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  • 特許-超高圧フィルタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】超高圧フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/11 20060101AFI20231218BHJP
   B01D 35/30 20060101ALI20231218BHJP
   B01F 23/41 20220101ALI20231218BHJP
   B01F 25/20 20220101ALI20231218BHJP
   B02C 19/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B01D29/10 510D
B01D35/30
B01F23/41
B01F25/20
B02C19/06 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020211159
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097908
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】片山 敬一
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦明
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-083133(JP,A)
【文献】特開2003-314183(JP,A)
【文献】特開昭58-112014(JP,A)
【文献】特開2010-065127(JP,A)
【文献】実開昭63-168381(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0175291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-39/20
B01F21/00-25/90
B02C19/00-25/00
B05B1/00-3/18
B05B7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された原料を噴射チャンバーに供給する前に、前記原料を選別する超高圧フィルタであって、
円筒状のフィルタ部であって、
ウェッジワイヤースクリーンと、
金属フィルタと、
を有する二層構造のフィルタ部と、
前記フィルタ部を押さえるフィルタ押さえ部と、
前記フィルタ部を嵌め込み可能な凹状の溝部を有する本体と、
を有する、超高圧フィルタ。
【請求項2】
前記金属フィルタは、前記ウェッジワイヤースクリーンの外周に配置される、
請求項1に記載の超高圧フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ部の一端を密閉する蓋部材を更に有する、
請求項1又は2に記載の超高圧フィルタ。
【請求項4】
前記金属フィルタは、メッシュ構造である、
請求項1~のいずれかに記載の超高圧フィルタ。
【請求項5】
前記金属フィルタは、銅、チタン、アルミ、ステンレスのいずれか1つの金属材料である、
請求項1~のいずれかに記載の超高圧フィルタ。
【請求項6】
前記ウェッジワイヤースクリーンと前記金属フィルタのサイズの比率は、1:1~1:1.5である、
請求項1~のいずれかに記載の超高圧フィルタ。
【請求項7】
前記フィルタ押さえ部は、内部に貫通穴を有し、
前記貫通穴の先端には、前記貫通穴の中心線に対して垂直方向に複数の開口が形成される、
請求項1~のいずれかに記載の超高圧フィルタ。
【請求項8】
前記複数の開口は、前記ウェッジワイヤースクリーンと前記金属フィルタの下流側に配置される、
請求項に記載の超高圧フィルタ。
【請求項9】
前記原料は、繊維状原料である、
請求項1~のいずれかに記載の超高圧フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象の原料の高圧流体同士を衝突させて、微粒化、分散、乳化等を行う装置における超高圧フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒化、分散、乳化等を目的とした湿式微粒化装置等に用いる超高圧フィルタとして、例えば、ワイヤー間の網目間隙に原料を通すことによって大径の粒子を分散、解砕するウェッジワイヤーフィルターが知られている。チタン酸バリウムなどの極めて硬い粒子を対象とする場合、この硬質粒子が高速で狭い網目を通過すると、網目を構成するSUS製ワイヤーからなるフィルタ面がアブレージョンやエロージョンによって磨耗あるいは壊食されていき、ついには大径の粒子がそのままフィルタを通過してノズルの目詰まりを引き起こすことがある。
【0003】
このような課題を解決するために、加圧手段を介して加圧された原料液を噴射ノズルへ送る配管途中に配置され、原料液中の噴射ノズルの噴射口径より大径の材料粒子を解砕するフィルタ装置が開示されている(例えば、特許第4933760号公報)。このフィルタ装置は、高硬度部材製の第1のリング部材と、第1のリング部材とは別体の第2の部材と、第1のリング部材と第2の部材との間に形成される間隙からなる原料液流路と、を有する。間隙は、噴射ノズルの噴射口径より小さい幅寸法を有する。そして、噴射ノズルの噴射口径より大径の材料粒子を幅寸法以下に解砕する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフィルタ装置では、第1のリング部材と第2の部材を配置しなければならず、さらに、各部材の噴射口径を調整する必要があり、メンテナンス性の点で課題があった。
【0005】
本発明では、単一構造かつ各種繊維状の原料に対してもフィルタ処理を行うことのできる超高圧フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超高圧フィルタは、
加圧された原料を噴射チャンバーに供給する前に、前記原料の粒子を選別する超高圧フィルタであって、
溝部を有する本体と、
前記溝部に配置されるフィルタ部であって、
凹凸フィルタと、
金属フィルタと、
を有する二層構造のフィルタ部と、
前記フィルタ部を押さえるフィルタ押さえ部と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の超高圧フィルタによれば、単一構造かつ各種繊維状の原料に対してもフィルタ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の微粒化装置100の構成図
図2】本実施形態の超高圧フィルタ1を示す断面図
図3】(a)実施例のフィルタ部8の斜視図、(b)実施例のフィルタ部8の断面図、(c)別の実施例のフィルタ部8の斜視図(d)別の実施例のフィルタ部8の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0010】
(微粒化装置の構成)
本実施形態の微粒化装置100は、図1に示すように、原料タンク101と、給液ポンプ102と、増圧機103と、噴射チャンバー104とを有する。原料タンク101は、原料M(スラリー)を貯留する。給液ポンプ102は、原料タンク101の原料Mを圧送する。増圧機103は、給液ポンプ102から圧送される原料Mを加圧する。超高圧フィルタ1は、加圧された原料Mをフィルタ処理する。噴射チャンバー104は、微粒化処理を行う。
【0011】
(超高圧フィルタの構成)
本実施形態の超高圧フィルタ1は、図2に示すように、超高圧フィルタの本体2と、フィルタ部8とを有する。フィルタ部8は、本体2内の溝部3に配置され、フィルタ押さえ部4で固定される。フィルタ部8は、それぞれ円筒状の凹凸フィルタ10および金属フィルタ11の二層構造を有する。
【0012】
超高圧フィルタの本体2は、増圧機103から供給される加圧後の原料Mが本体流路2aを通過し、噴射チャンバー104まで運び、フィルタ処理を行う。本体2は、溝部3を有する。溝部3は、本体流路2aの下流側に位置する。溝部3は、本体流路2aよりも大きな径を有する。フィルタ部8は、溝部3に配置される。フィルタ部8をフィルタ押さえ部4で嵌め込み、フィルタ押さえ部4と本体2を固定部材7で固定することで、フィルタ部8をより安定的に固定できる。
【0013】
溝部3の形状は、フィルタ部8が嵌め込むことのできる形状であればよく、例えば、円筒形状である。溝部3の径は、フィルタ部8の外形よりも大きい。そのため、フィルタ部8と溝部3の間に形成される隙間内に原料Mが流れ込んだ後、凹凸フィルタ10および金属フィルタ11を通過しやすい。
【0014】
本体流路2aと溝部3の間に、補助溝部3aを形成してもよい。例えば、補助溝部3aの径を溝部3よりも小さくする。これにより、内部に進行するに従って溝が広がる形状となり、原料Mの通過を滑らかなものとし、超高圧フィルタの本体2内での詰まりの防止に繋がる。
【0015】
フィルタ押さえ部4は、フィルタ部8を本体2に押さえる。フィルタ押さえ部4の内部には、貫通穴5が形成される。貫通穴5は、凹凸フィルタ10および金属フィルタ11の内部空間に連通する。貫通穴5の外形は、本体流路2aと同等の大きさである。そのため、貫通穴5の特定箇所に負担がかかり難い。
【0016】
フィルタ押さえ部4は、本体2との連結に伴う密閉性を確保するために、段差形状としてもよい。具体的には、本体2の本体開口部2bとフィルタ押さえ部4の中間部4cを一次的な連結箇所とする。中間部4cの径を、溝部3の径よりも大きくすることによって、本体開口部2bと中間部4cが重なり合う箇所ができる。そのため、溝部3内に充填される原料Mが外部に漏れ出ることを回避できる。
【0017】
フィルタ押さえ部4のフィルタ密閉部4bは、凹凸フィルタ10および金属フィルタ11の端面と連結する。これにより、フィルタ内を密閉できる。フィルタ密閉部4bの形状は、例えば、凹凸フィルタ10および金属フィルタ11の端面と垂直な端面や、先端に向かって鋭角となるテーパ状である。
【0018】
フィルタ押さえ部4の先端部4aには、貫通穴5の中心線に対して垂直方向に複数の開口6が形成される。金属フィルタ11と凹凸フィルタ10を通過した原料Mは、内周方向へ向かって再び統合される。開口6が貫通穴5の中心線に対して垂直方向に形成されることで、再び統合された原料M同士が貫通穴5に誘導されやすい。
例えば、4つの開口6を均等に配置することにより、4方向から均等に原料Mを引き入れることができる。なお、開口6の個数は4つに限られるものではなく、2個、6個、8個等、超高圧フィルタ1の大きさや原料Mのサイズ等に応じて、適宜変更できる。
【0019】
複数の開口6は、凹凸フィルタ10および金属フィルタ11の下流側に配置されることが望ましい。原料Mが増圧機103側から超高圧フィルタ1に供給され、噴射チャンバー104で処理される。ここで、開口6が上流側に配置されると下流側の空間に原料Mが貯まりやすくなってしまう。開口6を下流側に配置することによって、原料Mをスムーズに供給できる。
【0020】
フィルタ部8は、例えば、円筒状の部材である。フィルタ部8は、円筒状以外の形状であっても良いが、原料Mを全方向からフィルタ処理することから、円筒状であることが望ましい。
凹凸フィルタ10および金属フィルタ11は、リング部9または蓋部材12に配置される。
【0021】
フィルタ部8は、リング部9または蓋部材12に凹凸フィルタ10と金属フィルタ11を、周縁部で溶着した一体構造である。溶着の方法は、例えば、レーザ溶接、はんだ溶接等である。ロウ付け等は、凹凸フィルタ10と金属フィルタ11の複合構造の一部が埋まってしまい、開口率が悪くなってしまうため、複合構造の一部が埋まらない方法が望ましい。
図3(a)、(b)に示す実施例のように、凹凸フィルタ10と金属フィルタ11の一端は、蓋部材12で密閉される。凹凸フィルタ10と金属フィルタ11の他端は、フィルタ押さえ部4で密閉される。また、図3(c)、(d)に示す別の実施例のように、凹凸フィルタ10と金属フィルタ11の一端または両端をリング部9で溶着し、リング部9を蓋部材12で閉塞させてもよい。
【0022】
凹凸フィルタ10は、原料Mを通過させフィルタ処理を行う。凹凸フィルタ10は、フィルタ部8の形状に合わせて円筒状である。凹凸フィルタ10の表面は、例えば、凹凸形状、多角形状である。凹凸フィルタ10は、例えば、ウェッジワイヤースクリーンが望ましい。凹凸の幅(スロットサイズ、ロッドピッチ等)、角度、寸法、開口率等は、原料Mの粒形や繊維長等を加味して、最も効果の得られるものを選択できる。ウェッジワイヤースクリーンの場合、比較的硬質な原料(粒子)に対しても適用でき、耐圧性に優れている。そのため、フィルタ部8の内側にそうした強固な部材を配置することによって、二次フィルタとして機能し、超高圧フィルタの長寿命化を図ることができる。
【0023】
金属フィルタ11は、凹凸フィルタ10と同様、フィルタ部8の形状に合わせて円筒状である。金属フィルタ11は、凹凸フィルタ10の外周に配置される。金属フィルタ11は、原料Mの一次フィルタとして機能する。金属フィルタ11は、例えば、メッシュ構造である。メッシュ構造としては、平織金網、綾織金網、平畳織金網、綾畳織金網等の織り方で成形される金属フィルタ11の目開きや開口率と、原料Mの粒形や繊維長等を加味して、最も効果の得られるものを選択できる。金属フィルタ11は、例えば、銅、チタン、アルミ、ステンレスである。
【0024】
以下、本実施形態の微粒化装置100における処理手順について説明する。
まず、原料タンク101内に処理対象となる原料Mを投入し、スラリー状に調整する。次に、原料タンク101内の原料Mが給液ポンプ102によって、増圧機103の増圧室内に圧送される。圧送された原料Mは、増圧機103によって加圧される。そして、加圧された原料Mは、超高圧フィルタ1を通った後、噴射チャンバー104に供給され、噴射される。なお、この処理は1回だけでなく、複数回繰り返してもよい。
【0025】
ここで、超高圧フィルタ1を通る際の手順を詳細に説明する。
加圧された原料Mは、超高圧フィルタ1の入口から、内部の流路を通って、溝部3の内部に充填されていく。充填された原料Mは、金属フィルタ11の外周部および凹凸フィルタ10の内部を通る際に粒子、形状等が均一化されるように分別される。分別された原料Mは、開口6からフィルタ押さえ部4の貫通穴5を経由して、噴射チャンバー104へ供給される。
【0026】
(検証テスト)
凹凸フィルタ10と金属フィルタ11の比率について、検証テストを行った。検証テストは、セルロースマイクロファイバー(100μm)を増圧機で245MPaに昇圧し、流量0.5?/minでチャンバー(ノズル径100μm)から5パス噴射することで、目詰まりが発生するか否かを検証した。結果を以下の表1に示す。結果の記号については、〇:通過(目詰まりなし)、△一部通過(著しい目詰まりなし)、×(目詰まりあり)として表現する。
【0027】
【表1】
【0028】
比較例1は、凹凸フィルタ10としてウェッジワイヤースクリーン(100μm)単体を配置したものである。比較例2は、金属フィルタ11として金属メッシュ(100μm)単体を配置したものである。比較例1、2では、いずれもフィルタ自体やチャンバーでの目詰まりが発生した。
【0029】
実施例1~3は、凹凸フィルタ10としてのウェッジワイヤースクリーンと、金属フィルタ11としての金属メッシュを二層構造にしたものである。実施例1~3は、表1に示すように、それぞれ、ウェッジワイヤースクリーンを100μm、60μm、50μm、金属メッシュを100μm、75μm、60μmとして組合せたものである。
【0030】
実施例1は、フィルタ側で微量の目詰まりが発生した。実施例2および実施例3では、目詰まりが発生しなかった。これより、一次フィルタである金属フィルタ11のメッシュ幅(サイズ)は、二次フィルタである凹凸フィルタ10の凹凸の幅(サイズ)よりも大きいことが好ましい。具体的には、凹凸フィルタ10は、50~100μmが望ましく、金属フィルタ11は60~100μmが望ましい。凹凸フィルタ10と金属フィルタ11のサイズの比率は、1:1~:1:5、さらに好ましくは1:1~:1:3であることが望ましい。
【0031】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 超高圧フィルタ
2 本体
2a 本体流路
2b 本体開口部
3 溝部
3a 補助溝部
4 フィルタ押さえ部
4a 先端部
4b フィルタ密閉部
4c 中間部
5 貫通穴
6 開口
7 固定部材
8 フィルタ部
9 リング部
10 凹凸フィルタ
11 金属フィルタ
12 蓋部材
100 微粒化装置
101 原料タンク
102 給液ポンプ
103 増圧機
104 噴射チャンバー
M 原料
図1
図2
図3