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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】電圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/32 20190101AFI20231218BHJP
   G06F 1/3296 20190101ALI20231218BHJP
   G06F 1/3206 20190101ALI20231218BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G06F1/32
G06F1/3296
G06F1/3206
G06N3/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020567425
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049265
(87)【国際公開番号】W WO2020153047
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019009847
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】松本 智宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 恭正
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005297(JP,A)
【文献】特開2013-050841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26 - 1/3296
G06N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ニューラルネットワークと、
第2ニューラルネットワークと、
推論結果判定部と、
前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給される電圧を決定する電圧決定部と、を備えており、
前記第1ニューラルネットワークが、学習済みの情報に基づいて推論する機能を有しており、
前記第2ニューラルネットワークが、未学習の情報に基づいて推論する機能を有しており、
前記推論結果判定部が、前記推論結果判定部に保持された正解値データと前記第1ニューラルネットワークの推論結果データとを比較して判定結果データを得る機能を有しており、
前記電圧決定部が、前記判定結果データに基づいて、前記正解値データと前記推論結果データが一致した場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている電圧より低い電圧を決定し、前記正解値データと前記推論結果データが一致しない場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている電圧より高い電を決定し、決定した前記電圧のデジタル信号である電圧信号を出力する機能を有している、
電圧制御装置。
【請求項2】
前記第1ニューラルネットワークが、前記第2ニューラルネットワークの一部又は全部の構成要素が複製されたものである、
請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項3】
前記第1ニューラルネットワークが、前記第2ニューラルネットワークの構成要素の一部で構成されている、
請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項4】
前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークのそれぞれが、少なくとも、
記憶部と、
複数のプロセッシングエレメントと、を有している、
請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項5】
前記電圧決定部が、少なくとも、
電圧差決定部と、
電圧差信号変換部と、を有しており、
前記電圧差決定部が、前記判定結果データに基づいて、前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧と、変更後の前記電圧との電圧差を決定し、電圧差信号を出力する機能を有しており、
前記電圧差信号変換部が、前記電圧差信号を変換して、前記電圧信号を出力する機能を有している、
請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項6】
前記電圧決定部が、前記判定結果データと前記電圧に基づいて、前記正解値データと前記推論結果データが一致しており、かつ、前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧が所定の値より高い場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている電圧より低い電圧を決定し、決定した前記電圧のデジタル信号である電圧信号を出力する、
請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項7】
電圧供給部をさらに備えており、
前記電圧供給部が、前記電圧決定部が出力した前記電圧信号に基づいて、電圧を前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給する機能を有している、
請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項8】
前記電圧供給部が、少なくともDAコンバーターを有しており、
前記DAコンバーターが、デジタル信号である前記電圧信号を、アナログ信号である前記電圧に変換して出力する機能を有している、
請求項7に記載の電圧制御装置。
【請求項9】
前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧を第1供給電圧とし、
前記第2ニューラルネットワークに供給されている前記電圧を第2供給電圧とし、
前記電圧供給部が、前記第1供給電圧より高い前記第2供給電圧を、前記第2ニューラルネットワークに供給する機能を有している、
請求項7に記載の電圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた学習(ディープラーニング)が注目を浴びている。学習に利用されるデータは、ニューラルネットワークが有するSRAM(Static Random Access Memory)等の半導体記憶素子に記憶される。ニューラルネットワークの学習において、半導体記憶素子へのアクセスが数万回にも及ぶことがあるため、消費電力の大半は半導体記憶素子が消費する。したがって、この消費電力の削減が求められている。
【0003】
消費電力の削減のためには、ニューラルネットワークへの供給電圧を低下することが効果的である。非特許文献1において、学習ニューラルネットワークが有するSRAMへの供給電圧が低く、このSRAMのエラーが発生しやすい環境で学習ニューラルネットワークが学習している。この供給電圧が所定の値以下になると、学習ニューラルネットワークの誤り率(Error Rate)が上昇する。そこで、この非特許文献1の執筆者は、この誤り率に閾値が設定され、許容可能な誤り率と、この誤り率となるときの最も低い供給電圧(限界動作電圧)を設定した。すると、通常の電圧が0.8Vであるところ、限界動作電圧は0.5V以下となった。以上のことが、この非特許文献1で説明されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Lita Y, Boris M, “Approximate SRAM for Energy-Efficient, Privacy-Preserving Convolutional Neural Networks”, IEEE, 2017 IEEE Computer Society Annual Symposium on VLSI (2017): 689-694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、学習ニューラルネットワークと、推論ニューラルネットワークが用いられている。当該学習ニューラルネットワークによる学習で得られた係数データ等を、当該推論ニューラルネットワークが有するSRAMに格納し、当該推論ニューラルネットワークが推論を行う。そのため、学習時に得られた限界動作電圧を、推論時にも適用できることが望ましい。
【0006】
しかしながら、学習時におけるPVT(プロセス、電圧、及び温度)条件と、推論時におけるPVT条件が異なることがある。そのため、学習時に得られた限界動作電圧を、そっくりそのまま当該推論ニューラルネットワークに適用できないという問題がある。
【0007】
そこで、本技術は、限界動作電圧を自動的に設定する電圧制御装置を提供することにより、消費電力を削減することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、第1ニューラルネットワークと、第2ニューラルネットワークと、推論結果判定部と、電圧決定部と、を備えており、前記第1ニューラルネットワークが、学習済みの情報に基づいて推論する機能を有しており、前記第2ニューラルネットワークが、未学習の情報に基づいて推論する機能を有しており、前記推論結果判定部が、前記推論結果判定部に保持された正解値データと前記第1ニューラルネットワークの推論結果データとを比較して判定結果データを得る機能を有しており、前記電圧決定部が、前記判定結果データに基づいて、前記正解値データと前記推論結果データが一致した場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている電圧より低い電圧信号を出力し、前記正解値データと前記推論結果データが一致しない場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている前記電圧より高い前記電圧信号を出力する機能を有している、電圧制御装置を提供する。
前記第1ニューラルネットワークが、前記第2ニューラルネットワークの一部又は全部の構成要素が複製されたものであってもよい。
前記第1ニューラルネットワークが、前記第2ニューラルネットワークの構成要素の一部で構成されていてもよい。
前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークが、少なくとも、記憶部と、複数のプロセッシングエレメントと、を有していてもよい。
前記電圧決定部が、少なくとも、電圧差決定部と、電圧差信号変換部と、を有しており、前記電圧差決定部が、前記判定結果データに基づいて、前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧と、変更後の前記電圧との電圧差を決定し、電圧差信号を出力する機能を有しており、前記電圧差信号変換部が、前記電圧差信号を変換して、前記電圧信号を出力する機能を有していてもよい。
前記電圧決定部が、前記判定結果データと前記電圧に基づいて、前記正解値データと前記推論結果データが一致しており、かつ、前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧が所定の値より高い場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている前記電圧より低い電圧信号を出力してもよい。
前記電圧制御装置が、電圧供給部をさらに備えており、前記電圧供給部が、前記電圧決定部が出力した前記電圧信号に基づいて、前記電圧を前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給する機能を有していてもよい。
前記電圧供給部が、少なくともDAコンバーターを有しており、前記DAコンバーターが、デジタル信号である前記電圧信号を、アナログ信号である前記電圧に変換して出力する機能を有していてもよい。
前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧を第1供給電圧とし、前記第2ニューラルネットワークに供給されている前記電圧を第2供給電圧とし、前記電圧供給部が、前記第1供給電圧より高い前記第2供給電圧を、前記第2ニューラルネットワークに供給する機能を有していてもよい。
【0009】
本技術では、第1ニューラルネットワークのエラー発生率が許容範囲内であり、第1ニューラルネットワークに供給される最も低い電圧を、限界動作電圧という。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術に係る電圧制御装置の全体構成図である。
図2】本技術に係る電圧制御装置の全体構成図である。
図3】本技術に係る電圧制御装置の一実施形態である。
図4】本技術に係る推論結果判定部のフローチャートである。
図5】本技術に係る電圧決定部のフローチャートである。
図6】本技術に係る第1ニューラルネットワークと推論結果判定部の一実施形態である。
図7】本技術に係る第1ニューラルネットワークと推論結果判定部の一実施形態である。
図8】本技術に係る電圧差決定部の動作の例である。
図9】本技術に係る電圧差決定部の動作の例である。
図10】本技術に係る電圧決定部のフローチャートである。
図11】本技術に係る電圧制御装置の一実施形態である。
図12】本技術に係る電圧制御装置の一実施形態である。
図13】本技術に係る電圧差決定部の動作の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な形態について、添付した図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態に限定されることはない。なお、本技術の説明は以下の順序で行う。
1.本技術に係る第1の実施形態(基本構成)
2.本技術に係る第2の実施形態(電圧供給部)
3.本技術に係る第3の実施形態(異なる供給電圧)
【0012】
1.本技術に係る第1の実施形態(基本構成)
【0013】
本技術に係る電圧制御装置100の全体構成図を図1に示す。図1に示すように、本技術に係る電圧制御装置100は、第1ニューラルネットワーク110と、第2ニューラルネットワーク120と、推論結果判定部130と、電圧決定部140と、を備えている。
【0014】
第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120は、入力されたデータが何であるかを推論する機能を有している。例えば猫の画像データが入力された場合に、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120は、この画像が猫の画像であるか否かを推論する。入力されるデータは、画像のほかに、例えば音声、記号、数字、文字、信号等でもよい。
【0015】
第1ニューラルネットワーク110は、既に学習済みの情報に基づいて推論する機能を有している。第2ニューラルネットワーク120は、未学習の情報に基づいて推論する機能を有している。
【0016】
第1ニューラルネットワーク110は、第2ニューラルネットワーク120の一部又は全部の構成要素が複製(レプリカ)されたものである。このことにより、第1ニューラルネットワーク110と第2ニューラルネットワーク120は同じ動作をすることができる。
【0017】
推論結果判定部130は、第1ニューラルネットワーク110の推論結果が正解か不正解かを判定し、判定結果データを得る機能を有している。より具体的に説明すると、推論結果判定部130は、推論結果判定部130が保持している正解値データと、第1ニューラルネットワーク110の推論結果データを比較し、判定結果データを出力している。例えば正解値データが猫であり、推論結果データも猫である場合は、判定結果データは正解の値となる。
【0018】
電圧決定部140は、推論結果判定部130が出力した判定結果データに基づいて、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120に供給される電圧を決定する機能を有している。より具体的に説明すると、正解値データと推論結果データが一致した場合は、電圧決定部140は、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120に供給されている電圧より低い電圧信号を出力する機能を有している。一方、正解値データと推論結果データが一致しない場合は、電圧決定部140は、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120に供給されている電圧より高い電圧信号を出力する機能を有している。
【0019】
本技術に係る電圧制御装置100の別の全体構成図を図2に示す。図2に示すように、第1ニューラルネットワーク110は、第2ニューラルネットワーク120の構成要素の一部で構成されていてもよい。すなわち、この第1ニューラルネットワーク110は、あるときは第1ニューラルネットワーク110として動作し、あるときは第2ニューラルネットワーク120の一部として動作してもよい。例えば、既に学習済みの情報に基づいて推論するときは、第1ニューラルネットワーク110は、第1ニューラルネットワーク110として動作し、未学習の情報に基づいて推論するときは、第1ニューラルネットワーク110は、第2ニューラルネットワーク120の一部として動作してもよい。
【0020】
第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120の消費電力を削減するためには、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120に供給されている電圧を低くすることが効果的である。そのため、推論結果データと正解値データが一致した場合、電圧決定部140が、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120に供給されている電圧より低い電圧信号を出力する。
【0021】
上述したように、第1ニューラルネットワーク110は、学習済みの情報に基づいて推論する機能を有している。そのため、第1ニューラルネットワーク110の推論結果データと正解値データが一致することが通常である。この推論結果データと正解値データが一致しない場合は、第1ニューラルネットワーク110に供給されている電圧が、限界動作電圧Vよりも低くなった場合である。この場合、電圧決定部140が、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120に供給されている電圧より高い電圧信号を出力する。
【0022】
このことにより、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120は、限界動作電圧Vの付近の電圧で動作する。したがって、第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120の消費電力が削減できる。
【0023】
すなわち、電圧制御装置100は、限界動作電圧を自動的に設定することができる。
【0024】
本技術に係る電圧制御装置100を具体化した一実施形態を図3に示す。図3に示すように、本技術に係る電圧制御装置100は、第1ニューラルネットワーク110と、第2ニューラルネットワーク120と、推論結果判定部130と、電圧決定部140と、を備えている。
【0025】
第1ニューラルネットワーク110は、少なくとも、記憶部111と、プロセッシングエレメント群112と、を有することができる。このプロセッシングエレメント群112は、複数のプロセッシングエレメントから成っている。記憶部111として、例えばSRAM等の半導体記憶素子を利用できる。
【0026】
第1ニューラルネットワーク110と同様に、第2ニューラルネットワーク120は、少なくとも、記憶部121と、プロセッシングエレメント群122と、を有することができる。
【0027】
推論結果判定部130は、推論結果判定部130に保持された正解値データAと、第1ニューラルネットワーク110の推論結果データとを比較して判定結果データを得る機能を有している。
【0028】
ここで、推論結果判定部130のフローチャートを図4に示す。図4に示すように、推論結果判定部130は、推論結果判定部130に保持された正解値データAと、ニューラルネットワーク110の推論結果データとを比較する(S1)。
【0029】
正解値データAと推論結果データが一致した場合(S1:Yes)は、推論結果判定部130は、判定結果データである判定結果フラグFに、値「0」を設定する(S2)。一方、正解値データAと推論結果データが一致しない場合(S1:No)は、推論結果判定部130は、判定結果フラグFに、値「1」を設定する(S3)。
【0030】
この判定結果フラグFの値に基づいて、電圧決定部140が動作する。電圧決定部140のフローチャートを図5に示す。
【0031】
図5に示すように、判定結果フラグFに値「0」が設定されている場合(S4:Yes)は、電圧決定部140は、ニューラルネットワーク110に供給されている電圧V1より低い電圧信号を出力する(S5)。
【0032】
一方、判定結果フラグに値「1」が設定されている場合(S4:No)は、電圧決定部140は、ニューラルネットワーク110に供給されている電圧V1より高い電圧信号を出力する(S6)。
【0033】
続いて、第1ニューラルネットワーク110と、推論結果判定部130の一実施形態を、図6図7に示す。図6は、第1ニューラルネットワーク110が正しく推論できた場合の処理を示す。図7は、第1ニューラルネットワーク110が正しく推論できなかった場合の処理を示す。
【0034】
まず、第1ニューラルネットワーク110が正しく推論できた場合の処理について、図6を参照しつつ説明する。図6に示すように、第1ニューラルネットワーク110に、画像データG1が入力される。この例では、画像データG1は猫の画像とする。
【0035】
第1ニューラルネットワーク110による推論結果データは、画像データG1が猫である確率が90%、犬である確率が5%、馬である確率が2%、鳥である確率が2%、羊である確率が1%となっている。
【0036】
第1ニューラルネットワーク110に供給されている電圧V1は、限界動作電圧Vよりも高い。そのため、第1ニューラルネットワーク110は、正しく推論ができている。
【0037】
推論結果判定部130が有する2値化部131は、所定の値、例えば50%を閾値として、第1ニューラルネットワーク110による推論結果データを「0」又は「1」に2値化する。推論結果データにおける確率が50%より高い場合は、2値化部131は値「1」を出力する。推論結果データにおける確率が50%以下の場合は、2値化部131は値「0」を出力する。なお、閾値は50%でなくともよい。
【0038】
この実施例では、画像データが猫である確率が90%であり、閾値50%より高いため、2値化部131は猫の項目の値を「1」に設定する。その他の項目(犬、馬、鳥、及び羊)においては、確率が50%以下であるため、2値化部131はこれらの項目の値を「0」に設定する。
【0039】
画像データが猫の画像データであるため、正解は猫である。そのため、正解値データAは、猫の項目の値が「1」となっており、その他の項目(犬、馬、鳥、及び羊)の値が「0」となっている。
【0040】
続いて、推論結果判定部130が有する正解比較部132は、推論結果データと正解値データAを比較する。猫の項目では、推論結果データの値が「1」、正解値データAの値が「1」であるため、判定値に「1」が設定される。その他の項目(犬、馬、鳥、及び羊)では、推論結果データの値が「0」、正解値データAの値が「0」であるため、判定値に「1」が設定される。
【0041】
以上の処理により、すべての項目の判定値が「1」に設定されるため、推論結果判定部130は、判定結果フラグFに値「0」を設定する。
【0042】
一方、第1ニューラルネットワーク110が正しく推論できなかった場合の処理について、図7を参照しつつ説明する。図7に示す例においても、画像データG1は猫の画像とする。
【0043】
第1ニューラルネットワーク110による推論結果データは、画像データが猫である確率が45%、犬である確率が51%、馬である確率が1%、鳥である確率が2%、羊である確率が1%となっている。
【0044】
第1ニューラルネットワーク110に供給されている電圧V1は、限界動作電圧Vよりも低い。そのため、第1ニューラルネットワーク110は、正しく推論ができていない。
【0045】
この実施例では、画像データが犬である確率が51%であり、閾値50%より高いため、2値化部131は犬の項目の値を「1」に設定する。その他の項目(猫、馬、鳥、及び羊)においては、確率が50%以下であるため、2値化部131はこれらの項目の値を「0」に設定する。
【0046】
続いて、正解比較部132は、推論結果データと正解値データAを比較する。猫の項目では、推論結果データの値が「0」、正解値データAの値が「1」であるため、判定値に「0」が設定される。犬の項目では、推論結果データの値が「1」、正解値データAの値が「0」であるため、判定値に「0」が設定される。その他の項目(馬、鳥、及び羊)では、推論結果データの値が「0」、正解値データAの値が「0」であるため、判定値に「1」が設定される。
【0047】
以上の処理により、値「0」が設定された判定値と、値「1」が設定された判定値が混在しているため、推論結果判定部130は、判定結果フラグFに値「1」を設定する。
【0048】
この判定結果フラグFに基づいて、後続の電圧決定部140が動作をする。ここで、図3の説明に戻る。図3に示すように、電圧決定部140は、少なくとも、電圧差決定部141と、電圧差信号変換部142と、を有している。
【0049】
電圧差決定部141は、判定結果データに基づいて、第1ニューラルネットワーク110に供給されている電圧と、変更後の電圧との電圧差を決定し、電圧差信号変換部142に電圧差信号を出力する機能を有している。
【0050】
電圧差決定部141には、第1ニューラルネットワークへの供給電圧V1を低くするときの電圧差と、当該供給電圧V1を高くするときの電圧差の比率が保持されている。供給電圧V1を低くするときの電圧差と、供給電圧V1を高くするときの電圧差との比率は、α:(1-α)とすることができる。αは、例えば0より大きく0.5未満の値とすることができる。
【0051】
電圧差信号変換部142は、電圧差信号を変換して、電圧信号を出力する機能を有している。電圧差信号変換部142は、例えば積分器を有することができる。
【0052】
電圧決定部140の動作を具体的に説明する。まず、電圧決定部140が備えている電圧差決定部141の動作の例について、図8を参照しつつ説明する。図8には、第1ニューラルネットワークへの供給電圧V1と、限界動作電圧Vと、判定結果フラグFの値と、時間Tが示されている。
【0053】
判定結果フラグFの値は0と1で示されている。平らになっている低い値が0、飛び出ている高い値が1である。
【0054】
判定結果フラグFの値が0のとき、供給電圧V1が低くなっている。供給電圧V1が徐々に低くなり、時間t1で供給電圧V1が限界動作電圧Vになったとき、判定結果フラグFの値が1となり、供給電圧V1が高くなっている。
【0055】
そして、再び供給電圧V1が徐々に低くなり、時間t2で限界動作電圧Vになったとき、判定結果フラグFの値が1となり、供給電圧V1が高くなっている。
【0056】
図8に示す実施例では、α=0.1の場合を示している。そのため、供給電圧V1を低くするときの電圧差と、供給電圧V1を高くするときの電圧差との比率は、0.1:(1-0.1)=0.1:0.9=1:9となっている。
【0057】
また、供給電圧V1が(1-α)/α+1回に1回の周期で高くなっている。この実施例では、α=0.1であるため、(1-0.1)/0.1+1=10回に1回の周期で供給電圧V1が高くなっている。
【0058】
αの値が小さくなるほど、供給電圧V1が高くなる頻度が低くなる。一方、αの値が大きくなるほど、供給電圧V1が高くなる頻度が高くなる。したがって、このαの値を変動させることにより、供給電圧V1が高くなる頻度を調整できる。
【0059】
なお、供給電圧V1を低くするときの電圧差と、供給電圧を高くするときの電圧差との比率は、α:1-αに限られず、例えばα:1であってもよい。
【0060】
電圧差決定部141の他の動作の例について、図9を参照しつつ説明する。図9には、第1ニューラルネットワーク110への供給電圧V1と、限界動作電圧Vと、判定結果フラグFの値と、時間Tが示されている。
【0061】
判定結果フラグFの値が0のとき、供給電圧V1が徐々に低くなっているが、時間t3で供給電圧V1が限界動作電圧Vの付近になったとき、供給電圧V1はそれ以上低くなっていない。このことにより、時間t3より後の時間においては、低い供給電圧でありながら、第1ニューラルネットワーク110は誤った推論をすることがない。第1ニューラルネットワーク110が活発に動作しておらず、低い供給電圧であっても動作できる場合は、この状態でもよい。
【0062】
このときの電圧決定部140のフローチャートを図10に示す。図10に示すように、正解値データと推論結果データが一致し、判定結果フラグFに値「0」が設定されている場合(S7:Yes)であり、かつ、第1ニューラルネットワーク110に供給されている電圧V1が所定の値より高い場合(S8:Yes)は、電圧決定部140は、第1ニューラルネットワーク及び第2ニューラルネットワークに供給されている電圧より低い電圧信号を出力する(S9)。
【0063】
判定結果フラグFに値「0」が設定されている場合(S7:Yes)であり、かつ、第1ニューラルネットワーク110に供給されている電圧V1が所定の値以下である場合(S8:No)は、電圧決定部140は、電圧信号を変化させない。
【0064】
正解値データと推論結果データが一致せず、判定結果フラグに値「1」が設定されている場合(S7:No)は、電圧決定部140は、ニューラルネットワーク110に供給されている電圧V1より高い電圧信号を出力する(S10)。
【0065】
続いて、図3の説明に戻り、電圧決定部140が有している電圧差信号変換部142について説明する。電圧差信号変換部142は、電圧差決定部141から出力された電圧差信号を変換して、電圧信号を出力する機能を有している。
【0066】
具体的に説明すると、電圧差信号変換部142は、例えば電圧差決定部141から出力された電圧差をμ倍する。μは、例えば0より大きく1より非常に小さな値とすることができる。
【0067】
このμの値が小さくなるほど、供給電圧V1が変化する電位差が小さくなる。一方、このμの値が大きくなるほど、供給電圧V1が変化する電位差が大きくなる。したがって、このμの値を変動させることにより、供給電圧V1が変化する電位差を調整できる。
【0068】
2.本技術に係る第2の実施形態(電圧供給部)
【0069】
本技術に係る電圧制御装置100の他の一実施形態を図11に示す。なお、図11図3の重複箇所については詳細な説明を割愛する。
【0070】
図11に示すように、電圧制御装置100は、さらに電圧供給部150を備えることができる。電圧供給部150は、電圧決定部140が出力した電圧信号に基づいて、電圧を第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120に供給する機能を有している。
【0071】
電圧供給部150は、少なくともDAコンバーター151を有することができる。DAコンバーター151は、デジタル信号をアナログ信号に変換できる。電圧決定部140が出力した電圧信号はデジタル信号である。第1ニューラルネットワーク110及び第2ニューラルネットワーク120への供給電圧はアナログ信号である。したがって、DAコンバーター151による変換処理が必要となる。
【0072】
電圧供給部150は、さらにバッファ152を有することができる。DAコンバーター151の出力電圧をそのまま第1ニューラルネットワーク110等に供給すると、DAコンバーター151等の負荷が高くなる。したがって、バッファ152が、DAコンバーター151の出力電圧を変換して第1ニューラルネットワーク110等に供給する。バッファ152として、例えば低ドロップアウト・リニアレギュレータ(LDO)やDC/DCコンバーターを利用できる。
【0073】
3.本技術に係る第3の実施形態(異なる供給電圧)
【0074】
本技術に係る電圧制御装置100を具体化した他の一実施形態を図12に示す。なお、図12図11の重複箇所については詳細な説明を割愛する。
【0075】
第1ニューラルネットワーク110に供給されている電圧を第1供給電圧V1とする。第2ニューラルネットワーク120に供給されている電圧を第2供給電圧V2とする。
【0076】
電圧差信号変換部142は、電圧差決定部141が出力した電圧差信号を変換して、第1供給電圧V1に対応する電圧信号と、この電圧信号より高い第2供給電圧V2に対応する電圧信号を出力する機能を有している。第1供給電圧V1と第2供給電圧V2の電圧差ΔVは、ノイズのゆらぎに左右されるが、例えば20mVであってもよいし、50mVであってもよい。
【0077】
電圧供給部150は、第1供給電圧V1を第1ニューラルネットワーク110に供給し、第1供給電圧V1より高い第2供給電圧V2を第2ニューラルネットワーク120に供給する機能を有している。
【0078】
この電圧供給部150の動作と、電圧決定部140が備えている電圧差決定部141の動作について、図13を参照しつつ説明する。図13には、第1供給電圧V1と、第2供給電圧V2と、限界動作電圧Vと、判定結果フラグFの値と、時間Tが示されている。
【0079】
第1供給電圧V1と第2供給電圧V2が徐々に低くなり、時間t4で第1供給電圧V1が限界動作電圧Vになったとき、判定結果フラグFの値が1になり、第1供給電圧V1と第2供給電圧V2が高くなっている。
【0080】
そして、再び第1供給電圧V1と第2供給電圧V2が徐々に低くなり、時間t5で第1供給電圧V1が限界動作電圧Vになったとき、判定結果フラグFの値が1になり、第1供給電圧V1と第2供給電圧V2が高くなっている。
【0081】
第2供給電圧V2は、第1供給電圧V1よりもわずかに高くなっている。このことにより、第1供給電圧V1が限界動作電圧Vになったときに、第1ニューラルネットワーク110はエラーを発生するが、第2供給電圧V2が限界動作電圧Vにならないため、第2ニューラルネットワーク120はエラーを発生しない。
【0082】
なお、本技術に係る電圧制御装置100が電圧を制御する対象は、ニューラルネットワークに限られない。
【0083】
なお、本明細書中に記載した効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0084】
なお、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
[1]第1ニューラルネットワークと、
第2ニューラルネットワークと、
推論結果判定部と、
電圧決定部と、を備えており、
前記第1ニューラルネットワークが、学習済みの情報に基づいて推論する機能を有しており、
前記第2ニューラルネットワークが、未学習の情報に基づいて推論する機能を有しており、
前記推論結果判定部が、前記推論結果判定部に保持された正解値データと前記第1ニューラルネットワークの推論結果データとを比較して判定結果データを得る機能を有しており、
前記電圧決定部が、前記判定結果データに基づいて、前記正解値データと前記推論結果データが一致した場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている電圧より低い電圧信号を出力し、前記正解値データと前記推論結果データが一致しない場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている前記電圧より高い前記電圧信号を出力する機能を有している、
電圧制御装置。
[2]前記第1ニューラルネットワークが、前記第2ニューラルネットワークの一部又は全部の構成要素が複製されたものである、[1]に記載の電圧制御装置。
[3]前記第1ニューラルネットワークが、前記第2ニューラルネットワークの構成要素の一部で構成されている、[1]又は[2]に記載の電圧制御装置。
[4]前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークが、少なくとも、記憶部と、複数のプロセッシングエレメントと、を有している、[1]~[3]のいずれか一つに記載の電圧制御装置。
[5]前記電圧決定部が、少なくとも、電圧差決定部と、電圧差信号変換部と、を有しており、前記電圧差決定部が、前記判定結果データに基づいて、前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧と、変更後の前記電圧との電圧差を決定し、電圧差信号を出力する機能を有しており、前記電圧差信号変換部が、前記電圧差信号を変換して、前記電圧信号を出力する機能を有している、[1]~[4]のいずれか一つに記載の電圧制御装置。
[6]前記電圧決定部が、前記判定結果データと前記電圧に基づいて、前記正解値データと前記推論結果データが一致しており、かつ、前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧が所定の値より高い場合は、前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給されている前記電圧より低い電圧信号を出力する、[1]~[5]のいずれか一つに記載の電圧制御装置。
[7]電圧供給部をさらに備えており、前記電圧供給部が、前記電圧決定部が出力した前記電圧信号に基づいて、前記電圧を前記第1ニューラルネットワーク及び前記第2ニューラルネットワークに供給する機能を有している、[1]~[6]のいずれか一つに記載の電圧制御装置。
[8]前記電圧供給部が、少なくともDAコンバーターを有しており、前記DAコンバーターが、デジタル信号である前記電圧信号を、アナログ信号である前記電圧に変換して出力する機能を有している、[7]に記載の電圧制御装置。
[9]前記第1ニューラルネットワークに供給されている前記電圧を第1供給電圧とし、前記第2ニューラルネットワークに供給されている前記電圧を第2供給電圧とし、前記電圧供給部が、前記第1供給電圧より高い前記第2供給電圧を、前記第2ニューラルネットワークに供給する機能を有している、[7]又は[8]に記載の電圧制御装置。
【符号の説明】
【0085】
100 電圧制御装置
110 第1ニューラルネットワーク
120 第2ニューラルネットワーク
130 推論結果判定部
140 電圧決定部
141 電圧差決定部
142 電圧差信号変換部
150 電圧供給部
151 DAコンバーター
V1 第1供給電圧
V2 第2供給電圧
限界動作電圧
F 判定結果フラグ
T 時間
正解値データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13