(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】建設機械のピン結合装置
(51)【国際特許分類】
E02F 3/38 20060101AFI20231218BHJP
F16B 21/16 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
E02F3/38 B
F16B21/16 Z
(21)【出願番号】P 2020161382
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 将利
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-056909(JP,U)
【文献】特開2019-196834(JP,A)
【文献】実開平03-012954(JP,U)
【文献】特開2008-202232(JP,A)
【文献】特開2010-230113(JP,A)
【文献】特開2018-146065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/38
F16B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作業装置を構成する第1部材と第2部材とをピン結合するため、前記第1部材に設けられた第1ピン挿通孔と前記第2部材に設けられた第2ピン挿通孔とに挿通される連結ピンの抜止めを行う建設機械のピン結合装置において、
前記連結ピンは、前記第1ピン挿通孔および前記第2ピン挿通孔に挿通されるピン本体部と、前記第1ピン挿通孔と前記第2ピン挿通孔とに挿通された状態で前記第1部材の外側面から突出する前記ピン本体部の端部に設けられた鍔部と、前記鍔部に隣接して前記ピン本体部の外周面に設けられ前記ピン本体部よりも小さな外径を有する凹溝部とを備え、
前記鍔部と前記第1部材との間には、前記凹溝部に前記連結ピンの軸中心を中心として回動可能に係合し、前記第1ピン挿通孔の周縁部と前記鍔部との間に挟まれることにより前記連結ピンを軸方向に抜止めするストッパが設けられ、
前記第1部材の外側面には、前記ストッパを前記凹溝部に係合した状態に保持するガイド部材が設けられ
、
前記ストッパには、前記凹溝部に係合した状態で前記第1部材とは反対側に突出する突起部が設けられ、
前記ガイド部材には、前記突起部が当接することにより前記ストッパが前記連結ピンの軸中心を中心として回動する範囲を制限する回動制限部が設けられていることを特徴とする建設機械のピン結合装置。
【請求項2】
建設機械の作業装置を構成する第1部材と第2部材とをピン結合するため、前記第1部材に設けられた第1ピン挿通孔と前記第2部材に設けられた第2ピン挿通孔とに挿通される連結ピンの抜止めを行う建設機械のピン結合装置において、
前記連結ピンは、前記第1ピン挿通孔および前記第2ピン挿通孔に挿通されるピン本体部と、前記第1ピン挿通孔と前記第2ピン挿通孔とに挿通された状態で前記第1部材の外側面から突出する前記ピン本体部の端部に設けられた鍔部と、前記鍔部に隣接して前記ピン本体部の外周面に設けられ前記ピン本体部よりも小さな外径を有する凹溝部とを備え、
前記鍔部と前記第1部材との間には、前記凹溝部に前記連結ピンの軸中心を中心として回動可能に係合し、前記第1ピン挿通孔の周縁部と前記鍔部との間に挟まれることにより前記連結ピンを軸方向に抜止めするストッパが設けられ、
前記第1部材の外側面には、前記ストッパを前記凹溝部に係合した状態に保持するガイド部材が設けられ、
前記ストッパと前記ガイド部材との間には、前記ストッパが前記凹溝部に係合した状態で前記連結ピンの軸中心を中心として回動するのを阻止する廻止め部材が設けられていることを特徴とす
る建設機械のピン結合装置。
【請求項3】
前記ストッパは、前記第1部材の可動範囲内において自重により前記突起部が前記回動制限部に当接する方向に常に付勢されていることを特徴とする請求項
1に記載の建設機械のピン結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば油圧ショベルに搭載される複数のブーム等の2部材をピンを用いて結合するのに好適に用いられる建設機械のピン結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上高さが大きな建築物を解体する場合には、通常、複数のブームを結合したマルチブーム仕様の作業装置を備えた油圧ショベルが用いられる。マルチブーム仕様の油圧ショベルは、作業現場間の移動頻度が高く、トレーラ等の搬送車両によって頻繁に作業現場に搬送される。マルチブーム仕様の油圧ショベルは、複数のブーム間がピンを用いて結合されている。従って、例えば搬送車両への積載時には、結合された複数のブーム間のピンを抜き取ることによりブームを分割し、解体作業を行うときには、分割された複数のブームがピンを用いて結合される。
【0003】
マルチブーム仕様の油圧ショベルにおいて、複数のブームの結合、分割を容易に行うため、油圧式のピン脱着機構が提案されている。このピン脱着機構は、複数のブームのピン挿通孔に対し、油圧シリンダを用いて2本の連結ピンを同時に抜き差しすることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数のブーム間を連結ピンを用いてピン結合した後には、連結ピンがピン挿通孔から軸方向に抜け出すのを防止するため、例えばピン挿通孔よりも大径なストッパを、ボルト等の締結具を用いて連結ピンの端部に取付ける必要がある。このように、従来技術では、複数のブーム間を結合した連結ピンを抜け止めするための作業に締結具や工具が必要となり、多大な労力が費やされるという問題がある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、2つの部材間を結合するピンを抜け止めするときの作業性を高めることができるようにした建設機械のピン結合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、建設機械の作業装置を構成する第1部材と第2部材とをピン結合するため、前記第1部材に設けられた第1ピン挿通孔と前記第2部材に設けられた第2ピン挿通孔とに挿通される連結ピンの抜止めを行う建設機械のピン結合装置において、前記連結ピンは、前記第1ピン挿通孔および前記第2ピン挿通孔に挿通されるピン本体部と、前記第1ピン挿通孔と前記第2ピン挿通孔とに挿通された状態で前記第1部材の外側面から突出する前記ピン本体部の端部に設けられた鍔部と、前記鍔部に隣接して前記ピン本体部の外周面に設けられ前記ピン本体部よりも小さな外径を有する凹溝部とを備え、前記鍔部と前記第1部材との間には、前記凹溝部の外周面に前記連結ピンの軸中心を中心として回動可能に係合し、前記第1ピン挿通孔の周縁部と前記鍔部との間に挟まれることにより前記連結ピンを軸方向に抜止めするストッパが設けられ、前記第1部材の外側面には、前記ストッパを前記凹溝部の外周面に係合した状態に保持するガイド部材が設けられ、前記ストッパには、前記凹溝部に係合した状態で前記第1部材とは反対側に突出する突起部が設けられ、前記ガイド部材には、前記突起部が当接することにより前記ストッパが前記連結ピンの軸中心を中心として回動する範囲を制限する回動制限部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、連結ピンの凹溝部に対し、径方向外側からストッパを係合させ、このストッパを、ガイド部材に沿って連結ピンの軸中心廻りに回動させる。これにより、ストッパは、締結具等を用いることなく、第1ピン挿通孔の周縁部と連結ピンの鍔部とに挟まれた状態で保持され、連結ピンを軸方向に抜止めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態によるピン結合装置が適用されるマルチブーム仕様の油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図3】ロアブームに搭載された油圧式のピン脱着機構を、
図2中の矢示III-III方向から見た拡大図である。
【
図4】実施形態によるピン結合装置を示す分解斜視図である。
【
図5】ロアブームのピン挿通孔に連結ピンを挿通した状態を示す左側面図である。
【
図6】ロアブームのピン挿通孔に連結ピンを挿通した状態を
図5中の矢示VI-VI方向から見た正面図である。
【
図7】連結ピンの凹溝部にストッパを係合させた状態を示す左側面図である。
【
図8】連結ピンの凹溝部にストッパを係合させた状態を
図7中の矢示VIII-VIII方向から見た正面図である。
【
図9】ストッパをガイド部材に対して廻り止めした状態を示す左側面図である。
【
図10】ストッパをガイド部材に対して廻り止めした状態を
図9中の矢示X-X方向から見た正面図である。
【
図11】油圧ショベルのブームシリンダを最伸長させた状態を示す左側面図である。
【
図12】油圧ショベルのブームシリンダを最縮小させたときのストッパの重心位置と突起部との位置関係を示す左側面図である。
【
図13】油圧ショベルのブームシリンダを最伸長させたときのストッパの重心位置と突起部との位置関係を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による建設機械のピン結合装置を、マルチブーム仕様の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、
図1ないし
図13を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0011】
図1において、マルチブーム仕様の油圧ショベル1は、前後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられたマルチブーム式の作業装置4とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場を走行し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させることにより、建築物の解体作業、土砂の掘削作業等を行う。
【0012】
作業装置4は、上部旋回体3の前側に俯仰動可能に取付けられたロアブーム5と、ロアブーム5の先端にピン結合されたアッパブーム6と、アッパブーム6の先端に回動可能に取付けられたアーム7と、アーム7の先端に回動可能に取付けられたバケット8とを含んで構成されている。また、作業装置4は、ロアブーム5を駆動するブームシリンダ9、アーム7を駆動するアームシリンダ10、バケット8を駆動するバケットシリンダ11を有している。
【0013】
油圧ショベル1は、トレーラ等の搬送車両(図示せず)に積載された状態で作業現場に搬送される。油圧ショベル1の搬送時には、通常、ロアブーム5からアッパブーム6を取外した状態で、ロアブーム5が取付けられた車体と、作業装置4(アッパブーム6から先)とが別々に搬送車両に積載される。そして、作業現場において、ロアブーム5の先端にアッパブーム6がピン結合される。このため、本実施形態では、ロアブーム5の先端側に、
図3に示すピン脱着機構12と、
図4ないし
図10に示すピン結合装置16とが設けられ、ロアブーム5とアッパブーム6とをピン結合するときの作業性が高められている。
【0014】
ここで、ピン脱着機構12は、油圧ショベル1に搭載された第1部材としてのロアブーム5と、第2部材としてのアッパブーム6とに対し、後述する左右一対の連結ピン17を脱着するものである。即ち、ピン脱着機構12は、左右の連結ピン17と、左右のレバー13と、油圧シリンダ14と、連結リンク15とを含んで構成されている。
【0015】
左右の連結ピン17は、ロアブーム5に設けられたピン挿通孔5Aと、アッパブーム6に設けられたピン挿通孔6Aとに挿通されることにより、ロアブーム5とアッパブーム6とをピン結合する。左右のレバー13は、それぞれの一端13Aが連結ピン17に回動可能に取付けられている。油圧シリンダ14は、左右のレバー13の他端13Bに取付けられている。連結リンク15は、長さ方向の両端が左右のレバー13の長さ方向の中間部に接続され、左右のレバー13間を連結している。
【0016】
従って、油圧シリンダ14を縮小させたときには、左右のレバー13の一端13Aは、連結リンク15との接続部を支点として互いに離間する方向に移動する。これにより、左右の連結ピン17が、ロアブーム5のピン挿通孔5Aとアッパブーム6のピン挿通孔6Aとに挿通され、ロアブーム5とアッパブーム6とが連結ピン17を介してピン結合される。一方、油圧シリンダ14を伸長させたときには、左右のレバー13の一端13Aは、連結リンク15との接続部を支点として互いに接近する方向に移動する。これにより、左右の連結ピン17が、アッパブーム6のピン挿通孔6Aから離脱し、ロアブーム5とアッパブーム6とが分割される構成となっている。
【0017】
このように、油圧シリンダ14を有するピン脱着機構12により、ロアブーム5とアッパブーム6とを連結ピン17を用いて結合するときの作業性、およびロアブーム5とアッパブーム6とのピン結合部から連結ピン17を離脱させてロアブーム5とアッパブーム6とを分割するときの作業性を高めることができる。
【0018】
次に、本実施形態によるピン結合装置16について説明する。ピン結合装置16は、ロアブーム5とアッパブーム6とを連結ピン17を介して結合し、かつ連結ピン17を抜止め状態に保持する。ピン結合装置16は、第1部材としてのロアブーム5と第2部材としてのアッパブーム6とを回動可能にピン結合する左右の連結ピン17と、ストッパ18と、ガイド部材22とを含んで構成されている。なお、左右の連結ピン17を含むピン結合装置16は、同一の構成を有しているため、以下、左側の連結ピン17を含むピン結合装置16について説明する。
【0019】
連結ピン17は、全体として円柱状に形成されている。
図3に示すように、連結ピン17の基端側には、ピン脱着機構12を構成するレバー13の一端13Aが取付けられている。連結ピン17は、ピン本体部17Aと、鍔部17Bと、凹溝部17Cとを有している。連結ピン17のピン本体部17Aは、第1ピン挿通孔としてのロアブーム5のピン挿通孔5Aと、第2ピン挿通孔としてのアッパブーム6のピン挿通孔6Aとに挿通される。
【0020】
鍔部17Bは、連結ピン17の先端部に設けられ、ピン本体部17Aがロアブーム5のピン挿通孔5Aとアッパブーム6のピン挿通孔6Aとに挿通された状態で、ロアブーム5の外側面5Bから突出する。凹溝部17Cは、鍔部17Bに隣接してピン本体部17Aの外周面に設けられている。凹溝部17Cは、ピン本体部17Aの外周面を全周に亘って切欠くことにより形成され、凹溝部17Cの外径寸法は、ピン本体部17Aの外径寸法よりも小さくなっている。凹溝部17Cには、ストッパ18の内周縁18Aが係合する。
【0021】
ストッパ18は、連結ピン17に設けられた凹溝部17Cの外周面に、連結ピン17の軸中心を中心として回動可能に係合している。
図4および
図5に示すように、ストッパ18は、半円弧状の板体として形成され、連結ピン17の凹溝部17Cに係合可能な板厚を有している。ストッパ18の内周縁18Aは、連結ピン17の軸中心から凹溝部17Cの外周面までの半径と等しい径寸法を有する半円弧状に形成されている。
【0022】
図7に示すように、ストッパ18は、連結ピン17の凹溝部17Cに径方向外側から係合し、ロアブーム5のピン挿通孔5Aの周縁部と、連結ピン17の鍔部17Bとの間に挟まれることにより、連結ピン17を、ロアブーム5のピン挿通孔5Aに対して軸方向に抜け止めしている。一方、ストッパ18の外周縁18Bは、ガイド部材22の内周面22Aと等しい径寸法を有している。
図7に示すように、ストッパ18は、その外周縁18Bをガイド部材22の内周面22Aに沿わせた(当接させた)状態で、連結ピン17の軸中心を中心として回動可能となっている。
【0023】
ストッパ18のうちロアブーム5とは反対側となる外側面18Cには、把手19と、リングピン取付軸20と、突起部21とが設けられている。把手19は、棒材等を用いて逆U字状に形成され、把手19の両端は、ストッパ18の重心G(
図12参照)から等しい位置に固定されている。把手19は、ロアブーム5およびアッパブーム6に対する連結ピン17の脱着作業時に、作業者がストッパ18を連結ピン17廻りに回動させるために把持するものである。
【0024】
リングピン取付軸20は、ストッパ18の長さ方向(周方向)の中央部に設けられ、ストッパ18の外側面18Cからロアブーム5とは反対側に突出している。リングピン取付軸20の突出端側には、径方向に貫通するピン孔20Aが穿設され、このピン孔20Aには、後述するリングピン25が挿通される。
【0025】
突起部21は、ストッパ18の長さ方向の一端側に設けられている。突起部21は、円柱状の軸体からなり、ストッパ18が連結ピン17の凹溝部17Cに係合した状態で、ストッパ18の外側面18Cからロアブーム5とは反対側に突出している。
図9に示すように、連結ピン17の凹溝部17Cに係合させたストッパ18を、ガイド部材22に沿わせて連結ピン17の軸中心廻りに回動させたときに、突起部21は、ガイド部材22の回動制限部23に当接する。これにより、ストッパ18が回動する範囲が制限される構成となっている。
【0026】
ガイド部材22は、ロアブーム5のピン挿通孔5Aを取り囲むように、外側面5Bに設けられている。ガイド部材22は、連結ピン17の軸中心を中心とした半円弧状の枠体からなり、溶接等の手段を用いて連結ピン17と同心上にロアブーム5の外側面5Bに固定されている。ガイド部材22の内周面22Aは、ストッパ18の外周縁18Bと等しい径寸法を有している。従って、
図7に示すように、ストッパ18は、内周縁18Aを連結ピン17の凹溝部17Cに係合させ、外周縁18Bをガイド部材22の内周面22Aに係合させた状態で、連結ピン17の軸中心廻りに矢示A方向に回動する。即ち、ガイド部材22は、ストッパ18を、連結ピン17の凹溝部17Cに係合した状態に保持している。
【0027】
ガイド部材22には、長さ方向(周方向)の一端に位置する回動制限部23と、長さ方向の中央部に位置するピン受け部24とが設けられている。回動制限部23は、ガイド部材22の長さ方向の一端から径方向内側(連結ピン17側)に張り出している。回動制限部23とロアブーム5の外側面5Bとの間には、ストッパ18が通過できる隙間23Aが形成されている。これにより、ストッパ18の内周縁18Aを連結ピン17の凹溝部17Cに係合させた状態で、ストッパ18をガイド部材22に沿って連結ピン17の軸中心廻りに回動させると、
図9に示す位置で、ストッパ18の突起部21が回動制限部23に当接する。これにより、ストッパ18が回動する範囲を制限することができる。
【0028】
ピン受け部24は、ガイド部材22の長さ方向の中央部に設けられている。ガイド部材22の長さ方向の中央部には、その突出端からロアブーム5の外側面5Bに向けて2つの切欠溝22Bが形成され、これら2つの切欠溝22B間に、ピン受け部24が形成されている。ピン受け部24にはピン孔24Aが穿設され、
図9に示すように、ストッパ18の突起部21が回動制限部23に当接したときに、ストッパ18に取付けられたリングピン取付軸20のピン孔20Aとピン受け部24のピン孔24Aとが、同心上に配置される構成となっている。
【0029】
廻止め部材としてのリングピン25は、ストッパ18のリングピン取付軸20とガイド部材22のピン受け部24との間に設けられている。
図4および
図9に示すように、リングピン25は、リングピン取付軸20のピン孔20Aとピン受け部24のピン孔24Aとに挿通される廻止めピン25Aと、廻止めピン25Aに両端が取付けられた矩形状のリング25Bとにより構成されている。リング25Bは、その両端が互いに離間した位置で廻止めピン25Aに取付けられることにより捩り力を発生させ、この捩り力によって廻止めピン25Aの外周面に適度な力で押付けられている。
【0030】
図9に示すように、ストッパ18の突起部21が、ガイド部材22の回動制限部23に当接した状態で、リングピン25の廻止めピン25Aは、リングピン取付軸20のピン孔20Aとピン受け部24のピン孔24Aとに挿通される。このとき、リング25Bは、ガイド部材22の切欠溝22B内に収容された状態で、ピン受け部24から突出した廻止めピン25Aの外周面に自らの捩り力によって押し付けられる。これにより、連結ピン17の軸中心を中心としたストッパ18の回動が、リングピン25によって阻止され、ストッパ18は、突起部21がガイド部材22の回動制限部23に当接した位置に位置決めされる。
【0031】
ここで、油圧ショベル1のロアブーム5は、ブームシリンダ9が最縮小したときの最下げ姿勢(
図1の姿勢)と、ブームシリンダ9が最伸長したときの最上げ姿勢(
図11の姿勢)との間で回動する。ロアブーム5が最下げ位置となったときには、ストッパ18とガイド部材22とは
図12に示す位置関係となり、ロアブーム5が最上げ位置となったときには、ストッパ18とガイド部材22とは
図13に示す位置関係となる。即ち、
図12および
図13において、連結ピン17の軸中心を通る鉛直線をL-Lとすると、ストッパ18の重心Gは、ロアブーム5の可動範囲の全域に亘って、常に鉛直線L-Lよりも後側に配置されている。
【0032】
これにより、ロアブーム5が最下げ位置と最上げ位置との間(可動範囲内)で回動する間、ストッパ18は、自重によって突起部21がガイド部材22の回動制限部23に当接する方向に常に付勢されている。従って、仮にリングピン25が、ストッパ18のリングピン取付軸20およびガイド部材22のピン受け部24から離脱したとしても、ストッパ18は、その自重によって突起部21を回動制限部23に当接させた位置を保持する。この結果、ストッパ18が連結ピン17から離脱するのを確実に防止することができる構成となっている。
【0033】
本実施形態によるピン結合装置16は、上述の如き構成を有するもので、以下、ロアブーム5とアッパブーム6とを連結ピン17を用いて結合する作業について説明する。
【0034】
まず、
図3に示すように、ロアブーム5のピン挿通孔5Aと、アッパブーム6のピン挿通孔6Aとに対し、ピン脱着機構12を用いて左右の連結ピン17を挿通する。これにより、ロアブーム5の先端にアッパブーム6がピン結合される。
【0035】
次に、ピン結合装置16を用いて、連結ピン17をロアブーム5に対して軸方向に抜止めする作業を行う。まず、
図5および
図6に示すように、ロアブーム5の外側面5Bから突出した連結ピン17の凹溝部17Cに対し、ストッパ18の内周縁18Aを径方向外側から係合させる。このとき、
図7および
図8に示すように、ストッパ18の内周縁18Aは連結ピン17の凹溝部17Cに当接し、ストッパ18の外周縁18Bはガイド部材22の内周面22Aに当接する。これにより、ストッパ18は、ガイド部材22によって、連結ピン17の凹溝部17Cに係合した状態に保持され、ロアブーム5のピン挿通孔5Aの周縁部と、連結ピン17の鍔部17Bとの間に挟み込まれる。この結果、連結ピン17を、ロアブーム5のピン挿通孔5Aに対して軸方向に抜け止めすることができる。
【0036】
この状態で、ストッパ18の外側面18Cに設けられた把手19を把持し、ストッパ18を、連結ピン17の軸中心を中心として矢示A方向(時計方向)に回動させる。これにより、
図9および
図10に示すように、ストッパ18は、突起部21がガイド部材22の回動制限部23に当接する位置まで、ガイド部材22の内周面22Aに沿って回動する。そして、ストッパ18の突起部21が、ガイド部材22の回動制限部23に当接することにより、ストッパ18の回動が停止した状態では、ストッパ18に取付けられたリングピン取付軸20のピン孔20Aと、ガイド部材22に設けられたピン受け部24のピン孔24Aとが、同心上に配置される。
【0037】
このようにして、ストッパ18の突起部21が、ガイド部材22の回動制限部23に当接した状態で、リングピン25の廻止めピン25Aを、リングピン取付軸20のピン孔20Aとピン受け部24のピン孔24Aとに挿通する。このとき、リング25Bは、ガイド部材22の2つの切欠溝22B内に収容された状態で、ピン受け部24から突出した廻止めピン25Aの外周面に自らの捩り力によって押し付けられる。これにより、連結ピン17の軸中心を中心としたストッパ18の回動が、リングピン25によって阻止され、ストッパ18を、突起部21がガイド部材22の回動制限部23に当接した位置に位置決めすることができる。この結果、油圧ショベル1の作動時の振動等によってストッパ18が連結ピン17廻りに回動し、不用意に連結ピン17から離脱するのを防止することができる。
【0038】
このように、本実施形態によるピン結合装置16は、ロアブーム5とアッパブーム6とを連結ピン17を用いてピン結合した後、ストッパ18を、ロアブーム5のピン挿通孔5Aの周縁部と連結ピン17の鍔部17Bとの間に挟み込むことにより、連結ピン17を、ロアブーム5のピン挿通孔5Aに対して軸方向に抜け止めすることができる。また、ストッパ18に設けられたリングピン取付軸20のピン孔20Aと、ガイド部材22に設けられたピン受け部24のピン孔24Aとにリングピン25を挿通することにより、連結ピン17の軸中心を中心としたストッパ18の回動を阻止することができ、ストッパ18によって連結ピン17を抜止め状態に保持することができる。
【0039】
即ち、本実施形態によるピン結合装置16は、ロアブーム5のピン挿通孔5Aの周縁部と連結ピン17の鍔部17Bとの間に、作業者の手作業によってストッパ18を挟み込むことにより、連結ピン17を、ロアブーム5のピン挿通孔5Aに対して軸方向に抜け止めすることができる。従って、例えば従来技術のように、ピン挿通孔よりも大径なストッパを連結ピンの端部に締結具を用いて取付けることにより、連結ピンを軸方向に抜止めする場合に比較して、締結具や工具を不要にすることができ、連結ピンを抜止めするときの作業性を高めることができる。
【0040】
かくして、本実施形態では、ロアブーム5とアッパブーム6とをピン結合するため、ロアブーム5に設けられたピン挿通孔5Aとアッパブーム6に設けられたピン挿通孔6Aとに挿通される連結ピン17を備えたピン結合装置16において、連結ピン17は、ピン挿通孔5Aおよびピン挿通孔6Aに挿通されるピン本体部17Aと、ピン挿通孔5Aとピン挿通孔6Aとに挿通された状態でロアブーム5の外側面5Bから突出するピン本体部17Aの端部に設けられた鍔部17Bと、鍔部17Bに隣接してピン本体部17Aの外周面に設けられピン本体部17Aよりも小さな外径を有する凹溝部17Cとを備え、鍔部17Bとロアブーム5との間には、凹溝部17Cに連結ピン17の軸中心を中心として回動可能に係合し、ピン挿通孔5Aの周縁部と鍔部17Bとの間に挟まれることにより連結ピン17を軸方向に抜止めするストッパ18が設けられ、ロアブーム5の外側面5Bには、ストッパ18を凹溝部17Cに係合した状態に保持するガイド部材22が設けられている。
【0041】
この構成によれば、ストッパ18は、ガイド部材22によって、連結ピン17の凹溝部17Cに係合した状態に保持され、ロアブーム5のピン挿通孔5Aの周縁部と、連結ピン17の鍔部17Bとの間に挟み込まれる。この結果、作業者の手作業によってストッパ18を連結ピン17の凹溝部17Cに係合させるだけで、ロアブーム5のピン挿通孔5Aに対して軸方向に抜け止めすることができ、連結ピン17を抜け止めするときの作業性を高めることができる。
【0042】
本実施形態では、ストッパ18には、凹溝部17Cに係合した状態でロアブーム5とは反対側に突出する突起部21が設けられ、ガイド部材22には、突起部21が当接することによりストッパ18が連結ピン17の軸中心を中心として回動する範囲を制限する回動制限部23が設けられている。この構成によれば、回動制限部23によってストッパ18の回動範囲を制限することにより、ガイド部材22に対して適切な位置でストッパ18を停止させることができる。
【0043】
本実施形態では、ストッパ18とガイド部材22との間には、ストッパ18が凹溝部17Cに係合した状態で連結ピン17の軸中心を中心として回動するのを阻止するリングピン25が設けられている。この構成によれば、リングピン25によってストッパ18の回動が阻止されることにより、油圧ショベル1の作動時の振動等によってストッパ18が連結ピン17廻りに回動し、不用意に連結ピン17から離脱するのを防止することができる。
【0044】
本実施形態では、ストッパ18は、ロアブーム5の可動範囲内において自重により突起部21が回動制限部23に当接する方向に常に付勢されている。この構成によれば、仮にリングピン25が、ストッパ18のリングピン取付軸20およびガイド部材22のピン受け部24から離脱したとしても、ストッパ18は、その自重によって突起部21を回動制限部23に当接させた位置を保持する。この結果、ストッパ18が連結ピン17から離脱するのを確実に防止することができる。
【0045】
なお、実施形態では、油圧シリンダ14を備えたピン脱着機構12を用いて、ロアブーム5のピン挿通孔5Aとアッパブーム6のピン挿通孔6Aとに連結ピン17を挿通し、この連結ピン17を、ピン結合装置16によって軸方向に抜止めする場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば手作業によって連結ピン17をロアブーム5のピン挿通孔5Aとアッパブーム6のピン挿通孔6Aとに挿通し、ピン結合装置16によって軸方向に抜止めしてもよい。
【0046】
また、実施形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、ホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
5 ロアブーム(第1部材)
5A ピン挿通孔(第1ピン挿通孔)
6 アッパブーム(第2部材)
6A ピン挿通孔(第2ピン挿通孔)
16 ピン結合装置
17 連結ピン
17A ピン本体部
17B 鍔部
17C 凹溝部
18 ストッパ
21 突起部
22 ガイド部材
23 回動制限部
25 リングピン(廻止め部材)