(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】流体回路
(51)【国際特許分類】
F15B 21/14 20060101AFI20231218BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F15B21/14 B
F15B11/00 M
(21)【出願番号】P 2020549250
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037447
(87)【国際公開番号】W WO2020067084
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018180825
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 佳幸
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-185182(JP,A)
【文献】特開2008-190694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
E02F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体を供給する圧力流体源と、前記圧力流体源に接続される複数のアクチュエータと、前記圧力流体源から供給される圧力流体の供給先を切り換える方向切換弁と、複数の前記アクチュエータの負荷圧力の内の最大の最高負荷圧力に対し差圧が目標値となるように前記圧力流体源の出力を制御する吐出量制御機構と、を備える流体回路であって、
前記アクチュエータからの戻り流体の一部を蓄圧するアキュムレータを備え、
前記アキュムレータは、蓄圧された圧力流体を前記方向切換弁の圧力流体源側流路に吐出可能であり、
前記吐出量制御機構は、
一次圧パイロット管路により導かれる前記方向切換弁の圧力流体源側圧力と
二次圧パイロット管路により導かれる前記方向切換弁のアクチュエータ側圧力の差圧により開度調整を行うロードセンシング弁を備え、
前記
二次圧パイロット管路に、前記アキュムレータの圧力に基づいて減圧量を調整する減圧弁が前記圧力流体源の制御量を調整する調整手段として設けられている流体回路。
【請求項2】
前記アキュムレータから前記方向切換弁の圧力流体源側流路への圧力流体の吐出時に前記調整手段により前記制御量が調整される請求項1に記載の流体回路。
【請求項3】
前記アキュムレータの圧力を検出する圧力検出手段と、演算回路を有する制御部を備え、
前記圧力検出手段により検出される圧力に基づいて前記制御部から出力される電気信号により前記調整手段を作動させる請求項1または2に記載の流体回路。
【請求項4】
少なくとも前記方向切換弁の圧力流体源側圧力およびアクチュエータ側圧力と、前記アキュムレータの圧力に基づいて前記減圧弁における減圧量を調整できる請求項1ないし3のいずれかに記載の流体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力流体源から圧力流体をアクチュエータに流入させ、負荷を駆動する流体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両、建設機械、産業用機械等を駆動するために、圧力流体源から油等の圧力流体をアクチュエータに流入させ、負荷を駆動する流体回路が用いられている。例えば油圧ショベルは、流体回路としての油圧回路に流体的に並列に接続されるバケットシリンダ、アームシリンダ等の複数のアクチュエータに油圧ポンプから圧力流体を供給することにより、複数の負荷を同時に駆動させて動作しており、操作性の向上、省エネ、スピードアップ、安全性への配慮から様々な改良が行われてきた。
【0003】
従来の流体回路の例として、油圧ショベル等に適用されるオープンセンタシステムの油圧回路は、アクチュエータおよび操作レバーに接続される方向切換弁の中立位置において、圧力流体源としての油圧ポンプからの圧力流体がバイパス流路を経由させてタンクに排出されており、操作レバーの操作量に基づくパイロット圧力によって方向切換弁のスプールをストロークさせることにより、操作レバーの操作量に応じたアクチュエータの作動速度が得られるようになっている。しかしながら、このシステムでは、アクチュエータに大きな負荷圧力がかかった場合には、操作レバーを高出力側に操作しなければならなかった。
【0004】
このような問題を解決した流体回路として、複数のアクチュエータの内、最高負荷圧力に対し、油圧ポンプの供給圧力を目標差圧分だけ常に高くなるように制御したロードセンシングシステムの流体回路が知られている(特許文献1参照)。このようなロードセンシングシステムの流体回路の例として、
図7に示される流体回路は、エンジンや電動モータ等の駆動機構により駆動される斜板型の可変容量型の油圧ポンプ102と、油圧ポンプ102に流体的に並列に接続される2つのアクチュエータ108,109と、各アクチュエータ108,109および操作レバー110、111に接続され油圧ポンプ120から供給される圧力流体の供給先を切り換える2つの方向切換弁106,107と、各方向切換弁106,107の圧力流体源側流路に設けられる圧力補償弁104,105と、油圧ポンプ102における圧力流体の吐出量(出力)を制御する吐出量制御機構としてのロードセンシング弁141および斜板制御部142と、から主に構成され、ロードセンシング弁141に対してシャトル弁116により選択されパイロット管路120を経由した2つのアクチュエータ108,109の負荷圧力の内、高い方の圧力であるアクチュエータの最高負荷圧力と、方向切換弁106,107の圧力流体源側流路から油圧ポンプ102の供給圧力がロードセンシング弁141に導かれることにより、油圧ポンプ102の供給圧力とアクチュエータの最高負荷圧力との差、すなわち方向切換弁106,107の圧力流体源側とアクチュエータ108,109側の圧力差(方向切換弁の差圧)が目標値(一定値)になるようにロードセンシング弁141を開度調整し斜板制御部142により斜板143の傾きを増減することで油圧ポンプ102の出力を制御している。そのため、ロードセンシングシステムの流体回路において、アクチュエータ108,109に大きな負荷圧力がかかった場合には、吐出量制御機構による制御により、アクチュエータ108,109の負荷圧力の変動に対応できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-74605号公報(第28頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図7のロードセンシングシステムの流体回路においては、2つのアクチュエータに大きな負荷が作用する場合、負荷に合った油圧ポンプを用いればよいが大型の油圧ポンプを備えなければならなくなり、エネルギー効率が悪くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ロードセンシングシステムを用いたエネルギー効率の高い流体回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の流体回路は、
圧力流体を供給する圧力流体源と、前記圧力流体源に接続される複数のアクチュエータと、前記圧力流体源から供給される圧力流体の供給先を切り換える方向切換弁と、複数の前記アクチュエータの負荷圧力の内の最大の最高負荷圧力に対し差圧が目標値となるように前記圧力流体源の出力を制御する吐出量制御機構と、を備える流体回路であって、
前記アクチュエータからの戻り流体の一部を蓄圧するアキュムレータを備え、
前記アキュムレータは、蓄圧された圧力流体を前記方向切換弁の圧力流体源側流路に吐出可能であり、
前記アキュムレータの圧力に基づいて前記圧力流体源の制御量を調整する調整手段を備える。
これによれば、複数のアクチュエータの内、最高負荷圧力に対し、圧力流体源の供給圧力を目標差圧分だけ常に高くなるように制御した流体回路において、方向切換弁の圧力流体源側流路に吐出可能なアキュムレータの圧力に応じて圧力流体源の出力を補完できるので、エネルギー効率の高い流体回路が得られる。
【0009】
好適には、前記アキュムレータから前記方向切換弁の圧力流体源側流路への圧力流体の吐出時に前記調整手段により前記制御量が調整される。
これによれば、適正なタイミングで圧力流体源の出力を調整できるため、エネルギー効率がよい。
【0010】
好適には、前記アキュムレータの圧力を検出する圧力検出手段と、演算回路を有する制御部を備え、
前記圧力検出手段により検出される圧力に基づいて前記制御部から出力される電気信号により前記調整手段を作動させる。
これによれば、調整手段の応答性が良い。
【0011】
好適には、前記吐出量制御機構は、パイロット管路により導かれる前記方向切換弁の圧力流体源側圧力とアクチュエータ側圧力の差圧により開度調整を行うロードセンシング弁を備え、
前記方向切換弁のアクチュエータ側圧力を導く前記パイロット管路に前記調整手段としての減圧弁が設けられている。
これによれば、アクチュエータの最高負荷圧力と、アキュムレータの圧力とによる値によりロードセンシング弁の開度調整を行うことができ、簡単な回路で吐出量制御機構による制御量を調整できる。
【0012】
好適には、少なくとも前記方向切換弁の圧力流体源側圧力およびアクチュエータ側圧力と、前記アキュムレータの圧力に基づいて前記減圧弁における減圧量を調整できる。
これによれば、方向切換弁の圧力流体源側圧力およびアクチュエータ側圧力と、アキュムレータの圧力に基づいて減圧弁における減圧量を調整できるため、方向切換弁の差圧を目標値に迅速に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例のショベルローダの側面図である。
【
図2】実施例のロードセンシングシステムの油圧回路を説明する図である。
【
図3】実施例の電磁比例減圧弁におけるソレノイドへの電気信号と二次圧の関係を説明する図である。
【
図4】実施例の油圧リモコン弁におけるレバー操作量とパイロット二次圧の関係を説明する図である。
【
図5】実施例のアクチュエータ(シリンダ)におけるレバー操作量と作動速度(シリンダスピード)の関係を説明する図である。
【
図6】実施例の方向切換弁におけるスプールストロークとスプール開口面積の関係を説明する図である。
【
図7】従来のロードセンシングシステムの油圧回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る流体回路を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
実施例に係る流体回路としてショベルローダの油圧回路を例として、
図1から
図6を参照して説明する。
【0016】
図1に示されるように、ショベルローダ100は、土砂等を収容するバケット108(W2,
図2参照)、バケット108にリンク結合されたリフトアーム109(W1,
図2参照)、これらを油圧によりそれぞれ駆動するアクチュエータとしてのバケットシリンダ8、アームシリンダ9を有している。以下、バケットシリンダ8およびアームシリンダ9に用いるロードセンシングシステムの流体回路としての油圧回路について説明する。
【0017】
図2に示されるように、油圧回路は、エンジンや電動モータといった駆動機構1により駆動される可変容量型の圧力流体源としてのメイン油圧ポンプ2およびパイロット油圧ポンプ3と、メイン油圧ポンプ2から供給される圧力流体としての圧油の供給先を切り換える方向切換弁としてのバケット方向切換弁6および方向切換弁としてのアーム方向切換弁7と、バケット方向切換弁6およびアーム方向切換弁7の圧力流体源側に接続される圧力補償弁4,5と、バケット方向切換弁6およびアーム方向切換弁7のアクチュエータ側に接続されるバケットシリンダ8およびアームシリンダ9と、パイロット油圧ポンプ3から供給される圧油の供給先を切り換えるバケット油圧リモコン弁10およびアーム油圧リモコン弁11と、メイン油圧ポンプ2の出力を制御する吐出量制御機構としてのロードセンシング弁41および斜板制御装置42と、パイロット管路としての二次圧パイロット管路20に設けられる調整手段および減圧弁としての電磁比例減圧弁50と、アームシリンダ9からの戻り油の一部を蓄圧するアキュムレータ60と、から主に構成されている。尚、メイン油圧ポンプ2およびパイロット油圧ポンプ3に流体的に並列に接続されるバケットシリンダ8側の油圧回路とアームシリンダ9側の油圧回路は、略同一構成であるため、アームシリンダ9側の油圧回路について説明し、バケットシリンダ8側の油圧回路の説明を省略する。
【0018】
メイン油圧ポンプ2とパイロット油圧ポンプ3は、駆動機構1と連結されており、駆動機構1からの動力によって回転し、それぞれに接続される油路を通して圧油を供給する。
【0019】
図2に示されるように、メイン油圧ポンプ2から吐出された圧油は、油路21,22、圧力補償弁5、逆止弁14、油路23を通ってアーム方向切換弁7に流入する。アーム方向切換弁7は、5ポート3位置タイプのノーマルクローズ型パイロット式方向切換弁であり、その中立位置では、油路23とアームシリンダ9のヘッド側油路25およびロッド側油路26が閉塞され、二次圧パイロット管路20が油路24およびタンク15に接続される。また、アーム方向切換弁7は、伸び位置7Eにあっては、油路23がヘッド側油路25および二次圧パイロット管路20に接続され、ロッド側油路26が油路24およびタンク15に接続される。また、アーム方向切換弁7は、縮み位置7Cにあっては、ヘッド側油路25が油路24およびタンク15に接続され、油路23がロッド側油路26および二次圧パイロット管路20に接続される。
【0020】
また、アーム方向切換弁7が伸び位置7Eまたは縮み位置7Cにあっては、二次圧パイロット管路20によってアーム方向切換弁7の二次圧すなわちアクチュエータ側圧力がシャトル弁16を介してアンロード弁12および電磁比例減圧弁50に導かれている。尚、シャトル弁16には、二次圧パイロット管路20によりバケット方向切換弁6およびアーム方向切換弁7のアクチュエータ側圧力、すなわちバケットシリンダ8およびアームシリンダ9の負荷圧力がそれぞれ導かれており、シャトル弁16は、バケットシリンダ8およびアームシリンダ9の負荷圧力の内、高い方の圧力であるアクチュエータの最高負荷圧力を選択してアンロード弁12および電磁比例減圧弁50に導くようになっている。
【0021】
図3に示されるように、電磁比例減圧弁50は、ソレノイドへの電気信号の増加に応じて二次圧を比例的に減少させるような圧力特性を有し、演算回路を備える制御部としてのコントローラ70が電気信号ライン73により接続され、コントローラ70からの電気信号に応じて減圧量(開度)の調整を行い、シャトル弁16により選択されたアクチュエータの最高負荷圧力の一部をタンク15に逃がすことにより二次圧を低減できるようになっている。また、電磁比例減圧弁50は、二次圧パイロット管路20におけるロードセンシング弁41の一次側に設けられている。
【0022】
ロードセンシング弁41は、二次圧パイロット管路20を通して電磁比例減圧弁50により調整されたアクチュエータの最高負荷圧力、すなわち方向切換弁のアクチュエータ側圧力が導かれるとともに、油路21から分岐する管路27から分岐するパイロット管路としての一次圧パイロット管路28を通してメイン油圧ポンプ2の供給圧力、すなわち方向切換弁の圧力流体源側圧力が導かれており、メイン油圧ポンプ2の供給圧力と電磁比例減圧弁50により調整されたアクチュエータの最高負荷圧力との差、すなわち方向切換弁の圧力流体源側と電磁比例減圧弁50により調整された方向切換弁のアクチュエータ側の圧力差に基づいて開度調整され、その開度によりポンプ流量制御圧力を制御できるようになっている。また、ロードセンシング弁41から供給される圧油(以下、ポンプ流量制御圧力という。)に応じて斜板制御装置42が作動し、メイン油圧ポンプ2の斜板43の傾斜角を増減させることにより、メイン油圧ポンプ2の出力が制御される。
【0023】
図2に示されるように、パイロット油圧ポンプ3から吐出されたパイロット一次圧の圧油は、油路31,32を通ってアーム油圧リモコン弁11に供給されている。アーム油圧リモコン弁11は、可変型の減圧弁であり、ショベルローダ100の操作レバー11-1が操作されることにより、
図4に示すようなレバー操作量に応じて減圧されたレバーのパイロット二次圧が信号油路33,34を通ってアーム方向切換弁7の信号ポート7-1,7-2に供給され、アーム方向切換弁7の内部のスプールがストロークすることで伸び位置7Eまたは縮み位置7Cに切り換わるようになっている。尚、パイロット油圧ポンプ3から吐出された圧油の内、アーム油圧リモコン弁11からアーム方向切換弁7の各信号ポート7-1,7-2に供給されない余剰油はすべて油路35、リリーフ弁13、油路36を通ってタンク15に排出される。
【0024】
具体的には、操作レバー11-1が伸び方向Eに操作されることにより、アーム方向切換弁7が伸び位置7Eに切り換わり、メイン油圧ポンプ2から供給される圧油が油路23に接続されるヘッド側油路25を通ってアームシリンダ9のヘッド室9-1に流入し、同時に、ロッド室9-2から圧油がロッド側油路26に接続される油路24を通ってタンク15に排出される。これにより、アームシリンダ9を伸ばしてリフトアーム109(W1)を持ち上げることができる。
【0025】
また、操作レバー11-1が縮み方向Cに操作されることにより、アーム方向切換弁7が縮み位置7Cに切り換わり、メイン油圧ポンプ2から供給される圧油が油路23に接続されるロッド側油路26を通ってアームシリンダ9のロッド室9-2に流入し、同時に、ヘッド室9-1から圧油がヘッド側油路25に接続される油路24を通ってタンク15に排出される。これにより、アームシリンダ9を縮めてリフトアーム109(W1)を下ろすことができる。
【0026】
尚、操作レバー11-1が伸び方向Eに操作された時のレバー操作量とアームシリンダ9のシリンダスピード(作動速度)の関係は、
図5に示すような特性カーブを有している。また、操作レバー11-1が伸び方向Eに操作された時のアーム方向切換弁7内のスプールストロークとスプール開口面積の関係は、
図6に示すようなリフトアーム109の持ち上げ時のスプール開口特性を有している。
【0027】
図6に示されるように、アーム方向切換弁7は、スプールストローク、すなわちレバー操作量に応じてメイン油圧ポンプ2からアームシリンダ9に流入する流量を制御するスプール開口が変化し、操作レバー11-1のレバー操作量が最大Lm(
図5参照)の時のスプールストロークXmにおけるスプール開口面積Amによるメイン油圧ポンプ2からアームシリンダ9に流入する流量Qmが最大となるように設定しておくことで、アームシリンダ9の最大シリンダスピード時のアーム方向切換弁7のスプール開口における圧力損失が抑えられている。
【0028】
尚、バケット方向切換弁6およびアーム方向切換弁7の圧力流体源側に設けられる圧力補償弁4,5は、2ポート2位置タイプのノーマルオープン型圧力制御弁であり、二次圧パイロット管路20と接続されることにより、バケットシリンダ8とアームシリンダ9の負荷圧力がそれぞれ導かれており、バケット108とリフトアーム109を同時に駆動させるバケット方向切換弁6およびアーム方向切換弁7の同時操作時に、バケットシリンダ8とアームシリンダ9の負荷圧力の大小に係わらず、各方向切換弁のスプール開口面積に応じた流量をバケットシリンダ8およびアームシリンダ9に流入させることができるようになっている。
【0029】
このように、ロードセンシングシステムにおいては、方向切換弁におけるスプール開口面積に応じて、その前後差圧ΔPが常に目標値ΔPt(一定値)となるようにロードセンシング弁41においてポンプ流量制御圧力が制御され、ポンプ流量制御圧力に基づいて斜板制御装置42によりメイン油圧ポンプ2の斜板43の傾斜角が増減されることにより、メイン油圧ポンプ2の出力が制御されるようになっている。すなわち、
図6に示されるように、スプール開口面積が微小であれば、メイン油圧ポンプ2からの吐出量が微小となり、スプール開口面積が大きくなるにつれて、吐出量が増大するようにメイン油圧ポンプ2の出力が制御される。
【0030】
尚、二次圧パイロット管路20に接続されるアンロード弁12は、常にメイン油圧ポンプ2の供給圧力よりも目標値ΔPtだけ、作動圧が高くなるように設定されており、メイン油圧ポンプ2の圧力が過大になった時にタンク15に圧油(圧力)を逃がすようになっている。また、目標値ΔPtは、アンロード弁12に内蔵されるスプリング12-1の付勢力により設定される。
【0031】
ここで、アキュムレータ60について説明する。
図2に示されるように、アームシリンダ9のヘッド側油路25からはバイパス油路63が分岐しており、バイパス油路63、電磁切換弁61、バイパス油路64,65によりアキュムレータ60が接続されている。また、アキュムレータ60は、バイパス油路65,66、電磁切換弁62、バイパス油路67により方向切換弁の圧力流体源側流路としての油路22に接続されている。
【0032】
電磁切換弁61,62は、2ポート2位置タイプのノーマルクローズ型電磁切換弁であり、電気信号ライン71,72によりコントローラ70にそれぞれ接続され、中立位置において閉塞されており、コントローラ70からの電気信号により開放されるようになっている。尚、電磁切換弁61,62は、逆止弁が内蔵されており、開放時の圧力流体の流れが一方向にのみ許容されている。
【0033】
尚、コントローラ70には、油路21に設けられメイン油圧ポンプ2の供給圧力を検出可能な圧力センサ80から信号圧Pin、二次圧パイロット管路20に設けられシャトル弁16により選択されたアクチュエータの最高負荷圧力を検出可能な圧力センサ81から信号圧PLS、バイパス油路65に設けられアキュムレータ60内の圧力を検出可能な圧力検出手段としての圧力センサ82から信号圧PA、信号油路33に設けられアーム油圧リモコン弁11のパイロット二次圧を検出可能な圧力センサ83から信号圧Px、信号油路34に設けられアーム油圧リモコン弁11のパイロット二次圧を検出可能な圧力センサ84から信号圧Pyがそれぞれ入力されるようになっている。また、コントローラ70の演算回路は、信号圧Pinと信号圧PLSから方向切換弁の差圧ΔP、信号圧PAからアキュムレータ60の吐出量、信号圧Pxまたは信号圧Pyから操作レバー11-1のレバー操作量、すなわち方向切換弁のスプール開口をそれぞれ算出することができる。
【0034】
次いで、アキュムレータ60の動作について説明する。例えば、操作レバー11-1が縮み方向Cに操作されると、信号油路34に設けられる圧力センサ84から信号圧Pyがコントローラ70に入力され、コントローラ70から電気信号ライン71を通して電磁切換弁61に電気信号が入力され、電磁切換弁61が開放する。これにより、アームシリンダ9のヘッド室9-1内からヘッド側油路25を通してタンク15に排出される圧力流体としての排出油、言い換えれば、アームシリンダ9からの戻り油の一部がバイパス油路63,64,65を通してアキュムレータ60に蓄圧される。
【0035】
また、操作レバー11-1が伸び方向Eに操作されると、信号油路33に設けられる圧力センサ83から信号圧Pxがコントローラ70に入力され、コントローラ70から電気信号ライン72を通して電磁切換弁62に電気信号が入力され、電磁切換弁62が開放する。これにより、アキュムレータ60に蓄圧された蓄圧油がバイパス油路65,66,67から油路22に吐出され、ヘッド側油路25を通してアームシリンダ9のヘッド室9-1に回生される。このとき、アキュムレータ60内の圧力に基づいてコントローラ70から電気信号ライン73を通して電磁比例減圧弁50に電気信号が同時に入力され、電磁比例減圧弁50の減圧量(開度)の調整を行うことにより、ロードセンシング弁41に導かれるアクチュエータの最高負荷圧力が低減される。これにより、ロードセンシング弁41において、メイン油圧ポンプ2の供給圧力と電磁比例減圧弁50により調整されたアクチュエータの最高負荷圧力との差、すなわち方向切換弁の圧力流体源側と電磁比例減圧弁50により調整された方向切換弁のアクチュエータ側の圧力差に基づいて開度調整が行われ、その開度によりポンプ流量制御圧力が制御され、このポンプ流量制御圧力に基づいて斜板制御装置42が作動し、メイン油圧ポンプ2の斜板43の傾斜角を減らすことにより、メイン油圧ポンプ2の出力が減じられる。
【0036】
例えば、
図5に示されるように、操作レバー11-1のレバー操作量が最大Lm、すなわちメイン油圧ポンプ2からアームシリンダ9に流入する流量Qmが最大のとき、アームシリンダ9に大きな負荷圧力がかかりアームシリンダ9に必要な圧油の供給流量QxがQx>Qmとなった場合、コントローラ70から電気信号ライン72を通して電磁切換弁62に電気信号が入力され、電磁切換弁62が開放することにより、アキュムレータ60に蓄圧された蓄圧油がアームシリンダ9のヘッド室9-1に回生され、メイン油圧ポンプ2の出力をアキュムレータ60の回生により補うことができる。このとき、アキュムレータ60内の圧力に基づいてコントローラ70により算出されるアキュムレータ60からアームシリンダ9に回生される流量QAにより、Qx<Qm+QAの関係が成り立てば、コントローラ70から電気信号ライン73を通して電磁比例減圧弁50に電気信号が同時に入力され、メイン油圧ポンプ2からアームシリンダ9に流入する流量がQx-QAとなるようにメイン油圧ポンプ2の出力が減じられる。
【0037】
これによれば、本実施例のロードセンシングシステムの油圧回路は、アキュムレータ60に蓄圧された圧力流体を方向切換弁の圧力流体源側流路としての油路22に吐出可能であり、ロードセンシング弁41に方向切換弁のアクチュエータ側圧力を導く二次圧パイロット管路20に設けられる電磁比例減圧弁50によってアキュムレータ60内の圧力に基づいて吐出量制御機構としてのロードセンシング弁41および斜板制御装置42による制御量を調整することにより、方向切換弁の圧力流体源側流路に吐出可能なアキュムレータ60内の圧力に応じてメイン油圧ポンプ2の出力を補完できるため、ロードセンシングシステムを用いてアクチュエータの負荷圧力の変動に対応でき、かつエネルギー効率の高い油圧回路が得られる。
【0038】
また、アキュムレータ60から方向切換弁の圧力流体源側流路への圧力流体の吐出時に、同時に電磁比例減圧弁50によりロードセンシング弁41および斜板制御装置42による制御量が調整されるため、適正なタイミングでアキュムレータ60内の圧力に応じてメイン油圧ポンプ2の出力を調整でき、エネルギー効率がよい。
【0039】
また、コントローラ70は、圧力センサ80により検出される方向切換弁の圧力流体源側圧力としてのメイン油圧ポンプ2の供給圧力と、圧力センサ81により検出される方向切換弁のアクチュエータ側圧力としてのアクチュエータの最大負荷圧力と、圧力センサ82により検出されるアキュムレータ60内の圧力に基づいて、電磁比例減圧弁50における減圧量(開度)を調整できるため、方向切換弁の前後差圧ΔPを目標値ΔPtに迅速に制御することができる。また、コントローラ70は、電気信号により電磁比例減圧弁50を作動させるため応答性が良い。
【0040】
また、電磁比例減圧弁50を用いることにより、調整手段としての減圧弁を簡素な構造とすることができる。
【0041】
また、電磁比例減圧弁50は、
図3に示されるように、アキュムレータ60内の圧力に基づいたコントローラ70からの電気信号、すなわちソレノイドへの電気信号の増加に応じて二次圧を比例的に減少させるため、ロードセンシング弁41および斜板制御装置42による制御量を細かく制御することができる。
【0042】
また、バケット方向切換弁6およびバケットシリンダ8、アーム方向切換弁7およびアームシリンダ9は、メイン油圧ポンプ2に流体的に並列に接続され、アキュムレータ60は、アームシリンダ9のヘッド側油路25から延びるバイパス油路63,64,65,66,67に接続されているため、アームシリンダ9からアキュムレータ60に蓄圧された圧油をバケット方向切換弁6およびバケットシリンダ8、アーム方向切換弁7およびアームシリンダ9の両方に供給でき、油圧回路の効率が良い。
【0043】
また、アキュムレータ60と方向切換弁の圧力流体源側流路としての油路22との間に電磁切換弁62が設けられることにより、コントローラ70の演算回路により算出された方向切換弁の前後差圧ΔPとアキュムレータ60内の圧力に基づく信号圧PAを比較して、方向切換弁の前後差圧ΔPが目標値ΔPtとなるように、必要に応じて電磁切換弁62を開閉し、アキュムレータ60からの蓄圧油の吐出量を制御することができる。
【0044】
また、コントローラ70は、圧力センサ82により検出されるアキュムレータ60内の圧力である信号圧PAと圧力センサ80により検出されるメイン油圧ポンプ2の供給圧力である信号圧Pinを比較し、電磁切換弁62を開閉できるため、アキュムレータ60内の圧力がメイン油圧ポンプ2の供給圧力よりも高い(PA>Pin)場合のみ、電磁切換弁62を開放してアキュムレータ60から蓄圧油を確実に吐出することができる。
【0045】
また、変形例として、電磁切換弁62を比例弁としてコントローラ70からの電気信号の入力値に応じて開度調整可能とすることにより、アキュムレータ60の蓄圧量に応じてアキュムレータ60から方向切換弁の圧力流体源側流路への吐出量を制御できるようにしてもよい。これによれば、メイン油圧ポンプ2からの吐出量とアキュムレータ60からの吐出量のバランスを調整しながら、方向切換弁の前後差圧ΔPを目標値ΔPtに制御することができるため、油圧回路全体のエネルギー効率が良い。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、ロードセンシングシステムの流体回路として、ショベルローダの油圧回路について説明したが、これに限らず、ショベルローダ以外の車両、建設機械、産業用機械等の流体回路に適用されてもよい。また、流体回路に用いる圧力流体は、油以外の液体や気体であってもよい。
【0048】
また、前記実施例では、アームシリンダ9の縮み動作の時にアームシリンダ9のヘッド室9-1内からヘッド側油路25を通してタンク15に排出される排出油の一部がバイパス油路63,64,65を通してアキュムレータ60に蓄圧され、これをアームシリンダ9の伸び動作の時に油路22からアームシリンダ9に回生する例を説明したが、これに限らず、従来技術のロードセンシングシステムの油圧回路においてアキュムレータ60を利用した蓄圧・回生を行う油圧回路であれば適用可能であり、例えば、バケットシリンダ8の駆動時やショベルローダ100の図示しない走行用の油圧モータの制動時の戻り油の一部をアキュムレータ60に蓄圧し、これを油圧モータの加速時に回生するように油圧回路を構成してもよい。
【0049】
また、前記実施例では、電磁比例減圧弁50が二次圧パイロット管路20におけるロードセンシング弁41の一次側に設けられる態様について説明したが、電磁比例減圧弁をロードセンシング弁41の二次側に設けることにより、ロードセンシング弁41により制御されるポンプ流量制御圧力が電磁比例減圧弁により減圧されるように構成されてもよいし、あるいは、二次圧パイロット管路20に対して独立してメイン油圧ポンプ2の出力を制御してもよい。
【0050】
また、前記実施例では、調整手段としての減圧弁に電磁比例減圧弁50を用いる例を説明したが、調整手段としての減圧弁は、外部油圧信号により作動するパイロット作動式の減圧弁であってもよい。
【0051】
また、前記実施例では、パイロット油圧ポンプ3から供給される圧油の供給先を切り換えるために油圧リモコン弁を用いる態様について説明したが、油圧リモコン弁の代わりに電気リモコンを用いた場合についても同様であり、電気リモコンからの電気信号を直接コントローラに入力するようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、吐出量制御機構は、ロードセンシング弁41により制御されるポンプ流量制御圧力に基づいて斜板制御装置42が作動しメイン油圧ポンプ2の斜板43の傾斜角を増減させることにより、メイン油圧ポンプ2の出力を制御する態様について説明したが、これに限らず、吐出量制御機構は電気信号によりメイン油圧ポンプ2の出力を制御できるものであってもよい。
【0053】
また、前記実施例では、二次圧パイロット管路20に調整手段としての減圧弁を設ける構成について説明したが、一次圧パイロット管路28に調整手段としての増圧機構を設けてもよい。
【0054】
また、方向切換弁の圧力流体源側圧力とアクチュエータ側圧力は、パイロット管路ではなく電気信号により入力されてもよい。
【0055】
また、アキュムレータ60には、バケットシリンダ8側の油圧回路からも蓄圧できるようにバイパス油路および電磁切換弁を設けてもよい。
【0056】
また、油圧回路に設けられるアクチュエータは、一つでもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 駆動機構
2 メイン油圧ポンプ(圧力流体源)
3 パイロット油圧ポンプ
4,5 圧力補償弁
6 バケット方向切換弁(方向切換弁)
7 アーム方向切換弁(方向切換弁)
8 バケットシリンダ(アクチュエータ)
9 アームシリンダ(アクチュエータ)
10 バケット油圧リモコン弁
11 アーム油圧リモコン弁
12 アンロード弁
13 リリーフ弁
15 タンク
16 シャトル弁
20 二次圧パイロット管路(パイロット管路)
22 油路(方向切換弁の圧力流体源側流路)
25 ヘッド側油路
26 ロッド側油路
27 一次圧パイロット管路(パイロット管路)
37 アキュムレータ
41 ロードセンシング弁(吐出量制御機構)
42 斜板制御装置(吐出量制御機構)
43 斜板
50 電磁比例減圧弁(調整手段,減圧弁)
60 アキュムレータ
61,62 電磁切換弁
63~67 バイパス油路
70 コントローラ(制御部)
80,81 圧力センサ
82 圧力センサ(圧力検出手段)
100 ショベルローダ
108 バケット
109 リフトアーム