(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】シーリング材の施工方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20231218BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231218BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231218BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20231218BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C09K3/10 R
C09K3/10 Z
B05D7/24 301N
B05D7/24 301V
B05D7/00 K
B05D1/28
E04B1/66 B
C09K3/10 F
C09K3/10 E
C09K3/10 D
C09K3/10 G
(21)【出願番号】P 2020148845
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】多田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】海老名 圭徳
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 直広
(72)【発明者】
【氏名】小澤 朋紀
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-291369(JP,A)
【文献】特開2017-43651(JP,A)
【文献】米国特許第5173344(US,A)
【文献】米国特許第4810573(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
B05D
E04B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿硬化型シーリング材又は乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材を、湿分透過フィルムからなる型枠の一方の表面に塗布する塗布工程と、
前記型枠の一方の表面に塗布された前記シーリング材を、複雑な形状を有するシーリング対象に、前記型枠と共に形成し、前記シーリング対象に前記シーリング材を充填させる充填工程と、
を有することを特徴とするシーリング材の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載するシーリング材の施工方法において、
前記湿分透過フィルムが、ポリエチレン多孔質フィルム又はポリプロピレン多孔質フィルムであることを特徴とするシーリング材の施工方法。
【請求項3】
請求項1に記載するシーリング材の施工方法において、
更に、前記型枠の周囲に、締め付けバンドを形成し、前記型枠を安定させ、前記シーリング材が硬化するまで保持する保持工程を有することを特徴とするシーリング材の施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載するシーリング材の施工方法において、
更に、前記シーリング材の硬化後、前記締め付けバンド及び前記型枠を除去する除去工程を有することを特徴とするシーリング材の施工方法。
【請求項5】
請求項1に記載するシーリング材の施工方法において、
更に、前記充填工程より以前に、前記シーリング対象に内包する隙間部に、シーリング材を充填する予備工程を有することを特徴とするシーリング材の施工方法。
【請求項6】
請求項1に記載するシーリング材の施工方法において、
更に、前記充填工程より以後に、前記シーリング材の周辺部に、シーリング材を充填する補完工程を有することを特徴とするシーリング材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外設置機器への雨水の侵入を防止するため、特に、隙間部(例えば、タンクに形成されるパイプ近傍など)を有するシーリング対象に、シーリング材を充填し、シーリング対象の隙間部をシールする必要がある。
【0003】
そして、特に、シーリング対象が複雑な形状を有する場合には、シーリング材をシーリング対象に充填し、シーリング材をシーリング対象になじませる必要がある。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特開2018-070822号公報(以下、特許文献1と称する)がある。特許文献1には、シーリング材の施工方法として、外壁材の目地にシーリング材を充填する充填工程と、液状の被膜材料が供給されるヘラを使用し、充填されたシーリング材の表面をならすと共に、シーリング材の表面に被膜材料を塗布する仕上げ工程と、を有することが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、複雑な形状を有するシーリング対象に、シーリング材を充填するシーリング材の施工方法が記載されている。
【0007】
一方、複雑な形状を有するシーリング対象に、シーリング材を充填する場合、シーリング材の形状を保持するため、シーリング材の表面に型枠を形成する必要がある。
【0008】
そして、シーリング材として、空気中の湿分を吸収することにより硬化する吸湿硬化型シーリング材、又は、空気中に湿分を放出することにより硬化する乾燥硬化型シーリング材を使用する場合には、シーリング材が空気と接し、シーリング材に湿分を吸収させ、又は、シーリング材から湿分を放出させる必要がある。
【0009】
しかし、湿分を透過させない型枠を使用し、吸湿硬化型シーリング材や乾燥硬化型シーリング材を使用する場合には、型枠が空気と接し、特に、型枠から離れた箇所では、シーリング材が十分に硬化しない恐れがある。
【0010】
特許文献1には、型枠を使用し、吸湿硬化型シーリング材や乾燥硬化型シーリング材を使用する場合に、型枠から離れた箇所であっても、シーリング材が硬化するシーリング材の施工方法は記載されていない。
【0011】
そこで、本発明は、型枠を使用し、吸湿硬化型シーリング材や乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材を使用する場合に、型枠から離れた箇所であっても、シーリング材が硬化するシーリング材の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明のシーリング材の施工方法は、吸湿硬化型シーリング材又は乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材を、湿分透過フィルムからなる型枠の一方の表面に塗布する塗布工程と、型枠の一方の表面に塗布されたシーリング材を、複雑な形状を有するシーリング対象に、型枠と共に形成し、シーリング対象にシーリング材を充填させる充填工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型枠を使用し、吸湿硬化型シーリング材や乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材を使用する場合に、型枠から離れた箇所であっても、シーリング材が硬化するシーリング材の施工方法を提供することができる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成、及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施例に記載するシーリング材の施工方法を使用するシーリング対象を説明する説明図である。
【
図2】本実施例に記載する型枠の一方の表面に塗布されたシーリング材を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を使用し、説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例】
【0017】
まず、本実施例に記載するシーリング材の施工方法を使用するシーリング対象を説明する。
【0018】
図1は、本実施例に記載するシーリング材の施工方法を使用するシーリング対象を説明する説明図である。
【0019】
本実施例に記載するシーリング対象は、屋外に設置されるタンク10に形成されるパイプである。
【0020】
例えば、本実施例におけるシーリング対象は、タンク10の上部から突出する太いパイプ11と、太いパイプ11の内周側に嵌合し、太いパイプ11の上部に突出する細いパイプ12と、細いパイプ12の外周側に嵌合し、細いパイプ12の上部に突出する太いパイプ13と、である。
【0021】
そして、太いパイプ11と細いパイプ12との接合部、及び、細いパイプ12と太いパイプ13との接合部には、隙間部(シールが必要な隙間)が形成される恐れがあり、この隙間部が形成されるシーリング対象にシーリング材を充填し、シーリング対象の隙間部をシールする必要がある。
【0022】
また、タンク10の上部と太いパイプ11とは、溶接により固定され、太いパイプ11と細いパイプ12とは、溶接により固定され、細いパイプ12と太いパイプ13とは、ボルト15により固定される。なお、本実施例では、ボルト15は、1箇所に形成されるが、2箇所に形成されても、3箇所に形成されても、4箇所に形成されてもよい。
【0023】
このように、シーリング対象は、複雑な凹凸を有し、複雑な形状を有することになる。そして、シーリング対象は、立体形状を有する。
【0024】
また、太いパイプ13の上部には、蓋部14が形成される。タンク10の内部には、油が充填された油タンクが設置され、油タンクの周囲には、油タンクから漏洩する油を検出するため、砂が充填される。
【0025】
そして、蓋部14から、パイプを介して、タンク10の内部に、検出器が投下され、砂に染み出す油を検出する。
【0026】
このため、タンク10の内部に雨水の侵入を防止するため、シーリング対象の隙間部をシールする必要がある。
【0027】
そして、本実施例に記載するシーリング材の施工方法は、以下の工程を有する。つまり、このシーリング材の施工方法は、湿分透過フィルムからなる型枠2を使用し、吸湿硬化型シーリング材又は乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材1を使用し、シーリング対象にシーリング材1を充填するものである。
(1)まず、太いパイプ11と細いパイプ12との接合部(太いパイプ11の上端部と細いパイプ12の外周部とが関係する充填領域)に、シーリング材31を形成し、ボルト15と太いパイプ13との間の領域に、シーリング材32を形成し、細いパイプ12と太いパイプ13との接合部(太いパイプ11の下端部と細いパイプ12の外周部とが関係する充填領域)に、シーリング材33を形成する(第1工程)。
【0028】
この第1工程は、予め(充填工程より以前に)、シーリング対象の隙間部(シーリング対象に内包する隙間部)に、シーリング材31やシーリング材33などを充填する予備工程である。つまり、予め、径が相違するパイプの接合部などに、シーリング材31やシーリング材33などを充填する予備工程である。
(2)次に、吸湿硬化型シーリング材又は乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材1を、湿分透過フィルムからなる型枠2の一方の表面に塗布する(塗布工程)(第2工程)。
【0029】
この第2工程では、まず、シーリング対象を覆うことができるように、つまり、シーリング対象を覆うことができる大きさ(シーリング材1で覆われるべき領域の大きさ)に、型枠2を切断する。次に、型枠2の一方の表面に、シーリング材1を塗布する。この際、シーリング材1の厚さは、シーリング対象の形状を鑑み、シーリング対象を覆うことができるように設定する。
【0030】
なお、型枠2は、シーリング材1と共に、シーリング材1の形状を保持することができるものである。
(3)次に、型枠2の一方の表面に塗布されたシーリング材1を、複雑な形状を有するシーリング対象の周囲に、型枠2と共に形成し(巻き付け)、シーリング対象にシーリング材1を充填させる(充填工程)(第3工程)。
【0031】
この第3工程では、シーリング材1を塗布した型枠2を、シーリング対象の周囲に巻き付ける。必要に応じて、シーリング材1がシーリング対象になじむよう、型枠2の外表面(他方の表面)から、シーリング材1を押し付ける。
【0032】
これにより、シーリング対象の隙間部には、シーリング材1及びシーリング材31やシーリング材33などにより、2重に充填されることになる。
【0033】
なお、タンク10の上部から太いパイプ13の一部までを覆うように、シーリング材1を充填する。つまり、少なくとも、タンク15の上部から突出している太いパイプ11、シーリング材31、シーリング材33、シーリング材31とシーリング材33との間に露出している細いパイプ12、シーリング材32が形成されるボトル15を覆うように、シーリング材1を充填する。
(4)次に、型枠2の周囲に、締め付けバンド4を形成し(取り付け)、型枠2を安定させ、シーリング材1が硬化するまで保持する(保持工程)(第4工程)。
【0034】
なお、締め付けバンド4としては、シーリング材1が硬化するまでの間、シーリング材1の形状を保持することができるものであれば、特に限定されない。例えば、締め付けバンド4には、インシュロックやホースバンドなどを使用することができる。
【0035】
この第4工程では、締め付けバンド4を、型枠2の周囲に巻き付け、シーリング材1を締め付ける。更に、型枠2の端面及び隙間部のシーリング材1を平らにする。
(5)次に、太いパイプ13とシーリング材1との接合部(シーリング材1の上端部と太いパイプ13の外周部とが関係する領域)に、シーリング材51を形成し、タンク10の上部とシーリング材1との接合部(タンク10の上部とシーリング材1の外周部とが関係する領域)に、シーリング材52を形成する(第5工程)。
【0036】
この第5工程は、更に(充填工程より以後に)、シーリング材1の周辺部に、シーリング材51やシーリング材52を充填する補完工程である。
(6)最後に、シーリング材1、シーリング材51、シーリング材52が、完全に硬化するまで保持し、硬化後、締め付けバンド4や型枠2を除去する(除去工程)(第6工程)。
【0037】
なお、シーリング材31、シーリング材32、シーリング材33(以上、第1シーリング材)は、同一の材料であることが好ましい。また、シーリング材51、シーリング材52(以上、第3シーリング材)は、同一の材料であることが好ましい。シーリング材1(第2シーリング材)と(シーリング材31、シーリング材32、シーリング材33)とは、同一の材料であることが好ましい。シーリング材1と(シーリング材51、シーリング材52)とは、同一の材料であることが好ましい。シーリング材1と(シーリング材31、シーリング材32、シーリング材33)と(シーリング材51、シーリング材52)とは、同一の材料であることが好ましい。
【0038】
このように、本実施例によれば、湿分透過フィルムからなる型枠2を使用し、吸湿硬化型シーリング材や乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材1を使用することにより、複雑な形状を有するシーリング対象の全体に、シーリング材1を充填することができ、型枠2から離れた箇所であっても、シーリング材1の全体を硬化させることができる。
【0039】
また、本実施例によれば、シーリング対象の周囲に、型枠2を使用することにより、シーリング材1の形状をコントロールすることができ、複雑な形状を有するシーリング対象であっても、また、垂直方向に形成されるシーリング対象であっても、シーリング材1を充填することができる。
【0040】
また、本実施例によれば、特に、シーリング対象が複雑な形状を有する場合には、シーリング材1をシーリング対象に充填し、シーリング材1をシーリング対象になじませる(フィットさせる)ことができる。そして、シーリング材1を立体形状(円筒形状)に硬化させ、シーリング対象に内包する隙間部をシールすることができる。
【0041】
次に、本実施例に記載する型枠の一方の表面に塗布されたシーリング材を模式的に説明する。
【0042】
図2は、本実施例に記載する型枠の一方の表面に塗布されたシーリング材を模式的に説明する説明図である。
【0043】
本実施例では、型枠2の一方の表面に、シーリング材1が塗布される。
【0044】
型枠2には、湿分透過フィルムが使用される。厚さは1mm前後(0.8mm~1.2mm)であり、大きさは、シーリング対象によっても相違するが、本実施例の場合は、20cm×30cm程度である。
【0045】
なお、湿分透過フィルム(湿分透過材料)としては、シーリング材1が硬化するために、必要な湿分が透過することができるものであれば、特に限定されない。つまり、湿分透過フィルムは、シーリング材1に、空気中の湿分を、十分に吸収させる、又は、シーリング材1から、空気中に湿分を十分に放出させるものである。
【0046】
例えば、湿分透過フィルムには、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム、メッシュ状フィルムを使用することができる。特に、ポリエチレン多孔質フィルムやポリプロピレン多孔質フィルムが好ましい。これらは、孔が極めて小さく、シーリング材1を通過させずに、湿分のみを透過させることができるためである。
【0047】
また、湿分透過フィルムとして、多孔質材料、メッシュ状材料、穴あき材料(例えば、パンチングボードなど)も使用することができる。
【0048】
シーリング材1には、空気中の湿分を吸収することにより硬化する吸湿硬化型シーリング材や空気中に湿分を放出することにより硬化する乾燥硬化型シーリング材が使用される。大きさは、型枠2と同程度であり、シーリング対象によっても相違するが、本実施例の場合は、厚さは10mm程度である。
【0049】
なお、シーリング材1としては、吸湿硬化型シーリング材又は乾燥硬化型シーリング材であれば、特に制限されない。例えば、シーリング材1には、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系などのシーリング材1を使用することができる。
【0050】
このように、型枠2の一方の表面に塗布されたシーリング材1を使用することにより、複雑な形状を有するシーリング対象に、シーリング材1を充填することができると共に、パイプの周囲のような広い面(大きい面積)からなるシーリング対象の全体に、シーリング材1を充填することができる。
【0051】
このように、本実施例によれば、湿分透過フィルムからなる型枠2を使用し、吸湿硬化型シーリング材や乾燥硬化型シーリング材からなるシーリング材1を使用することにより、複雑な形状を有し、大きい面積のシーリング対象の全体に、その内部まで、シーリング材1を完全に充填することができ、型枠2から離れた箇所であっても、シーリング材1の全体を、その内部まで、完全に硬化させることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1、31、32、33、51、52・・・シーリング材
2・・・型枠
4・・・締め付けバンド
10・・・タンク
11、13・・・太いパイプ
12・・・細いパイプ
14・・・蓋部