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特許7404228非ステロイド性抗炎症性化合物結合アルギン酸誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】非ステロイド性抗炎症性化合物結合アルギン酸誘導体
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/04 20060101AFI20231218BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20231218BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08B37/04
A61K45/00
A61P29/00
A61K47/61
A61P19/02
A61K31/196
A61K31/192
A61K9/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020507874
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011715
(87)【国際公開番号】W WO2019182015
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018053767
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】古迫 正司
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 勲
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/004675(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/066214(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/026214(WO,A1)
【文献】特表平04-505334(JP,A)
【文献】特開平08-024325(JP,A)
【文献】国際公開第2013/155375(WO,A1)
【文献】特開2006-111867(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080730(WO,A1)
【文献】特表2015-521631(JP,A)
【文献】国際公開第2018/050764(WO,A1)
【文献】C.G.WERMUTH,最新創薬化学下巻,株式会社テクノミック,1999年09月25日,321-338
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/04
A61K 45/00
A61P 29/00
A61K 47/61
A61P 19/02
A61K 31/196
A61K 31/192
A61K 9/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2a):

(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、下記構造但し下記構造は、右端の-*の位置でZに結合する



からなる群から選択される、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;
1及びX2は、酸素原子又はイミノ基(NH)であり;
1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子メチル基及びエトキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2、R3及びR4、又はR5及びR6は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ);
Yは、ベンゼン環又はピペリジン環であり;
Zは、酸素原子であり;
n1 は、0~2のいずれかの整数であり;
n8 は、0~6のいずれかの整数であり;
n3、n5、又はn6 は、独立して0又は1の整数であり;
n2、n4、又はn7 は、独立して0 又は1の整数であり;
n1~n8の全てが0になることはない;n3、n5、n6及びn8 は合計して1~12である)で表される、水溶性アルギン酸誘導体。
【請求項2】
前記式(2a)に含まれる下記部分構造式:

(式中破線の外側は含まない)が、下記式(LK-1)~(LK-17):

で表わされるリンカー(式中破線の外側は含まない) からなる群から選択される、請求項1に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
【請求項3】
前記式(2a)に含まれる下記部分構造式:

(式中破線の外側は含まない)が、下記式(LK-11)又は(LK-13):

で表わされるリンカー(式中破線の外側は含まない) からなる群から選択される、請求項1に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
【請求項4】
非ステロイド性抗炎症性化合物の導入率(モル%)が、少なくとも1.0モル%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体を架橋してなる、水溶性アルギン酸誘導体ゲル。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体、又は、請求項に記載の水溶性アルギン酸誘導体ゲルを含む、徐放性医薬組成物。
【請求項7】
関節炎治療剤としての、請求項に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項8】
以下に列挙されるいずれか1つの水溶性アルギン酸誘導体(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギン酸と非ステロイド性抗炎症性化合物とがリンカーを介して共有結合されてなる水溶性アルギン酸誘導体等、及びこれを含む徐放性医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸は、褐藻類から抽出されるβ-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸からなる高分子多糖であり、毒性はなく、生体内に特定の分解酵素がないため分解されにくく、生体適合性があり、また非免疫原性である。さらにカルシウム等の2価金属イオンと架橋することによりゲルを形成するという特性も有する。このようなアルギン酸の性質を利用して、工業用や食品用、さらには医薬品添加物として利用されている。近年、さらに医薬の主剤として創傷被覆用途(特開2007-75425号公報(特許文献1))、軟骨疾患治療用途(国際公開第2008/102855号公報(特許文献2))、関節リウマチ治療用途(国際公開第2009/54181号公報(特許文献3))及び椎間板治療用途(国際公開第2017/163603号公報(特許文献4))が提案されている。
一方、関節症による痛みの抑制剤及び緩和剤として非ステロイド性抗炎症剤(以下、NSAIDsとも呼ぶ)が広く使用されている。一般に、これらの痛みの抑制剤及び緩和剤としてNSAIDsを使用する場合には、経口投与剤形や経皮吸収型製剤として使用されている。しかしながら、NSAIDsを含む経口投与剤形では、有効量のNSAIDsを患部に行き届かせるために、多量の服用が必要となる場合があり、想定以上の消化器系などへの副作用を引き起こしうるとの問題点があった。また、経皮吸収型剤形では、患部(関節)との接触開始から接触終了までにおける吸収されるNSAIDsの量が一定ではないため、効果が安定しない場合があり、また高いNSAIDs濃度を含む経皮吸収型製剤を使用する場合には、想定以上の接触皮膚炎などの副作用を引き起こしうるとの問題点があった。
【0003】
したがって、上記の問題点に照らして、例えば、国際公開第2005/66214号公報(特許文献5)又はBMC Musculoskelet Disord.2018;19:157.(非特許文献3)には、関節症の治療剤であるヒアルロン酸ナトリウムにNSAIDsや抗リウマチ薬(DMARDs)を化学的に導入した新規誘導体を作製し、これを患部に注入することによって、関節症に伴う痛みの緩和、抑制及び関節症の根本治療に大きく寄与できる薬剤の提供、及び、NSAIDsやDMARDsの放出をコントロールすることによる持続的効果を有する薬剤について開示されている。また、国際公開第2015/5458号公報(特許文献6)には、薬物の構造に大きく依存せずに薬物遊離速度を制御することが可能で、適用される疾患に応じて適切な速度で、遊離される薬物が導入されたグリコサミノグリカン誘導体及びその製造方法を提供することが記載されている。また、国際公開第2007/4675号公報(特許文献7)には、NSAIDsやDMARDs等の薬剤と光反応性基が導入されたヒアルロン酸誘導体及び光架橋されたヒアルロン酸誘導体ゲルが開示されており、薬剤徐放性を高めた製剤を提供することが記載されている。また、Journal of Young Pharmacists(2009),1(4),301-304(非特許文献1)やPharmaceutica Acta Helvetiae(1997),72(3),159-164(非特許文献2)に、中性で数時間ジクロフェナクの持続放出が確認されるアルギン酸とジクロフェナクの混合物をカルシウムイオンで架橋したビーズが開示されている。また、その他、NSAIDsやDMARDsの開示ではないが、特開平08-24325号公報(特許文献8)には、酵素が産生される病巣部位においてのみ、治療に有効な量の薬剤を放出させることが可能な医療用高分子ゲルを提供すること、及び、透明性が高く、生体親和性と耐熱性、安定性に優れており、創傷被覆材、生体組織接着剤、癒着防止材等の各種の医療用材料の構成成分として有用な水膨潤性高分子ゲルを提供することが記載されている。
【0004】
また、特表平08-502053号公報(特許文献9)には、酸に不安定な生物分解性スペーサー結合を経由して接続されたアルジネート‐生物活性剤配合体が開示されている。この配合体は、生物活性剤を低いpH環境中に存在するターゲットに、ターゲット表面に又はターゲット内部中に配達するために効果的であり、生物活性物質(薬及びプロドラッグを含む)に共有結合されるアルジネートは、物質の放出の速度を制御するために使用することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-75425号公報
【文献】国際公開第2008/102855号公報
【文献】国際公開第2009/54181号公報
【文献】国際公開第2017/163603号公報
【文献】国際公開第2005/66214号公報
【文献】国際公開第2015/5458号公報
【文献】国際公開第2007/4675号公報
【文献】特開平08-24325号公報
【文献】特表平08-502053号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of Young Pharmacists(2009),1(4),301-304
【文献】Pharmaceutica Acta Helvetiae(1997),72(3),159-164
【文献】BMC Musculoskelet Disord.2018;19:157.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のNSAIDsを含有する徐放性製剤は、広い実用化にまで至っていない。例えば、ヒアルロン酸を基材として用いたNSAIDsを含有する徐放性製剤は提案されているが、ヒアルロン酸は生体内に存在する酵素(ヒアルロニダーゼ)によって分解されてしまい、NSAIDsの放出に影響を与える懸念がある。また、新たな基材の選択肢となりうる植物、褐藻類由来の基材とするNSAIDsを含有する徐放性製剤は、まだ十分な徐放自体が達成されていない。
このような課題を踏まえて、本発明の目的は、新たな基材の選択肢となりうる基材としてアルギン酸を用いて、生体内において安定して一定の有効成分を放出しうる、徐放性製剤に使用し得る水溶性化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、アルギン酸又はその塩と非ステロイド性抗炎症性化合物とを特定のリンカーで共有結合させた構造を有するアルギン酸誘導体が水溶性であり、これを徐放性製剤として使用することで、予想外に長期間にわたり安定して非ステロイド性抗炎症性化合物を患部に届けることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のように構成される:
【0009】
本発明のまた別の態様は、以下の〔1〕~〔14〕のとおりであってもよい。
〔1〕アルギン酸又はその塩と非ステロイド性抗炎症性化合物とがリンカーを介して共有結合されてなる構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体。
〔1a〕リンカーが2価のリンカーである、前記〔1〕の水溶性アルギン酸誘導体。
〔2〕下記式(1)で表される構造を有する、前記〔1〕に記載の水溶性アルギン酸誘導体:
(A)-L-(D) (1)
(式中、
(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示し、
(D)は非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示し、
Lは、(A)とアミド結合で結合しうる官能基を有し、かつ(D)とエステル結合で結合しうる官能基を有するリンカーである)。
【0010】
〔3〕下記式(2)で表される構造を有する、前記〔1〕に記載の水溶性アルギン酸誘導体:
(A)-NH-(CH2n1-[X1n2-(CR12n3-[Y]n4-(CH2n5-(CR34n6-[X2n7-(CH2n8-[Z]-(D) (2)
(式中、
(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示し、
(D)は非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示し、
1及びX2は、ヘテロ原子を示し、
1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、C1-10アルキル基、C1-10のアルコキシ基又はC1-10アルコキシカルボニル基を示すか、又は、R1及びR2若しくはR3及びR4が一緒になって=Oを示し、
Yは、シクロアルカン環、芳香族環又は複素環(前記シクロアルカン環、芳香族環又は複素環は、ハロゲン原子又はC1-10アルキル基で置換されていてもよい)を示し、
Zは、(D)とエステル結合を形成するための、O又はC(=O)を示し、
n1は0~10のいずれかの整数を示し、n2~n8は独立して0~3のいずれかの整数を示すが、n1~n8の全てが0になることはない)。
【0011】
〔3a〕下記式(2a):
【化1】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;
1及びX2は、ヘテロ原子であり;
1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2、R3及びR4、又はR5及びR6は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ);
Yは、C3-8シクロアルキル環、C6-10アリール環、又は複素環(前記C3-8シクロアルカン環、C6-10アリール環、又は複素環は、ハロゲン原子、又はC1-6アルキル基が1~3個置換されていても良い)であり;
Zは、酸素原子又はカルボニル基であり;
n1又はn8は、0~10のいずれかの整数であり;
n3、n5、又はn6は、独立して0、1、2、3のいずれかの整数であり;
n2、n4、又はn7は、独立して0又は1の整数であり;
但し、n1~n8の全てが0になることはない)で表される、前記〔1〕に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
【0012】
〔4〕非ステロイド性抗炎症性化合物がカルボキシル基を有し、前記カルボキシル基がリンカーと結合されてなる、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
〔4a〕非ステロイド性抗炎症性化合物がカルボキシル基を有し、当該カルボキシル基が、下記式(LKA-1)[式中破線左側は除く]:
【化2】
(式中、-L-及び(A)の定義は、前記〔2a〕中の定義と同じであり)
又は、式(LKA-2)[式中破線左側は除く]:
【化3】
(式中、(A)、R1、R2、R3、R4、R5、R6、X1、X2、Y、n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7及びn8の定義は、前記〔3〕中の定義と同じである)で表わされるリンカーと結合されてなる、前記〔1a〕、〔2〕及び〔3a〕のいずれか1項に記載のアルギン酸誘導体。
【0013】
〔5〕非ステロイド性抗炎症性化合物がサリチル酸系、プロピオン酸系または酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であり、NSAIDsのカルボキシル基がリンカーと結合されてなる、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
〔5a〕非ステロイド性抗炎症性化合物がサリチル酸系、プロピオン酸系、又はフェニル酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であり、NSAIDsのカルボキシル基が、前記〔4a〕に記載の式(LKA-1)又は式(LKA-2)で表わされるリンカーと結合されてなる、前記〔1a〕、〔2〕、〔3a〕及び〔4a〕のいずれか1項に記載のアルギン酸誘導体。
〔6〕非ステロイド性抗炎症性化合物が酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である、前記〔5〕に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
〔6a〕非ステロイド性抗炎症性化合物が、フェニル酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である、前記〔5a〕に記載のアルギン酸誘導体。
〔6a-1〕非ステロイド性抗炎症性化合物が、プロピオン酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である、前記〔5a〕に記載のアルギン酸誘導体。
【0014】
〔7〕非ステロイド性抗炎症性化合物がジクロフェナクである、前記〔6〕に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
〔7a〕非ステロイド性抗炎症性化合物が、ジクロフェナク又はフェルビナクである、前記〔6a〕に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
〔7a-1〕非ステロイド性抗炎症性化合物が、ケトプロフェン又はナプロキセンである、前記〔6a-1〕に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
〔8〕非ステロイド性抗炎症性化合物の導入率(モル%)が、少なくとも1.0モル%以上である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体。
〔8a〕非ステロイド性抗炎症性化合物の導入率(モル%)が、少なくとも1.0モル%以上である、前記〔1a〕、〔2〕、〔3a〕、〔4a〕、〔5a〕、〔6a〕、〔6a-1〕、〔7a〕及び〔7a-1〕のいずれか1項に記載のアルギン酸誘導体。
【0015】
〔9〕前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体を架橋してなる、アルギン酸誘導体ゲル。
〔9a〕前記〔1a〕、〔2〕、〔3a〕、〔4a〕、〔5a〕、〔6a〕、〔6a-1〕、〔7a〕、〔7a-1〕及び〔8a〕のいずれか1項に記載のアルギン酸誘導体を架橋してなる、アルギン酸誘導体ゲル。
〔10〕前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体、又は、前記〔9〕に記載のアルギン酸誘導体ゲルを含む、徐放性医薬組成物。
〔10a〕前記〔1a〕、〔2〕、〔3a〕、〔4a〕、〔5a〕、〔6a〕、〔6a-1〕、〔7a〕、〔7a-1〕及び〔8a〕のいずれか1項に記載のアルギン酸誘導体、又は、前記〔9a〕に記載のアルギン酸誘導体ゲルを含む、徐放性医薬組成物。
〔11〕関節炎治療剤としての、前記〔10〕に記載の徐放性医薬組成物。
〔11a〕関節炎治療剤としての、前記〔10a〕に記載の徐放性医薬組成物。
【0016】
〔12〕非ステロイド性抗炎症性化合物を徐放するための、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の水溶性アルギン酸誘導体、又は、前記〔9〕に記載のアルギン酸誘導体ゲルの使用。
〔12a〕非ステロイド性抗炎症性化合物を徐放するための、前記〔1a〕、〔2〕、〔3a〕、〔4a〕、〔5a〕、〔6a〕、〔6a-1〕、〔7a〕、〔7a-1〕及び〔8a〕のいずれか1項に記載のアルギン酸誘導体、又は、前記〔9a〕に記載のアルギン酸誘導体ゲルの使用。
〔13〕前記〔3a〕の式(2)のアルギン酸誘導体において、好ましいものとしては、以下に列挙されるアルギン酸誘導体から選ばれる。(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)
【化4】
【0017】
〔14〕下記式(AM):
【化5】
(式中、(D)、X1、X2、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Y、Z、n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、及びn8の定義は前記〔3a〕中の定義と同じである)で表されるアミノ化合物、その塩、又はそれらの水和物。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、安定した速度で非ステロイド性抗炎症性化合物を放出しうる、徐放性製剤に使用し得る水溶性の化合物を提供できる。また、ゲル化させることにより、その化合物の徐放性をさらに高めることが可能な水溶性の化合物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<水溶性アルギン酸誘導体>
本発明は、アルギン酸又はその塩と非ステロイド性抗炎症性化合物とがリンカーを介して共有結合されてなる構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体に関する。リンカーは、アルギン酸又はその塩のカルボキシル基、及び、非ステロイド性抗炎症性化合物のカルボキシル基または水酸基と、共有結合により結合されることが好ましい。結合様式は本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、水溶性アルギン酸誘導体において、アルギン酸とリンカーとの結合は、アミド結合であり、非ステロイド性抗炎症性化合物とリンカーとの結合は、エステル結合であることが好ましい。アルギン酸又はその塩における、リンカーとの結合部位(アルギン酸又はその塩の官能基)は、水酸基又はカルボキシル基が挙げられるが、アミド結合を形成しうるカルボキシル基がより好ましい。
【0020】
したがって、本発明の一形態としては、水溶性アルギン酸誘導体は、下記式(1)で表される構造を有する:
(A)-L-(D) (1)
式(1)中、(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示す。また、式(1)中、Lは、(A)とアミド結合で結合しうる官能基を有し、かつ(D)とエステル結合で結合しうる官能基を有するリンカーである。また、式(1)中、(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示すが、当該(D)の1残基は、水酸基であってもよいし、カルボキシル基であってもよく、好ましくは、カルボキシル基である。
【0021】
又、本発明の別の一形態としては、水溶性アルギン酸誘導体は、下記式(1):
【化6】
(式(1)中、(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を表わし;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を表わし、当該(D)の1残基は、水酸基又はカルボキシル基であり、好ましくは、カルボキシル基であり;
-L-は、下記部分構造式(LS-1)[式中破線外側は除く]:
【化7】
(式中、-L1-は、直鎖状基又は直鎖状基の一部に環状基が導入された基であって、当該直鎖状基は、アルキレン基(-(CH2n-、n=1~30の整数であり)(当該-CH2-は、>C=O、-O-、-NH-、-S-、-SO2-、C3-8シクロアルキル環、C6-10アリール環、複素環(例えば、ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の芳香族複素環、非芳香族複素環等から選択される)等の基から選択される基で複数個(例えば、1~10個、好ましくは1~5個)置き換えられても良く、又、当該-CH2-の水素原子は、オキソ基(=O)、C1-6アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、等から選択される)、C1-6アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、等から選択される)、C1-6アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、等から選択される)、C7-16アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、等から選択される)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等から選択される)、水酸基(-OH)等の基から選択される基が複数個(例えば、1~10個、好ましくは1~5個)置換していても良い)であり;
Zは、酸素原子又はカルボニル基であり、好ましくは酸素原子である)で表される構造を有する、アルギン酸誘導体である。)
【0022】
さらに、本発明の一形態としては、水溶性アルギン酸誘導体は、下記式(2)で表される構造を有する:
(A)-NH-(CH2n1-[X1n2-(CR12n3-[Y]n4-(CH2n5-(CR34n6-[X2n7-(CH2n8-[Z]-(D) (2)
式(2)中では、(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示し、(D)は非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示し、X1及びX2は、ヘテロ原子を示し、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、C1-10アルキル基、C1-10のアルコキシ基又はC1-10アルコキシカルボニル基を示すか、又は、R1及びR2若しくはR3及びR4が一緒になって=Oを示し、Yは、シクロアルカン環、芳香族環又は複素環(前記シクロアルカン環、芳香族環又は複素環は、ハロゲン原子又はC1-10アルキル基で置換されていてもよい)を示し、Zは、(D)とエステル結合を形成するための、O又はC(=O)を示し、n1は0~10のいずれかの整数を示し、n2~n8は独立して0~3のいずれかの整数を示すが、n1~n8の全てが0になることはない。好ましくは、n2、n4及びn7は独立して0~2であり、より好ましくは独立して0~1である。また、n3、n5、n6及びn8は合計して1~12が好ましく、2~10がより好ましい。
【0023】
又、本発明の別の一形態としては、水溶性アルギン酸誘導体は、
下記式(2a):
【化8】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;
1及びX2は、酸素原子又はイミノ基(NH)であり;
1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2、R3及びR4、又はR5及びR6は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ)、 好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、及びC1-3アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2、R3及びR4、又はR5及びR6は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ);
Yは、C6-10アリール環、又は複素環であり;
Zは、酸素原子又はカルボニル基であり;
n1は、0~5のいずれかの整数であり;
n8は、0~10のいずれかの整数であり;
n3、n5、又はn6は、独立して0、1、2、3のいずれかの整数であり;
n2、n4、又はn7は、独立して0又は1の整数であり;
n1~n8の全てが0になることはない;n3、n5、n6及びn8は合計して1~12が好ましく、2~10がより好ましい)で表される構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体である。
【0024】
更に、本発明の別の一形態としては、水溶性アルギン酸誘導体は、下記式(2a):
【化9】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ナプロキセン、及びフェルビナクから選択される、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;
1及びX2は、酸素原子又はイミノ基(NH)であり;
1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基、及びエトキシカルボニル基から選択される基であり(前記R1及びR2、又はR3及びR4は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);
Yは、ベンゼン環又はピペリジン環であり;、
Zは、酸素原子であり;
n1は、0~2のいずれかの整数であり;
n8は、0~6のいずれかの整数であり;
n3、n5、又はn6は、独立して0又は1の整数であり;
n2、n4、又はn7は、独立して0又は1の整数であり;
n1~n8の全てが0になることはない;n3、n5、n6及びn8は合計して1~12が好ましく、2~10がより好ましい)で表される構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体である。
【0025】
式(2)のうち、好ましい水溶性アルギン酸誘導体は、下記式(3)~(6)で表される構造を有する:
(A)-NH-(CH2n1-(CR12n3-(CH2n5-[Z]-(D) (3)
(式中、
(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示し、
(D)は非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示し、
1及びR2は、R1が水素若しくはハロゲン原子を示し、R2が、水素、ハロゲン原子、メチル基若しくはエチル基を示すか、或いは、R1及びR2が一緒になって=Oを示し、
Zは、(D)とエステル結合を形成するための、Oを示し、
n1、n3及びn5は合計して1~4のいずれかの整数を示す)。
【0026】
(A)-NH-(CH2n1-[X1]-(CR12n3-(CR34n6-(CH2n8-[Z]-(D) (4)
(式中、
(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示し、
(D)は非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示し、
1は、OまたはNHを示し、
1及びR2は、R1が水素を示し、R2が、水素、ハロゲン原子、メチル基若しくはエチル基を示すか、或いは、R1及びR2が一緒になって=Oを示し、
1がOの場合は、R1は水素が好ましく、R2は水素、メチル基又はエチル基が好ましく、
1がNHの場合は、R1は水素が好ましく、R2は水素、メチル基又はエチル基が好ましく、または、R1及びR2が一緒になって=Oを示すのが好ましく、
3及びR4は、R3が水素を示し、R4が、水素、ハロゲン原子、メチル基若しくはエチル基を示すか、或いは、R3及びR4が一緒になって=Oを示し、
Zは、(D)とエステル結合を形成するための、Oを示し、
n1は1~3のいずれかの整数を示し、n3、n6及びn8は合計して1~3のいずれかの整数を示す)。
【0027】
(A)-NH-(CH2n1-[Y]-(CH2n5-[Z]-(D) (5)
(式中、
(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示し、
(D)は非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示し、
Yは、芳香族環を示し、
Zは、(D)とエステル結合を形成するための、Oを示し、
n1及びn5は合計して1~4のいずれかの整数を示す)。
【0028】
(A)-NH-(CH2n1-(CR12n3-(CH2n5-(CR34n6-(CH2n8-[Z]-(D) (6)
(式中、
(A)はアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基を示し、
(D)は非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基を示し、
1及びR2は、R1が水素を示し、R2が、水素、メトキシ基、エトキシ基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基を示すか、或いは、R1及びR2が一緒になって=Oを示し、
3及びR4は、R3が水素を示し、R4が、水素、メチル基若しくはエチル基を示すか、或いは、R3及びR4が一緒になって=Oを示し、
Zは、(D)とエステル結合を形成するための、Oを示し、
n1、n3、n5、n6及びn8は合計して1~4のいずれかの整数を示す)。
【0029】
又、式(2a)のうち、好ましい水溶性アルギン酸誘導体としては、下記式(3a):
【化10】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
1及びR2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、及びエトキシカルボニル基から選択される基であり(前記R1及びR2は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);
Zは、酸素原子であり;
n1、n3及びn5は合計して1~4のいずれかの整数である)で表される構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体である。
【0030】
又、式(3a)の、具体的なものとしては、例えば、下記式:
【化11】
から選ばれる、水溶性アルギン酸誘導体(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)である。
【0031】
又、式(2a)のうち、好ましい水溶性アルギン酸誘導体としては、下記式(4a):
【化12】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
1は、酸素原子又はイミノ基(NH)であり;
1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、及びエトキシカルボニル基から選択される基であり(前記R1及びR2、R3及びR4、又はR5及びR6は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる)(X1がOの場合は、R1は水素原子が好ましく、R2は水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、R3は水素原子が好ましく、R4は水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、R5は水素原子が好ましく、R6は水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく;より好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、水素原子であり;X1がイミノ基(NH)の場合は、R1は水素が好ましく、R2は水素、メチル基又はエチル基が好ましく、又は、R1及びR2が一緒になって=Oとなるのが好ましく、R3は水素が好ましく、R4は水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、R5は水素が好ましく、R6は水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく;より好ましくは、R1及びR2が一緒になって=Oとなり、R3は水素原子、R4は水素原子又はメチル基、R5は水素原子、R6は水素原子又はメチル基であり);
Zは、酸素原子を表わし
n1は、1~3のいずれかの整数を示し、n3、n6及びn8は、合計して1~3のいずれかの整数である)で表される構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体である。
【0032】
又、式(4a)の、具体的なものとしては、例えば、下記式:
【化13】
から選ばれるアルギン酸誘導体(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)。
【0033】
又、式(2a)のうち、好ましい水溶性アルギン酸誘導体としては、下記式(5a):
【化14】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
Yは、C6-10アリール環であり、好ましくはベンゼン環であり;
Zは、酸素原子であり;
n1及びn5は、合計して1~4のいずれかの整数である)で表される構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体である。
【0034】
又、式(5a)の、具体的なものとしては、例えば、下記式:
【化15】
から選ばれる水溶性アルギン酸誘導体(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)である。
【0035】
又は、式(2a)のうち、好ましい水溶性アルギン酸誘導体としては、下記式(6a):
【化16】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
1及びR2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基及びエトキシカルボニル基から選択される基であり(前記R1及びR2は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);
3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基及びエトキシカルボニル基から選択される基であり(前記R3及びR4は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);
5及びR6は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基及びエトキシカルボニル基から選択される基であり(前記R5及びR6は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);
Zは、酸素原子であり;
n1、n3、n5、n6及びn8は合計して1~4のいずれかの整数である)で表される構造を有する、水溶性アルギン酸誘導体である。
【0036】
又、式(6a)の、具体的なものとしては、例えば、下記式:
【化17】
から選ばれる水溶性アルギン酸誘導体(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)である。
【0037】
又、式(2a)のうち、好ましい水溶性アルギン酸誘導体として、下記式(7a):
【化18】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ナプロキセン、及びフェルビナクから選択される、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;
1及びR2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、及びエチル基から選択される基であり(前記R1及びR2は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);好ましくは、R1及びR2は、一緒になってオキソ基(=O)を形成する;
5及びR6は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、及びエチル基から選択される基であり(前記R5及びR6は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);好ましくは、R5は水素原子、R6は水素原子又はメチル基であり;
2は、イミノ基(NH)であり;
Zは、酸素原子であり;、
n1、n3、及びn8は、合計して1~10のいずれかの整数である)で表される構造を有する、アルギン酸誘導体である。
【0038】
又、式(7a)の、具体的なものとしては、例えば、下記式:
【化19】
から選ばれる水溶性アルギン酸誘導体(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)である。
【0039】
又、式(2a)のうち、好ましい水溶性アルギン酸誘導体として、下記式(8a):
【化20】
(式中、
(A)は、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基であり;
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
1及びR2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、及びエチル基から選択される基であり(前記R1及びR2は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);好ましくは、R1及びR2は、一緒になってオキソ基(=O)を形成する;
5及びR6は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、及びエチル基から選択される基であり(前記R5及びR6は、一緒になってオキソ基(=O)を形成することができる);好ましくは、R5は水素原子、R6は水素原子であり;
Yは、複素環であり;好ましくは、ピペリジン環であり;
Zは、酸素原子であり;、
n1、n3、及びn8は、合計して1~5のいずれかの整数である)で表される構造を有する、アルギン酸誘導体である。
【0040】
又、式(8a)の、具体的なものとしては、例えば、下記式:
【化21】
から選ばれる水溶性アルギン酸誘導体(各式中、(A)は、アルギン酸又はその塩由来の1残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基を有する1残基である)である。 なお、本発明の水溶性アルギン酸誘導体のリンカー構造については、≪リンカー≫の項で後述する。
【0041】
また、本発明の水溶性アルギン酸誘導体において、体内おいて副作用を生じにくく、適切に例えば関節炎を緩和や鎮痛し得る濃度で非ステロイド性抗炎症性化合物を放出させ続けることができる非ステロイド性抗炎症性化合物の導入率であることが好ましい。例えば導入率(モル%)が、1.0モル%以上であることが好ましい。より好ましくは2.0モル%以上、さらに好ましくは4.0%以上である。ここで、本発明における導入率(モル%)とは、例えば、アルギン酸を構成するL-グルロン酸又はD-マンヌロン酸のカルボキシル基にリンカーを介して非ステロイド性抗炎症性化合物を導入する場合において、導入率10モル%とは、アルギン酸を構成するL-グルロン酸又はD-マンヌロン酸の単糖を1単位(個)とし、単糖100個に非ステロイド性抗炎症性化合物が10個の割合で導入されていることを示す。したがって、隣り合う単糖各々のカルボキシル基にそれぞれ非ステロイド性抗炎症性化合物がリンカーを介して導入されていてもかまわない。
リンカーの種類および非ステロイド性抗炎症性化合物の導入率は、後述する当該化合物を含む医薬組成物の最終投与形態(ゲル状、ゾル状、マイクロビーズ状など)、あるいは生体に投与するときの非ステロイド性抗炎症性化合物の患部における必要量あるいは徐放効率などを考慮して適宜調整されうる。
【0042】
ここで、本発明の水溶性アルギン酸誘導体は、非ステロイド性抗炎症性化合物を含む高分子化合物であるが、水溶性であることに特徴を有する。すなわち、一般に疎水性であると知られている非ステロイド性抗炎症性化合物の水溶性アルギン酸誘導体における導入率が高い場合であっても、例えば10モル%以上であっても、水に溶解可能である。例えば、水100質量部に対し、水溶性アルギン酸誘導体を0.1質量部添加し、室温(例えば20℃)にて振とう又は撹拌した場合、24時間以内にゲル状にならず溶解することが示される。すなわち、本発明の水溶性アルギン酸誘導体は、0.1%以上の濃度で水性溶媒に溶解することが示される。なお、本明細書において、特に断らない限り「室温」は、通常約0℃から約35℃の温度を示すものとする。
また、本発明における水溶性アルギン酸誘導体の水溶性は、例えばアルギン酸ナトリウム塩の水溶性と同等であり、後述する用途に応じたゲル化又はゾル化のハンドリングが容易であるとの利点がある。よって、本発明の水溶性アルギン酸誘導体の溶液はフィルター濾過が可能であり、フィルター濾過による除塵、除菌、滅菌が可能となる。すなわち、5μm~0.45μmのフィルターを通過させることにより除塵、除菌が可能となり、更に望ましくは0.22μmのフィルターを通過させることにより滅菌することも可能となる。
なお、本発明の水溶性アルギン酸誘導体は、水、薬学的に許容される金属塩若しくはpH調整剤等を含む水溶液、緩衝液等の水性溶媒に溶解可能である。具体的には注射用水、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水等に溶解可能である。
【0043】
また、本発明における水溶性アルギン酸誘導体は、単独では非ステロイド性抗炎症性化合物が有する抗炎症効果をもたらさないが、例えばそれを生体内に投与した場合において、生体内の状況に応じてリンカーから非ステロイド性抗炎症性化合物が適宜切断されることにより、非ステロイド性抗炎症性化合物が放出され、効果を発揮する。非ステロイド性抗炎症性化合物が患部の炎症を抑え、鎮痛するのに必要な量だけが放出し続けるため、結果として一定期間、安定して患部に集中して抗炎症効果及び鎮痛効果をもたらすことができる。水溶性アルギン酸誘導体は、その構成成分であるリンカーの構造によって、非ステロイド性抗炎症性化合物の徐放速度を所望の態様に調整することができるため、求める効果に応じて、非ステロイド性抗炎症性化合物の導入率とリンカーの種類との組み合わせを最適化することで、生体内に注射した場合、例えば関節腔内注射した場合、特に膝関節腔内注射した場合、長期持続可能な鎮痛作用や抗炎症作用をもたらしうる。
また、アルギン酸は生体内の酵素によって分解されないため、本発明における水溶性アルギン酸誘導体は、リンカー部位の切断以外の要因では、非ステロイド性抗炎症性化合物の放出速度に影響を受けにくく、安定して一定の有効成分を放出しうる。
【0044】
本発明の水溶性アルギン酸誘導体において、アルギン酸又はその塩とリンカーとの結合様式と非ステロイド性抗炎症性化合物とリンカーとの結合様式を変えることにより、生体内における分解性や分解順序を変えることができ、その結果、非ステロイド性抗炎症性化合物の遊離率や遊離速度を制御することも可能となる。具体的には、生体内において、アミド結合よりもエステル結合は加水分解を受けやすいことが知られている。本発明の水溶性アルギン酸誘導体は、最終的に非ステロイド性抗炎症性化合物が遊離されれば、その分解順序は問わないが、非ステロイド性抗炎症性化合物とリンカーの結合が先に加水分解を受け、非ステロイド性抗炎症性化合物が遊離することが好ましい。具体的には、アルギン酸又はその塩とリンカーはアミド結合で結合し、非ステロイド性抗炎症性化合物とリンカーはエステル結合で結合することで、エステル結合が先に加水分解を受け、非ステロイド性抗炎症性化合物がリンカーから先に遊離する。
また、アルギン酸は、適用した生体に悪影響を及ぼさず、生体内においてアルギン酸と結合する特定の受容体は同定されていないことから、非ステロイド性抗炎症性化合物を放出した後のアルギン酸又はその塩は体内において毒性をもたらさずに分解される。
【0045】
本発明の水溶性アルギン酸誘導体は、弱酸性の条件下で長期に徐放が期待される局面では、とてもゆっくり遊離されることが好ましい。例えば、本発明の水溶性アルギン酸誘導体を0.1質量%濃度水溶液に調製し、37℃で7日間インキュベートした場合において、非ステロイド性抗炎症性化合物が、pH5.3では遊離率1.0%以下で放出される挙動を示すことが好ましい。また、中性の条件下で短期的な徐放が期待される局面では、ゆっくり遊離されることが好ましい。例えば、上記の条件下(pH7.0)にて遊離率0%より大きく50%以下で放出される挙動を示すことが好ましく、遊離率0.04~45%で放出される挙動を示すことがより好ましく、遊離率1~40%で放出される挙動を示すことがより好ましく、遊離率1.5%~30%で放出される挙動を示すことが更に好ましい。
このように使用する環境に対応して、本発明の各水溶性アルギン酸誘導体を各pHでの遊離率により、使い分けることができる。また、本発明の水溶性アルギン酸誘導体を架橋剤によってゲル化させることにより、徐放効果をさらに強めることも可能である。
例えば、本発明の水溶性アルギン酸誘導体を膝関節腔内投与用の関節炎治療剤として使用したときに、炎症を起こしている患部のpHが弱酸性の挙動を示す場合、患部に注射等により投与した際に、7日間以上、好ましくは15日間以上、より好ましくは30日間以上、安定して非ステロイド性抗炎症性化合物を徐放し続けることが期待される。ここで、遊離率とは、水溶性アルギン酸誘導体に含まれる非ステロイド性抗炎症性化合物総量に対する、放出された非ステロイド性抗炎症性化合物量の比率を示す。
本発明の水溶性アルギン酸誘導体を用いることにより、薬剤の単独投与よりも、膝関節腔内等の患部又はその近縁部位に投与した場合において、患部に有効な薬剤量が効率的に保持され、経口投与の場合よりも少ない薬剤の量であっても強力な治療効果が期待できる。また、徐放性および持続性の調整により、臨床において投与回数の減少等につなげることもできる。
以下、本発明の水溶性アルギン酸誘導体の構成を説明するために、各構成成分である、アルギン酸、リンカー及び非ステロイド性抗炎症性化合物について説明した後、水溶性アルギン酸誘導体ゲルやこれらの用途等について詳述する。
【0046】
≪アルギン酸又はその塩≫
本発明において、アルギン酸又はその塩としては、「アルギン酸の1価金属塩」であるアルギン酸のD-マンヌロン酸またはL-グルロン酸のカルボン酸の水素原子を、Na+やK+などの1価金属イオンとイオン交換することでつくられる水溶性の塩が好ましい。アルギン酸の1価金属塩としては、具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどを挙げることができるが、特には、アルギン酸ナトリウムが好ましい。後述するようにアルギン酸の1価金属塩の溶液は、架橋剤と混合したときにゲルを形成する性質を利用して、本発明の水溶性アルギン酸誘導体の形態を調整することもできる。
アルギン酸は、褐藻類の海藻から抽出し、精製して製造される天然多糖類の一種である。又、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)が重合したポリマーである。アルギン酸のD-マンヌロン酸とL-グルロン酸の構成比(M/G比)は、主に海藻等の由来となる生物の種類によって異なり、また、その生物の生育場所や季節による影響を受け、M/G比が約0.4の高G型からM/G比が約5の高M型まで高範囲にわたる。アルギン酸のM/G比、MとGの配列の仕方等によってアルギン酸の物理化学的性質が異なり、また好ましい用途が異なる場合がある。アルギン酸の工業的な製造方法には、酸法とカルシウム法などがあるが、本発明ではいずれの製法で製造されたものも使用することができる。精製により、HPLC法による定量値が80~120質量%の範囲に含まれるものが好ましく、90~110質量%の範囲に含まれるものがより好ましく、95~105質量%の範囲に含まれるものがさらに好ましい。本発明においては、HPLC法による定量値が前記の範囲に含まれるものを高純度のアルギン酸と称する。本発明で使用するアルギン酸又はその塩は、高純度アルギン酸であることが好ましい。市販品としては、例えば、キミカアルギンシリーズとして、(株)キミカより販売されているもの、好ましくは、高純度食品・医薬品用グレードのものを購入して使用することができる。市販品を、さらに適宜精製して使用することも可能である。例えば、低エンドトキシン処理することが好ましい。精製法や低エンドトキシン処理方法は、例えば特開2007-75425(特許文献1)に記載されている方法を採用することができる。
【0047】
本発明で使用するアルギン酸又はその塩としては、その最終使用用途に応じて、適切な重量平均分子量のものを用いるのがよい。例えば、関節腔内投与用の関節炎治療剤として用いる場合には、重量平均分子量が1万~1,000万のものを用いるのが好ましく、より好ましくは10万以上500万以下、さらに好ましくは20万以上300万以下である。より具体的には、例えば下記表1に示される物性を有するアルギン酸又はその塩であるA1~A4のいずれかを用いることが好ましい。
【表1】
【0048】
又、アルギン酸塩として、下記に示す市販品のアルギン酸ナトリウム(発売元 持田製薬株式会社)を用いることもできる。ここで、後述の実施例12~22では、アルギン酸ナトリウムは、下表に記載したA-1、A-2、A-3及びB-2のアルギン酸ナトリウムを用いた。各アルギン酸ナトリウムの1w/w%の水溶液の粘度、重量平均分子量及びM/G比を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
前記アルギン酸ナトリウムA-1、A-2、A-3、B-1、B-2、及びB-3の各物性値は、後述する方法により測定した。測定方法は、当該方法に限定されるものではないが、測定方法により各物性値が上記のものと異なる場合がある。
【0051】
[アルギン酸ナトリウムの粘度測定]
日本薬局方(第16版)の粘度測定法に従い、回転粘度計法(コーンプレート型回転粘度計)を用いて測定した。具体的な測定条件は以下のとおりである。試料溶液の調製は、MilliQ水を用いて行った。測定機器は、コーンプレート型回転粘度計(粘度粘弾性測定装置レオストレスRS600(Thermo Haake GmbH)センサー:35/1)を用いた。回転数は、1w/w%アルギン酸ナトリウム溶液測定時は1rpmとした。読み取り時間は、2分間測定し、開始1分から2分までの平均値とした。3回の測定の平均値を測定値とした。測定温度は20℃とした。
【0052】
[アルギン酸ナトリウムの重量平均分子量測定]
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と、(2)GPC-MALSの2種類の測定法で測定した。測定条件は以下のとおりである。
【0053】
[前処理方法]
試料に溶離液を加え溶解後、0.45μmメンブランフィルターろ過したものを測定溶液とした。
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定
[測定条件(相対分子量分布測定)]
カラム:TSKgel GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
濃度:0.05%
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:200μL
分子量標準:標準プルラン、グルコース
【0054】
(2)GPC-MALS測定
[屈折率増分(dn/dc)測定(測定条件)]
示差屈折率計:Optilab T-rEX
測定波長:658nm
測定温度:40℃
溶媒:200mM硝酸ナトリウム水溶液
試料濃度:0.5~2.5mg/mL(5濃度)
【0055】
[測定条件(絶対分子量分布測定)]
カラム:TSKgel GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min
濃度:0.05%
検出器:RI検出器、光散乱検出器(MALS)
カラム温度:40℃
注入量:200μL
【0056】
本明細書中、アルギン酸、アルギン酸誘導体、架橋アルギン酸、及び架橋アルギン酸の分子量において、単位としてDa(ダルトン)を付記する場合がある。
【0057】
アルギン酸類のD-マンヌロン酸とL-グルロン酸の構成比(M/G比)は、主に海藻等の由来となる生物の種類によって異なり、また、その生物の生育場所や季節による影響を受け、M/G比が約0.2の高G型からM/G比が約5の高M型まで高範囲にわたる。アルギン酸類のゲル化能力および生成したゲルの性質は、M/G比によって影響を受け、一般的に、G比率が高い場合にはゲル強度が高くなることが知られている。M/G比は、その他にも、ゲルの硬さ、もろさ、吸水性、柔軟性などにも影響を与える。用いるアルギン酸類および/またはその塩のM/G比は、通常、0.2~4.0であり、より好ましくは、0.4~3.0、さらに好ましくは0.5~3.0である。
【0058】
ここで、一般に天然物由来の高分子物質は、単一の分子量を持つのではなく、種々の分子量を持つ分子の集合体であるため、ある一定の幅を持った分子量分布として測定される。代表的な測定手法はゲルろ過クロマトグラフィーである。ゲルろ過クロマトグラフィーにより得られる分子量分布の代表的な情報としては、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散比(Mw/Mn)があげられる。
分子量の大きい高分子の平均分子量への寄与を重視したのが重量平均分子量であり、下記式で表される。
Mw=Σ(WiMi)/W=Σ(HiMi)/Σ(Hi)
数平均分子量は、高分子の総重量を高分子の総数で除して算出される。
Mn=W/ΣNi=Σ(MiNi)/ΣNi=Σ(Hi)/Σ(Hi/Mi)
ここで、Wは高分子の総重量、Wiはi番目の高分子の重量、Miはi番目の溶出時間における分子量、Niは分子量Miの個数、Hiはi番目の溶出時間における高さである。
【0059】
天然物由来の高分子物質の分子量測定では、測定方法により値に違いが生じうることが知られている(ヒアルロン酸の例:Chikako YOMOTA et.al. Bull.Natl.Health Sci., Vol.117, pp135-139(1999)、Chikako YOMOTA et.al. Bull.Natl.Inst. Health Sci., Vol.121, pp30-33(2003))。アルギン酸の分子量測定については、固有粘度(Intrinsic viscosity)から算出する方法、SEC-MALLS(Size Exclusion Chromatography with Multiple Angle Laser Light Scattering Detection)により算出する方法が記載された文献がある(ASTM F2064-00(2006),ASTM International発行)。なお、当該文献では、サイズ排除クロマトグラフィー(=ゲルろ過クロマトグラフィー)により分子量を測定するにあたっては、プルランを標準物質として用いた較正曲線により算出するだけでは不十分とし、多角度光散乱検出器(MALLS)を併用すること(=SEC-MALLSによる測定)を推奨している。また、SEC-MALLSによる分子量を、アルギン酸のカタログ上の規格値として用いている例もある(FMC Biopolymer社、PRONOVATM sodium alginates catalogue)。
なお、通常高分子多糖類の分子量を上記のような手法で算出する場合、10~20%の測定誤差を生じうる、例えば、40万であれば32~48万、100万であれば80~120万程度の範囲で値の変動が生じうる。
本明細書において、用いるアルギン酸ナトリウムの分子量は、重量平均分子量(GPC)にて、例えば、好ましくは30万~250万の範囲であり、より好ましくは、30万~90万の範囲であり、又はより好ましくは、70万~170万の範囲であり、又はより好ましくは、140万~200万の範囲である。
【0060】
本明細書中においてアルギン酸又はその塩の分子量を特定する場合は、特段のことわりがない限り、ゲルろ過クロマトグラフィーにより算出される重量平均分子量である。ゲルろ過クロマトグラフィーの条件としては、例えば、後述する本実施例の条件を採用することができる。
【0061】
また、本発明で使用するアルギン酸又はその塩としては、その最終使用用途に応じて、適切な粘度や、適切なM/G比のものを用いるのがよい。 また、本発明で使用するアルギン酸又はその塩は、エンドトキシンレベルを低下させたものを使用することが好ましい。日局エンドトキシン試験により測定したエンドトキシン値が、100EU/g未満のものを用いるのが好ましく、より好ましくは75EU/g未満、さらに好ましくは50EU/g未満である。本発明において、「実質的にエンドトキシンを含まない」とは、日局エンドトキシン試験により測定したエンドトキシン値が前記の数値範囲にあるものを意味する。
【0062】
≪リンカー≫
本発明の水溶性アルギン酸誘導体のリンカーは、上述したように、アルギン酸又はその塩由来の1残基とアミド結合で結合しうる官能基を有し、かつ、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基とエステル結合で結合しうる官能基を有し、水溶性アルギン酸誘導体を形成しうる構造を有するものであれば、特に限定はされないが、例えば、以下の式(7)に示される構造を有することが好ましい。
-NH-(CH2n1-[X1n2-(CR12n3-[Y]n4-(CH2n5-(CR34n6-[X2n7-(CH2n8-[Z]- (7)
式(7)中、-NHは、アルギン酸又はその塩1の残基とアミド結合を形成する末端を示し、[Z]-は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基とエステル結合を形成する末端を示す。非ステロイド性抗炎症性化合物の結合部分の構造に応じて、ZはOであってもよいし、C(=O)であってもよいが、好ましくはOである。式(7)中、X1及びX2は、ヘテロ原子を示し、好ましくはO、S、及びNから選択されるいずれかの原子を示し(Nの場合には、厳密にはN(H)を示し)、より好ましくは、O又はNを示す。式(7)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、C1-10アルキル基、C1-10のアルコキシ基又はC1-10アルコキシカルボニル基を示し、好ましくは、水素、フッ素、C1-6アルキル基、C1-6のアルコキシ基又はC1-6アルコキシカルボニル基を示すか、又は、R1及びR2若しくはR3及びR4が一緒になって=Oを示す。
Yは、シクロアルカン環、芳香族環又は複素環(前記シクロアルカン環、芳香族環又は複素環は、ハロゲン原子又はC1-10アルキル基で置換されていてもよい)を示し、好ましくはシクロアルカン環、芳香族環又は複素環、より好ましくは芳香族環を示す。
n1は0~10のいずれかの整数を示し、n2~n8は独立して0~3のいずれかの整数を示す。ただし、n1~n8の全てが0になることはない。好ましくは、n2、n4及びn7は独立して0~2であり、より好ましくは独立して0~1である。また、n3、n5、n6及びn8は合計して1~12が好ましく、2~10がより好ましい。
【0063】
更に、本発明の水溶性アルギン酸誘導体のリンカーは、例えば、以下の式(LK)[式中破線両外側は含まない]に示される構造を有することが好ましい。
【化22】
式中、-NHは、アルギン酸又はその塩の1残基とアミド結合を形成する末端であり;
Z-は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基とエステル結合を形成する末端であり;非ステロイド性抗炎症性化合物の結合部分の構造に応じて、Zは酸素原子又はカルボニル基であり、好ましくは酸素原子であり;
1及びX2は、ヘテロ原子を表わし、好ましくは酸素原子又はイミノ基(NH)であり;
1、R2、R3、R4、R5、及びR6は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びC1-6アルコキシカルボニル基から選択される基であり、好ましくは、水素原子、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びC1-6アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2、R3及びR4、又はR5及びR6が一緒になって=Oを形成することができる)、より好ましくは、水素原子、フッ素原子、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基及びC1-3アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2、R3及びR4、又はR5及びR6が一緒になって=Oを形成することができる);
Yは、C3-8シクロアルキル環、C6-10アリール環又は複素環(前記C3-8シクロアルキル環、C6-10アリール環又は複素環は、ハロゲン原子又はC1-6アルキル基で置換されていてもよい)であり、好ましくはC6-10アリール環又は複素環であり、より好ましくはベンゼン環又はピペリジン環であり;
n1又はn8は、各々独立して0~10のいずれかの整数であり;
n3、n5、又はn6は、各々独立して0、1、2、3のいずれかの整数であり;n2、n4、又はn7は、各々独立して0又は1の整数であり;
但し、n1~n8の全てが0になることはなく;
好ましくは、n2、n4及びn7は、各々独立して0~2であり、より好ましくは独立して0~1であり;
又、n3、n5、及びn6は、合計して1~12が好ましく、2~10がより好ましい、である。
【0064】
本明細書、特に断りのない限り、「ヘテロ原子」としては、例えば、O、S、及びNまたはP等が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-10アルキル(基)」としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、1-シクロプロピルエチル、2-シクロプロピルエチル、2-シクロブチルエチル、および2-メチルシクロプロピル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、1,1-ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、シクロヘプチル、シクロヘキシルメチル、2-シクロヘキシルエチル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシル及び3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル等が挙げられる。
【0065】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルキル(基)」としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、及び3-メチルペンチル等の基が挙げられる。
【0066】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-3アルキル(基)」としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソプロピル、等の基が挙げられる。
【0067】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-10アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、tert-ペンチルオキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、1-メチルペンチルオキシ、2-メチルペンチルオキシ、3-メチルペンチルオキシ、1,1-ジメチルブチルオキシ、1,2-ジメチルブチルオキシ、2,2-ジメチルブチルオキシ、1,3-ジメチルブチルオキシ、2,3-ジメチルブチルオキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、1,1,2-トリメチルプロピルオキシ、1,2,2-トリメチルプロピルオキシ、1-エチル-1-メチルプロピルオキシ、1-エチル-2-メチルプロピルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロプロピルメトキシ、シクロブチルメトキシ、シクロペンチルメトキシ、1-シクロプロピルエトキシ、2-シクロプロピルエトキシ、2-シクロブチルエトキシ、2-メチルシクロプロピルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロヘキシルメトキシ、2-シクロヘキシルエトキシ、4-メチルシクロヘキシルオキシ、4,4-ジメチルシクロヘキシルオキシ、及び3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0068】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、tert-ペンチルオキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、1-メチルペンチルオキシ、2-メチルペンチルオキシ、3-メチルペンチルオキシ等の基が挙げられる。
【0069】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-3アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びイソプロポキシ、等の基が挙げられる。
【0070】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-10アルコキシカルボニル基」とは、-C(=O)-R(RはC1-10アルコキシ基)である。
【0071】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-6アルコキシカルボニル基」とは、-C(=O)-R(RはC1-6アルコキシ基)であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、等の基が挙げられる。
【0072】
本明細書中、特に断りのない限り、「C1-3アルコキシカルボニル基」とは、-C(=O)-R(RはC1-3アルコキシ基)であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、等の基が挙げられる。
なお、上記C1-10アルキル基、C1-10のアルコキシ基及びC1-10アルコキシカルボニル基におけるC1-10は、C1-6であることが好ましく、C1-3であることがより好ましい。
【0073】
本明細書中、特に断りのない限り、「シクロアルカン環」としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロデカン等が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「芳香族環」としては、ベンゼン環、1-ナフタレン環、2-ナフタレン環、2-、3-、4-ビフェニルアントロン環、フェナントレン環及びアセナフテン環等が挙げられる。
【0074】
本明細書中、特に断りのない限り、「C3-8シクロアルキル環」としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の、シクロアルキル環が挙げられる。
【0075】
本明細書中、特に断りのない限り、「C6-10アリール環」としては、例えば、ベンゼン環、1-ナフタレン環、2-ナフタレン環、2-、3-、4-ビフェニルアントロン環、フェナントレン環、又はアセナフテン環、等の環が挙げられる。
【0076】
本明細書中、特に断りのない限り、「複素環」とは、窒素原子、硫黄原子または酸素原子のヘテロ原子を1~5個含有する3~14員環の単環式もしくは縮環式の環を意味する。
本明細書中、特に断りのない限り、「複素環」には、「芳香族複素環」、「部分的に水素化された縮環式複素環」、「非芳香族複素環」が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「芳香族複素環」には、環員数5~7の単環式芳香族複素環が含まれ、好ましくは、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、フラザール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、2H-1,2,3-チアジアジン、4H-1,2,4-チアジアジン、6H-1,3,4-チアジアジン、1,4-ジアゼピン、1,4-オキサゼピン等が挙げられる。
【0077】
本明細書中、特に断りのない限り、「芳香族複素環」には、環員数8~12の縮環式芳香族複素環(縮環式複素環)が含まれ、好ましくは、例えば、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、1,2-ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、1,2-ベンゾイソチアゾール、1H-ベンズイミダゾール、1H-インダゾール、1H-ベンゾトリアゾール、2,1,3-ベンゾチアジアジン、クロメン、イソクロメン、4H-1,4-ベンゾオキサジン、4H-1,4-ベンゾチアジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾオキサゼピン、ベンゾアゼピン、ベンゾジアゼピン、ナフチリジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、アクリジニン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン、フェノキサチイン、チアンスレン、チアントレン、フェナンスリジン、フェナンスロリン、インドリジン、チエノ[3,2-c]ピリジン、チアゾロ[5,4-c]ピリジン、ピロロ[1,2-b]ピリダジン、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン、イミダゾ[1,2-a]ピリジン、イミダゾ[1,5-a]ピリジン、イミダゾ[1,2-b]ピリダジン、イミダゾ[1,5-a]ピリミジン、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリジン、1,2,4-トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン、1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン、1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン等が挙げられる。
【0078】
本明細書中、特に断りのない限り、「部分的に水素化された縮環式複素環」とは、「複素環」と「C6-10アリール環」、もしくは、「複素環」と「芳香族複素環」が縮合して形成された縮合環において、いずれかの環が部分的に水素化された縮合環を意味する。
【0079】
本明細書中、特に断りのない限り、「部分的に水素化された縮環式複素環」としては、環員数8~12のものが好ましく、例えば、インドリン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インドリン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾフラン、2,3-ジヒドロベンゾ[d]オキサゾリン、2,3-ジヒドロベンゾ[d]チアゾリン、クロマン、2H-クロメン、4H-クロメン、イソクロマン、1H-イソクロメン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾオキサジン、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾチアジン、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、1,2-ジヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン、1,2-ジヒドロキナゾリン、2,4-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン、2,4-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d][1,3]チアジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、1,2-ジヒドロイソキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、1,2-ジヒドロキノキサリン、1,4-ジヒドロキノキサリン、1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリン、4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキサン、2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキサン、1,3-ベンゾジオキソリン、2,3,4,5-テトラヒドロベンゾ[b][1,4]オキサゼピン、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]オキセピン、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]チエピン、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロへプタ [b]ピリジン、等の環が挙げられる。
【0080】
本明細書中、特に断りのない限り、「非芳香族複素環」としては、環員数3~14のものが好ましく、例えば、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、チオラン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、オキサゾリン、イソキサゾリン、1,3-オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリン、イソチアゾリン、1,3-チアゾリジン、イソチアゾリジン、オキサジアゾリン、1,3,4-オキサジアゾリジン、キヌクリジン、アゼパン、ジアゼピン、オキセパン、チエパン、等の環が挙げられる。
【0081】
本発明の化合物は、リンカーと非ステロイド性抗炎症性化合物とのエステル結合が加水分解され、非ステロイド性抗炎症性化合物が遊離される。エステル結合は周辺環境により加水分解の速度が変わる。そのため、エステル結合の形態で、より長期の徐放効果が得られるものもある。例えば、リンカーのZの近傍に、電子供与基や嵩高い基を導入、若しくは置換基として導入することにより、加水分解の速度が遅くなることもあり、例えば、アルキル基、特に分枝状のアルキル基が挙げられる。またその反対に、リンカーのZの近傍に、電子吸引基を導入、若しくは置換基として導入することにより、加水分解の速度が速くなることがあり、例えば、ハロアルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。このようにして、目的とする加水分解速度、すなわち徐放効果に応じて、リンカー内への基の導入若しくはリンカーへの置換基の導入を選択することが可能である。
【0082】
より好ましくは、以下に示す一群のリンカーのいずれかでアルギン酸又はその塩と、非ステロイド性抗炎症性化合物が結ばれていることが好ましい。なお、以下のリンカーにおいて、-NHは、アルギン酸又はその塩1残基とアミド結合を形成する末端を示し、-Oは、非ステロイド性抗炎症性化合物のカルボキシル基とエステル結合を形成する末端を示す。
【化23】
【0083】
又は、より好ましくは、下記式(LK-1)~(LK-17)で表わされるリンカー(式中破線の外側は含まない)からなる群から選択されるいずれかを介して、アルギン酸又はその塩と、非ステロイド性抗炎症性化合物が結合していることが好ましい。なお、下記式リンカーにおいて、イミノ基(-NH)側がアルギン酸又はその塩の1残基とアミド結合を形成する末端を示し、-O側が、非ステロイド性抗炎症性化合物のカルボキシル基とエステル結合を形成する末端を示す。
【化24】
【0084】
<非ステロイド性抗炎症性化合物>
非ステロイド性抗炎症性化合物としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に由来する残基を有し、その化学構造中にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有しているものを使用する。また、非ステロイド性抗炎症性化合物は塩の形態であっても構わない。本発明における上記NSAIDsとしては、通常、非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれる化合物全般を含むため、特に限定されないが、中でも特に関節炎への適用があるものが望ましく、リンカーとの結合の観点から、カルボキシル基を少なくとも有しているNSAIDsが特に好ましい。非ステロイド性抗炎症性化合物がカルボキシル基を有し、前記カルボキシル基がリンカーと結合されてなることが好ましい。カルボキシル基を有するNSAIDsとしては、例えば(1)サリチル酸系、(2)プロピオン酸系または(3)酢酸系(フェニル酢酸系)、(4)フェナム酸系、(5)オキシカム系、(6)ピロロ-ピロール誘導体、及び(7)コキシブ系(COX-2阻害剤)等の非ステロイド性抗炎症薬が挙げられ、酢酸系(フェニル酢酸系)の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であることが好ましく、非ステロイド性抗炎症性化合物がジクロフェナクであることが最も好ましい。前記、非ステロイド性抗炎症性薬において、(1)サリチル酸系非ステロイド性抗炎症薬としては、サリチル酸、サザピリン、アスピリン、ジフルニサル、サリチルアミド、等が挙げられ、(2)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬としては、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、チアプロフェン酸、オキサプロジン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、等が挙げられ、(3)アリール酢酸系(フェニル酢酸系)非ステロイド性抗炎症薬としては、フェルビナク、ジクロフェナク、トルメチンナトリウム、スリンダク、フェンブフェン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、マレイン酸プログルメタシン、アンフェナクナトリウム、ナブメトン、モフェゾラク、エトドラク、アルクロフェナク、等が挙げられる。
本発明の例示的な実施態様の実施において、(2)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬であるケトプロフェン又はナプロキセン、又は(3)アリール酢酸系(フェニル酢酸系)非ステロイド性抗炎症薬であるフェルビナク又はジクロフェナクがより好ましく、ジクロフェナクが特に好ましい。
【0085】
<水溶性アルギン酸誘導体の合成方法>
水溶性アルギン酸誘導体の合成において、リンカーへの非ステロイド性抗炎症性化合物の結合、及び、リンカーへのアルギン酸又はその塩の結合は、どちらが先でも構わないが、水溶媒中でエステル化を行うことは難しいなどのような理由から、リンカーへの非ステロイド性抗炎症性化合物の結合を先にするほうが好ましい。このような結合を達成する方法としては、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDCI(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、DMT-MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)などの縮合剤を使用する方法、HOSu(N-ヒドロキシスクシンイミド)、HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)などの縮合補助剤と前記縮合剤とを使用する縮合反応、求核置換反応、活性エステル法、酸無水物法等が挙げられ、縮合反応、及び、求核置換反応を用いて結合させるのが副反応を抑えるなどの理由で好ましい。
より具体的には、例えば以下のような概念を示すスキームのように、縮合反応(エステル化反応)を利用する方法又は求核置換反応を利用する方法で合成することができる。下記の反応スキームにおいては、便宜上、リンカーを「(O)-Linker-NH」として解釈し、ALをアルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖のC(=O)-基として解釈し、Bocをブトキシカルボニル基(保護基)として解釈すると、反応の概略を理解し得る。なお、DFはジクロフェナクの略を示すが、これは例示であって、本発明においてNSAIDsがジクロフェナクに限定されることを意味するわけではない。
【0086】
【化25】
【0087】
また、本発明における水溶性アルギン酸誘導体における非ステロイド性抗炎症性化合物の導入率は、本発明の水溶性アルギン酸誘導体の合成工程において、縮合剤、縮合補助剤、リンカー結合非ステロイド性抗炎症性化合物の投入量を変えることなどにより調整可能である。なお、導入率は、吸光度の測定やHPLC、NMR等を用いる方法で測定することができる。リンカーの構造、導入率によって、水溶性アルギン酸誘導体の水溶性を適宜調整することも可能である。
【0088】
<アルギン酸又はその塩と結合させる際に用いるアミノ化合物>
アルギン酸誘導体の合成において、リンカーと非ステロイド性抗炎症性化合物とのを結合させた後、アルギン酸又はその塩と結合させる際に用いるアミノ化合物としては、下記式(AM)で表わされるアミノ化合物挙げられる。
式(AM):
【化26】
(式中、
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物由来の1残基であり;
1及びX2は、酸素原子又はNH(イミノ基)であり;
1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2、R3及びR4、若しくはR5及びR6は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ)、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、及びC1-6アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ)、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、C1-3アルキル基、及びC1-3アルコキシカルボニル基から選択される基であり(R1及びR2は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ)更に、好ましくは、水素原子、フッ素、又はメチル基であり(R1及びR2は一緒になってオキソ基(=O)を形成することができ);
Yは、複素環(前記複素環は、ハロゲン原子又はC1-6アルキル基が1~3個置換されていてもよく、好ましくは、ハロゲン原子又はC1-3アルキル基が1~3個置換されていてもよい)であり、好ましくはピペリジンであり;
Zは、酸素原子であり;
n1又はn8は、0~10のいずれかの整数であり;
n3、n5、又はn6は、独立して0、1、2、3のいずれかの整数であり;
n2、n4、又はn7は、独立して0又は1の整数であり;
但し、n1~n8の全てが0になることはない)で表わされるアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒物。
【0089】
又、式(AM)で表わされるアミノ化合物のうち、好ましいものとしては、
下記式(AM-1):
【化27】
(式中、
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
Yは、C6-10アリール環、C3-8アルキル環、又は複素環であり;好ましくはベンゼン環であり;
n1a及びn5aは、各々独立して1~4の整数である)で表されるアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0090】
又、式(AM-1)の、具体的なものとしては、例えば、下記式
【化28】
から選ばれるアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0091】
又、式(AM)で表わされるアミノ化合物のうち、好ましいものとしては、
下記式(AM-2):
【化29】
(式中、
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
1及びR2は、各々独立して、水素原子、及びハロゲン原子から選択される基であり;
n1a、n3a及びn5aは、各々独立して1~4の整数である)で表されるアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である
(但し、(αR)-3-ベンゾイル-α-メチル-フェニル酢酸 3-アミノ-2-フルオロプロピルエステル[CAS No.1644429-26-4]、(αR)-3-ベンゾイル-α-メチル-フェニル酢酸 3-アミノ-プロピルエステル[CAS No.1644429-25-3]、2-フルオロ-α-メチル- [1,1’-ビフェニル]-4-酢酸 3-アミノ-2,2-ジフルオロプロピルエステル[CAS No.1644429-24-2]、(αR)-3-ベンゾイル-α-メチル-フェニル酢酸 3-アミノ-2,2-ジフルオロプロピルエステル[CAS No.1644429-23-1]、[1,1’-ビフェニル]-4-酢酸 3-アミノ-2,2-ジフルオロプロピルエステル[CAS No.1644429-21-9]、(αS)-α-メチル-4-(2-メチルプロピル)- フェニル酢酸 3-アミノ-プロピルエステル [CAS No.1384127-03-0]、2-[(2,6-ジクロロフェニル)アミノ]-フェニル酢酸 3-アミノ-プロピルエステル[CAS No.918636-69-8]、 [1,1’-ビフェニル]-4-酢酸 3-アミノ-プロピルエステル[CAS No.918636-66-5]、2-フルオロ-α-メチル- [1,1’-ビフェニル]-4-酢酸 3-アミノ-プロピルエステル[CAS No.918636-63-2]、α-メチル-4-(2-メチルプロピル)- フェニル酢酸 3-アミノ-プロピルエステル[CAS No.918636-60-9]、及び(αS)-6-メトキシ-α-メチル-2-ナフタレン酢酸 3-アミノ-プロピルエステル [CAS No.918636-57-4]、その塩、又はそれらの溶媒和物を除く)で表されるアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0092】
又、式(AM-2)の、具体的なものとしては、例えば、下記式
【化30】
のアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0093】
又、式(AM)で表わされるアミノ化合物のうち、好ましいものとしては、下記式(AM-3):
【化31】
(式中、
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナクの1残基であり;
3、R4、R5及びR6は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、及びメチル基から選択される基であり;
n1a、n6a及びn8aは、各々独立して1~4の整数である)で表されるアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0094】
又、式(AM-3)の、具体的なものとしては、例えば、下記式
【化32】
のアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0095】
又、式(AM)で表わされるアミノ化合物のうち、好ましいものとしては、
下記式(AM-4):
【化33】
(式中、
(D)は、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;好ましくは、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ナプロキセン、及びフェルビナクから選択される、非ステロイド性抗炎症性化合物の1残基であり;
5及びR6は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基であり;好ましくは、R5は水素原子、R6は水素原子又はメチル基であり;
3は、イミノ基(NH)、C3-8シクロアルキル環、C6-10アリール環又は複素環であり(前記C3-8シクロアルキル環、C6-10アリール環又は複素環は、ハロゲン原子又はC1-6アルキル基が1~3個置換しても良く)、好ましくは、イミノ基(NH)、又は複素環であり、より好ましくは、イミノ基(NH)、又はピペリジンであり;
n1aは、1~4のいずれかの整数であり;
n8aは、0~8のいずれかの整数である)で表されるアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0096】
又、式(AM-4)の、具体的なものとしては、例えば、下記式
【化34】
のアミノ化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。
【0097】
本明細書中、式(AM)、式(AM-1)、式(AM-2)、式(AM-3)又は式(AM-4)で表わされるアミノ化合物、若しくは塩基性置換基が置換する非ステロイド性抗炎症性化合物は、製薬学的に許容される塩(例えば、酸付加塩)を形成する場合がある。かかる塩としては、製薬学的に許容し得る塩であれば特に限定されないが、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、よう化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、エナント酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、乳酸、ソルビン酸、マンデル酸等の脂肪族モノカルボン酸等との塩、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸等の脂肪族ジカルボン酸との塩、クエン酸等の脂肪族トリカルボン酸との塩、安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸との塩、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸の塩、桂皮酸、グリコール酸、ピルビン酸、オキシル酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸類との酸付加塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。
【0098】
前記塩は、常法に従い、例えば、本発明の化合物と適量の酸を含む溶液を混合することにより目的の塩を形成させた後に分別濾取するか、もしくは該混合溶媒を留去することにより得ることができる。塩に関する総説として、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use、Stahl&Wermuth (Wiley-VCH、2002)が出版されており、本書に詳細な記載がなされている。
【0099】
<アルギン酸誘導体ゲル>
本発明の水溶性アルギン酸誘導体は、一般的にアルギン酸の架橋剤として使用される物質と混合することによってアルギン酸誘導体ゲルを形成することができる。そのような架橋剤としては、アルギン酸の1価金属塩の溶液を架橋することにより、その表面を固定化することができるものであれば、特に限定されないが、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+などの2価以上の金属イオン化合物、分子内に2~4個のアミノ基を有する架橋性試薬などが挙げられる。より具体的には、2価以上の金属イオン化合物として、CaCl2、MgCl2、CaSO4、BaCl2等を、分子内に2~4個のアミノ基を有する架橋性試薬として、窒素原子上にリジル(lysyl)基(-COCH(NH2)-(CH24-NH2)を有することもあるジアミノアルカン、すなわちジアミノアルカンおよびそのアミノ基がリジル基で置換されてリジルアミノ基を形成している誘導体が包含され、具体的にはジアミノエタン、ジアミノプロパン、N-(リジル)-ジアミノエタン等を挙げることができるが、入手しやすいこと、ゲルの強度等の理由から、特に、CaCl2溶液とするのが好ましい。
ここで、架橋剤にカルシウムが含まれる場合、カルシウムの濃度が高い方が、ゲル化が早く、また、より硬いゲルを形成することができることが知られている。しかし、カルシウムには細胞毒性があるため、濃度が高すぎると、これを体内に投与した場合に体内(幹部)に悪影響を及ぼすおそれもあり、アルギン酸の量に応じて、適量を使用することがよい。
【0100】
<徐放性医薬組成物>
本発明の水溶性アルギン酸誘導体又はアルギン酸誘導体ゲルは、生体内において非ステロイド性抗炎症性化合物を徐放する挙動を示すため、徐放性医薬組成物として使用することができる。さらに、本発明の徐放性医薬組成物は、その徐放基材としてアルギン酸又はその塩が用いられている。アルギン酸又はその塩は、創傷被覆、軟骨疾患治療及び関節リウマチ治療に対する効果を持ち合わせている。例えば膝関節変形症では軟骨再生の効果の発揮し、関節リウマチでは軟骨再生や関節リウマチ自体の治療効果の発揮が期待される。すなわち、本発明の徐放性医薬組成物は、徐放されるNSAIDsの鎮痛及び抗炎症の治療効果とアルギン酸の治療効果が合わせて、期待されるものである。本発明の徐放性医薬組成物の対象疾患、投与ルートは特に限定されるものでは無いが、関節症の処置、炎症の抑制や疼痛の抑制、症状の予防や緩和などを目的とすることが好ましく、関節腔内へ直接注入する投与ルートで投与されることが好ましい。
例えば、本発明の徐放性医薬組成物を膝関節腔内投与用の関節炎治療剤として使用したときに、炎症を起こしている患部のpHが弱酸性の挙動を示す場合、患部に注射等により投与した際に、7日間以上、好ましくは15日間以上、より好ましくは30日間以上、更に好ましくは100日間以上、安定して非ステロイド性抗炎症性化合物を徐放し続けることが期待される。
【0101】
また、本発明の徐放性医薬組成物の投与量は、含まれる非ステロイド性抗炎症性化合物の量、投与ルート、投与形態、使用目的、投与対象となる動物の具体的症状、年齢、体重等に応じて、治療効果が最も適切に発揮される様に個別に決定され、特に限定されない。例えば、NSAIDsの効果を示す作用濃度の1/100~10倍の濃度が維持される量が好ましい。
【0102】
本発明の徐放性医薬組成物の適用部位は非経口投与により投与可能な部位であれば特に限定されないが、中でも関節が好ましく、膝関節、肩関節、股関節、顎関節等が特に好ましい。特に関節炎、例えば変形性関節症(OA)及びリウマチ性関節炎(RA)への適用が望ましい。さらには、変形性膝関節症及びリウマチ性膝関節炎への適用が望ましい。
【0103】
本発明では、例えば水溶性アルギン酸誘導体を患部である膝関節腔内に適用してもよい。また適用後、適度な粘度が保たれない場合には、適用して誘導体の表面に架橋剤を適用するようにしても良い。誘導体表面をゲル化して、表面を固めることで、膝関節腔からが漏れ出すのを効果的に防ぐことができる。
先に水溶性アルギン酸誘導体を患部に投与し、あとから架橋剤を添加する場合、架橋剤は、適用した組成物の表面から徐々に内部に浸透し、架橋をすすめるのが望ましい。患部との接触部分に、架橋剤の影響を強く及ぼさないためには、架橋剤の適用量を過剰にならないよう調節する。2価以上の金属イオンの適用量としては、アルギン酸の1価金属塩を含有する組成物の表面を固めることができる量であれば、特に限定されない。
本発明の水溶性アルギン酸誘導体を患部に適用する際に、架橋剤により表面をゲル化させ、あるいは全体がゲル化するようあらかじめ架橋剤と混合して適用すると、本発明の水溶性アルギン酸誘導体は患部で硬化し、適用した患部に密着した状態で局在させることができる。これにより、細胞等を包埋した際に、細胞等の成分を患部に局在させることができる。
【0104】
また、アルギン酸誘導体ゲルを徐放性医薬組成物に使用する場合には、時間差、温度差、あるいは生体内のカルシウムイオンとの接触などの環境の変化によりゲル化を進める架橋剤の濃度を調整し、例えば投与前は液体状態を維持し、生体内への投与後に自己ゲル化する組成物とすることもできる。このような架橋剤としては、グルコン酸カルシウム、CaSO4、アルギン酸カルシウム塩などを挙げることができる。
【0105】
また、水溶性アルギン酸誘導体を含む医薬組成物に2価以上の金属イオンを加える方法としては、特に限定されないが、例えば、シリンジ、噴射器(スプレー)などで、2価以上の金属イオンの溶液を組成物表面にかける方法などを挙げることができる。本発明の組成物の表面に架橋剤を適用するタイミングは、患部に本発明の組成物を適用した後でもよいし、同時でもよい。
【0106】
また、本発明のアルギン酸誘導体ゲルを含む徐放性医薬組成物においては、例えば500μm未満の平均粒径を有するマイクロビーズの形態で含んでいてもよい。
【実施例
【0107】
次に、本発明をさらに詳細に説明するために実施例、試験例をあげるが、これらの例は単なる実施であって、本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定には、JEOL JNM-ECX400 FT-NMR(日本電子)を用いた。
1H-NMRデータ中、NMRシグナルのパターンで、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレット、brはブロード、Jはカップリング定数、Hzはヘルツ、CDCl3は重クロロホルム、DMSO-d6は重ジメチルスルホキシドを意味する。1H-NMRデータ中、水酸基(OH)、アミノ基(NH2)、カルボキシル基(COOH)のプロトン等、ブロードバンドであるため確認ができないシグナルについては、データに記載していない。
実施例中の薬剤(非ステロイド性抗炎症性化合物)導入率(モル%)は、1H-NMRから算出されたアルギン酸を構成するD-マンヌロン酸又はL-グルロン酸の単糖を1単位(モル)とし、アルギン酸を構成する単糖100単位(モル)に対する導入された薬剤のモル数の割合を示すものとする。
【0108】
分子量の測定は、以下の方法にて行なった。実施例中で得られた本発明に係る水溶性アルギン酸誘導体固体を秤量し、10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.7)を加え室温で1時間以上撹拌・溶解後、希釈し、0.05%溶液を調製した。この溶液を孔径0.22μmの親水性PVDF製ろ過フィルター(MylexGV33 フィルター、Merck Millipore社)に通し不溶物を除いた後、この200μLをSuperose6 Increase 10/300 GLカラム(GEヘルスケアサイエンス社)に供しゲルろ過を実施した。ゲルろ過は、クロマトグラフ装置としてAKTA Explorer10Sを、展開溶媒として10mmol/Lリン酸緩衝液(pH 7.7)を使用し、室温で流速0.8mL/mimの条件で実施した。各試料のクロマトグラムは、波長220nmの吸光度をモニターし作製した。得られたクロマトグラムは、Unicorn 5.31ソフトウエア(GEヘルスケアサイエンス社)にて解析し、ピークの溶出範囲を決定した。
本発明に係る水溶性アルギン酸誘導体の分子量は、以下の方法にて求めた。ブルーデキストラン(分子量200万Da、SIGMA社)、チログロブリン(分子量66.9万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、フェリチン(分子量44万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、コンアルブミン(分子量7.5万Da、GEヘルスケアサイエンス社)、及びリボヌクレアーゼA(分子量1.37万Da、GEヘルスケアサイエンス社)を標準品として用い、試料と同じ条件でゲルろ過を行い、各成分の溶出液量を決定した。各成分の溶出液量を横軸に、分子量の対数値を縦軸にそれぞれプロットし、2次回帰し、検量線を作成した。この検量線を用いて、先に得られた試料のクロマトグラムの溶出時間iにおける分子量(Mi)を計算した。次いで、溶出時間iにおける吸光度を読み取り、Hiとした。これらのデータから重量平均分子量(Mw)を以下の式から求めた。
【数1】
【0109】
原料のアルギン酸又はその塩の分子量は、以下の方法にて求めた。各アルギン酸を、乾燥減量を考慮して秤量し、超純水を加えて1%水溶液を調製した。次いで、終濃度10mmol/L リン酸緩衝液(pH7.7)となるように、100 mmol/Lリン酸緩衝液と超純水により希釈し、0.05%溶液を調製した。不溶物を孔径0.22μmの親水性PVDF製ろ過フィルター(MylexGV33 フィルター、Merck Millipore社)により除いた後、200μLをゲルろ過に供し、本発明に係る水溶性アルギン酸誘導体と同様の条件でゲルろ過を実施した。検出は示差屈折計により実施し、本発明に係る水溶性アルギン酸誘導体と同様の方法で重量平均分子量(Mw)を求めた。
なお、本実施例のスキームにおける「AL」とは、アルギン酸又はその塩由来の残基であって、アルギン酸を構成するL-グルロン酸及びD-マンヌロン酸のいずれか一方の単糖の-C(=O)基を有する残基を意味する。
【0110】
(実施例1)ジクロフェナク-(2-アミノエタノール)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム1
【化35】
【0111】
<工程1>化合物3の合成
市販のジクロフェナクナトリウム(化合物1、1.59g)、市販のtert-ブチル(2-ブロモエチル)カルバメート(化合物2、1.12g)、N-メチルピロリドン(5.0mL)の混合物を60℃で18時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、酢酸エチル(40mL)とヘプタン(20mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物を酢酸エチルによる結晶化によって精製し、化合物3を1.19g得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.22(1H,dd,J=2,7Hz),7.13(1H,dt,J=2,8Hz),7.01-6.92(2H,m),6.85(1H,s),6.55(1H,d,8Hz)4.72(1H,br),4.21(2H,t,J=5Hz),3.83(2H,s),3.45-3.36(2H,m),1.43(9H,s)ppm.
【0112】
<工程2>化合物4の合成
化合物3(1.1g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(11mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、化合物4を1.0g得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.15(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.25-7.16(2H,m),7.07-7.01(2H,m),6.85-6.79(1H,m),6.20(1H,d,J=8Hz),4.27(2H,t,J=5Hz),3.85(2H,s),3.09(2H,t,J=5Hz)ppm.
【0113】
<工程3-1>ジクロフェナク-(2-アミノエタノール)-アルギン酸誘導体(化合物5a)の合成
アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A1)200mgを水(20mL)に溶解し、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(102mg)と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.28mL)を加え、化合物4(70mg)のエタノール(5mL)溶液を滴下し、室温で20時間攪拌した。エタノール(40mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(2mL)を加え、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(227mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は10.2モル%であった。
【0114】
<工程3-2>ジクロフェナク-(2-アミノエタノール)-アルギン酸誘導体(化合物5b)の合成
アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)200mgを用い、(実施例1)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物(194mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は13.5モル%であった。
【0115】
<工程3-3>ジクロフェナク-(2-アミノエタノール)-アルギン酸誘導体(化合物5c)の合成
アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A3)200mgを用い、(実施例1)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物(245mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は13.9モル%であった。
【0116】
<工程3-4>ジクロフェナク-(2-アミノエタノール)-アルギン酸誘導体(化合物5d)の合成
アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A4)200mgを用い、(実施例1)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物(239mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は9.6モル%であった。
【0117】
(実施例2)ジクロフェナク-(1-アミノ-2-プロパノール)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム2
【化36】
【0118】
<工程1>化合物7の合成
市販のジクロフェナクナトリウム(化合物1、668mg)、市販のtert-ブチル(2-ブロモプロピル)カルバメート(化合物6、500mg)、N-メチルピロリドン(5.0mL)の混合物を60℃で2日間撹拌した。さらに化合物2(500mg)を加えて、60℃で1日間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、酢酸エチル(40mL)とヘプタン(20mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-15%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物7(343mg)を無色ガム状物質として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.22(1H,dd,J=1,8Hz),7.12(1H,dt,J=1,8Hz),7.01-6.92(2H,m),6.84(1H,br),6.55(1H,d,J=8Hz),5.06-4.92(1H,m),4.66-4.57(1H,m),3.82(1H,d,J=15Hz),3.78(1H,d,J=15Hz),3.42-3.16(2H,m),1.40(9H,s),1.25(3H,d,J=6Hz)ppm.
【0119】
<工程2>化合物8の合成
化合物7(334mg)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(3mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、残留物を酢酸エチルから結晶化により精製し、化合物8(190mg)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.06(3H,s),7.55(2H,d,J=8Hz),7.26-7.18(2H,m),7.06(1H,dt,J=2,7Hz),6.99(1H,s),6.84(1H,dt,J=1,7Hz),6.23(1H,d,J=8Hz),5.09-4.98(1H,m),3.86(1H,d,J=16Hz),3.82(1H,d,J=16Hz),3.11-2.95(2H,m),1.22(3H,d,J=6Hz)ppm.
【0120】
<工程3>ジクロフェナク-(1-アミノ-2-プロパノール)-アルギン酸誘導体(化合物9)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(49mg)と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.13mL)を加え、化合物8(52mg)のエタノール(5mL)溶液を滴下し、室温で16時間攪拌した。エタノール(15mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、30分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(111mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は9.9モル%であった。
【0121】
(実施例3)ジクロフェナク-(2-アミノエトキシエタノール)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム3
【化37】
【0122】
<工程1>化合物12の合成
市販のジクロフェナク(化合物10、2.0g)、市販のtert-ブチル(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(化合物11、1.39g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.17g)、ジクロロメタン(7mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.39g)のジクロロメタン(7mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(60mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-50%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物12(2.44g)を無色ガム状物質として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.24(1H,dd,J=1,8Hz),7.12(1H,dt,J=1,8Hz),7.01-6.93(2H,m),6.89(1H,s),6.55(1H,d,J=8Hz),4.86(1H,br),4.32-4.27(2H,m),3.85(2H,s),3.69-3.64(2H,m),3.48(2H,t,J=5Hz),3.31-3.21(2H,m),1.44(9H,s)ppm.
【0123】
<工程2>化合物13の合成
化合物12(2.4g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(24mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、残留物を酢酸エチルから結晶化により精製し、化合物13(1.9g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 7.97(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.24-7.18(2H,m),7.10-7.03(2H,m),6.87-6.83(1H,dt,J=1,7Hz),6.26(1H,d,J=8Hz),4.26-4.20(2H,m),3.83(2H,s),3.70-3.65(2H,m),3.60(2H,t,J=5Hz),2.93(2H,t,J=5Hz)ppm.
【0124】
<工程3>ジクロフェナク-(2-アミノエトキシエタノール)-アルギン酸誘導体(化合物14)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.13mL)、化合物13(56mg)、エタノール(5mL)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(37mg)を加え、室温で一晩攪拌した。エタノール(15mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(91.3mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は7.0モル%であった。
【0125】
(実施例4)ジクロフェナク-(セリンエチルエステル)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム4
【化38】
【0126】
<工程1>化合物18の合成
市販の(tert-ブトキシカルボニル)-L-セリン(化合物15、2.0g)のエタノール(100mL)溶液に、室温で1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(3.74g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.12g)を加えた。反応液を室温で3日間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去した後、酢酸エチル(100mL)に溶かし、その溶液を5%クエン酸水溶液(50mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、化合物16の粗生成物(1.08g)を得た。
化合物16の粗生成物(1.08g)と市販のジクロフェナクナトリウム(化合物1、2.95g)のN-メチルピロリドン(9mL)溶液に、室温で1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(2.66g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.11g)を加えた。反応液を室温で2日間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で抽出した。抽出液を水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、化合物17を含む画分(1.09g)を得た。
化合物17を含む画分(1.09g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(10mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、残留物を酢酸エチルから結晶化により精製し、化合物18(91mg)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.61(3H,br),7.54(2H,d,J=8Hz),7.25-7.15(2H,m),7.06(1H,dt,J=1,8Hz),6.96(1H,s),6.84(1H,dt,J=1,7Hz),6.23(1H,d,J=8Hz),4.55-4.22(3H,m),4.23-4.14(2H,m),3.87(1H,d,H=16Hz),3.82(2H,d,J=16Hz),1.20(3H,t,J=7Hz)ppm.
【0127】
<工程2>ジクロフェナク-(セリンエチルエステル)-アルギン酸誘導体(化合物19)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(84μL)、化合物18(30mg)のエタノール(5mL)溶液、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(37mg)を加え、室温で3日間撹拌した。0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)とエタノール(15mL)を加えた後、30分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(61.9mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は13.1モル%であった。
【0128】
(実施例5)ジクロフェナク-(トレオニンエチルエステル)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム5
【化39】
【0129】
<工程1>化合物22の合成
市販の(tert-ブトキシカルボニル)-L-トレオニン(化合物20、2.14g)のエタノール(100mL)溶液に、室温で1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(3.74g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.12g)を加えた。反応液を一晩撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去した後、酢酸エチル(100mL)に溶かし、その溶液を5%クエン酸水溶液(50mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、化合物21の粗生成物(0.96g)を得た。
化合物21の粗生成物(0.96g)、市販のジクロフェナク(化合物10、1.15g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.09g)のジクロロメタン(4mL)溶液に、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.8g)のジクロロメタン(4mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(60mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物22(0.96g)を無色オイル状物質として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.33(2H,d,J=8Hz),7.17(1H,dd,J=1,7Hz),7.11(1H,dt,J=1,8Hz),7.00-6.92(2H,m),6.82(1H,s),6.54(1H,d,J=8Hz),5.41-5.43(1H,m),5.23(1H,d,J=10Hz),4.43(1H,dd,J=3,10Hz),4.07-3.91(2H,m),3.78(1H,d,J=14Hz),3.72(1H,d,J=14Hz),1.47(9H,s),1.33(3H,d,J=6Hz),1.11(3H,t,J=7Hz)ppm.
【0130】
<工程2>化合物23の合成
化合物22(0.96g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(5mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、残留物を酢酸エチルから結晶化により精製し、化合物23(0.41g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.77(3H,br),7.54(2H,d,J=8Hz),7.22(1H,t,J=8Hz),7.17(1H,dd,J=1,7Hz),7.07(1H,dt,J=1,8Hz),6.94(1H,s),6.85(1H,dt,J=1,7Hz),6.24(1H,d,J=8Hz),5.35-5.27(1H,m),4.35(1H,d,J=4Hz), 4.12(2H,q,J=7Hz),3.86(1H,d,J=16Hz),3.78(1H,d,J=16Hz),1.36(3H,d,J=7Hz),1.15(3H,t,J=7Hz)ppm.
【0131】
<工程3>ジクロフェナク-(トレオニンエチルエステル)-アルギン酸誘導体(化合物24)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(37mg)と2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物(213mg)、化合物23(31mg)のエタノール(5mL)溶液を加えた。2時間後に0.1M水酸化ナトリウム水溶液(0.2mL)を追加、3時間後に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(16mg)を追加、4時間後と5時間後にそれぞれ0.1M水酸化ナトリウム水溶液(0.1mL)を追加、6時間後に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(23mg)と0.1M水酸化ナトリウム水溶液(0.2mL)を加えた。24時間後にエタノール(15mL)と0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(111.2mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は5.6モル%であった。
【0132】
(実施例6)ジクロフェナク-((4-(アミノメチル)フェニル)メタノール)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム6
【化40】
【0133】
<工程1>化合物26の合成
市販のジクロフェナクナトリウム(化合物1、0.48g)、市販のtert-ブチル(4-(ブロモメチル)ベンジル)カルバメート(化合物25、0.45g)、N-メチルピロリドン(3.0mL)の混合物を40℃で2時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、酢酸エチル(40mL)とヘプタン(20mL)を加え、水(20mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物26(0.75g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.33-7.21(7H,m),7.12(1H,dt,J=1,8Hz),7.00-6.92(2H,m),6.86(1H,s),6.55(1H,d,J=8Hz),5.15(2H,s),4.81(1H,br),4.30(2H,d,J=6Hz),3.85(2H,s),1.46(9H,s)ppm.
【0134】
<工程2>化合物27の合成
化合物26(0.75g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(20mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応懸濁液をろ過し、ろ取した固体を酢酸エチルで洗い、化合物27(0.36g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 7.53(2H,d,J=8Hz),7.45-7.36(4H,m),7.23-7.18(2H,m),7.10-7.03(2H,m),6.84(1H,dt,J=1,7Hz),6.25(1H,d,J=8Hz),5.16(2H,s),4.00(2H,s),3.88(2H,s)ppm.
【0135】
<工程3>ジクロフェナク-((4-(アミノメチル)フェニル)メタノール)-アルギン酸誘導体(化合物28)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(49mg)、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.16mL)、化合物27(60mg)のエタノール(5mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。エタノール(20mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(88.8mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は5.3モル%であった。
【0136】
(実施例7)ジクロフェナク-(チラミン)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム7
【化41】
【0137】
<工程1>化合物30の合成
市販のジクロフェナク(化合物10、0.7g)、市販のN-(tert-ブトキシカルボニル)チラミン(化合物29、0.56g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.06g)、ジクロロメタン(2.5mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.49g)のジクロロメタン(2.5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)と水(15mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物を酢酸エチルからの結晶化により精製し、化合物30(0.64g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.36-7.30(3H,m),7.20-7.13(3H,m),7.05-6.95(4H,m),6.77(1H,s),6.58(1H,d,J=8Hz),4.60-4.46(1H,m),4.04(2H,s),3.40-3.30(2H,m), 2.78(2H,t,J=7Hz),1.43(9H,s)ppm.
【0138】
<工程2>化合物31の合成
化合物30(0.64g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(7mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、残留物を酢酸エチル-ヘプタン(2:1)で洗い、化合物31(0.56g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 7.91(3H,br),7.54(2H,d,J=8Hz),7.33-7.27(3H,m),7.25-7.21(1H,m),7.15-7.05(4H,m),6.86(1H,dt,J=1,7Hz),6.24(1H,d,J=8Hz),4.09(2H,s),3.08-3.00(2H,m),2.91-2.83(2H,m)ppm.
【0139】
<工程3>ジクロフェナク-(チラミン)-アルギン酸誘導体(化合物32)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(37mg)、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.11mL)、化合物31(40mg)のエタノール(5mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。エタノール(20mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(81.0mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は5.0モル%であった。
【0140】
(実施例8)ジクロフェナク-(3-アミノ-2,2-ジフルオロプロパン-1-オール)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム8
【化42】
【0141】
<工程1>化合物3の合成
市販のジクロフェナク(化合物10、0.7g)、市販のtert-ブチル(2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシプロピル)カルバメート(化合物33、0.5g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.06g)、ジクロロメタン(2.5mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.49g)のジクロロメタン(2.5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)と水(15mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-30%酢酸エチル/ヘプタン)より精製し、化合物34(1.02g)を無色ガム状物質として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.33(2H,d,J=8Hz),7.27-7.22(1H,m),7.13(1H,dt,J=1,8Hz),7.01-6.94(2H,m),6.72(1H,s),6.56(1H,d,J=8Hz),4.86-4.76(1H,m),4.37(2H,t,J=13Hz),3.91(2H,s),3.60(2H,dt,J=7,13Hz),1.42(9H,s)ppm.
【0142】
<工程2>化合物35の合成
化合物34(1.0g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(10mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、残留物を酢酸エチル-ヘプタン(2:1)で洗い、化合物35(0.48g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.54(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.25-7.18(2H,m),7.09-7.02(2H,m),6.84(1H,dt,J=1,7Hz),6.23(1H,d,J=8Hz),4.56(2H,t,J=14Hz),3.94(2H,s),3.50(2H,t,J=16Hz)ppm.
【0143】
<工程3>ジクロフェナク-(3-アミノ-2,2-ジフルオロプロパン-1-オール)-アルギン酸誘導体(化合物36)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(37mg)、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.11mL)、化合物35(38mg)のエタノール(5mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。エタノール(20mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(93.6mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は14.9モル%であった。
【0144】
(実施例9)ジクロフェナク-(N-(アミノエチル)-2-ヒドロキシアセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム9
【化43】
【0145】
<工程1>化合物39の合成
氷冷した市販のtert-ブチル(2-アミノエチル)カルバメート(化合物37、1.6g)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5mL)、水(20mL)、1,2-ジメトキシエタン(20mL)の混合液に、市販の2-ブロモアセチルクロリド(化合物38、1.66mL)を滴下し、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)を加え、10分間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(80mL)で2回抽出し、合わせた抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をヘプタン-酢酸エチル(1:1、10mL)で洗浄し、化合物39(0.62g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.09(1H,br),4.86(1H,br), 3.87(2H,s),3.43-3.37(2H,m),3.36-3.28(2H,m),1.45(9H,s)ppm.
【0146】
<工程2>化合物40の合成
市販のジクロフェナクナトリウム(化合物1、1.4g)、化合物39(0.62g)、N-メチルピロリドン(4.4mL)の混合物を50℃で1時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、酢酸エチル(40mL)とヘプタン(20mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物40(0.87g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.29(1H,dd,J=1,7Hz),7.15(1H,dt,J=1,8Hz),7.03-6.91(3H,m),6.69(1H,br),6.55(1H,d,J=8Hz),4.92-4.79(1H,m),4.63(2H,s),3.96(2H,s),3.36-3.27(2H,m),3.25-3.16(2H,m),1.44(9H,s)ppm.
【0147】
<工程3>化合物41の合成
化合物40(0.87g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(10mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応懸濁液をろ過し、ろ取した固体を酢酸エチル-ヘプタン(2:1)で洗い、化合物41(0.62g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.42(1H,t,J=5Hz),7.99(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.26-7.19(2H,m),7.09-7.02(2H,m),6.85(1H,dt,J=1,7Hz),6.23(1H,d,J=8Hz),4.56(2H,s),3.94(2H,s),3.39-3.30(5H,m),2.85(2H,t,J=6Hz)ppm.
【0148】
<工程4>ジクロフェナク-(N-(アミノエチル)-2-ヒドロキシアセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物42)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(37mg)、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.11mL)、化合物41(38mg)のエタノール(5mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。エタノール(20mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(87.1mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は12.3モル%であった。
【0149】
(実施例10)ジクロフェナク-(N-(アミノエチル)-2-ヒドロキシプロパンアミド)-アルギン酸誘導体の合成
スキーム10
【化44】
【0150】
<工程1>化合物45の合成
氷冷した市販のtert-ブチル(2-アミノエチル)カルバメート(化合物37、1.6g)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)、水(20mL)、1,2-ジメトキシエタン(30mL)の混合液に、市販の2-ブロモプロパノイルブロミド(化合物43、2.12mL)を滴下し、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)を加え、10分間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(80mL)で2回抽出し、合わせた抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をヘプタン-酢酸エチル(3:2、20mL)で洗浄し、化合物44の粗生成物(0.39g)を得た。
化合物44の粗生成物(0.39g)、市販のジクロフェナクナトリウム(化合物1、0.84g)、N-メチルピロリドン(2.6mL)の混合物を50℃で1時間と60℃で3時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、酢酸エチル(40mL)とヘプタン(20mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物45(0.34g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.36(2H,d,J=8Hz),7.31(1H,dd,J=1,7Hz),7.16(1H,dt,J=1,8Hz),7.04-6.97(2H,m),6.80(1H,br),6.68(1H,br),6.57(1H,d,J=8Hz),5.27(1H,q,J=7Hz),4.81(1H,br),4.02-3.88(2H,m),3.36-3.09(4H,m),1.50(3H,d,J=7Hz),1.44(9H,d,J=9Hz)ppm.
【0151】
<工程2>化合物46の合成
化合物45(0.34g)と4N塩酸-酢酸エチル溶液(4mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応懸濁液をろ過し、ろ取した固体を酢酸エチル-ヘプタン(2:1)とtert-ブチルメチルエーテルで洗い、化合物46(0.24g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.36(1H,t,J=5Hz),7.89(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.25-7.18(2H,m),7.06(1H,dt,J=1,8Hz),6.99(1H,s),6.84(1H,dt,J=1,7Hz),6.23(1H,d,J=8Hz),5.02(1H,q,J=7Hz),3.91(2H,s),3.40-3.22(2H,m),2.83(2H,t,J=6Hz),1.37(3H,d,J=7Hz)ppm.
【0152】
<工程3>ジクロフェナク-(N-(アミノエチル)-2-ヒドロキシプロパンアミド)-アルギン酸誘導体(化合物47)の合成
1%(w/w)アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製、A2)の水溶液(10g)に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(37mg)、1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.11mL)、化合物46(40mg)のエタノール(5mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌した。エタノール(20mL)を加えた後、0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(87.0mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は12.5モル%であった。
【0153】
(実施例11)実施例1から10で作製した化合物のリリース試験
実施例1から10で作製した各コンジュゲート1mgに、各コンジュゲートの濃度がそれぞれ0.1%w/w濃度となるように20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.3若しくは7.0)または1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、20℃の室内環境下(空調設定温度)で、マグネティックスターラー(ASONE REMIX RS-6A、750r.p.m.)を用いて、6時間撹拌した。ゲル状になっていないことを確認し、この溶液を分注した。溶解直後に初期状態(保存0日)として各溶液に存在した遊離ジクロフェナク量をLC-MS/MSにて測定した。また、それ以外の分注液は37℃で1,3,7日間インキュベートしたのちに遊離ジクロフェナク量を測定した。各時点において、1N水酸化ナトリウム水溶液中の強制分解による遊離ジクロフェナク量との比を用いて遊離率(%)を算出した。
【0154】
LC条件は以下の通り
温度:40℃
流速:0.7mL/min
カラム:ODS-4:3μm(2.1×30mm)
溶媒:(A)0.1% ギ酸水溶液、(B)100% アセトニトリル
グラジエント:
【0155】
MS条件は以下の通り
イオン化モード:ESI-negative
イオン源温度:300度
キャピラリー電圧:-4000 V
【0156】
pH7.0のリリース試験における遊離率
【表3】
【0157】
pH7.0のリリース試験における遊離率
【表4】
【0158】
pH7.0のリリース試験における遊離率
【表5】
【0159】
pH5.3のリリース試験における遊離率
【表6】
【0160】
pH5.3のリリース試験における遊離率
【表7】
【0161】
pH5.3のリリース試験における遊離率
【表8】
【0162】
(実施例12)ジクロフェナク-(2-アミノエトキシエタノール)-アルギン酸誘導体の合成
【化45】
【0163】
<工程1-1>ジクロフェナク-(2-アミノエトキシエタノール)-アルギン酸誘導体(化合物14a)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)1gを水(100mL)に溶解し、エタノール(30mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(456mg)を室温で加えた。30分間撹拌後、化合物13(346mg)のエタノール(10mL)-水(5mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.82mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(5mL)とエタノール(100mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(1.06g)を白色固体として得た。薬剤導入率は14.0モル%であった。
【0164】
<工程1-2>ジクロフェナク-(2-アミノエトキシエタノール)-アルギン酸誘導体(化合物14b)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-3)1gを用い、(実施例12)<工程1-1>と同様の操作を行い、標記化合物(1.11g)を白色固体として得た。薬剤導入率は16.4モル%であった。
【0165】
(実施例13)ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化46】
【0166】
<工程1>化合物50の合成
2-アミノエタノール(2.09g)と(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(5.0g)のエタノール(30mL)混合液に室温で4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(11.4g)を加え、5時間撹拌した。反応懸濁液をエタノールを用いてろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残留物に酢酸エチルを加え、懸濁液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0-20%メタノール/酢酸エチル)によって精製し、化合物50(7.3g)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 6.92(1H,br),5.50(1H,br),4.03(1H,s),3.80(2H,d,J=6Hz),3.73-3.68(2H,m),3.46-3.40(2H,m),1.45(9H,s)ppm.
【0167】
<工程2>化合物51の合成
市販のジクロフェナク(化合物10、2.0g)、化合物50(2.2g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.17g)、ジクロロメタン(7mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.39g)のジクロロメタン(7mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(60mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物51(2.7g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.35(2H,d,J=8Hz),7.23(1H,dd,J=7,1Hz),7.14(1H,td,J=8,1Hz),7.02-6.94(2H,m),6.83(1H,s),6.55(1H,d,J=8Hz),6.23(1H,br),4.96(1H,br),4.25(2H,t,J=5Hz),3.83(2H,s),3.69(2H,d,J=6Hz),3.59-3.53(2H,m),1.44(9H,s)ppm.
【0168】
<工程3>化合物52の合成
化合物51(2.7g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(27.2mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応懸濁液をろ過し、ろ取した固体をジメトキシエタン-エタノール(1:1)とジメトキシエタンで洗い、化合物52(1.73g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.66(1H,t,J=5Hz),8.11(3H,br),7.54(2H,d,J=8Hz),7.24-7.17(2H,m),7.09-7.03(2H,m),6.85(1H,td,J=7,1Hz),6.24(1H,d,J=8Hz),4.12(2H,t,J=6Hz),3.83(2H,s),3.52(2H,s),3.45-3.38(2H,m)ppm.
【0169】
<工程4-1>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物53a)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-1)2gを水(200mL)に溶解し、エタノール(60mL)を加えた溶液に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(1.3g)を室温で加えた。30分間撹拌後、化合物52(0.85g)のエタノール(20mL)-水(10mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(1.97mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(10mL)とエタノール(200mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(1.80g)を白色固体として得た。薬剤導入率は19.7モル%であった。
【0170】
<工程4-2>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物53b)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)2gを水(200mL)に溶解し、エタノール(60mL)を加えた溶液に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(611mg)を室温で加えた。30分間撹拌後、化合物52(396mg)のエタノール(20mL)-水(10mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.92mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(10mL)とエタノール(200mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(2.04g)を白色固体として得た。薬剤導入率は14.6モル%であった。
【0171】
<工程4-3>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物53c)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-3)2gを用い、(実施例13)<工程4-2>と同様の操作を行い、標記化合物(1.99g)を白色固体として得た。薬剤導入率は17.0モル%であった。

<工程4-4>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物53d)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、B-2)100mgを水(10mL)に溶解し、エタノール(3mL)を加えた溶液に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(46mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物52(40mg)のエタノール(2mL)-水(1mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.09mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)とエタノール(20mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(108mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は23.1モル%であった。
【0172】
(実施例14)ジクロフェナク-(2-アミノ-1-(4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン)-アルギン酸誘導体の合成
【化47】
【0173】
<工程1>化合物55の合成
4-ピペリジンメタノール(0.79g)と(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(1g)のエタノール(10mL)混合液に室温で4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(1.9g)を加え、4時間撹拌した。反応懸濁液に酢酸エチルを加え、懸濁液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0-20%メタノール/酢酸エチル)によって精製し、化合物55(1.2g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 5.57(1H,br),4.64-4.56(1H,m),4.02-3.89(2H,m),3.77-3.68(1H,m),3.56-3.46(2H,m),3.01(1H,td,J=13,3Hz),2.63(1H,td,J=13,3Hz),1.89-1.67(3H,m),1.46(9H,s),1.24-1.09(2H,m)ppm.
【0174】
<工程2>化合物56の合成
市販のジクロフェナク(化合物10、0.87g)、化合物55(1.2g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.07g)、ジクロロメタン(5mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.61g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-50%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物56(1.4g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.22(1H,dd,J=7,2Hz),7.12(1H,td,J=8,2Hz),7.01-6.93(2H,m),6.86(1H,s),6.55(1H,d,J=8Hz),5.53(1H,br),4.61-4.54(1H,m),4.06-3.96(2H,m),3.95-3.91(2H,m),3.81(2H,s),3.71-3.63(1H,m),3.02-2.90(1H,m),2.64-2.53(1H,d,J=2.7Hz),2.00-1.86(1H,m),1.80-1.67(2H,m),1.45(9H,m),1.30-1.04(2H,m)ppm.
【0175】
<工程3>化合物57の合成
化合物56(1.4g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(12.7mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下ろ過し、化合物57(1.3g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.09(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.23-7.17(2H,m),7.08-7.03(2H,m),6.85(1H,td,J=7,1Hz),6.26(1H,d,J=8Hz),4.36-4.28(1H,m),4.01-3.92(2H,m),3.89-3.76(2H,m),3.70-3.61(1H,m),3.48-3.40(1H,m),3.03-2.92(1H,m),2.67-2.57(1H,m),1.98-1.85(1H,m),1.73-1.63(2H,m),1.27-0.95(3H,m)ppm.
【0176】
<工程4>ジクロフェナク-(2-アミノ-1-(4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン)-アルギン酸誘導体(化合物58)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、B-2)100mgを水(20mL)に溶解し、エタノール(5mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(39mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物57(45mg)のエタノール(3mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.09mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)とエタノール(20mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(108mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は18.4モル%であった。
【0177】
(実施例15)ジクロフェナク-(2-アミノ-1-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)エタン-1-オン)-アルギン酸誘導体の合成
【化48】
【0178】
<工程1>化合物60の合成
4-ヒドロキシピペリジン(0.69g)と(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(1.0g)のエタノール(10mL)混合液に室温で4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(1.9g)を加え、4時間撹拌した。反応懸濁液に酢酸エチルを加え、懸濁液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0-20%メタノール/酢酸エチル)によって精製し、化合物60(1.0g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 5.56(1H,br),4.06-3.92(5H,m),3.67-3.57(1H,m),3.34-3.25(1H,m),3.22-3.13(1H,m),1.99-1.84(2H,m),1.62-1.47(2H,m),1.45(9H,s)ppm.
【0179】
<工程2>化合物61の合成
市販のジクロフェナク(化合物10、0.76g)、化合物60(0.99g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.06g)、ジクロロメタン(5mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.53g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-50%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物61(1.0g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz), 7.21(1H,dd,J=8,2Hz),7.13(1H,td,J=8,2Hz),7.01-6.92(2H,m),6.81(1H,s),6.55(1H,d,J=8Hz),5.50(1H,br),5.08-5.01(1H,m),3.95(2H,d,J=4Hz),3.88-3.79(3H,m),3.56-3.42(2H,m),3.31-3.21(1H,m),1.97-1.84(2H,m),1.75-1.64(2H,m),1.45(9H,s)ppm.
【0180】
<工程3>化合物62の合成
化合物61(1.0g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(9.3mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下ろ過し、化合物62(0.91g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.14(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.24-7.17(2H,m),7.08-7.02(2H,m),6.84(1H,td,J=7,1Hz),6.24(1H,d,J=8Hz),5.03-4.94(1H,m),3.93-3.79(4H,m),3.77-3.63(1H,m),3.54-3.24(3H,m),1.94-1.45(4H,m)ppm.
【0181】
<工程4-1>ジクロフェナク-(2-アミノ-1-(4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン)-アルギン酸誘導体(化合物63a)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)1gを水(100mL)に溶解し、エタノール(30mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(370mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物62(350mg)のエタノール(10mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.74mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(10mL)とエタノール(100mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(1.07g)を白色固体として得た。薬剤導入率は11.5モル%であった。
【0182】
<工程4-2>ジクロフェナク-(2-アミノ-1-(4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-オン)-アルギン酸誘導体(化合物63b)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-3)1gを用い、(実施例15)<工程4-1>と同様の操作を行い、標記化合物(1.09g)を白色固体として得た。薬剤導入率は12.6モル%であった。
【0183】
(実施例16)ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(6-ヒドロキシヘキシル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化49】
【0184】
<工程1>化合物65の合成
6-アミノ-1-ヘキサノール(0.8g)と(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(1g)のエタノール(10mL)混合液に室温で4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(1.9g)を加え、4時間撹拌した。反応懸濁液に酢酸エチルを加え、懸濁液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0-20%メタノール/酢酸エチル)によって精製し、化合物65(1.6g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 6.42(1H,br),5.38(1H,br),3.77(2H,d,J=6Hz),3.63(2H,t,J=6Hz),3.31-3.22(2H,m),1.62-1.47(4H,m),1.45(9H,s),1.43-1.28(4H,m)ppm.
【0185】
<工程2>化合物66の合成
市販のジクロフェナク(化合物10、1.0g)、化合物65(1.39g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.08g)、ジクロロメタン(5mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.7g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物66(1.5g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.22(1H,dd,J=8,2Hz),7.12(1H,td,J=8,2Hz),7.00-6.90(3H,m),6.54(1H,d,J=8Hz),6.12(1H,br),5.16(1H,br),4.13(2H,t,J=7Hz),3.80(2H,s),3.76(2H,d,J=6Hz),3.27-3.19(2H,m),1.69-1.59(2H,m),1.52-1.40(11H,m),1.38-1.25(4H,m)ppm.
【0186】
<工程3>化合物67の合成
化合物66(1.5g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(13.6mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下ろ過し、化合物67(1.3g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.34(1H,br),8.03(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.23-7.16(2H,m),7.08-7.03(2H,m),6.85(1H,td,J=8,1Hz),6.26(1H,d,J=8Hz),4.07(2H,t,J=7Hz),3.79(2H,s),3.49(2H,s),3.12-3.04(2H,m),1.63-1.51(2H,m),1.41-1.33(2H,m),1.32-1.21(4H,m)ppm.
【0187】
<工程4>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(6-ヒドロキシヘキシル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物68)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、B-2)100mgを水(20mL)に溶解し、エタノール(5mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(39mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物67(45mg)のエタノール(3mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.09mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)とエタノール(20mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(106mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は18.0モル%であった。
【0188】
(実施例17)ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシプロピル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化50】
【0189】
<工程1>化合物70の合成
1-アミノ-2-プロパノール(0.38g)、(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(0.88g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.12g)、ジクロロメタン(20mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.03g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で終夜撹拌した。その反応液に市販のジクロフェナク(化合物10、1.48g)とN,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.03g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で終夜撹拌した。反応液をろ過した後、ろ液を減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物70(0.74g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.24(1H,dd,J=8,1Hz),7.14(1H,td,J=8,1Hz),7.02-6.95(2H,m),6.87(1H,s),6.56(1H,d,J=8Hz),6.08(1H,br),5.12-5.02(1H,m),4.84(1H,br),3.84-3.76(2H,m),3.67-3.34(4H,m),1.43 (9H,s),1.27(3H,d,J=6Hz)ppm.
【0190】
<工程2>化合物71の合成
化合物70(0.74g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(8mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下ろ過し、化合物71(0.7g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.62(1H,t,J=6Hz),8.12(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.24-7.17(2H,m),7.09-7.02(2H,m),6.85(1H,td,J=7,1Hz),6.25(1H,d,J=8Hz),4.95-4.84(1H,m),3.80(2H,s),3.59-3.21(4H,m),1.18(3H,d,J=6Hz)ppm.
【0191】
<工程3-1>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシプロピル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物72a)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)1gを水(100mL)に溶解し、エタノール(30mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(305mg)を室温で加えた。30分間撹拌後、化合物71(205mg)のエタノール(10mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.46mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(5mL)とエタノール(100mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(1.04g)を白色固体として得た。薬剤導入率は13.1モル%であった。
【0192】
<工程3-2>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシプロピル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物72b)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-3)200mgを水(20mL)に溶解し、エタノール(6mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(62mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物71(41mg)のエタノール(2mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.09mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(1mL)とエタノール(40mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(199mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は14.5モル%であった。
【0193】
(実施例18)ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(3-ヒドロキシプロピル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化51】
【0194】
<工程1>化合物74の合成
3-アミノ-1-プロパノール(0.38g)、(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(0.88g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.12g)、ジクロロメタン(20mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.03g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で終夜撹拌した。その反応液に市販のジクロフェナク(化合物10、1.48g)とN,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.03g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で終夜撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物74(1.4g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.22(1H,dd,J=8,1Hz),7.12(1H,td,J=8,1Hz),7.02-6.92(2H,m),6.86(1H,s),6.54(1H,d,J=8Hz),6.40(1H,br),5.14(1H,br),4.21(2H,t,J=6Hz),3.82(2H,s),3.74(2H,d,J=6Hz),3.30(2H,q,J=6Hz),1.91-1.82(2H,m),1.44(9H,s)ppm.
【0195】
<工程2>化合物75の合成
化合物74(1.4g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(14mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下ろ過し、化合物75(1.3g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.46(1H,t,J=5Hz),8.07(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.23-7.17(2H,m),7.10-7.03(2H,m),6.85(1H,td,J=7,1Hz),6.25(1H,d,J=8Hz),4.10(2H,t,J=6Hz),3.81(2H,s),3.51(2H,s),3.22-3.15(2H,m),1.82-1.72(2H,m)ppm.
【0196】
<工程3-1>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(3-ヒドロキシプロピル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物76a)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)1gを水(100mL)に溶解し、エタノール(30mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(305mg)を室温で加えた。30分間撹拌後、化合物75(205mg)のエタノール(10mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.46mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(5mL)とエタノール(100mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(1.03g)を白色固体として得た。薬剤導入率は13.7モル%であった。
【0197】
<工程3-2>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(3-ヒドロキシプロピル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物76b)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-3)1gを用い、(実施例18)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物(0.99g)を白色固体として得た。薬剤導入率は14.4モル%であった。
【0198】
(実施例19)ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化52】
【0199】
<工程1>化合物78の合成
3-アミノ-1-プロパノール(0.38g)、(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(0.88g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.12g)、ジクロロメタン(20mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.03g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で終夜撹拌した。その反応液に市販のジクロフェナク(化合物10、1.48g)とN,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.03g)のジクロロメタン(5mL)溶液を滴下した。反応液を室温で終夜撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物78(1.4g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.34(2H,d,J=8Hz),7.23(1H,dd,J=8,1Hz),7.13(1H,td,J=8,1Hz),7.02-6.93(2H,m),6.86(1H,s),6.55(1H,d,J=8Hz),6.03(1H,d,J=8Hz),4.94(1H,br),4.37-4.25(1H,m),4.22-4.07(2H,m),3.89-3.77(2H,m),3.72-3.52(2H,m),1.44(9H,s),1.16(3H,d,J=7Hz)ppm.
【0200】
<工程2>化合物79の合成
化合物78(1.4g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(14mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下ろ過し、化合物79(1.3g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.53(1H,d,J=8Hz),8.13(3H,br),7.53(2H,d,J=8Hz),7.21(2H,t,J=8Hz),7.09-7.03(2H,m),6.85(1H,td,J=7,1Hz),6.25(1H,d,J=8Hz),4.14-3.99(3H,m),3.83(2H,s),3.56-3.44(2H,m),1.09(3H,d,J=7Hz)ppm.
【0201】
<工程3-1>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物80a)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)1gを水(100mL)に溶解し、エタノール(30mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(305mg)を室温で加えた。30分間撹拌後、化合物79(205mg)のエタノール(10mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.46mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(5mL)とエタノール(100mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(0.97g)を白色固体として得た。薬剤導入率は12.2モル%であった。
【0202】
<工程3-2>ジクロフェナク-(2-アミノ-N-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物80b)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-3)1gを用い、(実施例19)<工程3-1>と同様の操作を行い、標記化合物(0.99g)を白色固体として得た。薬剤導入率は14.4モル%であった。
【0203】
(実施例20)フェルビナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化53】
【0204】
<工程1>化合物82の合成
市販のフェルビナク(化合物81、1.0g)、化合物50(1.13g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.12g)、ジクロロメタン(6mL)の混合物に氷冷下、N,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.07g)のジクロロメタン(4mL)溶液を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)を用いてろ過した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をエタノールでトリチュレートし、化合物82(0.80g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.60-7.54(4H,m),7.46-7.40(2H,m),7.38-7.31(3H,m),6.27(1H,br),4.97(1H,br),4.21(2H,t,J=5Hz),3.72(2H, d,J=6Hz),3.68(2H,s),3.58-3.52(2H,m),1.45(9H,s)ppm.
【0205】
<工程2>化合物83の合成
化合物82(0.80g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(10mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応懸濁液をろ過し、ろ取した固体をジメトキシエタンでトリチュレートし、化合物83(0.56g)を白色固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.68(1H,br),8.14(3H,br),7.67-7.60(4H,m),7.49-7.43(2H,m),7.39-7.33(3H,m),4.10(2H,t,J=6Hz),3.74(2H,s),3.55(2H,s),3.46-3.37(2H,m)ppm.
【0206】
<工程3>フェルビナク-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物84)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)200mgを水(20mL)に溶解し、エタノール(8mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(46mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物83(32mg)のエタノール(2mL)-水(1mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.09mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(2mL)とエタノール(40mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(193mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は10.8モル%であった。
【0207】
(実施例21)ケトプロフェン-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化54】
【0208】
<工程1>化合物86の合成
市販のケトプロフェン(化合物85、1.0g)、化合物50(0.94g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.1g)、ジクロロメタン(10mL)の混合物に、室温で1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.83g)を加えた。反応液を室温で3時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物86(1.38g)を無色ガム状物質として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.84-7.77(3H,m),7.65-7.58(2H,m),7.55-7.42(4H,m),6.50(1H,br),5.28(1H,br),4.27-4.13(2H,m),3.74(2H,d,J=6Hz),3.58-3.41(3H,m),1.56(3H,d,J=7Hz),1.43(9H,s)ppm.
【0209】
<工程2>化合物87の合成
化合物86(1.38g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(15mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、化合物87(1.27g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.67(1H,t,J=6Hz),8.19(3H,br),7.76-7.51(9H,m),4.17-4.10(1H,m),4.04-3.92(2H,m),3.51(2H,s),3.44-3.27(2H,m),1.45(3H,d,J=7Hz)ppm.
【0210】
<工程3>ケトプロフェン-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物88)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)200mgを水(20mL)に溶解し、エタノール(6mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(46mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物87(36mg)のエタノール(2mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.09mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(2mL)とエタノール(40mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(201mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は11.9モル%であった。
【0211】
(実施例22)ナプロキセン-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体の合成
【化55】
【0212】
<工程1>化合物90の合成
市販のナプロキセン(化合物89、1.0g)、化合物50(1.04g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.11g)、ジクロロメタン(10mL)の混合物に、室温で1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.92g)を加えた。反応液を室温で3時間撹拌した。反応液を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)と水(20mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-100%酢酸エチル/ヘプタン)によって精製し、化合物90(1.39g)を無色ガム状物質として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ 7.72(2H,dd,J=8,4Hz),7.66(1H,d,J=1Hz),7.39(1H,dd,J=8,2Hz),7.17-7.10(2H,m),5.97(1H,br),4.79(1H,br),4.23-4.08(2H,m),3.92(3H,s),3.86(1H,q,J=7Hz),3.56-3.37(4H,m),1.58(3H,d,J=7Hz),1.45(9H,s)ppm.
【0213】
<工程2>化合物91の合成
化合物90(1.39g)と4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(15mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下溶媒を留去し、化合物91(1.28g)を白色アモルファスとして得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.61(1H,t,J=5Hz),8.13(3H,br),7.79(2H,t,J=9Hz),7.72(1H,d,J=2Hz),7.40(1H,dd,J=9,2Hz),7.29(1H,d,J=2Hz),7.15(1H,dd,J=8,2Hz),4.17-4.09(1H,m),4.02-3.88(2H,m),3.86(3H,s),3.50(2H,s),3.43-3.26(2H,m),1.49(3H,d,J=7Hz)ppm.
【0214】
<工程3>ケトプロフェン-(2-アミノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド)-アルギン酸誘導体(化合物92)の合成
アルギン酸ナトリウム(持田製薬株式会社、A-2)200mgを水(20mL)に溶解し、エタノール(6mL)を加えた溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(46mg)を室温で加えた。10分間撹拌後、化合物91(34mg)のエタノール(2mL)溶液と1M炭酸水素ナトリウム水溶液(0.09mL)を滴下し、室温で4時間攪拌した。反応液に0.1g/mLの塩化ナトリウム水溶液(2mL)とエタノール(40mL)を加えた後、10分間攪拌した。得られた沈殿をろ取し、エタノールで洗浄後、減圧乾燥して、標記化合物(196mg)を白色固体として得た。薬剤導入率は12.9モル%であった。
【0215】
(実施例23)実施例12から実施例19で作製した化合物を用いたジクロフェナクのリリース試験、実施例20で作製した化合物を用いたフェルビナクのリリース試験、実施例21で作製した化合物を用いたケトプロフェンのリリース試験、実施例22で作製した化合物を用いたナプロキセンのリリース試験
(実施例10)の方法と同様にして、pH=5.3又はpH=7.0のリン酸ナトリウム緩衝液中におけるジクロフェナクフェルビナク、ケトプロフェン、及びナプロキセンの遊離薬物量を測定し、リリース率を算出した。
【0216】
LC条件は以下の通り
温度:40℃
流速:0.7mL/min
カラム:ODS-4:3μm(2.1×30mm)
溶媒:(A)0.1% ギ酸水溶液、(B)100% アセトニトリル
グラジエント:
【表9】

【0217】
MS条件は以下の通り
イオン化モード:ESI-negative
イオン源温度:300度
キャピラリー電圧:-4000 V
【0218】
pH7.0のリリース試験における遊離率
【表10】
【0219】
pH7.0のリリース試験における遊離率
【表11】
【0220】
pH7.0のリリース試験における遊離率
【表12】

【0221】
pH5.3のリリース試験における遊離率
【表13】

【0222】
pH5.3のリリース試験における遊離率
【表14】

【0223】
pH5.3のリリース試験における遊離率
【表15】

【0224】
(実施例24)
ラット1% 硝酸銀惹起疼痛モデルに対する(実施例13)で得られた化合物53bの関節腔内投与による効果
【0225】
(1)疼痛惹起物質の投与
全身麻酔剤としてイソフルランの吸入麻酔を用いた。
ラット(Crj:SD系(SPF)、雄性、6週齢)に麻酔下、1%硝酸銀溶液を50μL/jointの用量で左後肢膝関節腔内に投与した。
【0226】
(2)被験物質の投与
下記の被験物質を準備した。
・Vehicle(VH):10mMリン酸緩衝液(PB)を溶媒とする5%グルコース溶液
・0.9mg/mL ジクロフェナクNa in Vehicle(DF)
・0.9%アルギン酸Na(持田製薬株式会社、A-2)in Vehicle(ALG)
・0.9mg/mL ジクロフェナクNa+0.9%アルギン酸Na(持田製薬株式会社、A-2)in Vehicle(DF&ALG)
・実施例13で得た化合物53bの0.9%溶液(DF-ALG)(結合体)
【0227】
モデル作製翌日の歩行状態について、スコア評価する。得られたスコアを指標に基づき群分けを行い、イソフルランによる吸入麻酔下、各被験物質をラット左後肢膝関節内に0.1mL/kgで投与した(n=8)。
【0228】
(3)評価方法
歩行スコアを被験物質投与日より1日1回5日間スコアを付ける。ただし、1日目のスコアについては、投与前(群分け)のスコアを用いる。歩行状態をブラインド下でスコア化した下記疼痛スコア表を用いて、各群の歩行状態を肉眼観察した。結果は表16に示す。
【0229】
表16において、結果は、平均疼痛スコアによって示される。
0:ノーマル
1:足を持ち上げて軽度の跛行
2:つま先を完全に閉塞した重度の跛行
3:3足歩行
【0230】
表16よりジクロフェナク投与群、アルギン酸投与群及びジクロフェナク+アルギン酸投与群などと比較して、DF-ALG(化合物53b)投与群は疼痛軽減の度合い(疼痛よりの回復度)が速かった。
【表16】

【0231】
(実施例25)ウサギ膝関節におけるジクロフェナク導入アルギン酸の徐放性の検討
【0232】
(1)被験物質の投与方法
下記の被験物質を準備した。
・実施例13で得た化合物53bの0.9%溶液(溶媒:5%グルコース含有10mMリン酸緩衝液)(DF-ALG-53b)
・実施例15で得た化合物63aの0.9%溶液(溶媒:5%グルコース、3%HP-β-CD含有10mMリン酸緩衝液)(DF-ALG-63a)
【0233】
前記各被験物質についてウサギを4匹ずつ用い、無麻酔下でタオルを用いて全身を固定し、左膝関節周辺をアルコールで清拭後、26Gの注射針(テルモ製)を装着したテルモ1mLシリンジにてウサギ膝外側から関節腔内に上記被験物質を各々0.1mL/kg投与した。被験物質投与から3日、7日、14日、28日、56日、及び84日後に剖検を実施した。
【0234】
(2)関節液中の遊離型ジクロフェナク(DF)量の測定方法
ウサギを塩酸ケタミン及びキシラジンの筋肉内投与による併用麻酔下で放血屠殺した。関節包を膝蓋骨直下で切開して膝関節腔を露呈し、サーフロー留置針20Gのカテーテルを用いて2mLの生理的食塩液で関節腔内を洗浄し、生理食塩液に混じた関節液を採取した。回収した関節液中のDF量を下記手順にて測定する。
【0235】
関節液(0.05mL)に1NHCl(0.02mL)を加え十分に撹拌した後に室温で30分間以上インキュベートした。さらに、0.1%ギ酸水溶液0.12mL及び内部標準溶液(Celecoxib濃度0.1μg/mLのメタノール溶液)0.01mLを添加して十分に撹拌した後、450Gで5分間遠心をした。この上清全量をメタノール0.2mL及び精製水0.2mLで平衡化したOasis(登録商標)PRiME HLB μ-Elution Plate(抽出カラム)に添加し、エアーポンプで添加サンプルを吸引した。0.02mLの5%メタノール水溶液で抽出カラムを洗浄し、アセトニトリル0.025mLで抽出カラムから薬物を溶出した(この溶出操作を2回繰り返した)。回収した溶出液に0.1%ギ酸水溶液0.05μLを加え、LC-MS/MSを用いて、遊離ジクロフェナク量を測定する。(関節液中の遊離型ジクロフェナク量)
【0236】
(3)滑膜中ジクロフェナク(DF)濃度の測定方法
上記(2)の関節液を回収した後の膝関節から滑膜組織を分離、採取した。採取した滑膜組織は生理的食塩液で洗浄し、付着する関節液を除去した。滑膜組織は膝蓋骨を取り除いた後、チューブに入れ、鋏で組織を細切れにした。ステンレスビーズ入りチューブに滑膜組織50mg程度を取り、19倍の精製水を添加し、ビーズ式ホモジナイザーを用いてホモジネートした。ホモジネート(0.1mL)に1NHCl(0.02mL)を加え十分に撹拌した後に室温で30分間以上インキュベートした。さらに、0.1%ギ酸水溶液0.07mL及び内部標準溶液(Celecoxib濃度0.1μg/mLのメタノール溶液)0.01mLを添加して十分に撹拌した後、450Gで5分間遠心をした。この上清全量をメタノール0.2mL及び精製水0.2mLで平衡化したOasis(登録商標)PRiME HLB μ-Elution Plate(抽出カラム)に添加し、エアーポンプで添加サンプルを吸引した。上記(2)と同様の抽出操作を行い、LC-MS/MSを用いて、遊離ジクロフェナク量を測定した。結果は表17に示す。
【0237】
本発明物質である、(DF-ALG-53b)及び(DF-ALG-63a)(結合体)を被験物質として投与した場合、投与後56~84日にも滑膜組織に遊離ジクロフェナクの存在が認められており、投与部位においてジクロフェナクが持続的に存在し、持続的効果を示すと推測された(表17:滑膜組織でのDF濃度(ng/g))。
【0238】
関節で起こる疼痛は滑膜炎に起因すると推測されており、また、NSAIDsを関節腔内に投与すると、NSAIDsは滑膜へ速やかに移行し、鎮痛・抗炎症作用を示すと考えられている。その為、徐放的効果による滑膜中のNSAIDs濃度の維持は疼痛抑制の持続的効果に大きく関与すると考られる。
【表17】
【0239】
上記表17より、DF-ALG(結合体)である(DF-ALG-53b)及び(DF-ALG-63a)を投与した場合、滑膜組織に持続的に投与後84日までDFが保持されており、DFの徐放性製剤として有効であることが示唆される。
特に、先行技術(BMC Musculoskeletal Disorders (2018) 19:P157~)に記載のDF-HA(結合体)投与時の滑膜中DF濃度(約10ng/g(day28)、<5ng/g(day35))(文献中Fig.7aを参照)に比べて、DF-ALG(結合体)投与時の滑膜中ジクロフェナク濃度は投与後84日においても高く、長期間(例えば、2~3カ月間)の疼痛抑制効果が持続すると期待される。
【0240】
《分子量測定結果》
アルギン酸誘導体の分子量測定結果
【表18】

【0241】
原料アルギン酸の分子量測定結果
【表19】
【0242】
上記リリース試験(in vitro試験)及び動物実験(in vivo試験)の結果から、リンカーの構造によって徐放速度を調整でき、かつ、リンカーの種類及び薬剤導入率を調整することで、本発明の誘導体には、長期持続可能な鎮痛作用や抗炎症作用を期待できることが分かった。
【0243】
具体的には、実施例1で得られた化合物5aはpH7.0のリリース試験において、3日目に2.3%、そして7日目に4.1%の遊離率を確認できた。同様に、化合物5b、化合物5c、化合物5d、化合物42及び化合物47も安定的に放出された。更に、実施例13で得られた化合物53bは、pH7.0のリリース試験において、3日目に3.7%、そして7日目に10.0%の遊離率を確認できた。又、実施例15で得られた化合物63aは、pH7.0のリリース試験において、3日目に0.8%、そして7日目に2.2%の遊離率を確認できた。いずれの化合物においても、日数と遊離率がほぼ比例しており、このことから安定的に徐放されることが期待できる。
【0244】
また、炎症部位では一般的に酸性になりpHが中性から弱酸性の間で変動する可能性があり、それに応じて徐放速度が変動する可能性があるが、リンカーの構造を調整することでpHが変動しても安定的な徐放作用を持つ鎮痛・抗炎症剤を構成することができる。
【0245】
更に、前記化合物53b及び63aのウサギ膝関節滑膜中におけるジクロフェナク量の測定を行ったところ、28日目、56日目、84日目における滑膜中のジクロフェナクの遊離体は、前記表17の様に観測された。
疼痛抑制効果は、滑膜中でのジクロフェナク量に依存することが知られており、28日目、56日目、84日目において、化合物53b及び63aの両化合物とも疼痛抑制効果が発現する最低量(5ng/g)を上回って維持できる結果が得られたことから、本発明の非ステロイド性抗炎症性化合物結合アルギン酸誘導体、とりわけジクロフェナク結合アルギン酸誘導体には、長期間(例えば、2~3カ月間)の疼痛抑制が持続的することが期待できる。
【0246】
尚、リリース試験(in vitro試験)及び動物実験(in vivo試験)の両結果より、リリース試験における7日目の遊離率が、好ましくは、2%程度であれば、非ステロイド性抗炎症性化合物結合アルギン酸誘導体が、2~3カ月間持続的に疼痛抑制することが期待できる。