IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許-免震装置 図1
  • 特許-免震装置 図2
  • 特許-免震装置 図3
  • 特許-免震装置 図4
  • 特許-免震装置 図5
  • 特許-免震装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20231218BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16F15/04 P
E04H9/02 331A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020068504
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165569
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】森 隆浩
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104878839(CN,A)
【文献】特開2014-047926(JP,A)
【文献】特開2001-140977(JP,A)
【文献】特開平11-141180(JP,A)
【文献】特開平11-141181(JP,A)
【文献】特開平09-126272(JP,A)
【文献】特開2013-044416(JP,A)
【文献】特開2006-170233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体の各前記軟質材料層どうしを鉛直方向に積層してなる仮想ブロック体を、本ブロック体と称し、
前記軟質材料層を構成する軟質材料と同じ軟質材料からなるとともに、水平剛性及び鉛直方向長さが前記本ブロック体と同じである、中心軸線が鉛直方向に延在する円柱状のブロック体を、比較ブロック体と称するとき、
前記本ブロック体のせん断歪が0%の状態において前記本ブロック体のうち前記本ブロック体の鉛直方向の全長にわたって鉛直方向に連続的に延在する本全長ブロック部分の軸直方向断面積A71は、前記比較ブロック体のせん断歪が0%の状態において前記比較ブロック体のうち前記比較ブロック体の鉛直方向の全長にわたって鉛直方向に連続的に延在する比較全長ブロック部分の軸直方向断面積A81よりも、小さく、
前記比較ブロック体の2次形状係数を、S2と称するとき、
前記本ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態において前記本ブロック体の上面及び下面どうしが鉛直方向に重複する本重複領域の面積A72は、前記比較ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態において前記比較ブロック体の上面及び下面どうしが鉛直方向に重複する比較重複領域の面積A82よりも、大きい、免震装置。
【請求項2】
前記本ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態における前記本重複領域の面積A72は、前記比較ブロック体のせん断歪が0%の状態における前記比較全長ブロック部分の軸直方向断面積A81の0.05倍以上である、請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記本ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態における前記本重複領域の面積A72は、前記比較ブロック体のせん断歪が0%の状態における前記比較全長ブロック部分の軸直方向断面積A81の0.09倍以上である、請求項1に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の免震装置は、一般的に、硬質材料層及び軟質材料層が鉛直方向に交互に積層されてなるものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-170233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の免震装置においては、免震装置の水平方向変形時において、座屈するおそれがあった。
【0005】
この発明は、耐座屈性能を向上できる免震装置を提供することを、目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の免震装置は、
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体の各前記軟質材料層どうしを鉛直方向に積層してなる仮想ブロック体を、本ブロック体と称し、
前記軟質材料層を構成する軟質材料と同じ軟質材料からなるとともに、水平剛性及び鉛直方向長さが前記本ブロック体と同じである、中心軸線が鉛直方向に延在する円柱状のブロック体を、比較ブロック体と称するとき、
前記本ブロック体のせん断歪が0%の状態において前記本ブロック体のうち前記本ブロック体の鉛直方向の全長にわたって鉛直方向に連続的に延在する本全長ブロック部分の軸直方向断面積A71は、前記比較ブロック体のせん断歪が0%の状態において前記比較ブロック体のうち前記比較ブロック体の鉛直方向の全長にわたって鉛直方向に連続的に延在する比較全長ブロック部分の軸直方向断面積A81よりも、小さく、
前記比較ブロック体の2次形状係数を、S2と称するとき、
前記本ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態において前記本ブロック体の上面及び下面どうしが鉛直方向に重複する本重複領域の面積A72は、前記比較ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態において前記比較ブロック体の上面及び下面どうしが鉛直方向に重複する比較重複領域の面積A82よりも、大きい。
本発明の免震装置によれば、耐座屈性能を向上できる。
【0007】
本発明の免震装置において、
前記本ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態における前記本重複領域の面積A72は、前記比較ブロック体のせん断歪が0%の状態における前記比較全長ブロック部分の軸直方向断面積A81の0.05倍以上であると、好適である。
これにより、耐座屈性能をさらに向上できる。
【0008】
本発明の免震装置において、
前記本ブロック体のせん断歪がS2×100%の状態における前記本重複領域の面積A72は、前記比較ブロック体のせん断歪が0%の状態における前記比較全長ブロック部分の軸直方向断面積A81の0.09倍以上であると、好適である。
これにより、耐座屈性能をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、耐座屈性能を向上できる免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図2図2(a)は、図1の積層構造体に対応する本ブロック体を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図であり、図2(b)は、図2(a)の本ブロック体に対応する比較ブロック体を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図である。
図3図3(a)は、図2(a)の本ブロック体を、せん断歪がS2×100%の状態で示す、軸線方向断面図であり、図3(b)は、図2(b)の比較ブロック体を、せん断歪がS2×100%の状態で示す、軸線方向断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る免震装置に対応する本ブロック体を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る免震装置に対応する本ブロック体を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図である。
図6】本発明の任意の実施形態に係る免震装置に適用し得るフランジプレートを示す、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る免震装置の実施形態を例示説明する。各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0012】
図1図3は、本発明の第1実施形態に係る免震装置1を説明するための図面である。図1は、第1実施形態に係る免震装置1を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図1に示すように、免震装置1は、上下一対のフランジプレート21、22(以下、それぞれ「上側フランジプレート21」、「下側フランジプレート22」ともいう。)と、積層構造体3と、を備えている。
【0013】
本明細書において、免震装置1の「中心軸線O」(以下、単に「中心軸線O」ともいう。)は、積層構造体3の中心軸線である。免震装置1の中心軸線Oは、鉛直方向に延在するように指向される。本明細書において、免震装置1の「軸線方向」とは、免震装置1の中心軸線Oに平行な方向である。免震装置1の「軸線方向内側」とは、積層構造体3の軸線方向中心に近い側を指しており、免震装置1の「軸線方向外側」とは、積層構造体3の軸線方向中心から遠い側(フランジプレート21、22に近い側)を指している。また、免震装置1の「軸直方向」とは、免震装置1の軸線方向に垂直な方向である。また、免震装置1の「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」とは、免震装置1の中心軸線Oを中心としたときの「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」をそれぞれ指す。また、「上」、「下」とは、鉛直方向における「上」、「下」をそれぞれ指す。
【0014】
上側フランジプレート21は、上側フランジプレート21の上に構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)の上部構造(建物本体等)が載せられた状態で、当該上部構造に連結されるように、構成されている。下側フランジプレート22は、上側フランジプレート21よりも下側に配置され、構造物の下部構造(基礎等)に連結されるように構成されている。上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、金属から構成されると好適であり、鋼から構成されるとより好適である。上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、軸直方向断面において、円形又は略多角形状(略四角形、略八角形等)等、任意の外縁形状を有してよい。例えば、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、例えば図6に示す例のように、外縁形状が、略八角形をなすとともに、直線状の辺部2aと外周側へ凸に湾曲する湾曲線状の辺部2bとが周方向に交互に配置されてなるものであってもよい。また円形状や四角形状であってもよい。
【0015】
積層構造体3は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22どうしの間に配置されている。積層構造体3は、複数の硬質材料層4と、複数の軟質材料層5と、被覆層6と、を有している。硬質材料層4と軟質材料層5とは、鉛直方向に交互に積層されている。各硬質材料層4と各軟質材料層5とは、同軸上に配置されており、すなわち、各硬質材料層4と各軟質材料層5とのそれぞれの中心軸線は、免震装置1の中心軸線O上に位置している。積層構造体3の上下両端には、軟質材料層5が配置されている。積層構造体3の上下両端に配置された一対の軟質材料層5は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22にそれぞれ固定されている。
【0016】
硬質材料層4は、硬質材料から構成されている。硬質材料層4を構成する硬質材料としては、金属が好適であり、鋼がより好適である。図1の例のように、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔は、均一(一定)であると、好適であるが、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔は、不均一(非一定)であってもよい。ここで、「硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔」とは、互いに隣り合う一対の硬質材料層4の軸線方向中心どうしの間の軸線方向距離を指す。また、図1図4の各例のように、各硬質材料層4の厚さは、互いに同じであると、好適であるが、各硬質材料層4の厚さは、互いに異なっていてもよい。
軟質材料層5は、硬質材料層4よりも硬さの低い(柔らかい)、軟質材料から構成されている。軟質材料層5を構成する軟質材料としては、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。軟質材料層5を構成し得るゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴム(高減衰ゴム等)が好適である。図1の例のように、各軟質材料層5の厚さは、互いに同じであると、好適であるが、各軟質材料層5の厚さは、互いに異なっていてもよい。
【0017】
被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面を覆っている。被覆層6を構成する材料は、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。被覆層6を構成する材料は、軟質材料層5を構成する軟質材料と同じでもよいし、軟質材料層5を構成する軟質材料とは異なっていてもよい。
被覆層6は、軟質材料層5と一体に構成されている。
図1の例において、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の全体を覆っていており、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の全体を構成している。ただし、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の一部のみを覆っていてもよく、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の一部のみを構成していてもよい。また、被覆層6は、設けられていなくてもよく、その場合、積層構造体3の外周側の表面は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面のみから構成される。
【0018】
本実施形態において、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6は、それぞれ、軸直方向断面において、円形又は略多角形状(略四角形)等の任意の外縁形状を有していてもよい。
【0019】
なお、本明細書において、ある要素(例えば、積層構造体3、硬質材料層4、軟質材料層5、被覆層6、後述の本ブロック体7、後述の比較ブロック体8)のそれぞれの「外径」とは、当該要素が軸直方向断面において非円形の外縁形状を有している場合、軸直方向断面における当該要素の外接円の外径を指す。
【0020】
本発明の各実施形態の免震装置1の積層構造体3は、以下に説明する本ブロック体7及び比較ブロック体8を用いて規定される。
【0021】
図2(a)は、図1の実施形態の免震装置1の積層構造体3に対応する本ブロック体7を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図であり、図2(b)は、図2(a)の本ブロック体7に対応する比較ブロック体8を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図である。図2(a)及び図2(b)は、断面図であるが、見易さのために、ハッチングを省略している。図2(a)では、便宜のため、本ブロック体7とともに、積層構造体3の中心軸線Oを併せて示している。本ブロック体7の中心軸線は、積層構造体3の中心軸線Oと一致する。
本発明の各実施形態において、免震装置1の積層構造体3に対応する「本ブロック体7」とは、当該積層構造体3の各軟質材料層5どうしを鉛直方向に積層して一体化してなる仮想ブロック体である。また、当該本ブロック体7に対応する「比較ブロック体8」とは、当該積層構造体3の軟質材料層5を構成する軟質材料と同じ軟質材料からなるとともに、水平剛性及び鉛直方向長さT8が、それぞれ上記本ブロック体7の水平剛性及び鉛直方向長さT7と同じであるような、中心軸線O’が鉛直方向に延在する円柱状のブロック体である。免震装置1の実施形態毎に、それぞれ別々の本ブロック体7及び比較ブロック体8が規定される。
「せん断歪が0%の状態」とは、水平方向変形が生じていない状態に相当する。比較ブロック体8は、従来一般的に観られるような円柱状の積層構造体を備えた免震装置において、当該積層構造体の各軟質材料層どうしを積層して一体化してなる仮想ブロック体として、観ることができる。本ブロック体7と比較ブロック体8とは、互いに同じ軟質材料から構成されている。本ブロック体7の鉛直方向長さT7は、積層構造体3の軟質材料層5の総厚さ(すなわち、積層構造体3の各軟質材料層5の厚さの合計)と同じである。比較ブロック体8の鉛直方向長さT8は、上記従来一般的に観られるような円柱状の積層構造体を備えた免震装置における、積層構造体の軟質材料層の総厚さ(すなわち、積層構造体の各軟質材料層の厚さの合計)と同じと観ることができる。比較ブロック体8のなす円柱形状の中心軸線O’は、鉛直方向に延在している。
本発明の各実施形態において、積層構造体3は、例えば図2に示す実施形態のように、本ブロック体7のせん断歪が0%の状態における本ブロック体7の本全長ブロック部分71の軸直方向断面積A71が、比較ブロック体8のせん断歪が0%の状態における比較ブロック体8の比較全長ブロック部分81の軸直方向断面積A81よりも、小さい(以下、この構成を「構成A」ともいう。)。
「本全長ブロック部分71」とは、本ブロック体7のうち、本ブロック体7の鉛直方向の全長にわたって鉛直方向に連続的に延在する部分である。「比較全長ブロック部分81」とは、比較ブロック体8のうち、比較ブロック体8の鉛直方向の全長にわたって鉛直方向に連続的に延在する部分である。比較ブロック体8は、円柱状であることから、比較ブロック体8のせん断歪が0%の状態における比較ブロック体8の比較全長ブロック部分81は、比較ブロック体8の全体となる。構成Aから、本ブロック体7は非円柱状であるとともに、比較ブロック体8の外径D3(図2)は、本ブロック体7の最小外径D1(図2)よりも大きく、かつ、本ブロック体7の最大外径D2(図2)よりも小さい、ということが導かれる。本ブロック体7の「最小外径D1」とは、本ブロック体7のうち外径が最小となる箇所における外径である。本ブロック体7の「最大外径D2」とは、本ブロック体7のうち外径が最大となる箇所における外径である。本ブロック体7の形状や寸法は、積層構造体3の各軟質材料層5の形状や寸法によって決まる。本ブロック体7の形状は、非円柱状である限り、任意とすることができる。
なお、本明細書において、「軸直方向断面積」とは、軸直方向断面における面積を指す。
【0022】
図3(a)は、図2(a)の本ブロック体7を、せん断歪がS2×100%の状態で示す、軸線方向断面図であり、図3(b)は、図2(b)の比較ブロック体8を、せん断歪がS2×100%の状態で示す、軸線方向断面図である。図3(a)及び図3(b)は、断面図であるが、見易さのために、ハッチングを省略している。ここで、「S2」とは、比較ブロック体8の2次形状係数であり、具体的には、S2=D3/T8である。
本発明の各実施形態において、積層構造体3は、例えば図3に示す実施形態のように、本ブロック体7のせん断歪がS2×100%の状態における本ブロック体7の本重複領域72の面積A72が、比較ブロック体8のせん断歪がS2×100%の状態における比較ブロック体8の比較重複領域82の面積A82よりも、大きい(以下、この構成を「構成B」ともいう。)。
「本重複領域72」とは、本ブロック体7の上面7U及び下面7Lどうしが鉛直方向に重複する領域である。「比較重複領域82」とは、比較ブロック体8の上面8U及び下面8Lどうしが鉛直方向に重複する領域である。「比較ブロック体8のせん断歪がS2×100%の状態」とは、比較ブロック体8が、上面8Uが下面8Lに対して水平方向に比較ブロック体8の外径D3だけ変位し、鉛直方向の投影視において上面8Uと下面8Lとが隣り合わせになった状態に相当する。したがって、「比較ブロック体8のせん断歪がS2×100%の状態における比較ブロック体8の比較重複領域82の面積A82」は、0(ゼロ)となる。よって、構成Bは、本ブロック体7のせん断歪がS2×100%の状態(鉛直方向の投影視において比較ブロック体8の上面8Uと下面8Lとが隣り合わせになるまで比較ブロック体8に生じたせん断歪と、同じ量のせん断歪が、本ブロック体7に生じた状態)における、本ブロック体7の本重複領域72の面積A72が、0(ゼロ)よりも大きいことと、等価である。
【0023】
このように、本発明の各実施形態の免震装置1は、構成A及び構成Bを満たすものである。
【0024】
以下、本発明の各実施形態の免震装置1の作用効果について説明する。
本発明の各実施形態の免震装置1によれば、構成A(本ブロック体7のせん断歪が0%の状態における本ブロック体7の本全長ブロック部分71の軸直方向断面積A71が、比較ブロック体8のせん断歪が0%の状態における比較ブロック体8の比較全長ブロック部分81の軸直方向断面積A81よりも、小さい)と構成B(本ブロック体7のせん断歪がS2×100%の状態における本ブロック体7の本重複領域72の面積A72が、比較ブロック体8のせん断歪がS2×100%の状態における比較ブロック体8の比較重複領域82の面積A82よりも、大きい)とを満たすので、積層構造体の各軟質材料層どうしを積層して一体化してなる仮想ブロック体が比較ブロック体8となるような、従来一般的に観られる円柱状の積層構造体を備えた免震装置に比べて、免震装置1の免震性能を同等に維持しつつ、免震装置1の水平変形時において、積層構造体3がよりしっかりと軸線方向(鉛直方向)に支えられるので、免震装置1が座屈しにくくなる(言い換えれば、免震装置1の耐座屈性能を向上できる)。
【0025】
本発明の各実施形態においては、本ブロック体7のせん断歪がS2×100%の状態における本重複領域72の面積A72(図3)が、比較ブロック体8のせん断歪が0%の状態における比較全長ブロック部分81の軸直方向断面積A81(図2)の0.05倍以上であると好適であり、0.09倍以上であるとより好適である。
これにより、免震性能を維持しつつ、耐座屈性能をさらに向上できる。
なお、本ブロック体7のせん断歪がS2×100%の状態における本重複領域72の面積A72(図3)は、座屈ひずみに関しては大きい程良い。
【0026】
上述のとおり、本ブロック体7の形状は、非円柱状である限り、任意とすることができる。積層構造体3の形状も、非円柱状である限り、任意とすることができる。
本ブロック体7の外表面は、本ブロック体の中心軸線Oの周りに回転対称であると、好適である。積層構造体3の外表面も、積層構造体3の中心軸線Oの周りに回転対称であると、好適である。
【0027】
図4は、本発明の第2実施形態に係る免震装置1に対応する本ブロック体7を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図であり、図2(a)に対応する図面である。図5は、本発明の第3実施形態に係る免震装置1に対応する本ブロック体7を、せん断歪が0%の状態で示す、軸線方向断面図であり、図2(a)に対応する図面である。
本発明の各実施形態において、本ブロック体7は、図2(a)、図4図5の各実施形態のように、本ブロック体7の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側に、本全長ブロック部分71よりも外周側へ突出した突出部73を有していると、好適である。この場合、本ブロック体7の上側及び下側のうち上記少なくともいずれか一方の端部側において、突出部73の軸線方向外側の端は、本ブロック体7の軸線方向外側の端に位置するものとする。
これにより、仮に、本ブロック体7が突出部73を有していない場合や、本ブロック体7の上側及び下側のうち上記少なくともいずれか一方の端部側において、突出部73が本ブロック体7の軸線方向外側の端から軸線方向内側へ離間している場合に比べて、免震装置1の水平変形時において、積層構造体3がよりしっかりと軸線方向(鉛直方向)に支えられるので、免震装置1の耐座屈性能を向上できる。
【0028】
なお、本ブロック体7が、図4及び図5の各実施形態のように、その上側及び下側の両方の端部側において突出部73を有する場合は、図2(a)の実施形態のように、その上側及び下側のうちいずれか一方の端部側のみにおいて突出部73を有する場合に比べて、耐座屈性能を向上できる。
一方、本ブロック体7が、図2(a)の各実施形態のように、その上側及び下側のうちいずれか一方の端部側のみにおいて突出部73を有する場合は、図4及び図5の実施形態のように、その上側及び下側の両方の端部側において突出部73を有する場合に比べて、免震装置1の製造時において、積層構造体3を構成する各硬質材料層4及び各軟質材料層5の積層作業等がしやすくなるので、免震装置1の製造性を向上できる。
【0029】
本発明の各実施形態において、本ブロック体7の突出部73は、軸線方向断面において、図2図4の各実施形態のように四角形、あるいは、図5の実施形態のように三角形等、任意の形状をなしてよい。
【0030】
本明細書で説明する各例において、本ブロック体7のうち突出部73に対応する軸線方向領域において、本ブロック体7の軸直方向断面積は、図2(a)及び図4の各実施形態のように、本ブロック体7の軸線方向外側の端に至るまで、軸線方向に沿って一定でもよいし、あるいは、図5の実施形態のように、本ブロック体7の軸線方向外側の端に至るまで、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に増大していてもよい。
本明細書において、「徐々に増大」とは、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に増大する場合に限られず、一部分で一定に維持される場合(例えば、段階的に増大する場合)も含む。
図5の実施形態のように、本ブロック体7のうち突出部73に対応する軸線方向領域において、本ブロック体7の軸直方向断面積が、本ブロック体7の軸線方向外側の端に至るまで、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に増大している場合、仮に、本ブロック体7のうち突出部73に対応する軸線方向領域において、本ブロック体7の軸直方向断面積が、本ブロック体7の軸線方向外側の端に至るまでの間、少なくとも一か所において、軸線方向外側に向かうにつれて減少する場合に比べて、免震装置1の耐座屈性能を向上できる。
また、図5の実施形態のように、本ブロック体7のうち突出部73に対応する軸線方向領域において、本ブロック体7の軸直方向断面積が、本ブロック体7の軸線方向外側の端に至るまで、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に増大している場合は、図2(a)及び図4の各実施形態のように、本ブロック体7のうち突出部73に対応する軸線方向領域において、本ブロック体7の軸直方向断面積が、本ブロック体7の軸線方向外側の端に至るまで、軸線方向に沿って一定である場合に比べて、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち、各軟質材料層5のうち本ブロック体7の突出部73を構成する部分の近傍部分が、フランジプレート21、22から離れるように軸線方向内側へ反り返ること(以下、「めくれ上がり」という。)を、抑制することができる。それにより、めくれ上がりに起因して、積層構造体3の各軟質材料層5のうち本ブロック体7の突出部73を構成する部分が疲労したり損傷したりするおそれを、低減でき、ひいては、免震装置1の耐久性を向上できる。
【0031】
また、本明細書で説明する各例においては、図5の実施形態のように、本ブロック体7のうち突出部73に対応する軸線方向領域において、本ブロック体7の軸直方向断面積が、本ブロック体7の軸線方向外側の端に至るまで、積層構造体3の軸線方向外側に向かうにつれて、一部分で一定に維持されることなく常に連続的に増大していると、より好適である。この場合、積層構造体3のめくれ上がりをさらに抑制することができる。
【0032】
なお、図2図4の各実施形態において、突出部73の軸線方向内側の端は、本ブロック体7の軸線方向中心よりも軸線方向外側に離間しており、それにより、本ブロック体7のうち突出部73よりも軸線方向内側の中央部分において、本ブロック体7の軸直方向断面積は、軸線方向に沿って一定である。
ただし、突出部73の軸線方向内側の端は、図5の実施形態のように、本ブロック体7の軸線方向中心に位置していてもよい。
【0033】
積層構造体3は、図1の例においては、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状ではなく中実に構成されており、積層構造体3の中心軸線O上に硬質材料層4と軟質材料層5とが位置しているが、これに限られない。例えば、積層構造体3は、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状に構成されており、各硬質材料層4の中心穴と各軟質材料層5の中心穴とによって、積層構造体3は、その中心軸線O上に、軸線方向に延在する中心穴を有しており、当該中心穴に、柱状体が配置されていてもよい。柱状体は、塑性変形により振動エネルギーを吸収できるように構成されていると好適である。柱状体は、例えば、鉛、錫、錫合金、又は熱可塑性樹脂から構成されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
【符号の説明】
【0035】
1:免震装置、
21:上側フランジプレート(フランジプレート)、 22:下側フランジプレート(フランジプレート)、 2a:直線状の辺部、 2b:湾曲線状の辺部、
3:積層構造体、
4:硬質材料層、
5:軟質材料層、
6:被覆層、
7:本ブロック体、 7U:上面、 7L:下面、 71:本全長ブロック部分、 72:本重複領域、 73:突出部、
8:比較ブロック体、 8U:上面、 8L:下面、 81:比較全長ブロック部分、 82:比較重複領域、
O、O’:中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6