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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】作業機の油圧システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/042 20060101AFI20231218BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20231218BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20231218BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20231218BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F15B11/042
F15B11/02 C
F15B11/16 Z
F15B11/08 A
E02F9/22 L
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020165780
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057494
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐史
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-072302(JP,A)
【文献】実開平04-078306(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
E02F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出する作動油の流量を変更可能な可変容量油圧ポンプと、
作動油によって作動する複数の油圧アクチュエータと、
複数の切換位置に切り換え可能で且つ前記複数の切換位置のうち切り換えた位置によって前記複数の油圧アクチュエータへそれぞれ流す流量を制御する複数の制御弁と、
を備え、
前記複数の制御弁は、前記可変容量油圧ポンプから吐出した作動油が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された作動油を出力する出力ポートと、前記複数の切換位置のうち所定の切換位置である減少位置である場合に前記入力ポートに入力された作動油を減少させて前記出力ポートに出力する流量減少部とを含み、
前記複数の制御弁のうち、少なくとも1つの制御弁は、前記複数の切換位置のうち前記所定の切換位置とは異なる切換位置である増加位置である場合に前記入力ポートに入力された作動油を前記流量減少部よりも多く前記出力ポートに出力する流量増加部を有し
前記複数の油圧アクチュエータは、ブームシリンダと、作業具シリンダと、予備アクチュエータであり、
前記複数の制御弁は、前記ブームシリンダを制御するブーム制御弁と、前記作業具シリンダを制御する作業具制御弁と、前記予備アクチュエータを制御する第1予備制御弁であり、
前記ブーム制御弁、前記作業具制御弁は、前記流量減少部を有し、
前記第1予備制御弁は、前記流量減少部及び前記流量増加部を有している作業機の油圧システム。
【請求項2】
前記第1予備制御弁が前記増加位置に切り換えられているときに、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記第1予備制御弁は、前記増加位置から前記減少位置に戻す請求項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項3】
吐出する作動油の流量を変更可能な可変容量油圧ポンプと、
作動油によって作動する複数の油圧アクチュエータと、
複数の切換位置に切り換え可能で且つ前記複数の切換位置のうち切り換えた位置によって前記複数の油圧アクチュエータへそれぞれ流す流量を制御する複数の制御弁と、
を備え、
前記複数の制御弁は、前記可変容量油圧ポンプから吐出した作動油が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された作動油を出力する出力ポートと、前記複数の切換位置のうち所定の切換位置である減少位置である場合に前記入力ポートに入力された作動油を減少させて前記出力ポートに出力する流量減少部とを含み、
前記複数の制御弁のうち、少なくとも1つの制御弁は、前記複数の切換位置のうち前記所定の切換位置とは異なる切換位置である増加位置である場合に前記入力ポートに入力された作動油を前記流量減少部よりも多く前記出力ポートに出力する流量増加部を有し、
前記複数の油圧アクチュエータは、ブームシリンダと、作業具シリンダと、予備アクチュエータであり
前記複数の制御弁は、前記ブームシリンダを制御するブーム制御弁と、前記作業具シリンダを制御する作業具制御弁と、前記予備アクチュエータを制御する第1予備制御弁と、前記予備アクチュエータを制御する第2予備制御弁であり
前記ブーム制御弁、前記作業具制御弁及び前記第1予備制御弁は、前記流量減少部を含み、
前記第2予備制御弁は、前記流量増加部を含んでいる作業機の油圧システム。
【請求項4】
前記予備アクチュエータを操作する操作部材を備え、
前記操作部材の操作量が閾値未満である場合は、前記第1予備制御弁は前記減少位置に切り換わり、前記操作部材の操作量が閾値以上である場合は、前記第2予備制御弁は前記増加位置に切り換わる請求項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項5】
前記第2予備制御弁は、前記流量減少部を有し、
前記第2予備制御弁が前記増加位置に切り換えられているときに、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記第2予備制御弁は、前記増加位置から前記減少位置に戻す請求項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項6】
前記第1予備制御弁及び前記第2予備制御弁は、パイロット圧が作用する受圧部を有し、
前記第1予備制御弁の受圧部と前記第2予備制御弁の受圧部とは、パイロット油路で接続されていて、前記第2予備制御弁は、前記パイロット油路を介して前記第2予備制御弁の受圧部に圧力が作用した場合に、前記複数の切換位置のうち、中立位置に切り換え可能である請求項又はに記載の作業機の油圧システム。
【請求項7】
検出油路と、
前記検出油路に接続され且つ、前記第2予備制御弁の前記複数の切換位置に応じて切り換わる連動弁と、
前記検出油路のパイロット圧を検出する圧力検出部と、
を備え、
前記連動弁は、前記第2予備制御弁が前記複数の切換位置のうち前記増加位置に切り換わった場合に前記検出油路から前記連動弁に導入されるパイロット油を遮断する遮断位置に切り換え可能である請求項3~6のいずれかに記載の作業機の油圧システム。
【請求項8】
前記予備アクチュエータを操作する操作部材と、
前記操作部材の操作量に応じて制御信号を出力する制御装置と、
前記制御装置の前記制御信号に応じて出力するパイロット圧を変化させる作動弁と、
を備え、
前記作動弁は、パイロットを受圧する前記第2予備制御弁の受圧部及び前記連動弁の受圧部のいずれかに接続され、
前記制御装置は、前記操作部材の操作量が閾値以上である場合は、前記圧力検出部が検
出したパイロット圧が閾値以上になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を上昇させることで前記第2予備制御弁は前記増加位置に切り切り換える請求項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第2予備制御弁が前記増加位置に切り換えられた状態で、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記検出油路のパイロット圧が閾値未満になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を下降させることで前記第2予備制御弁を前記減少位置に切り換える請求項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項10】
記制御装置は、前記作動弁に出力する前記制御信号を変更し、且つ、前記制御信号を変更した場合に前記圧力検出部で検出されたパイロット圧力が閾値以上となる前記制御信号の値を記憶する請求項8又は9に記載の作業機の油圧システム。
【請求項11】
検出油路と、
前記検出油路に接続され且つ、前記第2予備制御弁の前記複数の切換位置に応じて切り換わる連動弁と、
前記検出油路のパイロット圧を検出する圧力検出部と、
を備え、
前記連動弁は、前記第2予備制御弁が前記複数の切換位置のうち前記増加位置に切り換わった場合に前記検出油路から前記連動弁に導入されるパイロット油を連通する連通位置に切り換え可能である請求項3~6のいずれかに記載の作業機の油圧システム。
【請求項12】
前記予備アクチュエータを操作する操作部材と、
前記操作部材の操作量に応じて制御信号を出力する制御装置と、
前記制御装置の前記制御信号に応じて出力するパイロット圧を変化させる作動弁と、
を備え、
前記作動弁は、パイロットを受圧する前記第2予備制御弁の受圧部及び前記連動弁の受圧部のいずれかに接続され、
前記制御装置は、前記操作部材の操作量が閾値以上である場合は、前記圧力検出部が検出したパイロット圧が閾値未満になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を下降させることで前記第2予備制御弁は前記増加位置に切り切り換える請求項11に記載の作業機の油圧システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記第2予備制御弁が前記増加位置に切り換えられた状態で、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記検出油路のパイロット圧が閾値以上になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を上昇させることで前記第2予備制御弁を前記減少位置に切り換える請求項12に記載の作業機の油圧システム。
【請求項14】
記制御装置は、前記作動弁に出力する前記制御信号を変更し、且つ、前記制御信号を変更した場合に前記圧力検出部で検出されたパイロット圧力が閾値未満となる前記制御信号の値を記憶する請求項12又は13に記載の作業機の油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機の油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変容量ポンプ及び複数の制御弁を搭載したスキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機として特許文献1に示すものが開示されている。
特許文献1の作業機は、吐出する作動油の流量を変更可能な可変容量油圧ポンプと、作動油によって作動する複数の油圧アクチュエータと、複数の位置に切り換え可能で且つ切り換えた切換位置によって油圧アクチュエータへ流す流量を制御する複数の制御弁とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-125560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機では、可変容量油圧ポンプによって吐出する作動油の流量を可変にすることができるため、複数の油圧アクチュエータのそれぞれが必要な作動油の流量を、それぞれの油圧アクチュエータに供給することができるという利点がある。特に、油圧アクチュエータが少量の作動油で作動する場合には少量の作動油を供給でき、油圧アクチュエータが多量の作動油で作動する場合は多量の作動油を供給することができる。特許文献1の作業機の可変容量油圧ポンプでは、LS差圧が一定になるように、当該ポンプを作動させることによって、作動油の流量を可変にしている。このような場合、LS差圧分だけ、馬力ロスが発生することがあった。
【0005】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、簡単に馬力ロスを出来るだけ少なくすることができる作業機の油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下の通りである。
本発明の一態様の作業機の油圧システムは、吐出する作動油の流量を変更可能な可変容量油圧ポンプと、作動油によって作動する複数の油圧アクチュエータと、複数の切換位置に切り換え可能で且つ前記複数の切換位置のうち切り換えた位置によって前記複数の油圧アクチュエータへそれぞれ流す流量を制御する複数の制御弁と、を備え、前記複数の制御弁は、前記可変容量油圧ポンプから吐出した作動油が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された作動油を出力する出力ポートと、前記複数の切換位置のうち所定の切換位置である減少位置である場合に前記入力ポートに入力された作動油を減少させて前記出力ポートに出力する流量減少部と、を含み、前記複数の制御弁のうち、少なくとも1つの制御弁は、前記複数の切換位置のうち前記所定の切換位置とは異なる切換位置である増加位置である場合に前記入力ポートに入力された作動油を前記流量減少部よりも多く前記出力ポートに出力する流量増加部を有し、前記複数の油圧アクチュエータは、ブームシリンダと、作業具シリンダと、予備アクチュエータである。そして、前記複数の制御弁は、前記ブームシリンダを制御するブーム制御弁と、前記作業具シリンダを制御する作業具制御弁と、前記予備アクチュエータを制御する第1予備制御弁であり、前記ブーム制御弁、前記作業具制御弁は、前記流量減少部を有し、前記第1予備制御弁は、前記流量減少部及び前記流量増加部を有している。
【0007】
本発明の一態様では、前記第1予備制御弁が前記増加位置に切り換えられているときに、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記第1予備制御弁は、前記増加位置から前記減少位置に戻す。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記複数の制御弁は、前記ブームシリンダを制御するブーム制御弁と、前記作業具シリンダを制御する作業具制御弁と、前記予備アクチュエータを制御する第1予備制御弁と、前記予備アクチュエータを制御する第2予備制御弁であり、前記ブーム制御弁、前記作業具制御弁及び第1予備制御弁は、前記流量減少部を含み、前記第2予備制御弁は、前記流量増加部を含んでいる。
【0009】
本発明の一態様では、前記作業機の油圧システムは、前記予備アクチュエータを操作する操作部材を備え、前記操作部材の操作量が閾値未満である場合は、前記第1予備制御弁は前記減少位置に切り換わり、前記操作部材の操作量が閾値以上である場合は、前記第2予備制御弁は前記増加位置に切り換わる。
また、本発明の一態様では、前記第2予備制御弁は、前記流量減少部を有し、前記第2予備制御弁が前記増加位置に切り換えられているときに、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記第2予備制御弁は、前記増加位置から前記減少位置に戻す。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記作業機の油圧システムは、前記第1予備制御弁及び前記第2予備制御弁は、パイロット圧が作用する受圧部を有し、前記第1予備制御弁の受圧部と前記第2予備制御弁の受圧部とは、パイロット油路で接続されていて、前記第2予備制御弁は、前記パイロット油路を介して前記第2予備制御弁の受圧部に圧力が作用した場合に、前記複数の切換位置のうち、中立位置に切り換え可能である。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記作業機の油圧システムは、検出油路と、前記検出油路に接続され且つ、前記第2予備制御弁の前記複数の切換位置に応じて切り換わる連動弁と、前記検出油路のパイロット圧を検出する圧力検出部と、を備え、前記連動弁は、前記第2予備制御弁が前記複数の切換位置のうち前記増加位置に切り換わった場合に前記検出油路から前記連動弁に導入されるパイロット油を遮断する遮断位置に切り換え可能である。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記作業機の油圧システムは、前記予備アクチュエータを操作する操作部材と、前記操作部材の操作量に応じて制御信号を出力する制御装置と、前記制御装置の前記制御信号に応じて出力するパイロット圧を変化させる作動弁と、を備え、前記作動弁は、パイロットを受圧する前記第2予備制御弁の受圧部及び前記連動弁の受圧部のいずれかに接続され、前記制御装置は、前記操作部材の操作量が閾値以上である場合は、前記圧力検出部が検出したパイロット圧が閾値以上になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を上昇させることで前記第2予備制御弁は前記増加位置に切り切り換える。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記第2予備制御弁が前記増加位置に切り換えられた状態で、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記検出油路のパイロット圧が閾値未満になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を下降させることで前記第2予備制御弁を前記減少位置に切り換える。
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記作動弁に出力する前記制御信号を変更し、且つ、制御信号を変更した場合に前記圧力検出部で検出されたパイロット圧力が閾値以上となる前記制御信号の値を記憶する。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記連動弁は、前記第2予備制御弁が前記複数の切換位置
のうち前記増加位置に切り換わった場合に前記検出油路から前記連動弁に導入されるパイロット油を連通する連通位置に切り換え可能である。
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記操作部材の操作量が閾値以上である場合は、前記圧力検出部が検出したパイロット圧が閾値未満になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を下降させることで前記第2予備制御弁は前記増加位置に切り切り換える。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記第2予備制御弁が前記増加位置に切り換えられた状態で、前記ブーム制御弁及び前記作業具制御弁のいずれかが前記減少位置に切り換えられる場合、前記検出油路のパイロット圧が閾値以上になるように前記作動弁から出力するパイロット圧を上昇させることで前記第2予備制御弁を前記減少位置に切り換える。
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記作動弁に出力するまた、本発明の一態様では、制御信号を変更し、且つ、また、本発明の一態様では、制御信号を変更した場合に前記圧力検出部で検出されたパイロット圧力が閾値未満となる前記制御信号の値を記憶する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、馬力ロスを出来るだけ少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における作業機の油圧システムの概略図である。
図2】複数の制御弁の拡大図である。
図3】第1予備制御弁の流量Q1を示した図である。
図4】第2実施形態における作業機の油圧システムの概略図である。
図5】第1予備制御弁の流量Q1、第2予備制御弁の流量Q2、合計の流量Q3を示す図である。
図6A】第3実施形態における作業機の油圧システムの概略図である。
図6B】第3実施形態の変形例を示す図である。
図6C図6A及び図6Bとは異なる変形例を示す図である。
図7A図6Aの切換時におけるパイロット圧の変化を示す図である。
図7B図6Aの切換時におけるパイロット圧の変化を示す図である。
図7C図6Cの切換時におけるパイロット圧の変化を示す図である。
図8】第4実施形態における作業機の油圧システムの概略図である。
図9】パイロット圧と操作量との関係を示す図である。
図10A】第4実施形態における作業機の油圧システムの変形例を示す図である。
図10B図10Aとは異なる変形例を示す図である。
図11A図4の変形例である。
図11B図11Aの変形例である。
図11C図11Bの変形例である。
図12】作業機の一例であるトラックローダを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
まず、作業機の全体の構成から説明する。作業機1は、図12に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。尚、図12では、作業機の一例としてコンパクトトラックローダを示しているが、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、バックホー等であってもよい。尚、本発明において、作業機の運転席8に着座した運転者の前側(図12の左側)を前方、運転者の後側(図12の右側)を後方、運転者の左側(図12の手前側)を左方、運転者の右側(図12の奥側)を右方として説明する。
【0019】
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3には運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。走行装置5は、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機が搭載されている。
作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、作業具シリンダ15とを有している。
【0020】
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。作業具シリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0021】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸17を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。枢支軸1
7は、枢支軸16の下方に設けられている。
【0022】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって枢支軸18の下方に設けられている。
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸21を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。枢支軸21は、ブーム10であって、枢支軸17の前方で且つ枢支軸17の上方に設けられている。
【0023】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って枢支軸17回りに前後揺動する。
【0024】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材とを接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
【0025】
作業具シリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。作業具シリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。左側及び右側の各走行装置5は、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
図1に示すように、作業機の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2と、複数の制御弁56とを備えている。
【0026】
第1油圧ポンプP1は、作動油タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。特に、第1油圧ポンプP1は、主に制御に用いる作動油を吐出する。第2油圧ポンプP2は、第1油圧ポンプP1とは異なる位置に設置された可変容量ポンプであって、作動油タンク22に貯留された作動油を変更可能である。なお、第1油圧ポンプP1から吐出した作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
【0027】
第1油圧ポンプP1の吐出側には、作動油(パイロット油)を流す吐出油路41が設けられている。吐出油路41には、複数の制御弁56が接続されている。
複数の制御弁56のそれぞれは、複数の位置(切換位置)に切り換え可能であって、油圧アクチュエータを制御する制御弁である。複数の制御弁56のそれぞれは、例えば、油圧アクチュエータの1つであるブームシリンダ14、作業具シリンダ15、予備アタッチメントに設けられた予備アクチュエータ26等を制御する。複数の制御弁56は、ブーム制御弁56Aと、作業具制御弁56Bと、第1予備制御弁56Cとを含んでいる。ブーム制御弁56Aは、ブームシリンダ14を制御する弁であって、作業具制御弁56Bは、作業具シリンダ15を制御する弁である。ブーム制御弁56A、作業具制御弁56Bは、それぞれパイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。ブーム制御弁56Aは、中立位置80c、第1位置80a、第2位置80bに切り換え可能である。作業具制御弁56Bは、パイロット圧によって、中立位置82c、第1位置82a、第2位置82bに切り換わる。
【0028】
ブーム制御弁56Aには、給排油路96を介してブームシリンダ14が接続され、作業
具制御弁56Bには、給排油路97を介して作業具シリンダ15が接続されている。
ブーム10、バケット11の操作は、運転席8の周囲に設けられた操作レバー58によって行うことができる。操作レバー58は、中立位置から、前後、左右、斜め方向に傾動可能に支持されている。操作レバー58を傾動操作することにより、操作レバー58の下部に設けられた各パイロット弁59A、59B、59C、59Dを操作することができる。
【0029】
操作レバー58を前側に傾動させると、下降用パイロット弁59Aが操作されて当該下降用パイロット弁59Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁56Aの受圧部に作用し、ブーム制御弁56Aが第1位置80aに切り換わり、ブーム10は下降する。
操作レバー58を後側に傾動させると、上昇用パイロット弁59Bが操作されて当該上昇用パイロット弁59Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁56Aの受圧部に作用し、ブーム制御弁56Aが第2位置80bに切り換わり、ブーム10は上昇する。
【0030】
操作レバー58を右側に傾動させると、バケットダンプ用のパイロット弁59Cが操作されてバケットダンプ用のパイロット弁59Cからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、作業具制御弁56Bの受圧部に作用し、作業具制御弁56Bが第1位置82aに切り換わり、バケット11がダンプ動作する。
操作レバー58を左側に傾動させると、バケットスクイ用のパイロット弁59Dが操作されて当該バケットスクイ用のパイロット弁59Dからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、作業具制御弁56Bの受圧部に作用し、作業具制御弁56Bが第2位置82bに切り換わり、バケット11がスクイ動作する。
【0031】
第1予備制御弁56Cは、予備アクチュエータ26を制御する弁であって、パイロット方式の直動スプール形4位置切換弁である。第1予備制御弁56Cは、パイロット圧によって、中立位置83c、第1位置83a、第2位置83b、第3位置83dに切り換わる。即ち、第1予備制御弁56Cは、第1位置83a、第2位置83b、第3位置83dに切り換わることによって、予備油圧アクチュエータへ向かう作動油の方向、流量及び圧力を制御する。
【0032】
図1及び図2に示すように、第1予備制御弁56Cには、第1給排油路81aと、第2給排油路81bが接続されている。第1給排油路81aの一端は、第1予備制御弁56Cの第1給排ポート84に接続され、第1給排油路81aの中途部は、接続部材50に接続され、第1給排油路81aの他端部は、予備アクチュエータ26に接続される。第2給排油路81bの一端は、第1予備制御弁56Cの第2給排ポート85に接続され、第2給排油路81bの中途部は、接続部材50に接続され、第2給排油路81bの他端部は、予備アクチュエータ26に接続される。
【0033】
図1に示すように、第1予備制御弁56Cは、複数の比例弁60によって操作される。比例弁60は、励磁によって開度が変更可能な電磁弁である。複数の比例弁60は、第1比例弁60Aと、第2比例弁60Bである。第1比例弁60A及び第2比例弁60Bには、油路100を介して第1油圧ポンプP1が接続されている。比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)と、第1予備制御弁56Cとは、パイロット油路86により接続されている。パイロット油路86は、比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)を介してパイロット油を第1予備制御弁56Cに流す油路である。
【0034】
したがって、第1比例弁60Aを開くと、パイロット油はパイロット油路86を介して第1予備制御弁56Cの受圧部87aに作用し、当該第1比例弁60Aの開度によって受圧部87aに付与(作用)するパイロット圧が決まる。また、第2比例弁60Bを開くと、パイロット油はパイロット油路86を介して第1予備制御弁56Cの受圧部87bに作用し、当該第2比例弁60Bの開度によって受圧部87bに付与(作用)するパイロット圧が決まる。
【0035】
比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)の励磁等は、制御装置(第1制御装置)88で行う。制御装置88は、CPU等から構成されている。制御装置88には
、スイッチ等の操作部材89が接続され、操作部材89の操作量に基づいて、第1比例弁60A及び第2比例弁60Bの開度が設定され、その結果、第1予備制御弁56Cの受圧部87a、87bに第1比例弁60A及び第2比例弁60Bのいずれかのパイロット圧が作用し、予備アクチュエータ26を操作することができる。
【0036】
なお、作業機の油圧システムは、ロードセンシングシステムを備えている。ロードセンシングシステムは、油圧アクチュエータの作動時の最高負荷圧と第2油圧ポンプP2の吐出圧との差圧が一定となるように第2油圧ポンプP2を制御する(第2油圧ポンプP2の吐出量を制御する)システムである。ロードセンシングシステムは、複数の制御弁56に接続された圧力補償弁75が接続されたPLS油路70と、PPS油路71と、レギュレータ72、傾転ピストン73とを有している。
【0037】
複数の制御弁56のうち、最も負荷圧が高い圧力(PLS信号圧)がPLS油路70に作用する一方、PPS油路71がレギュレータ72に伝達される。第2油圧ポンプP2の作動油の吐出圧であるPPS信号圧とPLS信号圧との差圧(PPS信号圧-PLS信号圧)が一定になるように、レギュレータ72は、傾転ピストン73を作動させる。
さて、図2に示すように、複数の制御弁56(ブーム制御弁56A、作業具制御弁56B、第1予備制御弁56C)は、入力ポート90と、出力ポート91とを有している。入力ポート90は、第2油圧ポンプP2(可変容量油圧ポンプ)から吐出した作動油が入力されるポートである。具体的には、ブーム制御弁56Aの入力ポート90は、油路41aを介して吐出油路41に接続され、作業具制御弁56Bは、油路41bを介して吐出油路41に接続され、第1予備制御弁56Cは、油路41cを介して吐出油路41に接続されている。出力ポート91は、入力ポート90に入力された作動油を出力する出力ポート91である。
【0038】
また、複数の制御弁56(ブーム制御弁56A、作業具制御弁56B、第1予備制御弁56C)は、流量減少部92を有している。流量減少部92は、入力ポート90に入力された作動油を減少させて出力ポート91に出力する部分である。言い換えれば、流量減少部92は、入力ポート90へ導入された作動油の圧力と、出力ポート91から出力される作動油の圧力とに差圧を発生させる部分である。流量減少部92は、それぞれの制御弁56の複数の切換位置(第1位置80a、82a、83a、第2位置80b、82b、83b、中立位置80c、81c、83c、第3位置83d)のうち、所定の切換位置である減少位置(第1位置80a、82a、83a、第2位置80b、82b、83b)に設けられている。
【0039】
つまり、流量減少部92は、ブーム制御弁56Aにおいては、減少位置である第1位置80a及び第2位置80bに設けられ、作業具制御弁56Bにおいては、減少位置である第1位置82a及び第2位置82bに設けられ、第1予備制御弁56Cにおいては、減少位置である第1位置83a、第2位置83bに設けられている。
流量減少部92は、減少位置である場合に入力ポート90と出力ポート91とを連通する内部油路92aと、内部油路92aに設けられ作動油が通過する断面積(開口面積)が他の部分よりも小さい絞り部92bとを含んでいる。絞り部92bの開口面積は、ブーム制御弁56A、作業具制御弁56B及び第1予備制御弁56Cにおいても略同じに設定されている。
【0040】
なお、ブーム制御弁56Aと、作業具制御弁56Bと、第1予備制御弁56Cのそれぞれにおいて、出力ポート91から出力された作動油は、油路76を介してそれぞれの制御弁56側へ戻り、減少位置に設けられた流量減少部92以外の油路(内部油路)95を通過して、給排油路81a、81b、96、97のそれぞれに出力される。
上述した実施形態では、複数の制御弁56(ブーム制御弁56A、作業具制御弁56B、第1予備制御弁56C)に流量減少部92を設けているが、複数の制御弁56のうち、少なくとも1つの制御弁は、入力ポート90に入力された作動油を流量減少部92よりも多く出力ポート91に出力する流量増加部93を有している。この実施形態では、第1予備制御弁56Cが流量増加部93を有している。
【0041】
流量増加部93は、流量減少部92に比べてより多くの作動油を出力ポート91に出力
する部分である。言い換えれば、流量増加部93は、入力ポート90へ導入された作動油の圧力と、出力ポート91から出力される作動油の圧力とに出来る限り差圧を発生させない部分であって、入力ポート90と出力ポート91とを連通していて、作動油が通過する開口面積(断面積)が流量減少部92よりも大きい。より詳しくは、流量増加部93は、第1予備制御弁56Cにおいて、増加位置である第3位置83dに設けられている。流量増加部93は、第2油圧ポンプP2の吐出量が最大になった場合に、略最大量の作動油を通過させることができる。第1予備制御弁56Cにおいても、出力ポート91から出力された作動油は、増加位置に設けられた流量増加部93以外の油路(内部油路)99を通過して、第1給排油路81aに出力される。
【0042】
図3は、流量減少部92及び流量増加部93を有する第1予備制御弁56Cのスプールを操作したときの流量Q1の一例を示している。図3では、横軸がスプールの移動量、縦軸が出力ポート91から出力される作動油の流量である。なお、図3の説明では、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bが操作されていない状態とする。
制御装置88は、操作部材89の操作量に応じて第1比例弁60Aの開度を大きくしていく。第1予備制御弁56Cの受圧部87aには第1比例弁60Aの開度に応じて作用するパイロット圧が上昇し、中立位置82c側から第1位置83a側に向けて切り換わる。ここで、第1予備制御弁56Cにおいて、スプールの位置が減少位置(ノッチ領域)である場合、即ち、第1位置83aである場合には、ラインL1に示すように、徐々に作動油の流量Q1が増加する。一方、スプールの位置が第1位置83a[減少位置(ノッチ領域)]を通過して、増加位置(ランド外し領域)である第3位置83dに達すると、ラインL2に示すように、作動油の流量Q1が一挙に増加する。
【0043】
ここで、制御装置88は、第1予備制御弁56Cが増加位置に切り換えられているときにおいて、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bが操作される場合、即ち、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁5Bのいずれかが減少位置(第1位置80a、82a、第2位置80b、82b)に切り換えられる場合、制御装置88は、操作部材89の操作量の操作量が増加位置に対応する操作量であっても、第1比例弁60Aを励磁する信号(制御信号)、即ち、電流を小さくして、第1予備制御弁56Cを増加位置(第3位置83d)から減少位置(第1位置83a)に戻す。つまり、制御装置88は、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bが操作される場合、第1予備制御弁56Cは、中立位置83cからのスプールのストローク量を減少させることで、第1予備制御弁56Cを増加位置から減少位置(第1位置83a)に切り換える。
【0044】
作業機の油圧システムは、吐出する作動油の流量を変更可能な可変容量油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)P2と、作動油によって作動する複数の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、作業具シリンダ15、予備アクチュエータ26)と、複数の位置に切り換え可能で且つ切り換えた切換位置によって油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、作業具シリンダ15、予備アクチュエータ26)へ流す流量を制御する複数の制御弁56(56A、56B、56C)と、を備え、複数の制御弁56(56A、56B、56C)は、可変容量油圧ポンプP2から吐出した作動油が入力される入力ポート90と、入力ポート90に入力された作動油を出力する出力ポート91と、複数の切換位置のうち所定の切換位置である減少位置である場合に入力ポート90に入力された作動油を減少させて出力ポート91に出力する流量減少部92とを含み、複数の制御弁56(56A、56B、56C)のうち、少なくとも1つの制御弁56は、複数の切換位置のうち所定とは異なる切換位置である増加位置である場合に入力ポート90に入力された作動油を流量減少部92よりも多く出力ポート91に出力する流量増加部93を有している。
【0045】
これによれば、複数の制御弁56において、流量減少部92に対応する減少位置に切り換えることによって、通常通り、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、作業具シリンダ15、予備アクチュエータ26)に必要な作動油を、可変容量油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)P2によって供給する一方、流量増加部93に対応する増加位置に切り換えることによって、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、作業具シリンダ15、予備アクチュエータ26)により多くの作動油を、可変容量油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)P2に
よって供給することができる。つまり、複数の制御弁56(56A、56B、56C)のうち、少なくとも1つの制御弁56が流量増加部93を有しているため、可変容量油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)P2を作動したときのLS差圧を略零にすることができ、簡単に馬力ロスを出来るだけ少なくすることができる。
【0046】
複数の制御弁56は、ブームシリンダ14を制御するブーム制御弁56Aと、作業具シリンダ15を制御する作業具制御弁56Bと、予備アクチュエータを制御する第1予備制御弁56Cとを有し、ブーム制御弁56A、作業具制御弁56Bは、流量減少部92を有し、第1予備制御弁56Cは、流量減少部92及び流量増加部93を有している。
これによれば、ブームシリンダ14(ブーム10)及び作業具シリンダ15(バケット11等の作業具)を作動させる場合には、ブームシリンダ14及び作業具シリンダ15の負荷に応じて、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bにより、ブーム10及びバケット11等の作業具を作動させることができる。一方で、多くの作動油が必要な大容量の予備アクチュエータ(大容量型予備アクチュエータ)が装着された場合には、第1予備制御弁56Cによって、大容量の予備アクチュエータを作動させることができ、標準の作動油で作動する予備アクチュエータ(標準側予備アクチュエータ)が装着された場合には、通常通り、予備アクチュエータを作動させることができる。
【0047】
第1予備制御弁56Cが増加位置に切り換えられているときに、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bのいずれかが減少位置に切り換えられる場合、第1予備制御弁56Cは、増加位置から減少位置に戻す。これによれば、ブーム10、バケット等の作業具11を作動させつつ、予備アクチュエータも作動させることができる。言い換えれば、ブーム10、バケット等の作業具11を作動させる場合には、予備アクチュエータのみに作動油が集中して流れることを抑制し、バランスよく作業を行うことができる。
[第2実施形態]
図4に示す第2実施形態の作業機の油圧システムは、予備制御弁を変形した実施形態である。図4に示すように、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bは示されていないが、上述した実施形態及び図1と同様である。また、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56B以外の構成についても同じである。第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0048】
図1及び図4に示すように、複数の制御弁56は、ブーム制御弁56Aと、作業具制御弁56B及び第1予備制御弁56Cの他に、第2予備制御弁56Dを有している。第1予備制御弁56Cは、パイロット方式の直動スプール形3位置切換弁であって、中立位置83cと、第1位置83aと、第2位置83bとに切り換わり、第1位置83a及び第2位置83bには、流量減少部92が設けられている。即ち、第2実施形態において、第1予備制御弁56Cには、流量増加部93は設けられていない。
【0049】
第2予備制御弁56Dは、第1予備制御弁56Cと同様に予備アクチュエータ26を制御する弁であって、パイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。第2予備制御弁56Dは、パイロット圧によって、第1位置110a、第2位置110b、中立位置110cに切り換わる。即ち、第2予備制御弁56Dは、第1位置110a、第2位置110b、中立位置110cに切り換わることによって、予備油圧アクチュエータへ向かう作動油の方向、流量及び圧力を制御する。
【0050】
第2予備制御弁56Dは、入力ポート90と、出力ポート91と、第3給排ポート104、第4給排ポート105と、流量減少部92と、流量増加部94とを有している。
入力ポート90は、吐出油路41から分岐した油路41dに接続されている。第3給排ポート104は、油路(第3給排油路)107を介して第1給排油路81aに接続され、第4給排ポート105は、油路(第4給排油路)108を介して第2給排油路81bに接続されている。
【0051】
流量減少部92は、第2予備制御弁56Dにおいて減少位置である第1位置110aに対応する部分に設けられ、流量増加部94は、増量位置である第2位置110bに対応する部分に設けられている。第2予備制御弁56Dにおいても、出力ポート91から出力された作動油は、油路76から第2予備制御弁56D側へ戻り、増加位置に設けられた流量
増加部94以外の油路(内部油路)99を通過して、第1給排油路81aに出力される。
【0052】
また、第2予備制御弁56Dは、第1受圧部121aと、第2受圧部121bとを有している。第1受圧部121aは、複数の比例弁60の中の1つである第3比例弁60Cに油路125を介して接続されている。第3比例弁60Cには、油路100が接続され、当該油路100を介して第1油圧ポンプP1から吐出した作動油が供給される。
第2予備制御弁56Dの第2受圧部121bは、パイロット油路86に接続されている。即ち、第1予備制御弁56Cの受圧部87bと、第2予備制御弁の第2受圧部121bとをパイロット油路86により接続されている。
【0053】
図5は、第1予備制御弁56Cのスプールを操作したときの流量Q1、第2予備制御弁56Dのスプールを操作したときの流量Q2、第1給排油路81aを流れる作動油の流量Q3との関係を示した図である。なお、図5の説明では、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bが操作されていない状態とする。
制御装置88は、操作部材89の操作量が第1範囲(小~中程度)A1の操作量(閾値未満)である場合、第1比例弁60Aの開度のみを操作量に応じて大きくしていく。この場合、第1予備制御弁56Cは、第1位置83a[減少位置(ノッチ領域)]であるため、ラインL10に示すように、徐々に作動油の流量Q1が増加する。また、操作部材89の操作量が第2範囲(中程度~やや高め)A2の操作量(閾値未満)である場合、第1比例弁60Aの開度も徐々に大きくする一方で、操作量に応じて第3比例弁60Cの開度を操作量に応じて大きくしていく。この場合、第2予備制御弁56Dは、第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]であるため、ラインL11に示すように、徐々に作動油の流量Q2が増加して、ラインL12に示すように、合計の流量Q3も徐々に増加する。
【0054】
また、操作部材89の操作量が閾値以上、即ち、第3範囲(やや高め~最大)A3の操作量である場合、第3比例弁60Cの開度を最大にする。第2予備制御弁56Dは、第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]であるため、ラインL12に示すように、ラインL12に示すように、合計の流量Q3は最大まで増加する。
なお、第2予備制御弁56Dを第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]にしている状況下において、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bが操作される場合、制御装置88は、第3比例弁60Cに出力する制御信号(電流)を下げることで、第2予備制御弁56Dを第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]、又は、中立位置110cにまで戻す。なお、第2予備制御弁56Dの第2受圧部121bがパイロット油路86に接続されているため、第1比例弁60Aから出力されるパイロット油の圧力(パイロット圧)によって、第1予備制御弁56Cを第2位置83bに切り換えた場合に、第2予備制御弁56Dを強制的に中立位置110cに戻すことができる。
【0055】
複数の制御弁56は、ブーム制御弁56Aと、作業具制御弁56Bと、第1予備制御弁56Cと、第2予備制御弁56Dとを有し、ブーム制御弁56A、作業具制御弁56B及び第1予備制御弁56Cは、流量減少部92を含み、第2予備制御弁56Dは、流量増加部93を含んでいる。これによれば、第1予備制御弁56C及び第2予備制御弁56Dのうち、第1予備制御弁56Cによって標準側予備アクチュエータを作動させることができる一方で、第2予備制御弁56Dによって大容量型予備アクチュエータを作動させることができる。つまり、少なくとも第1予備制御弁56Cと第2予備制御弁56Dとの2本の予備制御弁によって、標準側予備アクチュエータと大容量型予備アクチュエータとの両方を作動させることができる。特に、少なくとも第1予備制御弁56Cと第2予備制御弁56Dとの2本の予備制御弁によって、流量減少部92に対応する減少位置と、流量増加部93に対応する増加位置とに切り換えることができるため、見かけ上のスプールの移動量(第1予備制御弁56Cのスプールの移動量と、第2予備制御弁56Dのスプールの移動量との合計)が長くなり、流量制御の精度を向上させることができる。
【0056】
作業機の油圧システムは、予備アクチュエータを操作する操作部材89を備え、操作部材89の操作量が閾値未満である場合は、第1予備制御弁56Cは減少位置に切り換わり、操作部材89の操作量が閾値以上である場合は、第2予備制御弁56Dは増加位置に切り換わる。これによれば、例えば、図5に示したように、操作部材89の操作量が閾値未
満(第1範囲(小~中程度)A1、第2範囲(中程度~やや高め)A2では、予備アクチュエータ(標準側予備アクチュエータ、大容量型予備アクチュエータ)を操作量に応じて精密に細かく動かすことができ、操作部材89の操作量が閾値以上(第3範囲(やや高め~最大)A3)では、大容量型予備アクチュエータを作動させることができる。
【0057】
第2予備制御弁56Dは、流量減少部92を有し、第2予備制御弁56Dが増加位置に切り換えられているときに、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bのいずれかが減少位置に切り換えられる場合、第2予備制御弁56Dは、増加位置から減少位置に戻す。
これによれば、ブーム10、バケット等の作業具11を作動させつつ、予備アクチュエータも作動させることができる。言い換えれば、ブーム10、バケット等の作業具11を作動させる場合には、予備アクチュエータのみに作動油が集中して流れることを抑制し、バランスよく作業を行うことができる。
[第3実施形態]
図6Aに示す第3実施形態の作業機の油圧システムは、増加位置の検出を追加した実施形態である。図6Aに示すように、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bは示されていないが、上述した実施形態及び図1と同様である。また、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56B以外の構成についても同じである。第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明し、共通の構成については説明を省略する。図7Aは、図6Aの油圧システムにおいて、スプールの位置とパイロット圧との関係を示した図である。
【0058】
作業機の油圧システムは、連動弁130を備えている。連動弁130は、第2予備制御弁56Dの複数の切換位置に応じて切り換わる弁である。即ち、連動弁130は、第2予備制御弁56Dのスプールの動作に連動して切り換わる弁である。連動弁130は、3位置切換弁であって、遮断位置130aと、複数の連通位置130b、130cに切り換え可能である。連動弁130は、第2予備制御弁56Dが中立位置110cである場合に連通位置130cに切り換わり、第2予備制御弁56Dが第1位置110aである場合に連通位置130bに切り換わり、第2予備制御弁56Dが第2位置110bである場合に遮断位置130aに切り換わる。
【0059】
つまり、連動弁130は、第2予備制御弁56Dが複数の切換位置(110a、110b、110c)のうち第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換わった場合に遮断位置130aに切り換わり、第2予備制御弁56Dが第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]以外の位置に切り換わった場合に、連通位置130b、130cに切り換え可能である。
【0060】
連動弁130は、受圧部139を有している。連動弁130の受圧部139は、第3比例弁60C、即ち、作動弁に油路134を介して接続されている。第3比例弁60C(作動弁)から出力する作動油(パイロット油)の圧力を変化させることによって、連動弁130、即ち、第2予備制御弁56Dを切り換え可能である。
また、連動弁130は、検出油路135に接続されている。具体的には、連動弁130は入力ポート131と、出力ポート132とを有していて、入力ポート131に検出油路135が接続され、出力ポート132に排出油路136が接続されている。検出油路135は、油路100に接続されていて、絞り部137が接続されている。また、検出油路135を流れる作動油(パイロット油)の圧力(パイロット圧)を検出する圧力検出部138が接続されている。圧力検出部138は、圧力センサ又は圧力スイッチである。
【0061】
圧力検出部138は、制御装置88に接続されている。制御装置88は、第3比例弁(作動弁)60Cに出力する制御信号を変更可能である。例えば、制御装置88は、操作部材89の操作量を最小(中立位置)にしたときに対応する最小の制御信号(中立位置に対応する制御信号)から、操作量を最大(最大位置)にしたときに対応する最大の制御信号(最大位置に対応する制御信号)まで、当該制御信号の値、即ち、電流値を変化させる。つまり、制御装置88は、第3比例弁(作動弁)60Cによって、第2予備制御弁56Dのスプールを、中立位置110cから第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]を通過させて、第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]まで切り換える。
【0062】
ここで、第2予備制御弁56Dが、中立位置110c及び第1位置110a[減少位置
(ノッチ領域)]である場合、連動弁130は、連通位置130b、130cであるため、図7Aに示すように、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10は、略零である。第2予備制御弁56Dが第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]から第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換わった場合、連動弁130は、遮断位置130aに切り換わるため、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10は、急激に上昇する。即ち、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10(第3比例弁60C(作動弁)を作動させたときのパイロット圧)が急激に上昇した時点P10が、第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]から第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換わった時点である。即ち、時点P10の圧力が第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換わる閾値V11である。
【0063】
制御装置88は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10が急激に上昇した時点P10の制御信号の値(電流値)と、当該時点P10の制御信号の値(電流値)に対応する第3比例弁(作動弁)60Cの電流値を記憶する。制御装置88は、第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]になるときの制御信号の値(切換電流値)及び操作部材89の切換操作量との関係を記憶している。まとめると、制御装置88は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10が閾値V11を超える場合の第3比例弁(作動弁)60Cの電流値(切換電流値)、即ち、第3比例弁(作動弁)60Cが出力するパイロット圧を記憶したうえで、第3比例弁(作動弁)60Cを制御することによって、増加位置(ランド外し領域)に切り換わるようにする。
【0064】
制御装置88は、操作部材89の操作量が閾値(切換操作量)以上である場合は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10が閾値V11以上になるように第3比例弁60C(作動弁)から出力するパイロット圧を上昇させることで第2予備制御弁56Dを第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換える。制御装置88は、第3比例弁60C(作動弁)に出力する制御信号、即ち、電流値を切換電流値以上にする。
【0065】
また、制御装置88は、第2予備制御弁56Dが第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換えられた状態で、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bのいずれかが減少位置(第1位置80a、82a、第2位置80b、82b)に切り換えられる場合、検出油路135のパイロット圧が閾値V11未満になるように第3比例弁60C(作動弁)から出力するパイロット圧を下降させることで第2予備制御弁56Dを第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]に切り換える。制御装置88は、第3比例弁60C(作動弁)に出力する制御信号、即ち、電流値を切換電流値未満にする。
【0066】
なお、図6Bに示すように、連動弁130を変更してもよい。具体的には、連動弁130は、第2予備制御弁56Dが中立位置110cである場合に遮断位置130aに切り換わり、第2予備制御弁56Dが第1位置110aである場合に連通位置130bに切り換わり、第2予備制御弁56Dが第2位置110bである場合に遮断位置130cに切り換わる。図6Bの連動弁130の場合は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10は図7Bのように変化する。図7B図7Aと同様に、パイロット圧V10(第3比例弁60C(作動弁)を作動させたときのパイロット圧)が急激に上昇した時点P10が、第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]から第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換わった時点である。制御装置88は、操作部材89の操作量が閾値(切換操作量)以上である場合は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10が閾値V11以上になるように第3比例弁60C(作動弁)から出力するパイロット圧を上昇させることで第2予備制御弁56Dを第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換える。
【0067】
また、図6Cに示すように、連動弁130を変更してもよい。具体的には、連動弁130は、第2予備制御弁56Dが中立位置110cである場合に遮断位置130aに切り換わり、第2予備制御弁56Dが第2位置110bである場合に連通位置130cに切り換わり、第2予備制御弁56Dが第1位置110aである場合に遮断位置130bに切り換わる。つまり、第2予備制御弁56Dが第2位置110bに切り換わった場合、圧力検出部138が検出したパイロット圧が下降することから、第2予備制御弁56Dが第2位置110bに切り換わったことを検出することができる。
【0068】
図6Cの連動弁130の場合は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10は図7Cのように変化する。図7Cの場合は、図7A及び図7Bと異なり、パイロット圧V10(第3比例弁60C(作動弁)を作動させたときのパイロット圧)が急激に下降した時点P11が、第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]から第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換わった時点である。制御装置88は、操作部材89の操作量が閾値(切換操作量)以上である場合は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10が閾値未満V12、例えば、パイロット圧V10を略零となるように第3比例弁60C(作動弁)から出力するパイロット圧を下降させることで第2予備制御弁56Dを第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換える。
【0069】
図6Cの場合も制御装置88は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10が急激に下降した時点P11の制御信号の値(電流値)と、当該時点P11の制御信号の値(電流値)に対応する第3比例弁(作動弁)60Cの電流値を記憶する。制御装置88は、第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]になるときの制御信号の値(切換電流値)及び操作部材89の切換操作量との関係を記憶している。まとめると、制御装置88は、圧力検出部138が検出したパイロット圧V10が閾値V12未満になる場合の第3比例弁(作動弁)60Cの電流値(切換電流値)、即ち、第3比例弁(作動弁)60Cが出力するパイロット圧を記憶したうえで、第3比例弁(作動弁)60Cを制御することによって、増加位置(ランド外し領域)に切り換わるようにする。
【0070】
また、制御装置88は、制御装置88は、第2予備制御弁56Dが第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]に切り換えられた状態で、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bのいずれかが減少位置(第1位置80a、82a、第2位置80b、82b)に切り換えられる場合、検出油路135のパイロット圧が閾値V11よりも大きくなるように第3比例弁60C(作動弁)から出力するパイロット圧を上昇させることで第2予備制御弁56Dを第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]に切り換える。制御装置88は、第3比例弁60C(作動弁)に出力する制御信号、即ち、電流値を切換電流値以上にする。
【0071】
作業機の油圧システムは、検出油路135と、検出油路135に接続され且つ第2予備制御弁56Dの複数の切換位置に応じて切り換わる連動弁130と、検出油路135のパイロット圧を検出する圧力検出部138と、を備え、連動弁130は、第2予備制御弁56Dが複数の切換位置のうち増加位置に切り換わった場合に検出油路135から連動弁130に導入されるパイロット油を遮断する遮断位置130aに切り換え可能である。
【0072】
これによれば、第2予備制御弁56Dの切換位置(減少位置、増加位置)の切換に応じて、連動弁130を遮断位置130aに切り換えることで、圧力検出部138が検出した圧力(パイロット圧)によって、第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]であるかをより正確に判断することができる。
作業機の油圧システムは、予備アクチュエータを操作する操作部材89と、操作部材89の操作量に応じて制御信号を出力する制御装置88と、制御装置88の制御信号に応じて出力するパイロット圧を変化させる作動弁(比例弁60C)と、を備え、作動弁(比例弁60C)は、第2予備制御弁56Dのパイロットを受圧する受圧部及び連動弁130のパイロットを受圧する受圧部のいずれかに接続され、制御装置88は、操作部材89の操作量が閾値以上である場合は、圧力検出部138が検出したパイロット圧が閾値以上になるように作動弁(比例弁60C)から出力するパイロット圧を上昇させることで第2予備制御弁56Dは増加位置に切り切り換える。
【0073】
これによれば、操作部材89の操作量が閾値以上である場合に、第2予備制御弁56Dを正確に第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]にすることができる。
制御装置88は、第2予備制御弁56Dが増加位置に切り換えられた状態で、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bのいずれかが減少位置に切り換えられる場合、検出油路135のパイロット圧が閾値未満になるように作動弁(比例弁60C)から出力するパイロット圧を下降させることで第2予備制御弁56Dを減少位置に切り換える。
【0074】
これによれば、操作部材89の操作量が閾値未満である場合に、第2予備制御弁56Dを正確に第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]にすることができる。
制御装置88は、作動弁(比例弁60C)に出力する制御信号を変更し、且つ、制御信号を変更した場合に圧力検出部138で検出されたパイロット圧力が閾値以上となる制御信号の値を記憶する。これによれば、第2予備制御弁56Dを第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]にするときの制御装置88が出力する制御信号の値と、第2予備制御弁56Dを第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]にするときの制御装置88が出力する制御信号の値と、を正確に対応付けることができ、制御精度を向上させることができる。
【0075】
連動弁130は、第2予備制御弁56Dが複数の切換位置のうち増加位置に切り換わった場合に検出油路135から連動弁130に導入されるパイロット油を連通する連通位置130cに切り換え可能である。これによれば、連動弁130を連通位置130cに切り換えることで、圧力検出部138が検出した圧力(パイロット圧)によって、第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]であるかをより正確に判断することができる。
【0076】
制御装置88は、操作部材89の操作量が閾値以上である場合は、圧力検出部138が検出したパイロット圧が閾値V12未満になるように作動弁(比例弁60C)から出力するパイロット圧を下降させることで第2予備制御弁56Dは増加位置に切り切り換える。
これによれば、操作部材89の操作量が閾値以上である場合に、第2予備制御弁56Dを正確に第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]にすることができる。
【0077】
制御装置88は、第2予備制御弁56Dが増加位置に切り換えられた状態で、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bのいずれかが減少位置に切り換えられる場合、検出油路135のパイロット圧が閾値V12未満になるように作動弁(比例弁60C)から出力するパイロット圧を下降させることで第2予備制御弁56Dを減少位置に切り換える。
これによれば、操作部材89の操作量が閾値未満である場合に、第2予備制御弁56Dを正確に第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]にすることができる。
【0078】
制御装置88は、作動弁(比例弁60C)に出力する制御信号を変更し、且つ、制御信号を変更した場合に圧力検出部138で検出されたパイロット圧力が閾値V12未満となる制御信号の値を記憶する。
これによれば、第2予備制御弁56Dを第1位置110a[減少位置(ノッチ領域)]にするときの制御装置88が出力する制御信号の値と、第2予備制御弁56Dを第2位置110b[増加位置(ランド外し領域)]にするときの制御装置88が出力する制御信号の値と、を正確に対応付けることができ、制御精度を向上させることができる。
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態における作業機の油圧システムを示している。第4実施形態の作業機の油圧システムは、第1実施形態の作業機の油圧システムの変形例である。図8に示すように、第1予備制御弁56Cには、第3位置83dが設けられていない。即ち、第1予備制御弁56Cには、流量増加部93が設けられていない。その他の制御弁56、ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bは、第1実施形態と同様である。
【0079】
図9は、操作部材89の操作量と、第1予備制御弁56Cのスプールの移動量、即ち、第1比例弁60Aから受圧部87aに作用させるパイロット圧を示している。
図9に示すように、操作部材89のみ(第1予備制御弁56Cのみ)が操作されている状態(単独操作)においては、ラインL51に示すように、制御装置88は、第1比例弁60Aに出力する制御信号(電流)等を操作部材89の操作量に応じて上昇させ、第1予備制御弁56Cの受圧部87aに作用させる圧力を徐々に上昇させる。
【0080】
一方、操作部材89(第1予備制御弁56C)と、操作レバー58(ブーム制御弁56A及び作業具制御弁56Bのいずれか、又は、両方)が操作されている状態(複合操作)においては、ラインL52に示すように、制御装置88は、第1比例弁60Aに出力する制御信号(電流)等を操作部材89の操作量に応じて途中まで上昇させ、操作部材89の操作量が所定以上になった場合は、第1比例弁60Aに出力する制御信号(電流)をラインL51よりも低くする。つまり、制御装置88は、第1予備制御弁56Cが単独操作で
ある場合には、操作部材89に応じて徐々に、第1予備制御弁56Cのスプールを最小位置から最大位置まで移動させる。一方で、制御装置88は、第1予備制御弁56Cが複合操作である場合には、操作部材89に応じて徐々に第1予備制御弁56Cのスプールを最小位置から途中位置まで移動させる一方、途中位置(最大位置よりも中立側の位置)に停止させ、最大位置に達しないようにする。
【0081】
特に、制御装置88は、ブーム制御弁56Aと第1予備制御弁56Cとの複合動作した場合に、操作部材89の操作量が最大であっても、第1比例弁60Aから出力するパイロット圧を、最大値よりも小さくすることができる。上述した実施形態では、第1比例弁60Aについて説明したが、これに代えて、第2比例弁60Bを動作させる場合も第1比例弁60Aと同様である。即ち、第1比例弁60Aを第2比例弁60Bに読み替えればよい。
【0082】
図10Aに示すように、第1予備制御弁56Cに連動弁230を適用してもよい。図10Aに示すように、連動弁230は、検出油路135に接続されている。検出油路135には、検出油路135を流れる作動油(パイロット油)の圧力(パイロット圧)を検出する圧力検出部138が接続されている。圧力検出部138は、圧力センサ又は圧力スイッチである。なお、検出油路135と第2油圧ポンプP2とに繋がる油路には、絞り部240が設けられている。
【0083】
連動弁230は、第1予備制御弁56Cが中立位置81cである場合に、連通位置230cに切り換わり、第1予備制御弁56Cが第1位置83aである場合、連通位置230aに切り換わり、第1予備制御弁56Cが第2位置83bである場合、連通位置230bに切り換わり、第1予備制御弁56Cが第3位置83dである場合、遮断位置230dに切り換わる。つまり、第1予備制御弁56Cが第3位置83dに切り換わった場合、圧力検出部138のパイロット圧が上昇することから、第1予備制御弁56Cが第3位置83dに切り換わったことを検出することができる。
【0084】
図10Bに示すように、連動弁230を変更してもよい。連動弁230は、第1予備制御弁56Cが中立位置81cである場合に、遮断位置230cに切り換わり、第1予備制御弁56Cが第1位置83aである場合、遮断位置230aに切り換わり、第1予備制御弁56Cが第2位置83bである場合、遮断位置230bに切り換わり、第1予備制御弁56Cが第3位置83dである場合、連通位置230dに切り換わる。つまり、第1予備制御弁56Cが第3位置83dに切り換わった場合、圧力検出部138のパイロット圧が下降することから、 第1予備制御弁56Cが第3位置83dに切り換わったことを検出することができる。
【0085】
図11Aに示すように、図4の第2予備制御弁56Dを変更してもよい。第2予備制御弁56Dは、主制御弁190と切換弁191とを含んでいる。主制御弁190は、2位置切換弁であり、第1位置190aと、第2位置190bとに切換え可能である。主制御弁190には、第1位置190bに対応する位置に流量増加部94が設けられている。主制御弁190の入力ポート90は、油路41dに接続され、第3給排ポート104は油路107に接続されている。油路107には、主制御弁190から第1給排油路81aに向けて作動油が流れるのを許容し且つ第1給排油路81aから主制御弁190に向けて作動油が流れるのを阻止する逆止弁195が設けられている。切換弁191は、主制御弁190を切り換える弁であり、入力ポート側が油路196を介してパイロット油路86に接続され、出力ポート側が主制御弁190の受圧部に接続されている。油路196には絞り部197が設けられている。
【0086】
切換弁191は、制御装置88の制御信号によって第1位置191aと第2位置191bとに切換え可能である。切換弁191が第2位置191bに切り換えられると、パイロット油路86の作動油(パイロット油)のパイロット圧が主制御弁190に作用し、当該主制御弁190が第2位置190bに切り換えられる。これにより、油路41dの作動油を、主制御弁190(流量増加部94)を通過させて油路107に流すことができる。
【0087】
なお、図11Bに示すように、第1予備制御弁56Cに流量減少部92及び内部油路99を設けた場合は、主制御弁190の出力ポート144側を油路76に接続してもよい。
また、図11Aでは、第2予備制御弁56Dを主制御弁190と切換弁191とで構成し、パイロット油で主制御弁190を切り換える方式であったが、これに代えて、図11Cに示すように、主制御弁190をレバーなどの操作部材によって直接切り換える直動式の切換弁に変更してもよい。
【0088】
また、図11A図11Cにおいて、ブーム制御弁56A(ブーム10)、作業具制御弁56B(操作具)が作動する場合は、主制御弁190の流量増加部94を閉鎖する。即ち、スイッチ等の操作部材によって作動油を増量するという指令があった場合でも、少なくともブーム制御弁56A及び作業具制御弁56B(操作具)のいずれかが作動させる際には、制御装置88は切換弁191を第1位置191aに切り換えることで、主制御弁190を第2位置190bから第1位置190aに切り換える。加えて、少なくともブーム制御弁56A及び作業具制御弁56B(操作具)のいずれかが作動させる際には、第1予備制御弁56Cは、第1位置83aを維持して流量減少部92を介して作動油を予備アタッチメントに供給する。
【0089】
また、図11A図11Cにおいて、油路196は、パイロット油路86に接続されているが、油路100に接続されていてもよい。
また、上述した実施形態において、ブーム制御弁56A(ブーム10)、作業具制御弁56B(操作具)が操作されることを検出する方法はどのようなものであってもよい。例えば、制御装置88に状態検出装置103を設ける。状態検出装置103は、少なくともブーム10、バケット11等の作業具の操作及び動作のいずれかを検出する装置であり、ブーム10、バケット11の角度を検出する角度センサ、パイロット弁59A~59Dの圧力を検出する圧力センサ、ブームシリンダ14や作業具シリンダ15の伸縮を検出する伸縮検知センサ、操作レバー58の操作方向を検出するセンサ等である。状態検出装置103によって、ブーム制御弁56A(ブーム10)及び作業具制御弁56B(操作具)が操作されることを検出することができる。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 :作業機
10 :ブーム
11 :作業具
14 :ブームシリンダ
15 :作業具シリンダ
26 :予備アクチュエータ
56 :制御弁
56A :ブーム制御弁
56B :作業具制御弁
56C :第1予備制御弁
56D :第2予備制御弁
76 :油路
86 :パイロット油路
87a :受圧部
87b :受圧部
88 :制御装置
89 :操作部材
90 :入力ポート
91 :出力ポート
92 :流量減少部
93 :流量増加部
94 :流量増加部
130 :連動弁
131 :入力ポート
132 :出力ポート
135 :検出油路
138 :圧力検出部
139 :受圧部
144 :出力ポート
196 :油路
230 :連動弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12