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特許7404153直流事故検出装置、直流事故検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】直流事故検出装置、直流事故検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/36 20060101AFI20231218BHJP
   H02H 3/44 20060101ALI20231218BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20231218BHJP
【FI】
H02J3/36
H02H3/44 D
G01R31/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020085442
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021180580
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 圭
(72)【発明者】
【氏名】直井 伸也
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】中山 慶一
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-226174(JP,A)
【文献】特開平05-130732(JP,A)
【文献】特開2008-113546(JP,A)
【文献】特開昭53-57446(JP,A)
【文献】国際公開第2019/120536(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/36
H02H 3/44
G01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、夫々の電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置であって、
前記三以上の電力変換器のうち着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目電力変換器に接続された複数の着目直流送電線の電力変化を示す第1指標値と第1閾値との比較に基づいて前記直流送電システムにおける事故の発生を検知する事故発生検知部と、
前記事故発生検知部により事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、いずれかの着目直流送電線における電力変化を示す第2指標値が第2閾値を超えた場合に、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた着目直流送電線が事故区間であると判定する第1の事故区間判定部と、
前記事故発生検知部による事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後の、前記着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目直流送電線の電流変化に基づいていずれかの着目直流送電線が事故区間であると判定する第2の事故区間判定部と、
前記第1の事故区間判定部による判定結果と、前記第2の事故区間判定部による判定結果との論理積により、いずれかの着目直流送電線が事故区間であるか否かを判定する第3の事故区間判定部と、
を備える直流事故検出装置。
【請求項2】
前記第2の事故区間判定部は、前記着目電力変換器に接続された複数の着目送電線のうち、前記事故発生検知部による事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後における、前記電流変化の極性が一つだけ他の着目送電線と異なるものを、事故区間の送電線であると判定する、
請求項1に記載の直流事故検出装置。
【請求項3】
前記第1指標値および前記第2指標値は、前記着目電力変換器の近傍において計測された、前記複数の着目直流送電線の電圧である、
請求項1又は請求項2に記載の直流事故検出装置。
【請求項4】
前記第1指標値は、前記着目電力変換器の近傍において計測された、前記複数の着目直流送電線の電流の時間的変化であり、
前記第2指標値は、前記着目電力変換器の近傍において計測された、前記複数の着目直流送電線の電圧である、
請求項1又は請求項2に記載の直流事故検出装置。
【請求項5】
前記第1指標値および前記第2指標値は、前記着目電力変換器の近傍において計測された、前記複数の着目直流送電線の電流の時間的変化である、
請求項1又は請求項2に記載の直流事故検出装置。
【請求項6】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、夫々の電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出方法であって、
コンピュータが、
前記三以上の電力変換器のうち着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目電力変換器に接続された複数の着目直流送電線の電力変化を示す第1指標値と第1閾値との比較に基づいて前記直流送電システムにおける事故の発生を検知し、
事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、いずれかの着目直流送電線における電力変化を示す第2指標値が第2閾値を超えた場合に、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた着目直流送電線が事故区間であると判定し、
事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後の、前記着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目直流送電線の電流変化に基づいていずれかの着目直流送電線が事故区間であると判定し、
前記第2指標値が前記第2閾値を超えた着目直流送電線が事故区間であると判定した判定結果と、前記着目直流送電線の電流変化に基づいていずれかの着目直流送電線が事故区間であると判定した判定結果との論理積により、いずれかの着目直流送電線が事故区間であるか否かを判定する、
直流事故検出方法。
【請求項7】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、夫々の電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記三以上の電力変換器のうち着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目電力変換器に接続された複数の着目直流送電線の電力変化を示す第1指標値と第1閾値との比較に基づいて前記直流送電システムにおける事故の発生を検知させ、
事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、いずれかの着目直流送電線における電力変化を示す第2指標値が第2閾値を超えた場合に、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた着目直流送電線が事故区間であると判定させ、
事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後の、前記着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目直流送電線の電流変化に基づいていずれかの着目直流送電線が事故区間であると判定させ、
前記第2指標値が前記第2閾値を超えた着目直流送電線が事故区間であると判定した判定結果と、前記着目直流送電線の電流変化に基づいていずれかの着目直流送電線が事故区間であると判定した判定結果との論理積により、いずれかの着目直流送電線が事故区間であるか否かを判定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流事故検出装置、直流事故検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多端子HVDC(High-Voltage Direct Current)システムにおいて、直流系統に事故が発生した場合に、直流系統の事故(直流事故)が発生した区間(事故区間)を検出(特定)、除去し、残りの健全な系統で送電を続けるための保護システムが求められている。この保護システムより、直流系統の事故発生時にHVDCシステムの停止範囲を最小限に留め、HVDCの接続先である交流系統への影響を軽減させることができる。
【0003】
HVDCシステムにおいては、変換器に用いられている半導体素子の過電流保護の観点から、交流系統よりも短い時間で事故区間を検出、除去する必要がある。一般的に、HVDCシステムにおいては、事故発生から5ms程度の時間で事故区間の除去を完了させることが望ましいとされている。
【0004】
交流系統においては、通常、線路両端の差動電流を用いた手法によって事故区間を検出する。当該手法は、通信に時間を要するため、HVDCシステムにおける事故区間の検出には不向きである。HVDCシステムにおいては、交流系統より高速に、事故区間を検出する手法が求められている。
【0005】
HVDCシステムにおける、事故区間を検出する技術としては、直流送電線の両端に直流送電線と直列になるようにリアクトルを挿入する手法(直列リアクトル方式)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。直列リアクトル方式では、直列リアクトルの線路側における直流電圧の変化率を計測し、事故区間を検出する。当該直流送電線の線路内で事故が発生した場合(区間内事故の場合)、事故により発生したサージ電圧により電圧は急峻に変化する。一方、当該直流送電線の外、つまり他の直流送電線の線路内で事故が発生した場合(区間外事故の場合)には、他の直流送電線に接続された直列リアクトルを通過した後のサージ電圧(直列リアクトルにより平準化されたサージ電圧)が検出されるため、電圧は比較的緩やかに変化する。このように、直列リアクトル方式は、電圧の変化率の違いにより、事故が当該直流送電線に発生したものか否かを判定し、事故区間を検出する。
【0006】
しかし、直流電圧の計測結果のみで事故区間を検出する技術では、計測電圧にノイズが重畳した場合などに誤動作(例えば事故が発生してときに事故を検出)する虞があり、直流事故の検出や事故区間の検出の信頼性において改善の余地があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】J. Sneath, A. D. Rajapakse “Fault Detection and Interruption in an Earthed HVDC Grid Using ROCOV and Hybrid DC Brakers”, IEEE TRANSACTIONS ON POWER DELIVERY, Vol. 31, No. 3, June 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、HVDCシステムにおいて、高い信頼性で、直流事故や事故区間を検出することができる直流事故検出装置、直流事故検出方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の直流事故検出装置は、交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、夫々の電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置である。直流事故検出装置は、事故発生検知部と、第1の事故区間判定部と、第2の事故区間判定部と、第3の事故区間判定部とを持つ。事故発生検知部は、前記三以上の電力変換器のうち着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目電力変換器に接続された複数の着目直流送電線の電力変化を示す第1指標値と第1閾値との比較に基づいて前記直流送電システムにおける事故の発生を検知する。第1の事故区間判定部は、前記事故発生検知部により事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、いずれかの着目直流送電線における電力変化を示す第2指標値が第2閾値を超えた場合に、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた着目直流送電線が事故区間であると判定する。第2の事故区間判定部は、前記事故発生検知部による事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後の、前記着目電力変換器の近傍において発生した、前記着目直流送電線の電流変化に基づいていずれかの着目直流送電線が事故区間であると判定する。第3の事故区間判定部は、前記第1の事故区間判定部による判定結果と、前記第2の事故区間判定部による判定結果との論理積により、いずれかの着目直流送電線が事故区間であるか否かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の直流事故検出装置が適用される電力システム1の構成の例を示すブロック図。
図2】第1の実施形態に係る直流事故検出装置100について説明する図。
図3】事故発生前後における直流電圧による事故区間の判定について説明する図。
図4】事故発生前後における直流電流による事故区間の判定について説明する図。
図5】第1の実施形態の直流事故検出装置100が行う処理の流れを示すフローチャート。
図6】第2の実施形態に係る直流事故検出装置200について説明する図。
図7】事故発生前後における直流電流による事故区間の判定について説明する図。
図8】第2の実施形態の直流事故検出装置200が行う処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の直流事故検出装置、直流事故検出方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、実施形態(第1の実施形態、第2の実施形態)の直流事故検出装置が適用される電力システム1の構成の例を示すブロック図である。電力システム1は、例えば、交流系統2(交流系統2-1、2-2、2-3)と、電力変換器(交直変換器)3(電力変換器3-1、3-2、3-3)と、直流系統4とを備える。以下、電力変換器3-1の直流母線20-1に接続された構成が正極に対応し、直流母線20-2に接続された構成が負極に対応するものとする。
【0013】
なお、図1では、実施形態の直流事故検出装置の適用対象として電力システム1を説明するものであり、実施形態の直流事故検出装置が適用された状態を説明するものではない。
【0014】
電力システム1では、交流系統2及び直流系統4が、電力変換器3を介して接続される。交流系統2は、交流電源、及び交流送電線などにより構成された交流の電力系統である。電力変換器3は、交流電力と直流電力とを相互に変換する変換器であって、例えば自励式電力変換器である。
【0015】
直流系統4は、直流母線20(直流母線20-1~20-6)と、リアクトル30(リアクトル30-1~30-12)と、直流遮断器40(直流遮断器40-1~40-12)と、直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)とを備える。以下、ハイフン以下の符号を適宜省略して説明する。
【0016】
直流母線20は、電力変換器3の直流側に接続される。直流母線20-1は、電力変換器3-1の一方側に接続され、正極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-2は、電力変換器3-1の他方側に接続され、負極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-3は、電力変換器3-2の一方側に接続され、正極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-4は、電力変換器3-2の他方側に接続され、負極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-5は、電力変換器3-3の一方側に接続され、正極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-6は、電力変換器3-3の他方側に接続され、負極性の直流電圧が印加されている。
【0017】
直流母線20には、リアクトル30及び直流遮断器40を介して、複数の直流送電線50が接続される。一例として、直流母線20-1には、リアクトル30-1及び直流遮断器40-1を介して、直流送電線50-1が接続される。
【0018】
リアクトル30は、直流母線20と直流送電線50との間に接続される。リアクトル30は、直列リアクトル、ブロッキングコイル等のいずれの種類のリアクトルでもよい。
【0019】
直流遮断器40は、直流母線20と直流送電線50との間に接続される。直流遮断器40は、例えば、後述する直流事故検出装置100による制御に応じて、直流母線20と直流送電線50との間を電気的に接続又は遮断する。
【0020】
直流送電線50は、直流電力を送電する。直流電力での送電は、交流電力での送電と比較して電力の損失を抑制できることから、特に大容量、且つ長距離の送電に適用される。直流送電線50は、ケーブル、架空送電線等の種類は問わない。
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る直流事故検出装置100について説明する。直流事故検出装置100は、電力変換器3-1~3-3の夫々に適用されてよい。具体的には、電力変換器3-1の近傍には、当該電力変換器3-1に接続された直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4)における直流事故を検出するための直流事故検出装置100が設置(接続)される。電力変換器3-2の近傍には、当該電力変換器3-2に接続された直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-5、直流送電線50-6)における直流事故を検出するための直流事故検出装置100が設置(接続)される。電力変換器3-3の近傍には、当該電力変換器3-3に接続された直流送電線50(直流送電線50-3、直流送電線50-4、直流送電線50-5、直流送電線50-6)における直流事故を検出するための直流事故検出装置100が設置(接続)される。直流事故の一例は、直流送電線50を流れる電流が急激に変化する事故、例えば、落雷により発生する地絡事故である。
【0022】
図2は、第1の実施形態に係る直流事故検出装置100について説明する図である。具体的には、図2は、図1に示した直流系統4の一部の構成図、及び、直流事故検出装置100の構成図等を表している。図2では、図1に示した電力変換器3-1~3-3のうち電力変換器3-1に注目し、当該電力変換器3-1への直流事故検出装置100の適用例を示しているが、電力変換器3-2、3-3にも同様に、直流事故検出装置100を適用する。
【0023】
直流系統4への直流事故検出装置100の適用に際し、直流系統4に直流電圧検出器及び直流電流検出器が設けられる。電力変換器3-1に係る部分では、図2に示すように、直流電圧検出器60(直流電圧検出器60-1、60-2)、及び、直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)が設けられている。電力変換器3-2、3-3に係る部分についても同様である。以下、図2に示すように、直流電圧検出器60及び直流電流検出器70を備える直流系統4を直流系統4-1とも称する場合がある。
【0024】
図2に示すように、直流電圧検出器60-1は、直流母線20-1の直流電圧を計測する。直流電圧検出器60-2は、直流母線20-1の直流電圧を計測する。直流母線20-1、20-2は、直流電圧検出器60-1、60-2は、電力変換器3-1の近傍(電力変換器3-1に接続された直流送電線50)の電圧を計測するためのものである。直流電圧検出器60-1、60-2は、例えば、VT(Voltage Transformer)等で構成される。
【0025】
直流電流検出器70-1は、直流送電線50-1に流れる直流電流を計測する。直流電流検出器70-2は、直流送電線50-2に流れる直流電流を計測する。直流電流検出器70-3は、直流送電線50-3に流れる直流電流を計測する。直流電流検出器70-4は、直流送電線50-4に流れる直流電流を計測する。直流電流検出器70-1、70-2は、電力変換器3-1の近傍(電力変換器3-1に接続された直流送電線50)の直流電流を計測するためのものである。直流電流検出器70-1~70-4は、例えば、CT(Current Transformer)等で構成される。
【0026】
図2に示した直流事故検出装置100は、直流系統4-1(具体的には、直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4)で生じた直流事故を検出(検知)して事故区間を検出(特定)する装置である。直流事故検出装置100は、事故区間を直流系統4-1から除去(遮断)する制御も可能であってよい。
【0027】
直流事故検出装置100(後述する直流事故検出装置200も同様)の各構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0028】
図2に示すように、直流事故検出装置100は、直流電圧計測部101と、直流電流計測部102と、事故発生検知部103と、事故区間判定部A104と、事故区間判定部B105と、事故区間判定部C106と、遮断指令出力部107とを備える。
【0029】
直流電圧計測部101は、直流電圧検出器60(直流電圧検出器60-1、直流電圧検出器60-2)から出力された夫々の直流電圧を取り込んで計測する。直流電圧計測部101は、計測した直流電圧値と、定常運転時の夫々の直流電圧値との差分をとり、夫々の直流電圧変化量を演算する。つまり、直流電圧計測部101は、正極側の直流電圧検出器60-1から得られる直流電圧値と、正極側の定常運転時の直流電圧値とに基づいて、正極側の直流電圧変化量を演算する。また、直流電圧計測部101は、負極側の直流電圧検出器60-2から得られる直流電圧値と、負極側の定常運転時の直流電圧値とに基づいて、負極側の直流電圧変化量を演算する。正極側の定常運転時の直流電圧値は、正極側の定常運転時の直流電圧を計測して保持した値であってもよいし、予め設定した値であってもよい。負極側の定常運転時の直流電圧値についても同様である。
【0030】
事故発生検知部103は、直流電圧計測部101で演算された直流電圧変化量に基づいて直流事故の発生を検知する。具体的には、事故発生検知部103は、直流電圧計測部101で演算された正極側の直流電圧変化量に基づいて正極側(直流送電線50-1、直流送電線50-3)における直流事故の発生を検知する。また、事故発生検知部103は、直流電圧計測部101で演算された負極側の直流電圧変化量に基づいて負極側(直流送電線50-2、直流送電線50-4)における直流事故の発生を検知する。
【0031】
事故区間判定部A104は、事故発生を検知してから一定時間後の直流電圧変化量(正極側の直流電圧変化量、負極側の直流電圧変化量)に基づいて、当該直流事故が、注目する区間(自系統の区間)内、すなわち当該直流事故検出装置100が適用された当該電力変換器3-1に接続された直流送電線50内(具体的には、直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したか否かを判定する。
【0032】
なお、直流電圧計測部101によって演算される直流電圧変化量は、上述したように、正極側の直流電圧変化量と負極側の直流電圧変化量とがあるが、事故発生検知部103による事故発生の検知には、直流電圧変化量が大きい一方側を用い、他方側を用いなくてもよい。例えば、正極側の直流電圧変化量>負極側の直流電圧変化量であった場合には、事故発生検知部103は、正極側の直流電圧変化量に基づいて正極側(直流送電線50-1、直流送電線50-3)における直流事故の発生を検知し、負極側の直流電圧変化量に基づいて負極側(直流送電線50-2、直流送電線50-4)における直流事故の発生を検知しなくてもよい。事故区間判定部A104による事故区間の判定についても同様である。
【0033】
また、上記では、直流電圧計測部101が直流電圧変化量を演算する例を説明したが、直流電圧計測部101に代えて、事故発生検知部103が直流電圧変化量を演算してもよいし、事故区間判定部A104が直流電圧変化量を演算してもよい。
【0034】
直流電流計測部102は、直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)から出力された直流電流を取り込んで計測する。直流電流計測部102は、計測した直流電流値を時間微分し、直流電流変化率を演算する。
【0035】
事故区間判定部B105は、事故発生を検知してから一定時間後の直流電流変化率の極性に基づいて、当該直流事故が、注目する区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したか否かを判定する。
【0036】
なお、上記では、直流電流計測部102が直流電流変化率を演算する例を説明したが、直流電流計測部102に代えて、事故区間判定部B105が直流電流変化率を演算してもよい。
【0037】
また、直流事故検出装置100における各演算(直流電圧変化量の演算、直流電流変化率の演算)を行う前後に、移動平均やフィルタ適応等のノイズ除去を目的とした処理を行ってもよい。
【0038】
事故区間判定部C106は、事故区間判定部A104が判定した事故区間と、事故区間判定部B105が判定した事故区間とに基づいて、当該直流事故が、注目する区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したか否かを判定する。換言すれば、事故区間判定部C106は、当該直流事故検出装置100として、最終的に、事故区間を検出する。具体的には、事故区間判定部C106は、事故区間判定部A104が判定した事故区間と、事故区間判定部B105が判定した事故区間の論理積をとり、当該直流事故が、注目する区間内において発生したか否かを判定する。
【0039】
遮断指令出力部107は、事故区間判定部C106が判定(検出)した事故区間を直流系統4-1から除去するために、直流遮断器40に対して遮断指令を出力する。
【0040】
続いて、地絡事故発生時の直流事故検出装置100の動作について説明する。なお、地絡事故は、図2に示すように、定常運転時に正極性の直流電圧が印加されている直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部で発生したものとする。
【0041】
定常運転時には、直流電圧、直流電流ともほぼ定格値で変化しない。一方、事故発生時には、地絡点(直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部)の直流電圧は低下し、電力変換器3-1及び電力変換器3-2から地絡点に向かう短絡電流が流れる。
【0042】
図3は、事故発生前後における直流電圧による事故区間の判定について説明する図である。図3の上図は、事故発生前後における直流電圧変化量について説明する図である。具体的には、図3の上図は、直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部における地絡事故の発生前後における、電力変換器3-1側の直流電圧変化量(電力変換器3-1側において計測される直流電圧値に基づく直流電圧変化量)、電力変換器3-2側の直流電圧変化量(電力変換器3-2側において計測される直流電圧値に基づく直流電圧変化量)、電力変換器3-3側の直流電圧変化量(電力変換器3-3側において計測される直流電圧値に基づく直流電圧変化量)を示している。
【0043】
図3の上図の横軸は時間である。具体的には、横軸の時間は、事故発生の0.2ms前~事故発生の2ms後を示している。図3の上図の縦軸は、直流電圧計測部101によって演算される直流電圧変化量(pu)を示している。つまり、図3の上図の縦軸は、定常運転時(定格電圧)を1とした定常運転時に対する直流電圧の計測値を示している。
【0044】
図3の上図において、実線aは、電力変換器3-1側の直流電圧変化量である。短破線bは、電力変換器3-2側の直流電圧変化量である。長破線cは、電力変換器3-3側の直流電圧変化量である。
【0045】
電力変換器3-1側の直流電圧は、上述した、電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置100によって計測される。つまり、図2に示すように、直流事故検出装置100の直流電圧計測部101が、直流電圧検出器60(直流電圧検出器60-1、直流電圧検出器60-2)から出力された各直流電圧を取り込んで電力変換器3-1側の直流電圧を計測する。従って、電力変換器3-1側の直流電圧変化量は、正極側の直流電圧変化量(正極側である直流電圧検出器60-1から出力された直流電圧を取り込んで計測される直流電圧値による直流電圧変化量)と、負極側の直流電圧変化量(負極側である直流電圧検出器60-2から出力された直流電圧を取り込んで計測される直流電圧値による直流電圧変化量)とがある。図3の上図では、電力変換器3-1側の直流電圧変化量として、電力変換器3-1側の正極側の直流電圧変化量と、電力変換器3-1側の負極側の直流電圧変化量とのうち、直流電圧変化量が大きい方を示している。電力変換器3-2側の直流電圧変化量、電力変換器3-3側の直流電圧変化量についても同様である。
【0046】
実線aにて示すように、電力変換器3-1側の直流電圧変化量は、時点T0(本例では、略事故発生時)に、予め定めた閾値vth1を超過する。直流電圧変化量が閾値vth1を超過した時点T0(後述するが事故発生の検知時点)から予め定めた時間t2が経過した時点T1における電力変換器3-1側の直流電圧変化量dv2aは、予め定めた閾値vth2を超過している。なお、当然ではあるが、閾値vth1<閾値vth2である。
【0047】
時間t2は、直流電圧計測部101のサンプリング時間や事故区間判定部A104の演算時間に依存するが、事故区間を検出する迄に要する時間に影響するため、可能な限り短い時間であることが望ましい。
【0048】
閾値vth2は、例えば、事故点の位置、直流系統4-1の定格電圧、リアクトル30のインダクタンス値、直流送電線50の種類、直流送電線50の長さといったパラメータによって決定する。また、閾値vth2は、上記パラメータによる直流電圧変化量への影響を考慮して、事故区間外の直流電圧変化量の最大値<閾値vth2<事故区間内の直流電圧変化量の最小値とする。
【0049】
短破線bにて示すように、電力変換器3-2側の直流電圧変化量は、時点T2に、閾値vth1を超過する。また、直流電圧変化量が閾値vth1を超過した時点T2(後述するが事故発生の検知時点)から時間t2が経過した時点T3における電力変換器3-2側の直流電圧変化量dv2bは、閾値vth2を超過している。
【0050】
長破線cにて示すように、電力変換器3-3側の直流電圧変化量は、時点T4に、閾値vth1を超過する。また、直流電圧変化量が閾値vth1を超過した時点T4(後述するが事故発生の検知時点)から時間t2が経過した時点T5における電力変換器3-3側の直流電圧変化量dv2cは、閾値vth2を超過していない。
【0051】
以上のように、直流電圧変化量が閾値vth1を超過した時点(事故発生の検知時点)から時間t2が経過した時点の直流電圧変化量は、事故区間内である電力変換器3-1及び電力変換器3-2では閾値vth2よりも大きく、事故区間外である電力変換器3-3では閾値vth2よりも小さい。これは、事故区間内における電圧計測点(直流電圧検出器60)と事故点との間に存在するリアクトル30の数に比べ、事故区間内における電圧計測点と事故点との間に存在するリアクトル30の数の方が多いためである。
【0052】
実線aにて示した電力変換器3-1側の直流電圧変化量を参照しつつ、電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置100の動作について説明する。事故発生検知部103は、時点T0に、直流電圧変化量が閾値vth1を超過したため、直流事故の発生を検知する。すなわち、時点T0は、事故発生の検知時点である。事故区間判定部A104は、時点T1(事故発生の検知時点T0から時間t2が経過した時点)に、直流電圧変化量dv2aが閾値vth2を超過しているため、当該直流事故は、注目する区間内(当該電力変換器3-1に接続された直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したと判定する。
【0053】
短破線bにて示した電力変換器3-2側の直流電圧変化量を参照しつつ、電力変換器3-2に適用された直流事故検出装置(非図示)の動作について説明する。事故発生検知部(直流事故検出装置100の事故発生検知部103に相当)は、時点T2に、直流電圧変化量が閾値vth1を超過したため、直流事故の発生を検知する。すなわち、時点T2は、事故発生の検知時点である。事故区間判定部A(直流事故検出装置100の事故区間判定部A104に相当)は、時点T3(事故発生の検知時点T2から時間t2が経過した時点)に、直流電圧変化量dv2bが閾値vth2を超過しているため、当該直流事故は、注目する区間内(当該電力変換器3-2に接続された直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれか)において発生したと判定する。
【0054】
長破線cにて示した電力変換器3-3側の直流電圧変化量を参照しつつ、電力変換器3-3に適用された直流事故検出装置(非図示)の動作について説明する。事故発生検知部(直流事故検出装置100の事故発生検知部103に相当)は、時点T4に、直流電圧変化量が閾値vth1を超過したため、直流事故の発生を検知する。すなわち、時点T4は、事故発生の検知時点である。事故区間判定部A(直流事故検出装置100の事故区間判定部A104に相当)は、時点T5(事故発生の検知時点T4から時間t2が経過した時点)に、直流電圧変化量dv2cが閾値vth2を超過していないため、当該直流事故は、注目する区間内(当該電力変換器3-3に接続された直流送電線50-3、直流送電線50-4、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれか)において発生していないと判定する。
【0055】
図3の下図は、事故発生前後における直流電圧による事故区間の判定結果を説明する図である。図3の下図において、実線aは、電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置100における事故区間の判定結果を示している。短破線bは、電力変換器3-2に適用された直流事故検出装置(非図示)における事故区間の判定結果を示している。長破線cは、電力変換器3-3に適用された直流事故検出装置(非図示)における事故区間の判定結果を示している。
【0056】
電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置100は、図3の下図に示すように、T1において、直流事故が自系統の区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したと判定する。電力変換器3-2に適用された直流事故検出装置は、図3の下図に示すように、T3において、直流事故が自系統の区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれか)において発生したと判定する。電力変換器3-3に適用された直流事故検出装置は、図3の下図に示すように、直流事故が自系統の区間内(直流送電線50-3、直流送電線50-4、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれに)おいて発生していないと判定する。つまり、夫々の電力変換器3に適用された直流事故検出装置は、直流事故の検知時点から時間t2が経過した時点の直流電圧変化量が閾値vth2を超過する場合に、当該直流事故が自系統の区間内で発生したと判定する。
【0057】
図4は、事故発生前後における直流電流による事故区間の判定について説明する図である。図4の上図は、事故発生前後における直流電流変化率について説明する図である。具体的には、図4の上図は、電力変換器3-1に接続される直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4)における直流電流変化率を示している。
【0058】
図4の上図の横軸は時間である。具体的には、横軸の時間は、事故発生の0.2ms前~事故発生の2ms後を示している。図4の上図の縦軸は、直流電流計測部102によって演算される直流電流変化率を示している。
【0059】
図4の上図において、実線dは、直流送電線50-1の直流電流(直流電流計測部102が直流電流検出器70-1から出力された直流電流を取り込んで計測した直流電流)である。短破線eは、直流送電線50-3の直流電流(直流電流計測部102が直流電流検出器70-3から出力された直流電流を取り込んで計測した直流電流)である。長破線fは、直流送電線50-2の直流電流(直流電流計測部102が直流電流検出器70-2から出力された直流電流を取り込んで計測した直流電流)である。一点鎖線gは、直流送電線50-4の直流電流(直流電流計測部102が直流電流検出器70-4から出力された直流電流を取り込んで計測した直流電流)である。
【0060】
上述した通り、地絡事故は、定常運転時に正極性の直流電圧が印加されている直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部で発生したため、電力変換器3-1及び電力変換器3-2から地絡点に向かう短絡電流が流れる。従って、図4の上図に示すように、直流送電線50-1の直流電流は正方向に流れ、直流送電線50-2~直流送電線50-4の直流電流は負方向に流れる。つまり、直流電流は、事故区間内では正方向に流れ、事故区間外では負方向に流れる。換言すれば、事故区間内の直流電流変化率の極性と、事故区間外の直流電流変化率の極性とは異なる。
【0061】
このことから、事故区間判定部B105は、定格電流から値が変化した時点T6(本例では、略事故発生時)から予め定めた時間t3が経過した時点T7における直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50を事故区間と判定する。
【0062】
時間t3は、直流電流計測部102のサンプリング時間や事故区間判定部B105の演算時間に依存するが、事故区間を検出する迄に要する時間に影響するため、可能な限り短いことが望ましい。
【0063】
図4の下図は、事故発生前後における直流電流による事故区間の判定結果を説明する図である。図4の下図において、実線dは、直流送電線50-1に対する事故区間の判定結果を示している。破線iは、直流送電線50-1以外(直流送電線50-2~直流送電線50-4)に対する事故区間の判定結果を示している。
【0064】
図4の下図に示すように、事故区間判定部B105は、時点T7において、他(直流送電線50-2~直流送電線50-4)と直流電流変化率の極性が1つだけ異なる直流送電線50-1を事故区間と判定する。
【0065】
図5は、第1の実施形態の直流事故検出装置100が行う処理の流れを示すフローチャートである。直流事故検出装置100は、図5に示したフローチャートの処理を、稼働中である間、繰り返し実行する。
【0066】
事故発生検知部103は、直流電圧変化量が閾値vth1を超過したか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、事故発生検知部103は、事故が発生したか否かを判定する。事故発生検知部103により直流電圧変化量が閾値vth1を超過していないと判定された場合、本フローチャートの処理が終了される。
【0067】
事故発生検知部103により直流電圧変化量が閾値vth1を超過していると判定された場合、事故区間判定部A104は、直流電圧変化量が閾値vth2を超過したか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、事故区間判定部A104は、事故発生を検知してから予め定めた時間t2が経過した時点T1における直流電圧変化量が閾値vth2を超過したか否かを判定する。
【0068】
また、事故発生検知部103により直流電圧変化量が閾値vth1を超過していると判定された場合、事故区間判定部B105は、直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在するか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、事故区間判定部B105は、定格電流から値が変化した時点T6から予め定めた時間t3が経過した時点T7における直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在するか否かを判定する。
【0069】
事故区間判定部A104により直流電圧変化量が閾値vth2を超過していないと判定された場合、又は、事故区間判定部B105により直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在しないと判定された場合、直流事故は当該区間外で発生したと判定され(ステップS13)、本フローチャートの処理が終了される。つまり、事故区間判定部A104が、直流電圧変化量が閾値vth2を超過していないと判定した場合には、更に、直流事故は当該区間外で発生したと判定し、本フローチャートの処理が終了される。事故区間判定部B105が、直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在しないと判定した場合には、更に、直流事故は当該区間外で発生したと判定し、本フローチャートの処理が終了される。
【0070】
事故区間判定部A104により直流電圧変化量が閾値vth2を超過していると判定され、かつ、事故区間判定部B105により直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在すると判定された場合、事故区間判定部C106は、両判定結果の論理積により当該区間内における事故区間を判定する(ステップS14)。具体的には、事故区間判定部C106は、直流電圧変化量が閾値vth2を超過したとして事故区間判定部A104が判定した区間(直流送電線50)であって、かつ、直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なるものとして事故区間判定部B105が判定した区間(直流送電線50)を、事故区間として判定する。そして、ステップS15に進む。
【0071】
遮断指令出力部107は、事故区間判定部C106により判定された事故区間を直流系統4-1から除去するために、直流遮断器40に対して遮断指令を出力する(ステップS15)。そして、本フローチャートの処理が終了される。
【0072】
以上、第1の実施形態の直流事故検出装置100について説明した。第1の実施形態の直流事故検出装置100によれば、多端子直流送電システム4において、1つの端子側(電力変換器3側。直流事故検出装置100単体)のみで、事故区間を検出することができる。つまり、各端子間(電力変換器3間)での情報通信に要していた時間が削減され、短い時間で事故区間を検出することができる。更に、2つの異なる事故区間の判定方法の論理積によって事故区間を検出するため、1つの判定方法によって検出する場合に比べ、誤動作の確率を低減させ、高い信頼性で、直流事故や事故区間を検出することができる。
【0073】
なお、上記では、直流事故検出装置100は、直流電圧変化量に基づいて事故の発生を検知すると説明したが、直流電流変化率に基づいて事故の発生を検知してもよい。つまり、事故発生検知部103は、後述する直流事故検出装置200の事故発生検知部203と同様、直流電流変化率が閾値ith1を超過した場合に事故の発生を検知してもよい。
【0074】
また、上記では、直流事故検出装置100が事故区間を直流系統4-1から除去する制御を行うと説明したが、直流事故検出装置100とは別の装置(別体)が事故区間を直流系統4-1から除去する制御を行ってもよい。つまり、直流事故検出装置100に代えて、別の装置が、遮断指令出力部107を備えてもよい。別の装置が遮断指令出力部107を備える場合、直流事故検出装置100は、遮断指令出力部107を備える別の装置に、事故区間判定部C106による判定結果を出力する。
【0075】
なお、直流電圧計測部101が演算する直流電圧変化量は、電力変化を示す指標値(第1指標値、第2指標値)の一例である。直流電流計測部102が演算する直流電流変化率は、電力変化を示す指標値(第1指標値)の一例である。時間t2は、第1の所定の時間の一例である。時間t3は、第2の所定の時間の一例である。閾値vth1は、第1閾値の一例である。閾値vth2は、第2閾値の一例である。
【0076】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る直流事故検出装置200について説明する。図6は、第2の実施形態に係る直流事故検出装置200について説明する図である。具体的には、図6は、図1に示した直流系統4の一部の構成図、及び、直流事故検出装置200の構成図等を表している。図6では、図1に示した電力変換器3-1~3-3のうち電力変換器3-1に適用される例を示したが、電力変換器3-2、3-3にも同様に、直流事故検出装置200を適用する。
【0077】
直流系統4への直流事故検出装置200の適用に際し、直流系統4に直流電流検出器が設けられる。電力変換器3-1に係る部分では、図6に示すように、直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)が設けられている。電力変換器3-2、3-3に係る部分についても同様である。以下、図6に示すように、直流電流検出器70を備える直流系統4を直流系統4-2とも称する場合がある。
【0078】
直流電流検出器70は、図2に示した直流系統4-1における直流電流検出器70と同様、直流送電線50に流れる直流電流を計測する。つまり、図2に示した第1の実施形態の直流事故検出装置100を適用した直流系統4-1と、図6に示した第2の実施形態の直流事故検出装置200を適用した直流系統4-2とは、直流系統4-1が直流電圧検出器60を設けているのに対し、直流系統4-2は直流電圧検出器60を設けていない点が異なる。
【0079】
図6に示した直流事故検出装置200は、直流系統4-2(具体的には、直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4)で生じた直流事故を検出(検知)して事故区間を検出(特定)する装置である。直流事故検出装置200は、事故区間を直流系統4-2から除去する制御も可能であってもよい。直流事故検出装置200が検出する事故は、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様、直流送電線50を流れる電流が急激に変化する事故、例えば、落雷により発生する地絡事故である。
【0080】
以下の説明では、第2の実施形態の直流事故検出装置200について、第1の実施形態の直流事故検出装置100と相違する構成についてのみ説明し、第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図6に示すように、直流事故検出装置200は、直流電流計測部102と、事故発生検知部203と、事故区間判定部A204と、事故区間判定部B105と、事故区間判定部C106と、遮断指令出力部107とを備える。
【0082】
事故発生検知部203は、直流電流計測部102で演算された直流電流変化率に基づいて事故の発生を検知する。具体的には、事故発生検知部203は、直流電流計測部102で演算された直流電流変化率に基づいて直流送電線50-1~直流送電線50-4内における事故の発生を検知する。
【0083】
事故区間判定部A204は、事故発生を検知してから一定時間後の直流電流変化率に基づいて、当該直流事故が、注目する区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したか否かを判定する。
【0084】
なお、直流電流計測部102に代えて、事故発生検知部203が直流電流変化率を演算してもよい。また、直流電流計測部102に代えて、事故区間検知部A204及び事故区間判定部B105が直流電流変化率を演算してもよい。また、直流事故検出装置200における各演算(直流電流変化率の演算)を行う前後に、移動平均やフィルタ適応等のノイズ除去を目的とした処理を行ってもよい。
【0085】
続いて、地絡事故発生時の直流事故検出装置200の動作について説明する。なお、地絡事故は、第1の実施形態の場合と同様、定常運転時に正極性の直流電圧が印加されている直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部で発生したものとする。
【0086】
図7は、事故発生前後における直流電流による事故区間の判定について説明する図である。図7の上図は、事故発生前後における直流電流変化率について説明する図である。具体的には、図7の上図は、直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部における地絡事故の発生前後における、電力変換器3-1側の直流電流変化率、電力変換器3-2側の直流電流変化率、電力変換器3-3側の直流電流変化率を示している。
【0087】
図7の上図の横軸は時間である。具体的には、横軸の時間は、事故発生の0.2ms前~事故発生の2ms後を示している。図7の上図の縦軸は、直流電流計測部102によって演算される直流電流変化率を示している。
【0088】
図7の上図において、実線jは、電力変換器3-1側の直流電流変化率である。短破線kは、電力変換器3-2側の直流電流変化率である。長破線lは、電力変換器3-3側の直流電流変化率である。
【0089】
なお、電力変換器3-1側の直流電流変化率は、直流送電線50-1の直流電流変化率と、直流送電線50-2の直流電流変化率と、直流送電線50-3の直流電流変化率と、直流送電線50-4の直流電流変化率とがある。図7の上図では、電力変換器3-1側の直流電流変化率として、これらのうち、直流電流変化率が最大の1つを示している。電力変換器3-2側の直流電流変化率、電力変換器3-3側の直流電流変化率についても同様である。
【0090】
実線jにて示すように、電力変換器3-1側の直流電流変化率は、時点T0(本例では、略事故発生時)に、予め定めた閾値ith1を超過する。直流電流変化率が閾値ith1を超過した時点T0(後述するが事故発生の検知時点)から予め定めた時間t2aが経過した時点T1aにおける電力変換器3-1側の直流電流変化率di2aは、予め定めた閾値ith2を超過している。なお、当然ではあるが、閾値ith1<閾値ith2である。
【0091】
時間t2aは直流電流計測部202のサンプリング時間や事故区間判定部A204の演算時間に依存するが、事故区間を検出する迄に要する時間に影響するため、可能な限り短いことが望ましい。
【0092】
閾値ith2は、例えば、事故点の位置、直流系統4-2の定格電圧、リアクトル30のインダクタンス値、直流送電線50の種類、直流送電線50の長さといったパラメータによって決定する。また、閾値ith2は、上記パラメータによる直流電流変化率への影響を考慮して、事故区間外の直流電流変化率の最大値<閾値ith2<事故区間内の直流電流変化率の最小値とする。
【0093】
短破線kにて示すように、電力変換器3-2側の直流電流変化率は、時点T2aに、閾値ith1を超過する。また、直流電流変化率が閾値ith1を超過した時点T2a(後述するが事故発生の検知時点)から時間t2aが経過した時点T3aにおける電力変換器3-2側の直流電流変化率di2bは、閾値ith2を超過している。
【0094】
長破線lにて示すように、電力変換器3-3側の直流電流変化率は、時点T4aに、閾値ith1を超過する。また、直流電流変化率が閾値ith1を超過した時点T4a(後述するが事故発生の検知時点)から時間t2aが経過した時点T5aにおける電力変換器3-3側の直流電流変化率di2cは、閾値ith2を超過していない。
【0095】
以上のように、直流電流変化率が閾値ith1を超過した時点(事故発生の検知時点)から時間t2aが経過した時点の直流電流変化率は、事故区間内である電力変換器3-1及び電力変換器3-2では閾値ith2よりも大きく、事故区間外である電力変換器3-3では閾値ith2よりも小さい。これは、事故区間内における電流計測点(直流電流検出器70)と事故点との間に存在するリアクトル30の数に比べ、事故区間内における電流計測点と事故点との間に存在するリアクトル30の数の方が多いためである。
【0096】
実線jにて示した電力変換器3-1側の直流電流変化率を参照しつつ、電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置200の動作について説明する。事故発生検知部203は、時点T0に、直流電流変化率が閾値ith1を超過したため、事故の発生を検知する。すなわち、時点T0は、事故発生の検知時点である。事故区間判定部A204は、時点T1a(事故発生の検知時点T0から時間t2aが経過した時点)に、直流電流変化率di2aが閾値ith2を超過しているため、当該直流事故は、注目する区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したと判定する。
【0097】
短破線kにて示した電力変換器3-2側の直流電流変化率を参照しつつ、電力変換器3-2に適用された直流事故検出装置(非図示)の動作について説明する。事故発生検知部(直流事故検出装置200の事故発生検知部203に相当)は、時点T2aに、直流電流変化率が閾値ith1を超過したため、事故の発生を検知する。すなわち、時点T2aは、事故発生の検知時点である。事故区間判定部A(直流事故検出装置200の事故区間判定部A204に相当)は、時点T3a(事故発生の検知時点T2aから時間t2aが経過した時点)に、直流電流変化率di2bが閾値ith2を超過しているため、当該直流事故は、注目する区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれか)において発生したと判定する。
【0098】
長破線lにて示した電力変換器3-3側の直流電流変化率を参照しつつ、電力変換器3-3に適用された直流事故検出装置(非図示)の動作について説明する。事故発生検知部(直流事故検出装置200の事故発生検知部203に相当)は、時点T4aに、直流電流変化率が閾値ith1を超過したため、事故の発生を検知する。すなわち、時点T4aは、事故発生の検知時点である。事故区間判定部A(直流事故検出装置200の事故区間判定部A204に相当)は、時点T5a(事故発生の検知時点T4aから時間t2aが経過した時点)に、直流電流変化率di2cが閾値ith2を超過していないため、当該直流事故は、注目する区間内(直流送電線50-3、直流送電線50-4、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれか)において発生していないと判定する。
【0099】
図7の下図は、事故発生前後における直流電流による事故区間の判定結果を説明する図である。図7の下図において、実線jは、電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置200における事故区間の判定結果を示している。短破線kは、電力変換器3-2に適用された直流事故検出装置(非図示)における事故区間の判定結果を示している。長破線lは、電力変換器3-3に適用された直流事故検出装置(非図示)における事故区間の判定結果を示している。
【0100】
電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置200は、図7の下図に示すように、T1aにおいて、直流事故が自系統の区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、直流送電線50-4のいずれか)において発生したと判定する。電力変換器3-2に適用された直流事故検出装置は、図7の下図に示すように、T3aにおいて、直流事故が自系統の区間内(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれか)において発生したと判定する。
電力変換器3-3に適用された直流事故検出装置は、図7の下図に示すように、直流事故が自系統の区間内(直流送電線50-3、直流送電線50-4、直流送電線50-5、直流送電線50-6のいずれに)おいて発生していないと判定する。つまり、夫々の電力変換器3に適用された直流事故検出装置は、直流事故の検知時点から時間t2aが経過した時点の直流電流変化率が閾値ith2を超過する場合に、当該直流事故が自系統の区間内で発生したと判定する。
【0101】
図8は、第2の実施形態の直流事故検出装置200が行う処理の流れを示すフローチャートである。直流事故検出装置200は、図8に示したフローチャートの処理を、稼働中である間、繰り返し実行する。
【0102】
事故発生検知部203は、直流電流変化率が閾値ith1を超過したか否かを判定する(ステップS20)。すなわち、事故発生検知部203は、事故が発生したか否かを判定する。事故発生検知部203により直流電流変化率が閾値ith1を超過していないと判定された場合、本フローチャートの処理が終了される。
【0103】
事故発生検知部203により直流電流変化率が閾値ith1を超過していると判定された場合、事故区間判定部A204は、直流電流変化率が閾値ith2を超過したか否かを判定する(ステップS21)。具体的には、事故区間判定部A204は、事故発生を検知してから予め定めた時間t2aが経過した時点T1aにおける直流電流変化率が閾値ith2を超過したか否かを判定する。
【0104】
また、事故発生検知部203により直流電流変化率が閾値ith1を超過していると判定された場合、事故区間判定部B105は、第1の実施形態の直流事故検出装置100の事故区間判定部B105と同様、直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在するか否かを判定する(ステップS22)。
【0105】
事故区間判定部A204により直流電流変化率が閾値ith2を超過していないと判定された場合、又は、事故区間判定部B105により直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在しないと判定された場合、直流事故は当該区間外で発生したと判定され(ステップS23)、本フローチャートの処理が終了される。つまり、事故区間判定部A204が、直流電流変化率が閾値ith2を超過していないと判定した場合には、更に、直流事故は当該区間外で発生したと判定し、本フローチャートの処理が終了される。事故区間判定部B105が、直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在しないと判定した場合には、更に、直流事故は当該区間外で発生したと判定し、本フローチャートの処理が終了される。
【0106】
事故区間判定部A204により直流電流変化率が閾値ith2を超過していると判定され、かつ、事故区間判定部B105により直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なる直流送電線50が存在すると判定された場合、事故区間判定部C106は、第1の実施形態の直流事故検出装置100の事故区間判定部C106と同様、両判定結果の論理積により当該区間内における事故区間を判定する(ステップS24)。具体的には、事故区間判定部C106は、直流電流変化率が閾値ith2を超過したとして事故区間判定部A204が判定した区間(直流送電線50)であって、かつ、直流電流変化率の極性が1つだけ他と異なるものとして事故区間判定部B105が判定した区間(直流送電線50)を、事故区間として判定する。そして、ステップS25に進む。
【0107】
遮断指令出力部107は、第1の実施形態の直流事故検出装置100の遮断指令出力部107と同様、事故区間判定部C106により判定された事故区間を直流系統4-2から除去するために、直流遮断器40に対して遮断指令を出力する(ステップS25)。そして、本フローチャートの処理が終了される。
【0108】
以上、第2の実施形態の直流事故検出装置200について説明した。第2の実施形態の直流事故検出装置200によれば、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様の効果を得ることができる。
【0109】
なお、上記では、直流事故検出装置200が事故区間を直流系統4-2から除去する制御を行うと説明したが、直流事故検出装置200とは別の装置(別体)が事故区間を直流系統4-2から除去する制御を行ってもよい。つまり、直流事故検出装置200に代えて、別の装置が、遮断指令出力部107を備える構成であってもよい。当該構成の場合、直流事故検出装置200は、遮断指令出力部107を備える別の装置に、事故区間判定部C106による判定結果を出力する。
【0110】
なお、直流電流計測部102が演算する直流電流変化率は、電力変化を示す指標値(第1指標値、第2指標値)の一例である。時間t2aは、第1の所定の時間の一例である。時間t3aは、第2の所定の時間の一例である。閾値ith1は、第1閾値の一例である。閾値ith2は、第2閾値の一例である。
【0111】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、三以上の電力変換器のうち着目電力変換器の近傍において発生した、着目電力変換器に接続された複数の着目直流送電線の電力変化を示す第1指標値と第1閾値との比較に基づいて直流送電システムにおける事故の発生を検知する事故発生検知部(103、203)と、事故発生検知部により事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、いずれかの着目直流送電線における電力変化を示す第2指標値が第2閾値を超えた場合に、第2指標値が第2閾値を超えた着目直流送電線が事故区間であると判定する第1の事故区間判定部(104、204)と、事故発生検知部による事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後の、着目電力変換器の近傍において発生した、着目直流送電線の電流変化に基づいていずれかの着目直流送電線が事故区間であると判定する第2の事故区間判定部(105)と、第1の事故区間判定部による判定結果と、第2の事故区間判定部による判定結果との論理積により、いずれかの着目直流送電線が事故区間であるか否かを判定する第3の事故区間判定部(106)と、を持つことにより、例えば、高い信頼性で、直流事故や事故区間を検出することができる。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0113】
1…電力システム、2…交流系統、3…電力変換器、4…直流系統、20…直流母線、30…リアクトル、40…直流遮断器、50…直流送電線、60…直流電圧検出器、70…直流電流検出器、100…直流事故検出装置、101…直流電圧計測部、102…直流電流計測部、103…事故発生検知部、104…事故区間判定部A、105…事故区間判定部B、106…事故区間判定部C、107…遮断指令出力部、200…直流事故検出装置、203…事故発生検知部、204…事故区間判定部A
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8