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特許7404157表示装置およびその制御方法、撮像装置およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】表示装置およびその制御方法、撮像装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 13/08 20210101AFI20231218BHJP
   G03B 17/04 20210101ALI20231218BHJP
   G03B 17/20 20210101ALI20231218BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231218BHJP
   G03B 13/10 20210101ALI20231218BHJP
   H04N 23/53 20230101ALI20231218BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20231218BHJP
【FI】
G03B13/08
G03B17/04
G03B17/20
G03B15/00 Q
G03B13/10
H04N23/53
H04N23/60
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020096606
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021189359
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】長田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】宮▲埼▼ 孝
(72)【発明者】
【氏名】小田垣 光一
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087928(WO,A1)
【文献】特開平02-066530(JP,A)
【文献】特開2006-267380(JP,A)
【文献】特開昭57-173824(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 13/08
G03B 13/14
G03B 17/04
G03B 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物窓および接眼窓と、
指標を表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
被写体までの距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された被写体までの距離によって前記指標の表示位置を調整する第1の制御手段と、
前記光学素子をミラー状態またはハーフミラー状態に変更する制御を行う第2の制御手段と、を備え、
前記第2の制御手段は、前記光学素子を、前記ミラー状態かつフラットな形状と、前記ハーフミラー状態かつ湾曲した形状とのいずれかに変更する制御を行い、前記光学素子が前記ミラー状態かつフラットな形状に変更された場合、前記第1の制御手段は前記表示手段により被写体の画像を表示する制御を行い、前記光学素子が前記ハーフミラー状態かつ湾曲した形状に変更された場合、前記第1の制御手段は前記表示手段により前記指標を表示する制御を行う
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項に記載の表示装置を備え、
前記指標は照準マークである
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
撮像光学系および撮像素子によって撮像される被写体を検出する判定手段を備え、
前記測定手段は前記判定手段によって検出された前記被写体までの被写体距離を測定する
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項4】
記判定手段は、操作入力手段により選択された画像領域から対応する被写体を前記被写体として決定する
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の制御手段は、前記測定手段により測定された前記被写体の距離情報により、前記指標の投影位置を前記被写体距離における撮像光学系の中心に対応する位置に一致させる調整を行う
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
対物窓および接眼窓と、
指標として照準マークを表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
撮像光学系および撮像素子によって撮像される被写体を検出する判定手段と、
前記判定手段によって検出された前記被写体までの被写体距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記被写体距離によって前記指標の表示位置を調整する制御手段と、を備え、
前記判定手段が複数の被写体を検出した場合、前記測定手段は被写体ごとに距離を測定し、前記制御手段は、検出された被写体ごとに対応する前記指標の投影位置を調整する制御を行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
対物窓および接眼窓と、
指標として照準マークを表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
撮像光学系および撮像素子によって撮像される被写体を検出する判定手段と、
前記判定手段によって検出された前記被写体までの被写体距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記被写体距離によって前記指標の表示位置を調整する制御手段と、を備え、
前記判定手段は、操作入力手段により選択された画像領域から対応する被写体を前記被写体として決定し、
前記判定手段が複数の被写体を検出した場合、前記測定手段は被写体ごとに距離を測定し、前記制御手段は、検出された被写体ごとに対応する前記指標の投影位置を調整する制御を行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
対物窓および接眼窓と、
指標として照準マークを表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
撮像光学系および撮像素子によって撮像される被写体を検出する第1判定手段と、
前記第1判定手段によって複数の被写体が検出された場合、前記複数の被写体から主被写体を判定する第2判定手段と、
前記第1判定手段によって検出された前記被写体までの被写体距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記被写体距離によって前記指標の表示位置を調整する制御手段と、を備え、
前記制御手段は前記表示手段を制御し、前記第2判定手段により判定された主被写体に対する第1の指標と、前記第2判定手段により主被写体でないと判定された被写体に対する第2の指標とを識別可能に表示する制御を行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
記制御手段は、前記第1および第2の指標を異なる明るさもしくは色または大きさで表示させる制御を行う
ことを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の制御手段または前記制御手段は、前記指標の投影位置を調整した後、前記指標の明るさもしくは色を変更し、または前記指標を点滅させる制御を行う
ことを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記表示装置は、前記撮像装置の本体部と一体であるか、または該本体部に対して着脱可能である
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記表示手段は光源を有する表示パネルである
ことを特徴とする請求項2から11のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記表示装置を電子ビューファインダまたは照準器として機能させる切り替え手段を備える
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
対物窓および接眼窓と、
指標を表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
被写体までの距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された被写体までの距離によって前記指標の表示位置を調整する第1の制御手段と、
前記光学素子をミラー状態またはハーフミラー状態に変更する制御を行う第2の制御手段と、を備える表示装置にて実行される制御方法であって、
前記測定手段により被写体までの距離を測定する工程と、
前記第2の制御手段により、前記光学素子を、前記ミラー状態かつフラットな形状と、前記ハーフミラー状態かつ湾曲した形状とのいずれかに変更する制御を行う工程と、
前記第2の制御手段により、前記光学素子が前記ミラー状態かつフラットな形状に変更された場合、前記第1の制御手段が前記表示手段により被写体の画像を表示する制御を行い、前記第2の制御手段により、前記光学素子が前記ハーフミラー状態かつ湾曲した形状に変更された場合、前記第1の制御手段が前記表示手段により前記指標を表示する制御を行う工程と、を有する
ことを特徴とする表示装置の制御方法。
【請求項15】
対物窓および接眼窓と、
指標として照準マークを表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
撮像光学系および撮像素子によって撮像される被写体を検出する判定手段と、
前記判定手段によって検出された前記被写体までの被写体距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記被写体距離によって前記指標の表示位置を調整する制御手段と、を備える撮像装置にて実行される制御方法であって、
前記判定手段が複数の被写体を検出した場合、前記測定手段が被写体ごとに距離を測定する工程と、
前記制御手段が、検出された被写体ごとに対応する前記指標の投影位置を調整する制御を行う工程と、を有する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項16】
対物窓および接眼窓と、
指標として照準マークを表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
撮像光学系および撮像素子によって撮像される被写体を検出する判定手段と、
前記判定手段によって検出された前記被写体までの被写体距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記被写体距離によって前記指標の表示位置を調整する制御手段と、を備える撮像装置にて実行される制御方法であって、
前記判定手段が、操作入力手段により選択された画像領域から対応する被写体を前記被写体として決定する工程と、
前記判定手段が複数の被写体を検出した場合、前記測定手段が被写体ごとに距離を測定し、前記制御手段が、検出された被写体ごとに対応する前記指標の投影位置を調整する制御を行う工程と、を有する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項17】
対物窓および接眼窓と、
指標として照準マークを表示する表示手段と、
前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、
撮像光学系および撮像素子によって撮像される被写体を検出する第1判定手段と、
前記第1判定手段によって複数の被写体が検出された場合、前記複数の被写体から主被写体を判定する第2判定手段と、
前記第1判定手段によって検出された前記被写体までの被写体距離を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記被写体距離によって前記指標の表示位置を調整する制御手段と、を備える撮像装置にて実行される制御方法であって、
前記制御手段が前記表示手段を制御し、前記第2判定手段により判定された主被写体に対する第1の指標と、前記第2判定手段により主被写体でないと判定された被写体に対する第2の指標とを識別可能に表示する制御を行う工程を有する
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照準マーク等の指標を投影表示可能な表示装置、およびこれを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体が鳥や飛行機等のように撮像装置から遠方にある動体の場合、撮像装置が備えるドットサイトと呼ばれる照準器を使用した撮影が可能である。また、高倍率のレンズを備える撮像装置においては、安定した撮影を可能とするために電子ビューファインダ等の表示装置が搭載されている。特許文献1には電子ビューファインダおよび照準器を備えた撮像装置が開示されている。照準器の光学素子を発光ユニットとは独立して撮像装置の本体部からポップアップ可能な構成であり、照準光源を本体部に対して上下方向に移動させることによって視差補正が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-141296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、照準器の機能と電子ビューファインダの機能をそれぞれ別個の装置を用いて実現している。このため、照準器を利用している際に、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル等からなる電子ビューファインダの表示パネルを光源として利用できなかった。また撮像装置から被写体までの距離(被写体距離)に応じた照準光源(照準器の指標)の位置調整による視差補正では、使用者が照準光源をダイヤル等の手動操作で行う必要があるので調整が煩わしい。つまり、自動的な位置調整が好ましい。
本発明の目的は、指標の投影位置を被写体までの距離に応じて自動的に調整可能な表示装置、およびこれを備える撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態の表示装置は、対物窓および接眼窓と、指標を表示する表示手段と、前記指標を前記接眼窓へ導く光学素子と、被写体までの距離を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された被写体までの距離によって前記指標の表示位置を調整する第1の制御手段と、前記光学素子をミラー状態またはハーフミラー状態に変更する制御を行う第2の制御手段と、を備える。前記第2の制御手段は、前記光学素子を、前記ミラー状態かつフラットな形状と、前記ハーフミラー状態かつ湾曲した形状とのいずれかに変更する制御を行い、前記光学素子が前記ミラー状態かつフラットな形状に変更された場合、前記第1の制御手段は前記表示手段により被写体の画像を表示する制御を行い、前記光学素子が前記ハーフミラー状態かつ湾曲した形状に変更された場合、前記第1の制御手段は前記表示手段により前記指標を表示する制御を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、指標の投影位置を被写体までの距離に応じて自動的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る表示装置を備えた撮像装置の外観斜視図である。
図2】第1実施例の撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図3】複合表示装置の表示例を示す図である。
図4】撮像光学系の中心と接眼部を介して被写体を視認した際の視線とのズレを模式的に表す図である。
図5】調光ミラーに投影された照準マークを模式的に表す図である。
図6】第1実施例の複合表示装置の接眼窓から視認される像の例を示す図である。
図7】第2実施例の複合表示装置の接眼窓から視認される像の例を示す図である。
図8】第3実施例の複合表示装置の接眼窓から視認される像の例を示す図である。
図9】第4実施例の複合表示装置の接眼窓から視認される像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
[第1実施例]
図1および図2を参照して、本実施例の撮像装置1の構成について説明する。図1(A)は撮像装置1を正面から見た場合の斜視図であり、図1(B)は撮像装置1を背面から見た場合の斜視図である。以下では被写体側を前側として各部の位置関係について説明する。
【0009】
撮像装置1は前側に沈胴式の鏡筒ユニット2を備える。鏡筒ユニット2は、被写体像を撮像素子に結像する撮影レンズを備え、撮影時には撮像装置1の本体部から繰り出され、収納時には本体部の中に格納される。ストロボ装置3は撮像装置1の上部に設けられており、撮影時に光源が発光して被写体へ照明光を照射することで暗い環境でも適正な露出で撮影を行うことができる。
【0010】
撮像装置1の上面部には、各種の操作部材が配置されている。レリーズボタン4は2段階の押圧操作が可能な構成である。レリーズボタン4を用いて使用者が1段目の半押し操作(SW1)を行うと、撮影準備動作(測光動作や測距動作等)が開始される。次に使用者がレリーズボタン4の2段目の全押し操作(SW2)を行うと、被写体の撮影が開始された後、撮像装置1に内蔵された記録媒体に被写体の画像データが記録される。
【0011】
ズームレバー5は、レリーズボタン4の外周に配置された回転操作型レバーである。第1の方向へのズームレバー5の回転操作により、撮影レンズが望遠側(画角が狭くなる方向)にズーム動作が行われ、第2の方向へのズームレバー5の回転操作により、撮影レンズが広角側(画角が広がる方向)にズーム動作が行われる。
【0012】
電源ボタン6は押しボタンスイッチを有する。電源ボタン6の押下により、撮像装置1は使用不可状態(オフ状態)から使用可能状態(オン状態)へ移行し、または使用可能状態から使用不可状態へ移行する。
【0013】
モード設定ダイヤル7は回転操作部材であり、その天面には、各種の撮影モードに応じた複数のアイコン(不図示)が印刷されている。使用者は所望のアイコンを撮像装置1に設けられた指標(不図示)に合わせることで、アイコンに応じた各種モ-ド等の設定操作を行うことができる。
【0014】
撮像装置1はその上部に複合表示装置8を備える。複合表示装置8は電子ビューファインダ機能と照準器機能との切り替えが可能な構成である。複合表示装置8は前側に対物窓102を有し、後側に接眼窓83を有する。
図1(B)に示されるように、撮像装置1の背面部には操作ボタン9と表示装置10が設けられている。操作ボタン9は単独の押しボタン、および十字ボタン等を有する。操作ボタン9には操作に応じた複数の機能が割り当てられており、例えば撮影条件の変更、記録媒体23に記録された画像データの再生モードへの切り替えといった、各種指示の入力時に使用される。
【0015】
表示装置10は表示デバイスやタッチパネル等を有する。表示デバイスとして液晶ディスプレイ等が用いられ、電子ビューファインダと同様に、撮影対象である被写体の画像、あるいは撮影された画像の確認に用いられる。
【0016】
図2は撮像装置1の構成を示すブロック図である。図2(A)は複合表示装置8が照準器として機能している状態を示し、図2(B)は複合表示装置8が電子ビューファインダとして機能している状態を示す。撮像光学系の光軸を1点鎖線Axで図示する。
【0017】
撮像素子21は鏡筒ユニット2を介して結像される光学像に対して光電変換を行い、画像信号を生成する。CCD(電荷結合素子)イメージセンサやCMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等が使用される。本体制御部30はCPU(中央演算処理装置)を備え、撮像装置1の各構成部の制御を統括する。CPUは所定のプログラムを実行することにより、撮像素子21により取得された画像信号をデジタル情報に変換する処理や、画像データの現像処理および記録媒体23への記録処理等を行う。
【0018】
撮像装置1は対象物の距離測定部31、第1判定部32、第2判定部33を備えており、それぞれに対応する処理回路を有する不図示の主基板や補助基板等が実装されている。対象物の距離測定部31は三角測量の原理等に基づいて、撮像装置1から被写体までの距離(被写体距離)を計測する。あるいは瞳分割型撮像素子を用いた撮像面位相差検出方法によって、視点の異なる複数の画像データから距離情報(深度情報)を取得する方法がある。取得された複数の画像から像ずれ量マップや、像ずれ量に所定の変換係数を乗算して算出されるデフォーカス量マップ、デフォーカス量を被写体の距離情報に換算した距離マップや距離画像を生成することができる。また、被写体への投光から反射光を受けるまでの遅延時間を測定して被写体までの距離計測を行うTOF(Time Of Flight)法がある。
【0019】
第1判定部32は画像認識によって被写体の特徴を判定する。例えば、被写体の輪郭を判定することができる。第2判定部33は主被写体を判定する。主被写体とは、複数の被写体のうち、撮影における主たる対象物のことである。例えば、撮影可能範囲に複数の被写体像が検出された場合、撮像装置1による被写体の捉え方、捉え状況から、撮影対象である主被写体を判定することができる。
【0020】
距離測定部31が行う被写体距離の測定方法や、第1判定部32、第2判定部33が行う被写体判定方法は一例に過ぎず、他の方法でも問題はない。例えば第1判定部32、第2判定部33にて使用者は操作ボタン9やタッチパネル等の操作入力手段を使用して、所望の被写体の画像領域を画面上で明示的に指示することができる。
【0021】
複合表示装置8は有機ELパネル81、複数のレンズL1~L4、調光ミラー82、接眼窓83、対物窓102等を備える。複合表示装置8の電子ビューファインダ機能(図2(B)参照)にて、使用者は接眼窓83を覗く事で有機ELパネル81の表示情報を視認可能である。有機ELパネル81に表示された被写体像の確認や撮影された画像の確認を行うことができる。
【0022】
一方、複合表示装置8の照準器機能(図2(A)参照)にて、対物窓102から入射する光に対して、有機ELパネル81から調光ミラー82上に照準マーク103(図3参照)が重畳される形で照射が行われる。これにより、被写体追尾を補助することができる。
撮像装置1は、電源となる電池22を備え、各部に電源電圧が供給される。記録媒体23には撮影された被写体の画像データ等が記録される。
【0023】
次に、複合表示装置8の詳細な構成について説明する。有機ELパネル81は本体制御部30によって制御され、調光ミラー82は調光ミラー制御部101によって制御される。調光ミラー82は、ITO膜(透明導電膜の一種)付きのガラスの間に銀を含む電解質を満たした構成の反射光学素子である。電解質に電圧を印加することで銀の析出と溶出が切り替わり、ミラー状態とハーフミラー状態とを切り替えることができる。加えて、ハーフミラー状態の時の電解質に印加する電圧値の調整によって、ハーフミラーの透過率を調整することが可能である。本実施形態の調光ミラー82はその表面上にピエゾ薄膜が形成されており、ピエゾ薄膜への電圧の印加方法によって前側に向けて凸の放物面形状に湾曲した形状からフラットな状態へと形状を変化させることができる。
【0024】
調光ミラー制御部101は本体制御部30からの制御信号に基づいて、調光ミラー82への印加電圧を変更する制御を行う。これによって、調光ミラー82をミラー状態またはハーフミラー状態に切り替える制御と、放物面形状に湾曲した形状からフラットな状態へと形状を変化させる制御およびその逆の制御が行われる。
【0025】
操作ボタン9を用いて第1の操作が行われた場合、複合表示装置8は電子ビューファインダとして機能するように設定される。この場合(図2(B)参照)、調光ミラー制御部101は調光ミラー82をミラー状態であって、かつ、フラットな形状とするための電圧制御を行う。一方、有機ELパネル81は、本体制御部30の制御信号に基づき、調光ミラー82に対して所定の画像情報を表示する。所定の画像情報とは、記録媒体23に記録された画像データ、または撮像素子21によって連続的に取得されて生成される画像データ、所謂ライブビュー画像の情報である。このときの調光ミラー82はミラー状態であって、かつ、フラットな形状であるので、有機ELパネル81による表示画像の光は調光ミラー82によって接眼窓83に向けて反射される。使用者は接眼窓83を通して表示画像を視認することができる。
【0026】
また、操作ボタン9を用いて第2の操作が行われた場合、複合表示装置8を照準器として機能するように設定される。この場合(図2(A)参照)、調光ミラー制御部101は調光ミラー82をハーフミラー状態であって、かつ、前側に向けて凸の放物面形状に湾曲した形状とするための電圧制御を行う。対物窓102からの入射光はレンズL1、L2、調光ミラー82、レンズL3、L4を透過し、使用者は接眼窓83を通して対象物(被写体)を視認することができる。
【0027】
図3を参照して、複合表示装置8を照準器として機能させるように設定されている場合について説明する。図3(A)は有機ELパネル81の表示例を示し、図3(B)は接眼窓83を通して使用者が視認する被写体像の例を示す。
【0028】
対物窓102は被写体からの光を複合表示装置8の内部へ透過させる。また接眼窓83は調光ミラー82からの光を複合表示装置8の外部へ透過させる。具体的には、対物窓102と接眼窓83はいずれも平面形状であり、ガラスやプラスチック等の材料で製造される。
【0029】
複合表示装置8の照準器機能が設定された場合、図3(A)に示されるように有機ELパネル81は照準マーク103を表示する。照準マーク103は撮像素子21で捉えられる画角の略中心に相当する箇所に表示され、その他の領域は黒色で表示される。調光ミラー82はハーフミラー状態であるので、調光ミラー82は、撮像装置1の対物窓102からの光を透過する。有機ELパネル81上に表示された照準マーク103の光は、対物窓102からの入射光に重畳させる形で調光ミラー82から接眼窓83に向けて反射される。このときの調光ミラー82は後側に向けて凹の放物面形状に湾曲した形状となっているので、調光ミラー82の反射光は平行光線となる。つまり照準マーク103の反射像は使用者の目の位置によらず、接眼窓83を通して一定の位置に見える。
【0030】
図3(B)において、照準マーク103の光は調光ミラー82によって反射され、使用者(観察者)は接眼窓83から視認可能である。被写体104として、図3(B)の例では犬が対物窓102からの光によって視認される。
【0031】
照準マーク103は鏡筒ユニット2の光軸中心、即ち調光ミラー82上の撮像素子21で捉えられる画角の略中心に相当する箇所に投影されることが好ましい。但し、照準器機能を有する複合表示装置8の位置と、鏡筒ユニット2の位置との間には撮像装置1の上下方向にズレがあり、それぞれの光軸にもズレが生じる。このため、単純に調光ミラー82の中心に照準マーク103を投影してしまうと撮像素子21で捉えられる画角の略中心に相当する箇所に照準マーク103が投影されず、ズレが発生する。
【0032】
図4は、鏡筒ユニット2の撮像光学系の中心と、使用者(観察者)が接眼窓83を介して被写体104を視認する際の視線とのズレを模式的に表した図である。被写体104の異なる位置として第1の位置P104aと第2の位置P104bの例を示す。図5は調光ミラー82に投影される照準マーク103を説明する模式図である。図5(A)は照準器の要部を側方から見た場合の模式図であり、図5(B)は観察者の視線方向から見た場合の模式図である。図6は複合表示装置8の接眼窓83から観察者により視認される像の例を示す図である。
【0033】
図4に示す被写体104が第1の位置P104aにあるとき、撮像装置1から被写体104までの距離をX1と表記し、被写体104が第2の位置P104bにあるとき、撮像装置1から被写体104までの距離をX2と表記する。この例では「X1<X2」である。
【0034】
第1判定部32は被写体104を認識し、距離測定部31は認識された被写体104が撮像装置1から距離X1にあると判定する。この場合、本体制御部30は照準マーク103を、図5(A)に示す有機ELパネル81上の位置P1に調整する。位置P1は予め設定された位置であり、被写体104までの距離が撮像装置1から距離X1であると判定された場合に、照準マーク103の位置が鏡筒ユニット2の撮像光学系の中心に対応する位置と一致するように設定される。これにより、図5(B)にて調光ミラー82上の十字線で示すように照準マーク103が位置Q1に投影される。使用者は接眼窓83を覗いた際、図6(A)に示すように照準マーク103を、距離X1における撮像素子21で捉えられる画角の略中心に相当する箇所に視認することができる。
【0035】
被写体104の位置が変化した場合に本体制御部30は、照準マーク103の表示位置を自動的に調整する。第1判定部32が被写体104を認識し、距離測定部31は認識された被写体104が撮像装置1から距離X2にある判定したとする。この場合、照準マーク103は図5(A)に示す有機ELパネル81上の位置P2に調整される。位置P2は被写体104までの距離が撮像装置1から距離X2であると判定された場合に、照準マーク103の位置が鏡筒ユニット2の撮像光学系の中心に対応する位置と一致するように設定された位置である。これにより、図5(B)にて調光ミラー82上の十字線で示すように照準マーク103が位置Q2に投影される。使用者は接眼窓83を覗いた際、図6(B)に示すように照準マーク103を、距離X2における撮像素子21で捉えられる画角の略中心に相当する箇所に視認することができる。
【0036】
本実施例では、電子ビューファインダおよび照準器の機能を切り替え可能な表示装置において、表示パネル(有機ELパネル81)、および反射光学素子(調光ミラー82)の制御が行われる。表示パネルの光源を利用し、投影する指標(照準マーク103)の位置(投影位置)を、被写体距離に応じて自動的に調整することができる。つまり被写体距離によらず、照準マーク103が調光ミラー82上の撮像素子21で捉えられる画角の略中心に相当する箇所に投影される。よって、使用者はダイヤル等の操作部材を用いて照準マークの投影位置を手動で調整する必要がない。
【0037】
[第2実施例]
図7を参照して、本発明の第2実施例について説明する。以下では、第1実施例と同様の事項については既に使用した符号や記号等を流用することで、それらの詳細な説明を省略し、主に相違点を説明する。このような説明の省略方法は後述の実施例でも同じである。
【0038】
図7は本実施例の複合表示装置(照準器)8の接眼窓83から使用者により視認される像の例を示す。第1判定部32が複数の被写体を認識した場合における動作例を説明する。撮像装置1からの距離が異なる被写体104a,104bを示す。撮像装置1に対して、第1の被写体104aを相対的に近い距離X1(図4参照)の被写体とし、第2の被写体104bを相対的に遠い距離X2(図4参照)の被写体とする。
【0039】
第1判定部32が画角内に複数の被写体104a,104bを認識した場合、距離測定部31は認識された被写体ごとに撮像装置1から被写体までの距離を判定する。第1の被写体104aは距離X1にあると判定され、第2の被写体104bは距離X2にあると判定される。複数の照準マーク103は図5(A)に示す表示パネル上における位置P1、P2にそれぞれ調整され、設定された各位置に表示される。つまり、図5(B)に示す調光ミラー82上の位置Q1およびQ2に照準マークがそれぞれ投影される。使用者は接眼窓83を覗いた際、図7に示すように、照準マーク103aおよび103bを撮像装置1の撮影可能範囲の略中央位置に視認することができる。照準マーク103aは距離X1に対応する画面上の第1の位置に表示され、照準マーク103bは距離X2に対応する画面上の第2の位置に表示される。
【0040】
本実施例では、複数の被写体104a、104bが検出された場合、図7に示すように各被写体までの距離に対応する撮影可能範囲の位置にそれぞれ照準マーク103が投影される。複数の被写体に対して使用者が主被写体の選択に迷っている場合でも、被写体104a、104bのいずれも追尾することが可能である。尚、2つの被写体104a、104bの例を説明したが、3つ以上の被写体が検出された場合でも本実施例を適用可能であり、その場合には検出された被写体の数に応じて照準マークの数が設定される。このことは後述の実施例でも同じである。
【0041】
[第3実施例]
図8を参照して、本発明の第3実施例について説明する。図8は本実施例の複合表示装置(照準器)8の接眼窓83から使用者により視認される像の例を示す。本実施例でも第1判定部32が複数の被写体104a,104bを認識した場合における動作例を説明する。
【0042】
第1判定部32が複数の被写体を認識した場合、距離測定部31は認識された被写体ごとに被写体距離を判定する。第1の被写体104aは距離X1(図4参照)にあると判定され、第2の被写体104bは距離X2(図4参照)にあると判定される。複数の照準マーク103は図5(A)に示す有機ELパネル81上の位置P1、P2にそれぞれ調整される。また、第2判定部33は複数の被写体から主被写体の判定を行う。主被写体の判定は被写体画像のサイズ、被写体距離、顔認識結果、あるいは使用者の操作指示情報等に基づいて行われる。被写体104aが主被写体であると判定された場合、本体制御部30は有機ELパネル81を制御し、主被写体に対応する照準マークと主被写体でない被写体に対応する照準マークを識別可能に表示する制御を行う。例えば、被写体104aに対応する位置P1での照準マーク103aは位置P2での照準マーク103bよりも明るく表示される。
【0043】
本実施例では、複数の被写体にそれぞれ対応する照準マークのうち、判定された主被写体に対応する照準マークが相対的に明るく投影されるので、使用者が接眼窓83を覗いた際に、主被写体の追尾が行い易くなる。なお、照準マークの表示の明るさを変化させる以外の方法として、主被写体104aに対応する照準マーク103aを主被写体ではないと判定された被写体104bに対応する照準マーク103bより大きく表示する方法がある。また、照準マークの表示色や彩度、形状等を変更して主被写体に対応する照準マークを識別可能に表示する方法がある。あるいは、主被写体ではないと判定された被写体104bについては照準マーク103b自体を投影しなくても構わない。
【0044】
[第4実施例]
図9を参照して、本発明の第4実施例の撮像装置1について説明する。図9(A)および(B)は本実施例の複合表示装置(照準器)8の接眼窓83から使用者により視認される像の例を示す。
【0045】
第1判定部32は被写体104aを認識し、距離測定部31は認識された被写体104aが撮像装置1から距離X1(図4参照)にあると判定する。被写体距離に応じて照準マーク103の表示位置が調整される。以上の処理が終わると本体制御部30は有機ELパネル81を制御して、図9(A)に示すように照準マーク103の表示色または明るさを変更する。あるいは、本体制御部30は図9(B)に示すように、照準マーク103を点滅させる制御を行う。
【0046】
本実施形態によれば、照準マーク103が最適な位置に調整済みであるか否かを、使用者に対して識別可能に通知することが可能である。
【0047】
[その他の実施例]
前記の各実施例では、第1判定部32による判定処理で被写体104の決定を行う例を示したが、操作ボタン9やタッチパネル等の操作入力手段を用いて使用者が選択した被写体を決定してもよい。
【0048】
また、照準マーク103の光源として有機ELパネルの例を示したが、これに限定されず、液晶表示パネル等の表示デバイスが備える光源を利用してもよい。またLED(発光ダイオード)等の単一光源を利用してもよい。その場合には光源の位置を変更するスライド機構部、または光源の照射角度を変更する回転機構部が用いられる。本体制御部30はスライド機構部または回転機構部の駆動源(アクチュエータ等)の駆動制御を行うことにより指標の表示位置を調整する。
【0049】
複合表示装置8が撮像装置1の本体部と一体に構成される例のほかには、複合表示装置8が撮像装置1の本体部に対して着脱可能な構成がある。この場合、反射光学素子(調光ミラー82)の制御部101と本体制御部30、および表示パネル(有機ELパネル81)と本体制御部30との通信を可能にするために、複合表示装置8と撮像装置1とは有線または無線の通信手段を有する。また、鏡筒ユニット2は撮像装置1に必ずしも固定されている必要はなく、着脱可能な、所謂レンズ交換式撮像システムへの適用が可能である。
【0050】
複合表示装置8の電子ビューファインダ機能と照準器機能との切り替え用の操作手段として、操作ボタン9を用いる例を示した。その他の操作手段として、例えば表示装置10がタッチパネル等の接触検知デバイスを備える例において、タッチパネルへの操作にしたがって複合表示装置8の電子ビューファインダ機能と照準器機能との切り替えが行われる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 撮像装置
8 複合表示装置
9 操作ボタン
30 本体制御部
31 距離測定部
32 第1判定部
33 第2判定部
81 有機ELパネル
82 調光ミラー
101 調光ミラー制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9