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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20231218BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20231218BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
B62D1/04
B62D6/00
B62D113:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073979
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169285
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】石垣 誠司
(72)【発明者】
【氏名】上野 博司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】垣見 宗良
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠二
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小清水 徹
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180843(JP,A)
【文献】特開2005-022638(JP,A)
【文献】特開2020-040437(JP,A)
【文献】特開2013-226943(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110712677(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B62D 6/00
B62D 101/00-137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されることで変位され、手動動作時において変位に応じて車両を転舵するための操作体と、
前記操作体の変位を検知し、前記手動動作時に検知する前記操作体の変位に応じて車両を転舵させるための検知手段と、
非手動動作時に、前記検知手段により検知される前記操作体の変位から前記操作体及び前記検知手段の状態を判定する判定部と、
を備えた操作装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記検知手段が検知する前記操作体の変位位置が該操作体の予め設定された位置を示すか否かから判定する請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記非手動動作時に、前記操作体に対する所定の操作を要求する要求部を含み、
前記判定部は、前記要求に応じた前記操作体の変位が前記検知手段によって検知されたか否かを判定することを含む請求項1又は請求項2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記判定部の判定結果を報知する報知部を含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動走行時に操作対象を操作するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両用電動パワーステリング装置は、自動運転モードへの切換え指令を受けると、制御装置が自動運転車両の自動運転機能が正常であるか否かを判断する。また、制御装置は、ドライビングポジション装置から正常であると指令がある場合には、正常出ると判断して、ステアリングホイールを自動運転用ポジション(格納位置)に配置し、自動運転モードでの走行中において車両の操舵のための操作体の挙動を抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6596615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行開始から走行終了までを乗員の運転操作を介さない自動運転モードで走行する車両が提案されている。このような車両では、通常、自動運転モードで走行し、自動運転モードが停止されることで、乗員の運転操作により走行可能となる(手動運転モードに切換えられる)。
【0005】
しかしながら、自動運転モードでの走行中において車両の操舵のための操作体の挙動が抑止され、操作体が回転動作していないと、自動運転モードが停止した場合に、操作体が操作できる状態(動かせる状態)であるか否かが不明となる。
【0006】
本発明は上記事実を鑑みて成されたものであり、手動運転モードにおいて操作される操作体が操作可能な状態か否かを把握できる操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の操作装置は、操作されることで変位され、手動動作時において変位に応じて車両を転舵するための操作体と、前記操作体の変位を検知し、前記手動動作時に検知する前記操作体の変位に応じて車両を転舵させるための検知手段と、非手動動作時に、前記検知手段により検知される前記操作体の変位から前記操作体及び前記検知手段の状態を判定する判定部と、を備える。
【0008】
第2の態様の操作装置は、第1の態様において、前記判定部は、前記検知手段が検知する前記操作体の変位位置が該操作体の予め設定された位置を示すか否かから判定する。
【0009】
第3の態様の操作装置は、第1又は第2の態様において、前記非手動動作時に、前記操作体に対する所定の操作を要求する要求部を含み、前記判定部は、前記要求に応じた前記操作体の変位が前記検知手段によって検知されたか否かを判定することを含む。
【0010】
第4の態様の操作装置は、第1から第3の何れか1の態様において、前記判定部の判定結果を報知する報知部を含む。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様の操作装置では、操作されることで変位される操作体の変位が検知手段により検知される。このため、手動動作時において操作体が変位されることで、変位に応じて車両が転舵される。
【0012】
ここで、判定部は、非手動動作時において、検知手段により検知される操作体の変位から操作体及び検知手段の状態を判定する。これにより、手動運転モードにおいて操作体及び検知手段が車両の操舵が可能な状態か否かを、非手動動作時に把握できる。
【0013】
第2の態様の操作装置では、検知手段が検知する操作体の変位位置が該操作体の予め設定された位置を示すか否かから、操作体及び検知手段の状態を判定する。これにより、操作体及び検知手段の状態を判定するための特別な手段を設ける必要がない。
【0014】
第3の態様の操作装置では、要求部が、非手動動作時に操作体に対する所定の操作を要求する。判定部は、要求に応じた操作体の変位が検知手段によって検知されたか否かを判定する。これにより、操作体の変位を検知手段によって検知できるか否かを判定できて、手動運転モードにおいて操作体及び検知手段が車両の操舵が可能な状態か否かを把握できる。
【0015】
第4の態様の操作装置では、判定部の判定結果を報知する報知部を含む。これにより、操作体及び検知手段が車両の操舵が可能な状態でない場合に、非手動動作から手動動作に移行するのを制限できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に適用した操舵システムを示す概略構成図である。
図2】操舵装置の動作処理の概略を示す流れ図である。
図3】(A)は、自己診断処理の一例を示す流れ図、(B)は、自己診断処理の他の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態では、車両の進行方向を変更(転舵)するための操舵システム10を例に説明する。図1には、本実施形態に係る操舵システム10が概略構成図にて示されている。
【0018】
本実施形態に係る操舵システム10が設置される車両は、乗員の運転操作を介さずに走行する車両(自動運転車両)とされている。図1に示すように、操舵システム10は、転舵装置としての転舵部12を備えている。転舵部12は、転舵動作部としての転舵アクチュエータ14と、転舵角検知部としての転舵角センサ16と、転舵制御部としての転舵ECU18とを備えている。
【0019】
転舵アクチュエータ14は、図示しないリンク機構を介して車両の左右の転舵輪(例えば、前輪)20に連結されている。車両は、転舵アクチュエータ14が作動されることで転舵輪20が転舵され、進行方向が変更(転舵)される。また、転舵角センサ16は、転舵アクチュエータ14によって転舵される転舵輪20の転舵角を検知(検出)する。
【0020】
転舵ECU18には、転舵アクチュエータ14及び転舵角センサ16が電気的に接続されている。転舵ECU18は、転舵情報(転舵信号)が入力されることで、転舵角センサ16によって検知される転舵角が転舵情報の転舵角となるように転舵アクチュエータ14の作動を制御する。
【0021】
操舵システム10が設置される車両には、自動運転走行等を制御する車両制御システムが構成されている。車両制御システムにおいて自動運転制御を担う自動運転制御部(例えば、自動運転ECU22)は、乗員の運転操作を介さずに車速制御、制動制御及び操舵制御等を行い、車両を自動運転モードで走行させる。
【0022】
自動運転ECU22には、転舵ECU18が電気的に接続されており、自動運転ECU22は、転舵ECU18を介して転舵輪20を転舵させる転舵制御を行う。自動運転ECU22は、車両を自動運転モードで走行させる際、自動運転モードで動作中であることを示す情報(自動運転信号)と共に、車両を操舵するための転舵情報(操舵角信号)を転舵ECU18に出力する。これにより、自動運転信号が入力されている間、転舵ECU18が自動運転ECU22から入力される転舵信号に応じて転舵アクチュエータ14の作動させることで、自動運転ECU22が車両の操舵制御が行われる。
【0023】
一方、車両は、自動運転ECU22が自動運転モードでの動作を停止することで、乗員の運転操作に応じて走行される手動運転モードに移行する。車両には、乗員の運転操作によって車速を制御するための車速装置、及び車両の制動を制御するための制動装置等(いずれも図示省略)が設けられており、自動運転ECU22が自動運転モードを停止することで、車速装置及び制動装置を用いた乗員の運転操作に応じた車速制御及び制動制御が可能となっている。車両では、自動運転モードが停止された際の操舵制御に操舵システム10が用いられる。
【0024】
ここで、本実施形態に係る操舵システム10は、操舵装置及び操舵デバイスとしての操舵部24を備えている。操舵部24には、操作体及びステアリング体としてのハンドル26と、検知手段としての回転角センサ28と、操舵ECU30とが設けられている。
【0025】
ハンドル26は、円環状(リング状)に形成されており、ハンドル26の軸心部には、シャフト32が連結されて、ハンドル26とシャフト32とが一体回転可能にされている。また、シャフト32は、操舵部24の図示しない筐体に回転可能に取付けられている。これにより、ハンドル26は、操舵部24の筐体を介して車体に取付けられ、ハンドル26は、シャフト32を軸に回転可能とされている。
【0026】
回転角センサ28は、ハンドル26と共に回転されるシャフト32の回転角を検知(検出)して、ハンドル26の回転角を検知する。
【0027】
ハンドル26は、乗員が片手で回転操作可能な大きさ(外径サイズ)とされ、ハンドル26の外径は、一般的ステアリングホイールの外径よりも小さくされている。また、ハンドル26には、中間位置(回転可能範囲の中間位置)が初期位置としてのホームポジションに設定されている。ハンドル26は、ホームポジションを中心に右回り(矢印R方向回り)及び左回り(矢印L方向回り)に所定の角度範囲で回転操作可能とされている。
【0028】
なお、図1では、ハンドル26がホームポジションに配置された状態が示されている。また、ハンドル26には、節度機構及び摩擦機構などが設けられ、車両の振動等によってホームポジションから変位されるのが抑制されていると共に、回転操作された際、安定した操作感が得られるようにされている。
【0029】
ハンドル26は、ステアリングホイールに代えて車両に設けられ、座席(運転席)に着座した乗員(運転者)の車両前側に配置されている。これにより、ハンドル26は、乗員により回転操作可能とされている。
【0030】
操舵ECU30は、CPU、ROM、RAM及び不揮発性メモリとしてのストレージがバスによって接続されてマイクロコンピュータ(図示省略)を備えている。操舵ECU30には、検出部34、判定部36及び報知部38が形成されている。操舵ECU30では、CPUがROM及びストレージに格納されたプログラムを読み出して、RAMに展開しながら実行することで、検出部34、判定部36及び報知部38の各機能が実現される。
【0031】
操舵ECU30には、回転角センサ28が電気的に接続されており、回転角センサ28から出力される電気信号が操舵ECU30の検出部34に入力される。また、操舵部24は、報知部としてのインジケータ40及びスピーカ42を備えており、スピーカ42は、要求部としても機能する。インジケータ40及びスピーカ42は、操舵ECU30に電気的に接続されている。
【0032】
また、操舵ECU30は、自動運転ECU22及び転舵ECU18の各々に電気的に接続されている。自動運転ECU22は、車両を自動運転モードで走行させる際、自動運転モードで動作中であることを示す情報(自動運転信号)を操舵ECU30に出力する。また、自動運転ECU22は、自動運転モードでの車両走行を停止することで、速度装置や制動装置の操作状況を取得し、車両の走行状態(例えば、車両の走行速度)を示す情報(走行状態信号)を操舵ECU30に出力する。
【0033】
操舵ECU30は、自動運転信号が停止され、走行状態信号が入力されることで、入力された走行状態信号と共に、回転角センサ28によって検知されたハンドル26の回転角信号を転舵ECU18に出力する。転舵ECU18は、走行状態信号及び回転角信号を転舵情報(転舵信号)として、走行状態信号及び回転角信号に応じて転舵アクチュエータ14を作動させる。
【0034】
これにより、車両は、自動運転モードが停止することで、ハンドル26の操作によって操舵されて走行される。なお、本実施形態では、操舵ECU30が走行状態信号及び回転角信号を転舵ECU18に出力するが、これに限らず、操舵ECU30が回転角信号を自動運転ECU22に出力し、自動運転ECU22が回転角信号から生成した操舵信号を転舵ECU18に出力するようにしてもよい。
【0035】
判定部36は、車両が自動運転モードで走行中において予め設定されたタイミングでハンドル26及び回転角センサ28の状態判定する操舵部24の自己診断を行う。
【0036】
インジケータ40には、LED等の発光素子が用いられ、インジケータ40は、ハンドル26の軸心部に配置される。また、スピーカ42は、報知部及び要求部として設けられており、スピーカ42は、ハンドル26にインジケータ40と共に配置されてもよく、インストルメントパネル(ダッシュボード)に配置されてもよい。また、スピーカ42には、車両のオーディオシステムやナビゲーションシステム等の他のシステムのスピーカが用いられもよい。なお、インジケータ40は、ハンドル26に限らず、インストルメントパネル等の乗員が容易に視認できる部位に設けられてもよい。
【0037】
報知部38は、判定部36の判定結果、及び車両の運転モードに応じてインジケータ40の点灯及び点灯色(発光色)を制御する。また、報知部38は、判定部36の判定結果を自動運転ECU22に出力する。なお、報知部38は、判定部36の判定結果に応じた情報をスピーカ42から発することで乗員に報知してもよい。
【0038】
次に本実施形態の作用を説明する。
本実施形態に係る操舵システム10は、車両が自動運転モードで走行される際、自動運転ECU22から入力される転舵信号に応じ、転舵ECU18が転舵アクチュエータ14の作動を制御する。これにより、車両は、自動運転ECU22によって走行が制御されて、乗員の運転操作を介さずに走行される。
【0039】
一方、貨物船(車両運搬船)への車両の積み下ろし、車両運搬用のトレーラへの車両の積み下ろし、工場内の車両走行などでのように、車両の自動走行のためのインフラ基盤が十分となっていない状態では、車両の自動運転モードでの走行が制限される。
【0040】
車両では、自動運転ECU22が自動運転モードでの動作を停止することで、操舵システム10が用いられて、乗員の運転操作による手動運転モードでの走行が可能となる。図2には、操舵ECU30による操舵部24の動作処理の概略が流れ図にて示されている。
【0041】
操舵システム10では、車両走行が開始されると転舵ECU18と共に操舵ECU30が動作を開始し、車両走行が終了すると動作を終了する。図2のフローチャートでは、操舵ECU30が最初のステップ100において自動運転モードが停止されたか否かを確認する。自動運転モードが停止されると、ステップ100において肯定判定(ステップ100:Y)してステップ102に移行し、操舵部24の動作が開始される。このステップ102では、操舵ECU30がハンドル26に設けているインジケータ40を緑色に点灯させて、ハンドル26の操作が可能となっていることを乗員に報知する。これにより、乗員は、車両が手動運転モードで動作可能となり、ハンドル26によって操舵可能となっていることを認識できる。
【0042】
次のステップ104では、操舵ECU30がハンドル26の回転角を回転角センサ28によって検知し、検知した回転角に応じた信号を転舵ECU18に出力する。転舵ECU18は、自動運転ECU22から入力されていた自動運転信号が停止し、操舵ECU30からハンドル26の回転角に応じた信号が入力されることで、入力された信号に応じて転舵アクチュエータ14を作動させる。これにより、車両は、ハンドル26によって操舵されて走行する。
【0043】
また、ステップ106では、自動運転ECU22が自動運転モードでの動作を開始したか否かを操舵ECU30が確認し、自動運転モードでの動作が開始されなければ、ステップ106で否定判定(ステップ106:N)して、操舵ECU30がハンドル26の操作に応じた回転角の信号(回転角に応じた信号)の出力を継続する(ステップ104)。
【0044】
これに対し、自動運転ECU22が自動運転モードでの動作を開始すると、操舵ECU30は、ステップ106で肯定判定(ステップ106:Y)してステップ108に移行し、回転角に応じた信号の出力を停止すると共に、インジケータ40を消灯する。これにより、車両では、操舵部24が用いられた手動操舵が終了される。
【0045】
一方、操舵システム10では、自動運転モードで走行される際、操舵部24の操舵ECU30が回転角センサ28の検知した信号の出力を停止し、自動運転モードが停止することで、操舵ECU30が回転角センサ28の検知した信号の出力を開始する。ここから、操舵ECU30は、自動運転モードが停止されると、ステップ100において否定判定(ステップ100:N)して、ステップ100に移行し、操舵ECU30が回転角センサ28を用いた操舵部24の自己診断処理を実行する。図3(A)には、操舵ECU30において実行される自己診断処理の一例が流れ図にて示されている。
【0046】
図3(A)の自己診断処理は、自動運転モードでの車両走行中に操舵ECU30において一定時間ごとなどの予め設定されたタイミングで実行される。最初のステップ120では、操舵ECU30が回転角センサ28によって検知(検出)される回転角を読込み、ステップ122では、操舵ECU30が回転角センサ28によって検知している回転角が正常か否かを確認する。
【0047】
操舵部24のハンドル26は、ホームポジションが初期位置とされており、ハンドル26は、回されなければホームポジションに保持される。また、ハンドル26がホームポジションに位置する状態で回転角センサ28が検知する回転角が、回転角センサ28の初期値とされる。ここから、回転角センサ28によって検知される回転角がハンドル26のホームポジションを示すものであれば、操舵ECU30はステップ122において肯定判定(ステップ122:Y)して、ステップ124に移行する。このステップ124において操舵ECU30は、操舵部24(ハンドル26及び回転角センサ28)が正常状態であると判定する。
【0048】
これに対して、回転角センサ28によって検知されている回転角がハンドル26のホームポジションを示すもの(回転角センサ28の初期値)でなければ、操舵ECU30は、ステップ122において否定判定(ステップ122:N)してステップ126に移行する。すなわち、ハンドル26がホームポジションに保持されずに不必要に回っていた場合などの機械的な不備が生じると、ハンドル26の回転位置とホームポジションとの間にずれが生じて、適切な回転操作(操舵操作)ができなくなる可能性がある。また、回転角センサ28は、ハンドル26の回転位置と検知している回転角のずれ、ノイズや不正信号が入力などに起因して誤検知や誤動作などが生じると、ハンドル26の回転位置に応じた適切な回転角の検知ができなくなる。いずれの場合においても、ハンドル26を用いた適切な操舵が実行できない可能性が生じる。
【0049】
ここから、操舵ECU30は、ステップ126において異常判定を行い、判定結果を自動運転ECU22に出力する。これにより、自動運転ECU22が自動運転モードの停止を制限することで、適切な操舵が可能となるとは限らない状態で手動運転モードによる走行が可能となってしまうのを防止できる。また、操舵ECU30は、ステップ126においてインジケータ40を黄色などの警告色に点灯させてもよく、これにより、異常が発生した可能性のあることを乗員に報知できる。なお、異常判定の報知においては、自動運転モードでの走行に支障がないことから、音声やアラーム(警告音)等による報知は実行されないことが好ましく、これにより、乗員に不必要は不安が生じてしまうのを抑制できる。
【0050】
一方、図3(A)では、回転角センサ28の出力される回転角に応じた信号を用いて、異常の有無を判定するようにした。しかしながら、自己診断においては、判定結果の確認処理や復旧処理を合わせて行うようにしてもよい。図3(B)には、自己診断処理の他の一例が流れ図にて示されている。なお、図3(B)において図3(A)と同様の処理については、同様の符号を付与してその説明を省略する。
【0051】
図3(B)において、操舵ECU30は、ステップ122で否定判定(ステップ122:N)するとステップ130に移行する。このステップ130では、操舵ECU30が回転角センサ28への電力供給を遮断することで、回転角センサ28をリセット状態とする。なお、回転角センサ28のリセットは、電力遮断に限らず、回転角センサ28に応じたリセットの手法を適用できる。
【0052】
この後、ステップ132に移行して、操舵ECU30は、回転角センサ28への電力供給を開始し、回転角センサ28が検知している回転角を読込む。ステップ134では、操舵ECU30が読込んだ回転角から回転角センサ28が正常に戻ったか否か、すなわち、検出される回転角がハンドル26のホームポジションを示すか否かを確認する。
【0053】
回転角センサ28が検知している回転角が正常(初期値)であると、操舵ECU30は、ステップ134において肯定判定(ステップ134:Y)し、ステップ124に移行する(正常と判定する)。
【0054】
また、操舵ECU30は、ステップ134において否定判定(ステップ134:N)すると、ステップ136に移行する。このステップ136では、操舵ECU30が乗員にハンドル26の操作を要求する。この場合、例えば、「手動運転モードに用いるハンドルの動作チェックを行います」等のメッセージをスピーカ42から発して乗員に報知する。この後、例えば、「ハンドルを左右どちらかに回した後、ホームポジションに戻してください」等の操作を乗員に要求する。なお、これらのメッセージは、図示しないディスプレイに表示されてもよい。
【0055】
次に、操舵ECU30は、ステップ138において回転角センサ28が検知している回転角の変化が、要求に応じた変化となっているか否かを確認する。すなわち、操舵ECU30は、回転角センサ28の検知する回転角が変化した後に、初期値に戻ったか否かを確認する。
【0056】
ここで、回転角センサ28によって検知する回転角が変化して初期値に戻った場合、操舵ECU30は、ステップ140において肯定判定(ステップ140:Y)して、ステップ124に移行する。
【0057】
これに対して、回転角センサ28の検知する回転角が変化しなかったり、初期値に戻らなかったりした場合、ハンドル26及び回転角センサ28が正常であると判定できない。このため、操舵ECU30は、ステップ140において肯定判定(ステップ140:Y)して、ステップ126に移行する。
【0058】
このように、操舵システム10の操舵部24では、自動運転ECU22が自動運転モードで動作しているときに、操舵ECU30がハンドル26及び回転角センサ28が正常に動作し得る状態であるか否かを自己診断する。これにより、自動運転ECU22が自動運転モードを動作しているときに、ハンドル26及び回転角センサ28が正常に動作可能な否かを把握でき、ハンドル26及び回転角センサ28が正常に動作し得ない状態で自動運転モードが停止されて、手動運転モードに移行してしまうのを制限できる。
【0059】
また、操舵ECU30は、回転角センサ28を用い、回転角センサ28が初期値であるか否かから、ハンドル26及び回転角センサ28の状態を判定する。これにより、ハンドル26及び回転角センサ28の状態を判定するための検査手段を新たに設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制できて、装置のコストが上昇するのを抑制できる。
【0060】
さらに、操舵ECU30は、乗員にハンドル26の操作を要求して、要求した操作に応じた回転角の変化を回転角センサ28によって検知する。これにより、ハンドル26及び回転角センサ28が正常に動作可能な状態であるにもかかわらず、正常に動作し得る状態でないとする誤判定が生じるのを抑制でき、ハンドル26及び回転角センサ28の状態を適正に把握できる。
【0061】
また、操舵ECU30は、判定結果を自動運転ECU22に出力する。これにより、自動運転ECU22が操舵部24の状態を適正に把握でき、手動運転モードでの適正な車両の操舵ができない可能性のある状態で、自動運転ECU22は自動運転モードでの動作を停止してしまうのを制限できる。
【0062】
なお、以上説明した本実施形態では、ハンドル26の大きさ(外径)を、一般的ステアリングホイールの外径よりも小さくした。しかしながら、操作体は、ステアリングホイールと同様の外径であってもよい。この場合、操作体は、ステアリングホイールと同様に乗員(運転者)が着座した座席(運転席)の車両前側に配置されればよい。
【0063】
また、操作体の外径は乗員が片手で全体を掴める大きさ(例えば、数cm~十数cm程度)であってもよい。この場合、操作体は、車両の座席(運転席)に着座した乗員が操作可能な位置に配置されればよく、操作体は、乗員の車両前側のインストルメントパネル、車幅方向内側のセンターコンソール又は車幅方向外側のサイドドア内面等に配置できる。
【0064】
また、本実施形態では、円環状のハンドル26を例に説明した。しかしながら、操作体としては、ダイアル状やつまみ状のノブであってもよい。また、操作体は、操作されることで変位されて、変位が検知可能で得ればよく、トラックボール状やスティック(ジョイステック)状であってもよい。また、操作体は、一文字状や十字状等の形状であってもよい。これらの場合、検知手段は、操作体が操作された際の操作体の変位を検知できる構成であればよい。
【0065】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した判断処理、領域分け処理、画像作成処理およびノイズ除去処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0066】
また、上記実施形態では、検出処理、判定処理、及び報知処理のプログラムが記憶媒体(ストレージ)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10・・・操舵システム、24・・・操舵部(操作装置)、26・・・ハンドル(操作体)、28・・・回転角センサ(検知手段)、30・・・操舵ECU、34・・・検出部、36・・・判定部、38・・・報知部(報知部、要求部)、40・・・インジケータ(報知部)、42・・・スピーカ(報知部、要求部)。
図1
図2
図3