(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】中間優先曲げ区分を有する微細加工カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A61M25/00 632
A61M25/00 510
(21)【出願番号】P 2020543513
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 US2019019046
(87)【国際公開番号】W WO2019165144
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-24
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515246317
【氏名又は名称】サイエンティア・バスキュラー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,エドワード・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】リッパート,ジョン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ターンランド,トッド
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,クラーク・シー
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0276787(US,A1)
【文献】特開2000-126301(JP,A)
【文献】特表2005-534407(JP,A)
【文献】特開平08-215313(JP,A)
【文献】特表2012-502743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
介入的デバイスであって、当該介入的デバイスは、
近位端と遠位端の間を延びている細長部材を備えており、前記細長部材は、
微細加工領域の可撓性を高めるためのカット配列を有する前記微細加工領域を含んでいる、近位区分と、
遠位区分であって、当該遠位区分の可撓性を高めるためのカット配列を有する遠位区分の微細加工領域を含み、前記遠位区分の微細加工領域は、前記近位区分の前記微細加工領域よりも大きい可撓性を有している、遠位区分と、
前記近位区分から遠位方向に延びる近位側中間区分及び前記遠位区分から近位方向に延びる遠位側中間区分を有し、前記近位区分と前記遠位区分との間に位置する中間区分と、を含み、
前記近位側中間区分は、結果として得られる背骨を残すように、また1つの平面内で優先的屈曲させられるように、同じ側に配置されるカットを有する微細加工カット配列を含み、
前記遠位側中間区分は、前記近位側中間区分、前記近位区分の前記微細加工領域及び前記遠位区分の各々より剛性である、
介入的デバイス。
【請求項2】
前記近位区分は編上げ領域を含んでいる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記編上げ領域は前記微細加工領域の近位にある、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記微細加工領域のカット間の長手方向離間間隔は、前記中間区分に向かって漸進的に狭くなってゆく、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記遠位側中間区分は微細加工カットを省略している、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
少なくとも前記遠位区分及び前記中間区分はストック材料の単一一体部片から形成されている、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ストック材料の単一一体部片は、更に、前記中間区分から近位方向に延びる前記近位区分の微細加工領域を含んでいる、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
外側のラミネート及び/又は内側のライナー、を更に備えている請求項1から請求項7の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記外側のラミネート及び/又は前記内側のライナーは、無外傷性遠位先端を形成するように遠位方向に前記遠位区分を越えて延びている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記中間区分は、大動脈起始部に設置するための大きさ及び形状に構成されていて、前記近位側中間区分は前記大動脈起始部の一方の壁にて曲がりを提供し、前記遠位側中間区分は前記大動脈起始部を横断して反対側の壁に向かって延びる、請求項1から請求項9の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
大動脈起始部へ及び冠状動脈へ送られるように構成された介入的デバイスであって、当該介入的デバイスは、
近位端と遠位端の間を延びている細長部材を備えており、前記細長部材は、
微細加工領域及び前記微細加工領域の近位の編上げ領域を含む近位区分と、
長さを有する遠位端(116)と、長さを有する微細加工領域
とを
有する遠位区分であって、
前記遠位端は前記微細加工領域の遠位に位置し、前記微細加工領域
の前記長さが前記遠位端
の前記長さより長い、前記遠位区分と、
前記近位区分から遠位方向に延びる近位側中間区分及び前記遠位区分から近位方向に延びる遠位側中間区分を有する中間区分と、を含み、
前記近位側中間区分は、結果として得られる背骨を残すように及び1つの平面内の優先的屈曲を可能にさせるように片側に配列されたカットを有する微細加工カット配列を含み、
前記遠位側中間区分は前記近位側中間区分及び前記遠位区分より剛性であり、
前記遠位側中間区分は2から4cmの長さを有し、前記遠位区分は1から3cmの長さを有する、
介入的デバイス。
【請求項12】
少なくとも前記遠位区分及び前記中間区分はストック材料の単一一体部片から形成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記ストック材料の単一一体部片は、更に、前記中間区分から近位方向に延びる前記近位区分の微細加工領域を含んでいる、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記近位側中間区分は1から3cmの長さを有する、請求項11に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001]本願は、どちらも「中間優先曲げ区分を有する微細加工カテーテル」(“Microfabricated Catheter having an Intermediate Preferred Bending Section”)と題された2019年2月20日出願の米国特許出願第16/281,046号及び2018年2月22日出願の米国仮特許出願第62/633,939号に対する優先権及びそれら出願の恩典を主張し、それら出願の全体をここに参考文献として援用する。
【0002】
本開示は、中間優先曲げ区分を有する微細加工カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]医療分野では、ヒト身体の奥深くで繊細な処置を施行するのにガイドワイヤやカテーテルなどの介入的デバイスがたびたび利用される。典型的には、カテーテルが患者の大腿動脈、橈骨動脈、頸動脈、又は頸静脈の血管の中へ挿入され、患者の脈管構造を通って心臓へ、脳へ、又は要求に応じて他の目標とされる解剖学的構造へナビゲートされる。多くの場合、最初にガイドワイヤが目標とされる解剖学的構造へ経路決めされ、続いて1つ又はそれ以上のカテーテルがガイドワイヤ越しに送られ、目標とされる解剖学的構造へ経路決めされる。所定場所に入ったら、カテーテルは、薬物、ステント、塞栓除去デバイス、放射線不透過性染料、又は患者を所望のやり方で治療するための他のデバイス又は物質を送達するのに使用される。
【0004】
[0003]多くの用途では、目標とされる解剖学的構造に行き着くためにはその様な介入的デバイスに脈管構造の通路の蛇行した曲がりや湾曲を通って角度を付けさせなくてはならない。その様な介入的デバイスは、その様な蛇行経路をナビゲートするのに十分な可撓性を特にその遠位端に近接して必要とする。また一方、他の設計上の態様も考慮されなくてはならない。例えば、介入的デバイスは、更に、十分なトルク性能(torquability)(即ち、近位端にて加えられたトルクをはるか遠位端まで伝達する能力)、十分な押し出し性能(即ち、軸方向の押し出しを、中間部分を曲げたり拘束したりするのではなく遠位端へ伝達する能力)、及び意図される医療機能を遂行するための十分な構造的完全性を提供することができなくてはならない。
【0005】
[0004]幾つかの重要な医療処置は、マイクロカテーテルの冠状動脈への送達を必要とする。例えば、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、典型的には、冠状動脈へ造影剤を導入する冠動脈カテーテル法とそれに続く冠動脈血管形成術を伴う。冠動脈カテーテル法の間に、医師は、経橈骨動脈進入法又は経大腿動脈進入法を用いてマイクロカテーテルを患者の動脈の血管構造の中へ挿入し、カテーテルを大動脈の中へ、ちょうど遠位先端が目標とされる冠状動脈の1つの開口部内に入るまで案内する。次いで、医療関係者が関連の心臓脈管構造を映し出す(例えば、アテローム、カルシウム沈着、及び狭窄区域を映し出す)ことができるように、造影剤がカテーテルを通して目標とされる冠状動脈の中へ送達される。冠動脈血管形成術の間に、送達カテーテルは同様に大動脈の中へ経路決めされ、更に目標とされる冠状動脈を通って治療部位へ進められなくてはならない。治療部位に到達し次第、狭窄を軽減するべくバルーンが膨らまされ、更にはステントが設置されることもある。
【0006】
[0005]その様な繊細な処置は、送達カテーテルの精密制御を必要とする。しかしながら、関与する心臓の脈管の解剖学的構造の特有の蛇行性のせいで、カテーテルを目標とされる治療部位に正しく位置決めさせるのが難しいこともある。具体的には、カテーテルの遠位先端が大動脈起始部近傍の位置に到達し次第、カテーテルは、どちらかの冠状動脈と整列し冠状動脈に入ってゆくために鋭く湾曲しなくてはならない。この課題を解決するために、従来の案内カテーテルは、単一湾曲部又は合成湾曲部を有する事前に湾曲させた終端部分を含んでいる。臨床的処置の違い、患者の解剖学的構造の差、及び進入法(橈骨動脈対大腿動脈)の違いが、結果的におびただしい数の異なるPCI案内カテーテルをもたらした。しかしながら、個々に特有の設計は、動作上の汎用性を欠き、したがって限られた一連の状況の中でしか正しく機能しない。ゆえに、案内カテーテルを安定させ、その遠位先端を目標とされる冠状動脈入口部と整列させる工程には困難が存在する。したがって、様々な状況での効果的使用を可能にさせる汎用設計を有する改善された案内及び位置決め性能を有するマイクロカテーテルデバイスが長年にわたりそして今もなお切実に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願第16/281,046号
【文献】米国仮特許出願第62/633,939号
【発明の概要】
【0008】
本開示は、大動脈起始部へ及び冠状動脈へ送られるように構成された介入的デバイスに関する。介入的デバイスは近位端と遠位端の間を延びる細長部材を備え、細長部材は、近位区分と、遠位区分と、近位区分から遠位方向に延びる近位側中間区分及び遠位区分から近位方向に延びる遠位側中間区分を有する中間区分と、を含み、近位側中間区分は1つの平面内の優先的屈曲を可能にさせる微細加工カット配列を含み、遠位側中間区分は近位側中間区分及び遠位区分より剛性である。
【0009】
[0006]本発明の上記並びに他の利点及び特徴を得ることができるやり方を説明するために、以上に簡単に説明されている発明のより具体的な記述を、添付図面に描かれているその特定の実施形態を参照しながら描写してゆく。これらの図面は、発明の代表的な実施形態を描いているにすぎず、したがって発明の範囲を限定するものと解釈されてはならないとの理解の下に、添付図面の使用を通じて発明をなおいっそう具体的且つ詳細に記述し解説してゆく。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】[0007]大動脈起始部近傍の位置へのカテーテルの経橈骨動脈進入法を示すヒトの動脈脈管構造を概略的に描いている。
【
図1B】[0008]大動脈起始部近傍の位置へのカテーテルの経大腿動脈進入法を示すヒトの動脈脈管構造を概略的に描いている。
【
図2】[0009]冠状動脈にアクセスするための、大動脈内でのカテーテルの所望の位置決めを示す大動脈の拡大図を描いている。
【
図3】[0010]冠状動脈にアクセスするために利用することのできる或る例示としてのカテーテルデバイスであって、近位区分と、優先的曲げ性中間区分と、剛性中間区分と、可撓性遠位区分と、を有するカテーテルデバイスを描いている。
【
図4A】[0011]血管内デバイスに所望の曲げ特性を提供するべく様々に組み合わせて利用することのできる様々な桁構成の1つを示している。
【
図4B】[0011]血管内デバイスに所望の曲げ特性を提供するべく様々に組み合わせて利用することのできる様々な桁構成の1つを示している。
【
図4C】[0011]血管内デバイスに所望の曲げ特性を提供するべく様々に組み合わせて利用することのできる様々な桁構成の1つを示している。
【
図4D】[0011]血管内デバイスに所望の曲げ特性を提供するべく様々に組み合わせて利用することのできる様々な桁構成の1つを示している。
【
図5】[0012]桁の螺旋配列を有するカッティングパターンを描いている。
【
図6】[0013]分散型カットパターンをグラフで描いており、典型的な螺旋パターンを比較のために示している。
【
図7】[0014]不完全ランプカットパターンをグラフで描いている。
【
図8】[0015]鋸歯カットパターンをグラフで描いており、典型的な螺旋パターンを比較のために示している。
【
図9】[0016]
図10と共に、回転オフセットの違いを描いており、回転オフセットジャンプの大きさの違いから結果として生じる離間アーチファクトの違いを示している。
【
図10】[0016]
図9と共に、回転オフセットの違いを描いており、回転オフセットジャンプの大きさの違いから結果として生じる離間アーチファクトの違いを示している。
【
図11A】[0017]血管内デバイスの遠位区分に所望の曲げ特性を提供するのに利用することのできる様々な螺旋カットパターンの1つを描いている。
【
図11B】[0017]血管内デバイスの遠位区分に所望の曲げ特性を提供するのに利用することのできる様々な螺旋カットパターンの1つを描いている。
【
図11C】[0017]血管内デバイスの遠位区分に所望の曲げ特性を提供するのに利用することのできる様々な螺旋カットパターンの1つを描いている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.序文
[0018]本開示は、大動脈起始部における効果的な位置決め及び目標とされる冠状動脈への効果的なアクセスを提供する特徴を有する介入的カテーテルデバイスに関する。実施形態の多くは大動脈起始部近傍に位置決めされるという特定の文脈で説明されるが、記載のデバイスはその様な用途のみに限定されないことを理解しておきたい。したがって、本明細書に記載のカテーテルデバイスは、デバイスの位置決め便益が好都合である他の用途に利用されることができる。
【0012】
[0019]ここで説明される実施形態は、機能的位置決め便益を提供するように配列されている構築の異なる様々なカテーテル区分を含んでいる。以下の説明は、近位区分、中間区分、及び遠位区分に言及する。中間区分は2つの細区分を含み、それら細区分が集合的に中間区分を形成している。ここでの使用に際し、近位側中間区分とは、カテーテルの近位区分へ連結し、そこから遠位方向に延びる中間区分のより近位側の部分のことである。遠位側中間区分とは、カテーテルの遠位区分へ連結し、そこから近位方向に延びる中間区分のより遠位側の部分のことである。
【0013】
[0020]以下に、より詳細に説明されている様に、中間区分は、大動脈の大動脈起始部近傍の位置にカテーテルを効果的に位置決めし安定させることを可能にする特徴を含んでいる。具体的には、近位側中間区分は、大動脈起始部の基底にて1つの平面内で屈曲できるようになる優先的曲げ軸を含み、遠位側中間区分は、大動脈起始部の基底を横断して支持を提供するように比較的剛性な構築を含んでいる。
【0014】
[0021]ここでの使用に際し、漸進的に幅広に、漸進的に幅狭に、漸進的に浅く、漸進的に深く、漸進的に可撓性が高く、漸進的に可撓性が低く、などとなるよう構成されている構成要素又は特徴への言及は、平均して説明されている様式で漸進している構成要素又は特徴を開示することを意図している。したがって、全体としての平均的漸進から逸脱する1つ又はそれ以上の区域を含んでいる実施形態は、なおも本記載の範囲内に入る。例えば、デバイスの一方の端に近づくにつれて何らかのやり方で漸進的に変化する構成要素又は特徴への言及は、変化がデバイスの軸方向長さの少なくとも約0.5cm、少なくとも約1cm、少なくとも約3cm、又は少なくとも約5cmに亘って出現しているなら、又は上記数値の何れか2つによって定義される範囲内の軸方向長さに亘って出現しているなら、平均して漸進的に変化していると見なされ得る。
【0015】
II.大動脈起始部におけるカテーテルの位置決め
[0022]
図1A及び
図1Bは、大動脈起始部に到達するための実施可能な経血管進入法を描いている。
図1Aは、カテーテル50が橈骨動脈18(典型的には右橈骨動脈)の中へ挿入され、対応する鎖骨下動脈の中へ通され、次いで大動脈弓12の中へ通されるという経橈骨動脈進入法を示している。大動脈弓12から、カテーテル50の遠位先端は更に上行大動脈14の中へ方向決めされ、大動脈起始部16へ向かわされる。
図1Bは、カテーテル50が大腿動脈20の中へ挿入され、次いで逆行的に下行大動脈22の中へ通され、更に動脈弓12を周って大動脈起始部16に向けて方向決めされるという経大腿動脈進入法を描いている。これらは最も一般的な進入法であるが、他の進入法が利用されることもできる(例えば、経上腕動脈進入法)。利用される特定の進入法は、医師の選好、患者の解剖学的構造、処置上の必要性、などに依存するであろう。ここに説明されているカテーテルの実施形態は、大動脈起始部16への何れのその様な進入法についても利用できるであろう。
【0016】
[0023]
図2は、大動脈起始部16近傍の好適なカテーテル位置を示している。カテーテル50の遠位先端52が大動脈起始部16に達したら、処置は、通常、冠状動脈の1つの中への更なる通過を必要とする。
図2は、右冠状動脈24内への進入を描いているが、ここに説明されているカテーテルの実施形態は、処置で左冠状動脈へのアクセスが所望される場合に左冠状動脈にアクセスするのに利用されることもできる。図示されている様に、カテーテル50の一部分は、大動脈壁の、目標とされる冠状動脈(この実施例では右冠状動脈24)に対向する点26に接触するのが望ましい。
【0017】
[0024]この接触が有益なことにカテーテル50を支持し安定させる。但し、この位置を実現すること、それ自体が課題を招く。目標とされる冠状動脈24に対向する動脈壁に押し付けられた接触点26から、カテーテル50は、大動脈起始部16を横断して延び動脈24に到達するために比較的鋭い曲がり54を提供しなくてはならない。カテーテル50は、描かれている曲がり54を提供するのに十分に可撓性でなくてはならない。但し、大動脈起始部16を横断して延びるカテーテルの部分の過度な可撓性は、当該部分に矢印56によって示される「垂れ」又「跳ね」の運動を被らせる可能性がある。これらの望ましくない運動は、冠状動脈24の更に内部の遠位先端52の位置に影響を及ぼしかねず、更にはより近位の区分を動かし又は跳ねさせて安定性のある大動脈壁の接触点26から脱落させないとも限らない。これは、より困難なデバイス設置、処置の精度不良、更には周囲の脈管構造への外傷を生じさせる原因となり得る。
【0018】
[0025]以下に、より詳細に記述されている様に、ここに説明されているカテーテルの実施形態は、上記制限事項を最小限にする又は排除する特徴を含んでいる。カテーテルデバイスの実施形態は、大動脈起始部における安定した効果的なカテーテル設置を提供するのに利用することができ、冠状動脈へのより高精度で効果的なアクセス及びより優良な処置成果を可能にするだろう。
【0019】
III.例示としてのカテーテルデバイス
[0026]
図3は、大動脈起始部に効果的に位置決めすることのできるカテーテル100の或る例示としての実施形態を描いている。描かれているカテーテル100は、近位区分102、中間区分104、及び遠位区分110を含んでいる。近位区分102は更に編上げ領域114と微細加工領域112へ分けられる。カテーテルに機械加工による段下げ部(machined-down step)(図示せず)を含み、段下げ部にて編上げをエポキシ又は他の適切な接着剤を使用してカテーテルへ結着させることによって、編上げ領域114が微細加工領域112へ結着されていてもよい。図示の様に、中間区分は更に近位側中間区分106と遠位側中間区分108へ分けられる。近位区分102の微細加工領域112は、デバイスの効果的なトルク性能及び押し出し性能にとって十分な強度を維持しながらも可撓性を提供する特徴を含んでいる。
【0020】
[0027]微細加工領域112の実施可能なカットパターンは、以下に極めて詳細に説明されている。描かれている実施形態では、微細加工領域112は、連続する桁対が微細加工領域112の長さに沿って螺旋パターンを形成するように配列される2本桁構成を有している。図示の様に、カット対間の離間間隔は、微細加工領域112が中間区分104に近づくにつれて漸進的に幅狭になってゆく。これは、遠位方向に漸進的に高い可撓性を有する微細加工領域112をもたらす。可撓性の差が有益なことにカテーテルの強度と可撓性のバランスをとる。デバイスのより近位側の領域では、優れたトルク性能が重要であり、デバイスの遠位端に近いほど可撓性がますます重要になってくる。
【0021】
[0028]近位側中間区分106は、近位区分102から遠位方向に延びている。近位側中間区分106は、カテーテルのより遠位の区分に大動脈起始部を横断して目標とされる冠状動脈(
図2参照)の中まで延びさせるために、大動脈壁にて曲がりを提供するように構成されている。この実施形態では、近位側中間区分106は、カットを同じ側に整列させて含み、結果として得られる「背骨」を残して、当該区分を大動脈起始部の基底にて1つの平面内で優先的に屈曲させられるようにしている。実質的に曲げ軸を単一平面に限定することが、カテーテルの遠位先端と目標とされる冠状動脈の開口部との容易整列を可能にさせる。
【0022】
[0029]遠位側中間区分108は、近位側中間区分106と遠位区分110のどちらよりも剛性である。これは、有益なことに、カテーテルが大動脈壁から大動脈起始部の基底を横断して目標とされる冠状動脈の開口部に向かって延びる際の支持を提供する。遠位側中間区分108のより高い剛性は、カテーテルの当該領域の運動を制限するように機能し、カテーテルの遠位先端のより効果的な位置決めを可能にさせる。描かれている実施形態では、遠位側中間区分108は微細加工カットを省略している。代わりの実施形態は、所望の可撓性レベルを提供するために幾つかの微細加工カッティングを含んでいてもよい。但し、その様な実施形態でも、遠位側中間区分108はなおも遠位区分110と近位側中間区分106のどちらよりも大きい剛性を有しているのが望ましい。
【0023】
[0030]遠位区分110は、遠位側中間区分108からデバイスの無外傷性遠位先端116まで延びている。近位区分102の微細加工領域112と同じく、遠位区分110はより大きい可撓性を提供するための微細加工カットパターンを含むことができる。幾つかの実施形態では、遠位区分110は近位区分102の微細加工領域112よりも大きな可撓性を有するように構成されている。例えば、微細加工領域112のカットに比べ、遠位区分のカットはより深くてもよく及び/又はより狭く離間されていてもよい。
【0024】
[0031]カテーテル100の大部分がストック材料の単一一体部片で形成されていて、異なる区分は、接続接手にて一体に接合された別々の部片によって画定されるのではなしに異なるカットパターン(又はカットパターンの欠落)によって画定されるようにしているのが有益である。例えば、少なくとも遠位区分、中間区分、及び近位区分の微細加工領域は、ストック材料の同じ一体部片から形成されることができる。
【0025】
[0032]現時点で好適な実施形態では、カテーテル100は金属及び/又は合金(例えば、ニッケルチタン)から形成されるが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の様な他の医療等級ポリマーを含め、他の適切な医療等級の材料が使用されてもよい。幾つかの実施形態では、カテーテル100は材料の単一部片から形成されているが、他の実施形態では、材料の2つ又はそれ以上の別々の部片が一体に接合されてカテーテル100を形成していてもよい。
【0026】
[0033]カテーテル100は、更に、適切な医療等級の材料から作られた外側のラミネートを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、可変デュロメーターのポリマーラミネートがカテーテル100の外側被覆を形成している。例えば、ラミネートは、近位区分102に沿ってより高いデュロメーターを有し、遠位区分110に沿ってより低いデュロメーターを有していてもよい。ラミネートは、中間区分104に沿って中間のデュロメーターを有していてもよい。代わりに、近位側中間区分106に沿ったラミネートは相対的に低いデュロメーター(例えば、遠位区分110のデュロメーターと同等)を有し、一方、遠位側中間区分108に沿ったラミネートは相対的に高いデュロメーター(例えば、近位区分102のデュロメーターと同等)を有していてもよい。幾つかの実施形態は、更に、デュロメーターの様々な段階的変化及び/又は漸進的に変化するデュロメーター値を有するラミネートを使用していてもよい。例えば、1つ又はそれ以上の区分に沿ったラミネートは、遠位方向に漸進的に減少するデュロメーターを有していてもよい。
【0027】
[0034]カテーテル100は、更に、適切な医療等級の材料から作られたライナーを含んでいてもよい。1つの実施形態では、ライナーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成されているが、代わりのライナー材料が利用されることもできる。幾つかの実施形態では、ラミネート及び/又はライナーの一部分は、無外傷性遠位先端116を形成するように遠位方向に遠位区分110の微細加工ストック材料を越えて延びている。
【0028】
[0035]寸法は特定の用途の必要性にしたがって変えられてもよいが、典型的な実施形態は約70~120cmの合計長さを有しているであろう。近位区分102は約60~90cmの長さを有し、当該長さのうちの約50~80cmが編上げ領域114を構成し、当該長さのうちの約5~40cmが微細加工領域112を構成していてもよい。中間区分104は、約2~5cmの長さを有し、当該長さのうちの約1~3cmが近位側中間区分106を構成し、当該長さのうちの約2~4cmが遠位側中間区分108を構成していてもよい。遠位区分110は同じように1~3cmの長さを有していてもよい。同様に、カテーテル大きさは特定の用途にしたがって変えられてもよいが、典型的な実施形態は約4~9Fの大きさを有しているであろう。これらの範囲内の寸法を有する諸実施形態は、大動脈起始部における効果的なカテーテル位置決めを提供する。
【0029】
IV.例示としてのカットパターン
A.桁構成(Beam Configuration)
[0036]以下に説明されている様々なパターンは、カテーテル100の異なる微細加工区分に利用されることができる。例えば、遠位区分110及び/又は近位区分102の微細加工領域112は、以下に説明されている微細加工特徴の1つ又はそれ以上を含んでいるのが望ましい。
【0030】
[0037]様々な微細加工特徴は、優れたトルク性能を維持しながらもカテーテルデバイスの可撓性を高めるように配列された開窓を形成する。ここに説明されているカットパターンは、デバイスの所与の長手方向位置にあるカットの各セットからもたらされる結果として得られる長手方向の桁の数によって画定される異なる構成を有することができる。例えば、「2本桁」構成では、デバイスの長さに沿った各カット場所は、軸方向に延びる一対の対向する桁をもたらす一対の対向するカットを含んでいる。典型的には、結果として得られる桁対内の2本の桁はカテーテルの周囲を周って対称的に離間(即ち、約180度で離間)されているが、他の実施形態では、それらは異なったやり方で周方向に離間されていてもよい。同様に、3本桁構成での三つ組の桁は、典型的には、周囲を周って約120度で対称的に離間され、4本桁構成での桁のセットは、典型的には、周囲を周って約90度で離間される、等々であるが、他の実施形態は異なる周方向離間間隔を含んでいてもよい。
【0031】
[0038]他の製造パラメータが等しい(例えば、同様の材料、同様のカット深さ、同様のカット離間間隔など)ならば、より多くの桁本数を有する構成は可撓性がより小さくなるがトルクを伝達することについてはより大きな能力を有するはずである。諸実施形態は、異なる個々の可撓性特性及びデバイスの長さに亘る所望の可撓性勾配を提供するために異なる桁構成をそれぞれが有する複数の区分を含んでもよい。同時に、或る特定の桁構成を有する或る特定の区分は、特定の区分自体の内に可撓性勾配を提供するように配列されたカットを含んでもよい。例えば、デバイスの遠位端に近い区域ほどカット間の長手方向離間間隔が漸進的に小さくなっていてもよい。このやり方では、デバイスは、区分間可撓性勾配及び区分内可撓性勾配の両方を含むことによって、デバイスの長さに亘る所望の可撓性プロファイルを提供するように構成されることができる。
【0032】
[0039]
図4Aから
図4Dは、ここに説明されているデバイスで利用することのできるカットパターンの様々な実施形態を描いている。
図4Aは「2本桁」構成、
図4Bは「3本桁」構成、
図4Cと
図4Dは「1本桁」構成の異なるバージョンを示している。他の実施形態は、1カット場所当たりの得られる桁が3本より多い構成(例えば、「4本桁」カットパターン、「5本桁」カットパターンなど)を含むこともできる。全ての他の製造パラメータが等しいならば、カット場所毎の得られる桁の数が高くなるほど、その区分の可撓性はより低くトルク性能はより高くなる。
【0033】
[0040]
図4Aに示されている様に、細長区分300は複数の軸方向に延びる桁302及び周方向に延びる輪304を含んでいる。細長区分300は、2つの周方向に対向する桁302が各対の隣接した輪304の間に配置されていることから2本桁カットパターンを有しているということになる。各カット対の対向するカットは典型的には同じ深さを有し、結果として得られる桁対の各桁が対称的に周方向に離間されることになる。他の実施形態は、異なる深さの対向するカットを有するカット対を含んでいてもよい。各カット対の対向するカット同士の深さの差が大きいほど、結果として得られる桁対の桁同士は周方向により密に近接するはずであり、したがって2本桁カットは機能的には1本桁カットにより似通ったものとなる。
【0034】
[0041]描かれている実施形態は、部材の軸に沿って1つの対から次の対へ90度ずつ角度オフセットされた桁対の分散を示している。代わりの実施形態では、角度オフセットは90度より大きいこともあれば小さいこともある。例えば、角度オフセットは、約5度、約15度、約30度、約45度、約60度、約75度、約80度、又は約85度(何れかの方向に)であってもよいし、又は複数の異なるオフセット値を含んでいてもよい。
【0035】
[0042]幾つかの実施形態では、連続する桁対毎に角度オフセットが適用されている。他の実施形態では、連続する「セグメント」毎に角度オフセットが適用されており、ここに各セグメントは2つ以上の桁対を含む。ここでの使用に際し「セグメント」とはカテーテル区分の反復構造単位のことである。幾つかの実施形態では、単一のセグメントは、2つの隣接した輪304(1つの近位側の輪と1つの遠位側の輪)の間に配置された対向する桁302の第1の対と遠位側の輪から延びていて対向する桁302の第1の対から約90度だけ回転オフセットされている対向する桁の第2の対であると定義されることができる。よって、その様なセグメントを有していてセグメントからセグメントへの5度の回転オフセットを有している実施形態なら、0度位置にある第1の桁対、90度位置にある第2の桁対、5度位置にある第3の桁対、95度位置にある第4の桁対、等々、を有することになるだろう。
【0036】
[0043]
図4Bは、3本桁構成に配列された複数の桁402及び輪404を有する細長区分400を描いている。この実施形態では、各カット場所の各三つ組の桁は、120度で対称的に周方向に離間されている。連続したカット場所毎に60度の角度オフセットが適用されている。上述の2本桁構成と同じく、三つ組の桁同士は対称的に離間される必要はない。同様に、60度より大きい又は60度より小さい角度オフセットが使用されてもよく、角度オフセットは連続したカット場所毎に適用されてもよいし連続したセグメント毎に適用されてもよい。3本桁構成では、例えば、一セグメントは、2つの隣接した輪404(1つの近位側の輪と1つの遠位側の輪)の間に配置された桁402の第1の三つ組と遠位側の輪から延びていての第1の三つ組402から約60度だけ回転オフセットされている桁の第2の三つ組であると定義されることができる。
【0037】
[0044]
図4Cは、1本桁構成に配列された一連の桁502及び輪504を有する細長区分500を描いている。連続したカット場所毎に180度の角度オフセットが適用されている。上述の他の構成と同じく、180度より大きい又は180度より小さい角度オフセットが使用されてもよく、角度オフセットは連続したカット場所毎に適用されてもよいし連続したセグメント毎に適用されてもよい。1本桁構成では、例えば、一セグメントは、2つの隣接した輪504(1つの近位側の輪と1つの遠位側の輪)の間に配置された第1の桁502と遠位側の輪から延びていて第1の桁502から約180度だけ回転オフセットされている第2の桁であると定義されることができる。
【0038】
[0045]
図4Dは、1本桁構成に配列された一連の桁602及び輪604を有する細長区分600の別の実施形態を描いている。この実施形態では、カットは、桁602が角度オフセットを有するのではなくて区分の長さの一方の側に沿って整列するように提供されている。その様な実施形態は、有益にも、一方の方向への(即ち、整列した桁602の方への)優先的曲げを提供することができる。
図4C及び
図4Dは、1本桁構成の実施例であり、回転オフセットを有する桁の任意の組合せか又は一方の側に整列した一連の桁は、所望される性能属性のバランスに依存して使用されればよい。例えば、連続する桁2本を整列させ、それに続けて一つの桁を任意の量(例えば、180度)だけ回転オフセットさせてもよい。当然ながら、本明細書の他の場所で説明されている様に、1本桁オフセットは、整列(0度オフセット)であってもよいし、又は最大180度までの回転オフセット、即ち180度までの間の任意の角度(175度、135度、90度、45度、5度、など)を含む回転オフセットを有してもよい。
【0039】
[0046]
図5は、優先される曲げ方向を最小限にすることを意図した典型的な螺旋カットパターンの或る実施形態を描いている。示されている様に、細長部材900の連続したセグメント毎に回転オフセットを適用して螺旋パターンが形成されている。
図5は、各カットが各セットの隣接した輪904の間に単一の桁902を残すという螺旋1本桁パターンを描いている。連続した桁同士は約180度ずつオフセットされているものとして示されているが、連続した対それぞれは「セグメント」の一部であり、連続したセグメントそれぞれは約5度の回転オフセットを有しているものとして示されている。回転オフセットは、
図5に示されている様にセグメントからセグメントへ適用されてもよいし、又は代わりに連続したカット毎に適用されてもよい。この型式の螺旋配列は、異なるカット構成を有する実施形態で使用されることもできる。例えば、2本桁構成が螺旋配列を有し、連続したセグメント毎に又は連続したカット対毎に回転オフセットが適用されるようにしてもよい。
【0040】
B.分散型パターン
[0047]幾つかの実施形態は、非螺旋及び非直線カットパターンから得られる分散型桁配列を有する区分を含むことができる。この型式のパターンは、優先される曲げ方向を効果的に排除する又は最小限にする。
図6は、分散型パターンの1つの実施例を従来式螺旋パターンとグラフで比較している。図示されている様に、螺旋カットパターンは、セグメントからセグメントへの一定した回転オフセットを細長部材の長さに沿って適用している。分散型カットパターンは、螺旋パターンに頼ることなく曲げ軸を効果的に分散させる回転オフセットを適用している。
【0041】
[0048]
図6にグラフで示されている螺旋パターンと分散型パターンは、2本桁構成を有するデバイス向けである。典型的な2本桁構成は、各桁対を約180度だけ離間させることになるので、所与の位置の桁対は180度だけ回転オフセットされた桁対と見分けがつかないだろう。したがって、桁対についての実施可能な回転位置は0度から180度までを範囲とするものとして示されており、0度位置と180度位置は互いに等しい。他の分散型パターンの実施形態は異なる回転間隔を呈していてもよい。例えば、1本桁構成は、典型的には、可用な全360度回転空間に亘って分散され、3本桁パターンは、典型的には、120度対称性を呈し、したがって120度の回転空間に亘って分散されることになるだろう。
【0042】
[0049]
図6に示されている分散パターンは「非螺旋状」である。螺旋は、一般的には、円錐形又は円筒形を平面へ展開した場合に直線となるはずの円錐形又は円筒形の表面の曲線をなぞることで定義される。一例として
図5に示されている螺旋カットパターンを使用すると、細長部材900の長さに沿ったセグメントの配列をトレースする任意の曲線状の線は、細長部材900を切り開き平面へ「展開」させると直線を形成するはずである。対照的に、
図6に示される分散型パターンでは、桁/セグメントの配列をトレースした線で直線を形成する線はない。
【0043】
[0050]開始桁対が任意に0度位置に指定されたとして、連続した桁対は、可用180度回転空間に亘る桁位置の半径方向分散をできる限り速やかに(即ち、可能な限り少ないカットで)最大化するように回転オフセットされる。但し、描かれている実施形態では、剛性離間アーチファクト(rigid spacing artifacts)(
図9及び
図10に関して後段で更に説明)の形成を防止するために回転オフセット制限も適用されている。
【0044】
[0051]回転オフセット制限は、1つの桁対から次の桁対への又は1つのセグメントから次のセグメントへの許容され得る回転「ジャンプ」の制限を定義している。1つのセグメントから次のセグメントへの約10~30度の値を有する回転オフセット制限、又は連続した桁対を90度±当該値だけ回転させる回転オフセット制限は、過度に剛性な離間アーチファクトを生じさせることなく曲げ軸の効果的な分散を提供することが示された。例えば、回転オフセット制限は、1つの桁対から次の桁対への回転を約60~120度の範囲内に、約70~110度の範囲内に、又は約80~100度の範囲内に拘束することができる。他の実施形態は、他の回転オフセット制限を利用することもでき、又は特定の製品及び/又は特定の用途の必要に依っては回転オフセット制限を省略することさえできる。例えば、結果として生じる離間アーチファクトが特定に用途にとって受容可能であるならば回転オフセット値は30度より高い値へ引き上げられてもよい。
【0045】
[0052]
図6に描かれている例示としての分散型カットパターンは、30度の回転オフセット制限を利用している。図示されている様に、第1の桁対は任意に0度位置に位置決めされ、第2の桁対は90度に位置決めされている。可用180度空間での最大残存ギャップは0度と90度の間及び90度と180度の間(ここに0度と180度は同じ位置を表す)である。これらのギャップのうちの一方の中点近傍、例えば45度などに次の桁対を設置すれば、デバイスの曲げ軸は最善に分散されるはずである。しかしながら、次の桁対を45度に設置すると、30度の回転オフセット制限を破ってしまうことになる。ゆえに次の桁対は、回転オフセット制限を破ることなく残存ギャップの中点に近くなるように設置される。この実施例では、第3の桁対は30度に設置される。第4の桁対は第3の桁対から90度にある120度に設置される。
【0046】
[0053]この特定の実施例では、一つ置きの桁対が先の桁対から90度オフセットされる。代わりの実施形態は、必ずしもこの特定のパターンに従う必要はない。例えば、描かれている実施形態がセグメントからセグメントへ適用されるオフセットを変化させるという実施例である場合、他の実施形態は桁対から桁対への可変オフセットを適用するものであってもよい。
【0047】
[0054]引き続き
図6の一例としての分散型について、最大残存位置決めギャップは、今度は、30度と90度の間及び120度と180度の間である。第5及び第6の桁対はそれぞれ60度と120度に設置される。残存位置決めギャップは、今度は、30度おきに位置する(即ち、0度と30度の間、30度と60度の間、60度と90度の間、など)。パターンが続くにつれ、残存角度位置は、回転オフセット制限を破ることなくできる限り速やかに桁対を半径方向に離間させるやり方で埋められる。
【0048】
[0055]描かれている実施例では、可用角度位置は10度の細分性で提供されている。別の言い方をすれば、角度位置は、各10度増分が満たされたときに埋まったと考えることができる。したがって、描かれているパターンは、リセット前に、大凡10度おきの位置に位置決めされた桁対を含むことになる。その様な配列をここでは10度の「位置決め細分性」を有しているという。代わりの実施形態は、例えば、0.1度、0.5度、1度、3度、5度、10度、15度、18度、20度、25度、及び30度の細分性の様な、異なる位置決め細分性を利用していてもよい。
【0049】
[0056]描かれている厳密な位置決めは調節されることができ、
図6に示されているパターンは説明のみが目的であることを理解しておきたい。例えば、位置決めギャップは、回転ジャンプが既定の回転オフセット制限内である限り、異なった特定のシーケンスを用いて埋められてもよい。回転位置間のギャップを埋めてゆくとき、次の桁対は、回転オフセット制限を破ることなく最大残存位置決めギャップの大凡中心に近くなるように位置決めされるのが望ましい。例えば、ギャップが0度位置と30度位置の間に存在している場合、セグメントは10~20度位置に位置決めされることができる。
【0050】
[0057]また、代わりの実施形態は、10度より多い又は10度より少ない位置を埋める位置決め細分性を利用していてもよい。パターンをリセットする前により少ないセグメントが使用される場合、それぞれの適切な位置の大きさ範囲はより広くなり、パターンをリセットする前により多くのセグメントが使用される場合、大きさ範囲はより狭くなるだろう。幾つかの実施形態は、180度半径空間内の埋められるべき角度位置の可用性がリセットされる前に、約6~36の桁対又は約10~18の桁対を含むものであってもよい。他の実施形態は、可用位置がリセットされる間にはるかに多くの桁対を含んでいてもよい。既定の位置決め細分性が低くなるにつれ、全可用角度位置を埋めるのに必要な桁対の数は上昇してゆく。ゆえに、1度の位置決め細分性を有するデバイスは、180の可用角度位置を埋めるのに180の桁対を使用することになる。
【0051】
[0058]更にまた、選択された分散型パターンの既定パラメータ(例えば、位置決め細分性及び回転オフセット制限)にしたがって可用角度位置を埋めるやり方は複数あるので、分散型カットパターンはリセット後に完全に同じように反復される必要はない。ゆえに、ここでの使用に際し「リセット」、「リセットする」、などの用語は、180度半径空間内の角度位置の可用性を、当該空間が桁対によって埋められた後にリセットすることをいうものであり、それらの用語は、細長部材の次の区分に沿った角度位置を続いて埋めてゆく工程が先のパターンをそっくり再現する、ということを必ずしも含意しない。実際に、少なくとも幾つかの実施形態では、分散型パターンの全体長さは非反復式であってもよい。
【0052】
[0059]以上の原理は、1本桁配列を有する実施形態、3本桁配列を有する実施形態、又は3本より多い桁配列を有する実施形態にも適用され得るということを理解しておきたい。上述の同じ原理が、埋められるべき角度位置の範囲が360度まで延びることを別にすれば1本桁実施形態に適用できる。同様に、同じ原理は、概して、埋められるべき角度位置の範囲が典型的に120度まで延びることを別にすれば3本桁実施形態に適用できる。
【0053】
C.不完全ランプパターン
[0060]
図7は、そうでなければ螺旋パターンになったはずのものを一連の意図的に設計された不完全さで以て故意に乱れさせることによって形成された非螺旋カットパターンの別の実施形態をグラフで描いている。この型式のカットパターンは、ここでは「不完全ランプ」パターンと呼称されている。不完全ランプパターンの故意の逸れは、有益なことに、真の螺旋状の配列に付きものの優先的捩じれ及び湾曲の名残を低減又は防止するように機能する。示されている様に、セグメントは、3つの連続した桁対又はセグメントがどれも同じ回転オフセットにしたがって離間されないように配列されている。別の言い方をすれば、3つの桁対又はセグメントで、円筒状細長部材を平面へ展開した場合に直線を形成するように配列されているものはないということだ。
【0054】
[0061]
図7の不完全ランプパターンとは対照的に、真の螺旋状のパターンは、典型的には、それぞれの連続したセグメント又はそれぞれの連続した桁対を一定値だけ回転オフセットすることによって形成される。例えば、2本桁構造での真の螺旋状のパターンは、それぞれの連続したカット対を5度、85度、95度という一定値だけ、又は90度の倍数ではない何らかの他の一定値だけ回転オフセットすることによって形成されることができる。
【0055】
[0062]不完全ランプカットパターンでは、修正値は故意に一定でなく可変にされている。例えば、
図7にある様に、不完全ランプパターンは、それぞれの連続した桁対を一定値±可変修正値だけ回転オフセットすることによって形成されることができる。一定値±可変修正値を含んでいる回転オフセットはここでは「不完全回転オフセット」と呼称される。
【0056】
[0063]可変修正値は5~15度を範囲としてもよい。他の実施形態では、可変修正値は、2.5~30度を範囲とすることができ、又は結果として得られるデバイスの意図された目的に適した何らかの他の範囲であってもよい。望ましくは、可変修正値は、それが適用されるセグメント毎又は桁対毎にランダムに選択され、ランダム選択の上限と下限は修正値範囲(例えば、5~15度)によって定義される。オフセットの一定値部分は、典型的には、1本桁パターンでは180度、2本桁パターンでは90度、3本桁パターンでは60度、等々である。
【0057】
[0064]代わりの実施形態は、異なる大きさのセグメント間に及び/又は異なる内部オフセットを有するセグメント間に不完全ランプパターンを適用することができる。例えば、幾つかの実施形態は、2つより多い桁対(及び2つより多い対応している輪)を有するセグメント及び/又は90度とは異なる内部オフセットを有するセグメントを含んでいてもよい。また、描かれている実施例が、対向するカットの各対が2つの周方向に対向する桁をもたらす2本桁カットパターンを示してはいても、分散型オフセットパターンは、1本桁カットパターン、3本桁カットパターン、及び隣接した輪の間に3つより多い桁を有するパターンにも適用され得ることを理解しておきたい。
【0058】
D.鋸歯パターン
[0065]
図8は、ここでは「鋸歯」パターンと呼称されている非螺旋カットパターンの別の実施形態を描いている。ここに説明されている他の非螺旋カットパターンと同じく、鋸歯カットパターンは、優先される曲げ軸を回避すると共に螺旋パターンにつきものの優先される湾曲方向を制限することができるのが有益である。螺旋パターンとは対照的に、鋸歯カットパターンは回転オフセットの方向を周期的に逆転させることができる。
【0059】
[0066]
図8の鋸歯パターンと螺旋パターンはどちらも、隣接するセグメント間に約10度の角度オフセットを有していて、各セグメント内の各カット対は90度ずつオフセットされている。螺旋パターンは単純にこれらのオフセット値を細長部材の周囲を周る複数回転を通して同じ方向に続けているのに対し、鋸歯パターンは、第1の頂点位置に達した末に方向を逆転し、第2の頂点位置に向かって続いてゆく。第2の頂点位置に達すると、鋸歯パターンは次いで再び逆転し、第1の頂点に向かって返すように続いてゆく。こうしてパターンは細長部材の所望長さに沿って反復する。
【0060】
[0067]例えば、第1の頂点位置が約90度(即ち、セグメントの第1のカット対については90度、セグメントの第2のカット対については180度)に設定される。第1の頂点位置に達すると、パターンは第2の頂点位置に向かって逆転する。この実施形態では、第2の頂点位置は約0度(即ち、セグメントの第1のカット対については0度、セグメントの第2のカット対については90度)に設定されている。代わりの実施形態は、他の頂点位置を含んでいてもよい。任意の0度開始位置を所与とすると、第1の頂点位置は1本桁構成では360度未満、2本桁構成では180度未満、3本桁構成では120度未満、などである。好適には、第1の頂点位置は1本桁構成については約180度、2本桁構成については90度、3本桁構成については60度、などである。
【0061】
[0068]上述の様に、
図8の鋸歯パターンでのセグメントからセグメントへの角度オフセットは約10度である。鋸歯カットパターンの他の実施形態では、角度オフセットは10度より大きくても又は小さくてもよく、例えば約5度から約30度などであってもよい。追加的又は代替的に、頂点間のカットパターンの諸部分が可変オフセットを含んでいてもよい。例えば、頂点間の1つ又はそれ以上の部分が、
図7に関連して上述されている様な不完全回転オフセットを含んでいてもよい。
【0062】
[0069]代わりの実施形態は、異なる大きさのセグメント間に及び/又は異なる内部オフセットを有するセグメント間に鋸歯パターンを適用することができる。例えば、幾つかの実施形態は、2つより多い桁対(及び2つより多い対応する輪)を有するセグメント及び/又は90度とは異なる内部オフセットを有するセグメントを含んでいてもよい。また、描かれている実施例が、対向するカットの各対が2つの周方向に対向する桁をもたらす2本桁カットパターンを示していたとしても、分散型オフセットパターンは、1本桁カットパターン、3本桁カットパターン、及び隣接した輪の間に3本より多い桁を有するパターンにも適用され得るということを理解しておきたい。
【0063】
E.離間アーチファクト(Spacing Artifacts)
[0070]
図9は、回転オフセット制限が適用されていない場合に生じ得る望ましからざる離間アーチファクトの一例を描いている。
図9は、第1のセグメント750aと第2のセグメント750bを有する細長部材700の一区分を描いている。第1のセグメント750aは桁730aの第1の対(この図では一方の桁しか見えない)と、第1の対から90度だけオフセットされている桁730b及び730cの第2の対と、を含んでいる。第2のセグメント750bは、桁730d及び730eの第1の対と、第1の対から90度だけオフセットされている桁730f及び730gの第2の対と、を含んでいる。対内の各桁はその対応する桁から180度だけ周方向に離間されている。第2のセグメント750bは第1のセグメント750aから45度だけオフセットされており、それにより桁730d及び730eの第1の対は桁730aの第1の対から45度だけ外れた位置に置かれ、桁730f及び730gの第2の対は桁730b及び730cの第2の対から45度だけ外れた位置に置かれている。
【0064】
[0071]第1のセグメント750aから第2のセグメント750bへその様な45度オフセットを適用することは、それが第1のセグメント750aの曲げ頂点間に第2のセグメント750bの曲げ頂点を置くことになるので一見すると望ましいと考えられるかもしれない。しかしながら、45度のジャンプは、セグメント間に、細長部材700の一部分に過度剛性アーチファクトを残しかねない桁の空きを生じさせることにもなる。描かれている部材700では、桁730dは桁730bから45度しか離間されていないのに対し、桁730eは桁730bから135度も離間されている。同様に、桁730eは桁730cから45度しか離間されていないのに対し、桁730dは桁730cから135度も離間されている。この不均衡な離間間隔は望ましくない、というのも、より狭い離間間隔を有する細長部材700の領域は過度に剛性となり、及び/又はより広い離間間隔を有する領域は過度に可撓性となり得るからである。
【0065】
[0072]対照的に、1つのセグメントから次のセグメントへ適用される回転オフセットのより制限されたジャンプならセグメント間の桁離間間隔の不一致を最小限にするはずである。例えば、
図10は、第1のセグメント850aと第2のセグメント850bの間に、より制限された20度の回転オフセットを適用させた細長部材800の一区分を描いている。
図9の細長部材700と同じく、第1のセグメント850aは桁830aの第1の対と、桁830b及び830cの第2の対と、を含み、第2のセグメント850bは、桁830d及び830eの第1の対と、桁830f及び830gの第2の対と、を含んでいる。但し、第2のセグメント850bは第1のセグメント850aからより制限された20度しかオフセットされていないので、桁830b、830c、830d、及び830dの間の離間間隔の不一致はあまり目立たない。桁830dは桁830bから70度離間され、桁830eは桁830bから110度離間されている。同様に、桁830eは桁830cから70度離間され、桁830dは桁830cから110度離間されている。ゆえに、セグメント間にはなおも離間間隔の不一致が存在するにもかかわらず、適切な回転オフセット制限を提供することによって不一致は適度に制御されることができる。
【0066】
F.螺旋パターン
[0073]
図11Aから
図11Cは、デバイスの1つ又はそれ以上の区分に含むことのできる「螺旋」カットパターンの諸実施形態を描いている。
図11Aに示されている様に、デバイスの一区分170は、結果として得られる螺旋状に向きの付けられたコイル部材174の外側本体を提供するようにカットされていて、得られるコイルのピッチが開窓の大きさを画定する。典型的には、螺旋カットパターンは、1本桁パターンよりも低いトルク性能と高い可撓性をもたらすことができる。そういうものとして、殆どの用途では、螺旋区分は、トルク性能関連がとりわけ重要とされるデバイスのより近位の区分では有益性が低いが、可撓性関連がより重要になるより遠位の区分、特にデバイスの遠位端又は遠位端近傍では有益である。
【0067】
[0074]好適な諸実施形態では、螺旋カット区分170は、細長デバイスの1つ又はそれ以上の隣接する区分と共に材料の一体部片を形成する。例えば、別々のコイル部材をデバイスの別の区分へ溶接する、接着する、又はそれ以外のやり方で付着する(望ましくないことに潜在的な失陥点を持ち込み、製造の難しさを増大させる)のではなしに、区分へ行われるカッティング動作から螺旋パターンが現れるのである。このやり方では、材料の単一部片が、1つ又はそれ以上の螺旋カットパターンに加えて異なるカット配列の1つ又はそれ以上の区分を含むように微細加工されることができる。
【0068】
[0075]
図11Aに示されている実施形態は、更に、螺旋パターンの隣接するコイル部材174の間に留まってコイル部材同士を接続している一連のブリッジ172を含んでいる。その様なブリッジ172は、ブリッジを省略した類似の螺旋パターンに対比して、区分170の可撓性を幾分制限するように機能することができる。例えば
図11Bは、中空細長部材104に含むことのできる別の螺旋カット区分180を描いている。区分180の螺旋カットパターンは、コイル部材184間のブリッジを省略しており、ゆえに
図11Aに示されている螺旋区分170(材料、ピッチ、直径、壁厚さ、及び他の関連因子は、その他の点では実質的に等しいものと仮定する)よりも相対的に大きい可撓性を有している。ブリッジ172は、更に、1つ又はそれ以上の方向に可撓性バイアスを提供するように配列されることもできる。
【0069】
[0076]
図11Aに示されている実施形態の様な、ブリッジ172を有する実施形態では、ブリッジ172は、デバイスの螺旋形状を周って約45度ずつ、約60度ずつ、約75度ずつ、約90度ずつ、約105度ずつ、約120度ずつ、約135度ずつ、約150度ずつ、約165度ずつ、又は約180度ずつ離間されていてもよい。連続したブリッジ間には、より大きな離間間隔が提供されてもよい。例えば、上記の角度の離間間隔値の何れかに360度の倍数を足してなお一層大きい離間間隔の配列を提供することもできるだろう。より小さい離間間隔は、概して、可撓性をいっそう大きく制限し、一方、より大きな離間間隔は、概して、より大きな相対可撓性を提供する。幾つかの実施形態では、ブリッジ172の1つ又はそれ以上は、長手方向軸と整列されてもよい。追加的又は代替的なブリッジが、長手方向軸に対して或る角度に向きつけられていてもよい。また、ブリッジ172の1つ又はそれ以上は一直線であり、一方、追加的又は代替的ブリッジは曲がり又は湾曲区分を含んでいるか又は非均一断面積を含んでいてもよい。したがって、ブリッジ172は、部分の曲げ、捩じり、又は軸方向剛度を所望通りに調節するために修正されることができる。幾つかの実施形態では、ブリッジ172の離間間隔は区分170の長さに亘って変化していてもよい。例えば、ブリッジ172間の離間間隔は、遠位側の可撓性を漸進的に高めるために区分の遠位端に向かって漸進的に大きくなっていってもよい。
【0070】
[0077]追加的又は代替的に、螺旋カットパターンは、所望の可撓性特性を提供するようにその長さに沿って変えられてもよい。
図11Cは、区分190の或る実施形態であって、螺旋カット間の離間間隔が区分の遠位端に近いカットほど漸進的に狭くなるように特注仕様化されている実施形態を断面図に描いている。図示されている様に、コイル部材194のうちの2つの間の寸法191は、より近位側に位置するコイル部材192間の寸法193に比べ遠位側の領域では小さくされている。描かれている実施形態では、寸法195によって表されるカット幅は実質的に一定している。代わりの実施形態では、寸法191及び193によって示されているコイル部材の大きさの漸進的変化への代替として又は追加として、カット幅195が調節されてもよい。他の実施形態は、漸進的に変化する特徴を省略してもよく、又は漸進的に変化する特徴を含む1つ又はそれ以上の区分を含んでもよいし、又は実質的に一定したコイル寸法設定(dimensionality)を有する1つ又はそれ以上の他の区分を含んでもよい。
【0071】
[0078]本明細書で使用される「大凡」、「約」、及び「実質的に」という用語は、表明されている数量又は条件に近い数量又は条件であって、なおも所望の機能を遂行する又は所望の成果を実現する数量又は条件を表す。例えば、「大凡」、「約」、及び「実質的に」という用語は、表明されている数量又は条件から、10%未満、又は5%未満、又は1%未満、又は0.1%未満、又は0.01%未満のずれのある数量及び条件を指すとしてもよい。
【0072】
[0079]本明細書に説明されている何れかの実施形態の別々の特徴及び構成要素は、何れかの他の実施形態の特徴及び構成要素と組み合わされてもよい。例えば、ここに説明されている異なる微細加工カットパターンの何れかの組合せが、
図3の例示としてのカテーテルデバイスの微細加工区分に利用されることもできる。
【符号の説明】
【0073】
12 大動脈弓
14 上行大動脈
16 大動脈起始部
18 橈骨動脈
20 大腿動脈
22 下行大動脈
24 右冠状動脈
26 大動脈壁の冠状動脈に対向する点
50 カテーテル
52 遠位先端
54 曲がり
56 垂れ又は跳ねの運動の方向
100 カテーテル
102 近位区分
104 中間区分
106 近位側中間区分
108 遠位側中間区分
110 遠位区分
112 微細加工領域
114 編上げ領域
116 無外傷性遠位先端
170 区分
172 ブリッジ
174 コイル部材
180 螺旋カットパターン
184 コイル部材
190 区分
191 コイル部材間寸法
192 コイル部材
193 近位のコイル部材間寸法
194 コイル部材
195 カット幅
300 細長区分
302 軸方向に延びる桁
304 周方向に延びる輪
400 細長区分
402 桁
404 輪
500 細長区分
502 桁
504 輪
600 細長区分
602 桁
604 輪
700 細長部材
730a、730b、730c、730d、730e、730f、730g 桁
750a、750b セグメント
800 細長部材
830a、830b、830c、830d、830e、830f、830g 桁
850a、850b セグメント
900 細長部材
902 桁
904 輪