(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】通信システム、ノード、通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0446 20230101AFI20231218BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20231218BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20231218BHJP
H04W 8/00 20090101ALN20231218BHJP
【FI】
H04W72/0446
H04W72/0453
H04W84/18
H04W8/00 110
(21)【出願番号】P 2020123956
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 康之
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208283(JP,A)
【文献】特表2014-518602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0104250(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードを備え、
前記複数のノードから送信されるネットワーク広告パケットの送信タイミングは、前記複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールによって制御され、
前記ノードは、
前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを前記送信スケジュールに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信する無線通信制御部と、を備え、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記ネットワーク広告パケットの送信セルのチャネルオフセットは、前記スロットオフセットを識別するスロットオフセット番号を所定の数で割った値のチャネル数による剰余によって特定され、
前記判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定する、
通信システム。
【請求項2】
無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードを備え、
前記複数のノードから送信されるネットワーク広告パケットの送信タイミングは、前記複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールによって制御され、
前記ノードは、
前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを前記送信スケジュールに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信する無線通信制御部と、を備え、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定し、
前記送信スケジュールは、複数の前記送信セルを含むスロットフレームの繰り返しにより表現され、
前記無線通信制御部は、前記自ノード送信セルのスロットオフセットを識別するスロットオフセット番号が、現在のスロットフレームを識別するスロットフレーム番号のチャネル数による剰余と一致するとき、前記ネットワーク広告パケットを送信する、
通信システム。
【請求項3】
前記送信スケジュールは、複数の前記送信セルを含むスロットフレームの繰り返しにより表現され、
前記無線通信制御部は、特定のスロットフレームで、前記ネットワーク広告パケットを送信する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記無線通信制御部は、他ノードのネットワーク広告パケットが送信される他ノード送信セルを前記送信スケジュールに基づいて特定し、前記他ノード送信セルで前記他ノードにより送信されるネットワーク広告パケットの受信待ちをする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記ネットワーク広告パケットの送信セルに割り当てられる前記ノードは、所定の装置からの指示によって決定される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記ネットワーク広告パケットの送信セルに割り当てられる前記ノードは、前記ノードを識別する識別情報に基づいて決定される、
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記ネットワーク広告パケットは、ビーコン、拡張ビーコン、及び、ルーティングプロトコルの制御パケットの少なくとも1つである、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信する無線通信制御部と、を備え、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記ネットワーク広告パケットの送信セルのチャネルオフセットは、前記スロットオフセットを識別するスロットオフセット番号を所定の数で割った値のチャネル数による剰余によって特定され、
前記判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定する、
ノード。
【請求項9】
ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信する無線通信制御部と、を備え、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定し、
前記送信スケジュールは、複数の前記送信セルを含むスロットフレームの繰り返しにより表現され、
前記無線通信制御部は、前記自ノード送信セルのスロットオフセットを識別するスロットオフセット番号が、現在のスロットフレームを識別するスロットフレーム番号のチャネル数による剰余と一致するとき、前記ネットワーク広告パケットを送信する、
ノード。
【請求項10】
無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードの通信方法であって、
前記ノードが、ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、前記複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールに基づいて判定するステップと、
前記ノードが、前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信するステップと、を含み、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記ネットワーク広告パケットの送信セルのチャネルオフセットは、前記スロットオフセットを識別するスロットオフセット番号を所定の数で割った値のチャネル数による剰余によって特定され、
前記判定するステップは、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定する、
通信方法。
【請求項11】
無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードの通信方法であって、
前記ノードが、ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、前記複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールに基づいて判定するステップと、
前記ノードが、前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信するステップと、を含み、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記判定するステップは、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定し、
前記送信スケジュールは、複数の前記送信セルを含むスロットフレームの繰り返しにより表現され、
前記送信するステップは、前記自ノード送信セルのスロットオフセットを識別するスロットオフセット番号が、現在のスロットフレームを識別するスロットフレーム番号のチャネル数による剰余と一致するとき、前記ネットワーク広告パケットを送信する、
通信方法。
【請求項12】
無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードを、
ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、前記複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信する無線通信制御部、として機能させ、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記ネットワーク広告パケットの送信セルのチャネルオフセットは、前記スロットオフセットを識別するスロットオフセット番号を所定の数で割った値のチャネル数による剰余によって特定され、
前記判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定する、
プログラム。
【請求項13】
無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードを、
ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、前記複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信する無線通信制御部、として機能させ、
前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表され、
前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定され、
前記判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定し、
前記送信スケジュールは、複数の前記送信セルを含むスロットフレームの繰り返しにより表現され、
前記無線通信制御部は、前記自ノード送信セルのスロットオフセットを識別するスロットオフセット番号が、現在のスロットフレームを識別するスロットフレーム番号のチャネル数による剰余と一致するとき、前記ネットワーク広告パケットを送信する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は通信システム、ノード、通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
TSCH(Time Synchronized Channel Hopping:時間同期チャンネルホッピング)が、無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードの通信方式として従来から利用されている。無線マルチホップネットワークでは、自ノードの近隣に存在する近隣ノードの探索が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】IETF RFC 8180、Minimal IPv6 over the TSCH Mode of IEEE 802.15.4e (6TiSCH) Configuration、[令和2年6月29日検索]、インターネット〈URL:https://tools.ietf.org/html/rfc8180〉
【文献】Simon Duquennoy、Beshr Al Nahas、Olaf Landsiedel、Thomas Watteyne、Orchestra: Robust Mesh Networks Through Autonomously Scheduled TSCH、[令和2年6月29日検索]、インターネット〈URL:https://dl.acm.org/doi/10.1145/2809695.2809714〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の技術では、近隣ノードの発見に時間がかかったり、特定の近隣ノードを発見できなかったりする問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の通信システムは、無線マルチホップネットワークを構成する複数のノードを備える。前記複数のノードから送信されるネットワーク広告パケットの送信タイミングは、前記複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールによって制御される。前記ノードは、判定部と無線通信制御部とを備える。判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを前記送信スケジュールに基づいて判定する。無線通信制御部は、前記ネットワーク広告パケットを前記送信タイミングで送信する。前記送信スケジュールは、時間方向に分割された複数のスロットオフセットと、周波数方向に分割された複数のチャネルオフセットにより表される。前記送信セルは、前記スロットオフセットと前記チャネルオフセットとにより特定される。前記ネットワーク広告パケットの送信セルのチャネルオフセットは、前記スロットオフセットを識別するスロットオフセット番号を所定の数で割った値のチャネル数による剰余によって特定される。前記判定部は、前記ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた自ノード送信セルのスロットオフセットにより決定し、前記ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、前記自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の通信システムの装置構成の例を示す図。
【
図2】第1実施形態のノードの機能構成の例を示す図。
【
図3】第1実施形態のビーコンの送信スケジュールの例を示す図。
【
図4】第1実施形態の通信方法の例を示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態のビーコンの送信スケジュールの例を示す図。
【
図6】第1及び第2実施形態のノードのハードウェア構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、通信システム、ノード、通信方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。
【0008】
従来のTSCHの通信技術として、例えばIETF RFC 6550及びOrchestra等がある。
【0009】
IETF RFC 6550では近隣ノードを早く発見するためにDIS(DODAG Information Solicitation)と呼ばれるメッセージを利用する。DISを受信した近隣ノードはDIO(DODAG Information Object)と言うネットワーク広告用フレーム(パケット)の送信間隔を短縮するが、TSCHではブロードキャスト用セル上でDIOが送信される。
【0010】
一方、Orchestra はEB Slotframeという、ビーコン送信専用のスロットフレームを持つ。このスロットフレームでは各ノードがMACアドレスに基づくタイミングでビーコンを送信する。これにより、複数のノードが同時にビーコン(ネットワーク広告用フレーム)を送信することは無くなるが、近隣ノードのMACアドレスをあらかじめ知らなければそのノードが送信するビーコンを受信できない。つまり、EB Slotframeは未知の近隣ノードを発見する目的には適していない。
【0011】
従来のTSCHの通信技術では、TSCHネットワークと同期をした後に近隣ノードを発見するには、ブロードキャスト用に割り当てられた送信セル(TSCHリンク)で近隣ノードからのビーコンなどのネットワーク広告フレームを受信するしかない。しかし、通常、ブロードキャスト用セルの割り当ては限定的で、かつ、複数のノードが同時にフレームを送信しうるため、ネットワーク広告フレーム衝突の可能性が他の通信よりも大きい。そのため、近隣ノードの発見に時間がかかったり、特定の近隣ノードを発見できなかったりする問題があった。
【0012】
以下の第1実施形態では、近隣ノードをより迅速に発見できるようにする通信システム、ノード、通信方法及びプログラムについて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
はじめに、第1実施形態の通信システムの装置構成の例について説明する。
【0014】
[装置構成の例]
図1は第1実施形態の通信システム100の装置構成の例を示す図である。第1実施形態の通信システム100は、ノード10a~10n及びネットワーク200を備える。
【0015】
ノード10a~10nは、無線マルチホップネットワークを構成する通信装置である。
図1中の点線は無線リンクを表す。点線の接続関係は、ノード10a~10nが構築するルーティングツリーを示す。以下、ノード10a~10nを区別しない場合は、単にノード10という。
【0016】
ノード10aは、ノード10aの周辺ノードとの無線リンクの他に、ネットワーク200との接続を持つ。典型的にはネットワーク200は、インターネットである。ノード10aは、ノード10a~10nで構成する無線マルチホップネットワークと、外部のネットワーク200とを接続するルータ(ゲートウェイ、集約装置又はコンセントレータ)として動作する。なお、ノード10aがネットワーク200との接続を持つことは必須ではない。
【0017】
第1実施形態の通信システム100では、無線通信規格としてIEEE 802.15.4のTSCHが使用される場合を例にして説明する。なお、無線通信規格は、IEEE 802.15.4に限られず、時分割多重方式で通信する無線通信規格であれば任意でよい。例えば、無線通信規格は、IEEE 802.11及びWi-SUN FAN等でもよいし、独自の通信規格でもよい。また、必ずしもチャネルホッピング(周波数ホッピング)が行われなくてよい。
【0018】
次に、第1実施形態のノード10の機能構成の例について説明する。
【0019】
[ノードの機能構成の例]
図2は第1実施形態のノード10の機能構成の例を示す図である。第1実施形態のノード10は、通信処理部11、記憶部12、無線通信制御部13及び対外通信制御部14を備える。
【0020】
通信処理部11は、判定部111、処理部112及び記憶制御部113を備える。
【0021】
判定部111は、ネットワーク広告パケットの送信タイミングと、ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルとを、複数のノードのそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュール(
図3参照)に基づいて判定する。
【0022】
処理部112は、ネットワーク通信処理を行う。例えば、処理部112は、ノード10a~10nで構成される無線マルチホップネットワーク上のパケット転送処理を行う。また例えば、処理部112は、アプリケーションデータの生成、送信及び受信等を行う。
【0023】
記憶制御部113は、記憶部12に記憶される情報の記憶制御(読み出し及び書き込み等)を行う。
【0024】
記憶部12は、上述の送信スケジュール等を記憶する。
【0025】
無線通信制御部13は、無線マルチホップネットワークに接続し、その無線マルチホップネットワークの一部として動作を始めると、IEEE 802.15.4のネットワーク広告パケットの送信を開始する。例えば、ネットワーク広告パケットは、ビーコン、拡張ビーコン、及び、ルーティングプロトコルの制御パケットの少なくとも1つである。ビーコンには、無線マルチホップネットワークを識別する識別子、及び、無線マルチホップネットワークのデータ通信スケジュールを示す情報などが含まれる。また上位レイヤが、ネットワーク広告パケットを送信する場合がある。例えば、IETF RFC 6550のDIO(DODAG Information Object)もネットワーク広告パケットとみなされる。
【0026】
対外通信制御部14は、ネットワーク200を介した通信を制御する。なお、ノード10b~10nについては、対外通信制御部14を備えていなくてもよい。また、ノード10aについても、ネットワーク200を介した通信が行われない場合には、対外通信制御部14を備えていなくてもよい。
【0027】
[送信スケジュールの例]
図3は第1実施形態のビーコンの送信スケジュールの例を示す図である。第1実施形態のビーコンの送信スケジュールは、時間方向に分割された20個のスロットオフセットと、周波数方向に分割された5つのチャネルオフセット(チャネル)とを含むスロットフレームの繰り返しにより制御される。複数のノード10のそれぞれは、送信スケジュール内の異なる場所にひとつの送信セル(送信機会)を持つ。送信セルは、スロットオフセットとチャネルオフセットとにより特定される。
【0028】
図3の例では、スロットオフセットは、スロットオフセットを識別するスロットオフセット番号0~19により特定される。同様に、チャネルオフセットは、チャネルオフセットを識別するチャネルオフセット番号0~4により特定される。以下、スロットオフセット番号がiのスロットオフセットをスロットオフセットiと表記し、チャネルオフセット番号がjのチャネルオフセットをチャネルオフセットjと表記する。
【0029】
図3の送信スケジュールでは、下記式(1)によって、ビーコンの送信セルが決定される。
【0030】
channel_offset
=int(slot_offset / α)
% number_of_channels ・・・(1)
【0031】
ここで、slot_offsetは、現在のスロットオフセットを示す。αは、ビーコンを送信するチャネルオフセットの決定に用いられる数である。intは、小数点以下を切り捨て、整数部を取得する演算子である。
図3の例では、α=4である。number_of_channelsは、チャネル数を示す。
図3の例では、number_of_channels=5である。出力のchannel_offsetは、現在のスロットオフセットにおいてビーコン送信セルが設定されているチャネルオフセットを示す。
【0032】
上記式(1)によって、ネットワーク広告パケットの送信セルのチャネルオフセットは、スロットオフセットを識別するスロットオフセット番号を所定の数αで割った値のチャネル数5による剰余によって特定される。
【0033】
例えば、slot_offset=0では、channel_offset=int(0/4)%5=0である。slot_offset=1では、channel_offset=int(1/4)%5=0である。slot_offset=2では、channel_offset=int(2/4)%5=0である。slot_offset=3では、channel_offset=int(3/4)%5=0である。slot_offset=4では、channel_offset=int(4/4)%5=1である。
【0034】
上述の式(1)によって、
図3の送信スケジュールの例では、スロットオフセット0~3(現在時刻がスロットオフセット0~3に対応する時刻)では、チャネルオフセット0にビーコンの送信セルが設定される。スロットオフセット4~7では、チャネルオフセット1にビーコンの送信セルが設定される。スロットオフセット8~11では、チャネルオフセット2にビーコンの送信セルが設定される。スロットオフセット12~15では、チャネルオフセット3にビーコンの送信セルが設定される。スロットオフセット16~19では、チャネルオフセット4にビーコンの送信セルが設定される。
【0035】
なお、
図3の送信スケジュールでは、スロットオフセット最大値(スロットフレーム長)は、αとチャネル数との積(4×5=20)に等しい。
【0036】
図3に示されるように、ノード10a~10nは、ビーコンの送信スケジュール内の異なる場所にひとつの送信セルを有する。判定部111は、ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、自ノードに割り当てられた送信セル(自ノード送信セル)のスロットオフセットにより決定し、ネットワーク広告パケットの送信に使用されるチャネルを、自ノード送信セルのチャネルオフセットにより決定する。
【0037】
各ノード10に割り当てられる送信セル(スロットオフセット及びチャネルオフセット)は、例えば各ノード10が、無線マルチホップネットワークに接続した時に、ノード10a及び外部のノード(例えばPCE:Path Computation Elemen)等の所定の装置の指示によって中央集権的に決定されてもよい。また例えば、各ノード10に割り当てられる送信セルは、ノード10のMACアドレス等の識別情報に基づいて決定されてもよい。
【0038】
第1実施形態では、各ノード10はショートアドレス(16ビットMACアドレス)を持ってもよい。そのショートアドレスには、ビーコンの送信セルに使用されるチャネルオフセットとスロットオフセットとが符号化されるかもしれない。例えば、上位8ビットにチャネルオフセットが表現され、下位8ビットにスロットオフセットが表現される。なお、チャネルオフセットとスロットオフセットとの符号化方法は、シュートアドレスから一意に送信セルが特定できれば、この表現例に限らず任意でよい。例えば、上位8ビットにスロットオフセットが表現され、下位8ビットにチャネルオフセットが表現されていてもよい。
【0039】
ショートアドレスの割り当て設定は、各ノード10に対し静的に行われてもよいし、
図1のノード10a及び外部のノード(例えばPCE)等が動的に各ノード10へショートアドレスを割り当ててもよい。
【0040】
各ノード10の無線通信制御部13は、上述の式(1)によって決定される送信セルのうち、自ノードに割り当てられた送信セル以外で、他ノードから送信されるビーコンの受信待ちをする。例えば、ノード10cは、
図3のように各ノード10に割り当てられた送信セルのうち、スロットオフセット0、チャネルオフセット0の送信セル以外で、他ノードのビーコンの受信待ちをする。
【0041】
TSCHの場合、
図2の送信スケジュールは、複数のスロットフレームのひとつとして表現されてもよい。それぞれのスロットフレームは、スロットフレームを識別するスロットフレーム番号により識別される。以下、スロットフレーム番号がkのスロットフレームをスロットフレームkと表記する場合がある。
【0042】
例えば、各ノード10の無線通信制御部13は、スロットフレーム番号が特定の値をとる場合、当該スロットフレーム番号のスロットフレームを、ネットワーク広告パケット(例えばビーコン及びDIO等)の送信スケジュールとして用いる。この特定の値の定め方は任意でよい。
【0043】
例えば、各ノード10は、(現在のスロットフレーム番号 % β)<(チャネル数)を満たすスロットフレーム番号のスロットフレームで、ビーコンを送信する。ここで、βは、ビーコンを送信するスロットフレームの決定に用いられる数である。
【0044】
β=20であり、
図3のようにチャネル数が5の場合について具体的に説明すると、現在のスロットフレームのスロットフレーム番号が41ならば、(41%20)=1<5なので、各ノード10は当該スロットフレームでビーコンを送信する。現在のスロットフレームのスロットフレーム番号が46ならば、(46%20)=6>5なので、各ノード10は当該スロットフレームでビーコンを送信しない。ビーコンが送信されるスロットフレームでは、各ノード10は、自身がビーコンを送信しないスロットオフセットで、他ノードのビーコン受信待ちをする。
【0045】
スロットフレームの長さをLとすると、現在のスロットオフセットのスロットオフセット番号は、ASN % Lにより算出される。ここで、ASN(Absolute Slot Number)は、送信スケジュール(TSCHスケジュール)内の現在時刻を示す。ここで、%は、剰余を算出する演算子である。
【0046】
また例えば、長さLのスロットフレームのチャネルオフセットx、スロットオフセットyにビーコン送信セル(TSCHリンク)が割り当てられたノード10は、ASN % L==x、かつ、(ASN / L) % β==yの時に、ネットワーク広告フレームとしてDIOを送信する。
【0047】
受信側のノード10は、(ASN / L) % βが有効なチャネルオフセットの時に、当該チャネルオフセットで受信待ちをし続ければ、近隣ノードからのネットワーク広告用フレーム(DIO)を連続して受信でき、従来よりも効率よく近隣ノードを発見できる。
【0048】
[通信方法の例]
図4は第1実施形態の通信方法の例を示すフローチャートである。はじめに、判定部1111が、現在のスロットフレームのスロットフレーム番号に基づいて、ビーコンを送信するスロットフレームであるか否かを判定する(ステップS1)。ビーコンを送信するスロットフレームでない場合(ステップS1,No)、各ノード10の処理部112が、当該スロットフレーム内で、アプリケーション等のデータの送受信を行う(ステップS6)。なお、
図4では記載を省略したが、送信すべきアプリケーションが無い場合や、データ受信待ちの処理がスケジュールされていない場合は、ノード10は何も通信処理を行わない。
【0049】
ビーコンを送信するスロットフレームである場合(ステップS1,Yes)、判定部111が、
図3のビーコンの送信スケジュールに基づいて、現在時刻に対応するスロットオフセットでビーコンが送信されるチャネルオフセットを特定(送信セルの特定)する(ステップS2)。
【0050】
ステップS2の処理により特定された送信セルが、自ノードに割り当てられた送信セルである場合(ステップS3,Yes)、無線通信制御部13が、当該送信セルでビーコンを送信する(ステップS4)。ステップS2の処理により特定された送信セルが、自ノードに割り当てられた送信セルでない場合(ステップS3,No)、無線通信制御部13が、他ノードにより送信されたビーコンを当該送信セルで受信する(ステップS5)。
【0051】
以上、説明したように、第1実施形態の通信システム100では、複数のノード10から送信されるネットワーク広告パケットの送信タイミングは、複数のノード10のそれぞれが異なる場所にひとつの送信セルを持つ送信スケジュールによって制御される。各ノード10は、ネットワーク広告パケットの送信タイミングを、
図3の送信スケジュールに基づいて判定する。そして、無線通信制御部13が、ネットワーク広告パケットを当該送信タイミングで送信する。
【0052】
これにより第1実施形態の通信システム100によれば、近隣ノードをより迅速に発見することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の説明については省略し、第1実施形態と異なる箇所について説明する。第2実施形態では、スロットフレームに含まれるスロットオフセットの数が、所定の数αと等しい場合のネットワーク広告パケットの送信制御について説明する。
【0054】
[送信スケジュールの例]
図5は第2実施形態のビーコンの送信スケジュールの例を示す図である。第2実施形態のビーコンの送信スケジュールは、4個のスロットオフセットと、5つのチャネルオフセット(チャネル)とを含むスロットフレームの繰り返しにより制御される。複数のノード10のそれぞれは、送信スケジュール内の異なる場所にひとつの送信セル(送信機会)を持つ。送信セルは、スロットオフセットとチャネルオフセットとにより特定される。
【0055】
第2実施形態の各ノード10の無線通信制御部13は、自ノードに割り当てられた送信セルのスロットオフセット番号が、現在のスロットフレーム番号のチャネル数による剰余と一致するとき、ネットワーク広告パケットを送信する。
【0056】
例えば、スロットフレーム0では、0%5=0より、チャネルオフセット0に送信セルを持つノード10c、10g、10i及び10eがネットワーク広告パケットを送信する。また例えば、スロットフレーム7では、7%5=2より、チャネルオフセット2に送信セルを持つノード10m及び10aがネットワーク広告パケットを送信する。
【0057】
第2実施形態の各ノード10の無線通信制御部13は、他ノードにより送信されるネットワーク広告パケットの送信セルを、
図5の送信スケジュールと、現在のスロットフレーム番号のチャネル数による剰余とに基づいて特定し、特定された送信セルで、他ノードにより送信されるネットワーク広告パケットの受信待ちをする。
【0058】
これにより第2実施形態の通信システム100によれば、第1実施形態と同様に、近隣ノードをより迅速に発見することができる。
【0059】
最後に、第1及び第2実施形態のノード10のハードウェア構成の例について説明する。
【0060】
[ハードウェア構成の例]
図6は第1及び第2実施形態のノード10のハードウェア構成の例を示す図である。第1及び第2実施形態のノード10は、制御装置301、主記憶装置302、補助記憶装置303、表示装置304、入力装置305及び通信装置306を備える。制御装置301、主記憶装置302、補助記憶装置303、表示装置304、入力装置305及び通信装置306は、バス310を介して接続されている。
【0061】
制御装置301は、補助記憶装置303から主記憶装置302に読み出されたプログラムを実行する。主記憶装置202は、ROM及びRAM等のメモリである。補助記憶装置303は、HDD(Hard Disk Drive)及びメモリカード等である。
図2及び3の記憶部12は、主記憶装置302及び補助記憶装置303に対応する。
【0062】
表示装置304は、ノード10の状態等を表示する。表示装置304は、例えば液晶ディスプレイ等である。入力装置305は、ノード10を操作するためのインタフェースである。入力装置305は、例えばノード10の筐体に備えられたボタン等である。なお、表示装置304及び入力装置305は、表示機能と入力機能とを有するタッチパネル等により実現されていてもよい。また、ノード10は、表示装置304及び入力装置305を備えていなくてもよい。
【0063】
通信装置306は、他のノード10、及び、外部装置等と通信するためのインタフェースである。
【0064】
第1及び第2実施形態のノード10で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、メモリカード、CD-R及びDVD等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されてコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供される。
【0065】
また第1及び第2実施形態のノード10で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また第1及び第2実施形態のノード10で実行されるプログラムをダウンロードさせずにインターネット等のネットワーク経由で提供するように構成してもよい。
【0066】
また第1及び第2実施形態のノード10のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0067】
第1及び第2実施形態のノード10で実行されるプログラムは、上述した
図2のノード10の機能ブロックのうち、プログラムによっても実現可能な機能ブロックを含むモジュール構成となっている。当該各機能ブロックは、実際のハードウェアとしては、制御装置301が記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、上記各機能ブロックが主記憶装置302上にロードされる。すなわち上記各機能ブロックは主記憶装置302上に生成される。
【0068】
なお上述した
図2の各機能ブロックの一部又は全部をソフトウェアにより実現せずに、IC等のハードウェアにより実現してもよい。
【0069】
また複数のプロセッサを用いて各機能を実現する場合、各プロセッサは、各機能のうち1つを実現してもよいし、各機能のうち2以上を実現してもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10 ノード
11 通信処理部
12 記憶部
13 無線通信制御部
14 対外通信制御部
100 通信システム
111 判定部
112 処理部
113 記憶制御部
200 ネットワーク
301 制御装置
302 主記憶装置
303 補助記憶装置
304 表示装置
305 入力装置
306 通信装置
310 バス