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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】方位角姿勢角計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5776 20120101AFI20231218BHJP
   G01C 19/567 20120101ALI20231218BHJP
【FI】
G01C19/5776
G01C19/567
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020052433
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152465
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】森口 孝文
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108253952(CN,A)
【文献】特開2018-151200(JP,A)
【文献】特表2007-520716(JP,A)
【文献】特開平06-258083(JP,A)
【文献】国際公開第01/79862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/5776
G01C 19/567
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線回りの角速度を検出する第1角速度センサと、
前記第1軸線とは異なる方向の第2軸線回りの角速度を検出する第2角速度センサと、
前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサに電力を供給する電源部と、
制御部と、を備え、
前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサは、
振動子と、
閉じた制御ループを有し、前記閉じた制御ループの出力が前記振動子に1次振動を誘起させる1次側制御回路と、
前記振動子に印加される角速度に起因して前記振動子に発生する2次振動を検出する閉じた制御ループを有する2次側制御回路と、を各々含み、
前記1次側制御回路と前記2次側制御回路とは、前記1次側制御回路としての機能と、前記2次側制御回路としての機能とを入れ替え可能に構成されており、
前記制御部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの一方において、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの他方において、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替える制御を行わないように構成されている、方位角姿勢角計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記2次側制御回路により前記振動子の2次振動を検出した角速度の検出結果と、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替えて、前記1次側制御回路により前記振動子の2次振動を検出した角速度の検出結果と、に基づいて、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサにより検出する角速度のバイアス成分をキャンセルする演算を行うように構成されている、請求項1に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替える前後の所定期間は、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出を中断するように構成されている、請求項2に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの一方における、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替える前後の所定期間において、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの他方における、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替える制御を行うように構成されている、請求項3に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサにおける、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替えるタイミングを略同時にするように構成されている、請求項4に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項6】
振動子を含み、前記第1軸線回りの角速度を検出する第3角速度センサをさらに備え、
前記電源部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサに加えて、前記第3角速度センサに電力を供給するように構成されており、
前記制御部は、前記第3角速度センサにおいて、演算に用いるための角速度を検出している場合に、前記第1角速度センサにおいて、前記1次側制御回路と前記2次側制御回路との機能を入れ替える制御を行わないように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項7】
第1軸線回りの角速度を検出する第1角速度センサと、
前記第1軸線とは異なる方向の第2軸線回りの角速度を検出する第2角速度センサと、
前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサに電力を供給する電源部と、
制御部と、を備え、
前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサは、
振動子と、
閉じた制御ループを有し、前記閉じた制御ループの出力が前記振動子に1次振動を誘起させる1次側制御回路と、
前記振動子に印加される角速度に起因して前記振動子に発生する2次振動を検出する閉じた制御ループを有する2次側制御回路と、を各々含み、
前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替え可能に構成されており、
前記制御部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの一方において、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの他方において、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替える制御を行わないように構成されている、方位角姿勢角計測装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記振動子の前記2次振動を検出した角速度の検出結果と、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替えて前記振動子の前記2次振動を検出した角速度の検出結果と、に基づいて、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサにより検出する角速度のバイアス成分をキャンセルする演算を行うように構成されている、請求項7に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替える前後の所定期間は、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出を中断するように構成されている、請求項8に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの一方における、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替える前後の所定期間において、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサのうちの他方における、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替える制御を行うように構成されている、請求項7~9のいずれか1項に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサにおける、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替えるタイミングを略同時にするように構成されている、請求項10に記載の方位角姿勢角計測装置。
【請求項12】
振動子を含み、前記第1軸線回りの角速度を検出する第3角速度センサをさらに備え、
前記電源部は、前記第1角速度センサおよび前記第2角速度センサに加えて、前記第3角速度センサに電力を供給するように構成されており、
前記制御部は、前記第3角速度センサにおいて、演算に用いるための角速度を検出している場合に、前記第1角速度センサにおいて、前記1次振動を誘起する機能と前記2次振動を検出する機能とを入れ替える制御を行わないように構成されている、請求項7~11のいずれか1項に記載の方位角姿勢角計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、方位角姿勢角計測装置に関し、特に、複数の角速度センサを備える方位角姿勢角計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の角速度センサを備える方位角姿勢角計測装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数の角速度センサを備える電子機器(方位角姿勢角計測装置)が開示されている。この電子機器の角速度センサは、リング状のエレメント部と、リング状のエレメント部の径方向外側でかつ周状に複数の電極とが配置されている。複数の電極は、一次電極と二次電極とを含む。一次電極と二次電極とのうちの一方には、一次電極と二次電極とのうちの一方に交流電圧を印加することにより、リング状のエレメント部に一次振動を発生させる交流電源が接続されている。また、一次電極と二次電極とのうちの他方には、一次電極と二次電極とのうちの他方に発生する電気信号の大きさを検出する検出手段が接続されている。そして、リング状のエレメント部に一次振動が発生している状態で、エレメント部の法線方向回りに回転運動が発生すると、回転運動の角速度に応じた二次振動がエレメント部に発生する。そして、一次電極と二次電極とのうちの他方に接続されている検出手段によって、二次振動に起因して一次電極と二次電極とのうちの他方に発生する電気信号の大きさが検出される。また、検出された電気信号の大きさに基づいて、二次振動を打ち消すための交流電圧が一次電極と二次電極とのうちの一方に印加される。そして、二次振動を打ち消すための交流電圧の大きさに基づいて角速度の大きさが演算される。
【0004】
また、上記特許文献1に記載のような従来の角速度センサでは、角速度センサが検出する角速度にはバイアス成分が含まれている。バイアス成分は、角速度センサに含まれるジャイロ素子の非対称性などに起因して生じる。そこで、上記特許文献1のような従来の角速度センサは、交流電源が接続されている電極(一次電極と二次電極とのうちの一方)と、検出手段が接続されている電極(一次電極と二次電極とのうちの他方)とを切り替え、切り替えられた前後の角速度センサの出力を差分することにより、バイアス成分をキャンセルするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-115559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のような従来の角速度センサでは、交流電源が接続されている電極(一次電極と二次電極とのうちの一方)と、検出手段が接続されている電極(一次電極と二次電極とのうちの他方)とを切り替え、切り替えられた前後の角速度センサの出力を差分することにより、バイアス成分をキャンセルする。このため、複数の角速度センサを備える方位角姿勢角計測装置では、1つの角速度センサのバイアス成分をキャンセルするために、交流電源が接続されている電極(一次電極と二次電極とのうちの一方)と、検出手段が接続されている電極(一次電極と二次電極とのうちの他方)とを切り替えた場合に、交流電源の電力変動が生じる。この場合、共通の交流電源に接続された他の角速度センサは、交流電源の電力変動に起因して、角速度を精度よく検出することが困難である。そこで、複数の角速度センサの各々において、角速度を精度よく検出することが可能な振動型角速度センサが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、共通の電源部に接続された複数の角速度センサの各々において、角速度を精度よく検出することが可能な振動型角速度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による方位角姿勢角計測装置は、第1軸線回りの角速度を検出する第1角速度センサと、第1軸線とは異なる方向の第2軸線回りの角速度を検出する第2角速度センサと、第1角速度センサおよび第2角速度センサに電力を供給する電源部と、制御部と、を備え、第1角速度センサおよび第2角速度センサは、振動子と、閉じた制御ループを有し、閉じた制御ループの出力が振動子に1次振動を誘起させる1次側制御回路と、振動子に印加される角速度に起因して振動子に発生する2次振動を検出する閉じた制御ループを有する2次側制御回路と、を各々含み、1次側制御回路と2次側制御回路とは、1次側制御回路としての機能と、2次側制御回路としての機能とを入れ替え可能に構成されており、制御部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの一方において、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの他方において、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える制御を行わないように構成されている。
【0009】
この発明の第1の局面による方位角姿勢角計測装置は、上記のように、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの一方において、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの他方において、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える制御を行わないように構成された制御部を設ける。これにより、第1角速度センサおよび第2角速度センサの一方において演算に用いるための角速度を検出している場合に、第1角速度センサおよび第2角速度センサの他方において1次側制御回路と2次側制御回路との機能が入れ替わることがないので、共通に設けられた電源部の電力が、1次側制御回路と2次側制御回路との機能が入れ替えにより変動することがない。その結果、第1角速度センサおよび第2角速度センサの一方に、電源部から安定して電力が供給されるので、演算に用いるための角速度を精度よく検出することができる。これにより、共通の電源部に接続された複数の角速度センサの各々において、角速度を精度よく検出することができる。
【0010】
上記第1の局面による方位角姿勢角計測装置において、好ましくは、制御部は、2次側制御回路により振動子の2次振動を検出した角速度の検出結果と、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替えて、1次側制御回路により振動子の2次振動を検出した角速度の検出結果と、に基づいて、第1角速度センサおよび第2角速度センサにより検出する角速度のバイアス成分をキャンセルする演算を行うように構成されている。このように構成すれば、電源部から安定して電力が供給された状態で検出した角速度に基づいて、第1角速度センサおよび第2角速度センサにより検出する角速度のバイアス成分を精度よく算出することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部は、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える前後の所定期間は、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出を中断するように構成されている。このように構成すれば、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替えに起因する電源部の電力の変動が発生する期間において、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出が中断されるので、バイアス成分をキャンセルする演算に用いるための角速度の検出精度が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0012】
上記1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える前後の所定期間は、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出を中断する構成において、好ましくは、制御部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの一方における、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える前後の所定期間において、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの他方における、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第1角速度センサの1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替えるタイミングと、第2角速度センサの1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替えるタイミングとを、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出が中断される所定期間に行うことができる。これにより、第1角速度センサおよび第2角速度センサの両方において並行して角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出をする場合に、演算に用いるための角速度を各々精度よく検出することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサにおける、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替えるタイミングを略同時にするように構成されている。このように構成すれば、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出が中断される所定期間を最小限にすることができるので、バイアス成分をキャンセルするための角速度の検出のための時間が長くなるのを抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による方位角姿勢角計測装置において、好ましくは、振動子を含み、第1軸線回りの角速度を検出する第3角速度センサをさらに備え、電源部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサに加えて、第3角速度センサに電力を供給するように構成されており、制御部は、第3角速度センサにおいて、演算に用いるための角速度を検出している場合に、第1角速度センサにおいて、1次側制御回路と2次側制御回路との機能を入れ替える制御を行わないように構成されている。このように構成すれば、同じ第1軸線回りの角速度を検出する第1角速度センサおよび第3角速度センサを設けた構成において、演算に用いるための角速度を第3角速度センサにおいても精度よく検出することができる。
【0015】
この発明の第2の局面による方位角姿勢角計測装置は、第1軸線回りの角速度を検出する第1角速度センサと、第1軸線とは異なる方向の第2軸線回りの角速度を検出する第2角速度センサと、第1角速度センサおよび第2角速度センサに電力を供給する電源部と、制御部と、を備え、第1角速度センサおよび第2角速度センサは、振動子と、閉じた制御ループを有し、閉じた制御ループの出力が振動子に1次振動を誘起させる1次側制御回路と、振動子に印加される角速度に起因して振動子に発生する2次振動を検出する閉じた制御ループを有する2次側制御回路と、を各々含み、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替え可能に構成されており、制御部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの一方において、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの他方において、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替える制御を行わないように構成されている。
上記第2の局面による方位角姿勢角計測装置において、好ましくは、制御部は、振動子の2次振動を検出した角速度の検出結果と、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替えて振動子の2次振動を検出した角速度の検出結果と、に基づいて、第1角速度センサおよび第2角速度センサにより検出する角速度のバイアス成分をキャンセルする演算を行うように構成されている。
この場合、好ましくは、制御部は、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替える前後の所定期間は、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出を中断するように構成されている。
上記第2の局面による方位角姿勢角計測装置において、好ましくは、制御部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの一方における、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替える前後の所定期間において、第1角速度センサおよび第2角速度センサのうちの他方における、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替える制御を行うように構成されている。
この場合、好ましくは、制御部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサにおける、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替えるタイミングを略同時にするように構成されている。
上記第2の局面による方位角姿勢角計測装置において、好ましくは、振動子を含み、第1軸線回りの角速度を検出する第3角速度センサをさらに備え、電源部は、第1角速度センサおよび第2角速度センサに加えて、第3角速度センサに電力を供給するように構成されており、制御部は、第3角速度センサにおいて、演算に用いるための角速度を検出している場合に、第1角速度センサにおいて、1次振動を誘起する機能と2次振動を検出する機能とを入れ替える制御を行わないように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、共通の電源部に接続された複数の角速度センサの各々において、角速度を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態による方位角姿勢角計測装置の構成を示したブロック図である。
図2】第1実施形態による方位角姿勢角計測装置の複数の角速度センサを示した斜視図である。
図3】第1実施形態による角速度センサの回路構成を示したブロック図である。
図4】第1実施形態による複数の角速度センサの1次側制御回路の機能と2次側制御回路の機能との入れ替えタイミングを説明するための図である。
図5】第2実施形態による方位角姿勢角計測装置の構成を示したブロック図である。
図6】第2実施形態による方位角姿勢角計測装置の複数の角速度センサを示した斜視図である。
図7】第2実施形態による角速度センサのバイアスの算出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1図4を参照して、第1実施形態による方位角姿勢角計測装置100の構成について説明する。
【0020】
方位角姿勢角計測装置100は、方位角および姿勢角を検出するように構成されている。具体的には、方位角姿勢角計測装置100は、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸周りの角速度をそれぞれ検出して、検出した角速度に基づいて、3次元的な方位角および姿勢角を検出するように構成されている。
【0021】
方位角姿勢角計測装置100は、図1に示すように、制御部101と、電源部102と、角速度センサ103と、角速度センサ104と、角速度センサ105と、を備えている。角速度センサ103、角速度センサ104および角速度センサ105は、互いに交差する軸線回りの角速度を検出するように構成されている。具体的には、図2に示すように、角速度センサ103は、X軸周りの角速度を検出するように構成されている。また、角速度センサ104は、Y軸周りの角速度を検出するように構成されている。また、角速度センサ105は、Z軸周りの角速度を検出するように構成されている。つまり、角速度センサ103、角速度センサ104および角速度センサ105は、互いに直交する軸線回りの角速度を検出するように構成されている。なお、角速度センサ103は、特許請求の範囲の「第1角速度センサ」の一例である。また、角速度センサ104は、特許請求の範囲の「第2角速度センサ」の一例である。また、角速度センサ105は、特許請求の範囲の「第2角速度センサ」の一例である。
【0022】
制御部101は、方位角姿勢角計測装置100の各部を制御するように構成されている。制御部101は、CPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)と、メモリとを含んでいる。
【0023】
電源部102は、方位角姿勢角計測装置100の各部に電力を供給するように構成されている。具体的には、電源部102は、角速度センサ103、104および105に電力を供給するように構成されている。また、電源部102は、角速度センサ103、104および105に交流電力を供給するように構成されている。電源部102は、外部の電力源または方位角姿勢角計測装置100に設けられたバッテリから電力が供給されるように構成されている。たとえば、電源部102は、供給された電力を変換する電力変換回路である。電源部102は、スイッチング素子、コンデンサ、ダイオードなどを有している。
【0024】
図1に示すように、角速度センサ103、104および105の各々は、振動子11と、閉じた制御ループを有し、閉じた制御ループの出力が振動子11に1次振動を誘起させる1次側制御回路12と、振動子11に印加される角速度に起因して振動子11に発生する2次振動を検出する閉じた制御ループを有する2次側制御回路13と、を含んでいる。振動子11は、リング型の振動子を含んでいる。
【0025】
図3に示すように、角速度センサ103(104、105)の1次側制御回路12は、増幅回路21と、同期検波回路22と、ループフィルタ23と、変調回路24と、駆動回路25と、PLL(Phase Locked Loop)回路(位相同期回路)26と、基準信号生成回路27とを含んでいる。そして、振動子11、増幅回路21、同期検波回路22、ループフィルタ23、変調回路24および駆動回路25が、この順で接続されており、閉じた制御ループを構成している。ループフィルタ23は、たとえば積分フィルタを含んでいる。なお、図3では、角速度センサ103の構成について示しているが、角速度センサ104および105も同様の構成である。
【0026】
角速度センサ103(104、105)の2次側制御回路13は、増幅回路31と、同期検波回路32と、加算回路33と、ループフィルタ34と、変調回路35と、駆動回路36と、増幅回路37とを含んでいる。そして、振動子11、増幅回路31、同期検波回路32、加算回路33、ループフィルタ34、変調回路35および駆動回路36が、この順で接続されており、閉じた制御ループを構成している。加算回路33は、オペアンプを用いた一般的な加減算回路により構成されている。また、ループフィルタ34は、たとえば積分フィルタを含んでいる。また、ループフィルタ34の出力が、増幅回路37に入力される。そして、増幅回路37から出力された信号が、角速度センサ103(104、105)のセンサ出力として、出力される。
【0027】
ここで、本実施形態では、角速度センサ103(104、105)の1次側制御回路12と2次側制御回路13とは、1次側制御回路12としての機能と、2次側制御回路13としての機能を入れ替え可能に構成されている。具体的には、1次側制御回路12において、振動子11に対する信号の入力側にスイッチ41、および、振動子11に対する信号の出力側(増幅回路21の出力側)にスイッチ42が設けられている。また、2次側制御回路13において、振動子11に対する信号の入力側にスイッチ43、および、振動子11に対する信号の出力側(増幅回路31の出力側)にスイッチ44が設けられている。スイッチ41、スイッチ42、スイッチ43、および、スイッチ44は、各々、1次側制御回路12に接続される状態と、2次側制御回路13に接続される状態とを切り替え可能に構成されている。
【0028】
図3では、スイッチ41およびスイッチ42は、1次側制御回路12に接続された状態を示しており、スイッチ43およびスイッチ44は、2次側制御回路13に接続された状態を示している。また、スイッチ41およびスイッチ42が、2次側制御回路13に接続されるように切り替えられ、スイッチ43およびスイッチ44が、1次側制御回路12に接続されるように切り替えられることにより、1次側制御回路12としての機能と、2次側制御回路13としての機能とが互いに入れ替えられる。
【0029】
また、角速度センサ103(104、105)には、1次側制御回路12からの出力(ループフィルタ23からの出力)が入力される加減算量調整回路14が設けられている。加減算量調整回路14は、温度に依存する1次側制御回路12のループフィルタ23の出力の大きさを調整して、調整した出力(第1オフセット値)を、2次側制御回路13の加算回路33に入力するように構成されている。たとえば、加減算量調整回路14において、ポテンショメータ(ボリューム抵抗)などを用いて分圧することにより、第1オフセット値の加算量の調整が行われる。
【0030】
また、角速度センサ103(104、105)には、温度に依存しない一定の信号S1が入力される加減算量調整回路15が設けられている。加減算量調整回路15は、一定の信号S1の大きさを調整して、調整した一定の信号S1(第2オフセット値)を、2次側制御回路13の加算回路33に入力するように構成されている。たとえば、加減算量調整回路15において、ポテンショメータ(ボリューム抵抗)などを用いて分圧することにより、一定の信号S1の加算量の調整が行われる。
【0031】
ここで、第1実施形態では、制御部101は、角速度センサ103~105のうちのいずれかにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、角速度センサ103~105のうちの他の角速度センサにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える制御を行わないように構成されている。
【0032】
ここで、角速度センサ103(104、105)は、電源部102から電力が供給されて駆動されている場合には、常に角速度を検出し、検出した角速度に基づく信号を出力している。制御部101は、角速度センサ103(104、105)から出力される信号に基づいて、姿勢角、方位角を演算するように構成されている。また、制御部101は、角速度センサ103(104、105)から出力される信号に基づいて、角速度センサ103(104、105)のバイアス成分を算出する演算を行うように構成されている。制御部101は、角速度センサ103~105において、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えている場合に、他の角速度センサ103~105において検出した角速度を演算に用いない。
【0033】
また、制御部101は、角速度センサ103(104、105)の2次側制御回路13により振動子11の2次振動を検出した角速度の検出結果と、角速度センサ103(104、105)の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えて、1次側制御回路12により振動子11の2次振動を検出した角速度の検出結果と、に基づいて、角速度センサ103(104、105)のにより検出する角速度のバイアス成分をキャンセルする演算を行うように構成されている。
【0034】
具体的には、制御部101は、図4(A)の時間t1から時間t2の期間において、角速度センサ103の2次側制御回路13により振動子11の2次振動を検出した角速度を検出(取得)する。また、制御部101は、図4(A)の時間t4から時間t5の期間において、角速度センサ103の1次側制御回路12により振動子11の2次振動を検出した角速度を検出(取得)する。そして、制御部101は、時間t1から時間t2の期間において取得した角速度と、時間t4から時間t5の期間において取得した角速度と、に基づいて、角速度センサ103のバイアス成分を算出する。
【0035】
また、制御部101は、図4(B)の時間t11から時間t12の期間において、角速度センサ104の2次側制御回路13により振動子11の2次振動を検出した角速度を演算のために取得する。また、制御部101は、図4(B)の時間t14から時間t15の期間において、角速度センサ104の1次側制御回路12により振動子11の2次振動を検出した角速度を演算のために取得する。そして、制御部101は、時間t11から時間t12の期間において取得した角速度と、時間t14から時間t15の期間において取得した角速度と、に基づいて、角速度センサ104のバイアス成分を算出(演算)する。
【0036】
また、制御部101は、図4(C)の時間t21から時間t22の期間において、角速度センサ105の2次側制御回路13により振動子11の2次振動を検出した角速度を演算のために取得する。また、制御部101は、図4(C)の時間t24から時間t25の期間において、角速度センサ105の1次側制御回路12により振動子11の2次振動を検出した角速度を演算のために取得する。そして、制御部101は、時間t21から時間t22の期間において取得した角速度と、時間t24から時間t25の期間において取得した角速度と、に基づいて、角速度センサ105のバイアス成分を算出(演算)する。
【0037】
また、制御部101は、角速度センサ103(104、105)の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える前後の所定期間は、角速度センサ103(104、105)の角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出を中断するように構成されている。具体的には、図4(A)の角速度センサ103の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミング(時間t3)の前後の所定期間(時間t2から時間t4の期間)において、制御部101は、角速度センサ104、105の角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出(演算のための取得)を中断する。また、図4(B)の角速度センサ103の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミング(時間t13)の前後の所定期間(時間t12から時間t14の期間)において、制御部101は、角速度センサ103、105の角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出(演算のための取得)を中断する。また、図4(C)の角速度センサ105の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミング(時間t23)の前後の所定期間(時間t22から時間t24の期間)において、制御部101は、角速度センサ103、104の角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出(演算のための取得)を中断する。
【0038】
また、制御部101は、角速度センサ103~105のうちいずれかにおける、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える前後の所定期間において、他の角速度センサ103~105における、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える制御を行うように構成されている。具体的には、制御部101は、図4(A)の角速度センサ103の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミング(時間t3)の前後の所定期間(時間t2から時間t4の期間)において、角速度センサ104および105の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える。また、制御部101は、図4(B)の角速度センサ104の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミング(時間t13)の前後の所定期間(時間t12から時間t14の期間)において、角速度センサ103および105の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える。また、制御部101は、図4(C)の角速度センサ105の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミング(時間t23)の前後の所定期間(時間t22から時間t24の期間)において、角速度センサ103および104の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える。
【0039】
好ましくは、制御部101は、角速度センサ103、104および105における、1次側制御回路12と2次側制御回路13と機能を入れ替えるタイミングを略同時するように構成されている。つまり、制御部101は、図4(A)の時間t3と、図4(B)の時間t13と、図4(C)の時間t23とを同じタイミングとして、角速度センサ103、104および105における、1次側制御回路12と2次側制御回路13と機能を入れ替える。
【0040】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0041】
第1実施形態では、上記のように、角速度センサ103~105のうちのいずれかにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、角速度センサ103~105のうちの他の角速度センサにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える制御を行わないように構成された制御部を設ける。これにより、角速度センサ103~105のいずれかにおいて演算に用いるための角速度を検出している場合に、他の角速度センサ103~105において1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能が入れ替わることがないので、共通に設けられた電源部102の電力が、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能が入れ替えにより変動することがない。その結果、角速度センサ103~105に、電源部102から安定して電力が供給されるので、演算に用いるための角速度を精度よく検出することができる。これにより、共通の電源部102に接続された複数の角速度センサ103~105の各々において、角速度を精度よく検出することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部101を、2次側制御回路13により振動子11の2次振動を検出した角速度の検出結果と、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えて、1次側制御回路12により振動子11の2次振動を検出した角速度の検出結果と、に基づいて、角速度センサ103~105により検出する角速度のバイアス成分をキャンセルする演算を行うように構成する。これにより、電源部102から安定して電力が供給された状態で検出した角速度に基づいて、角速度センサ103~105により検出する角速度のバイアス成分を精度よく算出することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部101を、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える前後の所定期間は、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出を中断するように構成する。これにより、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えに起因する電源部102の電力の変動が発生する期間において、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出が中断されるので、バイアス成分をキャンセルする演算に用いるための角速度の検出精度が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部101を、角速度センサ103~105のうちいずれかにおける、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える前後の所定期間において、他の角速度センサ103~105における、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える制御を行うように構成する。これにより、角速度センサ103~105の1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミングを、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出が中断される所定期間に行うことができる。これにより、角速度センサ103~105のうち複数において並行して角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出をする場合に、演算に用いるための角速度を各々精度よく検出することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部101を、角速度センサ103~105における、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えるタイミングを略同時にするように構成する。これにより、角速度のバイアス成分をキャンセルするための角速度の検出が中断される所定期間を最小限にすることができるので、バイアス成分をキャンセルするための角速度の検出のための時間が長くなるのを抑制することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、振動子11は、リング型の振動子を含む。ここで、リング型の振動子は、対称的な形状を有するので、1次側制御回路12による振動モードと、2次側制御回路13による振動モードとが類似する。これにより、リング型の振動子11を含む角速度センサ103~105の振動モードの差異の影響を考慮する必要がない。
【0047】
(第2実施形態)
次に、図5図7を参照して、第2実施形態による方位角姿勢角計測装置200の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、同軸の角速度を検出するために複数の角速度センサが設けられている構成の例について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0048】
方位角姿勢角計測装置200は、図5に示すように、制御部101と、電源部102と、角速度センサ103aと、角速度センサ103bと、角速度センサ104a、角速度センサ104bと、角速度センサ105aと、角速度センサ105bと、を備えている。角速度センサ103aおよび103bと、角速度センサ104aおよび104bと、角速度センサ105aおよび105bとは、互いに交差する軸線回りの角速度を検出するように構成されている。また、角速度センサ103aおよび103bは、互いに平行または同軸の軸線回りの角速度を検出するように構成されている。また、角速度センサ104aおよび104bは、互いに平行または同軸の軸線回りの角速度を検出するように構成されている。また、角速度センサ105aおよび105bは、互いに平行または同軸の軸線回りの角速度を検出するように構成されている。
【0049】
具体的には、図6に示すように、角速度センサ103aおよび103bは、X軸周りの角速度を検出するように構成されている。また、角速度センサ104aおよび104bは、Y軸周りの角速度を検出するように構成されている。また、角速度センサ105aおよび105bは、Z軸周りの角速度を検出するように構成されている。角速度センサ103aおよび103bは、互いに隣接して配置されている。また、角速度センサ104aおよび104bは、互いに隣接して配置されている。また、角速度センサ105aおよび105bは、互いに隣接して配置されている。なお、角速度センサ103aは、特許請求の範囲の「第1角速度センサ」の一例である。また、角速度センサ103bは、特許請求の範囲の「第3角速度センサ」の一例である。また、角速度センサ104aは、特許請求の範囲の「第2角速度センサ」の一例である。また、角速度センサ105aは、特許請求の範囲の「第2角速度センサ」の一例である。
【0050】
電源部102は、角速度センサ103a、103b、104a、104b、105aおよび105bに電力を供給するように構成されている。また、電源部102は、角速度センサ103a、103b、104a、104b、105aおよび105bに交流電力を供給するように構成されている。
【0051】
ここで、第2実施形態では、制御部101は、角速度センサ103a、103b、104a、104b、105aおよび105bのうちのいずれかにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える前後で演算に用いるための角速度を検出している場合に、角速度センサ103a、103b、104a、104b、105aおよび105bのうちの他の角速度センサにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える制御を行わないように構成されている。
【0052】
また、制御部101は、角速度センサ103bにおいて、演算に用いるための角速度を検出している場合に、角速度センサ103aにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える制御を行わないように構成されている。
【0053】
また、第2実施形態では、制御部101は、角速度センサ103aにより、所定期間において、2次側制御回路13により振動子11の2次振動に基づく角速度を検出する処理と、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替えて、1次側制御回路12により振動子11の2次振動に基づく角速度を検出する処理と、を行う制御をするように構成されている。具体的には、図7(C)に示すように、時間t31から時間t32まで、および、時間t34から時間t35までの所定期間において、角速度センサ103aの2次側制御回路13により振動子11の2次振動に基づく角速度を検出する処理と、角速度センサ103aの1次側制御回路12により振動子11の2次振動に基づく角速度を検出する処理と、が行われる。
【0054】
また、制御部101は、角速度センサ103bにより、所定期間において、角速度を検出する処理を行う制御をするように構成されている。具体的には、図7(B)に示すように、時間t31から時間t32まで、および、時間t34から時間t35までの所定期間において、角速度センサ103bの2次側制御回路13により振動子11の2次振動に基づく角速度を検出する処理が行われる。
【0055】
また、制御部101は、所定期間において角速度センサ103bにより検出した第1検出結果と、所定期間において角速度センサ103aにより検出した第2検出結果とに基づいて、角速度センサ103bのバイアス成分(B1(t))を算出するように構成されている。
【0056】
また、制御部101は、所定期間において角速度センサ103bにより検出した第1検出結果の値から、所定期間において角速度センサ103aにより検出した第2検出結果の値を減じることにより、角速度センサ103bのバイアス成分を算出するように構成されている。
【0057】
なお、所定期間は、2次側制御回路13により振動子11の2次振動に基づく角速度を検出する処理を行う第1期間(時間t31から時間t32までの期間)と、1次側制御回路12により振動子11の2次振動に基づく角速度を検出する処理を行う第2期間(時間t34から時間t35までの期間)とを含んでいる。また、第1期間および第2期間は、同じ長さの時間である。図7に示すように、第1期間および第2期間は、各々時間Tの長さを有している。
【0058】
また、第1検出結果は、所定期間において角速度センサ103bにより検出した角速度の積分値である。また、第2検出結果は、所定期間において角速度センサ103aにより検出した角速度の積分値である。
【0059】
また、所定期間は、角速度センサ103aのバイアス成分が略一定である期間である。たとえば、所定期間は、数秒から数十秒程度の長さを有している。また、所定期間は、温度変化の影響が無視でき、角速度センサ103aのバイアス成分が略変わらないと仮定できる期間である。
【0060】
図7(B)に示す、所定期間(時間t31から時間t32までの第1期間、および、時間t34から時間t35までの第2期間)における第1検出結果の積分値I1は、式(1)のように表される。
【数1】
【0061】
ただし、角速度センサ103bの2次側制御回路13により検出した角速度ω1(t)は、図7(A)に示す運動(移動)により生じる角速度(真の角速度)ω0(t)および角速度センサ103bのバイアスB1(t)を用いて、式(2)のように表される。
【数2】
【0062】
したがって、式(1)は、式(3)のように導出される。
【数3】
【0063】
また、図7(C)に示す、所定期間(時間t31から時間t32までの第1期間、および、時間t34から時間t35までの第2期間)における第2検出結果の積分値I2は、式(4)のように表される。
【数4】
なお、時間t34から時間t35までの第2期間は、ω2(t)がバイアス成分に対して反転されることを考慮して、積分値を減算している。
【0064】
角速度センサ103aの2次側制御回路13により検出した角速度ω2(t)および1次側制御回路12により検出した角速度ω2(t)は、図7(A)に示す運動(移動)により生じる角速度(真の角速度)ω0(t)および角速度センサ103aのバイアスB2(t)を用いて、それぞれ、式(5)および式(6)のように表される。
【数5】
なお、時間t34から時間t35までの第2期間の式(6)では、ω0(t)がバイアス成分に対して反転されるため、マイナスがかけられる。
【0065】
したがって、式(4)は、式(7)のように導出される。
【数6】
【0066】
第1検出結果の積分値I1から第2検出結果の積分値I2を減じると、式(8)のように導出される。
【数7】
【0067】
ここで、時間t31から時間t32までの第1期間、および、時間t34から時間t35までの第2期間において、角速度センサ103bのバイアスB1(t)と、角速度センサ103aのバイアスB2(t)とは、各々、時間的な変化量が無視できるので(一定であるので)、式(9)および式(10)が成り立つと仮定できる。
【数8】
ただし、B1は、第1期間および第2期間における角速度センサ103bのバイアス値であり、B2は、第1期間および第2期間における角速度センサ103aのバイアス値である。
【0068】
したがって、式(8)から、式(11)が導出される。
【数9】
【0069】
Tは、既知であるため、(I1―I2)を2Tで除算することにより、角速度センサ103bのバイアス値B1が算出される。算出したバイアス値B1を、角速度センサ103bによる角速度検出に用いる。たとえば、カルマンフィルタの観測更新として利用する。
【0070】
なお、角速度センサ103aの1次側制御回路12としての機能と、2次側制御回路13としての機能とを入れ替える制御を行い、バイアス値B1を算出するための角速度の測定を行う期間中に式(9)および式(10)の関係が成立していればよい。このため、たとえば、次の処理の開始点となる時間t36までの時間間隔(t36-t35)が大きく、B1が変化した場合でも、同様に、次の時間t36からの処理により補正可能である。ただし、常に、B1の変化が小さくするために、時間間隔(t36-t35)を十分に小さくすることが好ましい。
【0071】
ここで、角速度センサ103aの1次側制御回路12としての機能と、2次側制御回路13としての機能とを入れ替える制御を行い、バイアス値B1を算出するための角速度の測定を行う期間中に式(10)の関係が成立しない場合がある。つまり、式(12)となる場合がある。
【数10】
この場合でも、動作開始時(移動開始時)に、αを加味しておき、2つの角速度センサ103bおよび角速度センサ103aを使用して、相互にバイアス成分を補正することにより、バイアス成分(B2(t))の時間変化にも対応することが可能である。
【0072】
つまり、制御部101は、第1の所定期間において角速度センサ103bにより検出した第1検出結果と、第1の所定期間において角速度センサ103aにより検出した第2検出結果とに基づいて、角速度センサ103bのバイアス成分を算出する。また、制御部101は、第2の所定期間において角速度センサ103aにより検出した角速度と、角速度センサ103bのバイアス成分とを用いて、角速度センサ103aのバイアス成分を算出する。そして、制御部101は、これらの制御を交互に繰り返す。つまり、最初のバイアス成分の算出により、角速度センサ103bのバイアス成分であるB1を補正する。次のサイクルにおいて、補正したB1を用いて、角速度センサ103aのバイアス成分であるB2のαを算出する。そして、さらに次のサイクルにおいて、補正したαを用いて、角速度センサ103bのバイアス成分であるB1を補正する。以降は、これらの処理を交互に繰り返す。
【0073】
なお、動作開始時の移動開始前において、静止させた状態(角速度ω0(t)が一定の状態)において、αを求めて、以降、上記のようにして順次α(t)を補正してもよい。
【0074】
また、角速度センサ104aおよび104bのバイアス成分の算出およびキャンセルを行う処理についても、上記角速度センサ103aおよび103bのバイアス成分の算出およびキャンセルを行う処理と同様である。また、角速度センサ105aおよび105bのバイアス成分の算出およびキャンセルを行う処理についても、上記角速度センサ103aおよび103bのバイアス成分の算出およびキャンセルを行う処理と同様である。
【0075】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0076】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、角速度センサ103a、103b、104a、104b、105aおよび105bに、電源部102から安定して電力が供給されるので、演算に用いるための角速度を精度よく検出することができる。これにより、共通の電源部102に接続された複数の角速度センサ103a、103b、104a、104b、105aおよび105bの各々において、角速度を精度よく検出することができる。
【0077】
また、第2実施形態では、上記のように、制御部101は、角速度センサ103bにおいて、演算に用いるための角速度を検出している場合に、角速度センサ103aにおいて、1次側制御回路12と2次側制御回路13との機能を入れ替える制御を行わないように構成する。これにより、同じ軸線回りの角速度を検出する角速度センサ103aおよび角速度センサ103bを設けた構成において、演算に用いるための角速度を角速度センサ103bにおいても精度よく検出することができる。
【0078】
また、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0079】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、リング型の振動子が用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、振動子が対称的な形状を有していればよく、円盤型、カップ型(ワイングラス型)、八角形型、などの振動子を用いてもよい。
【0081】
また、上記第1および第2実施形態では、振動子、増幅回路、同期検波回路、ループフィルタ、変調回路および駆動回路により閉じた制御ループが構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、増幅回路、同期検波回路、ループフィルタ、変調回路および駆動回路からなる構成以外の構成により制御ループが構成されていてもよい。
【0082】
また、上記第1および第2実施形態では、ループフィルタとして積分フィルタが用いられる例を示したが、たとえば、積分フィルタ以外のループフィルタを用いてもよい。
【0083】
また、上記第2実施形態では、角速度センサ103a(104a、105a)(第1角速度センサ)と平行な軸線回りの角速度を検出する角速度センサ103b(104b、105b)(第3角速度センサ)も、角速度センサ103a(104a、105a)(第1角速度センサ)と同様に、1次側制御回路の機能と、2次側制御回路の機能とが入れ替え可能である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3角速度センサの1次側制御回路の機能と、2次側制御回路の機能とが固定されていてもよい(入れ替えられなくてもよい)。
【0084】
また、上記第1および第2実施形態では、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸の3軸の軸線回りの角速度を検出する複数の角速度センサを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、互いに異なる方向の2軸の軸線回りの角速度を検出する複数の角速度センサを設けてもよい。また、互いに異なる方向の4軸の軸線回りの角速度を検出する複数の角速度センサを設けてもよい。また、複数の角速度センサが検出する角速度の軸線は、互いに直交ではない異なる方向であってもよい。
【0085】
また、上記第2実施形態では、平行な軸線回りの角速度を検出する角速度センサを2つずつ設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、平行な軸線回りの角速度を検出する角速度センサを3つ以上設けてもよいし、一部の軸線回りについて、角速度センサを複数設け、他の軸線回りについて、角速度センサを1つ設けてもよい。
【符号の説明】
【0086】
11 振動子
12 1次側制御回路
13 2次側制御回路
100 方位角姿勢角計測装置
101 制御部
102 電源部
103、103a 角速度センサ(第1角速度センサ)
103b 角速度センサ(第3角速度センサ)
104、104a 角速度センサ(第2角速度センサ)
105、105a 角速度センサ(第2角速度センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7