IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特許7404170作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法
<>
  • 特許-作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法 図1
  • 特許-作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法 図2
  • 特許-作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法 図3
  • 特許-作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法 図4
  • 特許-作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法 図5
  • 特許-作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020109977
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007190
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】高山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】倉金 徹
(72)【発明者】
【氏名】石橋 永至
(72)【発明者】
【氏名】原田 純仁
(72)【発明者】
【氏名】若林 康郎
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-7370(JP,A)
【文献】特開2020-51200(JP,A)
【文献】特開2003-239328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42-3/43
3/84-3/85
9/20-9/22
9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に搭載された複数の位置センサの位置に基づいて算出される前記作業機械の方位を較正するためのシステムであって、
前記作業機械に搭載された第1位置センサと、
前記作業機械に搭載された第2位置センサと、
前記第1位置センサ及び前記第2位置センサと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1位置センサの位置を示す第1位置データと、前記第2位置センサの位置を示す第2位置データとを取得し、
前記第1位置データと前記第2位置データとに基づいて、前記作業機械の方位を示す第1方位を算出し、
前記第1位置データと前記第2位置データとの少なくとも一方に基づいて、前記作業機械の位置を算出し、
前記作業機械が直進走行中であることを示す走行条件を含む判定条件が、所定区間内で満たされているときには、前記所定区間における前記作業機械の位置の変化に基づいて、前記作業機械の方位を示す第2方位を算出し、
前記所定区間における前記第1方位と前記第2方位との差に基づいて、前記作業機械の方位の補正値を算出し、
前記補正値に基づいて、前記第1方位を補正する、
システム。
【請求項2】
前記走行条件は、前記所定区間における前記第1方位の変化の大きさが、第1閾値以下であることを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記走行条件は、前記作業機械が旋回中ではないことを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記作業機械のロール角を検出するロール角センサをさらに備え、
前記走行条件は、前記所定区間における前記作業機械のロール角の変化の大きさが、第2閾値以下であることを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記作業機械のピッチ角を検出するピッチ角センサをさらに備え、
前記走行条件は、前記所定区間における前記作業機械のピッチ角の変化の大きさが、第3閾値以下であることを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記作業機械のロール角を検出するロール角センサをさらに備え、
前記走行条件は、前記所定区間内において前記作業機械のロール角が、第4閾値以下であることを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記作業機械のピッチ角を検出するピッチ角センサをさらに備え、
前記走行条件は、前記所定区間内において前記作業機械のピッチ角が、第5閾値以下であることを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記作業機械は、作業機を備え、
前記判定条件は、前記作業機が作業中ではないことを示す不作業条件をさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記作業機械は、前記作業機を操作するための操作装置をさらに備え、
前記不作業条件は、前記操作装置が非操作状態であることを含む、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記不作業条件は、前記作業機の高さ位置が所定高さ以上であることを含む、
請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記補正値の算出を複数回、繰り返し実行し、
前記複数回の補正値の平均値によって前記補正値を更新する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記作業機械は、作業機を備え、
前記コントローラは、
目標設計地形を決定し、
前記作業機械の位置と前記第1方位とに基づいて、前記目標設計地形に従って前記作業機械を動作させるように制御する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記走行条件は、前記作業機械の走行速度が、所定の速度閾値以上であることをさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
作業機械に搭載された第1位置センサと第2位置センサとを含む複数の位置センサの位置に基づいて算出される前記作業機械の方位を較正するための方法であって、
前記第1位置センサの位置を示す第1位置データと、前記第2位置センサの位置を示す第2位置データとを取得することと、
前記第1位置データと前記第2位置データとに基づいて、前記作業機械の方位を示す第1方位を算出することと、
前記第1位置データと前記第2位置データとの少なくとも一方に基づいて、前記作業機械の位置を算出することと、
前記作業機械が直進走行中であることを示す走行条件を含む判定条件が、所定区間内で満たされているときには、前記所定区間における前記作業機械の位置の変化に基づいて、前記作業機械の方位を示す第2方位を算出することと、
前記所定区間における前記第1方位と前記第2方位との差に基づいて、前記作業機械の方位の補正値を算出することと、
前記補正値に基づいて、前記第1方位を補正すること、
を備える方法。
【請求項15】
前記作業機械は、作業機を備え、
前記判定条件は、前記作業機が作業中ではないことを示す不作業条件をさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記補正値の算出を複数回、繰り返し実行することと、
前記複数回の補正値の平均値によって前記補正値を更新すること、
をさらに備える、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記作業機械は、作業機を備え、
目標設計地形を決定することと、
前記作業機械の位置と前記第1方位とに基づいて、前記目標設計地形に従って前記作業機械を動作させるように制御すること、
をさらに備える請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の方位を較正するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、複数の位置センサを備えるものがある。作業機械のコントローラは、各位置センサの位置に基づいて、作業機械の方位を算出する。例えば、特許文献1は、複数のGPSアンテナを備えたブルドーザを開示している。ブルドーザのコントローラは、GPSアンテナからのGPS信号により、各アンテナの位置を取得する。コントローラは、複数のGPSアンテナの位置関係からブルドーザの方位を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-239328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械では、作業機械における位置センサの検出値に誤差が生じる場合がある。例えば、位置センサの取付位置に誤差がある場合、或いは位置センサの検出値が揺らぐ場合に、位置センサの検出値に誤差が生じる。その場合、上記の作業機械では、算出された作業機械の方位には、実際の作業機械の方位に対して誤差が生じてしまう。計算された方位と実際の方位との間の誤差は、トータルステーションなどの外部の計測機器を用いた測定によって、較正することができる。しかし、その場合、較正のための作業が煩雑となる。本開示の目的は、作業機械の計算された方位と実際の方位との間の誤差を容易、且つ、精度よく較正することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係るシステムは、作業機械に搭載された複数の位置センサの位置に基づいて算出される作業機械の方位を較正するためのシステムである。本態様に係るシステムは、第1位置センサと、第2位置センサと、コントローラとを備える。第1位置センサと第2位置センサとは、作業機械に搭載される。コントローラは、第1位置センサ及び第2位置センサと通信する。コントローラは、第1位置センサの位置を示す第1位置データと、第2位置センサの位置を示す第2位置データとを取得する。コントローラは、第1位置データと第2位置データとに基づいて、作業機械の方位を示す第1方位を算出する。コントローラは、第1位置データと第2位置データとの少なくとも一方に基づいて、作業機械の位置を算出する。判定条件が所定区間内で満たされているときには、コントローラは、所定区間における作業機械の位置の変化に基づいて、作業機械の方位を示す第2方位を算出する。判定条件は、作業機械が直進走行中であることを示す走行条件を含む。コントローラは、所定区間における第1方位と第2方位との差に基づいて、作業機械の方位の補正値を算出する。コントローラは、補正値に基づいて、第1方位を補正する。
【0006】
本開示の第2態様に係る方法は、作業機械に搭載された複数の位置センサの位置に基づいて算出される作業機械の方位を較正するための方法である。複数の位置センサは、第1位置センサと第2位置センサとを含む。本態様に係る方法は、以下の処理を備える。第1処理は、第1位置センサの位置を示す第1位置データと、第2位置センサの位置を示す第2位置データとを取得することである。第2処理は、第1位置データと第2位置データとに基づいて、作業機械の方位を示す第1方位を算出することである。第3処理は、第1位置データと第2位置データとの少なくとも一方に基づいて、作業機械の位置を算出することである。第4処理は、判定条件が所定区間内で満たされているときに、所定区間における作業機械の位置の変化に基づいて、作業機械の方位を示す第2方位を算出することである。判定条件は、作業機械が直進走行中であることを示す走行条件を含む。第5処理は、所定区間における第1方位と第2方位との差に基づいて、作業機械の方位の補正値を算出することである。第6処理は、補正値に基づいて、第1方位を補正することである。なお、上記の処理の実行の順番は、上述した順番に限らず、変更されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るシステム及び方法によれば、作業機械の位置の変化に基づいて算出された第2方位を用いることで、第1方位の較正が行われる。第2方位は、外部の計測機器を用いることなく、作業機械が走行しているときに取得される。そのため、作業機械の計算された方位と実際の方位との間の誤差を容易に較正することができる。また、判定条件は、作業機械が直進走行中であることを示す走行条件を含む。そのため、精度よく較正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】作業機械の斜視図である。
図2】作業機械の制御システムを示すブロック図である。
図3】作業機械の上面図である。
図4】現況地形及び目標設計地形の一例を示す図である。
図5】作業機械の方位の較正方法を示すフローチャートである。
図6】作業機械の方位の較正方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る作業機械1について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1を示す斜視図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0010】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左履帯16aと右履帯16bとを有している。履帯16a,16bが回転することによって、作業機械1が走行する。作業機械1の走行は、自律走行、セミ自律走行、オペレータの操作による走行のいずれの形式であってもよい。
【0011】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線を中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、上下に移動する。
【0012】
図2は、作業機械1の制御システム3と駆動系4との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系4は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0013】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバータ、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0014】
制御システム3は、第1操作装置25aと、第2操作装置25bと、入力装置25cと、コントローラ26と、制御弁27とを備える。第1操作装置25aは、走行装置12を操作するための装置である。第1操作装置25aは、運転室14に配置されている。第1操作装置25aは、走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。第1操作装置25aは、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0015】
第1操作装置25aは、前進位置と後進位置と中立位置とに操作可能である。第1操作装置25aは、左旋回位置と右旋回位置とに操作可能である。第1操作装置25aの位置を示す操作信号は、コントローラ26に出力される。コントローラ26は、第1操作装置25aの操作位置が前進位置であるときには、作業機械1が前進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。第1操作装置25aの操作位置が後進位置であるときには、コントローラ26は、作業機械1が後進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。
【0016】
コントローラ26は、第1操作装置25aの操作位置が左旋回位置であるときには、作業機械1が左方に旋回するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。コントローラ26は、第1操作装置25aの操作位置が右旋回位置であるときには、作業機械1が右方に旋回するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。
【0017】
第2操作装置25bは、作業機13を操作するための装置である。第2操作装置25bは、運転室14に配置されている。第2操作装置25bは、作業機13を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。第2操作装置25bは、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0018】
例えば、第2操作装置25bは、上昇位置と下降位置と中立位置とに操作可能に設けられる。第2操作装置25bの位置を示す操作信号は、コントローラ26に出力される。コントローラ26は、第2操作装置25bの操作位置が上昇位置であるときには、作業機13が上昇するように、制御弁27を制御する。コントローラ26は、第2操作装置25bの操作位置が下降位置であるときには、作業機13が下降するように、制御弁27を制御する。
【0019】
入力装置25cは、例えばタッチパネル式の入力装置である。ただし、入力装置25cは、スイッチ等の他の入力装置であってもよい。オペレータは、入力装置25cを用いて、作業機械1の制御のための設定を入力することができる。
【0020】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、記憶装置28とプロセッサ30とを含む。プロセッサ30は、例えばCPUを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどのメモリを含んでもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどの補助記録媒体を含んでもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサ30によって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記憶している。
【0021】
コントローラ26は、第1操作装置25aと第2操作装置25bとから操作信号を取得する。コントローラ26は、操作信号に基づいて、制御弁27を制御する。なお、コントローラ26は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。
【0022】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、上述した第2操作装置25bの操作に応じてブレード18が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19が、第2操作装置25bの操作量に応じて、制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0023】
制御システム3は、リフト角センサ29を備える。リフト角センサ29は、ブレード18のリフト角を検出する。リフト角は、作業機13の原点位置からの作業機13の角度である。作業機13の原点位置は、例えば、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角センサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さを検出してもよい。コントローラ26は、リフトシリンダ長に基づいてブレード18のリフト角を算出してもよい。或いは、リフト角センサ29は、ブレード18のリフト角を直接的に検出してもよい。
【0024】
図2に示すように、制御システム3は、第1位置センサ31と、第2位置センサ32と、姿勢センサ33とを備えている。第1位置センサ31と第2位置センサ32とは、作業機械1の位置と方位とを検出する。第1位置センサ31と第2位置センサ32とは、例えばGPS(Global Positioning System)などのGNSS (Global Navigation Satellite System)のセンサである。第1位置センサ31は、第1位置センサ31の位置を示す第1位置データを出力する。第2位置センサ32は、第2位置センサ32の位置を示す第2位置データを出力する。
【0025】
第1位置センサ31は、第1受信機34と第1アンテナ35とを含む。第1受信機34は、衛星より測位信号を受信し、測位信号により第1アンテナ35の位置を演算して、第1位置データを生成する。第1位置センサ31の位置は、第1アンテナ35の位置を意味する。第2位置センサ32は、第2受信機36と第2アンテナ37とを含む。第2受信機36は、衛星より測位信号を受信し、測位信号により第2アンテナ37の位置を演算して、第2位置データを生成する。第2位置センサ32の位置は、第2アンテナ37の位置を意味する。図3は、作業機械1の上面図である。図3に示すように、第1アンテナ35と第2アンテナ37とは、車体2に搭載されている。第1アンテナ35と第2アンテナ37とは、車体2の前後方向に並んで配置されている。第2アンテナ37は、第1アンテナ35の後方に配置されている。
【0026】
コントローラ26は、第1位置センサ31から第1位置データを取得する。コントローラ26は、第2位置センサ32から第2位置データを取得する。第1位置データは、グローバル座標系における第1位置センサ31の位置を示す。第2位置データは、グローバル座標系における第2位置センサ32の位置を示す。
【0027】
姿勢センサ33は、例えばIMU(Inertial Measurement Unit)である。姿勢センサ33は、車体2の傾斜角データを出力する。車体2の傾斜角データは、車体2のピッチ角とロール角とを含む。すなわち、姿勢センサ33は、車体2のピッチ角を検出するピッチ角センサであり、車体2のロール角を検出するロール角センサである。ピッチ角は、水平方向に対する車体2の前後方向の角度である。ロール角は、水平方向に対する車体2の横方向の角度である。コントローラ26は、姿勢センサ33から傾斜角データを取得する。
【0028】
コントローラ26は、第1位置データと、傾斜角データと、ブレード18のリフト角とから、ブレード18の刃先位置P0を演算する。コントローラ26は、リフト角と車体寸法データに基づいて、刃先位置P0のローカル座標を算出する。ローカル座標系は、車体2を基準とする座標系である。グローバル座標系は、車体2の外部の座標系である。車体寸法データは、ローカル座標系における車体2の原点位置と、刃先位置P0との位置関係を示す。車体寸法データは、ローカル座標系における車体2の原点位置と、第1位置センサ31との位置関係を示す。車体寸法データは、ローカル座標系における車体2の原点位置と、第2位置センサ32との位置関係を示す。車体寸法データは、ローカル座標系における第1位置センサ31と第2位置センサ32との位置関係を示す。車体寸法データは、記憶装置28に記憶されている。
【0029】
コントローラ26は、第1位置センサ31のグローバル座標と、刃先位置P0のローカル座標と、傾斜角データと、車体寸法データとに基づいて、刃先位置P0のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、第1位置センサ31のグローバル座標と第2位置センサ32のグローバル座標とから、グローバル座標における車体2の方位を示す第1方位を算出する。詳細には、コントローラ26は、第2位置センサ32の位置から第1位置センサ31の位置に向かう方向を、第1方位として決定する。
【0030】
記憶装置28は、作業現場データを記憶している。作業現場データは、作業現場の現況の地形を示す。作業現場データは、例えば、三次元データ形式の作業現場の地形の測量図である。
【0031】
コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業現場の現況地形50を示す。図4は、現況地形50の断面を示す。なお、図4において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、作業機械1の進行方向における現在位置からの距離を示している。
【0032】
現況地形データは、作業機械1の進行方向に位置する地形を示す情報である。現況地形データは、作業現場データと、作業機械1の現在位置と、第1方位とからコントローラ26での演算により取得される。現況地形データは、第1方位において、作業機械1の現在位置から所定距離dnまでの現況地形50を示す。詳細には、現況地形データは、第1方位において、作業機械1の現在位置から所定距離dnまでの複数の参照点での現況地形50の高さZ0~Znを含む。本実施形態において、現在位置は、作業機械1の現在の刃先位置P0に基づいて定められる位置である。ただし、現在位置は、作業機械1の他の部分の現在位置に基づいて定められてもよい。複数の参照点は、所定間隔、例えば1mごとに並んでいる。
【0033】
コントローラ26は、現況地形データと、刃先位置P0と、第1方位とに基づいて、作業機13を自動的に制御する。なお、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。
【0034】
コントローラ26は、現況地形50に基づいて目標設計地形70を決定する。例えば、図4に示すように、コントローラ26は、現況地形50よりも距離dZだけ下方に位置する目標設計地形70を決定する。コントローラ26は、作業機械1の現在位置と第1方位とに基づいて、目標設計地形70に従って作業機械1を動作させるように制御する。それにより、作業機械1によって現況地形50が目標設計地形70に従う形状となるように、現況地形50が掘削される。或いは、コントローラ26は、現況地形50よりも上方に位置する目標設計地形70を決定してもよい。その場合、作業機械1によって、現況地形50が目標設計地形70に従う形状となるように、現況地形50上に土が盛られる。
【0035】
次に、第1位置センサ31の位置と第2位置センサ32と位置に基づいて算出される第1方位を較正するための処理について説明する。図5は、第1方位を較正するための処理を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS101では、コントローラ26は、機械状態データを取得する。機械状態データは、作業機械11の走行速度と、ロール角と、ピッチ角と、旋回操作状態と、作業機位置と、作業機操作状態とを含む。走行速度は、第1位置センサ31、及び/又は、第2位置センサ32の位置の変化から算出される。或いは、走行速度は、動力伝達装置24又は走行装置12の回転速度から算出されてもよい。ロール角とピッチ角とは、上述した車体2の傾斜角データから取得される。
【0037】
旋回操作状態は、第1操作装置25aによる旋回操作の有無を示す。旋回操作状態は、第1操作装置25aからの操作信号に基づいて取得される。或いは、旋回操作状態は、IMUなどの作業機械1の姿勢を検出するセンサからの信号に基づいて取得されてもよい。作業機位置は、ブレードの高さ位置を示す。作業機位置は、リフト角センサ29からの信号に基づいて取得されてもよい。作業機操作状態は、作業機13が操作されているか否かを示す。作業機操作状態は、第2操作装置25bからの操作信号に基づいて取得される。コントローラ26は、機械状態データを所定のサンプル周期で繰り返し取得して記録する。
【0038】
ステップS102では、コントローラ26は、機械位置・方位データを取得する。機械位置・方位データは、作業機械1の位置と第1方位とを含む。作業機械1の位置は、第1位置センサ31の位置、及び/又は、第2位置センサ32の位置に基づいて、取得される。作業機械1の位置は、第1位置センサ31と第2位置センサ32との少なくとも一方から規定される位置である。例えば、作業機械1の位置は、第1位置センサ31の位置であってもよい。或いは、作業機械1の位置は、第2位置センサ32の位置であってもよい。或いは、作業機械1の位置は、第1位置センサ31と第2位置センサ32との間の位置であってもよい。第1方位は、上述したように、第1位置センサ31の位置と第2位置センサ32と位置に基づいて算出される。コントローラ26は、機械位置・方位データを所定のサンプル周期で繰り返し取得して記録する。
【0039】
ステップS103では、コントローラ26は、所定区間内で継続的に判定条件が満たされているかを判定する。所定区間は、作業機械1の移動距離で規定されてもよい。或いは、所定区間は、作業機械1の移動時間で規定されてもよい。判定条件は、走行条件と不作業条件とを含む。走行条件は、作業機械1が平地で直進走行中であることを示す。不作業条件は、作業機械1が作業機による作業行っていないことを示す。
【0040】
コントローラ26は、機械状態データと機械位置・方位データとから、走行条件が満たされているかを判定する。コントローラ26は、機械状態データから、不作業条件が満たされているかを判定する。コントローラ26は、走行条件と不作業条件との両方が満たされているときに、判定条件が満たされていると判定する。
【0041】
詳細には、走行条件は、以下の第1~第7走行条件を含む。第1走行条件は、作業機械1の走行速度が、所定の速度閾値以上であることである。第2走行条件は、第1方位の変化の大きさが、第1閾値以下である。第3走行条件は、作業機械1が旋回中ではないことである。第4走行条件は、作業機械1のロール角の変化の大きさが、第2閾値以下であることである。
【0042】
第5走行条件は、作業機械1のピッチ角の変化の大きさが、第3閾値以下であることである。第6走行条件は、作業機械1のロール角が、第4閾値以下であることである。第7走行条件は、作業機械1のピッチ角が、第5閾値以下であることである。コントローラ26は、所定区間内で継続的に第1~第7走行条件の全てが満たされているときに、走行条件が満たされていると判定する。なお、上記の閾値は、第1方位を精度よく較正するために適した値に設定されている。
【0043】
不作業条件は、以下の第1不作業条件と第2不作業条件とを含む。第1不作業条件は、第2操作装置25bが非操作状態であることである。第2不作業条件は、作業機の高さ位置が所定高さ以上であることである。コントローラ26は、所定区間内で継続的に第1~第2不作業条件の全てが満たされているときに、不作業条件が満たされていると判定する。
【0044】
コントローラ26が所定区間内で継続的に判定条件が満たされていると判定したときには、処理はステップS104に進む。ステップS104では、コントローラ26は、所定区間内での第1方位と第2方位とを算出する。図6は、開始時刻t - Tから終了時刻tまでの所定区間において、判定条件が満たされた例を示している。コントローラ26は、開始時刻t - Tから終了時刻tまでの第1方位の平均値を、所定区間内での第1方位Wnavとして算出する。
【0045】
コントローラ26は、所定区間内における作業機械1の位置の変化に基づいて、作業機械1の方位を示す第2方位を算出する。詳細には、コントローラ26は、所定区間の開始位置P1から終了位置P2に向かう方位を第2方位として算出する。コントローラ26は、以下の式(1)により、第2方位Wposを算出する
Wpos = atan2(Eg - Es, Ng - Ns) (1)
開始位置P1のグローバル座標は(Es, Ns, Zs)である。終了位置P2のグローバル座標は(Eg, Ng, Zg)である。なお、開始位置P1は、開始時刻t - Tから所定時間後までの作業機械1の位置の平均値であってもよい。終了位置P2は、終了時刻tから所定時間前までの作業機械1の位置の平均値であってもよい。
【0046】
ステップS105では、コントローラ26は、作業機械1の方位の補正値を算出する。コントローラ26は、補正値を記憶装置28に保存する。コントローラ26は、所定区間内における第1方位Wnavと第2方位Wposとの差に基づいて、作業機械1の方位の補正値を算出する。詳細には、コントローラ26は、以下の式(2)により、補正値Dwlを算出する。
Dwl = Wnav - Wpos
ステップS106では、コントローラ26は、補正値の平均値を算出する。コントローラ26は、図5に示すステップS101からステップS107の処理を、作業機械1の走行のたびに繰り返し実行する。また、コントローラ26は、上述したステップS101からステップS107の処理を、作業機械1の走行中に繰り返し実行する。コントローラ26は、今回の補正値と共に、過去の複数の補正値を記憶装置28に保存している。コントローラ26は、今回の補正値と過去の補正値とから、補正値の平均値を算出する。コントローラ26は、今回の補正値と、最新の所定数の過去の補正値とから補正値の平均値を算出する。或いは、コントローラ26は、今回の補正値と、現在から所定時間前までの過去の補正値とから補正値の平均値を算出してもよい。或いは、コントローラ26は、今回の補正値と、過去の全ての補正値とから補正値の平均値を算出してもよい。
【0047】
ステップS107では、コントローラ26は、補正値の平均値を、第1方位を補正するための補正値として更新して記憶装置28に保存する。その後、コントローラ26は、第1方位を決定するときには、第1位置センサ31の位置と第2位置センサ32と位置に基づいて算出された第1方位を、更新された補正値を用いて補正する。
【0048】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1によれば、作業機械1の位置の変化に基づいて算出された第2方位を用いることで、第1方位の較正が行われる。第2方位は、外部の計測機器を用いることなく、作業機械1が走行中に取得される。そのため、作業機械1の計算された方位と実際の方位との間の誤差を容易に較正することができる。また、判定条件は、作業機械1が直進走行中であることを示す走行条件を含む。そのため、精度よく較正を行うことができる。さらに、補正値の平均値を用いることで、センサ31,32の検出値の経時的揺らぎによる誤差を精度よく較正することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ、ダンプトラック等の他の機械であってもよい。
【0050】
作業機械1は、遠隔操縦可能であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業機械1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。
【0051】
第1操作装置25a、第2操作装置25b、及び入力装置25cは、作業機械1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業機械1から省略されてもよい。第1操作装置25a、第2操作装置25b、及び入力装置25cは、作業機械1から省略されてもよい。第1操作装置25a及び第2操作装置25bによる操作無しで、コントローラ26による自動制御のみによって作業機械1が操作されてもよい。
【0052】
位置センサの数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。位置センサの配置は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、第1位置センサ31と第2位置センサ32とは、作業機械1の幅方向に並んでもよい。位置センサは、地球を基準とする測位システムのセンサに限らない。位置センサは、作業現場などの特定の領域を基準とする測位システムのセンサであってもよい。
【0053】
コントローラ26による処理の順番は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。コントローラ26による処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。目標設計地形70に従って作業機13を自動制御する処理は、省略されてもよい。コントローラ26は、作業機械1の位置と第1方位とに基づいて、作業機械1を目的地まで自動的に走行させてもよい。
【0054】
上述した補正値を算出するための処理は、作業機械1による通常の作業時に、オペレータが特別な指示をしなくても常時、実行されてもよい。或いは、補正値を算出するための処理は、オペレータが、入力装置25c等の装置を用いて較正の指示を入力したときに、実行されてもよい。補正値を算出するための処理は、位置センサの位置が適正であると判定されたときに、実行されてもよい。補正値を算出するための処理は、機械状態データと機械位置・方位データとが適正であると判定されたときに、実行されてもよい。
【0055】
判定条件は、上記の実施形態のものに限らず、追加、省略、或いは変更されてもよい。例えば、走行条件は、上記の実施形態のものに限らず、追加、省略、或いは変更されてもよい。不作業条件は、上記の実施形態のものに限らず、追加、省略、或いは変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示によれば、作業機械の計算された方位と実際の方位との間の誤差を容易、且つ、精度よく較正することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 作業機械
13 作業機
25b 第2操作装置
26 コントローラ
31 第1位置センサ
32 第2位置センサ
33 姿勢センサ(ロール角センサ、ピッチ角センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6