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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】金属空気電池、及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/06 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
H01M12/06 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020538471
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2019032924
(87)【国際公開番号】W WO2020040269
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2018157020
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-130406(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101814643(CN,A)
【文献】国際公開第2017/149797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属極と、
前記金属極に対向して配置される空気極と、
前記金属極及び前記空気極を支持する筐体と、を有して構成される金属空気電池セルが複数個、並設されたセルユニットと、電解液を収容可能な発電槽と、を有し、
前記セルユニットごとの交換を可能とする第1の交換手段を備え、
前記第1の交換手段は、前記セルユニットの側面から突出する把持部を備えて構成されており、
複数の前記金属極は、前記筐体に対し交換可能に支持されており、
複数の前記金属極を同時に交換可能とする第2の交換手段を備え、
前記第2の交換手段は、複数の金属極を、前記筐体の上面側で連結し、前記筐体よりも上方に突出して把持可能な連結部を備えて構成されており、
前記筐体には、前記電解液を、前記空気極と前記金属極との間に設けられた液室まで供給するとともに、前記金属極と前記空気極との反応により生じた生成物を、前記セルユニットから前記発電槽へ排出する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔が、前記筐体の下部に設けられており、前記金属極の下端は、前記貫通孔の上端以上の位置に配置されており、
前記生成物の前記セルユニットからの排出とともに、前記金属極の交換を可能とする、
ことを特徴とする金属空気電池。
【請求項2】
前記第1の交換手段及び前記第2の交換手段は、前記セルユニットに対する電解液の液面高さよりも高い位置に設けられることを特徴とする請求項に記載の金属空気電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の金属空気電池の使用方法であって、
前記セルユニットごと、或いは、複数の前記金属極を同時に、交換しながら、発電を継続することを特徴とする金属空気電池の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属空気電池セルを備えたセルユニットを有する金属空気電池、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属空気電池では、正極である空気極において、大気中の酸素を正極活物質として利用し、当該酸素の酸化還元反応が行われる。一方、負極である金属極において、金属の酸化還元反応が行われる。金属空気電池のエネルギー密度は高く、災害時等における非常用電源等の役割として期待されている。電解液を金属空気電池に給水する事で発電が開始される。
【0003】
従来、このような金属空気電池にあっては、使い切りの一次電池であったが、特許文献1では、金属極を取り出して交換できる金属空気電池の構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-362869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の金属空気電池セルを並設したセルユニットを構成すると高出力を得ることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1には、高出力を維持するためのセルユニットに関する交換作業については記載されていない。
【0007】
そこで、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、交換作業を容易化できると共に、高出力を効果的に維持することができる金属空気電池、及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属空気電池は、金属極と、前記金属極に対向して配置される空気極と、前記金属極及び前記空気極を支持する筐体と、を有して構成される金属空気電池セルが複数個、並設されたセルユニットと、電解液を収容可能な発電槽と、を有し、前記セルユニットごとの交換を可能とする第1の交換手段を備え、前記第1の交換手段は、前記セルユニットの側面から突出する把持部を備えて構成されており、複数の前記金属極は、前記筐体に対し交換可能に支持されており、複数の前記金属極を同時に交換可能とする第2の交換手段を備え、前記第2の交換手段は、複数の金属極を、前記筐体の上面側で連結し、前記筐体よりも上方に突出して把持可能な連結部を備えて構成されており、前記筐体には、前記電解液を、前記空気極と前記金属極との間に設けられた液室まで供給するとともに、前記金属極と前記空気極との反応により生じた生成物を、前記セルユニットから前記発電槽へ排出する貫通孔が形成されており、前記貫通孔が、前記筐体の下部に設けられており、前記金属極の下端は、前記貫通孔の上端以上の位置に配置されており、前記生成物の前記セルユニットからの排出とともに、前記金属極の交換を可能とする、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記交換手段は、前記セルユニットに対する電解液の液面高さよりも高い位置に設けられることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記に記載の金属空気電池の使用方法であって、前記セルユニットごと、或いは、複数の前記金属極を同時に、交換しながら、発電を継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属空気電池によれば、交換作業を容易化できると共に、高出力を効果的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態における、金属空気電池を構成するセルユニットの斜視図である。
図2図2Aは、本実施の形態におけるセルユニットを電解液に浸漬させた状態を示す金属空気電池の斜視図であり、図2Bは、セルユニットの交換作業を説明するための斜視図である。
図3図3A及び図3Bは、図1と一部異なるセルユニットの斜視図である。
図4】本実施の形態における、金属空気電池セルの斜視図である。
図5図5Aは、図4に示す金属空気電池セルの正面図であり、図5Bは、図5Aに示す金属空気電池セルをA―A線に沿って切断し矢印方向から見た断面図であり、図5Cは、金属空気電池セルの平面図であり、図5Dは、金属空気電池セルの裏面図である。
図6】本実施の形態のセルユニットを電解液に浸漬させた状態を示す金属空気電池の断面図である。
図7図7Aは、本実施の形態におけるセルユニットを電解液に浸漬させた状態を示す金属空気電池の斜視図であり、図7Bは、金属板の交換作業を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
本発明者は、金属空気電池セルを複数並設したセルユニット(金属空気電池ユニット)を有する金属空気電池において、一次電池でありながら、連続的な発電を可能とすべく、セルユニットごと、あるいは、複数の金属極を同時に交換でき、交換の作業効率を向上させた構成を開発するに至った。
【0018】
以下、図面を用いながら本実施の形態の金属空気電池を詳細に説明するが、「金属空気電池」とは、複数の金属空気電池セルを並設したセルユニット自体を指すこともあるし、セルユニットと、電解液を収容した発電槽との組み合わせを指すこともある。
【0019】
図1は、本実施の形態における、金属空気電池を構成するセルユニットの斜視図である。図1に示すように、セルユニット1は、例えば、5つの金属空気電池セル2を並設して構成される。ただし、金属空気電池セル2の数を限定するものでない。
【0020】
本実施の形態におけるセルユニット1は、同じ構造の金属空気電池セル2を複数組み合わせたものである。本実施の形態では、複数の金属空気電池セル2が、一体的に組み合わされている。一体的な組み合わせ方としては、各金属空気電池セル2同士を接着等で接合したり、或いは、凹凸嵌合等で一体化してもよい。
【0021】
図1に示すように、セルユニット1の両側面1b、1cには、「第1の交換手段」としての例えば、取っ手20が設けられている。取っ手20は、手指で把持できる把持部(指掛け部)20aと、把持部20aとセルユニット1の両側面1b、1cとの間を繋ぐ腕部20bと、を有して構成される。
【0022】
図2Aに示すように、図1に示すセルユニット1を、電解液10を収容した発電槽11内に浸す。このとき、電解液10は、各金属空気電池セル2に設けられた空気極と金属極との間に設けられた液室(後述)内に注入される。
【0023】
例えば、金属極が、マグネシウムであるとき、金属極の近傍においては、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、空気極においては、下記(2)で示す還元反応が生じる。マグネシウム空気電池全体としては、下記(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
(1)2Mg →2Mg2++4e
(2)O+2HO+4e →4OH
(3)2Mg+O+2HO →2Mg(OH)
【0024】
なお、金属極と空気極の酸化還元反応の際に、生成物(Mg(OH))が生じる。放電により、マグネシウムが徐々に減少し、出力が低下する。そこで、本実施の形態では、一次電池でありながら、連続的な発電を可能とするために、図2Bに示すように、取っ手20を利用して、マグネシウムが減少した古いセルユニット1を、電解液10中から上方に引き上げる。そして、代わりに、新しいセルユニット1を、電解液10中に浸漬させる。これにより、連続的な発電が可能となる。セルユニット1の交換後も、発電槽11内の電解液10をそのまま使用することができる。なお、後述する金属空気電池セル2の構成では、金属極と空気極の酸化還元反応の際に生じる生成物が、発電槽11内の電解液10中に排出されるため、発電槽11には、例えば、電解液10を還流させる機構を設ける等して、電解液10の還流を促進させてもよい。
【0025】
このように、図1に示す構成のセルユニット1を用いることで、セルユニットごとの交換が可能であり、交換作業を容易化でき、長期にわたって高出力を持続することができる。
【0026】
図1では、セルユニット1の側面1b、1cに夫々、取っ手20が設けられていたが、図3Aに示すように、側面1b、1c間をセルユニット1の上方にわたって繋ぐように取っ手21が設けられていてもよいし、図3Bに示すように、セルユニット1の側面1b、1cに夫々内側に凹む凹部(指掛け部)22が設けられていてもよい。凹部22に手指をかける等して、セルユニット1を容易に交換することができる。
【0027】
次に、金属空気電池セル2の構造について、図4及び図5を用いて詳述する。図4に示すように、金属空気電池セル2は、金属極3と、空気極4と、金属極3及び空気極4を支持する筐体5と、を有して構成される。
【0028】
図5B及び図5Cに示すように、空気極4は、金属極3の両側に間隔を空けて配置されると共に、筐体5の両側外面に露出している。
【0029】
図4及び図5A図5Dに示すように、筐体5は、上部5aと、下部5bと、上部5aと下部5bとを繋ぐ前部5c、後部5d、及び側部5e、5fと、を有する。筐体5は、一体的に成形されたものであってもよいし、複数に分割された各成形体を組み合わせて筐体5が構成されてもよい。
【0030】
筐体5の上部5aには、スリット5gが設けられ、金属極3が、このスリット5g内に固定支持されている。図5Cに示すように、金属空気電池セル2の筐体5の上部5aに形成されたスリット5gの幅のほうが、金属極3の幅よりも広くされている。金属極3とスリット5gとの間には、液室6に繋がる連通孔5kが形成されている。
【0031】
筐体5の側部5e、5fには、夫々、窓5hが設けられている(図5Bを参照)。また、各窓5hの上側、下側、左側及び右側の全周を囲む固定部5iが形成されている。図5Bには、窓5hの上側及び下側に位置する固定部5iが図示されているが、実際には、窓5hの左側及び右側にも固定部5iは存在し、窓5hの全周囲が、固定部5iで取り囲まれている。
【0032】
図5Bに示すように、各空気極4は、各側部5e、5fの固定部5iに接着剤等で固定されており、各窓5hを塞いでいる。筐体5の側部5e、5fに夫々設けられた窓5hが塞がれたことで、側部5e、5fに固定された空気極4の間には、液室6が形成されている。液室6は、電解液10の供給口としての貫通孔8、14を除いて囲まれている。
【0033】
図4図5A図5B及び図5Cに示すように、固定部5iの外周には、上側を除いて、枠部5jが形成されている。すなわち、枠部5jは、固定部5iの下側、左側及び右側を囲むように形成されている。また、枠部5jは、固定部5iよりも外方に突き出している。このため、枠部5jと固定部5iとの間には、段差が形成されている。図4図5B及び図5Cに示すように、空気極4は、枠部5jの表面よりも奥まった位置(後方)に配置されている。よって、空気極4と枠部5jとの間には、上方及び空気極4の前方が開放された空間が形成されている。この空間は、複数の金属空気電池セル2を並設させることで、上方のみが開放した空気室7を構成する(図6を参照されたい)。
【0034】
図5B及び図5Dに示すように、筐体5の下部5bには、液室6に通じる貫通孔8が形成されている。貫通孔8の幅寸法Tは、金属極3の厚みより大きい。ここで、「幅寸法」とは、筐体5の一方の側部5eから他方の側部5fに向かう方向の寸法を指す。図5B及び図5Dに示すように、貫通孔8は、金属極3の下端3aと対向する位置に形成される。したがって、図5Dに示すように、貫通孔8を通して金属極3の下端3aを見ることが出来る。図5B及び図5Dに示すように、金属極3は、貫通孔8の幅寸法Tの中心に位置するように配置されることが好ましい。
【0035】
本実施の形態では、金属極3の下端3aと貫通孔8の上端8aとの位置関係を限定するものではないが、図5Bに示すように、金属極3の下端3aは、貫通孔8の上端8a以上の位置に配置されることが好ましい。ここで、「上端8a以上の位置」とは、上端8aの位置、及び上端8aの上方の位置を含む。これによって、金属極3と空気極4との反応により生じた生成物を、貫通孔8から外部に効果的に排出することが出来る。また、本実施の形態では、金属極3の左右両側に空気極4が設けられているので、金属極3の左右両側にて生成物が生成される。このため、上記したように、貫通孔8の幅寸法Tの中心に、金属極3を配置することで、金属極3の左右両側から生成される生成物を、適切に貫通孔8を通して外部に排出することが可能になる。
【0036】
また、図5Bに示すように、金属極3の下端3aは自由端とされている。これにより、金属極3の下端3aを揺動させることができる。このため、空気極4と金属極3との間に生成物が堆積したときに、金属極3を撓らせることができ、生成物による押圧力を緩和でき、金属極3及び空気極4の破損を抑制することが出来る。
【0037】
図5Dでは、貫通孔8の形状は矩形状であるが、矩形状に限定するものでなく、その他の形状であってもよい。また、図5Dでは、貫通孔8の数が3つであるが、貫通孔8の数を限定するものではない。
【0038】
貫通孔8は、電解液を液室6まで供給する供給口としての機能を有すると共に、金属極3と空気極4との反応により生じた生成物を、セルユニット1の外部へ排出させる機能を有している。
【0039】
このように、電解液の供給と、生成物の排出とが可能であれば、貫通孔8の形成位置を、筐体5の下部5bに限定するものではない。図4では、筐体5の前部5cにも貫通孔14を設けている。図4では、複数の貫通孔14が、前部5cの高さ方向に間隔を空けて形成されている。これら貫通孔14は、貫通孔8と同様に、液室6に通じている。また、図示しないが、筐体5の後部5dにも貫通孔14を設けることができる。筐体5の前部5cや後部5dに設ける貫通孔14の少なくとも一部は、前部5cや後部5dの下側に配置されることが好ましい。「下側」とは、前部5c及び後部5dの高さ寸法の下半分、好ましくは、高さ寸法の1/2以下の下側部分、より好ましくは、高さ寸法の1/3以下の下側部分である。このように、貫通孔14を、筐体5の前部5cや後部5dに設けても、電解液10の供給と、生成物の排出とが可能である。
【0040】
ただし、生成物は、自重により、液室6内を降下するため、貫通孔8を、筐体5の下部5bに形成することが、生成物の排出を効果的に促進することができて好ましい。本実施の形態では、筐体5の下部5b、及び前部5c、後部5dに夫々、貫通孔8、14を設けている。
【0041】
また、図5Dでは、筐体5の下部5bに設けられた貫通孔8は、金属極3の横幅方向(筐体5の前部5cから後部5dに向かう方向)に等間隔にて複数形成されているが、図5Dに示す、左側の貫通孔8から右側の貫通孔8にかけて連通する長いスリット状の貫通孔8が形成されていてもよい。ただし、貫通孔8が長いスリット状であると、金属極3と空気極4との反応により生じた生成物が、一旦、貫通孔8を介して外部に抜けても、水流などによっては、再び、生成物が貫通孔8を介して液室6内に戻りやすくなる。よって、貫通孔8は、図5Dに示すように、複数に分けて形成することが、生成物の排出効果に優れており好ましい。なお、水流が生じない構成では、各貫通孔8を連通する長いスリット状であってもよい。
【0042】
本実施の形態では、上記にて詳述した金属空気電池セル2を複数個、並設させ一体化する。この並設状態では、両側に位置する金属空気電池セル2の外側が開放された状態にあるため、両側面を塞ぐために、セルユニット1の両側面1b、1cを構成する板材9を貼り合わせる。なお、板材9には、図1に示す例えば、取っ手20が取り付けられている。これにより、図1に示すように、複数の金属空気電池セル2と、第1の交換手段としての例えば、取っ手20を有するセルユニット1が完成する。
【0043】
図6に示すように、図1に示すセルユニット1を、電解液10を収容した発電槽11内に浸すと、電解液10は、貫通孔8や貫通孔14を通して液室6内に注入される。なお、図6には貫通孔14を図示していない。また、図5Cを用いて説明したように、金属極3と、筐体5の上部5aのスリット5gとの間には、液室6に繋がる連通孔5kが形成されているので、電解液10の液室6内への注入の際、液室6の空気は連通孔5kから外部に抜け、電解液10を、貫通孔8、14を通してスムースに液室6内部に導くことが出来る。
【0044】
また、図6では、発電槽11の底面11aとセルユニット1の下面1aとの間に、突起部12が設けられている。このため、発電槽11の底面11aとセルユニット1の下面1aとの間には、所定高さの隙間13が形成される。したがって、セルユニット1の下面1aが、発電槽11の底面11aに接触することはない。
【0045】
このとき、図6に示すように、第1の交換手段としての、例えば取っ手20は、電解液10の液面高さよりも高い位置に設けられている。これにより、取っ手20を手に持って、セルユニット1を電解液10から容易に引き上げることができる。また、後述する、複数の金属極3を同時に交換可能とする第2の交換手段としての、例えば連結部30も、電解液10の液面高さよりも高い位置に設けられている。
【0046】
図6に示すように、電解液10が液室6に注入されることで、例えば、金属極3がマグネシウムであるとき、上記した記載した酸化還元反応が金属極3と空気極4との間で生じ、放電が行われる。
【0047】
このとき、電池反応の副反応にて発生した水素を、液室6に通じる連通孔5k(図5Cを参照)から外部に排出することが出来る。電解液面以上に位置する貫通孔14からも外部に水素を排出する事が出来る。
【0048】
また、金属極3と空気極4の酸化還元反応の際に生じる生成物(Mg(OH))を、各金属空気電池セル2の下部に設けられた貫通孔8や、側部に設けられた貫通孔14を介して、発電槽11の底面11a側に排出することが出来る。また、本実施の形態では、発電槽11の底面11aとセルユニット1の下面1aとの間に隙間13が形成されているため、生成物をセルユニット1の液室6から発電槽11の底面11a側に向けて適切に放出することが出来る。以上により、各金属空気電池セル2の液室6内部に生成物が溜まるのを抑制することができ、電極の破損や電気特性の劣化を抑制することが可能であり、長寿命化を図ることが出来る。
【0049】
本実施の形態では、上記の金属極3と空気極4の酸化還元反応により、金属極3が減少したことに伴う出力低下等に基づいて、セルユニット1ごと、新たに交換することができる。このとき、セルユニット1には、第1の交換手段としての、例えば取っ手20が設けられているため、容易にセルユニット1ごと交換することが可能である。
【0050】
或いは、本実施の形態では、複数の金属極3を同時に交換可能な構成とすることができる。例えば、図1図6に示すように、各金属極3の上端同士を接続した、「第2の交換手段」としての連結部30が設けられている。連結部30は、縦棒30a及び横棒30bを組み合わせて成る骨組み構造である。これにより、連結部30の一部に手指をかけることができる。
【0051】
図7Aに示すように、セルユニット1を、電解液10を収容した発電槽11内に浸した後、金属極3の交換時期に、図7Bのように、連結部30を利用して、複数の金属極3を同時に、セルユニット1の筐体5から引き出し、複数の金属極3を同時に交換することができる。このとき、例えば、複数の金属極3を、金属空気電池セル2の外側から内部に向けてスライドさせて挿入でき、所定位置まで挿入したらそれ以上挿入できないように構成されている。このように、複数の金属極3を交換可能な構成では、セルユニット1の金属極以外の部分は、そのまま、金属極3の交換後も使用することができ、経済的である。
【0052】
図1に示すセルユニット1には、セルユニットごと交換可能とする第1の交換手段としての、例えば取っ手20と、複数の金属極3を同時に交換可能とする第2の交換手段としての、例えば連結部30とが設けられているが、少なくともどちらか一方でよい。ただし、両方設けられているほうが、状況に応じて、セルユニットごとの交換とするか、金属極3のみの交換とするか、選択することができる。例えば、1回目の交換作業は、金属極3のみの交換とした後、生成物が、セルユニット1内に相当量溜まった場合には、2回目の交換作業は、金属極3のみの交換とせず、セルユニットごとの交換としたほうが、高出力を効果的に持続することができる。
【0053】
なお、セルユニット1には、各金属空気電池セル2に貫通孔8、14を設けて、生成物の排出を可能とすると共に、第2の交換手段としての、例えば連結部30を必須として設け、複数の金属極3を同時に交換可能な構成とすることが好ましい。これにより、生成物のセルユニット1からの排出と共に、簡単に金属極3の交換が可能になり、高出力を簡単な手法で効果的に持続することができる。また、セルユニット1の金属極3以外はそのまま適用できるため経済的である。
【0054】
なお、本実施の形態において、発電を終了させたいときは、図2A図7Aの状態からセルユニット1を引き上げ、或いは、発電槽11を引き下げて、各金属空気電池セル2の液室6から電解液10を、貫通孔8を介して抜くことで、発電を簡単に止めることができる。或いは、セルユニット1が配置された状態の発電槽11から電解液10を抜くことで、発電を止めてもよい。また、負極としての金属極3を抜いても、電池反応を停止することが出来る。
【0055】
また、本実施の形態では、セルユニットごとの交換を可能とする第1の交換手段の構成や、複数の金属極を同時に交換可能とする第2の交換手段の構成は、図1図3に示した構成以外であってもよい。例えば、第1の交換手段及び第2の交換手段には、手指をかける手掛け部が設けられていることが、簡単に交換が可能になるため好ましいが、手掛け部がない形態であってもよい。例えば、セルユニット1や、複数の金属極3を同時に、工具等に接続可能な穴などが空いていてもよい。この穴に工具を引っ掛けて、セルユニット1や、複数の金属極3を吊るすことで、交換が可能になる。
【0056】
或いは、図6に示すように、セルユニット1を発電槽11内の電解液10中に浸漬させた状態で、例えば、発電槽11に設けられたスイッチを押圧すると、セルユニット1が、電解液10中から上方に持ち上がり、電解液10の外に露出したセルユニット1の側面を手で持って交換する形態としてもよい。このような、セルユニット1を上方に持ち上げる機構は、例えば、図6に示す発電槽11の底面11aとセルユニット1の下面1aとの間に形成された隙間13に設けることができる。
【0057】
なお、図5に示す金属空気電池セル2の構成は、一例であり、この構成に限定されるものでない。例えば、図5では、金属極3の両側に空気極4が配置されるが、金属極3と空気極4は一つずつでもよい。或いは、金属極3と空気極4は夫々複数ずつ設けられていてもよい。
【0058】
また、図1に示すセルユニット1の上面には、図示しない天井部が設けられていてもよい。天井部には、各空気室7に通じる開口が設けられており、天井部の開口を介して各空気室7に空気が流れるようにしてもよい。
【0059】
また、上記した天井部には、電池出力を外部へ供給する外部接続用端子が設置されていてもよい。外部接続用端子は、コネクタであったり、USB端子等であり、特に限定するものではない。外部接続用端子は複数個、設けることができる。例えば、携帯機器を、直接、セルユニット1に設けられた外部接続用端子に接続して電力供給することができる。或いは、例えば、USBハブ等の接続基板をセルユニット1の外部接続用端子に接続し、接続基板を介して複数の携帯機器に電力供給する構成とすることも出来る。
【0060】
本実施の形態では、各金属空気電池セル2の各電極を直列接続しても並列接続してもよく、配線方法を特に限定するものではない。
【0061】
また、本実施の形態における金属空気電池の使用方法では、セルユニットごと、あるいは、複数の金属極を同時に交換しながら、発電を継続することができる。なお、ここでいう「発電の継続」とは、通常の一次電池に比べて発電を延ばすことができることを意味し、交換の際に発電を停止しても、その前後において「発電が継続」されていると定義される。
【0062】
また、本実施の形態における金属空気電池は、マグネシウム空気電池であっても他の金属空気電池であっても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の金属空気電池によれば、交換作業を容易化できると共に、高出力を効果的に維持することが可能な非常用電源として使用することが出来る。
【0064】
本出願は、2018年8月24日出願の特願2018-157020に基づく。この内容は全てここに含めておく。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7