている。詳細には、トラフ130は、伝熱パネル113の複数の伝熱管116の上部(高さ方向における複数の伝熱管116の中間位置よりも上側)に対して伝熱パネル113の整列方向において隣り合うように配置されている。トラフ130は、流出口125が形成されたマニホールド122よりも高い位置に配置されている。
【0035】
複数のトラフ130それぞれは、上向きに開口した箱体131と、箱体131から溢れ出した加熱用液体を伝熱パネル113へ案内するために設けられた案内部139とを備えている。
【0036】
箱体131は、伝熱管116の整列方向に長い箱構造を有している。詳細には、箱体131は、伝熱管116の整列方向に長い略矩形状の底板132と、底板132の周縁から立設された周壁133とを含んでいる。底板132は、略水平な姿勢である一方で、周壁133は略垂直な姿勢である。箱体131の長さ(すなわち、伝熱管116の整列方向における箱体131の大きさ)は、伝熱パネル113の両端の伝熱管116間の距離より大きい。
【0037】
周壁133は、マニホールド122側で立設された側板136と、側板136から伝熱管116の整列方向において離間した位置で立設された他の側板137とを含んでいる。側板136には、供給管123の先端が接続された略円形の流入口138が形成されている。流入口138の中心は、側板136の下部(すなわち、高さ方向における側板136の中央位置よりも下側)に位置している。以下の説明において、側板136から側板137に向かう方向は、「流入方向」と称される。
【0038】
側板136には、流入口138に加えて、流入口138の上側において略円形の複数の位置決め孔151が形成されている。これらの位置決め孔151は、トラフ130への加熱用液体の流入量を調整するために側板136に隣接して配置された単一のオリフィス板160(オリフィス板160は、
図3に示されている)の固定位置を高さ方向に変えるために利用される。
【0039】
詳細には、
図4において、側板136には、9つの位置決め孔151が形成されている。これらの位置決め孔151のうち3つは、上下方向に間隔を空けて配置され、孔列を形成している。他の3つの位置決め孔151は、この孔列とは幅方向において異なる位置で上下方向に間隔を空けて配置され、他の孔列を形成している。残りの3つの位置決め孔151は、これらの孔列とは幅方向において異なる位置で上下方向に間隔を空けて配置され、他の孔列を形成している。これらの9つの位置決め孔151の高さ位置はいずれも互いに相違している。幅方向において異なる位置に複数の孔列を形成することにより、高さ位置が互いに異なる位置決め孔151を多数設けることが可能になる。この結果、オリフィス板160に対して多くの固定箇所を設定するとともにオリフィス板160の高さ位置を微調整することが可能になる。
【0040】
周壁133は、立設した姿勢で側板136から流入方向に延設された一対の堰板134,135を更に含んでいる。流入方向における堰板134,135の両端縁(すなわち、高さ方向に延びる縁)は、側板136,137に接続されている。すなわち、堰板134,135は、流入方向に対して直角の方向において互いに対向している。以下の説明において、流入方向に対して直角の方向は、「幅方向」と称される。
【0041】
隣り合う伝熱パネル113の間に配置されたトラフ130の堰板134,135の高さは、側板136,137の高さよりも低い若しくは略等しい。
【0042】
案内部139は、堰板134,135の上縁から斜め下方に傾斜した板状部分である。隣り合う伝熱パネル113の間に配置されたトラフ130は、2つの案内部139を有している。伝熱パネル113の列の外側に配置されたトラフ130は、1つの案内部139を有している。この案内部139は、伝熱パネル113に対向している堰板の上縁から斜め下方に傾斜するように設けられている。
【0043】
上述のオリフィス板160は、トラフ130に流入する加熱用液体に対する抵抗(すなわち、トラフ130への加熱用液体の流入量)を調整するために用いられる。オリフィス板160の概略図が
図5に示されている。
図3乃至
図5を参照して、オリフィス板160が説明される。
【0044】
オリフィス板160は、立設した姿勢で側板136の内面に隣接するように配置されている。オリフィス板160は、上端部において折り曲げ加工が施与された開口板部161と、開口板部161の上端の折り曲げ部分に取り付けられた取手162とを含んでいる。取手162は、トラフ130に対するオリフィス板160の取付位置を調整する調整作業を容易にするために設けられている。
【0045】
開口板部161の幅は、堰板134,135の内面間の距離よりも小さい。開口板部161の高さは、側板136,137の高さよりも大きく、開口板部161の上部及び取手162は、トラフ130の内部空間よりも上側に位置している。
【0046】
開口板部161には、略円形のオリフィス孔163及び幅方向に長い挿通開口164が形成されている。挿通開口164は、オリフィス孔163から上側に離間した位置に形成されている。オリフィス孔163及び挿通開口164の高さ位置は、挿通開口164が側板136のいずれかの位置決め孔151を含む領域に重ねられたときに、オリフィス孔163が少なくとも部分的に側板136の流入口138に重なるように設定されている。
【0047】
オリフィス孔163は、流入口138に等しい直径を有してもよいし、流入口138よりも大きな直径を有してもよいし、流入口138よりも小さな直径を有していてもよい。本実施形態において、オリフィス孔163は、流入口138と略等しい直径を有している。
図3は、オリフィス孔163が流入口138と略同軸に配置されている状態を示している。
【0048】
挿通開口164の開口長さ(すなわち、幅方向における挿通開口164の大きさ)は、上下方向の大きさよりも長くなっている。すなわち、挿通開口164は、位置決め孔151の3つの列が並ぶ方向に延設されている。挿通開口164は、幅方向において最も離れた位置決め孔151の列間の距離(すなわち、両端の列の間の距離)よりも大きな値である。
【0049】
オリフィス板160を所定の位置決め位置で側板136に固定するために固定部170が側板136に設けられている。固定部170の概略図が
図6及び
図7に示されている。
図3乃至
図7を参照して、固定部170が説明される。
【0050】
固定部170は、平面視において略C字状に屈曲した棒状の支持部173(
図6及び
図7を参照)と、挿通部材172(
図7を参照)とを含んでいる。
【0051】
支持部173の高さ位置は、開孔板174が側板136の複数の位置決め孔151を含む領域に流入方向において重なるように設定されている。支持部173は、側板136の複数の位置決め孔151の下側且つ流入口138の上側に位置している。
【0052】
支持部173は、側板136の内面から離間した位置で幅方向に延設された主部175と、主部175の両端から側板136の内面に向けて突出した端部176,177とを含んでいる。主部175は、主部175の幅方向において、オリフィス板160の幅よりも長い。主部175には、長手方向において間隔を空けて複数のネジ穴178が形成されている。これらのネジ穴178は、主部175を流入方向において貫通している。
【0053】
端部176,177は、側板136の内面に固定されている。主部175からの端部176,177の突出量は、オリフィス板160の厚さよりも大きな値である。端部176,177、側板136の内面及び主部175によって囲まれた矩形状の領域(
図6を参照)には、オリフィス板160が挿入される(
図3を参照)。
【0054】
挿通部材172は、側板136の位置決め孔151及び支持孔179以下の直径を有するピンであってもよい。挿通部材172は、支持部173によって支持された矩形状の開孔板174に形成された支持孔179に挿通されるように構成されている。挿通部材172は、オリフィス板160を支えるのに十分な強度を有している。
【0055】
開孔板174は、主部175から上方に突出している。開孔板174の支持孔179は、側板136の位置決め孔151に対応して形成されている。すなわち、開孔板174には、側板136の位置決め孔151に対して略同軸且つ略等しい直径の9つの支持孔179が形成されている。これらの支持孔179のうち1つに上述の挿通部材172の端部が挿入される。このとき、挿通部材172の一端部は、複数の支持孔179のうち1つの中に位置し、挿通部材172の他端部は、この支持孔179と略同軸の位置決め孔151の中に位置する。したがって、挿通部材172は、開孔板174及び側板136によって両持ち支持される。これらの支持孔179及び位置決め孔151の間において、挿通部材172は、オリフィス板160の挿通開口164を通過している。
図3に示されている挿通部材172は、最も下に位置している支持孔179及び位置決め孔151に挿通されている。このとき、オリフィス孔163は、流入口138と略同軸となっており、流入口138と完全に重なっている。
【0056】
オリフィス板160と側板136の内面との間の境界に加熱用液体が流入することを抑制するために、オリフィス板160を側板136に押し付けるように構成された複数の押付部材180が用いられている(
図3を参照)。詳細には、押付部材180は、主部175のネジ穴178に螺合されるボルトを用いて構成されている。
【0057】
トラフ130に流入した加熱用液体は、位置決め孔151を通じて流出可能である。このため、位置決め孔151を通じて流出した加熱用液体を受け止めるために、側板136の外面には、矩形箱状のカバー部材181が取り付けられている。カバー部材181は、複数の位置決め孔151全てを覆うように形成及び配置されている。
【0058】
側板136の内面には、オリフィス板160の変位を規制する規制部材191が設けられている(
図4及び
図8を参照)。規制部材191は、オリフィス板160が側板136から離間すること及び側板136に沿って傾動することを規制するように構成されている。詳細には、規制部材191は、上下方向に延設されているとともに側板136に固定された一対の延設部192と、これらの延設部192から側方に張り出した張出部193とを含んでいる断面略L字状の部材である。一対の延設部192は、オリフィス板160の幅に対応する間隔で流入口138を挟むように配置されている。一対の張出部193は、オリフィス板160に対して流入方向に重なるように、互いに近づく方向に張り出している。
【0059】
気化装置100の動作が以下に説明される。
【0060】
液化ガスは、ポンプ(図示せず)によって下マニホールド111を経由して複数の伝熱パネル113それぞれの下ヘッダ管114に流入する。下ヘッダ管114に流入した液化ガスは、複数の伝熱管116に沿って上方に流れる。この間、液化ガスは、加熱用液体と熱交換し気化ガスになる。気化ガスは、上方に流れ上ヘッダ管115に流入する。その後、気化ガスは、上ヘッダ管115を流れ上マニホールド112内に集約される。
【0061】
加熱用液体は、ポンプ121によって、マニホールド122を通じて複数の供給管123に分配される。供給管123を流れた加熱用液体は、複数のトラフ130に流入する。トラフ130内に流入した加熱用液体は、箱体131の内部空間内で液層を形成する。箱体131内への加熱用液体の流入量が箱体131の容積を超えると、加熱用液体は、堰板134,135の上縁を越えて溢れ出す。加熱用液体は、その後、案内部139の傾斜面に沿って流下する。この結果、加熱用液体は、箱体131の隣に位置している複数の伝熱管116の上部の外面に散水される。
【0062】
箱体131に流入した加熱用液体の一部は、側板136の複数の位置決め孔151を通じて流出する。これらの位置決め孔151を通じて流出した加熱用液体は、側板136の外面に取り付けられたカバー部材181によって受け止められ、カバー部材181と側板136の外面とによって囲まれた空間内に留められる。
【0063】
トラフ130への加熱用液体の流入量は、オリフィス板160の高さ位置の変更により調整される。加熱用液体の流入量の調整方法が、
図1、
図3、
図7、
図9及び
図10を参照して説明される。
図9は、
図3に示されている高さ位置にオリフィス板160が配置されているときにおけるオリフィス孔163、流入口138及び挿通開口164の間の位置関係の概略図である。
図10は、
図3に示されている高さ位置よりも高い位置でオリフィス板160が位置決めされたときにおけるオリフィス孔163、流入口138及び挿通開口164の間の位置関係の概略図である。
図9及び
図10において、オリフィス孔163及び挿通開口164は、点線で示されている。
【0064】
図3及び
図9に示されている高さ位置にオリフィス板160が配置されているとき、挿通部材172は、挿通開口164と、側板136の最も下の位置決め孔151と、開孔板174の最も下の支持孔179とに挿通されている。このとき、オリフィス孔163は、流入口138と略完全に重なっている。すなわち、オリフィス板160は、オリフィス孔163が流入口138と略同軸の配置となる位置に位置決めされ、流入口138が最も開放された状態になる。
【0065】
図3及び
図9に示されている高さ位置にあるオリフィス板160に対して、押付部材180及び挿通部材172が取り外される。この結果、オリフィス板160は、側板136の内面に沿って移動可能になる。作業者が取手162を持ち、オリフィス板160を引き上げることができる。このとき、オリフィス板160は、一対の延設部192によって挟まれているので、傾動することなくまっすぐに上方に移動することができる。
【0066】
オリフィス板160が引き上げられると、挿通開口164は、上側の位置決め孔151及び上側の支持孔179に重なる。詳細には、挿通開口164は、幅方向に延設されているので、
図3及び
図9に示されている高さ位置でのオリフィス板160の固定に利用された位置決め孔151とは幅方向に異なる位置に形成された位置決め孔151とも重なり得る。したがって、オリフィス板160を引き上げ、挿通開口164を9つの位置決め孔151のいずれかに重ねることができる。なお、
図10は、挿通開口164が複数の位置決め孔151の中で最も上の位置決め孔151に重なった状態を示している。
【0067】
オリフィス板160の引き上げの後、挿通部材172は、挿通開口164、挿通開口164と重なった上側の位置決め孔151及び上側の支持孔179に挿通されると、側板136と開孔板174とによって両持ち支持される。オリフィス板160は、側板136と開孔板174との間で挿通部材172によって支持される。
【0068】
挿通部材172が、幅方向においてオリフィス板160の中心位置から離れた位置に形成された位置決め孔151及び支持孔179に挿通された場合、オリフィス板160の自重により、挿通部材172回りのモーメントがオリフィス板160に作用する。このモーメントに応じてオリフィス板160は、挿通部材172回りに傾動しようとするけれども、オリフィス板160の傾動は、延設部192によって規制される。
【0069】
挿通部材172が、挿通開口164、位置決め孔151及び支持孔179に挿通された後、押付部材180が支持部173のネジ穴178に螺合され、オリフィス板160は、押付部材180の先端と側板136の内面とによって挟持される。すなわち、オリフィス板160は、押付部材180によって側板136の内面に押し付けられる。
【0070】
図10の高さ位置において、挿通部材172が、上側の位置決め孔151及び上側の支持孔179に挿通されているとき、オリフィス孔163の中心軸は、流入口138の中心軸に対して上側に位置している。この場合、オリフィス孔163が流入口138に部分的に重なった重畳状態が得られる。すなわち、オリフィス孔163及び流入口138の重畳面積169(すなわち、流入口138の開放面積)は、オリフィス板160の位置決め高さを
図3及び
図9に示されている位置から
図10に示されている高さ位置に変更することにより低減される。
【0071】
オリフィス孔163及び流入口138の重畳面積169が小さくなれば小さくなるほど、トラフ130に流入する加熱用液体に対する抵抗が大きくなる。したがって、オリフィス板160の位置決め高さを
図3及び
図9に示されている位置から
図10に示されている高さ位置に変更することにより、トラフ130への加熱用液体の単位時間当たりの流入量を減らすことができる。
【0072】
トラフ130への加熱用液体の流入量が低減されると、他のトラフ130への加熱用液体の流入量が増加する。すなわち、複数のトラフ130は、共通のマニホールド122を通じて加熱用液体の供給を受けるので、1つのトラフ130に加熱用液体が流入しにくくなれば、他のトラフ130への加熱用液体の流入量が増える。逆に、1つのトラフ130に加熱用液体が流入しやすくなれば、他のトラフ130への加熱用液体の流入量が減る。したがって、1つのトラフ130に対してオリフィス板160の高さ位置を変更することにより、他のトラフ130に対する加熱用液体の流入量を変更することができる。
【0073】
オリフィス孔163が流入口138に部分的に重なっているとき、オリフィス板160の一部は、流入口138内に露出する。流入口138内のオリフィス板160の露出部分に加熱用液体が衝突すると、オリフィス板160の下部は、流入方向に力を受ける。この力は、オリフィス板160の下部を側板136の内面から離間させるように作用するけれども、側板136の内面からのオリフィス板160の離間は、張出部193によって規制される。
【0074】
流入口138内のオリフィス板160の露出部分に衝突した加熱用液体の一部は、側板136の内面及びオリフィス板160の間に入り込むように流れることがある。オリフィス板160は、流入口138の上側で押付部材180によって側板136に押し付けられているので、側板136の内面及びオリフィス板160の間に流入した加熱用液体が押付部材180の押付位置を越えて上向きに流れることが抑制される。
【0075】
上述の実施形態によれば、オリフィス板160の位置決め高さを変更することにより、トラフ130への加熱用液体の流入量を変えることができる。1つのオリフィス板160を用いて様々な流入量を達成することができるので、オリフィス孔163の大きさにおいて異なる多数のオリフィス板160を用意しなくてもよい。
【0076】
上述の実施形態に関して、オリフィス孔163は、流入口138と略等しい大きさを有している。代替的に、オリフィス板160を位置決めすることができる範囲において、オリフィス孔163及び流入口138の重畳面積169を変更可能ならば、オリフィス孔163は、流入口138よりも小さくてもよいし大きくてもよい。
【0077】
上述の実施形態に関して、側板136には9つの位置決め孔151が形成されている。代替的に、高さ方向において異なる位置に形成された2以上の位置決め孔151が側板136に形成されていてもよい。2以上の位置決め孔151が側板136に形成されていれば、オリフィス板160の固定位置を高さ方向に変更し、トラフ130に対して異なる流入量を達成することができる。
【0078】
上述の実施形態に関して、オリフィス板160の位置は、高さ方向に変更されている。代替的に、オリフィス板160の位置は、幅方向に変更されてもよい。オリフィス板160の幅方向における位置を変更可能にする構造が、
図11及び
図12を参照して説明される。
図11は、側板136の概略図である。
図12は、オリフィス板160の概略図である。
【0079】
図11の側板136は、
図4に示されている側板136よりも幅広である一方で、側板136の流入口138は、
図4の側板136の流入口138と等しい大きさを有している。すなわち、側板136の幅に対する流入口138の直径の比は、
図11の方が
図4よりも小さくなっている。
【0080】
流入口138の上側には、9つの位置決め孔151が形成されている。これらの位置決め孔151の幅方向及び高さ方向における位置は、互いに異なっている。詳細には、これらの位置決め孔151のうち3つは、幅方向に間隔を空けて配置され、孔列を形成している。他の3つの位置決め孔151は、この孔列とは上下方向において異なる位置で幅方向に間隔を空けて配置され、他の孔列を形成している。残りの3つの位置決め孔151は、これらの孔列とは上下方向において異なる位置で幅方向に間隔を空けて配置され、他の孔列を形成している。側板136の位置決め孔151の形成パターンに合わせて、開孔板174には、9つの支持孔179が形成される(図示せず)。すなわち、開孔板174の9つの支持孔179は、側板136の位置決め孔151と略同軸に形成される。
【0081】
流入口138の下側には、1つの規制部材191が取り付けられている。詳細には、規制部材191の長手方向が水平方向になるように、規制部材191は、側板136の内面に取り付けられている。規制部材191の張出部193は、延設部192に対して上向きに突出している。
【0082】
図12のオリフィス板160は、
図5のオリフィス板160と等しい幅を有している。オリフィス板160の幅が維持されているのに対して、側板136の幅は大きくなっているので、
図12のオリフィス板160を幅方向に比較的大きく動かすことができる。
【0083】
図12のオリフィス板160は、挿通開口164の向きにおいて、
図5のオリフィス板160と相違している。詳細には、
図5のオリフィス板160の挿通開口164は、横長であるのに対して、
図12のオリフィス板160の挿通開口164は縦長である。すなわち、挿通開口164は、位置決め孔151の列が並ぶ方向に延設されている。
【0084】
オリフィス板160は、オリフィス板160の下縁が延設部192の上面に乗った状態で側板136に取り付けられる。オリフィス板160は、規制部材191に沿って移動可能である。オリフィス板160が9つの位置決め孔151のうち1つが挿通開口164内に完全に露出する位置に配置された後、挿通部材172が挿通開口164、露出した位置決め孔151及びこの位置決め孔151と同軸の支持孔179に挿通される。その後、オリフィス板160は、押付部材180によって側板136の内面に押し付けられる。
【0085】
側板136上の9つの位置決め孔151(及び、開孔板174の9つの支持孔179)の形成位置は、幅方向において互いに相違しているので、オリフィス板160は、互いに異なる9つの幅方向位置において位置決めされ得る。オリフィス板160が位置決めされる幅方向位置が変更されると、側板136の流入口138に対するオリフィス板160のオリフィス孔163の位置も変わる。この結果、流入口138及びオリフィス孔163の重畳面積169(ひいては、トラフ130に流入する加熱用液体に対する抵抗)が変わる。
【0086】
オリフィス板160が幅方向に移動可能に構成されれば、オリフィス板160に対する位置決め作業は、オリフィス板160が規制部材191によって支持された状態で行われ得る。
【0087】
上述の実施形態に関して、挿通部材172は、オリフィス板160とは別体に形成されている。代替的に、挿通部材172は、オリフィス板160と一体的に形成されていてもよい(
図13を参照)。
【0088】
オリフィス板160と一体的に形成された挿通部材172が、側板136に形成された9つの位置決め孔151に挿通されることにより、オリフィス板160が所定の高さ位置で位置決めされる。その後、押付部材180がネジ穴178に螺合され、オリフィス板160が側板136の内面に押し付けられることにより、オリフィス板160は側板136に固定される。
【0089】
<第2実施形態>
第1実施形態では、オリフィス板160(
図5を参照)の位置を変更するために、挿通部材172は、位置決め孔151、挿通開口164及び支持孔179から引き抜かれる必要がある。この場合、作業者が、オリフィス板160の位置決め作業の間に挿通部材172を紛失してしまうことがある。このような問題を解消する技術が、第2実施形態において説明される。
【0090】
図14において、異なる高さ位置において側板136に形成された5つの位置決め孔151が示されている。これらの位置決め孔151は、幅方向において異なる位置に形成されている。幅方向において両端の位置決め孔151の間隔(幅方向における間隔)は、
図5に示されている挿通開口164の開口長さよりも短く設定されている。
【0091】
幅方向において隣り合う位置決め孔151を繋ぐ連通孔210が更に形成されている。連通孔210は、5つの位置決め孔151から上方に延設された鉛直部分211~215と幅方向に隣り合う鉛直部分211~215を繋ぐように水平方向に延設された水平部分221~224とを有している。
【0092】
図14に示されている開口領域(すなわち、位置決め孔151及び連通孔210)は、開孔板174にも形成されている。この開口領域は、
図4に示されている支持孔179に代えて用いられる。
【0093】
鉛直部分211~215のいずれかに挿通開口164が十字状に重なる高さ位置にオリフィス板160の高さが設定されると、挿通部材172は、側板136、オリフィス板160及び開孔板174に挿通可能になる。挿通部材172がこれらの挿通された状態で、オリフィス板160を下降させると、挿通部材172は、位置決め孔151でオリフィス板160の下降が停止される。すなわち、オリフィス板160は、挿通部材172が位置決め孔151に到達した位置で位置決めされる。
【0094】
挿通部材172の挿通位置を、隣の位置決め孔151に変更する場合、挿通開口164が隣の位置決め孔151に繋がっている連通孔210の水平部分に重なる高さ位置までオリフィス板160が引き上げられる。このとき、挿通部材172は、元の位置決め孔151から上方に延設された鉛直部分に沿って上方に移動する。その後、挿通部材172は、互いに重ねられた挿通開口164及び連通孔210の水平部分に沿って幅方向に移動される。この結果、挿通部材172は、隣の位置決め孔151に到達する。
【0095】
その後、オリフィス板160を下降させると、挿通部材172は、隣の位置決め孔151に引っ掛かり、オリフィス板160の下降が停止される。すなわち、オリフィス板160は、隣の位置決め孔151に到達した位置で位置決めされる。隣り合う位置決め孔151の高さ位置は、互いに相違しているので、オリフィス板160の位置決め高さは、オリフィス板160の位置決めに5つの位置決め孔151のいずれが用いられるかによって変わる。この結果、流入口138に対するオリフィス孔163の重畳面積169(ひいては、トラフ130に流入する加熱用液体に対する抵抗)も変わる。
【0096】
上述の如く、挿通部材172を、挿通開口164、開孔板174及び側板136の開口領域に挿通させたまま、オリフィス板160の位置決め高さを変更することが可能になる。したがって、オリフィス板160の位置決め高さを変更する作業の間における挿通部材172の紛失が防止される。
【0097】
上述の実施形態では、
図5に示されているオリフィス板160が側板136上で位置決めされている。代替的に、
図13に示されているオリフィス板160が側板136上で位置決めされてもよい。
図13のオリフィス板160では、挿通部材172がオリフィス板160と一体化されているので、挿通部材172の紛失を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
上述の実施形態に関連して説明された技術は、液化ガスから気化ガスへの相変化が必要とされる様々な技術分野に好適に利用される。
【符号の説明】
【0099】
100・・・・・・・・・・・・・・・気化装置
113・・・・・・・・・・・・・・・伝熱パネル
122・・・・・・・・・・・・・・・マニホールド
130・・・・・・・・・・・・・・・トラフ
133・・・・・・・・・・・・・・・周壁
138・・・・・・・・・・・・・・・流入口
151・・・・・・・・・・・・・・・位置決め孔
160・・・・・・・・・・・・・・・オリフィス板
163・・・・・・・・・・・・・・・オリフィス孔
169・・・・・・・・・・・・・・・重畳面積
170・・・・・・・・・・・・・・・固定部
172・・・・・・・・・・・・・・・挿通部材
174・・・・・・・・・・・・・・・開孔板
179・・・・・・・・・・・・・・・支持孔
181・・・・・・・・・・・・・・・カバー部材
191・・・・・・・・・・・・・・・規制部材
210・・・・・・・・・・・・・・・連通孔