(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】包装箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/54 20060101AFI20231218BHJP
B65D 5/52 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B65D5/54 301H
B65D5/54 C
B65D5/52 K
(21)【出願番号】P 2020126323
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 積弥
(72)【発明者】
【氏名】大谷 昌義
(72)【発明者】
【氏名】橋本 章
(72)【発明者】
【氏名】小作 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 達哉
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋一
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107831(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182472(JP,U)
【文献】特開2011-143966(JP,A)
【文献】特開2017-19547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/54
B65D 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に順次連設された前受板(11)、底面板(12)、後面板(13)、天面板(21)および前面板(22)によって被包装物を包み込む包装箱(1)であって、
前記前受板に切取線(19)を介して連設された切取部(14)と、
前記底面板の第1方向に直交する第2方向の両端に連設された一対の底側板(15)と、
一対の前記底側板を切り込むことで一対の前記底側板から分離され、且つ前記底面板の第2方向の両端に連設された一対の底側片(16)と、
前記後面板の第2方向の両端に連設された一対の後側板(18)と、
前記前面板の第2方向の両端に連設された一対の前側板(24)と、
一対の前記底側板の前記前受板側の側端または前記前受板の第2方向の両端に連設された一対の連結片(17)と、
前記後面板と前記天面板とを分断する分断線(25)と、を備え、
前記前受板、前記切取部、前記底面板、前記後面板、前記底側板、前記底側片、前記後側板および前記連結片は、トレイ部(10)の構成要素であり、
前記天面板、前記前面板および前記前側板は、蓋部(20)の構成要素であり、
前記トレイ部と前記蓋部とが接合されて前記被包装物を包装した包装形態において、前記前受板、前記後面板および一対の前記底側板は前記底面板に対して立設され、各々の前記連結片は前記前受板または前記底側板に対向するように折り曲げられて前記前受板の内面または前記底側板の内面に接着され、各々の前記後側板は前方に折り曲げられて前記底側板の外面に接着され、前記天面板は前記底面板に対向するように折り曲げられ、前記前面板は前記天面板に対して垂設されて前記切取部の外面に接着され、各々の前記前側板は後方に折り曲げられ、各々の前記底側片は前記後側板と前記前側板との下部を包むように上方に折り曲げられて前記後側板の外面に接着されており、
前記天面板が前記分断線に沿って切断されて前記後面板から分離されると共に前記切取部が前記切取線に沿って切断されて前記前面板に接着された状態で前記前受板から分離されることで、前記蓋部が前記トレイ部から分離された展示形態になることを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記包装形態において、各々の前記底側片は、前記後側板に対する接着力よりも弱い接着力で前記前側板の外面に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
各々の前記底側片は、複数の分割片(16A)で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記天面板の第2方向の両端に連設され、前記蓋部の構成要素である一対の天側板(23)を更に備え、
前記包装形態において、各々の前記天側板は、前記天面板に対して垂設され、前記前側板の外面に接着されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装箱。
【請求項5】
前記蓋部には、前記被包装物を露出させるための開口部(27)の輪郭に沿って開口切断線(26)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の包装箱。
【請求項6】
一対の前記連結片は、一対の前記底側板の前記前受板側の側端に連設され、前記前受板の内面に接着する際に前記切取部に干渉しないように切り欠かれていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
前受板、底面板、後面板、天面板および前面板が順次連設され、底面板、後面板、天面板および前面板の両側にそれぞれ底側板、後側板、天側板および前側板が連設された包装展示兼用箱が知られている(特許文献1)。前受板には切目線の内側に切取部が設けられ、後面板と天面板の境界には切目線が入れられていた。前受板、底側板および後面板が底面板に対して起立し、連結片を前受板の内面に接着することで底側板が前受板に連結され、後側板が前方へ折り曲げられて底側板に接着されることで、トレイ部分が形成されていた。天面板が前方へ、前面板が下方へ順次折り曲げられ、天側板が下方に折り曲げられ、前側板が後方に折り曲げられて天側板に接着されることで、蓋部分が形成されていた。また、前面板が前受板の切取部の領域内で接着されることで、トレイ部分と蓋部分とが連結されていた。展示に際しては、天面板を切目線で切断し、切取部を切目線で切断して前面板に貼り付いた状態で前受板から切り取ることで、トレイ部分と蓋部分とに分離されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した包装展示兼用箱では、蓋部分を構成する前面板や前側板は底面板には当接しておらず、基本的に前面板と切取部の接着部のみでトレイ部分に支えられていた。このため、圧縮荷重等の外力によって接着部が剥がれ、意図せず開封されてしまうという問題があった。例えば、包装展示兼用箱に重量物を包装し、作業者が複数の包装展示兼用箱を積み重ねて持ち運んだ場合、下方の包装展示兼用箱は上方の包装展示兼用箱から圧縮荷重を受けるため、下方の包装展示兼用箱の前面板が切取部から剥がれて(または切取部が切目線で切断されて)落ち込む虞があった。また、例えば、包装展示兼用箱を3段以上重ねて保管する場合、2段目の包装展示兼用箱の前面板が圧縮荷重を受けて切取部から剥がれる等して落ち込み、複数の包装展示兼用箱を適切に積み重ねることができなくなる虞もあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、前面板の落ち込みを抑制することができる包装箱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1方向に順次連設された前受板、底面板、後面板、天面板および前面板によって被包装物を包み込む包装箱であって、前記前受板に切取線を介して連設された切取部と、前記底面板の第1方向に直交する第2方向の両端に連設された一対の底側板と、一対の前記底側板を切り込むことで一対の前記底側板から分離され、且つ前記底面板の第2方向の両端に連設された一対の底側片と、前記後面板の第2方向の両端に連設された一対の後側板と、前記前面板の第2方向の両端に連設された一対の前側板と、一対の前記底側板の前記前受板側の側端または前記前受板の第2方向の両端に連設された一対の連結片と、前記後面板と前記天面板とを分断する分断線と、を備え、前記前受板、前記切取部、前記底面板、前記後面板、前記底側板、前記底側片、前記後側板および前記連結片は、トレイ部の構成要素であり、前記天面板、前記前面板および前記前側板は、蓋部の構成要素であり、前記トレイ部と前記蓋部とが接合されて前記被包装物を包装した包装形態において、前記前受板、前記後面板および一対の前記底側板は前記底面板に対して立設され、各々の前記連結片は前記前受板または前記底側板に対向するように折り曲げられて前記前受板の内面または前記底側板の内面に接着され、各々の前記後側板は前方に折り曲げられて前記底側板の外面に接着され、前記天面板は前記底面板に対向するように折り曲げられ、前記前面板は前記天面板に対して垂設されて前記切取部の外面に接着され、各々の前記前側板は後方に折り曲げられ、各々の前記底側片は前記後側板と前記前側板との下部を包むように上方に折り曲げられて前記後側板の外面に接着されており、前記天面板が前記分断線に沿って切断されて前記後面板から分離されると共に前記切取部が前記切取線に沿って切断されて前記前面板に接着された状態で前記前受板から分離されることで、前記蓋部が前記トレイ部から分離された展示形態になる。
【0007】
この場合、前記包装形態において、各々の前記底側片は、前記後側板に対する接着力よりも弱い接着力で前記前側板の外面に接着されてもよい。
【0008】
この場合、各々の前記底側片は、複数の分割片で構成されてもよい。
【0009】
この場合、前記天面板の第2方向の両端に連設され、前記蓋部の構成要素である一対の天側板を更に備え、前記包装形態において、各々の前記天側板は、前記天面板に対して垂設され、前記前側板の外面に接着されてもよい。
【0010】
この場合、前記蓋部には、前記被包装物を露出させるための開口部の輪郭に沿って開口切断線が形成されてもよい。
【0011】
この場合、一対の前記連結片は、一対の前記底側板の前記前受板側の側端に連設され、前記前受板の内面に接着する際に前記切取部に干渉しないように切り欠かれてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前面板の落ち込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装箱を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る包装箱のブランクを示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る包装箱の組立手順を説明する斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る包装箱の開封手順を説明する側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る包装箱のトレイ部を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る包装箱を他の方法で開封した状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態の第2変形例に係る包装箱のブランクを示す平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の第3変形例に係る包装箱のブランクを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、方向や位置を示す用語は、包装箱を組み立てた状態での方向や位置を基準にしている。
【0015】
[包装箱]
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る包装箱1について説明する。
図1は包装箱1を示す斜視図である。
図2は包装箱1のブランク1Aを示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、包装箱1は略直方体状に形成され、包装箱1の内部には複数の被包装物(図示せず)が収容されている。包装箱1は、被包装物を収容した状態で上下に複数積層可能な圧縮強度を備えている。
【0017】
包装箱1は、
図2に示すブランク1Aを組み立てることで形成されている。ブランク1Aは、1枚の紙製の段ボールシートを抜型等で打ち抜いて形成されている。段ボールシートは、例えば、波状の中しん9Aに表ライナ9Bと裏ライナ9C(
図3参照)とを貼り合せた両面段ボールシートである。なお、
図2は、表ライナ9B側を示している。本明細書では、段ボールシートの中しん9Aと平行な方向を「段方向」と呼び、段方向に直交する方向を「流れ方向」と呼ぶこととする。図面に示す「X」は「段方向」を示し、「Y」は「流れ方向」を示している。
【0018】
[ブランク]
図2に示すように、ブランク1Aは、前受板11と、底面板12と、後面板13と、天面板21と、前面板22と、切取部14と、一対の底側板15と、一対の底側片16と、一対の連結片17と、一対の後側板18と、一対の天側板23と、一対の前側板24と、を備えている。なお、一対の底側板15、一対の底側片16、一対の連結片17、一対の後側板18、一対の天側板23および一対の前側板24は、
図2において左右対称に形成されているため、以下の説明では、特に明記した場合を除いて、一方に着目して説明する。
【0019】
<前受板、底面板、後面板、天面板、前面板>
前受板11、底面板12、後面板13、天面板21および前面板22は、段方向(第1方向)に順次連設されている。底面板12と天面板21とは、略同じ大きさとなる略長方形状に形成されている。後面板13と前面板22とは、略同じ大きさで、底面板12等よりも段方向に短い略長方形状に形成されている。前受板11は、後面板13よりも段方向に短い(半分以下)略長方形状に形成されている。前受板11と底面板12との境界、底面板12と後面板13との境界、天面板21と前面板22との境界には、第1折曲線L1が形成されている。後面板13と天面板21との境界には、後面板13と天面板21とを分断する分断線25が形成されている。
【0020】
(分断線)
分断線25は、当該境界の流れ方向の中央領域で当該境界から後面板13に突き出すように形成された分断押込線25Aと、分断押込線25Aの両端から当該境界の両端に向かって延びた一対の分断ジッパー25Bと、を含んでいる。分断押込線25Aは、複数の湾曲した切目を並べてミシン目状に形成されている。分断押込線25Aの両端間には分断折線L11が形成され、分断押込線25Aと分断折線L11とで囲まれた内側領域には分断押込面部25Sが形成されている。一対の分断ジッパー25Bは、複数の略L字状の切目を並べて形成されており、天面板21を流れ方向の中央から両外側に向かって切断する機能を有している。
【0021】
(開口切断線)
天面板21および前面板22には、被包装物を露出させるための開口部27の輪郭に沿って開口切断線26が形成されている。開口切断線26は、天面板21から前面板22にかけて連続して略六角形状に形成されている。開口切断線26は、天面板21と前面板22との境界部が最も幅広くなる略六角形状に形成されている。開口切断線26は、天面板21の略中央に略U字状(略台形状)形成された開口押込線26Aと、開口押込線26Aの両端から流れ方向の両外側に向かって延びた一対の開口ジッパー26Bと、一対の開口ジッパー26Bの両外端を結ぶように天面板21から前面板22に亘って略U字状に形成された開口本体線26Cと、を含んでいる。開口押込線26Aは、複数の湾曲した切目を並べてミシン目状に形成されている。開口押込線26Aの両端間には開口折線L12が形成され、開口押込線26Aと開口折線L12とで囲まれた内側領域には開口押込面部26Sが形成されている。一対の開口ジッパー26Bは、複数の略L字状の切目を並べて形成されており、天面板21を流れ方向の中央から両外側に向かって切断する機能を有している。開口本体線26Cは、複数の切目を並べてミシン目状に形成されている。
【0022】
<切取部>
切取部14は、前受板11に切取線19を介して連設されている。詳細には、切取部14は、前受板11の段方向の先端側に形成された略U字状の切取線19の範囲内に設けられている。切取部14は、前受板11の流れ方向の中間領域において略台形状に形成されている。つまり、前受板11は、切取部14を取り除くと略U字状に形成されることになる。切取線19は、複数の略L字状の切目を並べて形成されたジッパーであって、切取部14を流れ方向の両外側から中央に向かって切断する機能を有している。
【0023】
<底側板>
一対の底側板15は、第2折曲線L2を介して底面板12の流れ方向(第1方向に直交する第2方向)の両端に連設されている。底側板15は略長方形状の外形を有し、底側板15の流れ方向の寸法(延出寸法)は後側板18等の流れ方向の寸法(延出寸法)よりも短く設定されている。
【0024】
<底側片>
一対の底側片16は、一対の底側板15を切り込むことで一対の底側板15から分離され、且つ第3折曲線L3を介して底面板12の流れ方向の両端に連設されている。底側片16は、底側板15の段方向の中間領域において底面板12から流れ方向の外側に突き出すような略台形状に形成されている。底側片16と底側板15との間には、切り込みの一例としての略U字状の分離溝16Gが形成されている。底側片16と底面板12との境界(第3折曲線L3)は、底側板15と底面板12との境界(第2折曲線L2)よりも流れ方向の外側にずれている。換言すれば、底面板12は、分離溝16Gの範囲内において僅かに流れ方向に幅広く形成されている。
【0025】
<連結片>
一対の連結片17は、第4折曲線L4を介して一対の底側板15の前端(前受板11側の側端)に連設されている。連結片17は、略四角形の1つの角部を切り欠いた多角形状に形成されている。詳細は後述するが、一対の連結片17は、前受板11の内面に接着する際に切取部14に干渉しないように切り欠かれている。なお、連結片17が切取部14に干渉しない範囲で前受板11に接着されるのであれば、連結片17を切り欠く必要はない。
【0026】
<後側板、天側板、前側板>
一対の後側板18は、第2折曲線L2を介して後面板13の流れ方向の両端に連設されている。一対の天側板23は、第2折曲線L2を介して天面板21の流れ方向の両端に連設されている。一対の前側板24は、第2折曲線L2を介して前面板22の流れ方向の両端に連設されている。後側板18、天側板23および前側板24はそれぞれ略長方形状に形成され、これらの延出寸法は底面板12の段方向の寸法の略半分に設定されている。なお、天側板23の流れ方向の先端は、基端に向かって僅かに凹むように湾曲している。
【0027】
なお、第1折曲線L1、第2折曲線L2、第4折曲線L4、分断折線L11および開口折線L12は、段ボールシートを裏ライナ9C側から厚み方向に潰した汎用罫線である。また、第3折曲線L3は、汎用罫線上に切目を形成したリード罫線である。汎用罫線およびリード罫線は、裏ライナ9Cを内側に向けるように段ボールシートを折り曲げる(正折りする)機能を有している。なお、第1~第4折曲線L1~L4、分断折線L11および開口折線L12は、汎用罫線やリード罫線に限らず、例えばミシン目等であってもよく、その他、段ボールシートを折り曲げるための線であれば如何なるものでもよい。
【0028】
[包装箱の組立]
次に、
図1ないし
図4を参照して、包装箱1の組立手順の一例について説明する。
図3は包装箱1の組立手順を説明する斜視図である。
図4は
図1のIV-IV断面図である。
なお、包装箱1は、作業者によって手作業で組み立てられてもよいし、製函機(図示せず)によって全自動または半自動で組み立てられてもよい。ここでは、一例として、手作業で包装箱1を組み立てる場合について説明する。
【0029】
包装箱1は、1つのブランク1Aからトレイ部10と蓋部20とを形成し、トレイ部10と蓋部20とを接合することで完成する。上記したブランク1A(
図2参照)において、前受板11、切取部14、底面板12、後面板13、底側板15、底側片16、後側板18および連結片17は、トレイ部10の構成要素であり、天面板21、前面板22、天側板23および前側板24は、蓋部20の構成要素である。
【0030】
また、ブランク1Aには、包装箱1の組み立て時に接着する位置が設定されている。具体的に説明すると、
図2に示すように、トレイ部10を組み立てる際の接着位置は、前受板11と連結片17とに設定された第1接着部31と、底側板15の後部と後側板18の後下部とに設定された第2接着部32と、底側片16の後部と後側板18の前下部とに設定された第5接着部35である。蓋部20を組み立てる際の接着位置は、天側板23の前部と前側板24の上部とに設定された第4接着部34である。また、トレイ部10と蓋部20とを接合(接着)する位置は、切取部14と前面板22の下側(開口切断線26に囲まれた範囲内)とに設定された第3接着部33と、底側片16の前部と前側板24の下部とに設定された第6接着部36である。なお、第6接着部36の周辺には、裏ライナ9C側から段ボールシートの厚みの途中まで切り込んだ略円弧状の半切線37が形成されている。半切線37は、蓋部20をトレイ部10から分離する際に裏ライナ9Cの剥離を中断させるために設けられている。
【0031】
なお、第1~第6接着部31~36に付着させる接着剤は、例えば、ホットメルト接着剤や水性エマルジョン系接着剤等を用いてもよいし、両面テープを用いてもよい。
【0032】
まず、
図3に示すように、作業者は、一対の底側板15を第2折曲線L2に沿って上方に折り曲げて起立させ、一対の連結片17を第4折曲線L4に沿って内向きに折り曲げる。また、作業者は、前受板11を第1折曲線L1に沿って上方に折り曲げて起立させ、前受板11を第1接着部31で一対の連結片17の外面(表ライナ9B)に接着する。続いて、作業者は、後面板13を第1折曲線L1に沿って上方に折り曲げて起立させ、一対の後側板18を第2折曲線L2に沿って前方に折り曲げ、一対の後側板18を第2接着部32で一対の底側板15の外面に接着する。なお、ここでは、一対の底側片16は折り曲げない。
【0033】
以上によって、概ねトレイ部10が形成される。なお、上記の手順では、前受板11を折り曲げて接着した後に、後面板13と後側板18とを折り曲げ、後側板18を接着していたが、これらの手順は逆でもよい。また、被包装物は、概ね形成されたトレイ部10に収容されてもよいし、トレイ部10の形成途中またはブランク1Aの状態において底面板12上または後面板13上に配置されてもよい。
【0034】
次に、
図1(適宜、
図3も参照)に示すように、作業者は、天面板21を分断線25(分断折線L11)に沿って前方に折り曲げ、前面板22を第1折曲線L1に沿って下方に折り曲げ、前面板22を第3接着部33で切取部14の外面に接着する。続いて、作業者は、一対の前側板24を第2折曲線L2に沿って後方に折り曲げる。前側板24は底側板15の外面に重なり、前側板24の後端(自由端)は後側板18の前端(自由端)に突き合わされる。その後、作業者は、一対の天側板23を第2折曲線L2に沿って下方に折り曲げ、一対の天側板23を第4接着部34で前側板24の外面に接着する。
【0035】
以上によって、蓋部20が形成され、蓋部20が第3接着部33を介してトレイ部10に接合される。この状態で、被包装物は、前受板11、底面板12、後面板13、天面板21および前面板22によって包み込まれている。
【0036】
次に、作業者は、一対の底側片16を第3折曲線L3に沿って上方に折り曲げ、一対の底側片16を第5接着部35で一対の後側板18の外面に接着し、且つ第6接着部36で一対の前側板24の外面に接着する。
【0037】
以上によって、トレイ部10が完成し、トレイ部10と蓋部20とが接合されて被包装物を包装した包装形態になる。つまり、包装箱1が完成する。
【0038】
図1に示すように、包装形態において、前受板11、後面板13および一対の底側板15は底面板12に対して立設され、各々の連結片17は前受板11に対向するように折り曲げられて前受板11の内面に接着され、各々の後側板18は前方に折り曲げられて底側板15の外面に接着されている。また、包装形態において、天面板21は底面板12に対向するように折り曲げられ、前面板22は天面板21に対して垂設されて切取部14の外面に接着され、各々の前側板24は後方に折り曲げられ、各々の天側板23は、天面板21に対して垂設されて前側板24の外面に接着されている。さらに、
図1および
図4に示すように、包装形態において、各々の底側片16は後側板18と前側板24との下部を包むように上方に折り曲げられて後側板18と前側板24との外面に接着されている。すなわち、後側板18と前側板24とは底側板15と底側片16との間に挟まれ、後側板18と前側板24との突き合せ付近の下端は底面板12に当接している(支持されている)。なお、包装形態において、前面板22に形成された開口切断線26(開口本体線26C)の下縁は、切取線19と略一致している(
図1参照)。また、包装形態において、底側片16に形成された半切線37と前側板24に形成された半切線37とは、第6接着部36を挟んで上下に配置されている(
図1参照)。
【0039】
なお、上記した包装箱1の組立手順は一例であり、当該組立手順は矛盾のない範囲で変更されてもよい。
【0040】
完成した包装箱1は、複数段積み重ねた状態で運搬されたり保管されたりするため、下方に配置された包装箱1には上方に配置された包装箱1から圧縮荷重を受ける。したがって、包装箱1自体に圧縮荷重に耐え得る圧縮強度が必要になる。例えば、変形し易い被包装物を包装する場合、包装箱1の圧縮強度を確保することが重要になる。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る包装箱1では、底側板15を切り込むことで底側片16が形成され、後側板18と前側板24との下部が底側板15と底側片16との間に挟まれる構成とした。この構成によれば、前面板22に連設された前側板24の下端が底面板12(底側片16の根本部分)に当接するため(
図1および
図4参照)、前面板22に作用した圧縮荷重を底面板12で受けることができる。これにより、前面板22が一対の前側板24を介して底面板12に支持されるため、圧縮荷重を受けた際の前面板22の落ち込みを抑制することができる。
【0042】
[包装箱の開封]
次に、
図5および
図6を参照して、包装箱1の開封手順の一例について説明する。
図5は包装箱1の開封手順を説明する側面図である。
図6はトレイ部10を示す斜視図である。
【0043】
まず、作業者は、後面板13の上部に配置された分断押込面部25S(
図1参照)を押し込んで分断押込線25Aに沿って切断し、分断押込面部25Sを押し込んだ手で天面板21の後端部を把持し、天面板21を前方(斜め上前方)に引っ張る(
図5の矢印参照)。すると、天面板21は、一対の分断ジッパー25B(分断線25)に沿って切断されて後面板13から分離される。
【0044】
図5に示すように、作業者が更に天面板21を引っ張ると、切取部14は、切取線19に沿って切断されて前面板22に接着された状態で前受板11から分離される。また、各々の前側板24は、第6接着部36を剥がしながら底側片16から分離される。この際、前側板24の表ライナ9Bまたは底側片16の裏ライナ9Cが剥離することがあるが、第6接着部36の周りに形成された半切線37によって剥離したライナ9B,9Cが切断されるため、ライナ9B,9Cの剥離の進行を遮断することができる。
【0045】
以上によって、蓋部20がトレイ部10から分離された展示形態になる(
図6参照)。つまり、包装箱1が開封される。蓋部20はトレイ部10から除去され、トレイ部10は被包装物を収容した状態で店頭等に展示(陳列)される。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る包装箱1では、トレイ部10と蓋部20が1枚のブランク1Aから構成され、トレイ部10と蓋部20との前方下部の一部を接着するだけで、トレイ部10と蓋部20とが接合される構成とした。この構成によれば、天面板21を分断線25に沿って切断し、蓋部20を手前に引くことで、蓋部20をトレイ部10から簡単に分離することができる。また、展示形態(
図6参照)では、前受板11が被包装物の前方へのこぼれ出しを抑制し、被包装物を後面板13にもたれさせて安定した状態で展示することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る包装箱1では、包装形態において底側片16が前側板24の外面に接着されているため、トレイ部10から蓋部20を分離した状態(展示形態)で、第6接着部36を剥がした跡は底側片16の内面に残される(
図6参照)。これにより、第6接着部36の跡がトレイ部10の表側に表れないため、良好な外観を維持したトレイ部10を展示(陳列)することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る包装箱1によれば、各々の天側板23が、天面板21に対して垂設され、前側板24の外面に接着されるため、トレイ部10から蓋部20を分離する過程において蓋部20の立体形状を保つことができる(
図5参照)。これにより、天面板21の後部を手前に回動させる力を前面板22に伝えることができ、蓋部20をワンアクションでトレイ部10から分離することができる。
【0049】
[包装箱の他の開封方法]
次に、
図7を参照して、包装箱1の他の開封方法について説明する。
図7は包装箱1を他の方法で開封した状態を示す斜視図である。
【0050】
本実施形態に係る包装箱1では、包装形態を維持したまま開封するための開口切断線26が蓋部20(天面板21、前面板22)に形成されている。作業者は、天面板21に配置された開口押込面部26S(
図1参照)を押し込んで開口押込線26Aに沿って切断し、開口押込面部26Sを押し込んだ手で天面板21の前側を把持し、天面板21を前方に引っ張る。すると、天面板21は、一対の開口ジッパー26Bに沿って切断された後、開口本体線26Cに沿って切断される。さらに、作業者は、切断した天面板21を斜め下前方に引っ張り、前面板22を開口本体線26Cに沿って切断し、開口切断線26で囲まれた領域を除去する。この際、切取部14は、切取線19に沿って切断され、開口切断線26で囲まれた領域に接着された状態で前受板11から分離される。
【0051】
以上によって、天面板21から前面板22にかけて被包装物を露出させるための開口部27が開口する。つまり、包装箱1は包装形態を維持したまま開封される。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る包装箱1によれば、開口切断線26に沿って蓋部20を切断し、開口部27を開口させることで、蓋部20をトレイ部10から分離させることなく、包装箱1に収容された被包装物を取り出すことができる。また、開口部27を開口させた包装箱1を複数段重ねて展示(陳列)することもできる。
【0053】
[第1変形例]
なお、本実施形態に係る包装箱1では、底側片16と前側板24(第6接着部36)を、他の接着部31~35と同様に(略同じ接着力で)接着していたが、本発明はこれに限定されない。第1変形例に係る包装箱1として、例えば、包装形態において、各々の底側片16は、後側板18に対する接着力よりも弱い接着力で前側板24の外面に接着されてもよい。接着力を弱くする方法としては、例えば、第5接着部35に塗布する接着剤の量よりも第6接着部36に塗布する接着剤の量を少なく(接着面積を小さく)してもよいし、底側片16と前側板24の少なくとも一方の第6接着部36を含む範囲に接着し難くなる加工(ニスの塗布や樹脂シートの貼付等)を施して接着剤の接着力を弱めてもよい(図示せず)。この構成によれば、底側片16が弱い接着力で前側板24の外面に接着されているため、容易に前側板24を底側片16から剥がすことができる。これにより、小さな力で簡単に包装箱1を開封する(展示形態にする)ことができる。なお、第6接着部36を省略し、底側片16と前側板24は接着されなくてもよい。また、半切線37は省略されてもよい(図示せず)。
【0054】
[第2変形例]
また、本実施形態(第1変形例を含む。)に係る包装箱1では、一対の連結片17が一対の底側板15の前端(前受板11側の側端)に連設されていたが(
図2参照)、本発明はこれに限定されない。第2変形例に係る包装箱1として、
図8に示すように、一対の連結片17は、第4折曲線L4を介して前受板11の左右方向(第2方向)の両端に連設されてもよい。この場合、各々の連結片17は、後方(底側板15に対向するよう)に折り曲げられて底側板15の内面に接着される。また、この場合には、一対の連結片17の先端側の切り欠きは不要になる。
【0055】
[第3変形例]
また、本実施形態(第1~第2変形例を含む。)に係る包装箱1では、底側片16が1つの片状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。第3変形例に係る包装箱1として、
図9に示すように、各々の底側片16は、2つの分割片16Aで構成されてもよい。この場合、後方の分割片16Aは第5接着部35で後側板18に接着され、前方の分割片16Aは第6接着部36で前側板24に接着されてもよい(図示せず)。他にも、前方の分割片16Aが後側板18と前側板24との突き合せ部を跨ぐように底側片16を分割し、前後2つの分割片16Aが後側板18に接着されてもよい(図示せず)。なお、底側片16は、3つ以上の分割片16Aで構成されてもよい(図示せず)。
【0056】
[他の変形例]
なお、本実施形態(第1~第3変形例を含む。以下同じ。)に係る包装箱1では、切取部14が前受板11の先端側に埋め込まれるように設けられていたが、本発明はこれに限定されない。切取部14および前受板11を長方形状に形成し、切取部14が前受板11の先端に一直線状の切取線19を介して連設されてもよい(図示せず)。他にも、切取線19が前受板11の中央領域に閉じた環状に形成され、切取部14が環状の切取線19の内側領域に設けられてもよい(図示せず)。また、本実施形態に係る包装箱1では、切取線19がジッパーで構成されていたが、これに限らず、例えば、ミシン目や段ボールシートを厚み方向に半分程度切断した半切線等、段ボールシートを切断するための線であれば如何なるものでもよい。
【0057】
また、本実施形態に係る包装箱1では、底側板15に分離溝16Gを切り込むことで底側片16が形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、分離溝16Gに代えて、略U字状の切目やミシン目であってもよい。また、底側片16の形状は、略台形状に限らず、後側板18と前側板24との下端を支持することができる形状および大きさに形成されていればよい。
【0058】
また、本実施形態に係る包装箱1では、一対の天側板23が天面板21に連設されていたが、一対の天側板23は省略されてもよい(図示せず)。この場合、一対の底側板15が天面板21に達するように延設されてもよい(図示せず)。また、本実施形態に係る包装箱1では、天側板23が前側板24に接着されていたが、これに限らず、天側板23が前側板24に接着されなくてもよい。
【0059】
また、本実施形態に係る包装箱1では、分断線25がミシン目とジッパーとで構成されていたが、これに限らず、例えば、半切線等、段ボールシートを切断するための線であれば如何なるものでもよい。また、分断押込面部25S(分断押込線25A)は、後面板13に形成されていたが、これに限らず、天面板21に形成されてもよい(図示せず)。また、分断押込面部25S(分断押込線25A、分断折線L11)は省略されてもよい(図示せず)。
【0060】
また、本実施形態に係る包装箱1では、開口切断線26がミシン目とジッパーとで構成されていたが、これに限らず、例えば、半切線等、段ボールシートを切断するための線であれば如何なるものでもよい。また、本実施形態に係る包装箱1では、開口切断線26が天面板21から前面板22にかけて形成されていたが、本発明はこれに限定されない。開口切断線26は、天面板21のみに形成されてもよいし、前面板22のみに形成されてもよい(図示せず)。また、開口押込面部26Sは、天面板21に形成されていたが、これに限らず、前面板22に形成されてもよい(図示せず)。また、開口押込面部26S(開口押込線26A)は、開口本体線26Cの外側に向かって凸状に形成されていたが、これに限らず、開口本体線26C(開口部27)の内側に向かって凸状に形成されてもよい(図示せず)。また、開口切断線26は省略されてもよい(図示せず)。
【0061】
また、本実施形態に係る包装箱1は、略直方体状に形成されていたが、これに限らず、直方体の角稜線部に隅切面を設けてもよい(図示せず)。つまり、包装箱1は、平面または側面から見て六角形や八角形等の多角形を形成してもよい。
【0062】
また、本実施形態に係る包装箱1は、紙製の両面段ボールシートで形成されていたが、これに限らず、片面段ボールシートや複両面段ボールシート、または厚紙、若しくは樹脂製の板(シート)等で形成されていてもよい。また、包装箱1の各部の寸法(幅、奥行き、高さ)や形状、段ボールシートの厚みや中しん9Aが延びる方向等は自由に変更してもよい。
【0063】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る包装箱における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0064】
1 包装箱
10 トレイ部
11 前受板
12 底面板
13 後面板
14 切取部
15 底側板
16 底側片
16A 分割片
17 連結片
18 後側板
19 切取線
20 蓋部
21 天面板
22 前面板
23 天側板
24 前側板
25 分断線
26 開口切断線
27 開口部