(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G01N21/17 630
(21)【出願番号】P 2020080268
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】石川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上山 憲司
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-106849(JP,A)
【文献】特開2019-072027(JP,A)
【文献】特開2012-047505(JP,A)
【文献】特開2011-235084(JP,A)
【文献】特開2012-088180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01B 9/02
A61B 3/00 - A61B 3/18
A61B 1/00 - A61B 1/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射面となる界面を介して被撮像物を断層撮像する撮像装置において、
低コヒーレンス光を分岐させて観察光と参照光とを生成し、前記界面を介して前記観察光を前記被撮像物に入射させ、前記観察光が前記被撮像物で反射され前記界面を介して出射される信号光と、前記参照光とが干渉して生じる干渉光を検出し、検出された前記干渉光に応じた干渉信号を出力する干渉信号取得部と、
前記干渉信号に基づき、前記被撮像物の断層画像を作成する画像処理部と
を備え、
前記干渉信号取得部は、
前記観察光を前記界面を介して前記被撮像物に収束させるとともに、前記界面を介して出射される前記被撮像物からの前記信号光を集光する対物レンズと、
前記被撮像物に対する前記対物レンズの光軸方向における焦点位置を変化させる焦点調整機構と、
前記対物レンズを挟んで前記被撮像物とは反対側の前記観察光の光路上に配置され、当該光路を通過する光を部分的に遮蔽する遮蔽状態と、前記光を遮蔽しない通過状態とを切り替え可能な遮光部材と、
前記遮蔽状態と前記通過状態との間で前記遮光部材を切り替える切替機構と
を有し、
前記遮光部材は、前記観察光を比較的高い光透過率で透過させる高透過部と、前記観察光に対する光透過率が前記高透過部より低い低透過部とが規則的に配置された透過パターンが形成された光規制面を有し、前記透過パターンは、前記光軸に対し回転対称であり、しかも、前記光軸が前記光規制面と交わる点に関して前記高透過部内の任意の点と点対称の位置にある点は前記低透過部に含まれ、
前記切替機構は、前記焦点位置と前記界面との距離が所定の閾値より小さいときには前記遮光部材を前記遮蔽状態とする一方、前記距離が前記閾値より大きいときには前記遮光部材を前記通過状態とする、撮像装置。
【請求項2】
前記干渉信号取得部は、
前記干渉光を検出する検出器と、
前記対物レンズを含み、前記観察光を前記被撮像物に導くとともに前記信号光を前記検出器に導く共焦点光学系である観察光学系と
を有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記干渉信号取得部は、
前記観察光学系に関して前記被撮像物側の焦点位置とは共役な位置に一端部が配置された光ファイバを有し、前記光ファイバが、前記観察光を前記観察光学系に案内し、前記信号光を前記観察光学系から受光する請求
項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記光規制面は、前記被撮像物とは反対側の前記対物レンズの焦点位置に配置される請求項1ないし3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記干渉信号
取得部は、前記焦点位置を互いに異ならせて複数回前記干渉信号を取得し、
前記画像処理部は、前記干渉信号
取得部が前記焦点位置を互いに異ならせて複数回取得した前記干渉信号のそれぞれに対応する前記断層画像を合成する請求項1ないし4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記遮光部材が前記遮蔽状態で取得された前記干渉信号に対応する前記断層画像と、前記遮光部材が前記通過状態で取得された前記干渉信号に対応する前記断層画像とを、前記遮光部材による光の遮蔽率に応じてスケーリングして合成する請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記界面は、前記被撮像物を収容する容器の光透過性の壁面である請求項1ないし6のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
光反射面となる界面を介して被撮像物を断層撮像する撮像方法において、
低コヒーレンス光を分岐させて観察光と参照光とを生成し、前記界面を介して前記観察光を前記被撮像物に入射させ、前記観察光が前記被撮像物で反射され前記界面を介して出射される信号光と、前記参照光とが干渉して生じる干渉光を検出し、検出された前記干渉光に応じた干渉信号を取得する工程と、
前記干渉信号に基づき、前記被撮像物の断層画像を作成する工程と
を備え、
前記干渉信号の取得は、
前記観察光を前記界面を介して前記被撮像物に収束させるとともに、前記界面を介して出射される前記被撮像物からの前記信号光を集光する対物レンズと、
前記被撮像物に対する前記対物レンズの光軸方向における焦点位置を変化させる焦点調整機構と、
前記対物レンズを挟んで前記被撮像物とは反対側の前記観察光の光路上に配置され、当該光路を通過する光を部分的に遮蔽する遮蔽状態と、前記光を遮蔽しない通過状態とを切り替え可能な遮光部材と、
前記遮蔽状態と前記通過状態との間で前記遮光部材を切り替える切替機構と
を有する干渉信号取得部によって行われ、
前記遮光部材は、前記観察光を比較的高い光透過率で透過させる高透過部と、前記観察光に対する光透過率が前記高透過部より低い低透過部とが規則的に配置された透過パターンが形成された光規制面を有し、前記透過パターンは、前記光軸に対し回転対称であり、しかも、前記光軸が前記光規制面と交わる点に関して前記高透過部内の任意の点と点対称の位置にある点は前記低透過部に含まれ、
前記切替機構は、前記焦点位置と前記界面との距離が所定の閾値より小さいときには前記遮光部材を前記遮蔽状態とする一方、前記距離が前記閾値より大きいときには前記遮光部材を前記通過状態とする、撮像方法。
【請求項9】
前記干渉信号を、前記焦点位置を互いに異ならせて複数回取得し、
取得された前記干渉信号のそれぞれに対応する複数の前記断層画像を合成した合成画像を作成する請求項8に記載の撮像方法。
【請求項10】
前記遮光部材が前記遮蔽状態で取得された前記干渉信号に対応する前記断層画像と、前記遮光部材が前記通過状態で取得された前記干渉信号に対応する前記断層画像とを、前記遮光部材による光の遮蔽率に応じてスケーリングして合成する請求項9に記載の撮像方法。
【請求項11】
前記複数の断層画像それぞれの合焦範囲同士を連結して前記合成画像を作成する請求項9または10に記載の撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光コヒーレンストモグラフィ撮像の原理を用いて被撮像物の断層画像を撮像する技術に関し、特に光透過性を有する平坦面を介して被撮像物を撮像する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学や生化学の技術分野では、容器中で培養された細胞や微生物を観察することが行われる。観察対象となる細胞等に影響を与えることなく観察を行う方法として、顕微鏡等を用いて細胞等を撮像する技術が提案されている。このような技術の1つとして、光コヒーレンストモグラフィ(光干渉断層撮像)技術を利用したものがある。この技術は、光源から出射される低コヒーレンス光を観察光として被撮像物に入射させ、被撮像物からの反射光(信号光)と光路長が既知である参照光との干渉光を検出することで、被撮像物からの反射光の深さ方向における強度分布を求めて断層画像化するものである。
【0003】
例えば、培養容器等の透明容器内に収容された被撮像物を撮像する場合には、容器の壁面を介して撮像が行われることとなる。この場合、容器の壁面が強い反射面として作用することで、画像にゴースト状のノイズ(自己相関ノイズ)が現れることがある。これは、容器壁面からの反射光が被撮像物からの反射光と干渉することで、擬似的な参照光として作用するからである。
【0004】
このようなノイズを解消することを目的として、本願出願人は先に、観察光および信号光の光路上に遮光部材を配置し、容器壁面からの反射光を低減させるとともに該反射光が検出器に入射するのを防止する技術を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、観察光および信号光の一部を遮蔽しているため、検出される信号のレベル自体は低下している。被撮像物のうち容器壁面に近い部分を撮像する場合には、このように信号レベルが低下したとしても、壁面の強い反射光の影響を排除することで結果的に信号のS/N比(Signal to Noise Ratio)の改善が見込める。一方、壁面から離れておりその影響をあまり受けない部分においては、信号レベルが低下することで、例えば検出器など他の要因のノイズの影響等を受けやすくなっている。この点において、上記技術にはさらなる改善の余地が残されている。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、光コヒーレンストモグラフィ撮像の原理を用いて被撮像物の断層画像を撮像する技術において、被撮像物の近傍にある反射面に起因するノイズの影響を排除しつつ、反射面から離れた部分においても良好な画像品質を得ることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の態様は、光反射面となる界面を介して被撮像物を断層撮像する撮像装置であって、上記目的を達成するため、低コヒーレンス光を分岐させて観察光と参照光とを生成し、前記界面を介して前記観察光を前記被撮像物に入射させ、前記観察光が前記被撮像物で反射され前記界面を介して出射される信号光と、前記参照光とが干渉して生じる干渉光を検出し、検出された前記干渉光に応じた干渉信号を出力する干渉信号取得部と、前記干渉信号に基づき、前記被撮像物の断層画像を作成する画像処理部とを備えている。
【0009】
また、この発明の他の一の態様は、光反射面となる界面を介して被撮像物を断層撮像する撮像方法であって、上記目的を達成するため、低コヒーレンス光を分岐させて観察光と参照光とを生成し、前記界面を介して前記観察光を前記被撮像物に入射させ、前記観察光が前記被撮像物で反射され前記界面を介して出射される信号光と、前記参照光とが干渉して生じる干渉光を検出し、検出された前記干渉光に応じた干渉信号を取得する工程と、前記干渉信号に基づき、前記被撮像物の断層画像を作成する工程とを備えている。
【0010】
これらの発明において、前記干渉信号の取得は、前記観察光を前記界面を介して前記被撮像物に収束させるとともに、前記界面を介して出射される前記被撮像物からの前記信号光を集光する対物レンズと、前記被撮像物に対する前記対物レンズの光軸方向における焦点位置を変化させる焦点調整機構と、前記対物レンズを挟んで前記被撮像物とは反対側の前記観察光の光路上に配置され、当該光路を通過する光を部分的に遮蔽する遮蔽状態と、前記光を遮蔽しない通過状態とを切り替え可能な遮光部材と、前記遮蔽状態と前記通過状態との間で前記遮光部材を切り替える切替機構とを有する干渉信号取得部によって行われる。
【0011】
そして、前記遮光部材は、前記観察光を比較的高い光透過率で透過させる高透過部と、前記観察光に対する光透過率が前記高透過部より低い低透過部とが規則的に配置された透過パターンが形成された光規制面を有し、前記透過パターンは、前記光軸に対し回転対称であり、しかも、前記光軸が前記光規制面と交わる点に関して前記高透過部内の任意の点と点対称の位置にある点は前記低透過部に含まれる。また、前記切替機構は、前記焦点位置と前記界面との距離が所定の閾値より小さいときには前記遮光部材を前記遮蔽状態とする一方、前記距離が前記閾値より大きいときには前記遮光部材を前記通過状態とする。
【0012】
このように構成された発明では、遮光部材は以下の原理により自己相関ノイズの発生を抑える効果を有する。詳しくは特許文献1に記載されているように、遮光部材は、界面を介して被撮像物に入射しようとする観察光の一部を遮蔽し他を通過させる。そして、通過した観察光が界面で正反射する正反射光を遮蔽する。つまり、遮光部材がなければ界面で正反射され検出される正反射光は、界面に向かう光路および界面から出射される光の光路のいずれかで遮蔽される。このように、遮光部材は、擬似的な参照光として作用することで自己相関ノイズの原因となる、界面による強い正反射光を遮蔽する機能を有する。一方、信号光は、観察光が被撮像物で拡散反射された拡散光であるから、その一部は遮光部材による遮蔽を受けず参照光と干渉して干渉光を生じる。
【0013】
このように、被撮像物からの信号光の一部が遮蔽されるものの、界面からの正反射光に対する遮蔽効果がそれ以上に大きいため、結果としてS/N比が向上し自己相関ノイズが抑えられる。
【0014】
遮光部材による遮蔽は、被撮像物に対する焦点位置と反射面である界面との距離が比較的大きい状態では行われず、したがって光路上での光量の低下に起因する干渉信号のレベル低下は生じない。このため、干渉信号はノイズの影響を受けにくい。一方、上記距離が小さい、つまり焦点位置が界面に近く自己相関ノイズの影響が大きくなるケースでは、遮光部材が界面からの反射を抑えることで、自己相関ノイズが低減される。そのため、焦点位置と界面との距離によらず、自己相関ノイズの影響を抑えて良好な画像品質を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明によれば、遮光部材を遮光状態と通過状態とで切り替えることができる。そして、焦点位置と界面との距離が小さく界面による正反射光がノイズ源となる条件では遮光部材を遮蔽状態とすることで正反射光を抑制する一方、これらの距離が大きく正反射光の影響が問題とならない条件では遮光部材を通過状態とすることで信号レベルの低下を回避する。このため、被撮像物の近傍にある界面の反射に起因するノイズの影響を排除しつつ、界面から離れた部分においても良好な画像品質を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る撮像装置の一実施形態である画像処理装置を示す図である。
【
図6】この実施形態における撮像動作を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態で得られる画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る撮像装置の一実施形態としての画像処理装置を示す図である。この画像処理装置1は、液体中に担持された試料、例えば培養液中で培養されたスフェロイド(細胞集塊)を断層撮像し、得られた断層画像を画像処理して、試料の一の断面の構造を示す断面画像を作成する。また、複数の断面画像から試料の立体像を作成する。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくは(-Z)方向が鉛直下向き方向を表している。
【0018】
なお、ここでは被撮像物となる試料として、ウェルプレートのウェル内で培養されたスフェロイドを例に取って説明する。しかしながら、被撮像物はこれに限られず任意である。また試料を担持する容器もウェルプレートに限られず、例えばディッシュと称される平底の容器であってもよい。また、試料は容器内で培養されたものに限定されず、例えば撮像のために容器に移されたものであってもよい。
【0019】
画像処理装置1は保持部10を備えている。保持部10は、板状部材の上面に液体を担持可能な窪部(ウェル)Wが多数形成されたウェルプレート(マイクロプレートとも称される)WPを、ウェルWの開口面を上向きにして略水平姿勢に保持する。ウェルプレートWPの各ウェルWには予め適宜の培養液が所定量注入されており、液中ではウェルWの底面WbにスフェロイドSpが培養されている。
図1では一部のウェルWにのみスフェロイドSpが記載されているが、各ウェルWでスフェロイドSpが培養される。
【0020】
保持部10に保持されたウェルプレートWPの下方に、撮像ユニット20が配置される。撮像ユニット20には、被撮像物の断層画像を非接触、非破壊(非侵襲)で撮像することが可能な光干渉断層撮像(Optical Coherence Tomography;OCT)装置が用いられる。詳しくは後述するが、OCT装置である撮像ユニット20は、被撮像物への照明光を発生する光源21と、光ファイバカプラ22と、物体光学系23と、参照光学系24と、分光器25と、光検出器26とを備えている。
【0021】
また、画像処理装置1はさらに、装置の動作を制御する制御ユニット30と、撮像ユニット20の可動部を駆動する駆動部40とを備えている。制御ユニット30は、CPU(Central Processing Unit)31、A/Dコンバータ32、信号処理部33、3D復元部34、インターフェース(IF)部35、画像メモリ36およびメモリ37を備えている。
【0022】
CPU31は、所定の制御プログラムを実行することで装置全体の動作を司り、CPU31が実行する制御プログラムや処理中に生成したデータはメモリ37に保存される。A/Dコンバータ32は、撮像ユニット20の光検出器26から受光光量に応じて出力される信号をデジタルデータに変換する。信号処理部33は、A/Dコンバータ32から出力されるデジタルデータに基づき後述する信号処理を行って、被撮像物の断層画像を作成する。3D復元部34は、撮像された複数の断層画像の画像データに基づいて、撮像された細胞集塊の立体像(3D像)を作成する機能を有する。信号処理部33により作成された断層画像の画像データおよび3D復元部34により作成された立体像の画像データは、画像メモリ36により適宜記憶保存される。
【0023】
インターフェース部35は画像処理装置1と外部との通信を担う。具体的には、インターフェース部35は、外部機器と通信を行うための通信機能と、ユーザからの操作入力を受け付け、また各種の情報をユーザに報知するためのユーザインターフェース機能とを有する。この目的のために、インターフェース部35には、装置の機能選択や動作条件設定などに関する操作入力を受け付け可能な例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどの入力デバイス351と、信号処理部33により作成された断層画像や3D復元部34により作成された立体像など各種の処理結果を表示する例えば液晶ディスプレイからなる表示部352とが接続されている。
【0024】
撮像ユニット20では、例えば発光ダイオードまたはスーパールミネッセントダイオード(SLD)などの発光素子を有する光源21から、広帯域の波長成分を含む低コヒーレンス光ビームが出射される。細胞等の試料を撮像する目的においては、入射光を試料の内部まで到達させるために、例えば近赤外線が用いられることが好ましい。
【0025】
光源21は光ファイバカプラ22を構成する光ファイバの1つである光ファイバ221に接続されており、光源21から出射される低コヒーレンス光は、光ファイバカプラ22により2つの光ファイバ222,223への光に分岐される。光ファイバ222は物体系光路を構成する。より具体的には、光ファイバ222の端部から出射される光は物体光学系23に入射する。
【0026】
物体光学系23は、コリメータレンズ231と対物レンズ232とを備えている。光ファイバ222の端部から出射される光はコリメータレンズ231を介して対物レンズ232に入射する。対物レンズ232は、光源21からの光(観察光)を試料に収束させる機能と、試料から出射される反射光を集光して光ファイバカプラ22に向かわせる機能とを有する。図では単一の対物レンズ232が記載されているが、複数の光学素子が組み合わされていてもよい。被撮像物からの反射光は対物レンズ232、コリメータレンズ231を介し信号光として光ファイバ222に入射する。対物レンズ232の光軸はウェルプレートWPの底面に直交しており、この例では光軸方向は鉛直軸方向と一致している。
【0027】
コリメータレンズ231と対物レンズ232との間の光路上には、遮光部材230が設けられている。その詳しい構造および機能については後述するが、遮光部材230は、当該光路を通過する光を部分的に遮蔽することで画像ノイズを低減する作用を有する。遮光部材230は進退機構237によって支持されている。進退機構237は遮光部材230を、
図1に点線で示される遮蔽位置と、実線で示される退避位置との間で移動させる。遮蔽位置では、遮光部材230がコリメータレンズ231と対物レンズ232との間の光路上で、当該光路を通過する光の一部を遮蔽する。一方、遮光部材230が退避位置に位置決めされるとき、遮光部材230は光路よりも側方、すなわち(-Y)方向に退避し、光を遮蔽することはない。
【0028】
駆動部40はCPU31により制御される。すなわち、CPU31は駆動部40に制御指令を与え、これに応じて駆動部40は撮像ユニット20に所定方向への移動を行わせる。より具体的には、駆動部40は、撮像ユニット20を水平方向(XY方向)および鉛直方向(Z方向)に移動させる。撮像ユニット20の水平方向の移動により、撮像範囲が水平方向に変化する。また、撮像ユニット20の鉛直方向の移動により、対物レンズ232の光軸方向における焦点位置が、被撮像物であるスフェロイドSpに対し変化する。
【0029】
光源21から光ファイバカプラ22に入射した光の一部は光ファイバ223を介して参照光学系24に入射する。参照光学系24は、コリメータレンズ241および参照ミラー243を備えており、これらが光ファイバ223とともに参照系光路を構成する。具体的には、光ファイバ223の端部から出射される光がコリメータレンズ241を介して参照ミラー243に入射する。参照ミラー243により反射された光は参照光として光ファイバ223に入射する。
【0030】
参照ミラー243は、進退部材244の側面に取り付けられ、進退部材244は進退機構245により支持されている。進退機構245は進退部材244をY方向に進退させるための適宜の機構、例えばリニアモータまたはボールねじ機構を有している。進退機構245は図示しない装置筐体に固定されている。
【0031】
進退機構245は、CPU31からの制御指令によって作動し、進退部材244をY方向に進退させる。これにより参照ミラー243がY方向、つまりコリメータレンズ241に対し接近および離間方向に移動することで、参照ミラー243により反射される参照光の光路長が調整される。
【0032】
試料の表面もしくは内部の反射面で反射された反射光(信号光)と、参照ミラー243で反射された参照光とは光ファイバカプラ22で混合され光ファイバ224を介して光検出器26に入射する。このとき、信号光と参照光との間で位相差に起因する干渉が生じるが、干渉光の分光スペクトルは反射面の深さにより異なる。つまり、干渉光の分光スペクトルは被撮像物の深さ方向の情報を有している。したがって、干渉光を波長ごとに分光して光量を検出し、検出された干渉信号をフーリエ変換することにより、被撮像物の深さ方向における反射光強度分布を求めることができる。このような原理に基づくOCT撮像技術は、フーリエドメイン(Fourier Domain)OCT(FD-OCT)と称される。
【0033】
この実施形態の撮像ユニット20は、光ファイバ224から光検出器26に至る干渉光の光路上に分光器25が設けられている。分光器25としては、例えばプリズムを利用したもの、回折格子を利用したもの等を用いることができる。干渉光は分光器25により波長成分ごとに分光されて光検出器26に受光される。
【0034】
光検出器26が検出した干渉光に応じて光検出器26から出力される干渉信号をフーリエ変換することで、試料のうち、照明光の入射位置における深さ方向、つまりZ方向の反射光強度分布が求められる。ウェルプレートWPに入射する光ビームをX方向に走査することで、XZ平面と平行な平面における反射光強度分布が求められ、その結果から当該平面を断面とする試料の断層画像を作成することができる。その原理は周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0035】
また、Y方向におけるビーム入射位置を多段階に変更しながら、その都度断層画像の撮像を行うことで、試料をXZ平面と平行な断面で断層撮像した多数の断層画像を得ることができる。Y方向の走査ピッチを小さくすれば、試料の立体構造を把握するのに十分な分解能の画像データを得ることができる。
【0036】
ところで、光透過性を有するウェル底面Wbを介してウェルW内のスフェロイドSpを撮像する場合、被撮像物であるスフェロイドSpに入射させるべき観察光の一部がウェル底面Wbにより反射されることになる。ウェル底面Wbでの反射としては、ウェルWの内部空間に臨む内底面での反射、観察光が入射する側である外底面での反射の両方が起こり得るが、本明細書ではこれらの双方を含む概念として「ウェル底面Wb」と称している。特に平滑に仕上げられた面は強い正反射光を生じさせる。
【0037】
このように被撮像物の近傍にある界面からの正反射光が被撮像物からの反射光と干渉し擬似的な参照光として作用することで、撮像される画像にゴースト状の画像ノイズ(自己相関ノイズ)が現れる。このノイズを低減する目的で、遮光部材230が設けられている。遮光部材によるノイズ低減の原理およびその効果については特許文献1に記載されているため、ここでは詳しい説明を省略し、遮光部材230の具体的な構造について説明する。
【0038】
図2は遮光部材の構造を示す図である。また、
図3は遮光部材が奏する作用を示す図である。より詳しくは、
図2(a)は遮蔽位置にあるときの遮光部材230を示す図であり、
図2(b)は退避位置にあるときの遮光部材230を示す図である。また、
図2(c)は遮光部材230が有する透過パターンを示す図である。また、
図3(a)および
図3(b)は遮光部材230を通過する光の光路を示す図であり、
図3(c)は透過パターンの設定例を説明する図である。なお、
図3(a)および
図3(b)では、
図1と比べて物体光学系23を90度回転させた状態が示されている。
【0039】
図2(a)に示すように、遮光部材230は、観察光に対し透明な平板状の基材235の一方主面に光規制膜236が形成されたものであり、観察光および信号光の光路に対し直交するように配置されている。
図2(c)に示すように、光規制膜236は、観察光に対し比較的高い透過率を有する高透過部P1と、観察光に対する透過率が高透過部P1よりも低い低透過部P2とが規則的に配置された透過パターンを有している。光規制膜236は、例えば金属蒸着膜とすることができる。高透過部P1の透過率は例えば100%、低透過部P2の透過率は例えば0%とすることができるが、これに限定されない。すなわち、高透過部P1の透過率が100%未満であってもよく、また低透過部P2の透過率が0%より大きくてもよい。なお、物体光学系200内での多重反射に起因する弊害を回避するために、低透過部P2については、光吸収性を有する、もしくは入射光を散乱させるものであることが好ましい。
【0040】
遮光部材230は対物レンズ232を挟んで被撮像物とは反対側に置かれ、例えば対物レンズ232の焦点位置の近傍に配置することができるが、厳密に焦点位置に配置されなくてもよい。遮光部材230が対物レンズ232の焦点位置に置かれるとき、対物レンズ232と遮光部材230との距離は対物レンズ232の焦点距離fとなる。
【0041】
光規制膜236は基材235の上面(物体側)、下面(光源側)のいずれに設けられてもよい。光規制膜236が設けられた方の基材表面が、光の通過を司る実効的な光規制面として機能することになる。なお遮光部材230は基材と光規制膜との組み合わせによるものに限定されない。例えば低透過部として機能する遮光性を有する平板に、高透過部に相当する開口が設けられたものであってもよい。
【0042】
遮光部材230は、進退機構237によりY方向に進退自在に支持されている。進退機構237は、CPU31からの制御指令によって作動し、
図2(a)に示される遮蔽位置と
図2(b)に示される退避位置との間で遮光部材230を進退移動させる。進退機構237としては、通過する光ビームのビーム径(例えば10mm程度)よりも幾らか大きなストロークで遮光部材230を進退移動させることができれば足り、圧電素子、ソレノイド、リニアモータ等の適宜のアクチュエータを備えたものを用いることができる。遮蔽位置と退避位置との間の移動速度は、例えば切り替えに要する時間が数百msec程度またはそれ以下となっていればよい。
【0043】
遮蔽位置では、遮光部材230はコリメータレンズ231(
図1)と対物レンズ232との間の光路に直交するように配置される。つまり、このときの遮光部材230は、当該光路に沿った光を遮蔽する「遮蔽状態」となっている。一方、遮蔽位置では、遮光部材230は上記光路よりも側方に退避し、当該光路に沿った光をそのまま通過させる「通過状態」となっている。
【0044】
後述する撮像動作においては、光軸AX方向(Z方向)における対物レンズ232の焦点位置の設定に応じて、遮光部材230が遮蔽状態とされるか通過状態とされるかが区別される。すなわち、
図2(a)に示すように、スフェロイドSpの近傍で強い反射面となる界面であるウェル内底面と焦点Fとの距離Dが、予め定められた閾値Thよりも小さいとき、遮光部材230は遮蔽位置に配置され遮蔽状態となる。一方、
図2(b)に示すように、距離Dが閾値Thよりも大きいとき、遮光部材230は退避位置に配置され通過状態とされる。
【0045】
遮光部材230が有する透過パターンについて、
図2(c)を参照して説明する。遮光部材230の光規制膜236が有する透過パターンのうち光の通過規制において有効に機能するのは、図に点線で示すように、概ね対物レンズ232の光軸AXと交わる点Cを中心とし対物レンズ232の有効半径を半径とする円形の領域内である。以下、この領域を有効領域Reと称する。有効領域Re内において、高透過部P1と低透過部P2とが以下のように配置されている。
【0046】
有効領域Reは、点Cを通り等角度間隔に配置される3本の直線により、互いに合同な6つの扇形に区分される。そして、6つの扇形に対し、高透過部P1と低透過部P2とが交互に割り当てられる。したがって、1つの高透過部P1は2つの低透過部P2により両側を挟まれ、1つの低透過部P2は2つの高透過部P1により両側を挟まれた配置となる。そして、パターン全体としては、点Cを中心として120度および240度の回転対称性を有するが、180度の回転対称性を有していない。
【0047】
ここで、高透過部P1に含まれる任意の1点Q1に対し、点Cに関して、つまり点Cを対称の中心として点対称な点Q2を考えると、点Q2は必ず低透過部P2に含まれる。同様に、低透過部P2内の任意の点と点対称な位置にある点は必ず高透過部P1に含まれている。
【0048】
このようにする理由について、
図3(a)ないし
図3(c)を参照して説明する。
図3(a)における遮光制部材230は、
図2(c)のA-A線断面図に相当している。光規制膜236のうち有効領域Re内では、対物レンズ232の光軸AXより上側が高透過部P1、下側が低透過部P2となっている。実線矢印は図の左方にある光源から入射する観察光の光路を示している。高透過部P1に入射する観察光L21は、対物レンズ232により光軸AX側に屈折し、対物レンズ232の焦点位置近傍にある反射面Sに入射する。
【0049】
反射面Sでの正反射光L41は、入射角と同じ反射角で出射され、対物レンズ232を介して遮光部材230に向かう。当該反射光L41が光規制膜236に入射する位置は、入射光L21が入射した位置と点Cに関し点対称な位置である。したがって、正反射光は光規制膜236の低透過部P2に入射する。このため、遮光部材230よりも光検出器側(図において左側)に進もうとする光は光規制膜236により遮蔽される。図に点線で示す矢印は、光規制膜236による規制を受けることなく進んだ場合の光の進路を示している。
【0050】
一方、光規制膜236の低透過部P2に入射した光L22は、光規制膜236により遮蔽され対物レンズ232側へ透過しない。仮に入射光L22が光規制膜236を透過したとすれば、点線矢印で示すように、対物レンズ232を介して反射面Sに入射し正反射した光L42は光規制膜236の高透過部P1を通過して光検出器側へ出射されることになる。しかしながら、入射光L22が光規制膜236によって遮蔽されるため、このような正反射光の出射は実現しない。
【0051】
このように、光源21から物体光学系23を介して反射面Sに入射し反射面Sで正反射され物体光学系23に戻ってくる光に対しては、光源21側から反射面S側に向かう図において右向きの光路、または反射面S側から光検出器26側に向かう図において左向きの光路のいずれかに低透過部P2が設けられている。このため、遮光部材230から光検出器側に出射される正反射光は大きく低減されている。
【0052】
これに対して、
図3(a)に破線矢印で示すように、反射面Sからの散乱光L43は種々の方向に出射される。そのため、一部の光が光規制膜236の低透過部P2により遮蔽され、他の一部が光規制膜236の高透過部P1を通過して光検出器側へ出射される。対物レンズ232により集光された散乱光のうち遮蔽される比率は、高透過部P1と低透過部P2との面積比に依存する。
【0053】
上記のように、遮光部材230は、反射面Sからの正反射光についてはその光路上に低透過部P2を設けることで確実に減衰させる一方、散乱光についてはある比率で通過させることができる。対物レンズ232の焦点位置近傍にあるウェル底面WbおよびスフェロイドSp内の界面が反射面Sとして作用するとき、スフェロイドSpからの散乱光が検出対象たる信号光L41となる一方、ウェル底面Wbからの正反射光は疑似的な参照光として作用し画像ノイズを生じさせる。
【0054】
この実施形態では、対物レンズ232で集光され遮光部材230を介して光検出器26側へ透過してくる光のうち信号光に対する正反射光の比率が大きく低減されており、信号光におけるS/N比が大きく改善される。すなわち、ウェル底面Wbからの正反射光が疑似的に参照光として作用することに起因する画像ノイズの発生を大幅に低減することが可能である。
【0055】
図3(b)はより一般的な透過パターンを示している。
図3(a)に示した例では対物レンズ232の光軸AXよりも上側が高透過部P1、下側が低透過部P2となっている。より一般的には、
図3(b)に示すように、対物レンズ232の右側(物体側)焦点位置に光軸AXと垂直な反射面Sを仮想的に設定し、透過パターンTPの左方から入射し対物レンズ232を介して反射面Sで正反射する光の光路上に必ず低透過部P2が存在するようなパターンが、上記と同様の機能を奏するものとなる。
【0056】
ところで、例えば有効領域Reを点Cを通る単一の直線で二等分したような透過パターンであっても、上記したようにウェル底面Wbでの正反射光を光検出器26に入射させない構成とすることは可能である。しかしながら、この場合、試料に入射する観察光の集光の角度範囲、および、対物レンズ232で集光されて光検出器26に入射する信号光の取り込みの角度範囲が制限される。その結果、光学系の実効的なNAが小さくなり、分解能の低下を招くことになる。このようなNAの低下を生じさせないためには、遮光部材230の透過パターンが、対物レンズ232の光軸AXと交わる点Cに関して回転対称性を有することが要件となる。
【0057】
以上より、ウェル底面Wbからの正反射光に起因する画像ノイズを撮像の分解能を低下させることなく低減させるためには、遮光部材230のうち有効領域Re内の透過パターンを、
(1)対物レンズ232の光軸AXと交わる点Cに関し回転対称性を有する、
(2)点Cに関し、高透過部P1内の任意の1点と点対称な位置にある点は、低透過部P2に含まれる、
の2つの条件が満たされるように設定すればよいこととなる。
【0058】
図3(c)は透過パターンの基本的な設定方法の一例を示している。同図に示すように、有効領域Reを、点Cを通る3以上の奇数本の直線(図において破線で示す)によって等角度間隔に区分し、区分された各領域に対し、高透過部P1と低透過部P2とが交互に並ぶように割り当てられればよい。これにより、有効領域Re内の透過パターンにおける高透過部P1と低透過部P2との面積は同一となり、遮光部材328で散乱光(信号光)が遮光される確率(遮蔽率)は50%となる。仮に散乱光が対物レンズ側へ均一に出射されていれば、散乱光のうち半分は遮光部材232を通過することになる。正反射光を確実に遮光しつつ遮光部材232を通過させる散乱光の光量は、このときが最大となる。
【0059】
一方、正反射光は低透過部P2によって遥かに大きな減衰を受けており、S/N比の改善効果は大きい。有効領域Reを偶数本の直線で区分した場合には、高透過部同士、低透過部同士が点対称な位置に割り当てられることとなり、上記効果は得られない。
【0060】
図4は透過パターンの他の例を示す図である。有効領域Reを区分する直線の本数は3以上の奇数本であれば任意であり、
図4(a)に示す例では、破線で示される点Cを通る9本の直線により等分された18の領域に、高透過部P1と低透過部P2とが交互に割り当てられている。また、
図4(b)に示すように、奇数本の直線で区分された領域の各々が点Cを中心とする1つのまたは複数の円により径方向にさらに区分され、周方向および径方向の両方で高透過部P1と低透過部P2とが交互に並ぶような配置であってもよい。この場合でも、高透過部P1中に任意の点に対し点Cに関して点対称の位置にある点は低透過部P2に含まれ、かつ透過パターン全体として回転対称性を有している。
【0061】
また、
図4(c)に示すように、上記のように区分された各領域に高透過部P1および低透過部P2が割り当てられ、しかも、低透過部P2が領域の境界から高透過部P1側に少しはみ出すようなパターンであってもよい。このような透過パターンでは、低透過部P2の一部において、点Cに関し点対称な位置にも低透過部P2が存在することになる。つまり、低透過部P2については、互いに点対称な位置にある2つの点がいずれも低透過部P2に含まれる場合がある。
【0062】
高透過部P1中の任意の位置に対し点対称な位置にある点は全て低透過部P2に含まれる。そのため、ウェル底面Wbでの正反射光の光検出器26への入射を抑制する機能は依然として保たれる。低透過部P2の面積がさらに広がっていることで、光検出器26への正反射光の漏れをより効果的に抑制することが可能となる。一方、高透過部P1の面積が減少し低透過部P2の面積が増大することで信号光の減衰も若干大きくなる。正反射光の漏れによる画像ノイズが特に問題となるようなケースにおいて、このような透過パターンが有効となる場合がある。
【0063】
信号光を最も効率よく集光するという観点からは、高透過部P1と低透過部P2との面積が等しい、つまり遮光部材230による光の遮蔽率が50%となる状態が最も好ましい。遮蔽率が50%未満、つまり高透過部P1の方が面積が大きくなるケースは、低透過部P2による減衰を受けることなく正反射光が遮光部材230を通過する光路が存在することとなるため、画像ノイズが増大し好ましくない。
【0064】
次に、観察光学系23を構成する各部の位置関係につきより詳しく説明する。
図1に示すように、光ファイバ222の端部から出射される観察光はコリメータレンズ231によって平行光に変えられ、対物レンズ232によって被撮像物であるスフェロイドSpに収束される。つまり、光ファイバ222の端部は、観察光学系23に関して、対物レンズの焦点と共役な位置に配置されている。言い換えれば、光ファイバ222の端部を光源の位置と見たとき、観察光学系23は共焦点光学系を構成している。
【0065】
図5は観察光学系の詳細を示す図である。共焦点光学系を構成する観察光学系23において、
図5(a)に示すように、コリメータレンズ231からその焦点距離f2だけ離れた位置にピンホールPHを配置した場合の光の進み方を考える。図に実線で示すように、対物レンズ232の焦点Fを含み光軸AXに垂直な焦点面FPから出射された光は、コリメータレンズ231の焦点面に結像し、この位置に配置されたピンホールPHを通過することができる。
【0066】
一方、点線および破線で示されるように、焦点面FPと異なる面から出射された光はその大部分がピンホールPHにより遮蔽されることになる。つまり、ピンホールPHは、対物レンズ232の焦点面FP付近からの光のみを選択的に通過させる機能を有する。実際には、焦点面FPを中心として光軸AX方向に所定の範囲内の光がピンホールPHを通過する。この範囲が光軸AX方向における分解能に対応し、分解能Rzは次式:
Rz≒0.89λ/(NA)2 … (式1)
で表される。ここに、符号λは光源の波長、NAが対物レンズ232の開口数である。
【0067】
ウェルWの内底面のような強い光反射を生じさせる界面が焦点面FPから上記(式1)で表される範囲内にあるとき、この界面からの正反射光がピンホールPHを通過することで擬似的な参照光として作用し自己相関ノイズを発生させる。遮光部材230はこれを抑制するために設けられるものである。これに対して、界面の位置が焦点面FPから離れていれば、界面からの反射光はピンホールPHを通過しないためノイズ源とはならない。したがって、遮光部材230は必ずしも必要ではない。
【0068】
このことから、遮光部材230を遮蔽位置に置くか退避位置に置くかを定める閾値Thは、(式1)で表される値Rzに依存すると言える。すなわち、光源および観察光学系23の光学的特性により決まる値Rzが大きいほど、閾値Thも大きくする必要がある。
【0069】
例えば光源21が出射する光の中心波長が1000nm、対物レンズ232の開口数が0.3である場合、分解能Rzの値は約10μm(焦点に対し±5μm)となる。したがって、原理上は、対物レンズ232の焦点とウェルWの底面との距離Dが分解能Rzより小さいときに遮光部材230を遮蔽位置に配置し、距離Dが分解能Rzよりも大きいときには遮光部材230を退避位置に配置すればよいことになる。すなわち、原理的には閾値Thを分解能Rzの値と同じにすればよい。
【0070】
しかしながら、本願発明者の実験によると、閾値Thについては分解能Rzの値より大きくした方が良好な画像品質が得られている。例えば閾値Thを100μmないし300μmとしたときに特に良好な画像品質が得られた。したがって、この範囲内で、対物レンズ232の開口数NAに応じて閾値Thを設定すればよい。
【0071】
この実施形態では、
図5(b)に示すように、コリメータレンズ231の焦点位置に光ファイバ222の端面222aが配置されている。この端面222aがピンホールPHと同様の機能を奏する。つまり、実線で示すように、対物レンズ232の焦点面FP付近から出射された光は高い効率で光ファイバ222に入射する一方、点線および破線で示すように、焦点面FPから離れた位置から出射されて光ファイバ222に入射する光は大きく減衰する。
【0072】
このように、観察光学系23を共焦点光学系とし、対物レンズ232の焦点位置と共役な位置に光ファイバ222の端面222aを配置することで、焦点面FPおよびその近傍からの反射光のみを選択的に光ファイバ222に入射させ、信号光として作用させることができる。したがって、被撮像物たるスフェロイドSpのうち、特に対物レンズ232の焦点面FPおよびその近傍にある構造を断層画像に反映させることが可能である。なお、コリメータレンズ231の焦点距離f1と対物レンズ232の焦点距離f2とは、必ずしも同じでなくてよい。
【0073】
上記のように構成された画像処理装置1では、スフェロイドSpに入射させる観察光をX方向に走査しつつ、光検出器26が干渉光を検出し、光検出器25が出力する干渉信号に基づき信号処理部33が所定の画像信号処理を実行することで、XZ平面に平行な一の断面におけるスフェロイドSpの断層画像が得られる。ここで、観察光学系23が共焦点光学系をなし焦点面FPから離れた位置からの反射光が排除されているため、一回の撮像で得られる断層画像の深さ方向(Z方向、光軸AX方向)のサイズは分解能Rz程度である。
【0074】
したがって、被撮像物のZ方向サイズが分解能Rzの値よりも大きい場合があり得る。例えば、多数の細胞が球状に集まってなるスフェロイドSpでは、その直径が100μm程度となることも多い。このような被撮像物全体を表す断層画像を得るためには、深さ方向に焦点位置を変えて複数回の撮像を行い、それぞれの撮像で得られた断層画像を深さ方向につなぎ合わせて合成画像を作成する必要がある。以下では、このような合成画像を作成するための処理の流れについてまず説明し、その後で、合成画像の作成方法の具体例について説明する。
【0075】
図6はこの実施形態における撮像動作を示すフローチャートである。この撮像動作は、焦点位置を深さ方向に変化させながら複数回撮像を行い、各撮像で得られた断層画像を合成することで、スフェロイドSpの全体像を作成する。この処理は、CPU31が予め準備された制御プログラムを実行し、装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0076】
被撮像物であるスフェロイドSpが液体とともにウェルWに収容されたウェルプレートWPが保持部10にセットされると(ステップS101)、使用される対物レンズ232に応じて閾値Thが設定される(ステップS102)。光学特性の異なる複数の対物レンズが切り替えて使用される撮像装置であれば、複数の対物レンズそれぞれに応じて用意された複数の閾値から、使用される対物レンズに対応したものを選択するようにしてもよい。また、オペレータが入力デバイス351を介して閾値Thを与えるようにしてもよい。
【0077】
続いて、対物レンズ232の焦点位置が初期位置に設定される(ステップS103)。Z方向に焦点位置を変えながら複数回撮像を行うのに際して、焦点位置は最上部位置から下方へ変化する態様であってもよく、この場合には最上部位置が初期位置となる。また、最下部位置から上方へ変化する態様であってもよく、この場合には最下部位置が初期位置となる。
【0078】
この状態から、焦点位置を多段階に変更しながらその都度撮像が行われる。具体的には、対物レンズ232の焦点とウェルW底面との距離Dと、先に設定された閾値Thとを比較し(ステップ104)、D≦Thであれば(ステップS104においてNO)、光部材230を遮蔽位置に配置し、遮光部材230が光を遮蔽する遮蔽状態に設定する(ステップS105)。一方、D>Thであれば(ステップS104においてYES)、遮光部材230を通過位置に配置し、遮光部材230が光を遮蔽せずそのまま通過させる通過状態に設定する(ステップS106)。
【0079】
そして、撮像ユニット20は、観察光となる光ビームをスフェロイドSpに入射させ、それをX方向に走査しつつ干渉光を検出することで干渉信号を取得する(ステップS107)。これにより、1つの焦点位置について撮像が行われる。全ての焦点位置について撮像が終了するまで(ステップS108)、焦点位置を1段階ずつ変更しながら(ステップS109)、ステップS104ないしS107の処理を繰り返すことで、互いに異なる複数の焦点位置から干渉信号が取得される。
【0080】
信号処理部33は、各焦点位置で取得された干渉信号からその位置における反射光強度分布を求め(ステップS110)、その結果に基づき断層画像データを作成する(ステップS111)。具体的には、干渉信号をフーリエ変換することで各位置における反射光の強度が求められ、反射光強度に応じた輝度を各位置の画素に付与することで、断層画像データが作成される。こうして得られた各焦点位置での断層画像データを合成することで、スフェロイドSpの全体に対応する合成画像が作成される(ステップS112)。
【0081】
以上の処理により、XZ平面と平行な1つの断面におけるスフェロイドSpの断層画像が作成されるが、さらに3D画像が作成されてもよい。すなわち、撮像ユニット20の位置をY方向に多段階に変化させながら、各位置で上記処理を実行することで、Y方向に位置を異ならせた複数の断層画像が得られる。これらの断層画像データから、3D復元部34が所定の画像処理により3D画像を作成することができる。複数の断層画像から3D画像を作成するための画像処理については公知であるため、ここでは説明を省略する。
【0082】
図7は画像合成処理の原理を示す図である。ここでは、焦点位置を4段階に変化させて取得された4つの画像を合成するケースについて説明するが、画像の数はこれに限定されず任意である。図左に示すように、対物レンズ232の焦点位置を互いに異なる座標位置Z1,Z2,Z3,Z4に設定しそれぞれで撮像された画像を、原画像I1,I2,I3,I4と称することとする。各原画像I1,I2,I3,I4は、焦点位置を中心として解像度Rzに対応する範囲で被撮像物に合焦した画像となっている。
【0083】
これらの原画像I1,I2,I3,I4からそれぞれの合焦範囲R1,R2,R3,R4を抽出し、図右に示すように、それらを焦点位置に応じてZ方向に位置をずらせて重ね合わせることで、スフェロイドSpの全体を収めた合成画像Isを作成することができる。画像の欠落を防止するため、原画像I1,I2,I3,I4において合焦範囲の端部が少しずつオーバーラップするように、撮像時の焦点位置が設定されることが望ましい。
【0084】
図8は画像合成処理を示すフローチャートである。この処理は
図5のステップS112に相当するものである。最初に、各焦点位置で撮像された画像のうち、遮光部材230を用いない状態、つまり通過状態で撮像された画像について、画像データのスケーリングを行う(ステップS201)。このスケーリングは、遮光部材230の有無による光量の違いを補償する目的で行われる。すなわち、光路に遮光部材230を配置することで、対物レンズ232に向かう観察光と、対物レンズ232を通過してくる信号光とがともに減衰する。このため、通過状態で取得された干渉信号は、遮蔽状態で取得された干渉信号よりも信号レベルが高い。このレベル差を解消するためにスケーリングを行う。
【0085】
スケーリングの比率は遮光部材230の遮蔽率に応じて定まる。観察光、信号光のそれぞれが遮蔽率に応じた減衰を受けることから、遮蔽率を2乗した値をスケーリング率とすればよい。本実施形態では遮蔽率が50%であるから、スケーリング率は25%とすることができる。信号レベルがより高い、通過状態で取得された画像にこのスケーリング率を適用することで、遮蔽状態で取得された画像と信号レベルを揃えることができる。
【0086】
信号レベルを揃えるという観点からは、よりレベルの低い遮蔽状態の信号を増大させることも考えられる。しかしながら、S/N比は拡大しないからノイズレベルも上がってしまい、画質という点では必ずしも良好な結果につながらない。一方、元の信号レベルが高い通過状態の画像データをスケーリングすれば、ノイズレベルを低下させより良好な画像品質を得ることができる。
【0087】
なお、最終的に信号レベルをスケーリングするのであれば、全ての画像を遮蔽状態で撮像すればよいとの考え方もあり得る。しかしながら、これではノイズレベルの低減は見込めない。また、本実施形態のように容器内の被撮像物を容器壁面を介して撮像する態様においては、通過状態での撮像は特に効果的である。その理由は以下の通りである。
【0088】
スフェロイドSpのような立体物を容器壁面を介して撮像するとき、焦点位置が容器壁面から大きく離れた状態での撮像では、スフェロイドSpの内部を撮像することになる。すなわち、観察光をスフェロイドSpの内部まで到達させ、そこからの反射光を取り出すことが必要となる。これらの光はスフェロイドSpの構造物による散乱を受けるから、それによる信号レベルの低下が生じ得る。このことから、壁面の反射が影響しない場合については、光量の減衰のない通過状態で撮像を行うことが望ましい。
【0089】
こうしてスケーリングされた各画像から、それぞれ合焦部分を抽出し(ステップS202)、それらのオーバーラップ部分に適宜の重み付けをしてマージすることで(ステップS203)、合成画像が作成される。この合成画像は、XZ平面に平行な1つの断面に対応するスフェロイドSpの断層画像である。互いに異なる複数の断面について同様に合成画像を作成し、さらにそれらを三次元的に合成してスフェロイドSpの3D像を作成することも可能である。
【0090】
図9は重み付けの例を示す図である。焦点位置が1段階異なる2つの画像、例えば
図7の画像I1,I2を合成する場合を考える。それぞれの画像から抽出された合焦部分R1,R2のうち、互いにオーバーラップのない部分については重み1が与えられる。また、オーバーラップ部分OLについては、焦点位置から離れるほど重みが小さくなるような重み付けを与えて加算する、例えば加重平均を行うことで、2つの画像を合成することができる。なお、この例では重みが線形に減少する態様としているが、他の曲線に沿って重みが変化するようにしてもよい。
【0091】
図10は本実施形態で得られる画像の例を示す図である。
図10(a)に示す画像Iaは、多段階の焦点位置の全てについて遮蔽状態で撮像された画像の例である。スフェロイドSpおよびウェル内底面Wbの像が含まれるが、自己相関ノイズに起因するゴースト像は含まれていない。ただし、スフェロイドSpの上部の構造が不明瞭であり、また背景ノイズも大きい。
【0092】
図10(b)は、矢印の位置で遮蔽状態と通過状態とを切り替えて撮像した画像を、スケーリングせずに合成した画像の例である。切り替え位置において輝度が大きく変化しており、合成画像としては不自然なものとなっている。一方、
図10(c)は切り替え位置よりも上方の画像の輝度を25%に低下させるスケーリングして合成した画像の例である。切り替え位置の上下で画像がスムーズにつながっており、また切り替え位置よりも上方の構造がより明瞭となり、背景ノイズも減少している。
【0093】
以上のように、本実施形態では、容器壁面のような界面に起因する自己相関ノイズを効果的に抑えつつ、界面の影響が及ばない部分についても良好な画像品質を得ることが可能である。このような界面としては容器壁面に限定されない。例えば被撮像物が何らかの担体に担持された状態で容器内に収容され、その担体が周囲の液体との間に界面を形成している場合にも、上記した撮像方法および画像合成方法が有効である。
【0094】
以上説明したように、この実施形態の画像処理装置1が本発明の「撮像装置」に相当しており、撮像ユニット20が本発明の「干渉信号取得部」として機能し、光検出器26が本発明の「検出器」として機能している。また、駆動部40が本発明の「焦点調整機構」として機能する一方、進退機構237が「切替機構」として機能している。また、光ファイバカプラ22の一部である光ファイバ222が、本発明の「光ファイバ」に相当している。また、制御ユニット30、特に信号処理部33が、本発明の「画像処理部」に相当している。
【0095】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、対物レンズ232の光軸AX方向に焦点位置を異ならせて取得した画像をつなぎ合わせて合成画像を作成している。しかしながら、このような画像合成を要しない撮像においても、上記した遮光部材230の切り替えは有効である。例えば、光軸方向における被撮像物のサイズが対物レンズ232の合焦範囲に収まる程度のものであれば、単一の撮像でも被撮像物の像を得ることが可能である。このような場合でも、容器中の被撮像物の位置により、容器壁面の影響が出る場合と出ない場合とがあり得る。そこで、被撮像物が壁面に近い場合には遮光部材230を遮蔽状態に、遠い場合には遮光部材230を通過状態にそれぞれ設定して撮像を行うようにすれば、いずれの撮像においても、壁面の影響のない良好な画像品質を得ることが可能である。
【0096】
また、上記実施形態の観察光学系23では、対物レンズ232の焦点と共役な位置に光ファイバ222の端面222aを配置することにより、焦点面近傍からの反射光のみが選択的に受光されるようになっている。しかしながら、これに限定されず、例えばピンホールPHのような開口絞りを配置することで焦点面近傍からの光を受光する構成であってもよい。OCT撮像装置としては、上記実施形態のような光ファイバカプラにより光路を構成するものの他に、ビームスプリッタを光路上に配置したものがある。このような構成において、上記のような開口絞りを好適に用いることができる。
【0097】
また、上記実施形態における遮光部材230は、光透過性を有する平板状の基材235の片面に遮光性を有する光規制膜236が形成されたものである。しかしながら、本発明の「遮光部材」はこのような構成に限定されるものではない。例えば前記したように、低透過部P2としての遮光性を有する平板状の部材に高透過部P1としての開口が設けられたものであってもよい。また、遮光部材は平板状のものに限定されず、より複雑な形状を有する部材の一部が本発明の「光規制面」として機能する平面部を有するものであってもよい。例えば対物レンズを支持する筒体の壁面のうち対物レンズと対向する一面が遮光部材として機能する構成であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態は、広範囲の波長成分を含む観察光を用いて波長ごとの干渉の強さから深さ方向の反射光強度分布を求める、いわゆるフーリエドメインOCT撮像装置である。しかしながら、本発明は、これ以外にも例えばタイムドメイン(Time Domain)OCT撮像装置のように、OCT撮像原理を用いて断層撮像を行う各種の撮像装置に対して適用可能である。
【0099】
また、上記実施形態の制御ユニット30としては、パーソナルコンピュータやワークステーション等の一般的な構成の汎用処理装置を用いることも可能である。すなわち、撮像ユニット20、駆動部40およびこれらの動作させるための最小限の制御機能を有する撮像装置と、上記処理内容を記述した制御プログラムを実行することで制御ユニット30として機能するパーソナルコンピュータ等との組み合わせにより、画像処理装置1が構成されてもよい。
【0100】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、この発明に係る撮像装置において、例えば干渉信号取得部は、干渉光を検出する検出器と、対物レンズを含み、観察光を被撮像物に導くとともに信号光を検出器に導く共焦点光学系である観察光学系とを有する構成であってもよい。このような構成によれば、対物レンズの焦点位置の近傍からの光を選択的に検出器に受光させることができ、焦点位置における被撮像物の構造を明瞭に表す画像を取得することができる。
【0101】
また例えば、干渉信号取得部は、観察光学系に関して被撮像物側の焦点位置とは共役な位置に一端部が配置された光ファイバを有し、当該光ファイバが、観察光を観察光学系に案内するとともに信号光を観察光学系から受光する構成であってもよい。このような構成によれば、焦点近傍からの信号光のみが光ファイバに入射することになり、焦点から離れた位置から出射される光の影響を排除することができる。
【0102】
また例えば、遮光部材の光規制面は、被撮像物とは反対側の対物レンズの焦点位置に配置されてもよい。このような構成によれば、焦点位置に開口絞りが設けられた物体側テレセントリック光学系と同様の効果、すなわち被撮像物の深さ方向の位置が変わっても像の大きさが変わらないという特性を得ることができる。
【0103】
また、この発明に係る撮像装置および撮像方法は、例えば、焦点位置を互いに異ならせて干渉信号を複数回取得し、取得された干渉信号のそれぞれに対応する複数の断層画像を合成した合成画像を作成するように構成されてもよい。このような構成によれば、対物レンズの合焦範囲を超えるようなサイズを有する被撮像物についても、それぞれ合焦状態で撮像された画像同士を合成して、その全体像を良好な画質で表す画像を得ることができる。
【0104】
この場合、遮光部材が遮蔽状態で取得された干渉信号に対応する断層画像と、遮光部材が通過状態で取得された干渉信号に対応する断層画像とを、遮光部材による光の遮蔽率に応じてスケーリングして合成するように構成されてもよい。このような構成によれば、遮光部材による光の遮蔽の有無に応じて生じる光量の変化に起因する輝度の違いを補償し、画質の良好な合成画像を得ることができる。
【0105】
また例えば、複数の断層画像それぞれの合焦範囲同士を連結して合成画像を作成するようにしてもよい。このような構成によれば、各断層画像の合焦部分のみを用いることで、画像内の各位置に焦点の合った画質の良好な画像を得ることができる。
【0106】
なお、本発明にいう「界面」としては、例えば被撮像物を収容する容器の光透過性の壁面がこれに該当する。このような容器壁面を介した撮像に本発明を適用することで、壁面の影響を排した画像を効率よく取得することが可能となる。また、容器として特殊な材質や構造のものを必要としないので、本発明を種々の用途に適用することが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
この発明は、OCT撮像技術全般に適用することができる。特に、ウェルプレート等の容器中に担持された細胞や細胞集塊を撮像する医学・生化学・創薬の分野において好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 撮像装置(画像処理装置)
20 撮像ユニット(干渉信号取得部)
21 光源
23 観察光学系
24 参照光学系
25 分光器
26 光検出器(検出器)
30 制御ユニット(画像処理部)
31 CPU
33 信号処理部(画像処理部)
40 駆動部(焦点調整機構)
222 光ファイバ
230 遮光部材
235 基材
236 光規制膜
237 進退機構(切替機構)
242 対物レンズ
AX (対物レンズ232の)光軸
P1 高透過部
P2 低透過部