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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20231218BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 25/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B60C13/00 E
B60C1/00 B
B32B27/40
B32B5/28 Z
B32B27/18 Z
B32B25/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020553906
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2019042217
(87)【国際公開番号】W WO2020090758
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018206101
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】浦田 智裕
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-326926(JP,A)
【文献】特表2015-507571(JP,A)
【文献】特開2017-193675(JP,A)
【文献】特開2017-105375(JP,A)
【文献】特開平10-319843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォーム層が、バリア層を介してタイヤの外層に積層されており、
前記ポリウレタンフォーム層が、ポリウレタンフォームを含み、
前記バリア層が、ゴム成分(A)としてブチルゴムを含有するゴム組成物から形成されており、
前記ゴム組成物が、イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴムの臭素化物を含有する、タイヤ。
【請求項2】
ポリウレタンフォーム層が、バリア層を介してタイヤの外層に積層されており、
前記ポリウレタンフォーム層が、ポリウレタンフォームを含み、
前記バリア層が、ゴム成分(A)としてブチルゴムを含有するゴム組成物から形成されており、
前記ゴム組成物が、層状又は板状粘土鉱物(B)を含有する、タイヤ。
【請求項3】
ポリウレタンフォーム層が、バリア層を介してタイヤの外層に積層されており、
前記ポリウレタンフォーム層が、ポリウレタンフォームを含み、
前記バリア層が、ゴム成分(A)としてブチルゴムを含有するゴム組成物から形成されており、
前記ポリウレタンフォーム層が、意匠性物質を含む、タイヤ。
【請求項4】
前記ポリウレタンフォーム層において、バインダーが前記ポリウレタンフォームに結合している、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記意匠性物質が、カーボンブラック、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択される、請求項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォームのセル径が、500μm以下であり、
前記意匠性物質が、カーボンブラック、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択される、請求項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ポリウレタンフォームのセル径が、500μm以上であり、
前記意匠性物質が、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択される、請求項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ポリウレタンフォームの通気量が、厚さ2mmにおいて30~500cc/cm/secである、請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ポリウレタンフォーム層において、バインダーが前記ポリウレタンフォームに結合しており、
前記意匠性物質が、前記バインダーを介して前記ポリウレタンフォームに担持されている、請求項3、5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ポリウレタンフォーム層において、バインダーが前記ポリウレタンフォームに結合しており、
前記バインダーが、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記カーボンブラックが、ファーネスブラックからなる群より選択される1種以上である、請求項またはに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ポリウレタンフォーム層が、意匠性物質を含み、
前記意匠性物質が、粒子を含み、当該粒子の最大径が、250μm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項13】
2以上の異なる前記ポリウレタンフォーム層が、積層されておよび/または組み合わされて、タイヤの外層に積層されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記外層が、サイドウォール部の外層である、請求項1~13のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記ゴム組成物が、層状又は板状粘土鉱物(B)と、加工性改良剤(C)又は不飽和カルボン酸の金属塩(E)の少なくとも一方と、をさらに含み、
ステアリン酸(D)を含まない、又は該ステアリン酸(D)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記加工性改良剤(C)および不飽和カルボン酸の金属塩(E)を含む、請求項15に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記加工性改良剤(C)が、グリセリン脂肪酸エステル組成物およびステアリルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項15または16に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記不飽和カルボン酸の金属塩(E)が、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩から選択される少なくとも一種である、請求項1517のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2018年10月31日に出願の日本国特許出願第2018-206101号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
サイドウォールやトレッドを含めてタイヤは、常に大気に触れており、大気中のオゾンによる劣化のため、タイヤにクラックが発生しやすいため改善が望まれている。さらに、タイヤは車両の走行中に変形を繰り返しているため、最初は微小なクラックであっても、クラックが伸展して、目に見える大きなクラックになり、タイヤの外観を損なうことがある。
【0004】
タイヤの外部表面をオゾンに対して保護するため、例えば、特許文献1では、本来親和性に乏しい、ジエン系ゴム組成物とポリウレタン間の接着に際し、ジエン系ゴム組成物表面を官能基化し、化学結合を通じて接着されたポリウレタンコーティング層を塗布により形成する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2003-535762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、タイヤのゴムから老化防止剤がポリウレタンフォーム層に移行し、製品完成後、長期間(20日程度)経過すると、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することが判明した。
【0007】
そこで、本発明は、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制したタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤは、ポリウレタンフォーム層が、バリア層を介してタイヤの外層に積層されており、
前記ポリウレタンフォーム層が、ポリウレタンフォームを含み、
前記バリア層が、ゴム成分(A)としてブチルゴムを含有するゴム組成物から形成されている、タイヤである。本発明に係るタイヤは、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制したタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0011】
本発明では、2以上の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0012】
(タイヤ)
本発明に係るタイヤは、ポリウレタンフォーム層が、バリア層を介してタイヤの外層に積層されており、
前記ポリウレタンフォーム層が、ポリウレタンフォームを含み、
前記バリア層が、ブチルゴムを含有するゴム組成物から形成されている、タイヤである。
【0013】
<バリア層>
バリア層は、タイヤゴムに含まれる老化防止剤がポリウレタンフォーム層に移行することを防ぎ、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制する働きを有する。
【0014】
・バリア層のゴム組成物
本発明のタイヤでは、バリア層は、ゴム成分(A)としてブチルゴムを含有するゴム組成物から形成されている。
【0015】
・ブチルゴム
ブチルゴム(IIR)は、特に限定されず、公知のブチルゴムを用いることができる。また、ブチルゴムは、未変性ブチルゴムでもよいし、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどの変性ブチルゴムでもよい。
【0016】
ブチルゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
例えば、ブチルゴムのハロゲン化物および非ハロゲン化物は、商品名「Exxon Butyl(商標)」(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能である。
【0018】
本発明のタイヤのバリア層のゴム組成物において、ゴム成分(A)中のブチルゴムの割合は適宜調節すればよい。ゴム成分(A)中のブチルゴムの割合は、例えば、ゴム成分(A)100質量部に対して、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、または100質量部である。ゴム成分(A)中のブチルゴムの割合は、例えば、ゴム成分(A)100質量部に対して、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、または50質量部以下である。一実施形態では、ゴム成分(A)中のブチルゴムの割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、70~100質量部である。
【0019】
・ブチルゴム以外のゴム成分
ゴム成分(A)は、ブチルゴム以外のゴム成分を含んでいてもよい。ブチルゴム以外のゴム成分としては、例えば、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンと少なくとも1種の他のコモノマーとのコポリマーおよびターポリマーなどが挙げられる。有用なコモノマーとしては、例えば、ジビニル芳香族モノマー、アルキル置換ビニル芳香族モノマー、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0020】
例示的なジビニル芳香族モノマーとしては、ビニルスチレンが挙げられる。
【0021】
例示的なアルキル置換ビニル芳香族モノマーとしては、α-メチルスチレンおよびp-メチルスチレンが挙げられる。
【0022】
上記コポリマーおよびターポリマーは、塩素化、臭素化などハロゲン化されていてもよい。一実施形態において、ハロゲン化コポリマーまたはハロゲン化ターポリマーは、p-ブロモメチルスチレンなどのモノマーに由来し得る。
【0023】
一実施形態において、本発明のタイヤのバリア層のゴム組成物は、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマー、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーの臭素化物(p-ブロモメチルスチレニルのマー単位を有するコポリマーを生ずる)およびこれらのハロゲン化物からなる群より選択される1種以上を含む。
【0024】
一実施形態において、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーは、当該コポリマーの全質量に対して、0.5~25質量%、または2~20質量%のp-メチルスチレンを含んでいてもよく、当該コポリマーの残りは、イソブチレンである。
【0025】
一実施形態において、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーは、臭素などでハロゲン化されていてもよい。ハロゲン化されている場合は、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーは、0質量%より多く10質量%以下、または0.3~7質量%のハロゲンを含有してもよい。
【0026】
一実施形態において、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマーは、当該ターポリマーの全質量に対して、95~99質量%、または96~98.5質量%のイソブチレンと、0.5~5質量%、または0.8~2.5質量%のイソプレンとを含んでいてもよく、当該ターポリマーの残りは、ビニルスチレンである。
【0027】
上記ハロゲン化物の場合、上記コポリマーまたはターポリマーの全質量に対して、0.1~10質量%、または0.3~7質量%、または0.5~3質量%のハロゲンが含まれていてもよい。
【0028】
本発明に係るタイヤは、前記ゴム組成物が、イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴム(イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマー)の臭素化物を含有することが好ましい。これにより、タイヤゴムとの接着性が高まる。
【0029】
例えば、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーのハロゲン化物および非ハロゲン化物は、商品名「Exxpro(商標)」(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能である。また、例えば、p-ブロモメチルスチレニルのマー単位を有するコポリマーは、商品名「Exxpro 3745」(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能である。また、例えば、イソブチレンと、イソプレンと、ビニルスチレンとのターポリマーのハロゲン化物および非ハロゲン化物は、商品名「Polysar Butyl(商標)」(Lanxess;Germany)として入手可能である。
【0030】
本発明のタイヤのバリア層のゴム組成物において、ゴム成分(A)中のイソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマー、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーの臭素化物およびこれらのハロゲン化物からなる群より選択される1種以上の割合は適宜調節すればよい。ゴム成分(A)中の当該割合は、例えば、ゴム成分(A)100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、または90質量部以上である。ゴム成分(A)中の当該割合は、例えば、ゴム成分(A)100質量部に対して、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、または10質量部以下である。
【0031】
一実施形態では、ゴム成分(A)中のイソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマー、イソブチレンとp-メチルスチレンとのコポリマーの臭素化物およびこれらのハロゲン化物からなる群より選択される1種以上の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20~30質量部である。
【0032】
ブチルゴム以外のゴム成分(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明のタイヤのバリア層のゴム組成物は、フィラー、オイル、ステアリン酸、架橋剤、共架橋剤などを含んでいてもよい。
【0034】
・フィラー
本発明のタイヤのバリア層のフィラーとしては、特に限定されず、公知のフィラーを適宜選択して用いることができる。フィラーとしては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0035】
フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
フィラーとして、層状又は板状粘土鉱物(B)を含んでいてもよい。
【0037】
本発明に係るタイヤは、前記ゴム組成物が、層状又は板状粘土鉱物(B)を含有することが好ましい。これにより、タイヤのゴムからの老化防止剤の移行がさらに抑えられ、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをさらに抑制することができる。
【0038】
前記層状又は板状粘土鉱物(B)は、平均アスペクト比が2~200であることが好ましい。層状又は板状粘土鉱物(B)の平均アスペクト比が2以上であれば、層状又は板状粘土鉱物粒子の面が配向し、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをさらに抑制できる。また、層状又は板状粘土鉱物(B)の平均アスペクト比が200以下であれば、ゴム組成物の混練時に、層状又は板状粘土鉱物(B)の分散がより均一に行われることとなり、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをさらに抑制できる。好適な実施形態では、前記平均アスペクト比は、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制する観点から、3~150、5~100、5~50、または10~30である。前記平均アスペクト比は、平均長径xと平均厚みyより、x/yとして求めたものである。
【0039】
好適な実施形態では、前記層状又は板状粘土鉱物(B)の平均粒径(Malvern Methodにより測定)は、50μm以下、0.2~30μm、0.2~5μm、または1.5~4.5μmである。層状又は板状粘土鉱物(B)の平均粒径が50μm以下であれば、ゴム組成物の耐屈曲性が良好となる。
【0040】
前記層状又は板状粘土鉱物(B)は、天然品、合成品のいずれも使用することができる。層状又は板状粘土鉱物(B)としては、例えば、カオリン質クレー、セリサイト質クレー、焼成クレー、表面処理を施したシラン改質クレー等のクレー;モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;マイカ、長石、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク及び膨潤性マイカ等が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制する観点から、クレー、マイカ、タルク及び長石が好ましく、クレー、マイカ及びタルクが更に好ましく、クレー及びタルクがより一層好ましく、クレーが特に好ましい。また、前記クレーの中でも、カオリン質クレーが特に好ましい。これら層状又は板状粘土鉱物(B)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
好適な実施形態では、バリア層のゴム組成物中の、前記層状又は板状粘土鉱物(B)の含有量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制する観点から、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、または25質量部以上であり、また、ゴム組成物の混練における作業性(混練し易さ)を向上させる観点から、100質量部以下、80質量部以下、または60質量部以下である。
【0042】
本発明のタイヤのバリア層のゴム組成物におけるフィラーの配合量は、特に限定されず、適宜調節すればよく、例えば、ゴム成分(A)100質量部に対して、5~100質量部である。バリア層のゴム組成物におけるフィラーの配合量は、作業性およびバリア層のゴム組成物をシート化する観点から、ゴム成分(A)100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましい。
【0043】
本発明のタイヤのバリア層のゴム組成物は、加工性改良剤(C)をさらに含んでいてもよい。加工性改良剤(C)は、混練設備の金属ローター等の金属部品への密着を抑制して、ゴム組成物の加工性を改良する作用を有する配合剤である。
【0044】
加工性改良剤(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
好適な実施形態では、バリア層のゴム組成物中の、加工性改良剤(C)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1~20質量部、または0.1~10質量部である。加工性改良剤(C)の含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の金属部品への密着を更に抑制でき、また、20質量部以下であれば、ゴム組成物の加硫後の物性(貯蔵弾性率等)への影響が小さい。
【0046】
加工性改良剤(C)としては、グリセリン脂肪酸エステル組成物及びステアリルアミン誘導体が好ましい。加工性改良剤(C)として、グリセリン脂肪酸エステル組成物及び/又はステアリルアミン誘導体を使用することで、ゴム組成物の金属部品への密着を更に抑制できる。
【0047】
本発明に係るタイヤは、前記加工性改良剤(C)が、グリセリン脂肪酸エステル組成物およびステアリルアミン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これにより、ゴム組成物の金属部品への密着を更に抑制できる。
【0048】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリン脂肪酸エステルを含む組成物である。該グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの3つのOH基の少なくとも1つと、脂肪酸のCOOH基とがエステル結合してなる化合物である。
【0049】
前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン1分子と脂肪酸1分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸モノエステル(モノグリセライド)でも、グリセリン1分子と脂肪酸2分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸ジエステル(ジグリセライド)でも、グリセリン1分子と脂肪酸3分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸トリエステル(トリグリセライド)でもよいし、これらの混合物でもよい。前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸モノエステルが好ましい。
【0050】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物としては、1)グリセリン脂肪酸モノエステル単独、2)グリセリン脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸ジエステルとの混合物、3)更に、上記1)又は2)に、グリセリン脂肪酸トリエステルやグリセリンを含んでいるものが好ましい。
【0051】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリン脂肪酸モノエステルを含むことが好ましい。グリセリン脂肪酸エステル組成物が、グリセリン脂肪酸モノエステルを含む場合、ゴム組成物の金属部品への密着を更に抑制できる。好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、グリセリン脂肪酸モノエステルの含有量は、35~100質量%、50~100質量%、60~99質量%、または85~98質量%である。当該含有量が50~100質量%の場合、ゴム組成物の加工性を更に向上させることができ、製造上の観点からも好ましい。
【0052】
好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、グリセリン脂肪酸ジエステルの含有量は、ゴム組成物の未加硫粘度の低減、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制することと耐屈曲性改良の観点から、65質量%以下、55質量%以下、または50質量%以下である。
【0053】
好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、グリセリン脂肪酸トリエステルの含有量は、ゴム組成物の加硫後の物性(貯蔵弾性率の低下等)への影響を小さくする観点から、10質量%以下、5質量%以下、または3質量%以下であり、また、生産性の観点から、0.3質量%以上であってもよい。
【0054】
好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、ゴム組成物の加工性、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制する観点から、炭素数が8~28、8~22、10~18、12~18、14~18、または16~18である。炭素数8以上の脂肪酸は、前記ゴム成分(A)との親和性が高く、グリセリン脂肪酸エステル組成物のブルームが起こり難い。また、炭素数28以下の脂肪酸は、グリセリン脂肪酸エステル組成物の製造コストを低減できる。
【0055】
前記脂肪酸は、直鎖状でも、分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、前記脂肪酸は、飽和脂肪酸でも、不飽和脂肪酸でもよい。前記脂肪酸は、飽和脂肪酸であることが好ましい。前記脂肪酸は、特には、直鎖状飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0056】
前記脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラギン酸、アラキドン酸、ベヘン酸等が挙げられる。脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましい。
【0057】
また、前記グリセリン脂肪酸エステルとして、具体的には、ラウリン酸モノグリセライド、ミリスチン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドが好ましく、パルミチン酸モノグリセライド及びステアリン酸モノグリセライドがより好ましい。
【0058】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物の製造の際に、未反応原料としてグリセリンが残る場合がある。好適な実施形態では、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、グリセリンの含有量は、耐熱性低下抑制の観点から、10質量%以下、5質量%以下、または3質量%以下であり、また、生産性の観点から、0.3質量%以上であってもよい。
【0059】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物は、グリセリンと脂肪酸から製造するエステル化法と、油脂等とグリセリンとを原料としたエステル交換法等により製造することができ、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノエステル量をコントロールしたものを製造する方法としては、下記1)~3)の各方法等が挙げられる。
【0060】
1)上記エステル化法やエステル交換法等において、脂肪酸成分とグリセリン成分の仕込み比率を変えることで、エステル化の平衡組成を制御する方法。ここで、グリセリンについては、さらに蒸留により取り除くことができる。但し、反応特性上、グリセリン脂肪酸モノエステル量の上限は約65質量%前後と考えられる。
【0061】
2)エステル化法やエステル交換法で得られた反応生成物をさらに分子蒸留等により分別留去し、モノエステル純度の高い(通常95質量%以上)グリセリン脂肪酸エステル組成物を取り出す方法。
【0062】
3)上記2)の手法で得たグリセリン脂肪酸エステル組成物を、上記1)の手法で得られるグリセリン脂肪酸エステル組成物と任意の割合で混合することにより、およそ65~95質量%程度のモノエステルを含有するグリセリン脂肪酸エステル組成物を得る方法。
【0063】
上記原料の油脂や脂肪酸等として天然物由来のものを用いることにより、環境負荷等も低減したグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。
【0064】
脂肪酸の原料としては、植物油脂、動物油脂等の油脂を加水分解して得られたもの、及び、それらの油脂又は加水分解脂肪酸を硬化、反硬化して得られたものが使用できる。また、油脂原料としては、特に限定されないが、植物油脂、動物油脂が用いられ、具体的には、パーム油、大豆油、オリーブ油、綿実油、ヤシ油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油等を用いることができる。
【0065】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物としては、モノエステル量がコントロールされた市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、ステアリン酸モノグリセライド(花王社製のレオドールMS-60、エキセルS-95等)等が挙げられる。
【0066】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物中のモノグリセライド含有量(グリセリン脂肪酸モノエステル含有量)とは、GPC分析(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記式(I)に従って求めたものをいい、グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライド(グリセリン脂肪酸ジエステル)及びトリグリセライド(グリセリン脂肪酸トリエステル)の合計に対するモノグリセライドのGPC分析における面積割合を意味する。
モノグリセライド含有量(面積%)=MG/(G+MG+DG+TG)×100 (I)
上記式(I)中、GはGPCのグリセリン面積、MGはGPCのモノグリセライド面積、DGはGPCのジグリセライド面積、TGはGPCのトリグリセライド面積である。
なお、GPCの測定条件は、下記の通りである。
【0067】
<GPCの測定条件>
GPCの測定は、下記測定装置を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を0.6mL/分の流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させ、そこにTHFに溶解した1質量%の試料溶液10μLを注入して測定を行う。
標準物質:単分散ポリスチレン
検出器:RI-8022(東ソー社製)
測定装置:HPLC-8220 GPC(東ソー社製)
分析カラム:TSK-GEL SUPER H1000 2本及びTSK-GEL SUPER H2000 2本を直列に連結(東ソー社製)
【0068】
同様に、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のジグリセライド含有量は、グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライド及びトリグリセライドの合計に対するジグリセライドのGPC分析における面積割合を意味し、グリセリン脂肪酸エステル組成物中のトリグリセライド含有量は、グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライド及びトリグリセライドの合計に対するトリグリセライドのGPC分析における面積割合を意味する。
【0069】
前記モノグリセライド含有量をコントロールしたグリセリン脂肪酸エステル組成物としては、例えば、脂肪酸の炭素数8のカプリル酸グリセリル含有組成物、脂肪酸の炭素数10のデカン酸グリセリル含有組成物、脂肪酸の炭素数12のラウリン酸グリセリル含有組成物、脂肪酸の炭素数14のミリスチン酸グリセリル含有組成物、脂肪酸の炭素数16のパルミチン酸グリセリル含有組成物、脂肪酸の炭素数18のステアリン酸グリセリル含有組成物、脂肪酸の炭素数22のベヘン酸グリセリル含有組成物、脂肪酸の炭素数28のモンタン酸グリセリル含有組成物等が挙げられ、これらの中でも、ラウリン酸グリセリル含有組成物、パルミチン酸グリセリル含有組成物、ステアリン酸グリセリル含有組成物が好ましい。これらのモノエステル量をコントロールしたグリセリン脂肪酸エステル組成物は、1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0070】
前記グリセリン脂肪酸エステル組成物は、好ましくは、グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステルが、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであって、該グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸に対して10~90質量%であり、さらにモノエステル成分をグリセリン脂肪酸エステルに対し50~100質量%含むことが好ましい。ここで、脂肪酸成分とは、アルキル炭素数に加えその立体配置と結合状態において同一である脂肪酸ごと、即ち立体異性体ごとに一成分と考える。例えば、同じ炭素数18の脂肪酸でも、n-1-オクタデカン酸(一般的な直鎖ステアリン酸)、2-オクチル-1-デカン酸(2位分岐のステアリン酸)、シス-9-オクタデセン酸(一般的なオレイン酸)、シス,シス-9,12-オクタデカジエン酸(一般的なリノール酸)等で別々の成分として考える。
【0071】
好適な実施形態では、前記2種以上の脂肪酸の質量比率は、最も多い脂肪酸成分でも全脂肪酸中に10~90質量%であり、ゴム組成物の加工性を更に向上させる観点から、15~80質量%、20~70質量%、または30~60質量%である。
【0072】
また、前記グリセリン脂肪酸エステルの原料となる2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分と2番目に多い脂肪酸成分は、一方が炭素数16の脂肪酸で他方が炭素数18の脂肪酸であることがより好ましい。好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステルがグリセリンと炭素数が16の脂肪酸及び炭素数が18の脂肪酸とのエステルである場合、炭素数が16の脂肪酸と炭素数が18の脂肪酸との質量比(炭素数16の脂肪酸/炭素数18の脂肪酸)は、90/10~10/90の範囲、80/20~20/80の範囲、または75/25~25/75の範囲である。炭素数が16の脂肪酸と炭素数が18の脂肪酸との質量比がこの範囲であれば、ゴム組成物の加工性を更に向上させることができる。
【0073】
前記脂肪酸成分の含有量(質量%)の測定は、グリセリン脂肪酸エステルに対して、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法に従ってけん化及びメチルエステル化を行い、GPC分析により測定する。
【0074】
また、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物としては、グリセリン脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸ジエステルとを含み、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、グリセリン脂肪酸モノエステルの含有量が35質量%以上であるものや、グリセリン脂肪酸エステル組成物中の、グリセリン脂肪酸ジエステルの含有量が65質量%以下であるものも好ましい。このようなグリセリン脂肪酸エステル組成物は、ゴム組成物の耐屈曲性を向上させることができる。
【0075】
好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、ゴム組成物の加工性(金属部品への密着抑制)、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制すること及び耐屈曲性の観点から、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、または3質量部以上であり、ゴム組成物の加硫後の物性(貯蔵弾性率等)への影響を小さくする観点から、20質量部以下、15質量部以下、12質量部以下、11質量部以下、または10質量部以下である。別の好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.5~20質量部、1~15質量部、2~12質量部、3~11質量部、3~10質量部である。
【0076】
好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量は、前記層状又は板状粘土鉱物(B)100質量部に対して、ゴム組成物の加工性(金属部品への密着抑制)の観点から、0.1質量部以上、0.25質量部以上、0.5質量部以上、または1質量部以上であり、ゴム組成物の加硫後の物性(貯蔵弾性率等)への影響を小さくする観点から、20質量部以下、15質量部以下、12質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、または7質量部以下である。別の好適な実施形態では、前記グリセリン脂肪酸エステル組成物の含有量は、前記層状又は板状粘土鉱物(B)100質量部に対して、0.1~20質量部、0.25~15質量部、0.25~10質量部、0.5~8質量部、または1~7質量部である。
【0077】
好適な実施形態では、本発明のゴム組成物における、グリセリン脂肪酸トリエステルの含有量は、ゴム組成物の加硫後の物性(貯蔵弾性率等)への影響を小さくする観点から、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.5質量部以下、0.3質量部以下、または0.1質量部以下であり、また、生産性の観点から0.01質量部以上であってもよい。
【0078】
好適な実施形態では、本発明のゴム組成物における、グリセリンの含有量は、耐熱性低下抑制の観点から、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.5質量部以下、0.3質量部以下、または0.1質量部以下であり、また、生産性の観点から0.01質量部以上であってもよい。
【0079】
前記ステアリルアミン誘導体は、ステアリルアミンの誘導体であり、好ましくは、ステアリルアミンのアミノ基の水素を、アルキル基で置換した化合物である。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0080】
前記ステアリルアミン誘導体の例として、具体的には、ジメチルステアリルアミン、ジエチルステアリルアミン、ジプロピルステアリルアミン、エチルメチルステアリルアミン、エチルプロピルステアリルアミン、メチルプロピルステアリルアミン等が挙げられ、これらの中でも、ジメチルステアリルアミンが好ましい。
【0081】
好適な実施形態では、前記ステアリルアミン誘導体の含有量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1~10質量部、0.2~5質量部、または0.5~2質量部である。ステアリルアミン誘導体の含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の金属部品への密着を更に抑制でき、また、10質量部以下であれば、ゴム組成物の加硫後の物性(貯蔵弾性率等)への影響が小さい。
【0082】
一実施形態では、バリア層のゴム組成物は、ステアリン酸(D)を含まない、又は該ステアリン酸(D)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以下である。ステアリン酸(D)を含まない又はその含有量を0.1質量部以下とすることで、前記層状又は板状粘土鉱物(B)の凝集を抑制でき、層状又は板状粘土鉱物(B)の分散性が向上する結果として、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより抑制する。
【0083】
好適な実施形態では、ステアリン酸(D)の含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.05質量部以下、または0.02質量部以下である。別の好適な実施形態では、ステアリン酸(D)を含まない。ステアリン酸(D)の含有量が少ない程、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより抑制し、バリア層がサイドウォールゴムに接着しやすくなり、また、ゴム組成物がステアリン酸(D)を含まない場合、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより一層抑制し、バリア層がサイドウォールゴムに接着しやすくなる。理論に拘束されることを望むものではないが、ステアリン酸(D)を含まない又はその含有量を0.1質量部以下とすることで、ゴム組成物のpHが高くなり、pHが高くなることで、層状又は板状粘土鉱物(B)が凝集し難くなるものと推測される。
【0084】
本発明に係るタイヤは、前記ゴム組成物が、層状又は板状粘土鉱物(B)と、加工性改良剤(C)又は不飽和カルボン酸の金属塩(E)の少なくとも一方と、をさらに含み、
ステアリン酸(D)を含まない、又は該ステアリン酸(D)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以下であることが好ましい。これにより、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより抑制できると共に、金属部品への密着性が低く、また、バリア層がサイドウォールゴムに接着しやすくなる。
【0085】
本発明に係るタイヤは、前記加工性改良剤(C)および不飽和カルボン酸の金属塩(E)を含むことが好ましい。これにより、ゴム組成物の金属部品への密着を更に抑制できる。
【0086】
不飽和カルボン酸の金属塩(E)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
前記不飽和カルボン酸の金属塩(E)を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸等のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0088】
不飽和カルボン酸の金属塩(E)は、アクリル酸金属塩およびメタクリル酸金属塩からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これにより、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより抑制できる。
【0089】
また、前記不飽和カルボン酸の金属塩(E)を構成する金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、カドミウム等が挙げられる。これらの中でも、金属としては、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムが好ましく、亜鉛が特に好ましい。即ち、前記不飽和カルボン酸の金属塩(E)としては、不飽和カルボン酸亜鉛が好ましい。
【0090】
前記不飽和カルボン酸の金属塩(E)として、具体的には、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、モノアクリル酸亜鉛、モノメタクリル酸亜鉛、ジアクリル酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、モノアクリル酸マグネシウム、モノメタクリル酸マグネシウム等が挙げられる。
【0091】
不飽和カルボン酸の金属塩(E)が、ジメタクリル酸亜鉛およびモノメタクリル酸亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。ゴム組成物がジメタクリル酸亜鉛及び/又はモノメタクリル酸亜鉛を含むことで、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより抑制できる。
【0092】
好適な実施形態では、前記不飽和カルボン酸の金属塩(E)の含有量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1~3.8質量部、0.2~3質量部、または0.3~2質量部である。当該含有量が、0.1質量部以上であれば、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより抑制でき、また、3.8質量部以下であれば、ゴム組成物のゴム焼け(スコーチ)を十分に抑制できる。
【0093】
好適な実施形態では、前記層状又は板状粘土鉱物(B)の含有量に対する前記不飽和カルボン酸の金属塩(E)の含有量の割合は、0.1~38質量%、0.2~30質量%、0.5~10質量%である。当該割合が0.1~38質量%の範囲であれば、前記層状又は板状粘土鉱物(B)と不飽和カルボン酸の金属塩(E)が効率的にカップリングすることができ、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することをより抑制できる。
【0094】
バリア層における老化防止剤の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.2質量部以下が好ましい。
【0095】
バリア層の形状と寸法は特に限定されず、ポリウレタンフォーム層の形状と寸法に応じて適宜調節すればよい。バリア層の面積は、ポリウレタンフォーム層の面積と同じでもよいし、ポリウレタンフォーム層の面積より大きくてもよい。ポリウレタンフォーム層の平面の端部からの層内への老化防止剤の移行を抑制するために、バリア層の面積がポリウレタンフォーム層の面積より大きく、ポリウレタンフォーム層がバリア層の面内に位置することが好ましい。
【0096】
バリア層の厚さは、特に限定されず、適宜調節すればよい。バリア層の老化防止剤移行抑制とバリア層の軽量化の観点から、バリア層の厚さは、0.1~2mmであることが好ましく、0.3~1mmであることがより好ましい。
【0097】
バリア層の形成方法は、加硫して形成すればよく、バリア層をポリウレタンフォーム層とタイヤの外層との間に配置する方法は、特に限定されず、例えば、以下の(1)~(6)の方法などが挙げられる。
(1)ポリウレタンフォーム層と未加硫のバリア層のゴム組成物とを、成型した未加硫のタイヤの外側に配置して加硫する方法;
(2)ポリウレタンフォーム層と未加硫のバリア層のゴム組成物とを、加硫したタイヤの外側に配置して加硫する方法;
(3)ポリウレタンフォーム層と未加硫のバリア層のゴム組成物との積層体を予め加硫し、当該加硫した積層体を、成型した未加硫のタイヤの外側に配置して加硫する方法;
(4)ポリウレタンフォーム層と未加硫のバリア層のゴム組成物との積層体を予め加硫し、当該加硫した積層体を、加硫したタイヤの外側に配置して加硫する方法;
(5)ポリウレタンフォーム層と加硫したバリア層のゴム組成物とを、成型した未加硫のタイヤの外側に配置して加硫する方法;および
(6)ポリウレタンフォーム層と加硫したバリア層のゴム組成物とを、加硫したタイヤの外側に配置して加硫する方法。
【0098】
上記(1)~(6)の方法では、ポリウレタンフォーム層が、バリア層を介してタイヤの外層に積層されるように配置する。また、上記(2)~(6)の方法では、各構成間に、接着剤やセメントゴムを挟んでもよい。接着性や再加硫による劣化抑制の観点では、上記(1)が好ましい。
【0099】
<ポリウレタンフォーム層>
ポリウレタンフォーム層は、ポリウレタンフォームを含む層である。そして、ポリウレタンフォームは、ウレタンが分子鎖中に不飽和結合を有しないため、ポリウレタンフォーム層は、タイヤに耐オゾンクラック性を付与する働きを有する。
【0100】
・ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、特に限定されず、公知のポリウレタンフォームを用いることができる。また、ポリウレタンフォームは、例えば、発泡剤などによってポリウレタン樹脂を発泡成形したものを用いることができる。
【0101】
ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとから形成されるウレタン樹脂などが挙げられる。
【0102】
ポリオールとしては、例えば、低分子ポリオール、高分子ポリオールなどが挙げられる。ポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、エリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0104】
高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオールなどが挙げられる。
【0105】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルなどのポリオキシアルキレン-ポリオールなどが挙げられる。
【0106】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートポリオール、ポリブチレンアジペートポリオール、ポリエチレン・ブチレンアジペートポリオール、ポリエチレンテレフタレートポリオールなどが挙げられる。
【0107】
低分子ポリオール、高分子ポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、o-トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアンート、リジンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
ポリウレタンフォームは、軟質フォーム、半硬質フォームまたは硬質フォームのいずれでもよい。
【0110】
ポリウレタンフォームの気泡構造は、特に限定されず、独立気泡構造、連続気泡構造、または独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造(以下、単に「混在気泡構造」という)のいずれでもよい。ポリウレタンフォームの気泡構造は、バインダーおよびカーボンブラックなどの物質の含浸性の観点から、独立気泡構造がより好ましい。
【0111】
ポリウレタンフォームのセル径は、適宜調節すればよく、例えば、250μm以上、10mm以下である。セル径は、JIS K6400-1:2004附属書1に従いセル数(個/25mm)を測定後に算出する。
【0112】
一実施形態では、ポリウレタンフォームのセル径は、10mm以下、5mm以下、3mm以下、1mm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、または100μm以下である。別の実施形態では、ポリウレタンフォームのセル径は、250μm以上、300μm以上、350μm以上、400μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上、900μm以上、1mm以上、3mm以上、または5mm以上である。
【0113】
ポリウレタンフォームの通気量は、適宜調節すればよく、例えば、厚さ2mmにおいて30~500cc/cm/sec、好ましくは30~200cc/cm/sec、より好ましくは60~150cc/cm/secである。また、通気量の測定は、JIS K6400-7:2012に従い行う。一実施形態では、ポリウレタンフォームの通気量(cc/cm/sec)は、30以上または60以上であり、500以下、200以下、150以下または100以下である。
【0114】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォームの通気量が、厚さ2mmにおいて30~500cc/cm/secであることが好ましい。通気量が30cc/cm/sec以上であることにより、バインダーおよび粒子の含浸性が高まり、一方、通気量が500cc/cm/sec以下であることにより、タイヤとしての耐クラック性のバランスも向上する。
【0115】
ポリウレタンフォームの厚さは、通常、ポリウレタンフォーム層の厚さと実質的に同じまたは同じである。ポリウレタンフォームの厚さは、適宜調節すればよく、例えば、0.5~50mm、好ましくは1~20mmである。
【0116】
ポリウレタンフォームは、市販品を用いてもよい。ポリウレタンフォームの市販品としては、例えば、ブリヂストンケミテック社製の商品名「エバーライト(登録商標)HZCD」、「エバーライト(登録商標)HZ」、「エバーライト(登録商標)CD」、「エバーライト(登録商標)HR」、「エバーライト(登録商標)ZC」などの「エバーライト(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。
【0117】
・バインダー
【0118】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォーム層において、バインダーが前記ポリウレタンフォームに結合していることが好ましい。これによって、ポリウレタンフォーム層の耐湿熱性が向上し、タイヤのツヤが保たれる。
【0119】
バインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダーを用いることができる。バインダーとしては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴムなどが挙げられる。バインダーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸-スチレン共重合体樹脂、アクリル酸-酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。
【0121】
一実施形態では、バインダーは、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂およびフッ素系樹脂からなる群より選択される1種以上である。
【0122】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォーム層において、バインダーが前記ポリウレタンフォームに結合しており、前記バインダーが、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
これにより、タイヤの外観がより向上する。
【0123】
バインダーを用いる場合、バインダーの溶液に後述する意匠性物質を組み合わせた材料、例えば、アクリル樹脂系塗料などを用いてもよい。
【0124】
バインダーの量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、バインダーの量は、ポリウレタンフォーム100質量部に対して、12~90質量部である。
【0125】
ポリウレタンフォームにバインダーを結合させる方法は、特に限定されず、適宜選択すればよい。ポリウレタンフォームの発泡成形前の発泡原液にバインダーを混合して、発泡成形することでポリウレタンフォームにバインダーを結合させてもよいし、発泡成形後のポリウレタンフォームにバインダーを接触させて、ポリウレタンフォームにバインダーを結合させてもよい。
【0126】
発泡成形後のポリウレタンフォームにバインダーを接触させる場合、例えば、シート状、円盤状などの任意の形状の発泡成形後のポリウレタンフォームに圧力をかけて圧縮して、その圧縮したポリウレタンフォームをバインダーの溶液に浸漬し、バインダーの溶液中で圧力を解除してポリウレタンフォームを膨張させて、次いで乾燥することによって、ポリウレタンフォームのセルにバインダーが含浸して、バインダーをポリウレタンフォーム(例えば、セルの壁面など)に結合させることができる。あるいは、例えば、シート状、円盤状などの任意の形状のポリウレタンフォームをバインダーの溶液に浸漬し、浸漬中のポリウレタンフォームに任意に圧力の適用と解除を1回または複数回行い、ポリウレタンフォームのセルにバインダーを含浸させて接触させ、次いで乾燥することでバインダーをポリウレタンフォーム(例えば、セルの壁面など)に結合させることができる。
【0127】
・意匠性物質
本発明において、意匠性物質は、タイヤの外観ないし意匠性の向上に寄与し得る物質をいう。
【0128】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォーム層が、意匠性物質を含むことが好ましい。これにより、タイヤの意匠性が高まる。
【0129】
本発明において、「ポリウレタンフォーム層が、意匠性物質を含む」とは、ポリウレタンフォーム層が意匠性物質を含めばよく、例えば、前述したポリウレタンフォームの発泡前の発泡原液に意匠性物質を添加して発泡成形して得られたポリウレタンフォーム層が、ポリウレタンフォーム層の少なくとも一部(例えば、ポリウレタンフォームの表面、セル内など)に意匠性物質を含む態様と、発泡後のポリウレタンフォームに意匠性物質を接触させることでポリウレタンフォーム層が、ポリウレタンフォーム層の少なくとも一部(例えば、ポリウレタンフォームの表面、セル内など)に意匠性物質を含む態様との両方を含む。さらに、後者の態様の場合、ポリウレタンフォームの少なくとも一部に意匠性物質が接触していればよく、例えば、ポリウレタンフォームのセル内にバインダーを介して意匠性物質が担持されていてもよいし、ポリウレタンフォームのセル内にバインダーを介さずに意匠性物質が担持されていてもよい。
【0130】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォーム層において、バインダーが前記ポリウレタンフォームに結合しており、前記意匠性物質が、前記バインダーを介して前記ポリウレタンフォームに担持されていることが好ましい。これにより、タイヤの優れた外観が、より長期間維持される。
【0131】
意匠性物質を、バインダーを介してポリウレタンフォームに担持させるためには、例えば、前述したように、発泡成形後のポリウレタンフォームに圧力をかけて圧縮して、その圧縮したポリウレタンフォームを、バインダーと意匠性物質を含む溶液に浸漬し、その溶液中で圧力を解除してポリウレタンフォームを膨張させて、次いで乾燥する方法や、発泡成形後のポリウレタンフォームに、意匠性物質を混合したバインダーの溶液を塗布して乾燥する方法などが挙げられる。
【0132】
意匠性物質としては、タイヤの外観ないし意匠性の向上に寄与する成分であれば特に限定されない。意匠性物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
本発明に係るタイヤは、前記意匠性物質が、カーボンブラック、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択されることが好ましい。これにより、タイヤの外観がより向上する。
【0134】
・カーボンブラック
意匠性物質としてカーボンブラックを用いると、経年によるポリウレタンフォーム層の変色、例えば黄色への変色を抑制してタイヤが黒色である状態を長期にわたって維持することができ、また、タイヤの外層に積層したポリウレタンフォーム層に微小なクラックが生じたとしても、クラックを目立ちにくくするため、タイヤの外観に優れる。なお、本発明では、カーボンブラックは、顔料に含めないものとする。
【0135】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードなどが挙げられる。
【0136】
本発明に係るタイヤは、前記カーボンブラックが、ファーネスブラックからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これにより、耐クラック性を高いレベルで保持しながら、タイヤの外観が向上する。
【0137】
意匠性物質としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックの粒子径は、特に限定されず、適宜調節すればよく、例えば、10~400nmである。
【0138】
意匠性物質としてカーボンブラックを用いる場合、ポリウレタンフォームのセル径は、500μm以下であることが好ましい。これにより、ポリウレタンフォームの耐黄変性と耐オゾンクラック性をより高めることができる。意匠性物質としてカーボンブラックを用いる場合、ポリウレタンフォームのセル径は、450μm以下、400μm以下、または300μm以下であることがより好ましい。
【0139】
・顔料
意匠性物質として顔料を用いると、ポリウレタンフォーム層の色を様々な色に設定することができるため、タイヤの意匠性がより高まる。
【0140】
顔料としては、特に限定されず、公知の顔料を用いることができる。顔料は、例えば、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。
【0141】
無機顔料としては、例えば、亜鉛華、亜鉛末、亜鉛化鉛、アルミニウム顔料、一酸化鉛、雲母状酸化鉄顔料、塩基性クロム酸鉛、塩基性炭酸鉛、鉛丹、鉛白、黄鉛、オーカー、カオリン、クレー、群青、黒鉛、ご粉、紺青、酸化鉄顔料、酸化鉄粉、シアナミド鉛、重質炭酸カルシウム、ジンククロメート、タルク、地の粉、沈降炭酸カルシウム、沈降硫酸バリウム、鉄黄、鉄黒、との粉、二酸化チタン、白亜、バライト粉、べんがら、リサージなどが挙げられる。
【0142】
有機顔料としては、例えば、溶性アゾレッド、モノアゾイエロー、モノアゾレッド、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、縮合アゾ顔料などのアゾ系顔料;銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、コバルトフタロシアニンブルーなどのフタロシアニン系顔料などが挙げられる。
【0143】
顔料の粒子径は、特に限定されず、適宜調節すればよく、例えば50~180nmである。
【0144】
・金属微粒子
意匠性物質として金属微粒子を用いると、例えば、ポリウレタンフォーム層が、メタクリックカラーを呈色したり、厚さによって色調を変化させたりすることができるため、タイヤの意匠性がより高まる。
【0145】
金属微粒子の金属としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、鉄、亜鉛、チタン、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスニウムなどが挙げられる。
【0146】
金属微粒子としては、例えば、特開2017-128469号公報、国際公開第2013/039180号公報などに記載の金属ナノ粒子などを用いてもよい。
【0147】
・蓄光性粉末
意匠性物質として蓄光性粉末を用いると、例えば、夜間などにポリウレタンフォーム層が発光するルミネセンス現象を発現することができるため、タイヤの意匠性がより高まる。
【0148】
蓄光性粉末としては、特に限定されず、公知の蓄光性粉末を用いることができる。蓄光性粉末としては、例えば、組成式:SrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、SrAl:Eu,Dy+SrAl1425:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy+CaAl:Eu,Nd、CaAl:Eu,Nd、ZnS:Cu,Mn,Co、ZnS:Cuなどが挙げられる。
【0149】
蓄光性粉末の市販品としては、例えば、根本特殊化学社製のGシリーズなどの薄黄緑発光色顔料、BGシリーズなどのブルーグリーン発光色顔料などが挙げられる。
【0150】
・蛍光性粉末
意匠性物質として蛍光性粉末を用いると、例えば、紫外線によってポリウレタンフォーム層が発光するルミネセンス現象を発現することができるため、タイヤの意匠性がより高まる。さらに、明け方、夕暮れ、曇り、霧、雨天など可視光線の弱い状況下でも、蛍光性粉末は紫外線で発光するため視認性に優れ、歩行者や他の車のドライバーなどからの視認性が高まり、安全性の向上にもつながる。
【0151】
蛍光性粉末としては、特に限定されず、公知の蛍光性粉末を用いることができる。蛍光性粉末としては、例えば、特開2011-140585号公報、特開2005-314540号公報に記載の蛍光顔料などが挙げられる。
【0152】
・再帰反射粒子
意匠性物質として再帰反射粒子を用いると、例えば、光源からポリウレタンフォーム層に入射する光を光源に対して反射することができるため、タイヤの意匠性がより高まる。
【0153】
再帰反射粒子としては、特に限定されず、公知の再帰反射粒子を用いることができる。再帰反射粒子としては、例えば、チタンバリウム系ガラスなどが挙げられる。
【0154】
再帰反射粒子の市販品としては、例えば、ユニチカ社製の商品名「UB-052NH」、「UB-12NH」、「UB-23NH」、「UB-34NH」、「UB-45NH」などのUBシリーズなどが挙げられる。
【0155】
・カラーフロップ性粒子
本発明において、カラーフロップ性粒子とは、角度や距離によって色調を変化させる性質を有する粒子をいう。意匠性物質としてカラーフロップ性粒子を用いると、例えば、タイヤを見る角度やタイヤからの距離によって色調が変化するため、タイヤの意匠性がより高まる。
【0156】
カラーフロップ性粒子としては、特に限定されず、公知のカラーフロップ性粒子を用いることができる。カラーフロップ性粒子としては、例えば、特開2012-031232号公報などに記載の干渉金属顔料などが挙げられる。
【0157】
カラーフロップ性粒子の市販品としては、例えば、東洋アルミニウム社製の干渉色アルミニウム顔料「クロマシャイン(登録商標)」などが挙げられる。
【0158】
・クロミック材料
本発明において、クロミック材料とは、例えば、温度、水分、光(例えば紫外線)などの外部刺激によって色が変化ないし発色する材料をいう。意匠性物質としてクロミック材料を用いると、例えば、上述した外部刺激によって色が変化ないし発色するため、タイヤの意匠性がより高まる。
【0159】
クロミック材料としては、特に限定されず、公知のクロミック材料を用いることができる。クロミック材料としては、例えば、特開2009-019195号公報に記載の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料などの示温材料(サーモクロミック材料)、特開2010-208040号公報に記載の低屈折率顔料と透明性金属光沢顔料などのハイドロクロミック材料、特開2004-255041号公報に記載の有機フォトクロミック化合物などのフォトクロミック材料などが挙げられる。
【0160】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォームのセル径が、500μm以下であり、
前記意匠性物質が、カーボンブラック、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択されることが好ましい。
これにより、タイヤの外観がより向上する。
【0161】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォームのセル径が、500μm以上であり、
前記意匠性物質が、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択されることが好ましい。
これにより、タイヤの意匠性がより高まる。
【0162】
一実施形態では、前記ポリウレタンフォームのセル径が、500μmより大きく、
前記意匠性物質が、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択される。
【0163】
本発明に係るタイヤは、前記ポリウレタンフォーム層が、意匠性物質を含み、前記意匠性物質が、粒子を含み、当該粒子の最大径が、250μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
これにより、タイヤの外観が向上する。
【0164】
意匠性物質が含む粒子は、カーボンブラック、顔料、金属微粒子、蓄光性粉末、蛍光性粉末、再帰反射粒子、カラーフロップ性粒子およびクロミック材料からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0165】
意匠性物質の量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、意匠性物質の量は、バインダー100質量部に対して、1~100質量部、または5~435質量部である。
【0166】
<その他の成分>
ポリウレタンフォーム層は、上述した成分以外に、触媒、消泡剤、発泡剤、界面活性剤、硬化剤などを、本発明の趣旨に反しない範囲で含んでいてもよい。
【0167】
(ポリウレタンフォーム層の調製方法)
ポリウレタンフォーム層の調製方法は、特に限定されず、例えば、ポリオールおよびポリイソシアネート、ならびに任意に、触媒、消泡剤、発泡剤、意匠性物質、バインダーなどを有する発泡原液を発泡成形してポリウレタンフォームを得ることができる。発泡原液を発泡成形してポリウレタンフォームを得る方法は、特に限定されず、例えば、特開2011-079232号公報に記載の方法など、公知の方法を用いることができる。
【0168】
あるいは、前述したように、発泡成形後のポリウレタンフォームにバインダーや意匠性物質を含む溶液を接触させて、ポリウレタンフォームにバインダーを結合させて、ポリウレタンフォーム層を調製してもよい。
【0169】
本発明に係るタイヤでは、タイヤの少なくとも一部の外層にバリア層を介してポリウレタンフォーム層が積層されていればよい。例えば、タイヤのサイドウォール部、トレッド部などの外層にバリア層を介してポリウレタンフォーム層が積層されていてもよい。通常、タイヤには老化防止剤が配合されており、これらのタイヤのサイドウォール部、トレッド部などの外層は、通常、老化防止剤を含む。
【0170】
本発明に係るタイヤは、前記外層が、サイドウォール部の外層であることが好ましい。
これにより、より効果的にタイヤの外観を向上することができる。
【0171】
本発明に係るタイヤは、2以上の異なる前記ポリウレタンフォーム層が、積層されておよび/または組み合わされて、バリア層を介してタイヤの外層に積層されていてもよい。
【0172】
2以上の異なる前記ポリウレタンフォーム層が、積層されて、バリア層を介してタイヤの外層に積層されている形態の例としては、サイドウォール部の外層に、第1のポリウレタンフォーム層が積層され、その第1のポリウレタンフォーム層上に、第2のポリウレタンフォーム層が積層されている形態などが挙げられる。さらに、この例の場合、バリア層は、タイヤの外層と第1のポリウレタンフォーム層との間に配置されていてもよいし;第1のポリウレタンフォーム層と第2のポリウレタンフォーム層との間に配置されていてもよいし;タイヤの外層と第1のポリウレタンフォーム層との間と、第1のポリウレタンフォーム層と第2のポリウレタンフォーム層との間とに配置されていてもよい。タイヤの外層からのポリウレタンフォーム層への老化防止剤の移行をより効率的に抑制する観点から、タイヤの外層と第1のポリウレタンフォーム層との間に、またはタイヤの外層と第1のポリウレタンフォーム層との間と、第1のポリウレタンフォーム層と第2のポリウレタンフォーム層との間とにバリア層が配置されていることが好ましい。ポリウレタンフォーム層が3層以上の場合も、同様である。
【0173】
2以上の異なる前記ポリウレタンフォーム層が、組み合わされて、タイヤの外層に積層されている形態の例としては、サイドウォール部の外層の一部では、意匠性物質として赤色顔料を含む第1のポリウレタンフォーム層が積層されており、サイドウォール部の外層の別の一部では、意匠性物質として黒色顔料を含む第2のポリウレタンフォーム層が積層されている形態;サイドウォール部の外層の一部では、意匠性物質として顔料を含む第1のポリウレタンフォーム層が積層されており、サイドウォール部の外層の別の一部では、意匠性物質として蓄光性粉末を含む第2のポリウレタンフォーム層が積層されている形態などが挙げられる。
【0174】
ポリウレタンフォーム層を外層に積層するタイヤとしては、特に限定されず、公知のタイヤを用いることができる。例えば、タイヤとしては、乗用車用タイヤ、レース用タイヤ、一輪車用タイヤ、二輪車用タイヤ、三輪車用タイヤ、航空機用タイヤ、建設車両用タイヤ、農業機械用タイヤなどが挙げられる。
【0175】
本発明に係るタイヤの製造方法は、特に限定されず、例えば、未加硫の生タイヤの外層にバリア層を介してポリウレタンフォーム層を積層して、その生タイヤとバリア層とポリウレタンフォーム層との積層体を加硫して、タイヤの外層にバリア層を介してポリウレタンフォーム層が積層されたタイヤを製造してもよい。また、本発明に係るタイヤの製造方法は、例えば、製造されたタイヤの外層に接着剤を用いてバリア層を積層し、さらにバリア層上に接着剤を用いてポリウレタンフォーム層を積層することによって、タイヤを製造してもよい。
【実施例
【0176】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0177】
実施例で使用した材料の詳細は以下のとおりである。
【0178】
・バリア層用ゴム組成物材料
<ゴム成分(A)>
天然ゴム(NR):RSS#3
ブタジエンゴム(BR):宇部興産社製の商品名「UBEPOL BR(登録商標)150L」
臭素化ブチルゴム(Br-IIR):高粘度ブチル、エクソン社製の商品名「ブロモブチル2255」
イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴムの臭素化物:エクソン社製の商品名「Exxpro 3745」
<フィラー>
クレー(層状又は板状粘土鉱物(B)):J.M.Huber社製の商品名「Polyfil DL」、平均アスペクト比=20、平均粒径=3.2μm
カーボンブラック:旭カーボン社製の商品名「旭#55」
<その他>
加硫促進剤(DM):ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)DM」
加硫促進剤(DM):ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)DM」
加硫促進剤(CZ):N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)CZ」
プロセスオイル1:三共油化工業社製の商品名「A/O MIX.(登録商標)」
プロセスオイル2:新日本石油社製の商品名「ブローンアスファルト 10-20」
グリセリン脂肪酸エステル組成物(加工性改良剤(C)):国際公開第2014/185545号の製造例1に記載の方法に従い、脂肪酸をオクタン酸から同モル量のパーム由来硬化脂肪酸に変えて合成し、さらに分子蒸留することで調製したグリセリン脂肪酸エステル組成物、グリセリン脂肪酸モノエステル含有率=97質量%、構成脂肪酸の54質量%がステアリン酸で且つ42質量%がパルミチン酸、4質量%がその他脂肪酸
【0179】
・ポリウレタンフォーム
ブリヂストンケミテック社製の商品名「エバーライト(登録商標)HZCD」、独立気泡構造、セル径=350μm、厚さ2mmにおける通気量=150cc/cm/sec
・バインダー
アクリル系樹脂:エネックス社製の商品名「BS050301-1」、アクリルエマルジョン
・意匠性物質
顔料:御国色素社製の商品名「GPホワイト#101」、白色顔料
【0180】
・ゴムシート組成(タイヤの外層であるサイドウォール部ゴムを想定)
天然ゴム(NR):RSS#3、40質量部
ブタジエンゴム(BR):JSR社製の商品名「JSR BR01」、60質量部
カーボンブラック:N339、27質量部
シリカ:東ソー・シリカ社製の商品名「ニプシル(登録商標) AQ」、27質量部
シランカップリング剤:2.5質量部
プロセスオイル:15質量部
老化防止剤:大内新興化学工業社製の商品名「ノクラック(登録商標) 6C」、3質量部
ステアリン酸:2質量部
酸化亜鉛:3質量部
硫黄:1.5質量部
加硫促進剤(DPG):0.8質量部
加硫促進剤(DM):1質量部
加硫促進剤(NS):1質量部
【0181】
色差計:コニカミノルタ社製の分光測色系CM-700d C光源2° SCEモード
【0182】
表1に示す配合で各成分を混練してバリア層用ゴム組成物を調製し、各実施例と比較例1の未加硫のバリア層ゴムシート(寸法:5.5cm×5.5cm、厚さ0.7mm)を作製した。
【0183】
【表1】
【0184】
未加硫のゴムシート(寸法:20cm×10cm、厚さ10mm)と、未加硫のバリア層ゴムシートと、ポリウレタンフォーム層(寸法:5cm×5cm、厚さ2mm)をこの順で重ね合わせ、160℃15分の条件で加硫を行い、ポリウレタンフォーム層がバリア層を介してゴムシートに積層されたゴムサンプルを得た。なお、比較例1のバリア層用ゴム組成物は、表1に示すようにゴム成分(A)として、ブチルゴムではなく、上記ゴムシート(タイヤの外層であるサイドウォール部ゴムを想定)のゴム成分と同じ天然ゴムとブタジエンゴムを配合したため、比較例1では、実施例のゴムサンプルのバリア層が、老化防止剤を含まないサイドウォール部のゴムに置き換わったゴムサンプル、すなわち、老化防止剤を含まないサイドウォール部のゴム(厚さ0.7mm)をゴムシートとポリウレタンフォーム層との間に挟んだゴムサンプルが得られる。
【0185】
<茶色変色抑制性>
実施例1~4および比較例1では、製造直後のゴムサンプルと、製造後18日間、屋外に放置したゴムサンプルとについて、色差計を用いてL値を測定した。その結果を表2に示す。L値の値が高いほど、ポリウレタンフォーム層の白色部分がより白いことを示す。また、初期のL値と18日後のL値の差が小さいほど、ポリウレタンフォーム層の白色部分の変色が少なく、茶色変色抑制性に優れることを示す。
【0186】
【表2】
【0187】
<接着性>
実施例2、4および比較例1では、ゴムサンプルについて、厚さ5mmずつのゴムサンプルを共架橋させ、1インチ幅で10cmに打ち抜き、持ち手部分を備えたT字型サンプルによって、接着性を試験し、以下の基準で評価した。基準Aが最も接着性に優れることを示す。基準Cでも実際の使用では問題ない。
基準A:85 N/inch以上
基準B:70 N/inch以上85 N/inch未満
基準C:70 N/inch未満
【0188】
【表3】
【0189】
表2に示すように、実施例のゴムサンプルは、屋外に18日間放置後でも、50以上の高いL値を示し、茶色変色抑制性と白さに優れていた。しかし、比較例1のゴムサンプルは、老化防止剤を含まないゴムシートを、タイヤの外層であるサイドウォール部ゴムを想定したゴムシートとポリウレタンフォーム層との間に配置したにもかかわらず、茶色変色抑制性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム層が茶色に変色することを抑制したタイヤを提供することができる。