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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】振出しキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B65D47/20 210
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020080176
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172414
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0339268(US,A1)
【文献】実開昭59-087431(JP,U)
【文献】特開2013-086872(JP,A)
【文献】実開昭56-103449(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第03306278(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/00-47/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(1)内に充填されている内容物(P)を振り出す定量振出し口(11b)及び第2ヒンジ(14b)を介して開閉可能に連設され且つ前記定量振出し口(11b)を開閉する第2蓋体(17)を有するキャップ本体(10)と、
下端が前記容器本体(1)の口筒部(2)の内壁に嵌合すると共に上端に前記キャップ本体(10)の側壁(12)内面に嵌合する嵌合筒(21)と、該嵌合筒(21)内に内容物の通過する空間として形成された連通部(22)と、少なくとも底壁(25a)及び上端が前記キャップ本体(10)の頂壁の下面に当接する位置まで延設されると共に前記内容物(P)の移動量を制限する切欠き孔(25d)が形成された仕切板(25c)を有し、前記連通部(22)に隣設されると共に前記定量振出し口(11b)に対向して配置される計量調整部と、と備える中栓部材(20)と、を有して構成される振出しキャップであって、
前記中栓部材(20)に、前記連通部(22)内を移動する内容物(P)を収集して前記切欠き孔(25d)に供給するための収集機構(28)が設けられており、
収集機構(28)は、連通部(22)内に配置された一対の傾斜板(28A)で形成され、対向する一対の傾斜板(28A)の内縁部(28a)間に所定幅の開口からなる案内部(28B)が設けられていることを特徴とする振出しキャップ。
【請求項2】
容器本体(1)内に充填されている内容物(P)を振り出す定量振出し口(11b)及び第2ヒンジ(14b)を介して開閉可能に連設され且つ前記定量振出し口(11b)を開閉する第2蓋体(17)を有するキャップ本体(10)と、
下端が前記容器本体(1)の口筒部(2)の内壁に嵌合すると共に上端に前記キャップ本体(10)の側壁(12)内面に嵌合する嵌合筒(21)と、該嵌合筒(21)内に内容物の通過する空間として形成された連通部(22)と、少なくとも底壁(25a)及び上端が前記キャップ本体(10)の頂壁の下面に当接する位置まで延設されると共に前記内容物(P)の移動量を制限する切欠き孔(25d)が形成された仕切板(25c)を有し、前記連通部(22)に隣設されると共に前記定量振出し口(11b)に対向して配置される計量調整部(25)と、と備える中栓部材(20)と、を有して構成される振出しキャップであって、
前記中栓部材(20)に、前記連通部(22)内を移動する内容物(P)を収集して前記切欠き孔(25d)に供給するための収集機構(28)が設けられており、
前記収集機構(28)は、連通部(22)内に配置された一対の傾斜板(28A)と、該一対の傾斜板(28A)の内縁部(28a)の夫々に、上端が前記キャップ本体(10)の頂壁(11)の下面に向かって延びる一対の導入壁(28C)を有して構成され、対向配置された一対の導入壁(28C)で挟まれた空間部分に角筒状からなる案内部(28B)が設けられていることを特徴とする振出しキャップ。
【請求項3】
一対の傾斜板(28A)は、仕切板(25c)の両端部(21A)を最下端とし、両内端部(28a)を最上端とする傾斜状の面で形成されている請求項1又は2記載の振出しキャップ。
【請求項4】
計量調整部(25)は、底壁(25a)と、該底壁(25a)に端部から上方向に向かって延設された傾斜面(25b)と、該傾斜面(25b)の端部に立設され且つ上端が前記キャップ本体(10)の頂壁の下面に当接する位置まで延設された仕切板(25c)とを有して形成され、
キャップ本体(10)の頂壁の下面に垂下設された隔壁板(18)が前記計量調整部(25)内に配置されることにより、前記計量調整部(25)の内部が、前記仕切板(25c)と前記隔壁板(18)との間に形成されて内容物(P)の計量を行う計量室(26)と、前記隔壁板(18)を介して隣設されると共に前記計量室(26)にて計量された内容物(P)を保留する一時保留室(27)とに区分けされている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の振出しキャップ。
【請求項5】
キャップ本体(10)頂壁の下面に、隔壁板(18)及び該隔壁板(18)に対して垂直に配置された短辺リブ(19a)と平行に配置された長辺リブ(19b)を有して平面視L字状に突設されると共に前記短辺リブ(19a)を径方向に所定の間隔を有して配置させた一対の仕切りリブ(19)が形成され、
前記一対の仕切りリブ(19)の短辺リブ(19a)と、前記隔壁板(18)と、仕切板(25c)とによって微小計量部(M)が画成されると共に、該微小計量部(M)と連通部(22)との間が前記仕切板(25c)に形成された切欠き孔(25d)を介して連通されている請求項4に記載の振出しキャップ。
【請求項6】
計量室(26)と一時保留室(27)とが、隔壁板(18)の下端と傾斜面(25b)とが対向する部分に形成された隙間(S)を介して連通されると共に、前記連通部(22)と前記計量室(26)との間が、収集機構(28)及び切欠き孔(25d)を介して連通されている請求項記載の振出しキャップ。
【請求項7】
中栓部材(20)に、隔壁板(18)を挟持する一対の挟持板(25e)が設けられている請求項4乃至6のいずれか一項に記載の振出しキャップ。
【請求項8】
キャップ本体(10)に、任意量振出し口(11a)と、第1ヒンジ(14a)を介して開閉可能に連設され且つ前記任意量振出し口(11a)を開閉する第1蓋体(15)が設けられている請求項1乃至7のいずれか一項に記載の振出しキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の微小量の振出しを安定的に行える振出しキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1の振出しキャップ(定量栓)は、定量振出し口と任意量振出口とを設けた栓本体と、各振出口をそれぞれ開閉可能に被覆閉塞する第1蓋体及び第2蓋体と、容器体口頸部の内周に嵌合筒を嵌合させて装着した隔壁部材を備え、内部に計量室及び一時保留室が画成されている。
第2蓋体を開いて容器体を傾ける操作を行うと、内容物は嵌合筒内前後を画成する隔壁の後部空間を通って任意量振出口に導かれ、この任意量振出口からの任意量振出しを行うことができる。また第1蓋体を開いた状態で容器体の倒立、正立、倒立を繰り返す操作を行うと、内容物が計量室で計量された後に一時保留室を介して定量振出し口に導かれ、この定量振出し口からの定量振出しが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-10551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の振出しキャップでは、容器体を傾斜姿勢とした際、多量の内容物が計量室内に入り込むことが可能であることから、微小量の内容物を振り出すことが困難であるという問題がある。
また計量室の上面又は隔壁に、内容物の移動量を制限する切欠き孔を設ける構成も考えられる。しかし、この構成だけでは、容器体に対して倒立、正立、倒立を繰り返す操作を行った際に、定量振出し口が真下の位置から少しでも周方向にずれていると、切欠き孔を通過する内容物の移動量が操作の度に大きく異なってしまうことから計量に大きな誤差が生じ、結果として微小量の定量振出しを安定的に行うことが困難になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、定量振出し操作において、内容物の微小量の振出しを安定的に行える振出しキャップを創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第1の主たる手段は、
容器本体内に充填されている内容物を振り出す定量振出し口及び第2ヒンジを介して開閉可能に連設され且つ定量振出し口を開閉する第2蓋体を有するキャップ本体と、
下端が容器本体の口筒部の内壁に嵌合すると共に上端にキャップ本体の側壁内面に嵌合する嵌合筒と、嵌合筒内に内容物の通過する空間として形成された連通部と、少なくとも底壁及び上端がキャップ本体の頂壁の下面に当接する位置まで延設されると共に内容物の移動量を制限する切欠き孔が形成された仕切板を有し、連通部に隣設されると共に定量振出し口に対向して配置される計量調整部と、と備える中栓部材と、を有して構成される振出しキャップであって、
中栓部材に、連通部内を移動する内容物を収集して切欠き孔に供給するための収集機構が設けられており、
前記収集機構は、連通部内に配置された一対の傾斜板で形成され、対向する一対の傾斜板の内縁部間に所定幅の開口からなる案内部が設けられいることを特徴とする、と云うものである。
【0007】
また本発明の第2の主たる手段は、
容器本体内に充填されている内容物を振り出す定量振出し口及び第2ヒンジを介して開閉可能に連設され且つ定量振出し口を開閉する第2蓋体を有するキャップ本体と、
下端が容器本体の口筒部の内壁に嵌合すると共に上端にキャップ本体の側壁内面に嵌合する嵌合筒と、嵌合筒内に内容物の通過する空間として形成された連通部と、少なくとも底壁及び上端がキャップ本体の頂壁の下面に当接する位置まで延設されると共に内容物の移動量を制限する切欠き孔が形成された仕切板を有し、連通部に隣設されると共に定量振出し口に対向して配置される計量調整部と、と備える中栓部材と、を有して構成される振出しキャップであって、
前記収集機構は、連通部内に配置された一対の傾斜板と、該一対の傾斜板の内縁部の夫々に、上端が前記キャップ本体の頂壁の下面に向かって延びる一対の導入壁を有して構成され、対向配置された一対の導入壁で挟まれた空間部分に角筒状からなる案内部が設けられていることを特徴とする、と云うものである。
【0008】
本発明の第1、第2の主たる手段では、定量振出し操作を行うと、容器本体内から計量調整部内に移動する内容物の移動量を切欠き孔で制限することで微小量の計量を行うことができるが、この際、計測時に必要な量の内容物を切欠き孔に確実に供給することができるため、内容物の微小量の振出しを安定的に行うことを達成し得る。
【0009】
上記手段では、例え定量振出し口が真下の位置から周方向に位置ずれした状態で定量振出し操作を行ったとしても、収集機構が内容物を収集することにより、内容物の切欠き孔への供給を確実に達成し得る。
【0010】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、一対の傾斜板は、仕切板の両端部を最下端とし、両内端部を最上端とする傾斜状の面で形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、一対の傾斜板を使用することで内容物の収集を確実に達成し得る。
【0011】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、計量調整部は、底壁と、該底壁に端部から上方向に向かって延設された傾斜面と、該傾斜面の端部に立設され且つ上端が前記キャップ本体の頂壁の下面に当接する位置まで延設された仕切板とを有して形成され、
キャップ本体の頂壁の下面に垂下設された隔壁板が前記計量調整部内に配置されることにより、前記計量調整部の内部が、前記仕切板と前記隔壁板との間に形成されて内容物の計量を行う計量室と、前記隔壁板を介して隣設されると共に前記計量室にて計量された内容物を保留する一時保留室とに区分けされている、との手段を加えたものである。
また本発明の他の手段は、上記手段に、キャップ本体の頂壁の下面に、隔壁板及び該隔壁板に対して垂直に配置された短辺リブと平行に配置された長辺リブを有して平面視L字状に突設されると共に前記短辺リブを径方向に所定の間隔を有して配置させた一対の仕切りリブが形成され、
前記一対の仕切りリブの短辺リブと、前記隔壁板と、仕切板とによって微小計量部が画成されると共に、該微小計量部と連通部との間が前記仕切板に形成された切欠き孔を介して連通されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、微小計量部において計量される内容物の微小量をあらかじめ設定することができる。
更に本発明の他の手段は、上記手段に、計量室と一時保留室とが、隔壁板の下端と傾斜面とが対向する部分に形成された隙を介して連通されると共に、前記連通部と前記計量室との間が、収集機構及び切欠き孔を介して連通されている、との手段を加えたものである。
【0012】
また本発明の他の手段は、上記いずれの手段において、中栓部材に、隔壁板を挟持する一対の挟持板が設けられている、との手段を加えたものである。
上記手段では、衝撃時における隔壁板の破損を防止することができる。
【0013】
また本発明の他の手段は、上記いずれの手段に、キャップ本体に、任意量振出し口と、第1ヒンジを介して開閉可能に連設され且つ任意量振出し口を開閉する第1蓋体が設けられている、との手段を加えたものである。
上記手段では、定量振出し操作と任意量振出し操作を選択的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、定量振出し操作において、定量且つ微小量の内容物の振り出しを安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施例を示す振出しキャップの断面図である。
図2】下端側から示すキャップ本体の斜視図である。
図3】中栓部材の斜視図である。
図4図1のIV-IV線矢視方向における縦断面図である。
図5】振出しキャップの底面図である。
図6】定量振出し操作を示し、(a)は初期段階における正立姿勢を示す振出しキャップの断面図、(b)は計量段階における傾斜姿勢を示す振出しキャップの断面図である。
図7図6に続く定量振出し操作を示し(a)は一時保留段階における正立姿勢を示す振出しキャップの断面図、(b)は振出し段階における傾斜姿勢を示す振出しキャップの断面図である。
図8】任意量振出し操作を示す振出しキャップの断面図である。
図9】定量振出し量の測定結果を示すグラフである。
図10】本発明の第2実施例を示す振出しキャップとして図4同様の縦断面図である。
図11】第2実施例に示す振出しキャップの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す振出しキャップの断面図、図2は下端側から示すキャップ本体の斜視図、図3は中栓部材の斜視図、図4図1のIV-IV線矢視方向における縦断面図、図5は振出しキャップの底面図である。
本発明の振出しキャップは、容器本体1の口筒部2に装着した状態で使用されるものであり、容器本体1内に充填されている粉状体又は粒状体の内容物P(図6乃至図8参照)、例えば、塩、砂糖、ゴマ、胡椒類などの食品類、あるいは粉状石鹸などの洗剤類などの定量振り出し及び任意量振り出しを可能とするキャップである。
図1乃至5に示すように振出しキャップは、キャップ本体10とその内部に嵌合配置される中栓部材20とを有して構成され、いずれも合成樹脂材料を射出成形することにより形成されている。尚、図5では中栓部材20を薄墨色で示している。
【0017】
図1に示すように、キャップ本体10は、円板状の頂壁11の外周端に垂下設された円筒状の側壁12を有する有頂筒型の部材である。頂壁11の図示右側領域には略楕円形状の貫通孔からなる任意量振出し口11aが形成され、側壁12の上端には外方向に突出する被係止部12aが凸設されている。同様に、頂壁11の図示左側には複数(本実施例では7つ(図2参照))の貫通孔からなる定量振出し口11bが形成され、側壁12の上端には被係止部12bが凸設されている。更に、側壁12の下方の内周面には容器本体1の口筒部2の外周面に形成された雄ネジ3に螺合する雌ネジ12cが形成され、側壁12の上方の外周面には指掛け凹部12dが形成されている。
尚、任意量振出し口11aが配設された図示右側の領域が任意量振出し領域Aであり、定量振出し口11bが配設された図示左側の領域が定量振出し領域Bである。
【0018】
頂壁11の中央には、一定の幅を有して頂壁11よりも上方に突出する中央頂壁13が形成されており、中央頂壁13の右端には第1ヒンジ14aを介して開閉可能に連設された第1蓋体15が一体に形成され、中央頂壁13の左端には第2ヒンジ14bを介して開閉自在に連設された第2蓋体17が一体に形成されている。第1蓋体15の下面には閉蓋時に任意量振出し口11a内に密嵌合して閉塞する楕円筒状の第1封止栓15aが突設され、また第1蓋体15の外壁面には第1指掛け片15bが突設され、内壁面には側壁12側の被係止部12aに係合する係止部15cが形成されている。同様に、第2蓋体17の下面には閉蓋時に夫々の定量振出し口11b内に密嵌合して閉塞する複数の第2封止栓17aが突設され、また第2蓋体17の外壁面には第2指掛け片17bが突設され、内壁面には被係止部12bに係合する係止部17cが形成されている。
【0019】
第1蓋体15を閉じると、係止部15cが被係止部12aに係合すると共に、第1封止栓15aが任意量振出し口11a内に密嵌合して閉蓋状態に設定され、この状態から指先を第1指掛け片15bに掛けながら引き上げると、係止部15cと被係止部12aとの係合が解除されると共に第1封止栓15aが任意量振出し口11a内から抜脱して開蓋状態に設定される。同様に、第2蓋体17を閉じると、係止部17cが被係止部12bに係合すると共に各第2封止栓17aが各定量振出し口11b内に夫々密嵌合して閉蓋状態に設定され、この状態から指先を第2指掛け片17bに掛けながら引き上げると、係止部17cと被係止部12bとの係合が解除されると共に各第2封止栓17aが各定量振出し口11b内から夫々抜脱して開蓋状態に設定される。
【0020】
頂壁11の定量振出し領域B側には、頂壁11の下面に対して垂下設された隔壁板18が形成され、中央頂壁13の下面には一対の仕切りリブ19が形成されている。図2に示すように、仕切りリブ19は、短辺リブ19aと長辺リブ19bとを有して平面視L字状に配設されており、短辺リブ19aは隔壁板18に対して垂直に配置され、長辺リブ19bは隔壁板18に対して平行に配置されている。そして、図5に示すように、一対の仕切りリブ19は、短辺リブ19a同士を径方向に所定の対向間隔L1を設けて配置されており、短辺リブ19a同士が対向する部分は、後述するように微小計量部Mとして機能する。
【0021】
図1又は図3に示すように、中栓部材20は、下端が容器本体1の口筒部2の内壁に嵌合すると共に上端にキャップ本体10の側壁12の内壁に嵌合する嵌合筒21と、この嵌合筒21内の任意量振出し領域A内に設けられた空間で形成され且つ任意量振出し口11aと容器本体1の内部との間を連通する連通部22と、この連通部22に隣設された定量振出し領域B内において、定量振出し口11bに対向して配置される計量調整部25と、連通部22に設けられた収集機構28と、を有して形成されている。
【0022】
計量調整部25は、底壁25aと、底壁25aの端部から上方向に向かって傾斜状に延設された傾斜面25bと、傾斜面25bの上端部に垂直に立設され且つ上端が中央頂壁13の下面に当接する位置まで延設された仕切板25cと、この仕切板25cの上端に凹設された切欠き孔25dと、傾斜面25bの両側に夫々垂設された一対の挟持板25eとを有して形成されている。計量調整部25は、切欠き孔25dを除き、底壁25a、傾斜面25b及び仕切板25cによって定量振出し領域Bを閉塞している。
また図3に示すように、第1実施例に示す収集機構28は、仕切板25cと嵌合筒21の内壁と間に配置された一対の傾斜板28Aと、互いに対向する一方の傾斜板28Aの内縁部28aと他方の傾斜板28Aの内縁部28aとの間に設けられた所定幅の開口からなる案内部28Bとを有して構成されている。図4に示すように、一対の傾斜板28Aは、仕切板25cの両側に位置する両端部21Aを最下端とし、且つ中心側に位置する両内縁部28aの位置を最上端とする傾斜状の面で形成されている。そして、一対の傾斜板28Aは、連通部22が形成された任意量振出し領域Aのうち中央に配置され案内部28Bを除いた両側部分を閉塞している。
【0023】
図1に示すように、中栓部材20は、嵌合筒21の上端側の外面を、キャップ本体10の側壁12の内壁に嵌合させることにより、キャップ本体10内に組み付けられる。この組み付け状態では、隔壁板18は、その両側において一対の挟持板25eの間に夫々嵌み込まれ挟持され、衝撃等を受けた場合でも破損しないように保護されている。また仕切板25cの上端は中央頂壁13の下面に当接すると共に、仕切りリブ19の長辺リブ19bの側面に接している。
【0024】
計量調整部25の内部は、隔壁板18と仕切板25cとが対向する空間に形成された計量室26と、隔壁板18と嵌合筒21の図示左側の内壁とが対向する空間に形成された一時保留室27とに区分けされている。計量室26の上端には、図5に示すように、一対の短辺リブ19aと、隔壁板18と、仕切板25cとによって画成される微小計量部Mが形成されている。
振出しキャップの上端側では、連通部22と計量室26内に設けられた微小計量部Mとの間が切欠き孔25d及び案内部28Bを介して連通され、振出しキャップの下端側では、計量室26と一時保留室27との間が隔壁板18の下端と計量調整部25の傾斜面25bとが対向する部分に形成された隙間Sを介して連通されている。
【0025】
上記構成からなる振出しキャップは、キャップ本体10側の雌ネジ12cを、容器本体1側の雄ネジ3に螺合させることにより口筒部2に装着されて使用される(図1参照)。尚、容器本体1は振出しキャップが装着可能な形状を有する容器であれば良く、合成樹脂製、ガラス製、金属製などその材質は問わない。
【0026】
次に、上記振出しキャップを使用した振出し操作について説明する。
図6は定量振出し操作を示し、(a)は初期段階における正立姿勢を示す振出しキャップの断面図、(b)は計量段階における傾斜姿勢を示す振出しキャップの断面図、図7図6に続く定量振出し操作を示し(a)は一時保留段階における正立姿勢を示す振出しキャップの断面図、(b)は振出し段階における傾斜姿勢を示す振出しキャップの断面図である。また図8は任意量振出し操作を示す振出しキャップの断面図である。
【0027】
(定量振出し操作)
図6(a)に示すように、定量振出し操作を行うには、第2蓋体17を開蓋状態に設定し、定量振出し口11bを開放させる(初期段階)。続いて、図6(b)に示すように、定量振出し口11b側を下に向け、振出しキャップが装着された容器本体1を傾斜姿勢にする。すると、内容物Pは、容器本体1から計量調整部25を構成する底壁25a、傾斜面25bを通過して収集機構28に至る。そして、内容物Pの一部は収集機構28を構成する案内部28B内を通過して切欠き孔25dに直接入り込む。同時に、内容物Pの他の一部は、収集機構28を構成する一対の傾斜板28Aの裏面上に移動するが、傾斜姿勢においては下り傾斜となる一対の傾斜板28Aの裏面上を滑りながら案内部28B内に落下し、切欠き孔25dに至ることになる。すなわち、いずれの経路を辿るとしても、内容物Pは案内部28Bを通って仕切板25cに設けられた切欠き孔25dに至り、更にはこの切欠き孔25dを介して計量室26内に移動する。
【0028】
よって、例えば傾斜姿勢とした際に、定量振出し口11bが真下の位置から周方向にずれた位置にあり、多くの内容物Pが案内部28Bに直接向かわずに、一対の傾斜板28Aの裏面上に移動したとしても、この一対の傾斜板28Aの裏面で収集されるため、案内部28Bに移動させることが可能となる。このため、計測時に必要な量の内容物Pを、仕切板25cに設けられた切欠き孔25dに向け供給することができる。
【0029】
ここで、切欠き孔25dはその大きさ(縦横の寸法)を所定の大きさで形成することにより、多量の内容物Pが計量室26内の微小計量部Mに移動できないように、一度の操作において切欠き孔25dを通過できる移動量が制限されている。一度に微小計量部Mに移動可能な内容物Pの量は、一対の短辺リブ19aの対向間隔L1及び隔壁板18と仕切板25cとの対向間隔L2(図5参照)、及び短辺リブ19aの高さ寸法に応じてあらかじめ設定されている。すなわち、これらの寸法をあらかじめ設定しておくことにより、切欠き孔25dを通じて微小計量部M内へ移動する内容物Pを常に一定量とすることができ、微小計量部Mを用いての内容物Pの微小な計量が可能となっている(計量段階)。
【0030】
尚、本実施例では、例えば切欠き孔25dの横寸法を6mm、縦寸法を2.3mmに設定し、また微小計量部Mを形成する一対の短辺リブ19aの対向間隔L1を6mm、その高さ寸法を1mm、隔壁板18と仕切板25cとの対向間隔L2を5mmに設定することにより、微小計量部Mにおいて計量可能な内容物Pを微小量(例えば約0.3g)としている。ただし、これらの寸法は、後述する定量振出し操作において、予定される内容物Pの振出し量に応じて適宜変更可能である。
【0031】
続いて、図7(a)に示すように、容器本体1の姿勢を傾斜姿勢から正立姿勢に戻すと、内容物Pは、計量室26内の微小計量部Mから傾斜面25bを滑り落ちると共に隙間Sを介して一時保留室27内に移動する(一時保留段階)。
【0032】
最後に、図7(b)に示すように、再度、容器本体1の姿勢を正立姿勢から傾斜姿勢にすると、内容物Pを一時保留室27内から定量振出し口11bを介して外部に振り出すことができる(振出し段階)。ここで、振り出される内容物Pの振出し量は、先の計量段階において計量された微小量(約0.3g)である。
またこの際には、上記計量段階同様に、内容物Pが切欠き孔25dを介して計量室26の微小計量部Mに移動して計量され、次回以降の振出し段階で振り出されることになる。
【0033】
そして、上述したように、定量振出し操作では、傾斜姿勢とした際に、定量振出し口11bが真下の位置から周方向にずれた位置にあったとしても、計測時に必要な量の内容物Pを案内部28B及び切欠き孔25dを介して微小計量部M内に供給することができるため、常に微小計量部Mでの計量値を一定の範囲内に収めることが可能である。その結果、本発明の振出しキャップでは、定量且つ微小量の内容物Pの振出しを安定的に行うことができる。
【0034】
上記定量振出し操作では、振出しキャップが装着された容器本体1の姿勢を、正立姿勢と傾斜姿勢との間で繰り返して行うと、傾斜姿勢に至る度に、微小量(約0.3g)の内容物Pを振り出すことができる。したがって、例えば0.6gの内容物Pを振り出したい場合には上記の操作を2回繰り返して行えばよく、0.9gの内容物Pを振り出したい場合には上記の操作を3回繰り返して行えばよい。つまり、希望する振出し量を、定量振出し操作の回数で調整することができる。
【0035】
(任意量振出し操作)
図8に示すように、第2蓋体17を閉蓋状態に戻すと共に、第1蓋体15を開蓋状態に設定して任意量振出し口11aを開放した後、容器本体1を傾斜姿勢にすると、容器本体1内の内容物Pは、連通部22から案内部28Bを介して、あるいは連通部22から一対の傾斜板28Aの裏面を経由した後に案内部28Bを介して、任意量振出し口11aに移動するため、この任意量振出し口11aから内容物Pを任意量振り出すことができる。
【0036】
図9は定量振出し量の測定結果を示すグラフであり、横軸は振出し操作の測定番号を、縦軸は1回の操作で振り出される振出し量[g]を示している。また実線は収集機構を有する本発明の振出しキャップの場合を示し、破線は比較例として収集機構を有しない振出しキャップの場合を示している。
図9に示すように、本発明の振出しキャップの方が比較例の振出しキャップに比較して小さな誤差で定量振出しが行われていることがわかる。
【0037】
図10は本発明の第2実施例を示す振出しキャップとして図4同様の縦断面図、図11は第2実施例に示す振出しキャップの底面図である。
第2実施例を示す振出しキャップが、上記第1実施例と異なる点は、収集機構28の構成にあり、その他の構成及び効果は上記第1実施例同様である。このため、以下においては、第1実施例と異なる点を中心に同一部材については同一の符号を付して説明する。
【0038】
図10又は図11に示すように、第2実施例に示す収集機構28は、一対の傾斜板28Aと、一対の傾斜板28Aの夫々の内縁部28aからキャップ本体10の頂壁11の下面に向かって延びる一対の導入壁28Cによって形成される案内部28Bとを有して形成されている。案内部28Bは、対向配置された一対の導入壁28Cで挟まれた略長方角筒状の通路で形成されており、この案内部28Bと高さ方向において対向する位置に任意量振出し口11aが配置され、また案内部28Bとを径方向において対向する位置に切欠き孔25d及び微小計量部Mが配置されている。
【0039】
第2実施例では、連通部22と切欠き孔25dとの間が、一対の導入壁28Cからなる案内部28Bを介して直接的に連通されている。よって、振出しキャップが装着された容器本体1を傾斜姿勢とした際において、連通部22から切欠き孔25dに向かって案内部28Bを通過した内容物Pが、傾斜板28Aと頂壁11の裏面とが対向する空間内に入り込むことがない。
すなわち、内容物Pの一部は、連通部22から案内部28Bを通じて切欠き孔25dに直接供給されることになる。また内容物Pの他の一部は、一対の傾斜板28Aの裏面で収集されると共に、更に一対の導入壁28Cからなる案内部28Bを通じて切欠き孔25dに供給されることになる。よって、計測時に必要な量の内容物Pを、仕切板25cに設けられた切欠き孔25dに向けて確実に供給することができ、結果として内容物Pの微小量の振出しを安定的に行うことができる。
また傾斜姿勢から正立姿勢に戻した際には、案内部28B内に残っている内容物Pを容器本体1内に効率よく戻すことができる。
【0040】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0041】
例えば、上記実施例では、任意量振出しを行うための任意量振出し口11a及び第1蓋体15と、定量振出しを行うための定量振出し口11b及び第2蓋体17の双方を有する構成を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、定量振出しを行うための定量振出し口11b及び第2蓋体17のみからなる構成であってもよい。
【0042】
また上記実施例では、隔壁板18の両側が、両側に配置された一対の挟持板25eの間に挟持される場合を示して説明したが、一対の挟持板25eは設けない構成であっても良い。
【0043】
また上記実施例では、任意量振出し口11aが一つの貫通孔で形成され、定量振出し口11bが複数(本実施例では7つ)の貫通孔からなる場合を示して説明したが、任意量振出し口11aが複数の貫通孔で形成され、定量振出し口11bが1つの貫通孔で形成される構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、特に内容物の微小量の振出しを必要とする振出しキャップの分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 : 容器本体
2 : 口筒部
3 : 雄ネジ
10 : キャップ本体
11 : 頂壁
11a: 任意量振出し口
11b: 定量振出し口
12 : 側壁
12a: 被係止部
12b: 被係止部
12c: 雄ネジ
12d: 指掛け凹部
13 : 中央頂壁
14a: 第1ヒンジ
14b: 第2ヒンジ
15 : 第1蓋体
15a: 第1封止栓
15b: 第1指掛け片
15c: 係止部
17 : 第2蓋体
17a: 第2封止栓
17b: 第2指掛け片
17c: 係止部
18 : 隔壁板
19 : 仕切りリブ
19a: 短辺リブ
19b: 長辺リブ
20 : 中栓部材
21 : 嵌合筒
22 : 連通部
25 : 計量調整部
25a: 底壁
25b: 傾斜面
25c: 仕切板
25d: 切欠き孔
25e: 挟持板
26 : 計量室
27 : 一時保留室
28 : 収集機構
28A: 傾斜板
28B : 案内部
28C: 導入壁
28a: 傾斜板の内縁部
A : 任意量振出し領域
B : 定量振出し領域
M : 微小計量部
P : 内容物
S : 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11