IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20231218BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20231218BHJP
   C08G 59/44 20060101ALI20231218BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08G59/18
C08G59/62
C08G59/44
C08G59/50
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020055058
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021155508
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真典
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第04106665(DE,A1)
【文献】特開平07-053677(JP,A)
【文献】特開2003-301029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含み、
前記成分(B)が、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、潜在性硬化剤及びイミダゾール系硬化剤からなる群より選ばれる一つ以上である、
エポキシ樹脂組成物(ただし、アルキレン1,2-カーボネートを含む態様を除く)。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)下記式(1)で示される化合物
【化1】
{式(1)中、R1は、ヒドロキシル基であり、R2、R3及びR4は、水素であり、R5~R9は、それぞれ、水素、アルキル基、芳香族基、ヘテロ原子を含む置換基、及びハロゲン原子を含む置換基からなる群から選ばれる一種である。R 5 ~R9は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、R5~R9から選ばれるいずれかが同一環に存在する縮合環化合物でもよい。}
【請求項2】
前記成分(B)が固体の硬化剤を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(B)として、活性水素を4つ以上含む化合物を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(B)が、イミダゾール系硬化剤を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(B)が、マイクロカプセル型硬化剤を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
成分(D)として、硬化促進剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
下記成分(A)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含むエポキシ樹脂組成物の製造方法であって、成分(A)及び成分(B)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含み、
前記成分(B)が、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、潜在性硬化剤及びイミダゾール系硬化剤からなる群より選ばれる一つ以上である、
エポキシ樹脂組成物(ただし、アルキレン1,2-カーボネートを含む態様を除く)の製造方法。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)下記式(1)で示される化合物
【化2】
{式(1)中、R1は、ヒドロキシル基であり、R2、R3及びR4は、水素であり、R5~R9は、それぞれ、水素、アルキル基、芳香族基、ヘテロ原子を含む置換基、及びハロゲン原子を含む置換基からなる群から選ばれる一種である。R 5 ~R9は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、R5~R9から選ばれるいずれかが同一環に存在する縮合環化合物でもよい。}
【請求項8】
エポキシ樹脂組成物がさらに下記成分(D)を含み、
成分(A)、成分(B)、及び成分(D)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含む、請求項に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
(D)硬化促進剤
【請求項9】
エポキシ樹脂組成物がさらに下記成分(E)を含み、
成分(A)、成分(B)、及び成分(E)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含む、請求項又はに記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
(E)フィラー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、電気電子部品の絶縁材料、封止材料、接着剤、導電性材料や繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂等の幅広い用途に利用されている。
【0003】
昨今の電子デバイス機器に対する要求は小型化、高機能化、軽量化、多機能化、と多岐にわたっており、半導体のチップの実装技術においても電極パッドとパッドピッチとのファインピッチ化による一層の微細化、小型化、高密度化が進んでいる。チップと基板との隙間にバンプ接続部とチップの回路面とを保護する接着剤としてエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂であるアンダーフィル材がある。
【0004】
繊維強化プラスチックは、強化繊維とマトリックス樹脂とを用いて製造される。マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が多く使用される。例えば、特許文献1には、加水分解性塩素と、アルコール性水酸基を2つ以上有する成分とを含むことで、十分な保存安定性、硬化速度、機械強度、耐熱性を得ることが可能なエポキシ樹脂組成物が開示されている。また、例えば、特許文献2には、酸無水物と芳香環を有するポリオール化合物とを含むことで、70℃以下の低温において、短時間硬化可能なエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-301029公報
【文献】特開2010-163573公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上述したアンダーフィル材は、ファインピッチ化に伴う狭ギャップ間への浸透を可能にするために低粘度化が求められている。また、生産性向上のための硬化温度の低温化や硬化時間の短縮、もアンダーフィル材に対して強く求められている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されたエポキシ樹脂組成物は、低粘度化、低温硬化性、硬化時間の短縮、熱の伝わり方が不均一な場合での十分な硬化領域の確保、において改善の余地が残る。
本発明は、上述の現状を鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、低粘度化、低温硬化性の向上、硬化時間の短縮、熱の伝わり方が不十分な場合での十分な硬化領域の確保、が可能なエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、以下の技術的手段によって、上記の目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
なお、特許文献1に記載のアルコール性水酸基を2つ以上有する成分は、下記式(1)で示される構造を有していない。
本発明は以下のとおりのものである。
[1]
下記成分(A)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含むエポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)下記式(1)で示される化合物
【化1】
{式(1)中、R1~R9は、それぞれ、水素、アルキル基、芳香族基、ヘテロ原子を含む置換基、及びハロゲン原子を含む置換基からなる群から選ばれる一種である。R1~R9は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、R5~R9から選ばれるいずれかが同一環に存在する縮合環化合物でもよい。}
[2]
前記成分(B)が固体の硬化剤を含む、[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]
前記式(1)のR1がヒドロキシル基である、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]
前記式(1)のR2、R3及びR4が水素である、[1]~[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]
前記成分(B)として、活性水素を4つ以上含む化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]
前記成分(B)が、イミダゾール系硬化剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]
前記成分(B)が、マイクロカプセル型硬化剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]
前記成分(D)として、硬化促進剤をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[9]
下記成分(A)、下記成分(B)及び下記成分(C)を含むエポキシ樹脂組成物の製造方法であって、成分(A)及び成分(B)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含む、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)下記式(1)で示される化合物
【化2】
{式(1)中、R1~R9は、それぞれ、水素、アルキル基、芳香族基、ヘテロ原子を含む置換基、及びハロゲン原子を含む置換基からなる群から選ばれる一種である。R1~R9は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、R5~R9から選ばれるいずれかが同一環に存在する縮合環化合物でもよい。}
[10]
エポキシ樹脂組成物がさらに下記成分(D)を含み、
成分(A)、成分(B)、及び成分(D)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含む、[9]に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
(D)硬化促進剤
[11]
エポキシ樹脂組成物がさらに下記成分(E)を含み、
成分(A)、成分(B)、及び成分(E)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含む、[9]又は[10]に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
(E)フィラー
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低粘度化、低温硬化性の向上、硬化時間の短縮、熱の伝わり方が不十分な場合での十分な硬化領域の確保、が可能なエポキシ樹脂組成物を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0010】
<エポキシ樹脂組成物>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂(以下「成分(A)」とも記す。)、(B)硬化剤(以下「成分(B)」とも記す。)、及び(C)下記式(1)で示される化合物(以下「成分(C)」とも記す。)を含む。
【化3】
{式(1)中、R1~R9は、それぞれ、水素、アルキル基、芳香族基、ヘテロ原子を含む置換基、及びハロゲン原子を含む置換基からなる群から選ばれる一種である。R1~R9は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、R5~R9から選ばれるいずれかが同一環に存在する縮合環化合物でもよい。}
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、成分(A)~(C)を含むことにより、低粘度化、低温硬化性の向上、硬化時間の短縮、熱の伝わり方が不十分な場合での十分な硬化領域の確保が可能となる。
【0011】
<成分(A)エポキシ樹脂>
成分(A)エポキシ樹脂としては、以下に限定されるわけではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、フェニルベンゾエート型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホキシド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、ジフェニルジスルフィド型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、メチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂類;N,N-ジグリシジルアミノベンゼン型エポキシ樹脂、o-(N,N-ジグリシジルアミノ)トルエン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノベンゼン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂類;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ブロモ化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂類;及び脂環式エポキシ樹脂類が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。さらに、これらをイソシアネート等で変性したエポキシ樹脂等も併用することができる。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、取り扱い性と耐熱性の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の質量に対して、硬化物に十分な強度を付与する点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることがさらにより好ましい。また、(A)エポキシ樹脂の含有量は、十分な硬化性を付与するために成分(B)及び成分(C)を加えられることから、エポキシ樹脂組成物全体の質量に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92%質量以下であることがさらに好ましい。
【0013】
<成分(B)硬化剤>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物に含まれる成分(B)硬化剤としては、以下に限定されないが、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、これらに限定されるものではない。
【0014】
アミン系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルへキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、KAYAHARD A-A(日本化薬製)、エタキュア100(三井化学ファイン製)等が挙げられる。
【0015】
アミド系硬化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、活性水素を4つもつジシアンジアミド及びその誘導体であるグアニジン化合物、又はアミン系硬化剤に酸無水物を付加させたもの、並びにヒドラジド系化合物が挙げられる。
【0016】
ヒドラジド系化合物からなるヒドラジド系硬化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドテレフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0017】
グアニジン化合物からなるグアニジン系硬化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等が挙げられる。
【0018】
酸無水物系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0019】
フェノール系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮合ノボラック樹脂、アリルアクリルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0020】
潜在性硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、イミダゾール化合物、ポリアミン化合物、アミン-エポキシアダクト類、アミン-尿素アダクト類、又はこれらを被覆してなるマイクロカプセル型硬化剤、多孔質体に吸着させてなる硬化剤などが挙げられる。その具体例としては、以下に限定されないが、ノバキュア HX-3721、HX-3722、HX-3613、HX-3921HP、HXA9322HP(旭化成株式会社製)、アミキュア PN-23J、PN-40J、MY-24(味の素ファインテクノ株式会社製)、フジキュアー FXR-1020、FXR-1030(富士化成工業株式会社製)などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
低温での良好な硬化性、少量の添加で樹脂硬化が可能であること、短時間硬化で高いガラス転移温度を持つ硬化物を得らえる観点からは、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤を含むことが好ましい。イミダゾール系硬化剤に含まれるイミダゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル―4-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル‐(1)]エチル-s-トリアジン、2-フェニルイミダゾリン、2,3-ジヒドロ―1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾールが挙げられる。また、イミダゾール系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ノバキュア HX-3721、HX-3722、HX-3613、HX-3921HP、HXA9322HP(旭化成株式会社製)が挙げられる。
【0021】
触媒型硬化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カチオン系熱硬化触媒、BF3-アミン錯体等が挙げられる。
【0022】
成分(B)硬化剤は、固体の硬化剤を含むこと、すなわち、25℃、1013hPaで固体である硬化剤を含むことが、保存安定性の点で好ましい。固体の硬化剤をエポキシ樹脂組成物中に分散させておき、所定の温度、及び加熱開始後での所定時間経過後にて硬化反応が開始するメカニズムとすることで、エポキシ樹脂組成物が反応性と貯蔵安定性とを兼ね備えることができる。このような固体の硬化剤として、ジシアンジアミド、固体のイミダゾール系化合物、固体のポリアミン系化合物、及びそれらを含むマスターバッチ型潜在性硬化剤が好ましく、固体のイミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤を含むマスターバッチ型潜在性硬化剤としてノバキュア HX-3721、HX-3722、HX-3613、HX-3921HP、HXA9322HPを含むことがより好ましい。
常温での保存安定性やディスペンサー等でエポキシ樹脂組成物を塗布する際の増粘制御の観点から、(B)硬化剤はマイクロカプセル型硬化剤を含むことが好ましい。マイクロカプセル型硬化剤としては、ノバキュア HX-3721、HX-3722、HX-3613、HX-3921HP、HXA9322HPを用いることができる。
また、架橋点を多くすることで、架橋構造を複雑化させ、硬化物の強度を向上させる観点から、成分(B)として、活性水素を4つ以上含む化合物を含むことが好ましく、さらに基材との密着性を向上させる観点で、ヘテロ原子を含み且つ活性水素を4つ以上含む化合物を含むことがより好ましい。このような化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。
【0023】
これらの硬化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
成分(B)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、成分(B)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
<成分(C)式(1)で示される化合物>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、下記式(1)で示される化合物(成分(C))を含む。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、下記式(1)で示される化合物(成分(C))を含むことで、優れた低温硬化性、低粘度化、硬化時間の短縮、十分な硬化領域の確保、が可能となる。
【化4】
式(1)中、R1~R9は、それぞれ、水素、アルキル基(好ましくは炭素数1~50のアルキル基)、芳香族基、ヘテロ原子を含む置換基、及びハロゲン原子を含む置換基からなる群から選ばれる一種である。R1~R9は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、R5~R9から選ばれるいずれかが同一環に存在する縮合環化合物でもよい。成分(C)としては、(B)硬化剤への優れた配位性と、芳香環を有することによる(A)エポキシ樹脂との相溶性を兼ね備えることで硬化性を向上させる観点から、上記式(1)で示される化合物を含む。
さらに、(B)硬化剤への配位性を高め、より硬化性を向上させる観点から、上記式(1)のR1がヒドロキシル基であることが好ましい。
また、ヒドロキシル基の配位性を立体障害により阻害しない観点から、上記式(1)のR2、R3及びR4が水素であることが好ましい。
【0026】
上記式(1)で示される化合物として、特に限定されないが、例えば、3-フェノキシ-1-プロパノール、3-フェノキシ-1,2-プロパンジオール、3-フェノキシ-1,3-プロパンジオール、メフェネシン( 3-(2-Methylphenoxy)-1,2-propanediol)、グアイフェネシン(3-(2methoxyphenoxy)propane-1,2-diol)、Bisphenol A (3-hydroxypropyl) glycidyl ether、Bisphenol A (2,3-dihydroxypropyl) glycidyl ether、
下記式(1-1)で表される化合物(以下「化合物1」とも記す)、
【化5】
下記式(1-2)で表される化合物(以下「化合物2」とも記す)、
【化6】
下記式(1-3)で表される化合物(以下「化合物3」とも記す)、
【化7】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の末端エポキシ基が開環することで生成する1-プロパノール構造を有する化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の末端エポキシ基が開環することで生成する1,2-プロパンジール構造を有する化合物(例えばビスフェノールFグリシジル2,3-ジヒドロキシプロピルエーテル)、ナフタレン型エポキシ樹脂末端エポキシ基が開環することで生成する1-プロパノール構造を有する化合物、ナフタレン型エポキシ樹脂末端エポキシ基が開環することで生成する1,2-プロパンジール構造を有する化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂末端エポキシ基が開環することで生成する1-プロパノール構造を有する化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂末端エポキシ基が開環することで生成する1,2-プロパンジール構造を有する化合物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂末端エポキシ基が開環することで生成する1-プロパノール構造を有する化合物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂末端エポキシ基が開環することで生成する1,2-プロパンジール構造を有する化合物、等が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂組成物の増粘開始温度を低下させる効果が高く、(A)エポキシ樹脂との相溶性が良好であるために均一なエポキシ樹脂組成物を得られる観点から、3-フェノキシ-1-プロパノール、3-フェノキシ-1,2-プロパンジオール、Bisphenol A (3-hydroxypropyl) glycidyl ether、Bisphenol A (2,3-dihydroxypropyl) glycidyl ether、化合物1、化合物2、化合物3が好ましい。これらの成分(C)式(1)で示される化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
成分(C)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、0.00001質量%以上であることが好ましく、0.0001質量%以上であることがより好ましく、0.001質量%以上であることがさらに好ましい。また、成分(C)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、20質量%未満であることが好ましく、15質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましく、8質量%未満であることがよりさらに好ましく、7質量%未満であることがさらにより好ましく、6質量%未満であることが極めて好ましく、5質量%未満であることがより極めて好ましく、3質量%未満であることがさらに極めて好ましく、2質量%未満であることが特に極めて好ましい。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、0.00001質量%以上の成分(C)が含まれることで、増粘開始温度の低下、低粘度化、硬化時間短縮、十分な硬化領域の硬化がより一層達成される。また、保存安定性の観点で、成分(C)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して、20質量%未満であることが好ましい。
【0028】
成分(C)が低粘度化、低温硬化性の改善、硬化時間の短縮、硬化領域の改善に効果を示すメカニズムとして、限定する趣旨ではないが、以下のことが考えられる。(A)エポキシ樹脂同士の相互作用に対して、成分(C)の芳香族基やヒドロキシル基が作用することで、(A)エポキシ樹脂同士での相互作用が解消され、エポキシ樹脂組成物全体として分子移動が容易になるため、低粘度化する。また、成分(C)のヒドロキシル基と(B)硬化剤との間での配位結合を形成することで、(B)硬化剤と(A)エポキシ樹脂との相溶性が高まり、エポキシ樹脂組成物中での(B)硬化剤の拡散性が向上することで、より低温での(B)硬化剤の(A)エポキシ樹脂成分中への十分な拡散と、それに伴う硬化反応を可能にする。なお、(B)硬化剤への配位性を高める観点において、成分(C)としては、末端モノヒドロキシル基構造よりも1,2-ジオール構造の方がより好ましい。硬化時間の短縮、硬化領域の改善についても、前述の成分(C)の配位後の(B)硬化剤と(A)エポキシ樹脂との相溶性向上と拡散性向上が寄与している。相互作用や配位性、相溶性に対する効果は、分子構造の影響を大きく受ける。したがって、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、成分(C)が上記式(1)で示される化合物を含む。
【0029】
相溶性の指標として、sp値(δ)があり、化合物同士のsp値差が小さい場合、良好な相溶性を示すことが知られている。成分(C)の成分(A)エポキシ樹脂への優れた相溶性と、成分(B)硬化剤へ成分(C)が配位した後の成分(A)への相溶性に優れることで、低粘度化、低温硬化性の改善、硬化時間の短縮、硬化領域の改善の効果をより発揮する観点から、成分(C)のsp値が成分(A)エポキシ樹脂に対して近しい値を有することが好ましい。以下は、ROBERT F. FEDORS著 POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE, FEBRUARY, 1974, Vol. 14, No. 2に記載の値を用いて、25℃における、各化合物のsp値をFedorsの計算法(数式(i))により求めたものである。
δ=(ΣΔe/ΣΔv)1/2 ・・・・・数式(i)
Δeは置換基ごとの凝集エネルギーを表し、Δvはモル分子容を示す。
〔成分(A)〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(n=0体)・・・・・δ=10.9(cal/cm31/2
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(n=0体)・・・・・δ=12.1(cal/cm31/2
エポキシクレゾールノボラック ・・・・・δ=11.0(cal/cm31/2
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン ・・・・δ=11.9(cal/cm31/2
〔成分(B)〕
ジシアンジアミド ・・・・・δ=17.8(cal/cm31/2
〔成分(C)〕
3-フェノキシ-1-プロパノール ・・・・・δ=12.0(cal/cm31/2
3-フェノキシ-1,2-プロパンジオール ・・・・δ=14.3(cal/cm31/2
Bisphenol A (3-hydroxypropyl) glycidyl ether ・・・・・δ=11.6(cal/cm31/2
Bisphenol A (2,3-dihydroxypropyl) glycidyl ether ・・・・・δ=12.9(cal/cm31/2
化合物1 ・・・・・δ=12.0(cal/cm31/2
化合物2 ・・・・・δ=12.0(cal/cm31/2
化合物3 ・・・・・δ=12.6(cal/cm31/2
〔その他成分〕
グリセロール ・・・・・δ=20.0(cal/cm31/2
成分(C)のsp値は成分(A)のsp値と近しいことで、低粘度化、低温硬化性の改善、硬化時間の短縮、硬化領域の改善の効果をより発揮する観点から、成分(A)がsp値が10~13(cal/cm31/2のエポキシ樹脂を含む場合に、成分(C)のsp値は、下限値として、7(cal/cm31/2以上が好ましく、8(cal/cm31/2以上がより好ましく、9(cal/cm31/2以上がさらに好ましく、10(cal/cm31/2以上がよりさらに好ましく、11(cal/cm31/2以上がさらにより好ましく、上限値として、20(cal/cm31/2未満が好ましく、18(cal/cm31/2以下がより好ましく、16(cal/cm31/2以下がさらにより好ましい。
【0030】
成分(C)は、その他成分との混合時に添加してもよく、混合後に系中で生成してもよく、また、その他成分(A)及び(B)、後述の成分(D)及び(E)を製造する際に系中で発生させてもよい。
【0031】
<成分(D)硬化促進剤>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化反応を促進する目的で、(D)硬化促進剤(以下「成分(D)」とも記す)を含むことができる。(D)硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、オニウム化合物のボロン塩、リン系化合物、ルイス酸、尿素誘導体等が挙げられる。尿素誘導体としては、特に限定されないが、例えば、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
成分(B)硬化剤に該当するイミダゾール化合物は、他の成分(B)硬化剤を含む場合に、組み合わせによっては、成分(D)硬化促進剤に該当する。本明細書中では、以下に記載の場合にイミダゾール化合物は成分(D)硬化促進剤とする。
【0032】
成分(B)が、グアニジン化合物、ヒドラジド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール樹脂、ポリチオール系化合物、芳香族アミン、ベンゾオキサジン、シアネートエステルのうち少なくとも1種を含み、イミダゾール化合物を加えることで、硬化時間の短縮、硬化温度の低温化、硬化物強度の向上等の硬化性向上が発揮される場合に、イミダゾール化合物は成分(D)硬化促進剤とする。
【0033】
また、成分(B)が2種以上のイミダゾール化合物を含む場合に、硬化時間の短縮、硬化温度の低温化、硬化物強度の向上等の硬化性向上への部数当たりの寄与度が小さい方のイミダゾール化合物を成分(D)硬化促進剤とする。
【0034】
イミダゾール化合物を成分(D)硬化促進剤とする場合の上記に記載の成分(B)硬化剤の具体的例としては、上記の[成分(B)硬化剤]の段落に記載の化合物等が使用できる。
【0035】
組み合わせにより成分(D)硬化促進剤となるイミダゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル―4-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル‐(1)]エチル-s-トリアジン、2-フェニルイミダゾリン、2,3-ジヒドロ―1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、ノバキュア HX-3721、HX-3722、HX-3613、HX-3921HP、HXA9322HP(旭化成製)、AERハードナー D1207、D1301(旭化成製)等が挙げられる。
成分(D)の含有量はエポキシ樹脂組成物中、十分な硬化性を示す観点から、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。また、成分(D)の含有量はエポキシ樹脂組成物中、十分な保存安定性を示す観点から、20質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましく、14質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
<成分(E)フィラー>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて(E)有機フィラー及び/又は無機フィラー(以下「成分(E)」とも記す)を含んでもよい。
【0037】
有機フィラーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリブロック共重合体のような熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉、並びにポリプロピレン粉等が挙げられる。これらの有機フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
無機フィラーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク、窒化ケイ素、窒化アルミ、酸化亜鉛(ZnO)、コールタール、ガラス繊維、アスベスト繊維、ほう素繊維、石英紛、鉱物性ケイ酸塩、雲母、アスベスト粉、スレート粉等が挙げられる。これらの無機フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらの有機フィラー及び無機フィラーは、エポキシ樹脂組成物の粘弾性を変化させて、粘度、貯蔵弾性率、及びチキソトロープ性を適正化する機能があり、さらにはエポキシ樹脂組成物の硬化物の破壊靭性を向上させ、硬化収縮の低減を低減させる傾向にある。
成分(E)の含有量はエポキシ樹脂組成物中、十分なチキソトロープ性の適正化や破壊靭性の向上の観点から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。また、成分(E)の含有量はエポキシ樹脂組成物中、粘度が十分に低く取り扱いに優れる観点から、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、上述した成分以外に、添加剤として、希釈剤、反応性希釈剤、顔料、染料、流れ調整剤、増粘剤、強化剤、離型剤、湿潤剤、難燃剤、界面活性剤、樹脂類等を、さらに含むことができる。
【0041】
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を混合することによって得ることができる。各成分の混合方法は、特に限定されず、一般的な混合設備と加工条件が適用される。具体的には、特に限定されないが、例えば、上記成分(A)~(C)と、必要に応じて上記成分(D)及び(E)並びにその他添加剤成分等とを、3本ロール等のミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押出し機等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得る方法が挙げられる。
【0042】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物の製造方法において、各成分を混合する際は、成分(C)の分散性を高めることで、均一なエポキシ樹脂組成物が得られる観点と、製造途中での硬化反応を抑制することで生産性を高める観点とから、成分(A)及び成分(B)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含むことが好ましい。
【0043】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物の製造方法において、さらにエポキシ樹脂組成物が成分(D)を含む場合、各成分を混合する際は、成分(C)の分散性を高めることで、均一なエポキシ樹脂組成物が得られる観点と、製造途中での硬化反応を抑制することで生産性を高める観点から、成分(A)、成分(B)、及び成分(D)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含むことが好ましい。
【0044】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物の製造方法において、さらにエポキシ樹脂組成物が成分(E)を含む場合、各成分を混合する際は、成分(C)の分散性を高めることで、均一なエポキシ樹脂組成物が得られる観点と、製造途中での硬化反応を抑制することで生産性を高める観点から、成分(A)、成分(B)、及び成分(E)の群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物又は組成物に成分(C)を添加する工程を含むことが好ましい。
【実施例
【0045】
次に、本発明を、実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0046】
(エポキシ樹脂組成物の調製)
以下の表1に示す配合比率で、後述する成分(A)~(C)及びその他成分を計量後、ノンバブリングニーダーでこれらの成分を2分間の撹拌及び3分間の脱泡を行い、混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表1における各成分の配合量は、(A)成分の合計量を100質量部としたときの質量部表示で示されている。
【0047】
(増粘開始温度測定)
レオメーター(HAAKE MARS、Thermo scientific製)により昇温速度5℃/分、オシレーションモード(f=1Hz)にて、エポキシ樹脂組成物を25℃から200℃まで昇温した際の、動的粘度η’―温度曲線を取得した。得られた動的粘度―温度曲線において、T0℃~T0+5℃の範囲で動的粘度η‘が単調増加であり、T0℃での動的粘度η’(To℃)と比較してT0+5℃での動的粘度η‘(T0+5℃)が数式(1)を満たす温度T0℃を増粘開始温度とした。
η‘(T0+5℃)-η’(T0℃)≧500(mPa・s)・・・・・・数式(1)
【0048】
(エポキシ樹脂組成物の初期粘度測定)
E型粘度計(TVE-35H、東機産業株式会社社製)を用いて室温(25℃)にてエポキシ樹脂組成物を調製した直後の粘度(初期粘度)を測定した。
【0049】
(ゲルタイム測定)
キュラストメーター(キュラストメーターV、テイ・エスエンジニアリング社製)を用いて、設定温度80℃にてエポキシ樹脂組成物のゲルタイム測定を実施し、トルク-加硫時間チャートを得た。本実施形態においては、得られたチャートについて、1N・mとなる点と0.5N・mとなる点とを求め、二つの点を通る直線が加硫時間軸と交わる時間をゲルタイムと定義した。
【0050】
(保存安定性倍率)
エポキシ樹脂組成物を調製した直後の初期粘度と、エポキシ樹脂組成物を40℃、7日間放置後での経過時粘度とをE型粘度計を用いて室温(25℃)にて測定し、下記数式(2)にて保存安定性倍率を算出した。
保存安定性倍率=40℃、7日放置後経過時粘度/初期粘度 ・・・・数式(2)
保存安定性倍率は、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましく、1.1以下がさらにより好ましく、1が特に好ましい。
【0051】
(硬化領域)
縦:550mm×幅350mm×厚み2mmのテフロン(登録商標)製の型に、エポキシ樹脂組成物を開口部まで十分に流し入れ、加熱炉にて設定温度100℃で90分間加熱した。加熱完了後、テフロン(登録商標)製型から取り外した硬化体の体積をVc、エポキシ樹脂組成物を流し入れた体積をV0とし、下記数式(3)にて硬化領域を算出した。
硬化領域(%)=100×Vc/V0 ・・・・・・数式(3)
硬化領域の割合(%)に応じて以下の判定を下す。
【表I】
エポキシ樹脂組成物を硬化させた際の、硬化領域が大きい程、硬化領域熱の伝わり方が不十分な場合での十分な硬化領域の確保性において優れている。
【0052】
以下表1に記載の成分は以下のとおりである。
〔(A)エポキシ樹脂〕
成分A-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製)(エポキシ当量 182g/eq.)
〔(B)硬化剤〕
成分B-1:ジシアンジアミド(和光純薬工業株式会社製)
成分B-2:ノバキュアHXA9322HP(旭化成株式会社製)
〔(C)式(1)で示される化合物〕
成分C-1:3-フェノキシ-1,2-プロパンジオール(東京化成工業株式会社製)
成分C-2:3-フェノキシ-1-プロパノール(東京化成工業株式会社製)
〔(D)硬化促進剤〕
成分D-1:AERハードナーD1301(旭化成株式会社製)
〔その他の成分〕
その他成分-1:グリセロール(東京化成工業株式会社製)
【0053】
[実施例1~8及び比較例1~5]
表1-1~1-4に示す割合で各成分を配合し、上記方法によりエポキシ樹脂組成物を調製した。調製したエポキシ樹脂組成物の各特性について上記方法により測定した。レオメーター測定での各エポキシ樹脂組成物の増粘開始温度測定結果、各エポキシ樹脂組成物の初期粘度測定結果を表1-1~1-4に示す。
【0054】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0055】
成分(A)及び(B)の配合が同じ実施例1~3と、比較例1とを対比すると、実施例1~3のエポキシ樹脂組成物は、成分(C)(成分C-1)を含まない比較例1よりも、増粘開始温度が低く、初期粘度も低く、低粘度化及び低温硬化性が向上していることがわかった。
また、成分(A)、(B)及び(D)の配合が同じ実施例4と、比較例2とを対比すると、実施例4のエポキシ樹脂組成物は、成分(C)(成分C-1)を含まない比較例2よりも、増粘開始温度が低く、初期粘度も低く、低粘度化及び低温硬化性が向上していることがわかった。
また、成分(A)及び(B)の配合が同じ実施例5と、比較例3とを対比すると、実施例5のエポキシ樹脂組成物は、成分(C)(成分C-1)を含まない比較例3よりも、増粘開始温度が低く、初期粘度も低く、低粘度化及び低温硬化性が向上していることがわかった。
また、成分(A)及び(B)の配合が同じ実施例6~8と、比較例4とを対比すると、実施例6~8のエポキシ樹脂組成物は、成分(C)(成分C-1又は成分C-2)を含まない比較例4よりも、増粘開始温度が低く、初期粘度も低く、低粘度化及び低温硬化性が向上していることがわかった。なお、成分(C)に代えて、その他の成分として、末端にヒドロキシル基を有するが、式(1)で示される化合物に該当しない「その他成分-1:グリセロール」を用いた比較例5のエポキシ樹脂組成物は、グリセロールを含まないこと以外は同じ比較例4の初期粘度(13Pa・s)と同じ初期粘度であることから、粘度低下の効果がないことがわかった。
【0056】
実施例6及び比較例4のエポキシ樹脂組成物のゲルタイム測定結果を表2に示す。比較例4のエポキシ樹脂組成物に対して成分(C)(成分C-1)を加えた実施例6のエポキシ樹脂組成物において、大幅にゲルタイム(硬化時間)が短縮されていることがわかった。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例1~3及び6~8並びに比較例5のエポキシ樹脂組成物の保存安定性倍率の測定結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例5及び6並びに比較例3及び4のエポキシ樹脂組成物の硬化領域評価結果を表4に示す。実施例5及び6のエポキシ樹脂組成物では100%の硬化領域を示したが、成分(C)(成分C-1)を含まない比較例3及び4のエポキシ樹脂組成物では十分な硬化領域を示さなかった。
【0061】
【表4】
【0062】
以上、本実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、低粘度化、低温硬化性の向上、硬化時間の短縮、熱の伝わり方が不十分な場合での十分な硬化領域の確保、が可能なエポキシ樹脂組成物を提供することができる。