(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20231218BHJP
A01F 12/46 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A01D41/12 H
A01F12/46
(21)【出願番号】P 2020126841
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山根 達也
(72)【発明者】
【氏名】古井 利武
(72)【発明者】
【氏名】松本 大
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-021968(JP,A)
【文献】特開2015-119680(JP,A)
【文献】特開2013-231443(JP,A)
【文献】特開2019-062777(JP,A)
【文献】特開2017-074027(JP,A)
【文献】特開2018-117572(JP,A)
【文献】特開2019-216691(JP,A)
【文献】特開2018-102176(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0026409(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/12
A01F 12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
前記排気管の終端部を穀粒排出オーガの収納時における受け体のステーに取付座を介して取付けて設けることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自脱型や汎用型のコンバインに係り、詳しくは、機体の各部を駆動するディーゼルエンジンに排気ガス後処理装置を設けるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用の作業車輌であるコンバインは、機体フレームにディーゼルエンジンを、そのクランクシャフトが左右方向を向くように横置きして搭載し、走行装置や刈取部や脱穀部等の機体各部を駆動する動力源としている。また、このエンジンはクーリングファンの前方にラジエータを併設し、ラジエータはエンジンの冷却水を冷却する。さらに、エンジンの上方にはエアクリーナを設け、エアクリーナはエンジンに清浄な空気を供給する。
【0003】
そして、このエンジンは、その排気ガス中に含まれる有害な粒子状物質をディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を用いて除去し、或いは有害な窒素酸化物を尿素選択触媒還元(SCR)等の排気ガス後処理装置を用いて除去する。そのため、コンバインはエンジンとともに排気ガス後処理装置を適切な位置に設けながら、機体の大型化を出来る限り避けてコンパクトに纏める必要がある。
【0004】
そこで、粒子状物質除去装置と窒素酸化物浄化装置の両方又はいずれか一方が、エンジンの上方で、且つ運転座席と穀粒タンクとの間の空間に配置することで、粒子状物質除去装置や窒素酸化物浄化装置を脱穀部から離し、脱穀部から発生する藁屑が粒子状物質除去装置や窒素酸化物浄化装置に堆積することを抑制して、粒子状物質除去装置や窒素酸化物浄化装置の熱で藁屑が熱せられる可能性を低減する。
【0005】
また、粒子状物質除去装置と窒素酸化物浄化装置の両方が車幅方向に沿う横向きで、且つ上下に並列する姿勢で配置し、粒子状物質除去装置と窒素酸化物浄化装置をコンパクトに配置し、運転座席と穀粒タンクとの間の空間を有効利用する。さらに、粒子状物質除去装置や窒素酸化物浄化装置が配置される空間が、エンジンを収容するエンジンルームに連通し、エンジンルームに導入されるエンジン冷却風を利用して粒子状物質除去装置や窒素酸化物浄化装置の周囲温度を下げる。
【0006】
そして、エンジンの吸気を浄化するエアクリーナが、運転座席と穀粒タンクとの間の空間において粒子状物質除去装置又は窒素酸化物浄化装置よりも運転座席側に配置し、運転座席から粒子状物質除去装置や窒素酸化物浄化装置を離し、粒子状物質除去装置や窒素酸化物浄化装置の熱による作業環境の低下を抑制する、といった技術を既に発案している(特許文献1参照)。
【0007】
また、ディーゼルエンジンと脱穀装置との間で、ディーゼルパティキュレートフィルタから上方に向けて排気管を延長させて、NOx触媒が内蔵可能なマフラーを、排気管の延長途中に配置し、ディーゼルパティキュレートフィルタやマフラーの放熱によって、刈取装置の穂先搬送側や脱穀装置の扱口を加温でき、湿材等の収穫作業性を向上でき、また、必要に応じてマフラーにNOx触媒を内蔵することによって、排気ガスの浄化機能を簡単に向上させる、ことが先行技術として開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
さらに、エンジンの排ガスを浄化処理する排ガス処理装置が、運転部の機体後方側に位置する状態で備えられ、処理後の排ガスを外部に排出する排気管が、脱穀装置と穀粒タンクとの間において、排気口が脱穀装置の上端よりも上方に位置するように上方に向けて延設され、排気管の上端部に排気口が形成され、その排気管の上端部が脱穀装置側に向けて延設されている、ことが先行技術として開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-216884号公報
【文献】特開2010-22244号公報
【文献】特開2017-38576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のようにコンバインでは、機体の各部を駆動するディーゼルエンジンとともに、その排気ガス中に含まれる有害な粒子状物質をディーゼル酸化触媒とディーゼル微粒子捕集フィルターを用いて除去し、或いは有害な窒素酸化物を尿素選択触媒還元等を用いて浄化するといった排気ガス後処理装置を設ける。
【0011】
そして、この場合、特許文献1に記載されているように粒子状物質除去装置と窒素酸化物浄化装置の両方又はいずれか一方を、エンジンの上方で且つ運転座席と穀粒タンクとの間の空間に配置すると、エンジンとともに排気ガス後処理装置を適切な位置に設けながら、機体の大型化を出来る限り避けてコンパクトに纏めることができる。
【0012】
しかし、このコンバインでは、排気ガス後処理装置の排気出口に接続するテールパイプを、排気ガス後処理装置の排気出口から上方斜め後方に延出するとともに、先端側が穀粒タンクの機体外方側の上面に沿って後方を向くように設ける。また、エアクリーナとともにエンジンに清浄な空気を供給するプレクリーナをエアクリーナの後方上方に設け、その設置位置はテールパイプの排気出口よりも低い位置となし、テールパイプの排気出口から排出される排気ガスがプレクリーナに吸入される可能性を低減する。
【0013】
然しながら、この場合、テールパイプとプレクリーナは互いに近接し、例えテールパイプから排出される排気ガスがプレクリーナに吸入されず、また、テールパイプを覆うカバー部材を設けてエンジンルームに導入されたエンジン冷却風でテールパイプを冷却したとしても、その冷却風自体やカバー部材の発熱によってテールパイプの周辺温度は高くなり、この高温となるテールパイプ周辺の外気をプレクリーナが吸い込むとエンジンに悪影響を及ぼす虞がある。また、プレクリーナは藁屑等の塵埃の吸い込みを極力無くすためにより高い高所に設けることが要望される。
【0014】
さらに、テールパイプは排気ガス後処理装置の排気出口から上方斜め後方に延出し、その先端側が穀粒タンクの機体外方側の上面に沿って後方を向くように設ける。従って、このようにテールパイプの先端側(終端部)を水平になすとテールパイプの排気出口からの雨水の侵入を一応防ぐことができる。しかし、コンバインの清掃にあって洗車水の誤った侵入を防ぐまでには至らず、仮にテールパイプの排気出口から洗車水が侵入すると、その侵入方向から見て下り傾斜となるテールパイプに沿って洗車水が排気ガス後処理装置に入り、この後処理装置に悪影響を及ぼしたり、排気通路が閉ざされてエンジンの始動が困難となる虞がある。
【0015】
そこで、先ずエンジン吸気系への悪影響を無くすべくプレクリーナと排気ガス後処理装置の排気位置を離すことを念頭に、穀粒タンクと脱穀部との間に生ずる空間を用いて係る空間に排気ガス後処理装置の排気管の終端部を設け、また、その排気管の排気口から機体の後方に向けて排気するように企てる。そして、係る位置に排気管を設ける技術として既に特許文献2や特許文献3が知られている。
【0016】
しかし、その内、特許文献2では、テールパイプの前端側を上向きとして設け、また、脱穀装置の上面よりも高所でテールパイプの後端側を後方に向けて延長させる。そして、グレンタンクの左側でグレンタンクから離れる方向に向けてテールパイプの後端側を開口させており、雨水は疎か洗車水の排気管内への侵入防止策については格別採られていない。一方、特許文献3では、排気管の上端部を脱穀装置側に向けて延設し、排気管の上端部に形成される排気口を脱穀装置側に向けて開口させる。
【0017】
また、排気口は上縁が下縁よりも穀粒タンクから離れる側に突出する形状に形成し、雨水が降りかかっても、雨水が排気口の上縁によって受止められ、排気口の内部に入り込むことを回避して、排気管の内部に雨水が侵入するおそれが少ないものとしている。しかし、これだけでは洗車水の排気管内への誤侵入を防止する対策としては不十分である。
【0018】
そこで、本発明は、前述のような問題点に鑑み、ディーゼルエンジンとともに排気ガス後処理装置を設け、この排気ガス後処理装置の出口管に連結する排気管の排気口を機体上に設ける際に、雨水や洗車水が排気口から排気管内に侵入し、これらの水が排気ガス後処理装置等に悪影響を及ぼさないように事前の対策を施すコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のコンバインは、係る課題を解決するため第1に、機体の各部を駆動するディーゼルエンジンと、このエンジンに清浄な空気を供給するエアクリーナやエンジンの排気ガス後処理装置をカバーにより覆ってエンジンルームを構成すると共に、前記排気ガス後処理装置の排気管を、その中間部からエンジンルーム外の外気にさらしながら下り傾斜させて、エンジンルームの後方に設けるグレンタンクの内側壁の上部寄り外側方まで延ばし、その排気口から機体後方に向けて排気することを特徴とする。
【0020】
本発明のコンバインは第2に、前記排気ガス後処理装置を第1と第2の排気ガス後処理装置で構成して、何れの排気ガス後処理装置のケースもその長手方向を横向きとしてエンジンの上方に設けると共に、前記エンジンの排気口から第1排気ガス後処理装置のケース、並びに第1排気ガス後処理装置のケースから第2排気ガス後処理装置のケースに接続管を介して排気ガスを機体内方寄りから導き、また、第2排気ガス後処理装置のケースの機体外方寄りに設ける出口管に排気管のテール管を連結し、更にこのテール管に排気管のディフューザー管の大径となす始端部を嵌合させて、この嵌合部の隙間からディフューザー管内にクーリングファンが起こした冷却風を取り込むことを特徴とする。
【0021】
本発明のコンバインは第3に、前記排気管を機体外方寄りに設ける始端部から機体内方寄りに至る間に徐々に後方を向くようにその向きを変えながらグレンタンクの内側壁の上部寄り外側方まで延ばして設けることを特徴とする。また、本発明のコンバインは第4に、前記排気管の排気口を備える終端部を水平乃至僅かに下り傾斜させて、その排気口から機体後方に向けて略水平に排気することを特徴とする。
【0022】
本発明のコンバインは第5に、前記エンジンルーム外の外気にさらして設ける排気管の終端部寄りをグレンタンクに備える穀粒排出オーガの収納姿勢における下方となるように設け、屋外雨除けシートで機体を覆う際に係るシートが穀粒排出オーガに遮られて排気管に触れないようになすことを特徴とする。また、本発明のコンバインは第6に、前記排気管の終端部を穀粒排出オーガの収納時における受け体のステーに取付座を介して取付けて設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のコンバインによれば、機体の各部を駆動するディーゼルエンジンと、このエンジンに清浄な空気を供給するエアクリーナやエンジンの排気ガス後処理装置をカバーにより覆ってエンジンルームを構成すると共に、前記排気ガス後処理装置の排気管を、その中間部からエンジンルーム外の外気にさらしながら下り傾斜させて、エンジンルームの後方に設けるグレンタンクの内側壁の上部寄り外側方まで延ばし、その排気口から機体後方に向けて排気する。
【0024】
そのため、排気ガスの通過によって高温となる排気ガス後処理装置を、エンジンやエアクリーナとともにカバーで覆うエンジンルーム内に設けることで、排気ガス後処理装置への藁屑等の堆積を防止することができる。また、排気ガス後処理装置の排気管をグレンタンクの内側壁の上部寄り外側方まで延ばすから、藁屑等の浮遊が少ない高所に排気管を設けることができ、しかも、作業走行に伴って排気管上に落下する藁屑等は排気管上から振り落とされるから、排気管にカバー等を設けて藁屑等の堆積を防止するといった対策が不要となる。
【0025】
そして、雨水や洗車水が仮に誤って排気口から排気管内に侵入しても、排気管の下り傾斜によって排気ガス後処理装置やエンジンルーム内へのそれ以上の水の侵入を阻止することができる。また、ひとたび排気管内に侵入した雨水や洗車水はその下り傾斜によって排気口から即座に流出させることができて、排気管内に何時までも留まらないから排気管の錆の発生を抑えて長きにわたって排気管としての機能を維持させることができる。
【0026】
また、本発明のコンバインによれば、排気ガス後処理装置を第1と第2の排気ガス後処理装置で構成して、何れの排気ガス後処理装置のケースもその長手方向を横向きとしてエンジンの上方に設けると共に、前記エンジンの排気口から第1排気ガス後処理装置のケース、並びに第1排気ガス後処理装置のケースから第2排気ガス後処理装置のケースに接続管を介して排気ガスを機体内方寄りから導き、また、第2排気ガス後処理装置のケースの機体外方寄りに設ける出口管に排気管のテール管を連結し、更にこのテール管に排気管のディフューザー管の大径となす始端部を嵌合させて、この嵌合部の隙間からディフューザー管内にクーリングファンが起こした冷却風を取り込む。
【0027】
そのため、第1と第2の排気ガス後処理装置を横向きとしてエンジンの上方に設けて、エンジンルームをコンパクトに纏めることができる。また、エンジンの排気口から第1排気ガス後処理装置のケース、並びに第1排気ガス後処理装置のケースから第2排気ガス後処理装置のケースに接続管を介して排気ガスを機体内方寄りから導くことによって、エンジンの排気口から排出される排気ガスの温度をあまり低下させずに第1排気ガス後処理装置のケースに導くことができ、排気ガス後処理装置の機能を十分に発揮させることができる。
【0028】
さらに、第1排気ガス後処理装置のケースの機体外方寄りに設ける出口管から接続管を介して取り回しよく第2排気ガス後処理装置のケースに機体内方寄りから排気ガスを導き、そして、この間にクーリングファンの冷却風によって排気ガス後処理装置のケースや接続管から熱を奪うことができるから、これ等の温度を下げることができる。
【0029】
そして、第2排気ガス後処理装置のケースの機体外方寄りに設ける出口管に排気管のテール管を連結し、更にこのテール管に排気管のディフューザー管の大径となす始端部を嵌合させて、この嵌合部の隙間からディフューザー管内にクーリングファンが起こした冷却風を取り込むと、排気ガスの温度を下げることができると共に、背圧を大気圧近くまで下げてエンジンの性能に悪影響を及ぼさないようにすることができる。なお、この場合にテール管とディフューザー管の始端部は排気ガス後処理装置の出口管とともにエンジンルーム内に設けるので、上述の嵌合部の隙間に藁屑等が吸引されることはなく、そのため、当該箇所に藁屑等の吸引を防止するカバー等を設ける必要はない。
【0030】
また、本発明のコンバインによれば、排気管を機体外方寄りに設ける始端部から機体内方寄りに至る間に徐々に後方を向くようにその向きを変えながらグレンタンクの内側壁の上部寄り外側方まで延ばして設ける。そのため、排気管の中間部から排気口を備える終端部に至る下り傾斜に合わせて、排気管の始端部の機体内方へ向きから終端部の機体の後方への向きの変更によって排気口から侵入した雨水や洗車水の流れに抵抗を与えて、排気ガス後処理装置やエンジンルーム内への水の侵入を阻止することができる。
【0031】
なお、係る排気管を機体外方寄りに設ける始端部から機体内方寄りに至る間に徐々に後方を向くように変更することによって、排気管のグレンタンクとの干渉を避けることができる。また、機体の左右方向に排気管路をとることによって、この間で排気管の温度をクーリングファンの冷却風によって下げることができ、これにより排気管60の前後方向の排気管路を逆に短縮して、周辺装置への影響や排気管への藁屑の堆積の機会を減らすことができる。
【0032】
また、本発明のコンバインによれば、排気管の排気口を備える終端部を水平乃至僅かに下り傾斜させて、その排気口から機体後方に向けて略水平に排気する。そのため、雨水や洗車水の排気口からの流出機能を維持しながら、排気ガスの下方へ向かう排気を防いで周辺装置への熱的影響を減らし、また、機体各部のメンテナンス時における人体への影響も少ない機体後方に向けて略水平に排気ガスを排気して拡散させることができる。
【0033】
さらに、本発明のコンバインによれば、エンジンルーム外の外気にさらして設ける排気管の終端部寄りをグレンタンクに備える穀粒排出オーガの収納姿勢における下方となるように設け、屋外雨除けシートで機体を覆う際に係るシートが穀粒排出オーガに遮られて排気管に触れないようになす。そのため、エンジンを切ってすぐに屋外雨除けシート(機械シート)を掛けてコンバインを駐車させても、排気管の上方に設ける穀粒排出オーガがガードの役割を果たして、高温となっている排気管にシートが触れて穴が開く等の問題を解消することができる。
【0034】
そして、本発明のコンバインによれば、排気管の終端部を穀粒排出オーガの収納時における受け体のステーに取付座を介して取付けて設ける。そのため、排気管の終端部を穀粒排出オーガの収納時における受け体のステーを利用して固定することができるため、排気管を堅牢にステーの側方に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明を適用するコンバインの平面図である。
【
図5】エンジンルームにおける機器の配置状態を示す右側面図である。
【
図7】同じく一部のカバーを取外した背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至
図5に示すように稲や麦を刈取って穀粒を収穫する6条刈りの自脱型コンバイン1は、略矩形状に枠組みする機体フレーム(機体)2の下方に走行フレーム3を介して左右のクローラ走行装置4を設ける。なお、左右のクローラ走行装置4は、トランスミッションケース5の左右から延出する駆動軸に取付ける駆動スプロケット6と、走行フレーム3に軸支するアイドルホイール7及びトラックローラ8と、これらに巻回するゴムクローラ9を備える。
【0037】
また、機体フレーム2の機体前進方向の右側前部には、略直方体状に枠組みする運転フレーム10を一体的に連結し、この運転フレーム10及びその後方のエンジンルームAの前部寄り上方にかけて操縦部11を設ける。なお、操縦部11はフロア12の後方に運転席13を設け、また、フロア12の前部にはフロントコンソール(前部操作盤)14を、フロア12と運転席13の左側にはサイドコンソール(側部操作盤)15を設け、さらに、キャビン16で操縦部11を覆っている。
【0038】
また、機体フレーム2の左側前部から操縦部11の前方にかけて刈取部17を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。そして、刈取部17は、その前端下部に設ける分草体18とナローガイド19によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の分草体18の間に入った刈取穀稈を引起爪を備える引起装置20によって引起し、その後、突起付き掻込ベルトとスターホイール21で構成する掻込装置で寄せ集めながら穀稈の株元をレシプロ方式の刈刃装置22によって切断する。
【0039】
さらに、刈刃装置22によって切断して刈取った穀稈は、掻込装置のスターホイール21で後方に送り、また、後方に送った穀稈は左右と中央に設ける株元搬送装置に引き継がせて更に後方に向けて搬送する。そして、中央に設ける株元搬送装置の終端部は右株元搬送装置の搬送経路の中途に設ける合流部に臨み、この中株元搬送装置によって搬送した穀稈は、中途の合流部において右株元搬送装置によって搬送してきた穀稈と合流し、以後、右株元搬送装置に引き継がれる。
【0040】
一方、左側に設ける株元搬送装置の終端部は右株元搬送装置の搬送経路の終端部に臨み、この左株元搬送装置によって搬送した穀稈は、右株元搬送装置によって搬送してきた穀稈と、両搬送装置の終端部となる合流部において合流する。また、合流した穀稈は、その始端部を両合流部に臨ませる扱深さ搬送装置23に引き継がせ、更に後上方に向けて搬送する。
【0041】
そして、扱深さ搬送装置23に引き継がせた穀稈は、扱深さ搬送装置23の終端部から補助搬送装置を介して脱穀フイードチェーン24に引き継がせる。なお、ここまで主に穀稈の株元側の搬送経路について説明したが、穀稈の穂先側は右株元搬送装置と扱深さ搬送装置23、及び補助搬送装置の上方側に設ける穂先搬送装置25と、左株元搬送装置及び中株元搬送装置の上方側に設ける左掻込搬送装置と中掻込搬送装置の各搬送チェーンに取付ける搬送爪に係止して搬送する。
【0042】
また、脱穀部26は、刈取部17後方の機体フレーム2の左側に設け、脱穀装置の上方を覆うシリンダーカバー27の下方に第1と第2の扱室を設ける。この内、第1扱室には刈取部17から搬送してきた穀稈を扱口に沿って搬送する脱穀フイードチェーン24とその挟持レール28、扱歯を備える第1扱胴とその受網等を設ける。また、第2扱室は第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かうように第1扱室に併設し、第1扱室で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する第2扱胴とその受網を設ける。
【0043】
一方、第1と第2の扱室の下方には選別室を設ける。この選別室には揺動運動する揺動流板、1番螺旋及び2番螺旋、唐箕ファン及び吸引ファン等を設け、扱室の受網より漏下した穀粒等を揺動流板上において選別し、選別した穀粒は1番螺旋から揚穀装置29を介してグレンタンク(穀粒タンク)30に移送し、藁屑等が混じった2番物は2番螺旋から2番還元装置を介して揺動流板上に戻す。
【0044】
また、揺動流板の終端に至った藁屑、吸引ファンに捕足された藁屑、或いは第2扱胴の終端から排出された藁屑は、脱穀部26後方の機外に排出する。さらに、脱穀処理を完了して扱室から排出する排稈は、排藁搬送装置31によってディスク型カッター32に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター32は、排藁搬送装置31で搬送してきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0045】
そして、前記グレンタンク30は、操縦部11の後方に設けるディーゼルエンジン33等から構成する原動部34のさらに後方に設け、揚穀装置29によって移送してきた穀粒を一時的に貯留する。また、グレンタンク30内に穀粒が満杯になると、グレンタンク30から穀粒を排出して機外のコンテナ等に放出すべく穀粒排出オーガ35を作動させる。
【0046】
なお、穀粒排出オーガ35は、グレンタンク30の底部に設ける横螺旋と縦螺旋を内装する縦パイプを備え、この縦パイプはグレンタンク30の後方にオーガ旋回モータによって回動可能に立設する第1縦パイプ36と、第1縦パイプ36の上部にギヤケース37を介して油圧シリンダ38によって昇降可能になす第2縦パイプ39によって構成する。そして、穀粒排出オーガ35の縦パイプ36、39は、図示する機体への収納姿勢から機体後方への穀粒排出姿勢に変更することができる。
【0047】
以上、コンバイン1の概要について説明したが、次に、操縦部11の後部寄り下方からグレンタンク30の前方にかけて設ける原動部34についてより詳細に説明すると、
図5乃至
図7に示すように運転フレーム10後方の機体フレーム2に、前述のディーゼルエンジン(エンジン)33をそのクランクシャフトが機体の左右方向となるように横置きとして防振ゴム40を介して搭載する。そして、このエンジン33はコンバイン1の各部を駆動する出力プーリ41を機体の内方側に設け、クーリングファン42を機体の外方側に設ける。
【0048】
また、このエンジン33は、排気ガス規制に対応するために、サプライポンプで高圧にした燃料をレール(蓄圧室)内に蓄え、ECU制御のもとにタイミングよくインジェクタから各気筒に適切な量の燃料を噴射するコモンレールシステムを採用し、これにより高い燃料噴射圧力により燃料を微粒にして、燃料の燃え残りを少なくして粒子状物質の発生を抑える。
【0049】
さらに、強制的に密度の高い空気を送り込むターボチャージャーと空冷式のインタークーラーを設け、エンジン33の出力アップ、燃費の改善、及び二酸化炭素と粒子状物質の排出量を低減する。また、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブ、絞りバルブ、高温になる排気ガスの温度を下げる水冷式のEGRクーラー等によって排気ガスの一部をエンジン33に再循環させるEGRシステムを採用し、これによりエンジン33の燃焼温度を下げることで窒素酸化物の発生を抑える。
【0050】
そして、排気ガス規制の更なる強化にともなって、排気ガスに含まれる粒子状物質をフィルターで捕らえる共に、DPF再生して燃焼処分するDPFシステムと、尿素水を噴霧して加水分解反応によりアンモニアを得て、この還元剤のアンモニアと窒素酸化物を反応させて窒素と水に還元する尿素SCRシステムを併用する排気ガス後処理装置を設ける。
【0051】
また、DPFシステム(第1排気ガス後処理装置)と尿素SCRシステム(第2排気ガス後処理装置)は、ディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を内蔵するDPFケース43と、ディーゼル酸化触媒(DOC)と尿素選択触媒還元(SCR)を内蔵するSCRケース44と、ドージングモジュールに尿素水を供給するタンク等を備える。この内、DPFケース43とSCRケース44は、エンジンフレーム45の後部寄りに設ける取付座45a、45bに取り付け、エンジン33の上方にDPFケース43を下位としてSCRケース44をやや前方の上位に設ける。なお、尿素水タンクは、例えば、グレンタンク30の後方の機体フレーム2の空きスペースに設ける。
【0052】
一方、エンジン33のクーリングファン42の前方には、エンジン33の冷却水を冷やすラジエータ46を設ける。このラジエータ46はエンジンフレーム45の外側方に連結するラジエータ枠47に取付け、クーリングファン42によって吸い込まれる外気はラジエータ46のフィンの間を通過する間にエンジン33の冷却水を冷し、更にクーリングファン42から吐き出した冷却風によってエンジン33本体等を冷却する。
【0053】
また、ラジエータ46の前面側には、防塵網と共にオイルクーラやインタークーラ等の熱交換器を設け、これらの熱交換器もラジエータ46と同様にクーリングファン42によって吸い込まれる外気によって各媒体を冷やすことができる。なお、クーリングファン42は、図示しない電動モータによって切り換える正転プーリと逆転プーリによって、その回転を正逆に切り換える正逆転機構を備え、定期的にクーリングファン42を逆回転させてラジエータ46のコアやフィン、或いは防塵網等に付着した塵埃を機体外方側に吹き飛ばすことができる。
【0054】
さらに、ラジエータ46や熱交換器の前面側には防塵網を設けると共に、その通風口を多孔板48で塞いだサイドカバー49を設ける(
図3参照)。なお、このサイドカバー49の後部はラジエータ枠47に回動自在に枢支して、常時は原動部34の右側面を覆い、また、防塵網の掃除等を行う場合は、機体外方に向けて開いてこれらのメンテナンスを行うことができる。
【0055】
また、ラジエータ46とエンジン33の略真上にはエアクリーナ50を、その長手方向が左右方向となるようにエンジンフレーム45の前後部を繋ぐ補器取付梁に取り付けて設ける。なお、エアクリーナ50は、その吸気上手側に設けるプレクリーナ51によって予備浄化された空気を取り込んで、その円筒ケースに収容するエレメントによって塵埃を濾過し、清浄な空気をエンジン33に供給する。
【0056】
さらに、プレクリーナ51はエンジンフレーム45の後部寄り外方側の上部に取付けて、キャビン16とグレンタンク30の間の高所に設け、その配置高さはコンバイン1の最高高さとなるキャビン16のルーフより低くいが、グレンタンク30の天板より高くして藁屑等の塵埃の最も少ない位置に設ける。そして、前述のエンジンフレーム45は機体フレーム2や運転フレーム10から立設する支柱やこの支柱を繋ぐ梁によって構成する。
【0057】
また、エンジンフレーム45の前面側には、その中程に運転席13の後下部寄りを収める凹部を備えて操縦部11との仕切りとなる前傾斜カバー52を設け、機体外方側には開閉自在なサイドカバー49とその上方に設ける右上サイドカバー49aを設け、その後面側にはメンテナンスのためにボルトで着脱自在に取付ける複数の後カバー53を設け、さらに、その上面側には天板となる上カバー54等を設け、係るエンジンカバーによって覆った空間をエンジンルームAに構成する。
【0058】
なお、エンジンルームAの下方と機体の中央寄りとなる機体内方側にはカバーを特に設けることなく開放するが、エンジンルームAの下方にはゴムクローラ9が、また、機体内方側にはトランスミッションケース5や脱穀部26等が臨んで閉鎖された状態となる。そのため、エンジンルームA内は、クーリングファン42による外気の取込みと、エンジン33やエンジン33等の冷却のための熱交換器の設置によって大気圧より高く又高温となる雰囲気にある。
【0059】
そして、このようなエンジン33や補器類の搭載環境化において、本発明の特徴とするエンジンの排気系、就中、エンジンの排気ガス後処理装置の排気系について説明すると、先ず、エンジン33の排気口、詳しくはエンジン33の前上部寄りに設けるターボチャージャーの排気出口管は、エアクリーナ50に接続する吸気入口管より機体内方寄りに設けており、この排気出口管と第1排気ガス後処理装置を構成するDPFケース43の機体内方寄りに設ける入口管43aは、エンジン33の振動を吸収する可撓部55を備える接続管56を介して接続する。
【0060】
なお、この接続管56の出口部と連結するDPFケース43の入口管43aは、エンジン33の排気口側を向くようにそのケース43から前方に向けて設け、これにより両者を接続する接続管56の長さは短くなって、エンジン33の排気ガスをその温度を極力下げずにDPFケース43に導くことができる。また、DPFケース43内に導入された排気ガスは、そのガス中に含まれる有害な粒子状物質がディーゼル微粒子捕集フィルターによって捕集され、また、フィルターに捕集された粒子状物質がDPF再生等によって燃やされて除去される。
【0061】
また、DPFケース43の機体外方寄りに設ける出口管43bはDPFケース43から上方に向かうように設ける。一方、第2排気ガス後処理装置を構成するSCRケース44は、DPFケース43の前方斜め上方に並列して設け、このSCRケース44の機体内方寄りに設ける入口管44aは斜め後ろ上方を向く。また、DPFケース43の出口管43bとSCRケース44の入口管44aは、ドージングモジュール57を備えるミキサー管58を中途に備える接続管59を介して接続し、この接続管59はDPFケース43上の空きスペースを用いて取り回しよく設けることができる。
【0062】
そして、DPFケース43から排出された排気ガスは、ミキサー管58内において噴射された尿素水が高温下で加水分解によって変換されたアンモニアガスと共にSCRケース44内に導かれる。また、SCRケース44内に設ける尿素SCR触媒のもとにアンモニアガスが排気ガス中の有害な窒素酸化物を無害な窒素と水に還元して浄化する。そして、SCRケース44の機体外方寄りに設ける出口管44bはケース44から上方に向けて設け、この出口管44bの上部に排気管60を連結する。
【0063】
そして、この排気管60はテール管(テールパイプ)61とディフューザー管(拡散管)62によって構成し、この内、テール管61はその中間部となる頂点61bから機体内方寄りに、また若干後方を向くように水平に湾曲させて形成し、SCRケース44の出口管44bにテール管61の垂直となる始端部(下端部)61aを連結する。また、ディフューザー管62はテール管61より大径となし、テール管61の終端部61cに後方側からその始端部62aを若干、重合するように嵌めて、テール管61の終端部61cと同方向に延ばして設ける。
【0064】
従って、排気管60の管内の断面積がテール管61からディフューザー管62に至って増えることになり、排気ガスはディフューザー管62内で拡散すると共に、テール管61とディフューザー管62が重合する終端部61cと始端部62aとの間にドーナツ状の隙間が生じて、この隙間を通してクーリングファン42によって大気圧より高くなったエンジンルームA内の冷却風が動圧として吸い込まれるので、ディフューザー管62内の排気ガスの温度を下げることができる。なお、この場合、エンジンルームAはエンジンカバーによって覆われて藁屑等が入り込まない環境にあるので、上記隙間に藁屑が詰まる虞はない。
【0065】
そして、係るディフューザー管62は、その始端部62aと中間部62bとの境界からそれまでの水平向きから下り傾斜させ、また同時に機体の後方を向く角度を増すように折曲させて形成し、これに伴って排気ガスは排気管抵抗をあまり大きく受けることなく、その排気方向を変更することができる。なお、この場合、ディフューザー管62の中間部62bから終端部62cはエンジンルームA外の外気にさらすことになり、エンジンカバーの後カバー53bにはエンジンルームA内からエンジンルームA外にディフューザー管62を通す丸穴53eを設ける。
【0066】
さらに、ディフューザー管62の排気口62dを備える終端部62cは、その中間部62bと終端部62cの境界からそれまでの下り傾斜から水平、乃至は実施形態に示す僅かに下り傾斜させ、また同時に機体の後方を向く角度をさらに増すように折曲させて形成する。そして、これに伴って排気ガスは排気管抵抗をあまり大きく受けることなくその排気方向を変更して、最終的に
図1に示すようにディフューザー管62の排気口62dから脱穀部26のシリンダーカバー27の機体内方寄りの後部上を掠めながら機体の後方に向けて排気して大気中に拡散させる。
【0067】
なお、以上説明したテール管61とディフューザー管62から構成する排気管60の最終的な終端は、エンジンルームAの後方に設けるグレンタンク30の内側壁30aの上部寄り外側方まで延ばすことになって、脱穀装置のシリンダーカバー27に対しては
図2に示すようにその上面より高く、シリンダーカバー27の上面とグレンタンク30の内側壁30aとによって遮られる可能性のある排気ガスの拡散空間は十分確保することができる。
【0068】
また、ディフューザー管62の外気にさらして設ける中間部62の一部乃至終端部62cは、穀粒排出オーガ35の機体への収納姿勢における第2縦パイプ39の下方に離れて設けることになる。そのため、
図4に示すように屋外雨除けシートSで機体を覆う際に、係るシートSが穀粒排出オーガ35の第2縦パイプ39に遮られて、ディフューザー管62に触れなくすることができ、高温となるディフューザー管62に触れてシートSに穴を開けるといった虞を無くすことができる。
【0069】
なお、穀粒排出オーガ35の第2縦パイプ39は機体へ収納する際に、
図6及び
図7に示すようにエンジンフレーム45の機体内方寄りの支柱にブラケットを介して取付けるステー63の上部に受け体64を設け、この受け体64に第2縦パイプ39を載置して支持する。そして、ディフューザー管62の中間部62bの後寄りは、上記受け体64を設けるステー63にその取付座62eを介して取付ける。
【0070】
また、ディフューザー管62の始端部62aの両端を、エンジンルームA内において夫々エンジンフレーム45にその取付座62f、62gを介して取付ける。そのため、ディフューザー管62をテール管61に嵌合させ、また、ステー63の側方となる所定の位置に堅牢に固定して保持することができる。
【0071】
さらに、ディフューザー管62の排気口62dとなる終端は、
図1及び
図2に示すように脱穀部26からグレンタンク30に穀粒を移送する揚穀装置29の上部に設ける放出部29aの下方で、且つこの放出部29aに設ける収量センサ65よりも後方に位置させる。そのため、ディフューザー管62の排気口62dから排気した高温の排気ガスが収量センサ65に掛かることがなく、収量センサ65の故障を未然に防止することができる。
【0072】
また、ディフューザー管62の終端部62cは、脱穀装置の受網等のメンテナンスのために扱胴とともに上方に持ち上げるシリンダーカバー27の前後方向となる回動支点軸Xと略平行で、且つこの回動支点軸Xより揚穀装置29やグレンタンク30の内側壁30a側となる位置に設ける。そのため、シリンダーカバー27を上方に回動させてもディフューザー管62の終端部62cとシリンダーカバー27が当接することがなく、その持ち上げ角度を十分に取ることができる。
【0073】
さらに、ディフューザー管62の排気口62dを仮に脱穀部26側に向かせると、その排気口62dから排出された高温の排気ガスがシリンダーカバー27の上方から機体の外方に拡散し、例えば、脱穀部26の外方下方寄りに設けるサブステップ66に乗って作業者が脱穀部26のメンテナンスを行っているとすれば、この作業者に向けて排気ガスが掛かる虞がある。また、前述のようにシリンダーカバー27を上方に回動させると、排気ガスがシリンダーカバー27に掛かりこれが高温となる。
【0074】
そして、これを逆にディフューザー管62の排気口62dをグレンタンク30側に向かせると、排気ガスがグレンタンク30の内側壁30aに掛かり、この内側壁30aが高温となって貯留する穀粒に悪影響を及ぼす。そのため、ディフューザー管62の排気口62dからの排気方向Yは、機体の略後方であって、より詳細には機体のやや左側後方に傾斜させた、前述の脱穀部26のシリンダーカバー27の機体内方寄りの後部上を掠めながら機体の後方に向かう方向となす。
【0075】
ところで、排気ガス後処理装置の排気管60を、例えば機体の上方斜め後方に向けて設けるとコンバイン1の清掃にあって洗車水(高圧洗浄水)が誤って排気管60の排気口から管内に入る場合がある。そして、管内にひとたび水が入るとその水の侵入方向から見て下り傾斜となる排気管60に沿って水が流れ落ちて排気ガス後処理装置44に入り、この後処理装置44に悪影響を及ぼしたり、排気通路が閉ざされてエンジン33の始動が困難となる虞がある。
【0076】
また、排気管60をディフューザー管62で構成すると、テール管61との重合部における隙間から水が流出して排気ガス後処理装置44には入り込まないかもしれないが、この流出した水がエンジンルームA内に飛び散って、最悪の場合、排気ガス後処理装置44等に設ける排気圧センサや排気温度センサ等のセンサ類、或いはこれらのセンサ類とエンジン33や排気ガス後処理装置43、44の電子制御ユニット(ECU)を繋ぐコネクタ等に降り掛かると、ショートや錆付きを生じさせる虞があり、これ等の防水対策を行うにしても余分な費用が掛かるという問題が発生する。
【0077】
そこで、係る問題を解決するために排気管60の内、特にディフューザー管62は、前述のようにその中間部62bから下り傾斜させて設ける。また、ディフューザー管62の終端部62cは水平乃至僅かに下り傾斜させて設ける。そのため、ディフューザー管62の終端部62cに備える排気口62dから誤って洗車水等が入った場合、その水の侵入方向から見て上り傾斜を越える場合に必要となる揚程h、並びにディフューザー管62の内管面が壁となって生ずる損失水頭に阻まれ、ディフューザー管62の水平となる始端部62a等の排気ガスの上流側への水の侵入が阻止される。
【0078】
また、ひとたびディフューザー管62内に侵入した雨水や洗車水はその下り傾斜によって排気口62dから即座に流出させることができて、ディフューザー管62内に何時までも留まらないからディフューザー管62の錆の発生を抑えて長きにわたって排気管60としての機能を維持させることができる。さらに、排気管60を機体外方寄りに設ける始端部から機体内方寄りに至る間に徐々に後方を向くようにその向きを変えながらグレンタンク30の内側壁30aの上部寄り外側方まで延ばして設ける。
【0079】
即ち、
図1に示すようにテール管61の始端部61aは機体外方寄りに設け、この始端部61aから終端部61cは機体内方寄りを向くように設ける。また、ディフューザー管62の始端部62aはテール管61の終端部61cと同方向を向き、その中間部62bは機体の後方を向く角度を増し、さらに、ディフューザー管62の終端部62cは機体の後方を向く角度に近くなって、グレンタンク30の内側壁30aの上部寄り外側方まで延ばして設ける。
【0080】
そのため、排気管60の中間部(62b)から排気口(62d)を備える終端部(62c)に至る下り傾斜に合わせて、排気管60の始端部(61c)の機体の内方への向きから終端部(62c)の機体の後方への向き変更によって、その管内面の折曲に伴って生ずる損失水頭に阻まれ、排気ガス後処理装置44やエンジンルームA内への水の侵入が阻止される。
【0081】
なお、係る排気管60を機体外方寄りに設ける始端部から機体内方寄りに至る間に徐々に後方を向くように変更することによって、排気管60のグレンタンク30との干渉を避けることができる。また、機体の左右方向に排気管路をとることによって、この間で排気管60の温度を下げることができ、これにより排気管60の前後方向の排気管路を逆に短縮して、周辺装置26、30への影響や排気管60への藁屑の堆積の機会を減らすことができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述の排気管60の内、ディフューザー管62の段階的な下降傾斜や、機体の後方を向く段階的な角度変更は、排気管抵抗を少なくするものであるが、より排気管抵抗を減らすために緩やかに連続してカーブする曲管を使用してもよい。また、排気ガス後処理装置は2つ設ける必要がなければ、何れか一方の排気ガス後処理装置を使用することができ、排気ガスの後処理内容についても適宜変更することができる。
【0083】
さらに、排気ガス後処理装置の出口管がグレンタンクの内側壁の上部寄り外方の機体前後方向の延長線上にあれば、排気管の始端側を機体の左右方向に向かせて設けることなく機体の後方に向けて延ばせばよく、また、その場合に排気ガス後処理装置の出口管の高さが低ければ、一旦上方や後方に向けて上り傾斜とした後、その終端側を下り傾斜させてもよく、本発明は、前記実施形態に必ずしも限定するものではない。
【符号の説明】
【0084】
1 コンバイン
30 グレンタンク
33 ディーゼルエンジン
43 DPFケース(第1の排気ガス後処理装置)
44 SCRケース(第2の排気ガス後処理装置)
50 エアクリーナ
51 プレクリーナ
60 排気管
61 テール管(排気管)
62 ディフューザー管(排気管)