IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シマノの特許一覧

<>
  • 特許-スピニングリール 図1
  • 特許-スピニングリール 図2
  • 特許-スピニングリール 図3
  • 特許-スピニングリール 図4
  • 特許-スピニングリール 図5
  • 特許-スピニングリール 図6
  • 特許-スピニングリール 図7
  • 特許-スピニングリール 図8
  • 特許-スピニングリール 図9
  • 特許-スピニングリール 図10
  • 特許-スピニングリール 図11
  • 特許-スピニングリール 図12
  • 特許-スピニングリール 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A01K89/01 E
A01K89/01 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020100992
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021193892
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】楠田 周
(72)【発明者】
【氏名】新妻 翔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-276631(JP,A)
【文献】特開2003-079287(JP,A)
【文献】特許第6518520(JP,B2)
【文献】特開2004-081046(JP,A)
【文献】特開平11-046641(JP,A)
【文献】登録実用新案第3029295(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、
前記リール本体に支持されるスプール軸と、
前記スプール軸に支持されるスプールと、
前記スプール軸の軸回りに回転可能であり、前記スプールに釣り糸を巻き付けるためのロータと、
前記スプール軸と交差する方向に延び、糸巻き取り方向及び前記糸巻き取り方向と逆方向に回転可能に前記リール本体に支持されるハンドル軸と、
前記ハンドル軸の軸回りに回転可能な駆動軸と、
前記駆動軸の回転を前記ロータに伝達する回転伝達機構と、
前記ハンドル軸と前記駆動軸の間に設けられ、前記ハンドル軸の前記糸巻き取り方向の回転のみを前記駆動軸に伝達し、前記ロータの糸繰り出し方向の回転を前記駆動軸から前記ハンドル軸に伝達しない回転制御機構と、
前記駆動軸と一体回転するとともに前記ハンドル軸に接触して配置され、前記ハンドル軸の回転に制動力を付与する制動部材と、
を備える、スピニングリール。
【請求項2】
前記駆動軸は、前記ハンドル軸が通される中空部を有し、
前記制動部材は、前記駆動軸の前記中空部に配置される、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記制動部材は、前記ハンドル軸を支持する滑り軸受である、
請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記ハンドル軸は、軸本体と、前記軸本体から離れるにつれて外径が小さくなるテーパ部を有し、
前記制動部材は、前記テーパ部に対応して形成され前記テーパ部を支持する支持部を内周部に有する、
請求項3に記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記テーパ部から前記軸本体に向かう方向に前記制動部材を押し付ける第1付勢部材をさらに備える、
請求項4に記載のスピニングリール。
【請求項6】
前記制動部材は、前記ハンドル軸の先端に接触する摩擦プレートである、
請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【請求項7】
前記駆動軸と一体回転するとともに、前記制動部材の制動力を調節可能な調整部材をさらに備える、
請求項5又は6に記載のスピニングリール。
【請求項8】
前記リール本体の左側部に設けられ、ハンドル軸に連結されるハンドルと、
前記駆動軸に一体回転可能に連結される駆動ギアと、
前記スプール軸の軸方向に延び、前記駆動ギアに噛み合うピニオンギアと、
前記駆動ギアを前記ピニオンギアから離れる方向に付勢する第2付勢部材と、
をさらに備える、
請求項5から7のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項9】
前記ハンドル軸と前記回転制御機構との間に摩擦力を発生させる弾性部材をさらに備え、
前記回転制御機構は、ワンウェイクラッチによって構成され、前記駆動軸及び前記ハンドル軸の一方に一体回転可能に設けられる内輪と、前記駆動軸及び前記ハンドル軸の他方に一体回転可能に設けられる外輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置された複数の転動体と、を有し、
前記弾性部材は、前記ハンドル軸と前記内輪との軸方向間に配置され、前記ハンドル軸と前記内輪との間に摩擦力を発生させる、
請求項1から8のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項10】
前記ハンドル軸に連結されるハンドルをさらに備え、
前記回転制御機構は、ワンウェイクラッチによって構成され、
前記ワンウェイクラッチを接続状態に切換えるために必要なトルクは、前記ハンドルの自重によって発生するトルクよりも大きく、前記制動部材の前記制動力よりも小さい
求項1から8のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
釣り用リールにおいて、ハンドル軸と駆動軸の間にワンウェイクラッチを設けて、ロータの糸繰り出し方向の回転時にハンドルの逆転を禁止するスピニングリールが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなスピニングリールでは、ハンドルの自重等によって糸巻取方向に回転するトルクが生じている場合は、ロータの糸繰り出し方向への回転に伴ってハンドルが振り子のように揺動してしまう。そこで、特許文献1に開示されたスピニングリールには、ロータの糸繰り出し方向への回転に伴うハンドルの逆転を抑制する制動機構が設けられている。制動機構は、ハンドルの糸巻き取り方向とは逆方向への回転に制動力を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6518520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された制動機構では、ハンドルの自重等によって糸巻取方向に回転するトルクが生じている場合、すなわち糸巻き取り方向に回転するトルクが生じる位置にハンドルが最初から停止している場合は、ハンドルの自重によって生じるトルクによってロータの糸繰り出し方向の回転時にワンウェイクラッチが接続される状態と、駆動軸の逆転によってワンウェイクラッチが切り離される状態が繰り返されてしまい、ハンドルのばたつきを抑えることは難しい。
【0006】
本発明の課題は、ロータの糸繰り出し方向の回転時において、ハンドルが揺動することを安定して抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るスピニングリールは、リール本体と、スプール軸と、スプールと、ロータと、ハンドル軸と、駆動軸と、回転伝達機構と、回転制御機構と、制動部材と、を備える。スプール軸は、リール本体に支持される。スプールは、スプール軸に支持される。ロータは、スプールに釣り糸を巻き付けるためのものである。ロータは、スプール軸の軸回りに回転可能である。ハンドル軸は、スプール軸と交差する方向に延び、糸巻き取り方向及び糸巻き取り方向と逆方向に回転可能にリール本体に支持される。駆動軸は、ハンドル軸の軸回りに回転可能である。回転伝達機構は、駆動軸の回転をロータに伝達する。回転制御機構は、ハンドル軸と駆動軸の間に設けられ、ハンドル軸の糸巻き取り方向の回転のみを駆動軸に伝達し、ロータの糸繰り出し方向の回転を駆動軸からハンドル軸に伝達しない。制動部材は、駆動軸と一体回転するとともにハンドル軸に接触して配置され、ハンドル軸の回転に制動力を付与する。
【0008】
このスピニングリールでは、制動部材が駆動軸と一体回転するので、ハンドル軸が糸巻き取り方向に回転するときには制動部材の制動力はハンドル軸にまったく作用しない。一方、駆動軸が糸繰り出し方向に回転していて、ハンドルの自重等によってハンドル軸に糸巻き取り方向への回転トルクが生じている場合には、制動部材がハンドル軸に接触して配置されているので、制動部材によって確実に制動力を付与することができ、ハンドル軸と駆動軸の相対回転によってワンウェイクラッチが接続される状態に切換わることがない。これにより、ロータの糸繰り出し方向の回転時において、ハンドルが揺動することを安定して抑制することができる。
【0009】
駆動軸は、ハンドル軸が通される中空部を有し、制動部材は、駆動軸の中空部に配置されてもよい。この場合は、軸方向においてリール本体をコンパクト化することができる。
【0010】
制動部材は、ハンドル軸を支持する滑り軸受であってもよい。滑り軸受によって、ハンドル軸を支持しつつ、ハンドル軸の回転に制動力を付与することができる。
【0011】
ハンドル軸は、軸本体と、軸本体から離れるにつれて外径が小さくなるテーパ部を有してもよい。制動部材は、テーパ部に対応して形成されテーパ部を支持する支持部を内周部に有してもよい。この場合は、制動力の調節がし易くなる。
【0012】
スピニングリールは、テーパ部から軸本体に向かう方向に制動部材を押し付ける第1付勢部材をさらに備えてもよい。この場合は、例えば、付勢部材の付勢力を調整することで制動力の調整ができるようになる。
【0013】
制動部材は、ハンドル軸の先端に接触する摩擦プレートであってもよい。この場合は、ハンドル軸の軸方向のがたを抑えやすい構成にすることができる。
【0014】
スピニングリールは、駆動軸と一体回転するとともに、制動部材の制動力を調節可能な調整部材をさらに備えもよい。この場合は、容易かつ迅速に制動力の調整ができるようになる。
【0015】
スピニングリールは、ハンドルと、駆動ギアと、ピニオンギアと、第2付勢部材と、をさらに備えていてもよい。ハンドルは、リール本体の左側部に設けられる。駆動ギアは、駆動軸に一体回転可能に連結される。ピニオンギアは、スプール軸の軸方向に延び、駆動ギアに噛み合う。第2付勢部材は、駆動ギアをピニオンギアから離れる方向に付勢する。この場合は、ハンドルの糸巻き取り方向の回転が重くなることを抑制することができる。
【0016】
スピニングリールは、ハンドル軸と回転制御機構との間に摩擦力を発生させる弾性部材をさらに備えてもよい。回転制御機構は、ワンウェイクラッチによって構成され、駆動軸及びハンドル軸の一方に一体回転可能に設けられる内輪と、駆動軸及びハンドル軸の他方に一体回転可能に設けられる外輪と、内輪と外輪の間に配置された複数の転動体と、を有してもよい。弾性部材は、ハンドル軸と内輪との軸方向間に配置され、ハンドル軸と内輪との間に摩擦力を発生させてもよい。この場合は、糸巻き取り方向にトルクが発生する位置にハンドルがあるときに、ハンドルの位置がばたつくことを抑制できる。
【0017】
スピニングリールは、ハンドル軸に連結されるハンドルをさらに備えてもよい。ワンウェイクラッチを接続状態に切換えるために必要なトルクは、ハンドルの自重によって発生するトルクよりも大きく、制動部材の制動力よりも小さい方がよい。この場合において、ハンドルの位置がばたつくことを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロータの糸繰り出し方向の回転時において、ハンドルが揺動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】スピニングリールの側面断面図。
図2】スピニングリールの側面図。
図3図2のIII-III線断面図
図4図3の部分拡大図。
図5】回転制御機構の構成の一部を示す分解斜視図。
図6図3のIV-IV線断面図。
図7】スピニングリールの他の実施形態に係る図3に相当する図。
図8】スピニングリールの他の実施形態に係る図4に相当する図。
図9】スピニングリールの他の実施形態に係る図3に相当する図。
図10】スピニングリールの他の実施形態に係る図3に相当する図。
図11】スピニングリールの他の実施形態に係る図3に相当する図。
図12】ハンドル制動部の変形例を説明するための断面図。
図13】ハンドル制動部の変形例を説明するための断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一態様に係るスピニングリールの実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、スピニングリール10の側面断面図である。なお、図面を参照するときにおいて、説明を分かり易くするために、図1における左側を「前」、右側を「後」、紙面の手前側を「左」、締面の奥側を「右」として説明する。
【0021】
スピニングリール10は、レバーブレーキ型のリールであり、釣り糸を前方に繰り出し可能である。スピニングリール10は、図1から図3に示すように、リール本体12と、スプール軸14と、スプール16と、ロータ18と、ロータ制動部20と、ハンドル軸22と、駆動軸24と、回転伝達機構26と、回転制御機構28と、制動部材30と、を備える。
【0022】
リール本体12は、内部空間を有しており、内部空間には回転伝達機構26やオシレーティング機構32などの各種機構が収容されている。
【0023】
スプール軸14は、前後方向に延びている。スプール軸14は、前後方向に移動可能にリール本体12に支持されている。
【0024】
スプール16は、外周に釣り糸が巻き付けられる部材である。スプール16は、スプール軸14に支持されており、スプール軸14と一体移動可能である。
【0025】
ロータ18は、スプール16に釣り糸を巻き付けるための部材である。ロータ18は、スプール軸14の軸回りに回転可能である。
【0026】
ロータ制動部20は、ロータ18の糸繰り出し方向の回転を制動する。ロータ制動部20は、制動レバー20aと、制動部20bと、ワンウェイクラッチ20cと、を有する。ロータ制動部20は、従来と同様の構成であるため説明を省略する。
【0027】
ハンドル軸22は、スプール軸14と交差する方向に延びている。本実施形態では、ハンドル軸22は、左右方向に延びている。ハンドル軸22は、糸巻き取り方向及び糸巻き取り方向と逆方向に回転可能にリール本体12に支持されている。ハンドル軸22には、ハンドル23が一体回転可能に取り付けられている。ハンドル23は、後方から見てリール本体12の左側部に設けられている。ハンドル23は、ハンドルアーム23aと、把手部23bと、を有する。なお、図2では、スプール16及びロータ18などの図示が省略されている。
【0028】
図3に示すように、ハンドル軸22は、アーム連結部51と、軸本体52と、テーパ部53と、を有している。アーム連結部51は、ハンドルアーム23aと軸本体52とを一体回転可能に連結する。軸本体52は、第1端部(左端)52aと、第2端部(右端)52bと、雄ねじ部52cと、鍔部52dと、を有している。雄ねじ部52cは、第1端部52aの外周面に形成されている。雄ねじ部52cは、アーム連結部51に形成された雌ねじ部51aにねじ込まれる。鍔部52dは、第1端部52aと第2端部52bの間に設けられている。テーパ部53は、軸本体52の第2端部52bからハンドル軸22の軸方向(以下、単に「軸方向」と記す)に延びており、軸本体52から離れるにつれて外径が小さくなる。テーパ部53は、軸本体52と一体である。テーパ部53の外径は、軸本体52の外径よりも小さい。
【0029】
駆動軸24は、中空状の軸部材であり、ハンドル軸22の軸回りに回転可能である。駆動軸24は、リール本体12に配置される軸受25a,25bを介してリール本体12に回転可能に支持されている。
【0030】
駆動軸24は、軸部61と、中空部62と、収容部材63とを有している。軸部61は、ハンドル軸22と平行に延びている。軸部61は、第1孔部61aと、第2孔部61bとを有している。第1孔部61a及び第2孔部61bは、断面が非円形であり、軸部61の両端に形成されている。中空部62は、駆動軸24を貫通するように左右方向に延びている。中空部62は、ハンドル軸22が通される。
【0031】
収容部材63は、筒状の部材であり、軸部61と一体回転可能に連結されている。収容部材63は、内周部が中空部62と連なっており、中空部62の一部を構成する。収容部材63は、小径部63aと、大径部63bとを有している。小径部63aは、外周部が第2孔部61bに係合する。これにより、収容部材63と軸部61とが一体回転する。大径部63bの内径は、小径部63aの内径よりも大きい。大径部63bの外径は、小径部63aの外径よりも大きい。大径部63bは、例えば円弧面と平面とによって構成される係合部63cを内周面に有している。なお、収容部材63は、軸部61と一体であってもよい。
【0032】
収容部材63の大径部63bには、キャップ部材34が装着されている。大径部63bは、外周面に雄ねじ部63dが形成されている。雄ねじ部63dは、キャップ部材34に形成された雌ねじ部34aに螺合する。キャップ部材34は、リール本体12に固定されるカバー部材36によって覆われている。
【0033】
回転伝達機構26は、駆動軸24の回転をロータ18に伝達する。回転伝達機構26は、図1に示すように、駆動ギア40と、ピニオンギア42とを有する。駆動ギア40は、駆動軸24と一体回転可能に連結されている。本実施形態では、駆動ギア40は、駆動軸24と一体的に形成されている。ピニオンギア42は、前後方向に延びており、ロータ18に一体回転可能に連結されている。ピニオンギア42は、リール本体12に配置される軸受43a,43b,43cを介してリール本体12に回転可能に支持されている。ピニオンギア42は、駆動ギア40に噛み合う。駆動軸24の回転は、駆動ギア40及びピニオンギア42を介してロータ18に伝達される。
【0034】
回転制御機構28は、ハンドル軸22と駆動軸24の間に設けられ、ハンドル軸22の糸巻き取り方向の回転のみを駆動軸24に伝達し、ロータ18の糸繰り出し方向の回転を駆動軸24からハンドル軸22に伝達しない。回転制御機構28は、ワンウェイクラッチ71によって構成されている。
【0035】
ワンウェイクラッチ71は、ローラ型のワンウェイクラッチである。ワンウェイクラッチ71は、図4及び図5に示すように、内輪75と、外輪76と、複数の転動体77と、保持部材78と、複数の付勢部材79(図5参照)と、を有する。
【0036】
内輪75は、中空の段付き形状であり、駆動軸24に一体回転可能に連結されている。内輪75は、小径部75aと、大径部75bとを有する。小径部75aは、外周部が駆動軸24の第1孔部61aに係合する。これにより、内輪75は、駆動軸24に一体回転可能に連結される。大径部75bの内周部には、ハンドル軸22の軸本体52に装着される軸受45及びハンドル軸22の鍔部52dが配置されている。内輪75は、軸受45を介してハンドル軸22に回転可能に支持されている。
【0037】
外輪76は、外周面に周方向に間隔を隔てて配置された複数の凹部76aと、内周面に形成された複数のカム面76bと、を有している。
【0038】
複数の転動体77は、内輪75と外輪76の間に配置されている。複数の転動体77は、回転を伝達する伝達位置と回転を伝達しない解除位置とに周方向に移動可能である
【0039】
保持部材78は、複数の転動体77のそれぞれを周方向に間隔を隔てて配置する。保持部材78は、外輪76の複数の凹部76aに係合する複数の突起78aを有しており、外輪76と一体回転する。付勢部材79は、例えばコイルバネであり、転動体77を解除位置に向けて付勢する。
【0040】
ワンウェイクラッチ71は、リール本体12の左側部に固定される回転支持部72に回転自在に支持されている。回転支持部72は、ハンドル軸22と外輪76とを一体回転可能に連結する連結部73を介してハンドル軸22を回転自在に支持する。回転支持部72は、筒状の部材であり、内部にはワンウェイクラッチ71及び連結部73を支持する軸受46a,46bが収容されている。
【0041】
連結部73は、支持軸73aと、間座部材73bと、円板部73cと、を有している。支持軸73aは、軸受46a,46bを介して回転支持部72に回転可能に支持されている。支持軸73a及び間座部材73bは、ハンドル軸22の構成にも含まれる。
【0042】
間座部材73bは、支持軸73aとハンドル軸22の軸本体52との間に配置され、支持軸73aと、軸本体52とを一体回転可能に連結するとともに、軸本体52の雄ねじ部52cを緩み止めするように構成される。間座部材73bは、軸本体52の外周面に装着されている。間座部材73bは、支持軸73aの内周面に嵌合する矩形状の係合部73dを外周面に有している。間座部材73bは、軸本体52の鍔部52dに押圧され、軸本体52を支持軸73aに一体回転可能に連結する。
【0043】
円板部73cは、支持軸73aの外周面に係合する非円形孔73eを有しており、支持軸73aと一体回転する。円板部73cは、外輪76の複数の凹部76aに係合する複数の突起73fを有している。
【0044】
図3に示すように、制動部材30は、ハンドル軸22の回転に制動力を付与する。制動部材30は、駆動軸24と一体回転するとともにハンドル軸22に接触して配置されている。制動部材30は、収容部材63の大径部63bに収容されている。
【0045】
本実施形態における制動部材30は、ハンドル軸22を支持する滑り軸受によって構成されている。詳細には、制動部材30は、支持部30aを有している。支持部30aは、制動部材30の内周部に形成されている。支持部30aは、テーパ部53を支持するとともに、テーパ部53に接触してハンドル軸22の回転に制動力を付与する。支持部30aは、テーパ部53の形状に対応する形状を有している。すなわち、支持部30aは、ハンドル軸22の軸本体52から離れるにつれて外径が小さくなるように形成されている。
【0046】
制動部材30は、収容部材63の大径部63bの係合部63cに一体回転可能に係合する被係合部30bを外周面に有している。制動部材30は、圧入などの手段によって収容部材63の大径部63bの内周部に固定されている。なお、制動部材30は、例えば、抜け止め用のバネ部材によって軸方向の移動が規制されていてもよい。
【0047】
スピニングリール10は、図3図5及び図6に示すように、ハンドル制動部80と、ハンドル停止部81と、をさらに有していてもよい。ハンドル制動部80及びハンドル停止部81は、従来と同様の構成であるため簡略に説明する。
【0048】
図6に示すように、ハンドル制動部80は、ハンドル軸22の糸巻き取り方向とは逆方向への回転に制動力を付与する。なお、図6において、RDは糸巻き取り方向を示し、WDは糸巻き取り方向とは逆方向を示している。
【0049】
ハンドル制動部80は、爪部材80aと、バネ部材80bと、制動部材80cと、弾性リング80dと、を有している。爪部材80aは、保持部材78に設けられる揺動軸78bに揺動可能に装着される。爪部材80aは、制動部材80cに係合する係合位置と、制動部材80cから離反するとの範囲で揺動する。
【0050】
バネ部材80bは、ハンドル軸22が糸巻き取り方向と逆方向に回転したとき、爪部材80aを係合位置に向けて付勢する。バネ部材80bは、ハンドル軸22が糸巻き取り方向に回転したとき、爪部材80aを離反位置に向けて付勢する。なお、図6では、断面にはバネ部材80bは表れないため、バネ部材80bを二点鎖線で示す。
【0051】
制動部材80cは、リール本体12に駆動軸24の軸回りに回転可能に装着される金属製のリング状の部材である。制動部材80cは、爪部材80aが係合する複数の内歯80eを有している。制動部材80cは、リール本体12に固定される環状部材15に回転可能に装着される。
【0052】
弾性リング80dは、環状部材15に圧縮した状態で装着され、制動部材80cと摩擦係合する。これにより、爪部材80a及び保持部材78を介してハンドル軸22の逆方向の回転が制動部材80cによって制動される。
【0053】
ハンドル停止部81は、ハンドル軸22が糸巻き取り方向と逆方向に回転するときにのみ、ハンドル軸22を所定の回転位相Fで停止させる。所定の回転位相Fは、釣り竿を立てた時に、ハンドル23の下死点DPよりも手前側の位置である。
【0054】
ハンドル停止部81は、爪部材80aと、環状部材15に設けられる突出部15aと、を有する。ハンドル軸22の逆方向の回転が制動されているときに保持部材78が逆方向に回転して、爪部材80aが突出部15aにかみ合うと、ハンドル軸22の逆方向の回転が停止する。
【0055】
上記構成のスピニングリール10では、制動部材30が駆動軸24と一体回転するので、ハンドル軸22が糸巻き取り方向に回転するときには、制動部材30の制動力はハンドル軸22に作用しない。詳細には、ハンドル軸22を糸巻き取り方向に回転させた場合は、ハンドル軸22の回転が回転制御機構28を介して駆動軸24に伝達されるので、駆動軸24と一体回転する制動部材30の制動力はハンドル軸22にまったく作用しない。一方、ハンドル軸22の糸巻き取り方向と逆方向への回転に対しては、制動部材30がハンドル軸22に接触して配置されているので、制動部材30の制動力がハンドル軸22に作用する。これにより、ロータ18の糸繰り出し方向の回転時において、ハンドル23が糸巻き取り方向と逆方向に回転することを抑制できる。
【0056】
さらに、駆動軸24が糸繰り出し方向に回転していて、ハンドル23の自重によってハンドル軸22に糸巻き取り方向への回転トルクが生じている場合には、制動部材30の制動力がハンドル軸22に作用することによって、ハンドル軸22と駆動軸24の相対回転によってワンウェイクラッチ71が接続される状態に切換わることがない。また、制動部材30がハンドル軸22に接触して配置されているので、制動部材30によって制動力を確実に付与することができる。これにより、ロータ18の糸繰り出し方向の回転時において、糸巻き取り方向に回転するトルクが生じる位置にハンドル23が最初から停止している場合であっても、ハンドル23が揺動することを安定して抑制できる。また、ハンドル軸22と制動部材30とが接触する部分がテーパ状に形成されているので、例えば、制動部材30の軸方向の位置を調整することによって制動力の微調整をすることも可能になる。
【0057】
なお、ワンウェイクラッチ71を接続状態にするために必要なトルクは、ハンドル23の自重によって発生するトルクよりも大きく、制動部材30の制動力よりも小さいことが好ましい。この関係を満たす場合は、ハンドル23のバタつきを効果的に抑制することができる。
<他の実施形態>
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0059】
図7に示すように、スピニングリール10は、付勢部材84をさらに備えていてもよい。付勢部材84は、第1付勢部材の一例である。付勢部材84は、例えばコイルバネである。付勢部材84は、テーパ部53からハンドル軸22の軸本体52に向かう方向に制動部材30を押し付ける。制動部材30は、付勢部材84に押圧される押圧面30cを内周部に有している。付勢部材84は、キャップ部材34に形成される支持突起34bによって支持されている。この場合は、制動部材30を圧入などの手段によって収容部材63の大径部63bの内周部に固定しなくてもよい。また、キャップ部材34は、制動部材30の制動力を調整可能な調整部材として構成してもよい。ここでは、キャップ部材34は、付勢部材84の付勢力を調整することで、制動部材30の制動力を調整する。キャップ部材34の回動操作によってキャップ部材34が収容部材63に対して軸方向に移動することで、付勢部材84の付勢力が調整される。
【0060】
図8に示すように、スピニングリール10は、弾性部材86をさらに備えていてもよい。弾性部材86は、ハンドル軸22と回転制御機構28との間に摩擦力を発生させる。ここでは、弾性部材86は、ハンドル軸22の支持軸73aと内輪75との軸方向間に配置され、支持軸73aと内輪75との間に摩擦力を発生させる。この場合は、ロータ18が糸繰り出し方向に回転するときに、ハンドル軸22を糸巻き取り方向と逆方向に回転させる力が作用するので、糸巻き取り方向にトルクが発生する位置にハンドル23があるときに、ハンドル23の位置がばたつくことを防止できる。
【0061】
前記実施形態では、滑り軸受を制動部材30として用いていたが、制動部材30は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、キャップ部材34の内周部に摩擦プレート88(制動部材の一例)を配置して、ハンドル軸22の第2端部52b側の先端を摩擦プレート88と接触させることで制動力を付与してもよい。この場合においても、キャップ部材34は、摩擦プレート88の制動力を調整可能な調整部材として構成してもよい。ここでは、摩擦プレート88の押圧力を調整することで、摩擦プレート88の制動力を調整する。なお、この場合は、テーパ部53は省略され、前記実施形態のおける制動部材30は、単なる滑り軸受、又は転がり軸受に変更される。
【0062】
図7及び図9に示すように、ハンドル23がリール本体12の左側部に設けられたスピニングリールにおいて、制動部材30又は摩擦プレート88を軸方向に押圧する構成では、付勢部材84によって駆動軸24がキャップ部材34を介してハンドル23から離れる方向に押圧されることになる。これにより、駆動軸24を介して駆動ギア40がピニオンギア42に押し付けられてハンドル23の糸巻き取り方向の回転が重くなるおそれがある。そこで、図10に示すように、スピニングリール10は、駆動軸24が押圧される押圧力を低減させるための付勢部材90を備えていてもよい。付勢部材90は、第2付勢部材の一例である。付勢部材90は、例えば皿バネである。付勢部材90は、例えば、軸受25bと駆動軸24の軸部61に設けられた鍔部61cとの軸方向間に配置される。鍔部24aは、駆動ギア40よりも第2孔部61b側に配置されている。付勢部材90は、駆動ギア40がピニオンギア42に押し付けられることを抑制する。
【0063】
図10に示す実施例では、付勢部材90によって駆動ギア40がピニオンギア42に押し付けられることを抑制する構成であったが、この場合は、付勢部材90の付勢力が駆動軸24の位置によって変化するので、付勢部材90の付勢力にバラツキが生じるおそれがある。そこで、図11に示すように、ハンドル23がリール本体12の左側部に設けられたスピニングリールにおいて、付勢部材84の反力が駆動軸24に作用しない構成にしてもよい。図11に示す実施例では、収容部材63は、軸部61と一体である。収容部材63は、リール本体12に配置された軸受92に回転可能に支持されている。収容部材63の内部には、制動部材30と、付勢部材84と、カラー部材94と、転がり軸受95とが収容されている。
【0064】
付勢部材84は、制動部材30とカラー部材94との間に圧縮された状態で配置されている。付勢部材84は、制動部材30をハンドル23に近づく方向に付勢する。付勢部材84は、カラー部材94をハンドル23から離れる方向に付勢する。カラー部材94は、付勢部材84の付勢力を転がり軸受95の外輪に伝達する。カラー部材94は、収容部材63と一体回転可能に収容部材63に収容されている。ハンドル軸22は、テーパ部53から軸方向に延びる延伸部54を有している。転がり軸受95は、延伸部54を回転可能に支持している。延伸部54の先端の外周面には、雄ねじ54aが形成されており、この雄ねじ54aにキャップ部材96が螺合する。キャップ部材96は、転がり軸受95の内輪に接触して配置され、転がり軸受95を収容部材63から抜け止めする。これにより、カラー部材94及び付勢部材84が収容部材63から抜け止めされる。このような構成では、付勢部材84によって駆動ギア40がピニオンギア42に押し付けられないので、付勢部材90を省略することができる。
【0065】
図12及び図13に示すように、ハンドル制動部80は、金属製のバネ線材を折り曲げて形成されたバネ部材98によって構成されてもよい。図12は、リール本体12に固定される環状部材150周辺を駆動軸24と直交する平面で切断した断面図である。バネ部材98は、環状部98aと、バネ掛け部98bとを有する。環状部98aは、環状部材150の外周面に形成された環状溝150aに摩擦係合可能に装着されている。バネ掛け部98bは、環状部98aから径方向外側に向かって延びている。バネ掛け部98bは、ワンウェイクラッチ71の保持部材78に引っ掛けられている。バネ掛け部98bは、先端が環状部98aに沿う方向に湾曲している。保持部材78には、径方向に延びる保持溝78cが形成されており、保持溝78cにバネ掛け部98bが引っ掛けられている。なお、保持溝78cの溝幅は、バネ部材98の線径に対して最小限になるように設定されることが好ましい。これにより、バネ部材98の回転方向におけるがたを抑えることができるとともに、バネ部材98が保持部材78から外れることを防止できる。
【0066】
ハンドル制動部80をバネ部材98によって構成する場合、ハンドル23が糸巻き取り方向WDとは逆方向RDに回転すると、保持部材78が糸巻き取り方向WDに回転するので、バネ部材98の環状部98aの直径が小さくなる。これにより、環状部98aと環状溝150aとが摩擦係合するときの回転抵抗が大きくなり、ハンドル23が制動される。一方、ハンドル23が糸巻き取り方向WDに回転すると、保持部材78が糸巻き取り方向WDに回転するので、バネ部材98の環状部98aの直径が大きくなる。これにより、環状部98aと環状溝150aとが摩擦係合するときの回転抵抗が小さくなり、ハンドル23にはハンドル制動部80による制動力がほとんど作用しない。
【0067】
前記実施形態では、内輪75が駆動軸24に一体回転可能に連結され、外輪76がハンドル軸22に一体回転可能に連結されていたが、内輪75をハンドル軸22に一体回転可能に連結し、外輪76を駆動軸24に一体回転可能に連結してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 スピニングリール
12 リール本体
14 スプール軸
16 スプール
18 ロータ
22 ハンドル軸
23ハンドル
24 駆動軸
26 回転伝達機構
28 回転制御機構
30 制動部材
30a 支持部
34 キャップ部材(調整部材の一例)
40 駆動ギア
42 ピニオンギア
52 軸本体
53 テーパ部
62 中空部
71 ワンウェイクラッチ
75 内輪
76 外輪
77 転動体
84 付勢部材(第1付勢部材の一例)
86 弾性部材
88 摩擦プレート
90 付勢部材(第2付勢部材の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13