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  • 特許-光触媒スプレーおよび消臭方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】光触媒スプレーおよび消臭方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20231218BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20231218BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20231218BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20231218BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B01J35/02 J ZAB
B01J37/00 F
B01J23/652 M
A61L9/00 C
A61L9/14
B05B9/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020103173
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021194601
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】堤之 朋也
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-038219(JP,A)
【文献】特開2019-103820(JP,A)
【文献】特開平11-349932(JP,A)
【文献】特開2004-352957(JP,A)
【文献】特開2005-060695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
A61L 9/00
A61L 9/14
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒懸濁液と、噴射剤と、前記光触媒懸濁液と前記噴射剤とを収容するエアゾール容器とを備え、
前記噴射剤は、ジメチルエーテルを含み、
前記光触媒懸濁液は、光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、非ハロゲン系親水性不揮発性液体とを含み、
前記噴射剤を除いた前記光触媒懸濁液に含まれる前記粉体の重量mに対する前記噴射剤を除いた前記光触媒懸濁液に含まれる前記親水性不揮発性液体の重量nの比率(n/m)は、0.5以上2以下であり、
前記親水性不揮発性液体は、脂肪族ポリエーテル誘導体または脂肪族アミン誘導体を含み、
前記エアゾール容器の内圧は、25℃で0.35MPa以上0.50MPa以下であることを特徴とする光触媒スプレー。
【請求項2】
前記親水性不揮発性液体は、25℃で液体状態である請求項に記載の光触媒スプレー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光触媒スプレーを自動車の車内の部材に噴射し、前記部材を光触媒層でコーティングするステップと、
前記光触媒層に光を照射するステップとを含む消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒スプレーおよび消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に消臭技術としては、主に化学的消臭、物理的消臭、生物的消臭、感覚的消臭の4つに大別される。その中で、化学的消臭法は、臭い成分と消臭剤の成分との化学反応(中和、付加、縮合、酸化など)により無臭の成分にしてしまう方法で、臭いの対象がわかっている場合に優れた効果を発揮する。
【0003】
化学的消臭材料の1つとして、光触媒の強い酸化力を利用した消臭材料が開発されている。光触媒を利用した消臭材料については、従来から多数提案されている。例えば、光触媒性を有するアナターゼ型の酸化チタン粒子に、ナノメートルオーダーの金属銀および金属銅粒子から選ばれる金属粒子を分散付着させてなる材料を調製し、シラン系アルコキシドとエチルアルコールを配合し、LPGガスと共にエアゾール容器に充填した光触媒スプレーが提案されている(特許文献1)。光触媒を利用した消臭材料は、有機系の脱臭材料に比べて耐熱性に優れ、製品への加工も容易であり、銀イオンの状態として担持している場合のように変色したり変質したりするおそれが小さいとしている。
【0004】
一方、自動車の車内などの静電気が発生しやすい場所を消臭したいというニーズがある。自動車の車内では、プラスチック部材は触れたり擦れたりすることで簡単に静電気を帯びる。また近年の車室内部材はプラスチックを多く使用した構造になっている。
従来から帯電防止剤を含むエアゾールは知られており、これを噴霧することを特徴とする車室内の帯電防止方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-349423号公報
【文献】特公昭59-066099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光触媒は粉体で有るため、光触媒とこれを分散させた分散媒やバインダーなどを含む成分が充填したガスによって噴射ノズルから放出する際に噴射物が帯電する。この静電気を持った光触媒を含む噴霧粒子を対象物へ向けて噴射すると、噴霧粒子が周囲の帯電した部材の影響を受けて帯電圧の大きい部材に吸い寄せられ、噴射した場所の静電気が蓄積しやすい部材に選択的に付着しやすくなり不均一に定着する傾向がある。そのために光触媒成分の施工むらが発生して特に光が照射する場所では本来の消臭効果が発揮できなくなる。
また、特許文献2のような帯電防止剤を含むエアゾールを噴霧したあとに、光触媒を含むスプレーを噴霧しても、帯電防止剤を含むエアゾールを大量に隙間なく噴霧しない限りは光触媒の帯電部材への選択的付着を抑えることができず、車室全体での光触媒機能を発揮することが困難となる。また光触媒スプレー成分に、特許文献2の帯電防止剤を添加しても、多量の帯電防止剤を加えないと効果が得られない。また、帯電防止剤が光触媒の消臭能を妨害するおそれがある、また、帯電防止剤が光触媒の分散性に影響を与えて成分の凝集が発生することで光触媒の消臭能を妨害するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、対象物を光触媒層でむらなくコーティングすることを可能とする光触媒スプレーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光触媒懸濁液と、噴射剤と、前記光触媒懸濁液と前記噴射剤とを収容するエアゾール容器とを備え、前記噴射剤は、ジメチルエーテルを含み、前記光触媒懸濁液は、光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、非ハロゲン系親水性不揮発性液体とを含むことを特徴とする光触媒スプレーを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光触媒スプレーは光触媒懸濁液と噴射剤とを含むため、対象物に光触媒効果を有する粉体を吹き付けることができ、対象物を光触媒層でコーティングすることができる。
前記噴射剤はジメチルエーテルを含み、前記光触媒懸濁液は光触媒効果を有する粉体と分散媒としてのエタノール水溶液と非ハロゲン系親水性不揮発性液体とを含むため、吹き付け対象物またはその近傍に静電気を帯びた部材や部分があったとしても、対象物を光触媒層でむらなくコーティングすることができる。このことは、本発明者等が行った実験により明らかになった。
本発明の光触媒スプレーはエタノール水溶液を含むため、使用時の引火や燃焼の危険性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の光触媒スプレーの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光触媒スプレーは、光触媒懸濁液と、噴射剤と、前記光触媒懸濁液と前記噴射剤とを収容するエアゾール容器とを備え、前記噴射剤は、ジメチルエーテルを含み、前記光触媒懸濁液は、光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、非ハロゲン系親水性不揮発性液体とを含むことを特徴とする。
【0011】
噴射剤を除いた光触媒懸濁液に含まれる前記粉体の重量mに対する噴射剤を除いた光触媒懸濁液に含まれる親水性不揮発性液体の重量nの比率(n/m)は、0.5以上2以下であることが好ましい。このことにより、本発明の光触媒スプレーを用いて対象物を欠陥が少なく消臭効果の高い光触媒層で覆うことが可能になる。
前記親水性不揮発性液体は、脂肪族ポリエーテル誘導体または脂肪族アミン誘導体を含むことが好ましい。このことにより、光触媒層にムラが生じることを抑制することができる。
【0012】
前記親水性不揮発性液体は、25℃で液体状態であることが好ましい。このことにより、光触媒層にムラが生じることを抑制することができる。
前記エアゾール容器の内圧は、25℃で0.35MPa以上であることが好ましい。このことにより、噴射不良が生じることを抑制することができる。
本発明は、本発明の光触媒スプレーを自動車の車内の部材に噴射し、部材を光触媒層でコーティングするステップと、光触媒層に光を照射するステップとを含む消臭方法も提供する。
【0013】
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0014】
第1実施形態
図1は、本実施形態の光触媒スプレーの概略断面図である。
本実施形態の光触媒スプレー20は、光触媒懸濁液2と、噴射剤と、光触媒懸濁液2と噴射剤とを収容するエアゾール容器3とを備え、前記噴射剤は、ジメチルエーテルを含み、光触媒懸濁液2は、光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、非ハロゲン系親水性不揮発性液体とを含むことを特徴とする。
【0015】
〔光触媒スプレー〕
光触媒スプレー20は、エアゾール容器3の内部の光触媒粒子(光触媒効果を有する粉体)を含む内容物を噴射剤の圧力によってエアゾール容器3の外に放出させる製品である。光触媒スプレー20を用いて対象物に向けて光触媒粒子を放出すると、対象物の表面上に光触媒層が形成され対象物を光触媒層でコーティングすることができる。
【0016】
〔エアゾール容器〕
エアゾール容器3は、エアゾール製品の容器であり、光触媒懸濁液2及び噴射剤を収容する耐圧容器9、バルブ部材5、アクチュエータ4、チューブ6などを含む。バルブ部材5は、ステム、ステム孔、ステムガスケットなどを含むことができる。
アクチュエータ4の頭部が押されていない状態では、ステムガスケットがステム孔を塞ぎ、エアゾール容器3の内部は密閉状態となる。
アクチュエータ4の頭部が押されると、ステム及びステムガスケットが下がりステム孔が開放され、光触媒懸濁液2の流路が噴射孔7までつながる。エアゾール容器3の内部は噴射剤により高圧となっているため、この圧力により光触媒懸濁液2は、チューブ6、バルブ部材5、アクチュエータ4の流路を流れ、噴射孔7から噴出する。
【0017】
〔噴射剤〕
噴射剤は、エアゾール容器3の内部を高圧にするための成分であり、ジメチルエーテルを含む。ジメチルエーテルの沸点は-24.8℃であり、ジメチルエーテルは液化ガスとしてエアゾール容器3に入れられるため、エアゾール容器3の内部では、ジメチルエーテルの一部は光触媒懸濁液2に溶解している又は液体として存在し、ジメチルエーテルの一部は気相8に気体として存在する。また、エアゾール容器3の内圧が25℃で0.33MPa以上となるような量の噴射剤がエアゾール容器3に入れられる。
【0018】
〔光触媒懸濁液〕
光触媒懸濁液2は、分散媒としてのエタノール水溶液中に光触媒粒子(光触媒効果を有する粉体)が分散した液体である。光触媒懸濁液2は、非ハロゲン系親水性不揮発性液体も含む。また、光触媒懸濁液2には、噴射剤であるジメチルエーテルが溶解している。
【0019】
〔非ハロゲン系親水性不揮発性液体〕
非ハロゲン系親水性不揮発性液体は、室温で液体状態である化合物であり、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素及びアスタチンを含まない化合物である。さらに、非ハロゲン系親水性不揮発性液体は、親水性及び不揮発性を有する化合物である。光触媒懸濁液2が非ハロゲン系親水性不揮発性液体を含むことにより、光触媒粒子の分散性を維持することができ、噴霧後に光触媒粒子を含む液滴が瞬時に気化することを抑制することができる。このことにより、スプレー液滴がスプレー対象物の部分的な帯電又はその近傍の帯電の影響を受けにくくなり、光触媒層に塗りムラが生じることを抑制することができる。
【0020】
光触媒懸濁液2に含まれる親水性不揮発性液体は、光触媒効果を有する粉体粒子表面を濡らして、光触媒粒子を光触媒懸濁液2中で良く分散させる効果を有する。また、親水性不揮発性液体は、噴霧後の液滴が乾燥して光触媒効果を有する粉体粒子の大凝集物が発生して周囲への不均一な付着、定着になることを抑えて、より分散性良く周囲に付着、定着させる効果を有する。また、親水性不揮発性液体は、スプレー液滴が帯電することを抑制することができる。さらに、親水性不揮発性液体は光触媒に光をあてることにより分解しやすく安全な非ハロゲン系の組成であることが好ましい。
このような効果がある親水性不揮発性液体として、脂肪族ポリエーテル誘導体や脂肪族アミン誘導体が挙げられる。
【0021】
このような効果が発現するメカニズムの詳細は不明であるが以下のことが推定される。脂肪族ポリエーテル誘導体はそのポリエーテル部分が分散媒中の光触媒効果を有する粉体粒子表面に吸着して粉体粒子と分散媒の濡れ性を向上させ、噴射後も粉体粒子表面に吸着しているため光触媒粒子を含む液滴が瞬時に凝集しにくい効果が得られる。脂肪族アミン誘導体はアミノ基が光触媒粒子の親水性基に吸着して、粉体粒子と分散媒の濡れ性を向上させるとともにアルキレン基によるバリヤー効果をより一層維持できて粒子同士の凝集を抑制する。噴射後も粉体粒子表面に吸着しているため光触媒粒子を含む液滴が瞬時に凝集しにくい効果が得られる。但し、これらは推定であって、本発明は、これらメカニズムに限定されない。
【0022】
本発明で使用できる脂肪族ポリエーテル誘導体のアルキレン基としてはエチレン基及び/またはプロピレンオキサイド基が好ましい。具体的には、脂肪族ポリエーテル誘導体として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール等が挙げられる。そして、その分子量としては、約200~10000の範囲の低重合度のものである。
【0023】
本発明で使用できる脂肪族アミン誘導体としてはポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンが好ましく、具体的にはポリオキシエチレンラウリルアミン(ポリオキシエチレンヤシアルキルアミン)、ポリオキシエチレンココナットアルキルアミン、ポリオキシエチレン(2)硬化牛脂アミン、ポリオキシエチレン(20)硬化牛脂アミンやモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0024】
噴射剤を除いた光触媒懸濁液2に含まれる光触媒効果を有する粉体(光触媒粒子)の重量mに対する噴射剤を除いた光触媒懸濁液2に含まれる非ハロゲン系親水性不揮発性液体の重量nの比率(n/m)は、0.5以上2以下であることが好ましい。非ハロゲン系親水性不揮発性液体の重量の比率が0.5未満では効果が小さくなり、又、比率が2を超えても効果が同じで材料費等のコストアップとなり好ましくない。
【0025】
非ハロゲン系親水性不揮発性液体は25℃で液体状態であることが好ましい。常温で液体でないと非ハロゲン系親水性不揮発性液体が光触媒懸濁液2中で固化または噴射後に固化して光触媒粉体の分散不良が発生し、光触媒成分の施工むらになり、本来の消臭効果が発揮できなくなる。
【0026】
〔分散媒としてのエタノール水溶液〕
光触媒懸濁液2の溶媒中におけるエタノールの役割はスプレー液滴の粘度をさげて細かな噴霧状態を保つこと、エタノールは水と比べて揮発しやすい特性を持つため溶媒に含有させることによりスプレー液滴の乾燥時間を短縮できること、エタノールは殺菌作用があるため光触媒懸濁液2の長期保管が可能になること等が挙げられる。
【0027】
光触媒懸濁液2の分散媒としてエタノール水溶液中のエタノール含有率は、20wt%以上60wt%未満が好ましい。溶媒中のエタノール配合量が60wt%を超えると燃焼や引火がし易くなることや長期保管での光触媒分散状態を保ちにくくなることから好ましくない。溶媒中のエタノール配合量が20wt%未満になると噴射した成分の乾燥が遅くなるので好ましくない。
【0028】
〔光触媒効果を有する粉体〕
光触媒効果を有する粉体(光触媒粒子)は、光触媒活性を有する粉体又は微粒子である。光触媒スプレー20で光触媒懸濁液2を対象物にむけて噴射することにより対象物の表面に形成された光触媒層において、価電子帯と伝導帯との間のエネルギーのギャップ以上のエネルギーを持つ光が光触媒粒子に照射されると、光触媒粒子の価電子帯の電子が伝導帯に励起され価電子帯に正孔が発生してこの電子及び正孔が光触媒粒子内部を移動する。発生した電子が酸素ガスを還元することにより、スーパーオキシドアニオンが生成する。正孔が水を酸化することにより、ヒドロキシラジカルが生成する。生成したヒドロキシラジカルによって、活性酸素種が生成する。生成した活性酸素種によって、例えば、臭いの元になる有害物質の分解が達成される。
【0029】
一般に光触媒粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステンが良く知られているが屋内の可視光光源下でも光触媒活性に優れた光触媒層を得るために、光触媒懸濁液2は、酸化タングステンを含有することが好ましい。光触媒懸濁液2は、1種の光触媒粒子のみを含有してもよく、2種以上の光触媒粒子を含有してもよい。
【0030】
酸化タングステンは特に限定されず、酸化タングステンとしては市販品を適宜使用することができる。酸化タングステンとしては、例えば、WO3(三酸化タングステン)、WO2、WO、W23、W45、W411、W2573、W2058、及びW2468、並びにこれらの混合物が挙げられる。光触媒活性を向上させるために、酸化タングステンとしては、WO3が好ましい。酸化タングステンの一部がV価に還元されていてもよい。ただし、酸化タングステンはVI価に酸化してから使用することが好ましい。VI価に酸化する方法としては、例えば、酸化タングステンを高温で焼成する方法が挙げられる。なお、酸化タングステンの結晶構造は、特に限定されない。
【0031】
光触媒粒子の平均粒子径は、5nm以上200nm以下であることが好ましい。光触媒粒子の平均粒子径5nm以上であると、光触媒粒子が凝集し難くなり、光触媒粒子の再分散が容易となる。光触媒粒子の平均粒子径が200nm以下であると、光触媒粒子と他のスプレー成分とを均一に混合できる傾向があり、スプレーにより形成される光触媒層から光触媒粒子が離脱することを抑制できる。光触媒粒子の平均粒子径は、BET法により測定された光触媒粒子の比表面積(単位:m2/g)に基づいて、光触媒粒子の1次粒子が球状であると仮定して算出された値である。
【0032】
光触媒粒子の表面に、助触媒粒子が備えられていてもよい。助触媒粒子としては、金属粒子が好ましく、遷移金属粒子がより好ましく、白金族金属粒子が更に好ましい。白金族金属粒子としては、例えば、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、及びIrの粒子が挙げられる。光触媒粒子の表面に助触媒粒子が備えられることにより、光触媒粒子の価電子帯と伝導帯との間のエネルギーのギャップを小さくして、可視光領域での光応答性を向上させることができる。助触媒粒子は、白金族金属の酸化物の粒子であってもよい。
【0033】
噴射剤を除いた光触媒懸濁液2における光触媒粒子の重量パーセントは、0.1wt%以上2.0wt%以下の範囲とすることが好ましい。光触媒粒子が0.1wt%未満では消臭効果が小さくなり、又、2.0wt%を超えると噴射後に粒子の凝集する傾向がありなり好ましくない。
【0034】
〔添加剤〕
光触媒懸濁液2が含有してもよい添加剤としては、防腐効果を有する有機化合物や無機化合物が挙げられる。防腐効果を有する有機化合物としては、ブチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、ベンジルパラベン、イソプロピルパラベン、イソブチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル、有機窒素硫黄系化合物、ピリチオン系化合物、有機ヨウ素化合物、トリアジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、チオカルバメート系化合物、チアゾール系化合物、及びジスルフィド系化合物が挙げられる。防腐効果を有する無機化合物としては、金属イオン含有無機化合物が挙げられる。
【0035】
〔光触媒スプレーの製造方法〕
本発明の光触媒スプレー20は、通常のエアゾール製造方法により製造できる。従来のエアゾール容器3は、アルミやブリキからなる有底筒状の容器に原液等の内容物を充填後、上端の開口部にガスケットを介してエアゾールバブをクリンチして液化ガスなどの噴射剤が所定の液量まで充填される。液化ガスとしては、液化ガスの液密度を調整しやすく、エアゾールの圧力を調整しやすい点から、プロパン(液密度:0.501g/ml)、ノルマルブタン(液密度:0.579g/ml)、イソブタン(液密度:0.557g/ml)およびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル(液密度:0.661g/ml)、および液化石油ガスとジメチルエーテルの混合ガスなどが使用されている。また、エアゾール容器3の内部圧力を調節するために、加圧剤として炭酸ガス、チッ素ガス、圧縮空気、酸素ガスなどの圧縮ガスを用いることができる。光触媒スプレー20の内圧は、25℃の温度で0.35MPa以上0.50MPa以下であることが好ましい。内圧は気温が低い場合は低下し、気温が高い場合は上昇する。気温が低くなると内圧が低下して噴射性が悪くなり、周囲に成分を均一に付着、定着することが困難になる。
【0036】
第2実施形態
第2実施形態は第1実施形態の光触媒スプレー20を用いた消臭方法に関する。第1実施形態の光触媒スプレー20から光触媒懸濁液2を室内の対象物に向けて噴射し、対象物の表面に光触媒層を形成する。この光触媒層に光を照射して光触媒粒子を活性化して、前記室内に存在する臭い成分を分解する。室内で光触媒スプレー20を噴霧すると室内の部材、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、及び皮革上に光触媒スプレー内容物が付着する。室内に光触媒スプレー内容物を連続噴射させる場合は噴射ボタンとして公知の全量噴射型のボタンを用いることができる。なお、噴霧後に形成される光触媒層の厚さは、特に限定されない。
【0037】
光触媒スプレーの作製実験
実施例に係る光触媒スプレー(A-1)~(A-19)及び比較例に係る光触媒スプレー(B-1)~(B-8)を作製した。表1、2に、各光触媒スプレーの組成を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1、2中の「Pt-WO3」は、白金担持酸化タングステン粒子を示す。光触媒粒子である白金担持酸化タングステン粒子は、以下に示す方法により作製した。
酸化タングステン粉末(キシダ化学株式会社製)200gと純水1000mLとを混合した後、超音波を照射しながら分散させて、酸化タングステン粒子の分散液Aを得た。分散液Aに、ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物(キシダ化学株式会社製、純度98.5%)を溶解させて、酸化タングステン粒子の分散液Bを得た。ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物の添加量は、酸化タングステン粒子の重量に対する白金単体での重量の割合が0.05wt%となるような量とした。分散液Bを100℃で加熱して水分を蒸発させた後、500℃で焼成することにより、白金担持酸化タングステン粉末を得た。得られた粉末に含まれる白金担持酸化タングステン粒子の平均粒子径は、175nmであった。
【0041】
表1、2に示した「親水性不揮発性液体」には、脂肪族ポリエーテル誘導体である東邦化学工業株式会社製ポリエチレングリコール:PEG200、脂肪族アミン誘導体である花王株式会社製ポリオキシエチレン(20)硬化牛脂アミン:アミート 320、又は日油株式会社製高分子アミン:エスリームAD-3172Mを使用した。表1中の「水」は純水であり、「EtOH」はエチルアルコールである。表1、2中の「-」は、該当する材料をスプレーが含有していないことを示す。表1、2中の「光触媒固形分wt%」は、「液剤中の光触媒固形分重量パーセント」を示す。「親水性不揮発液体(g)/光触媒固形分(g)」は、「光触媒粒子の重量に対する親水性不揮発性液体の重量の比率」を示す。「エタノールwt%」は、「液剤中のエタノールの重量パーセント」を示す。
【0042】
以下、表1に示すスプレー(A-1)~(A-19)及び(B-1)~(B-8)の作製方法について説明する。
【0043】
<光触媒スプレーの作製方法>
まず、光触媒スプレーの作製に用いる白金担持酸化タングステン粒子の水分散液を調製した。
【0044】
[白金担持酸化タングステン粒子の水分散液の調製]
白金担持酸化タングステン粒子の水分散液の固形分濃度が20wt%となるように、上記で調製した白金担持酸化タングステン粉末と、純水とを混合した。混合物に超音波を照射しながら分散させて、白金担持酸化タングステン粒子の水分散液1000gを調製した。
次に、以下に示す方法により、液剤(光触媒懸濁液)を調製し、アルミ製エアゾール容器に充填し、各光触媒スプレーを作製した。
【0045】
[光触媒スプレー(A-1)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体PEG200 0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-1)を得た。
【0046】
[光触媒スプレー(A-2)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体PEG200 0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-2)を得た。
【0047】
[光触媒スプレー(A-3)の作製]
水39.4gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体PEG200 0.10gを添加し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-3)を得た。
【0048】
[光触媒スプレー(A-4)の作製]
水15.0gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体PEG200 1.00gを添加し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-4)を得た。
【0049】
[光触媒スプレー(A-5)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体PEG200 0.2gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-5)を得た。
【0050】
[光触媒スプレー(A-6)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体PEG200 2.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-6)を得た。
【0051】
[光触媒スプレー(A-7)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体アミート320 0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-7)を得た。
【0052】
[光触媒スプレー(A-8)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体アミート320 0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-8)を得た。
【0053】
[光触媒スプレー(A-9)の作製]
水39.4gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体アミート320 0.10gを添加し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-9)を得た。
【0054】
[光触媒スプレー(A-10)の作製]
水15.0gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体アミート320 1.00gを添加し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-10)を得た。
【0055】
[光触媒スプレー(A-11)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体アミート320 0.2gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-11)を得た。
【0056】
[光触媒スプレー(A-12)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体アミート320 2.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-12)を得た。
【0057】
[光触媒スプレー(A-13)の作製]
水39.5gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-13)を得た。
【0058】
[光触媒スプレー(A-14)の作製]
水15.5gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-14)を得た。
【0059】
[光触媒スプレー(A-15)の作製]
水39.4gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 0.10gを添加し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-15)を得た。
【0060】
[光触媒スプレー(A-16)の作製]
水15.0gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 1.00gを添加し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-16)を得た。
【0061】
[光触媒スプレー(A-17)の作製]
水39.3gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 0.2gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-17)を得た。
【0062】
[光触媒スプレー(A-18)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 2.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-18)を得た。
【0063】
[光触媒スプレー(A-19)の作製]
水14.0gとエタノール29.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 2.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル20gを充填し、光触媒スプレー(A-19)を得た。
【0064】
[光触媒スプレー(B-1)の作製]
水35.2gとエタノール9.8gを混合・攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-1)を得た。光触媒スプレー(B-1)には、親水性不揮発性液体を入れていない。
【0065】
[光触媒スプレー(B-2)の作製]
水34.9gとエタノール9.7gと親水性不揮発性液体PEG200 0.4gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-2)を得た。
【0066】
[光触媒スプレー(B-3)の作製]
水34.9gとエタノール9.7gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 0.4gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-3)を得た。
【0067】
[光触媒スプレー(B-4)の作製]
水32.5gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体PEG200 2.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-4)を得た。
【0068】
[光触媒スプレー(B-5)の作製]
水32.5gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 2.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-5)を得た。
【0069】
[光触媒スプレー(B-6)の作製]
水30.0gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体PEG200 5.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-6)を得た。
【0070】
[光触媒スプレー(B-7)の作製]
水30.0gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体エスリームAD-3172M 5.0gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-7)を得た。
【0071】
[光触媒スプレー(B-8)の作製]
水34.5gとエタノール10.0gと親水性不揮発性液体PEG200 0.5gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル15gを充填し、光触媒スプレー(B-8)を得た。
【0072】
光触媒スプレーの評価
<光触媒スプレーの評価方法及び評価結果>
[塗膜の欠陥有無確認]
以下に示す方法により、塗膜の欠陥有無確認を行った。
室内長×室内幅×室内高=容積3.6m3の室を準備した。
ポリカーボネート製シート(厚み0.5mm,φ50mm)を布等で擦り、静電気測定器で測定しながらポリカーボネート製シートの表面を+10kVに帯電させ、室前方(空間の長手方向前半分)に設置した。
【0073】
室内中央の床に作製した光触媒スプレー(A-1)~(A-19)及び(B-1)~(B-8)のいずれか1つを設置して、設置位置で全量噴射スプレーボタンを押してロックし、噴射開始して室の扉を閉じた。噴射終了後は5分間そのままの状態で成分を定着させた。
室の扉を開け、ポリカーボネート製シートを取り出し、真上から表面を観察して塗膜の欠陥有無を確認した。ここでいう塗膜の欠陥とは、光触媒スプレーを噴霧した際に、液剤に含まれる光触媒粒子が基材表面の帯電によって集まり、更に光触媒粒子の凝集によって、塗面に霧がかかったように白く見える現象を指す。塗膜に欠陥がなかった場合は「良好○」と評価し、塗膜に一部欠陥箇所があった場合は「やや不良△」と評価し、塗膜全体に欠陥箇所があった場合は「不良×」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0074】
[噴射性試験]
上記塗膜の欠陥有無確認後、各光触媒スプレー(A-1)~(A-19)及び(B-1)~(B-8)缶設置場所周辺のスプレー液飛散状態を確認し判定した。
結果を、表3に示す。表3中の評価として、「良好○」は周囲に液滴の飛散が無いことを示し、「やや不良△」は周囲に液滴の飛散が確認されたこと、「不良×」は周囲に液滴が多く飛散して濡れが確認されたことを示している。
【0075】
[消臭試験]
以下に示す方法により、光触媒活性の確認試験である消臭試験(アセトアルデヒドガス分解測定)を行った。各光触媒スプレー(A-1)~(A-19)及び(B-1)~(B-8)から容器に5秒間噴射して回収した液剤をセルロース生地(125mm×125mm)に塗布して消臭試験用サンプル(A-1)~(A-19)及び(B-1)~(B-8)を作成して、日照場所に1週間消臭試験用サンプルを静置して良く乾燥させた。
【0076】
次に容積1L のガスバッグをサンプル毎に用意し、消臭試験用サンプルを入れてから20ppm の濃度となるようにアセトアルデヒドガスをガスバックに投入した。次いで、青色LED(ピーク波長450nm)ランプを用いて、4500ルクスの光を消臭試験用サンプルに照射してガス投入後12時間後のガスバック内のアセトアルデヒドガス濃度変化を検知管により測定した。
【0077】
各消臭試験用サンプルの消臭試験結果を、表3に示す。表3中の評価として、「良好○」はアセトアルデヒドガス残存率が20%未満であることを示し、「やや不良△」はアセトアルデヒドガス濃度が20%以上50%未満で、「不良×」はアセトアルデヒドガス濃度が50%以上100%以下であることを示している。
【0078】
総合評価では、塗膜の欠陥確認試験、噴射性試験、消臭試験においてやや不良△と不良×の評価が1つもない場合「良好○」と評価し、塗膜の欠陥確認試験、噴射性試験、消臭試験においてやや不良△の評価が少なくとも1つある場合「やや不良△」と評価し、塗膜の欠陥確認試験、噴射性試験、消臭試験において不良×の評価が少なくとも1つある場合「不良×」と評価した。
【0079】
【表3】
【0080】
表1に示すように、光触媒スプレー(A-1)~(A-19)内の液剤(光触媒懸濁液)は、液剤に含まれる白金担持酸化タングステン粒子の重量mに対する液剤に含まれる非ハロゲン系親水性不揮発性液体の重量nの比率(n/m)は、0.5以上2以下であるため、表3に示すように塗膜の欠陥が発生せず、またアセトアルデヒドガス分解試験も良好で優れていた。
【0081】
比較例の光触媒スプレー(B-1)~(B-3)は、親水性不揮発性液体を含有しない又は少ないため塗膜の欠陥が発生して劣る結果になった。光触媒スプレー(B-4)~(B-7)は、親水性不揮発性液体が多すぎたため光触媒粒子が埋もれてしまい、他のスプレーと比較してアセトアルデヒドガス分解活性は劣る結果になった。光触媒スプレー(B-8)は、噴射剤のジメチルエーテルが少ないため噴射不良で塗膜の欠陥が発生して、周囲に液滴が多く飛散して濡れ発生する結果になった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の光触媒スプレーは、家屋室内、車両室内など外光がする場所照射、照明光が照射する場所に使用することができる。
【符号の説明】
【0083】
2: 光触媒懸濁液 3:エアゾール容器 4:アクチュエータ 5:バルブ部材 6:チューブ 7:噴射孔 8:気相 9:耐圧容器 20:光触媒スプレー
図1