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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231218BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231218BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G02F1/13357
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020055673
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157003
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大島 研介
(72)【発明者】
【氏名】井上 嘉亮
(72)【発明者】
【氏名】平松 宗也
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0243133(US,A1)
【文献】特開2018-025600(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031355(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03176775(EP,A1)
【文献】特開2018-072597(JP,A)
【文献】特開2018-072598(JP,A)
【文献】特開2019-101056(JP,A)
【文献】特開2019-061128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、前記表示装置を制御する制御装置とを備え、前記表示装置に表示される画像を表す光を、透過反射部に反射させることで、当該画像を車両の前方空間の虚像として前記透過反射部の表示領域に表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルに光を照射するバックライト装置とを備え、
前記バックライト装置は、前記車両の車幅方向に並んで配置され、かつ、互いに接続された複数の光源からなる光源群を複数備え、
前記透過反射部の表示領域は、上下に並んで位置する複数の領域を有し、
複数の前記光源群は、前記車幅方向に直交する方向に並んで配置されており、それぞれが前記透過反射部の表示領域の対応する領域に光を照射し、
前記制御装置は、前記透過反射部の表示領域の各領域に対応する背景の明るさに応じて、複数の前記光源群の輝度を個別に制御する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に表示される画像を表す光を車両のウインドシールド(いわゆるフロントガラス)に反射させることで、当該画像を車両の前方空間の虚像としてウインドシールドに表示させるヘッドアップディスプレイ装置が知られている。これにより、運転者は、車両の走行に関連する情報(速度情報、カーナビゲーション情報など)を示す画像をウインドシールドの前方の景色に重ね合わせて視認することができる。
【0003】
表示装置は、液晶パネルとバックライト装置とを備えており、バックライト装置が液晶パネルに光を照射することで、画像を表示する。バックライト装置は、液晶パネルの全面に均等に光を照射するために、複数の光源(例えば発光ダイオード)が直列接続されてマトリクス状に配置されている。複数の光源は、例えば車両に配置されている照度センサによって検出された外部の明るさに応じて、輝度が調整される。
【0004】
しかし、ウインドシールドの表示領域の背景の明るさは一律ではないので、複数の光源が同じ輝度で光を照射することによる不都合が生じる。例えば、夜間は、ヘッドライトに照らされた路面が背景になる表示領域の下側が明るく、表示領域の上側が暗くなる。逆に、昼間は、空が背景になる表示領域の上側が比較的明るくなる。表示領域の背景の明るさが領域によって大きく異なる場合、光源の輝度を表示領域の一部の領域の明るさに合わせると、他の領域で表示される画像の視認性が悪くなる。
【0005】
一方、バックライト装置において、各光源の輝度を個別に制御するローカルディミング法によって、バックライト装置の発熱量を抑制するヘッドアップディスプレイ装置が開発されている(特許文献1参照)。当該ヘッドアップディスプレイ装置は、画像が表示される領域の光源だけを選択的に発光させることで、バックライト装置の発熱量を抑制する。ローカルディミング法によって、表示領域の各領域の背景の明るさに応じて、各光源の輝度を個別に制御すれば、各領域で表示される画像の視認性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-45244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ローカルディミング法によって各光源の輝度を個別に制御する場合、各光源をそれぞれ駆動させるために多数の駆動回路が必要になる。したがって、部品点数が多くなり、製造コストが大きくなる。
【0008】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、製造コストを抑制しつつ、表示領域に表示される画像の視認性を向上できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明によって提供されるヘッドアップディスプレイ装置は、表示装置と、前記表示装置を制御する制御装置とを備え、前記表示装置に表示される画像を表す光を、透過反射部に反射させることで、当該画像を車両の前方空間の虚像として前記透過反射部に表示させるヘッドアップディスプレイ装置であって、前記表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルに光を照射するバックライト装置とを備え、前記バックライト装置は、前記車両の車幅方向に並んで配置され、かつ、互いに接続された複数の光源からなる光源群を複数備え、複数の前記光源群は、前記車幅方向に直交する方向に並んで配置されており、前記制御装置は、複数の前記光源群を個別に制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、バックライト装置は複数の光源群を備え、制御装置は各光源群を個別に制御する。各光源群に対応する領域の背景の明るさに応じて、各光源群の輝度を個別に制御できるので、各領域で表示される画像の視認性が向上する。また、各光源群は、車幅方向に並んで配置され互いに接続された複数の光源からなる。したがって、1個の駆動回路で、光源群に含まれる複数の光源を同時に駆動できる。よって、各光源をそれぞれ個別に駆動させる場合と比較して、必要な駆動回路の数を抑制できる。これにより、製造コストを抑制できる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略を示す模式図である。
図2図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】バックライト装置の内部構成を示すブロック図である。
図4】ウインドシールドに表示された画像の一例を示す図である。
図5】撮影された前方の画像を示す図である。
図6】第1実施形態に係るバックライト制御処理を説明するためのフローチャートの一例である。
図7】第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の機能構成を示すブロック図である。
図8】第2実施形態に係るバックライト制御処理を説明するためのフローチャートの一例である。
図9】第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のバックライト装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1図6は、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A1を説明するための図である。図1は、ヘッドアップディスプレイ装置A1の概略を示す模式図である。図2は、ヘッドアップディスプレイ装置A1の機能構成を示すブロック図である。図3は、バックライト装置の内部構成を示すブロック図である。図4は、ウインドシールドに表示された画像の一例を示す図である。図5は、カメラによって撮影された前方の画像を示す図である。図6は、第1実施形態に係るバックライト制御処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【0016】
図1および図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、表示装置1、第1ミラー51、第2ミラー52、および制御装置4を備えている。ヘッドアップディスプレイ装置A1は、車両Bのインストルメントパネルの内部空間を利用して、運転席に対応する車幅方向位置に配置される。図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、表示装置1に表示される画像を表す光を、ウインドシールド7(いわゆるフロントガラス)に反射させることで、当該画像を車両Bの前方空間の虚像Vとしてウインドシールド7に表示させる。ウインドシールド7は、例えばガラスなどの透明板であり、入射される光の角度によって、光を透過、または、反射させる透過反射部として機能する。表示装置1に表示される画像としては、速度情報やナビゲーション情報など、車両Bの走行に関連する各種の情報(以下では、「走行情報」とする)を示す画像が含まれる。表示装置1に表示される画像は、画像生成部60によって生成される。走行情報を含む画像が虚像Vとして、ウインドシールド7の前方の景色に重ね合わせて表示されるので、運転者は、インストルメントパネルに配置されているメータユニットや、カーナビゲーション用のモニタなどに視線を移動させることなく、走行情報を認識できる。例えば、図4に示すように、ウインドシールド7の表示領域71には、時刻、車速、燃料ゲージ、および道路情報を示す画像が、前方の景色に重ね合わせて表示されている。なお、図4においては、表示領域71の範囲を示すために、便宜上、表示領域71を二点鎖線で示しているが、実際には、表示領域71はウインドシールド7に表示されない。また、ウインドシールド7に表示される走行情報は、限定されない。
【0017】
表示装置1は、走行情報を示す画像を表示して、当該画像を表す光を出射する。本実施形態では、図1に示すように、表示装置1は、画像を表示する表示面1aを、やや後方斜め上方に向けるようにして、ヘッドアップディスプレイ装置A1の筐体に配置されている。表示装置1の内部構成の詳細については後述する。
【0018】
第1ミラー51は、表示装置1からの光を第2ミラー52に向けて反射させるための鏡である。本実施形態では、第1ミラー51は、側方視において、表示装置1からの光の反射光を前方に向けて反射させるように、ヘッドアップディスプレイ装置A1の筐体に配置されている。本実施形態では、第1ミラー51は、平面鏡である。
【0019】
第2ミラー52は、第1ミラー51からの反射光を、ウインドシールド7に向けて反射させるための鏡である。本実施形態では、第2ミラー52は、側方視において、第1ミラー51からの反射光を、後方斜め上方に向けて延びるウインドシールド7の下方領域に向けて、上方斜め後方に反射させるように、ヘッドアップディスプレイ装置A1の筐体に配置されている。ウインドシールド7は、第2ミラー52からの反射光を運転者の視点Eに向けて反射させる。ウインドシールド7は通常、室内側に凹形状に湾曲しており、第2ミラー52は凹面鏡とされている。これにより、表示装置1に表示される画像は、ウインドシールド7から視点Eに至る光路Lの先に、拡大された虚像Vとして表示される。第2ミラー52の表面形状は、ウインドシールド7の湾曲の態様、および、画像の拡大率に応じて、適宜設計される。
【0020】
次に、表示装置1の内部構成の詳細について説明する。
【0021】
表示装置1は、図2に示すように、液晶パネル2およびバックライト装置3を備えている。表示装置1は、透過型の表示装置であって、バックライト装置3が液晶パネル2に光を照射し、液晶パネル2を通過した光によって画像を表示する。
【0022】
液晶パネル2は、一般的な液晶ディスプレイに使用されるものと同様であり、型や形式は限定されない。液晶パネル2は、制御装置4によって、各画素の駆動(光の通過と遮断の切り替え)を制御される。
【0023】
バックライト装置3は、複数の発光ダイオードDを備えており、液晶パネル2の裏側(第1ミラー51が配置されている側とは反対側)に配置されている。バックライト装置3は、複数の発光ダイオードDが発する光を、液晶パネル2に向けて照射する。表示装置1は、バックライト装置3が照射した光のうち、液晶パネル2を通過した光によって、画像を形成する。
【0024】
本実施形態では、バックライト装置3は、図3に示すように、16個の発光ダイオードDと、4個の駆動回路311~314を備えている。各発光ダイオードDは、通電されることで白色光を発する発光ダイオードである。16個の発光ダイオードDは、図3において模式的に記載しているように、車両Bの車幅方向であるx方向に4個ずつ、また、x方向に直交する方向であるy方向に4個ずつ、マトリクス状に配置されている。
【0025】
y方向の一方端側(図3においては上側)に配置されている、x方向に等間隔で並ぶ4個の発光ダイオードDが直列接続されて、直列光源群301を構成する。直列光源群301は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、最も上側に位置する第1領域711に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。また、y方向において直列光源群301に隣接して配置されている、x方向に等間隔で並ぶ4個の発光ダイオードDが直列接続されて、直列光源群302を構成する。直列光源群302は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、第2領域712に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。
【0026】
y方向において直列光源群302に隣接して配置されている、x方向に等間隔で並ぶ4個の発光ダイオードDが直列接続されて、直列光源群303を構成する。直列光源群303は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、第3領域713に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。y方向の他方端側(図3においては下側)に配置されている、x方向に等間隔で並ぶ4個の発光ダイオードDが直列接続されて、直列光源群304を構成する。直列光源群304は、ウインドシールド7の表示領域71のうち、最も下側に位置する第4領域714に対応する、液晶パネル2の領域に光を照射する。直列光源群301~304の各カソード側の端子は、グランド接続されている。
【0027】
駆動回路311は、直列光源群301の各発光ダイオードDを駆動する駆動回路である。駆動回路311は、直列光源群301のアノード側の端子に接続されている。駆動回路312は、直列光源群302の各発光ダイオードDを駆動する駆動回路である。駆動回路312は、直列光源群302のアノード側の端子に接続されている。駆動回路313は、直列光源群303の各発光ダイオードDを駆動する駆動回路である。駆動回路313は、直列光源群303のアノード側の端子に接続されている。駆動回路314は、直列光源群304の各発光ダイオードDを駆動する駆動回路である。駆動回路314は、直列光源群304のアノード側の端子に接続されている。
【0028】
なお、バックライト装置3における、駆動回路311~314の配置位置は限定されず、各発光ダイオードDが発する光を妨げない位置であればよい。また、バックライト装置3は、駆動回路311~314をそれぞれが個別に封止されたパッケージとして備えてもよいし、2個ずつ封止されたパッケージを2個備えてもよいし、4個封止されたパッケージを1個備えてもよい。つまり、バックライト装置3は、多チャンネル化された駆動回路を備えてもよい。
【0029】
制御装置4は、液晶パネル2およびバックライト装置3を制御するものであり、例えば、CPUおよびメモリを備えたマイクロコンピュータによって実現されている。
【0030】
制御装置4は、画像生成部60から入力される表示画像情報に基づいて、液晶パネル2の各画素の駆動を制御する。画像生成部60は、各種センサや各種ECU(Electronic Control Unit)などから入力される走行情報に基づいて、表示装置1に表示するための画像を生成する。当該画像の生成のために画像生成部60に入力される走行情報の例としては、車両Bの車速、エンジン回転数、燃料の残量、シフトポジション、ナビゲーション情報、積算走行距離、時刻、外気温、方向指示情報、パーキングブレーキ情報、ライトの点灯や状態を示す情報、シートベルトの着脱情報、冷却水の水温、故障診断に関する情報、セキュリティ情報などがある。なお、画像の生成に使用される走行情報は限定されない。画像生成部60は、生成した画像の画像データを、表示画像情報として、制御装置4に出力する。なお、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、画像生成部60を備えてもよい。
【0031】
また、制御装置4は、カメラ61から入力される撮影画像情報に基づいて、バックライト装置3の駆動回路311~314を制御する。カメラ61は、車両Bの前方の画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を備え、所定の撮影領域を所定のフレームレートで撮影する。カメラ61は、車内の車幅方向中央付近に取り付けられており、少なくともウインドシールド7の表示領域71(図4参照)の背景になる領域を含む画像を撮影する。図5に示す撮影画像8は、カメラ61によって撮影された車両Bの前方の画像の一例である。なお、図5においては、ウインドシールド7の表示領域71に相当する領域を示すために、二点鎖線によって、表示領域71を示している。なお、カメラ61の取り付け位置は限定されない。カメラ61は、撮影した撮影画像8の画像データを、撮影画像情報として、制御装置4に出力する。
【0032】
制御装置4は、カメラ61から入力される撮影画像情報に基づいて、直列光源群301~304の各輝度を設定する。具体的には、制御装置4は、撮影画像8のうち、表示領域71の各領域(第1領域711、第2領域712、第3領域713、第4領域714)に相当する領域の明るさを算出する。これらの明るさは、例えば、各領域内の各画素の色の明度を示す値の平均値として算出される。制御装置4は、算出した各領域の明るさに応じて、対応する直列光源群301~304の輝度を設定する。制御装置4は、領域の明るさが大きい(明るい)ほど、対応する直列光源群301~304の輝度を大きい値に設定する。
【0033】
例えば、図5の例の場合、撮影画像8のうち、表示領域71の第1領域711に相当する領域では、明るい空が大部分を占めているので、当該領域内の各画素の色の明度から算出された当該領域の明るさは大きい。制御装置4は、当該領域の明るさに応じて、対応する直列光源群301の輝度を大きい値に設定する。また、第4領域714に相当する領域では、比較的暗い路面が大部分を占めているので、当該領域内の各画素の色の明度から算出された当該領域の明るさは小さい。制御装置4は、当該領域の明るさに応じて、対応する直列光源群304の輝度を小さい値に設定する。また、第2領域712に相当する領域では、明るい空と比較的暗い路面とが混じっているので、当該領域内の各画素の色の明度から算出された当該領域の明るさは中程度である。制御装置4は、対応する直列光源群302の輝度を、当該領域の明るさに応じた値に設定する。
【0034】
制御装置4は、いわゆるPWM調光によって、各発光ダイオードDの輝度を調整する。PWM調光は、発光ダイオードに駆動電流を流して点灯させる点灯期間と、駆動電流を遮断して消灯させる消灯期間とを、一定の短い周期で交互に切り替え、1周期における点灯期間の占める割合(デューティ比)を変化させることで、発光ダイオードの輝度を変化させる技術である。切り替えの周期を短くする(周波数を高くする)ことで、人の目には点灯と消灯によるちらつきが認識できなくなる。デューティ比が高くなると、点灯期間が長くなるので、発光ダイオードの輝度は大きくなり、デューティ比が低くなると、点灯期間が短くなるので、発光ダイオードの輝度は小さくなる。デューティ比が「0」の場合、発光ダイオードは消灯される。
【0035】
制御装置4は、設定された輝度に応じたパルス信号を、それぞれ対応する駆動回路311~314に出力する。駆動回路311(312,313,314)は、制御装置4から入力されるパルス信号に応じて、直列光源群301(302,303,304)に流す駆動電流を切り替えることで、各発光ダイオードDの輝度を設定された輝度に調整する。直列光源群301(302,303,304)の各発光ダイオードDは、直列接続されているので、同じ駆動電流が流れ、同じ輝度で発光する。一方、制御装置4が駆動回路311~314に出力する各パルス信号は、撮影画像8の各領域の明るさに応じて、互いに独立して生成される。したがって、直列光源群301~304は、互いに独立した輝度(互いに異なる輝度の場合もあるし、一部が同じ輝度の場合もある)で発光する。つまり、制御装置4は、直列光源群301~304を個別に制御している。なお、制御装置4は、表示装置1に含まれてもよい。
【0036】
次に、制御装置4が行うバックライト制御処理を、図6に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。バックライト制御処理は、バックライト装置3を制御するための処理であり、所定の時間間隔(例えば1秒)で実行される。なお、所定の時間間隔は限定されない。
【0037】
まず、カメラ61から入力される撮影画像8の画像データが取得される(S1)。次に、撮影画像8の領域ごとの明るさが算出される(S2)。具体的には、撮像画像8の各領域内の各画素の色の明度が検出され、検出された明度から、当該領域の明るさを示す値が算出される。次に、算出された各領域の明るさに応じて、対応する直列光源群301~304の輝度が設定される(S3)。次に、輝度に応じたパルス信号が、対応する駆動回路311~314にそれぞれ出力され(S4)、バックライト制御処理は終了される。なお、図6のフローチャートに示す処理は一例であって、バックライト制御処理は上述したものに限定されない。
【0038】
次に、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A1の作用および効果について説明する。
【0039】
本実施形態によると、バックライト装置3は、直列光源群301~304を備えている。制御装置4は、各直列光源群301~304に対応する領域の背景の明るさに応じて、各直列光源群301~304の輝度を個別に調整する。これにより、各領域に表示される画像は、背景の明るさに応じた輝度で表示されるので、画像の視認性が向上する。視認性の向上により、画像を注視する時間が短縮されるので、車両Bの走行安全性が向上する。また、各直列光源群301~304は、それぞれ、x方向(車幅方向)に並ぶ4個の発光ダイオードDが直列接続されたものである。したがって、駆動回路311(312,313,314)は、直列光源群301(302,303,304)の各発光ダイオードDを同時に駆動できる。よって、各発光ダイオードDをそれぞれ個別に駆動させる場合と比較して、必要な駆動回路の数を抑制できる。これにより、製造コストを抑制できる。
【0040】
なお、本実施形態では、直列光源群301(302,303,304)の各発光ダイオードDを個別に制御することはできない。しかし、ウインドシールド7の表示領域71において、背景の明るさは、上下方向で異なる場合は多いが、車幅方向で大きく異なることは少ない。したがって、x方向(車幅方向)に並ぶ発光ダイオードDが同じ輝度に制御されたとしても、視認性に大きな影響を及ぼさない。一方、y方向(表示領域71では上下方向に対応する)に並ぶ直列光源群301(302,303,304)は個別に制御されるので、表示領域71の上下方向での背景の明るさの違いに対応できる。
【0041】
なお、本実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、ウインドシールド7に画像を表示する場合について説明したが、これに限られない。ヘッドアップディスプレイ装置A1は、ウインドシールド7と運転者との間に配置される、透明な板状部品であるコンバイナに画像を表示してもよい。この場合、「コンバイナ」が本発明の「透過反射部」に相当する。
【0042】
本実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、表示装置1に表示された画像を、第1ミラー51および第2ミラー52に反射させて、ウインドシールド7に投影する場合について説明したが、表示装置1とウインドシールド7との間に配置される鏡の数は限定されない。例えば、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、第1ミラー51および第2ミラー52のいずれか一方のみを備えてもよいし、さらに鏡が追加されてもよい。また、ヘッドアップディスプレイ装置A1は、第1ミラー51および第2ミラー52を備えず、表示装置1に表示された画像を、直接、ウインドシールド7に投影してもよい。表示装置1の表示面1aの向きや、表示される画像の向き、および、各鏡の形状や配置位置、向きなどは、画像がウインドシールド7の表示領域71に適切に表示されるように、適宜設計される。
【0043】
本実施形態では、バックライト装置3において、4個の発光ダイオードDが直列接続されている場合について説明したが、これに限られない。発光ダイオードDの直列接続数は、2個以上であればよい。また、本実施形態では、バックライト装置3において、4個の直列光源群301~304がy方向に並んで配置されている場合について説明したが、これに限られない。直列光源群の配置数は、2個以上であればよい。発光ダイオードDの直列接続数、および、直列光源群の配置数は、バックライト装置3のx方向およびy方向の寸法に応じて、適宜設定される。
【0044】
本実施形態では、バックライト装置3が、4個の発光ダイオードDが直列接続された直列光源群301~304を備える場合について説明したが、これに限られない。バックライト装置3は、直列光源群301~304に代えて、例えば、4個の発光ダイオードDのすべてが並列接続された光源群を備えてもよいし、発光ダイオードDが2個直列接続されたものが2個並列接続された光源群を備えてもよい。
【0045】
本実施形態では、制御装置4がPWM調光によって各発光ダイオードDの輝度を調整する場合について説明したが、これに限られない。例えば、制御装置4は、各発光ダイオードDに流す駆動電流の大きさを、駆動回路311~314に変更させることで、各発光ダイオードDの輝度を調整してもよい。
【0046】
本実施形態では、光源として発光ダイオードDが用いられているが、これに限られない。光源は、輝度を制御可能なものであればよい。
【0047】
図7図9は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0048】
<第2実施形態>
図7および図8は、本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A2を説明するための図である。図7は、ヘッドアップディスプレイ装置A2の機能構成を示すブロック図である。図8は、第2実施形態に係るバックライト制御処理を説明するためのフローチャートの一例である。本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A2は、制御装置4が照度センサ62から入力される照度に基づいて、バックライト装置3を制御する点で、第1実施形態と異なっている。
【0049】
照度センサ62は、例えば車両Bの前方に配置され、周囲の照度を検出するセンサである。照度センサ62によって検出された照度は、例えば、ライトの点灯および消灯の切り替えの判断に用いられる。照度センサ62は、検出した照度を、ヘッドアップディスプレイ装置A2に出力する。
【0050】
本実施形態に係る表示装置1の制御装置4は、照度センサ62から入力される照度に基づいて、直列光源群301~304の各輝度を設定する。具体的には、制御装置4は、照度センサ62から入力される照度を、所定の閾値と比較する。制御装置4は、照度センサ62から入力される照度が所定の閾値以上の場合、周囲が明るく、空が背景になる表示領域71の上側が比較的明るくなると判断して、例えば、第1領域711に対応する直列光源群301、および、第2領域712に対応する直列光源群302の輝度を大きい値に設定し、第3領域713に対応する直列光源群303、および、第4領域714に対応する直列光源群304の輝度を小さい値に設定する。一方、照度が所定の閾値未満の場合、周囲が暗く、ヘッドライトに照らされた路面が背景になる表示領域71の下側が明るくなると判断して、例えば、第1領域711に対応する直列光源群301、および、第2領域712に対応する直列光源群302の輝度を小さい値に設定し、第3領域713に対応する直列光源群303、および、第4領域714に対応する直列光源群304の輝度を大きい値に設定する。なお、上記は一例であって、各場合にいずれの直列光源群301~304の輝度をどのように設定するかは、実験によって、できるだけ最適になるように決定する。
【0051】
次に、第2実施形態に係る制御装置4が行うバックライト制御処理を、図8に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。
【0052】
まず、照度センサ62が検出した照度が取得される(S11)。次に、照度が所定の閾値以上であるか否かが判別される(S12)。照度が閾値以上である場合(S12:YES)、表示領域71の上側領域に対応する直列光源群の輝度を大きい値に設定し(S13)、下側領域に対応する直列光源群の輝度を小さい値に設定する(S14)。一方、ステップS12において、照度が閾値未満である場合(S12:NO)、表示領域71の上側領域に対応する直列光源群の輝度を小さい値に設定し(S15)、下側領域に対応する直列光源群の輝度を大きい値に設定する(S16)。そして、輝度に応じたパルス信号が、対応する駆動回路311~314にそれぞれ出力され(S17)、バックライト制御処理は終了される。なお、図8のフローチャートに示す処理は一例であって、バックライト制御処理は上述したものに限定されない。
【0053】
本実施形態によると、バックライト装置3が直列光源群301~304を備え、制御装置4が、周囲の照度に応じて、各直列光源群301~304の輝度を個別に調整する。したがって、各領域に表示される画像の視認性が向上し、車両Bの走行安全性が向上する。また、各直列光源群301~304は、それぞれ、x方向(車幅方向)に並ぶ4個の発光ダイオードDが直列接続されたものである。したがって、必要な駆動回路の数を抑制でき、製造コストを抑制できる。また、本実施形態によると、カメラ61を必要としないので、ヘッドアップディスプレイ装置A2は、カメラ61を備えていない車両Bでも使用できる。
【0054】
なお、本実施形態では、直列光源群301~304の各輝度の設定パターンが2種類の場合について説明したが、これに限られない。制御装置4は、照度に応じた各輝度の設定パターンを3種類以上設定し、照度センサ62から入力される照度に応じて、直列光源群301~304の各輝度を設定してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、制御装置4が、照度センサ62から入力される照度に基づいて、直列光源群301~304の各輝度を設定する場合について説明したが、これに限られない。制御装置4は、例えば、現在の日時や天候、位置情報に基づいて、直列光源群301~304の各輝度を設定してもよい。日時や天候によって、周囲の明るさは推定できる。また、位置情報によって例えばトンネル内にいることが判れば、夜間と同様の輝度配置に設定できる。また、制御装置4は、例えば、ヘッドライトの点灯状態に応じて、直列光源群301~304の各輝度を設定してもよい。これらの場合、照度センサ62を必要としないので、照度センサ62を備えていない車両Bでも使用できる。なお、制御装置4は上記した手法のいくつかを組み合わせて、直列光源群301~304の各輝度を設定してもよい。
【0056】
<第3実施形態>
図9は、本開示の第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A3を説明するための図である。図9は、ヘッドアップディスプレイ装置A3のバックライト装置3の内部構成を示すブロック図である。本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A3は、バックライト装置3の内部構成が、第1実施形態と異なっている。
【0057】
本実施形態に係るバックライト装置3は、第1実施形態に係るバックライト装置3と同様に、16個の発光ダイオードDがマトリクス状に配置されている。しかし、本実施形態では、x方向に並ぶ2個の発光ダイオードDが直列接続されて1個の直列光源群を構成している。そして、各直列光源群はそれぞれ、駆動回路に接続されている。
【0058】
第1実施形態で直列光源群301を構成していた発光ダイオードDのうち右側の2個の発光ダイオードDが直列光源群321を構成して、駆動回路331に接続されている。また、左側の2個の発光ダイオードDが直列光源群322を構成して、駆動回路332に接続されている。同様に、第1実施形態で直列光源群302を構成していた発光ダイオードDのうち右側の2個の発光ダイオードDが直列光源群323を構成して、駆動回路333に接続されている。また、左側の2個の発光ダイオードDが直列光源群324を構成して、駆動回路334に接続されている。第1実施形態で直列光源群303を構成していた発光ダイオードDのうち右側の2個の発光ダイオードDが直列光源群325を構成して、駆動回路335に接続されている。また、左側の2個の発光ダイオードDが直列光源群326を構成して、駆動回路336に接続されている。第1実施形態で直列光源群304を構成していた発光ダイオードDのうち右側の2個の発光ダイオードDが直列光源群327を構成して、駆動回路337に接続されている。また、左側の2個の発光ダイオードDが直列光源群328を構成して、駆動回路338に接続されている。
【0059】
本実施形態に係る制御装置4(図9には表れていない)は、カメラ61から入力される撮影画像情報に基づいて、直列光源群321~328の各輝度を設定し、設定された輝度に応じたパルス信号をそれぞれ対応する駆動回路331~338に出力する。つまり、制御装置4は、直列光源群321~328を個別に制御している。
【0060】
本実施形態によると、バックライト装置3が直列光源群321~328を備え、制御装置4が、各直列光源群321~328に対応する領域の背景の明るさに応じて、各直列光源群321~328の輝度を個別に調整する。したがって、各領域に表示される画像の視認性が向上し、車両Bの走行安全性が向上する。また、各直列光源群321~328は、それぞれ、x方向(車幅方向)に並ぶ2個の発光ダイオードDが直列接続されたものである。したがって、各発光ダイオードDをそれぞれ個別に駆動させる場合と比較して、必要な駆動回路の数を抑制できる。さらに、本実施形態によると、ウインドシールド7の表示領域71において、背景の明るさが左右で異なる場合にも、対応する直列光源群の輝度を個別に調整できるので、各領域に表示される画像の視認性がさらに向上し、車両Bの走行安全性がさらに向上する。
【0061】
なお、本実施形態の場合、第1実施形態に比べて、必要な駆動回路の数が多くなる。また、先述したように、ウインドシールド7の表示領域71において、背景の明るさが車幅方向で大きく異なることは少ないので、左右で異なる輝度に制御する状況は少ない。したがって、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置A1のように、x方向に並ぶ発光ダイオードDをすべて直列接続する方が、より好ましい。
【0062】
第1~第3実施形態においては、ヘッドアップディスプレイ装置A1~A3が車両Bに取り付けられる場合について説明したが、これに限られない。ヘッドアップディスプレイ装置A1~A3は、例えば飛行機や船などの他の乗り物に取り付けられてもよい。
【0063】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0064】
A1~A3:ヘッドアップディスプレイ装置
1 :表示装置
1a :表示面
2 :液晶パネル
3 :バックライト装置
D :発光ダイオード
301~304,321~328:直列光源群
311~314,331~338:駆動回路
4 :制御装置
51 :第1ミラー
52 :第2ミラー
60 :画像生成部
61 :カメラ
62 :照度センサ
7 :ウインドシールド
71 :表示領域
711 :第1領域
712 :第2領域
713 :第3領域
714 :第4領域
8 :撮影画像
B :車両
E :視点
L :光路
V :虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9