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特許7404284分散型電源システムの制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】分散型電源システムの制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20231218BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20231218BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231218BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231218BHJP
【FI】
H02J3/16
H02J3/00 170
H02J3/38 110
H02M7/48 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021021028
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123614
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】小浦 弘之
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063525(JP,A)
【文献】国際公開第2018/127967(WO,A1)
【文献】特開2007-300784(JP,A)
【文献】特開2015-192477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/16
H02J 3/00
H02J 3/38
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限大母線電力系統につながる交流の電力系統と、
連系点を介して前記電力系統と接続され、分散型電源と、前記分散型電源の電力を前記電力系統に対応した交流電力に変換し、変換後の前記交流電力を前記電力系統に供給することにより、前記分散型電源を前記電力系統と連系させる電力変換装置と、を有する電源設備と、
を備えた分散型電源システムに用いられる制御装置であって、
前記連系点の有効電力値と、前記連系点の無効電力値と、前記連系点の電圧値と、を基に、前記電力系統の系統インピーダンスの抵抗成分の推定値と、前記電力系統の系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値と、前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値と、を演算する系統インピーダンス推定部と、
前記抵抗成分の推定値、前記リアクタンス成分の推定値、前記電圧値の推定値、及び前記連系点の有効電力値を基に、前記連系点における電圧変動を抑制するための前記連系点の無効電力を演算する無効電力演算部と、
前記無効電力演算部によって演算された前記無効電力と、前記連系点の現在の無効電力値と、を基に、前記電源設備から前記電力系統に供給する無効電力の制御量を演算する制御量演算部と、
前記制御量を基に、前記電力変換装置から前記電力系統に供給する無効電力の出力値を演算する出力値設定部と、
前記制御量又は前記出力値に応じた無効電力を前記電源設備から前記電力系統に供給した際の前記電源設備内の機器の電圧の予測値が許容範囲を超過する場合に、前記電源設備内の機器の電圧変動が前記許容範囲内となるように前記制御量又は前記出力値を補正する補正演算部と、
を備えた制御装置。
【請求項2】
前記補正演算部は、前記連系点の現在の有効電力値、無効電力値、及び電圧値を計測情報として取得するとともに、前記電力変換装置の現在の有効電力値、無効電力値、及び出力端の電圧値を計測情報として取得し、前記計測情報と前記電源設備内に設けられた機器を表すモデル情報とを基に潮流計算を行うことにより、前記制御量又は前記出力値に応じた無効電力を前記電源設備から前記電力系統に供給した際の、前記電源設備内の機器の電圧の前記予測値を演算する請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記補正演算部は、所定の補正量を有し、前記電圧の予測値が前記許容範囲の上限側を超える場合には、前記制御量又は前記出力値から前記補正量を減算し、前記電圧の予測値が前記許容範囲の下限側を超える場合には、前記制御量又は前記出力値に前記補正量を加算することにより、前記電圧の予測値が前記許容範囲内に入る方向に前記制御量又は前記出力値を補正する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記補正演算部は、補正後の前記制御量又は前記出力値を基に、前記電源設備内の機器の電圧の予測値を再度演算し、演算した電圧の予測値が前記電源設備内の機器の電圧変動の前記許容範囲内となるまで、前記電圧の予測値の演算、前記許容範囲内か否かの確認、及び前記制御量又は前記出力値の補正の処理を繰り返す請求項3記載の制御装置。
【請求項5】
無限大母線電力系統につながる交流の電力系統と、
連系点を介して前記電力系統と接続され、分散型電源と、前記分散型電源の電力を前記電力系統に対応した交流電力に変換し、変換後の前記交流電力を前記電力系統に供給することにより、前記分散型電源を前記電力系統と連系させる電力変換装置と、を有する電源設備と、
を備えた分散型電源システムの制御方法であって、
前記連系点の有効電力値と、前記連系点の無効電力値と、前記連系点の電圧値と、を基に、前記電力系統の系統インピーダンスの抵抗成分の推定値と、前記電力系統の系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値と、前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値と、を演算する工程と、
前記抵抗成分の推定値、前記リアクタンス成分の推定値、前記電圧値の推定値、及び前記連系点の有効電力値を基に、前記連系点における電圧変動を抑制するための前記連系点の無効電力を演算する工程と、
演算された前記無効電力と、前記連系点の現在の無効電力値と、を基に、前記電源設備から前記電力系統に供給する無効電力の制御量を演算する工程と、
前記制御量を基に、前記電力変換装置から前記電力系統に供給する無効電力の出力値を演算する工程と、
前記制御量又は前記出力値に応じた無効電力を前記電源設備から前記電力系統に供給した際の前記電源設備内の機器の電圧の予測値が許容範囲を超過する場合に、前記電源設備内の機器の電圧変動が前記許容範囲内となるように前記制御量又は前記出力値を補正する工程と、
を有する制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、分散型電源システムの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電機、風力発電機、バッテリなどの分散型電源を用いた分散型電源システムが知られている。分散型電源システムは、交流の電力系統と、連系点を介して電力系統と接続される電源設備と、を備える。電源設備は、例えば、分散型電源、分散型電源の電力を電力系統に応じた交流電力に変換する電力変換装置、電力変換装置から出力される交流電力の電圧の大きさを電力系統に応じた電圧の大きさに変換する変圧器、及び電力変換装置の動作を制御する制御装置などを備える。
【0003】
分散型電源システムでは、連系点の電圧変動分を補償するように電源設備から連系点に無効電力を注入することにより、連系点の電圧変動を抑制することが行われている。無効電力の注入は、制御装置によって制御される。
【0004】
このような分散型電源システムにおいて、連系点で必要となる無効電力を出力した際に、電力変換装置や変圧器などの電源設備内の機器の電圧が、許容範囲を超過してしまう可能性があった。
【0005】
このため、分散型電源システムでは、連系点の電圧変動を抑制しつつ、電源設備内の機器の電圧変動も許容範囲内に抑えられるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6384426号公報
【文献】特許第6384439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、連系点の電圧変動を抑制しつつ、電源設備内の機器の電圧変動も許容範囲内に抑えることができる分散型電源システムの制御装置及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、無限大母線電力系統につながる交流の電力系統と、連系点を介して前記電力系統と接続され、分散型電源と、前記分散型電源の電力を前記電力系統に対応した交流電力に変換し、変換後の前記交流電力を前記電力系統に供給することにより、前記分散型電源を前記電力系統と連系させる電力変換装置と、を有する電源設備と、を備えた分散型電源システムに用いられる制御装置であって、前記連系点の有効電力値と、前記連系点の無効電力値と、前記連系点の電圧値と、を基に、前記電力系統の系統インピーダンスの抵抗成分の推定値と、前記電力系統の系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値と、前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値と、を演算する系統インピーダンス推定部と、前記抵抗成分の推定値、前記リアクタンス成分の推定値、前記電圧値の推定値、及び前記連系点の有効電力値を基に、前記連系点における電圧変動を抑制するための前記連系点の無効電力を演算する無効電力演算部と、前記無効電力演算部によって演算された前記無効電力と、前記連系点の現在の無効電力値と、を基に、前記電源設備から前記電力系統に供給する無効電力の制御量を演算する制御量演算部と、前記制御量を基に、前記電力変換装置から前記電力系統に供給する無効電力の出力値を演算する出力値設定部と、前記制御量又は前記出力値に応じた無効電力を前記電源設備から前記電力系統に供給した際の前記電源設備内の機器の電圧の予測値が許容範囲を超過する場合に、前記電源設備内の機器の電圧変動が前記許容範囲内となるように前記制御量又は前記出力値を補正する補正演算部と、を備えた制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
連系点の電圧変動を抑制しつつ、電源設備内の機器の電圧変動も許容範囲内に抑えることができる分散型電源システムの制御装置及び制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る分散型電源システムを模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係る分散型電源システムの制御装置を模式的に表すブロック図である。
図3】実施形態に係る制御装置の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図4】実施形態に係る補正演算部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図5】実施形態に係る分散型電源システムの制御装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
【0011】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る分散型電源システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、分散型電源システム2は、無限大母線電力系統3につながる電力系統4と、連系点LPを介して電力系統4と接続される電源設備5と、を備える。電源設備5は、分散型電源6と、電力変換装置8と、制御装置10と、変圧器12、14と、を備える。電力系統4の電力は、交流電力である。電力系統4の電力は、例えば、三相交流電力である。
【0013】
分散型電源6は、例えば、ソーラーパネルである。分散型電源6の電力は、例えば、直流電力である。但し、分散型電源6は、ソーラーパネルに限ることなく、例えば、風力発電機やガスタービン発電機などの他の発電機でもよい。また、分散型電源6は、例えば、蓄電池やコンデンサなどの電荷蓄積素子でもよい。分散型電源6の電力は、交流電力でもよい。
【0014】
電力変換装置8は、分散型電源6と接続されるとともに、変圧器12、14などを介して電力系統4と接続される。電力変換装置8は、分散型電源6の電力を電力系統4に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統4に供給することにより、分散型電源6を電力系統4と連系させる。変圧器12、14は、電力変換装置8から出力される交流電力の電圧の大きさを電力系統4に応じた電圧の大きさに変換する。
【0015】
電力変換装置8は、分散型電源6の出力に基づき、有効電力を電力系統4に供給するとともに、最適な無効電力を電力系統4に供給する。これにより、電力変換装置8は、自身の有効電力の供給の影響などによって、電力系統4と電源設備5との連系点LPの電圧が変動してしまうことを抑制する。
【0016】
電力変換装置8は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のオン・オフにより、電力の変換を行う。電力変換装置8には、例えば、周知のインバータ回路が用いられる。電力変換装置8の構成は、上記の電力変換を行うことができる任意の構成でよい。
【0017】
制御装置10は、電力変換装置8の動作を制御する。制御装置10は、電力変換装置8から電力系統4に供給する無効電力の出力値を電力変換装置8に入力する。電力変換装置8は、制御装置10から入力された出力値に応じた無効電力を出力する。このように、制御装置10は、電力変換装置8から電力系統4への無効電力の供給の動作を制御する。これにより、制御装置10は、連系点LPの電圧変動を抑制する。なお、制御装置10は、例えば、電力変換装置8から電力系統4への有効電力の供給の動作をさらに制御してもよい。
【0018】
電源設備5は、例えば、複数の分散型電源6と、複数の分散型電源6のそれぞれに対応した複数の電力変換装置8と、を備える。制御装置10は、複数の電力変換装置8の動作を制御する。制御装置10は、複数の電力変換装置8のそれぞれに対して無効電力の出力値を入力する。但し、分散型電源システム2に設けられる分散型電源6及び電力変換装置8の台数は、1台でもよい。制御装置10は、1台の電力変換装置8の動作を制御してもよい。分散型電源システム2に設けられる分散型電源6及び電力変換装置8の台数は、任意の台数でよい。
【0019】
電源設備5は、例えば、発電所などの発電施設に設けられる。電源設備5の各機器は、例えば、発電施設の構内に設置される機器である。発電施設は、発電所に限ることなく、例えば、ソーラーパネルを分散型電源6として屋上などに設置した建築物などでもよい。但し、電源設備5の各機器は、必ずしも1つの敷地内や1つの建築物内などにまとめて設置されていなくてもよい。例えば、制御装置10は、複数の分散型電源6や複数の電力変換装置8などと別の位置(敷地又は建築物)に配置してもよい。換言すれば、制御装置10は、電源設備5とは別に設けてもよい。複数の分散型電源6及び複数の電力変換装置8は、1つの位置に限ることなく、複数の位置に分けて配置してもよい。
【0020】
図2は、実施形態に係る分散型電源システムの制御装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、電源設備5は、例えば、計測装置20、22をさらに備える。計測装置20は、分散型電源6から電力変換装置8に入力される直流電圧の電圧値Vdc、及び分散型電源6から電力変換装置8に入力される直流電流の電流値Idcを検出し、検出した電圧値Vdc及び電流値Idcを電力変換装置8に入力する。計測装置20は、例えば、複数の分散型電源6のそれぞれに対応して複数設けられ、検出した電圧値Vdc及び電流値Idcを分散型電源6に対応する電力変換装置8に入力する。
【0021】
電力変換装置8は、例えば、直流電力を分散型電源6の最大電力点に追従させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式の制御を行う。電力変換装置8は、例えば、計測装置20によって検出された電圧値Vdc及び電流値Idcを基に、分散型電源6の最大電力点(最適動作点)を抽出し、抽出した最大電力点に応じた有効電力を電力系統4に供給するように、有効電力の出力動作を行う。
【0022】
但し、電力変換装置8から電力系統4に供給する有効電力の決定方法は、MPPT方式に限るものではない。電力変換装置8から電力系統4に供給する有効電力は、例えば、上位のコントローラなどから入力される有効電力指令値などに基づいて決定してもよい。電力変換装置8は、入力された有効電力指令値に応じた有効電力を電力系統4に供給するように、有効電力の出力動作を行ってもよい。有効電力指令値は、例えば、制御装置10から電力変換装置8に入力してもよい。この場合、計測装置20は、省略可能である。
【0023】
計測装置22は、電力系統4と電源設備5との連系点LPの有効電力値Pと、連系点LPの無効電力値Qと、連系点LPの電圧値Vsと、を検出し、検出した有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを制御装置10に入力する。
【0024】
制御装置10は、系統インピーダンス推定部30と、無効電力演算部32と、制御量演算部34と、補正演算部36と、出力値設定部38と、を有する。制御装置10は、計測装置22から入力された有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを系統インピーダンス推定部30に入力する。
【0025】
系統インピーダンス推定部30は、計測装置22から入力された有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを基に、電力系統4の系統インピーダンスの抵抗成分Rの推定値^Rと、電力系統4の系統インピーダンスのリアクタンス成分Xの推定値^Xと、無限大母線電力系統3の電圧値Vrの推定値^Vrと、を演算する。なお、^Rなどの推定値を表す^(ハット)は、図2などに表すように、Rなどの直上に表記されるものであるが、明細書中においては、書式形式の都合により、^Rのように、ずらして表記するものとする。
【0026】
系統インピーダンス推定部30は、換言すれば、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを基に、電力系統4の系統特性を推定する。この際、系統インピーダンス推定部30は、図2に表したように、電力系統4の系統モデルを系統インピーダンスの抵抗成分R及びリアクタンス成分Xのみの最も簡素な系統モデルとして考える。
【0027】
系統インピーダンス推定部30は、例えば、ニュートン法や二分法などの非線形計画法を用いることにより、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsから、電力系統4の系統インピーダンスの抵抗成分Rの推定値^Rと、電力系統4の系統インピーダンスのリアクタンス成分Xの推定値^Xと、無限大母線電力系統3の電圧値Vrの推定値^Vrと、を演算する。非線形計画法を用いた各推定値^R、^X、^Vrの演算方法は、例えば、上記の特許文献1、2などに、より詳細に説明されている。系統インピーダンス推定部30は、演算した各推定値^R、^X、^Vrを無効電力演算部32に入力する。
【0028】
無効電力演算部32は、系統インピーダンス推定部30から入力された各推定値^R、^X、^Vr、及び計測装置22から入力された現在の有効電力値Pを基に、連系点LPにおける電圧変動を抑制するための連系点LPの無効電力Qopを演算する。無効電力Qopの演算方法は、例えば、上記の特許文献1、2などに、より詳細に説明されている。無効電力演算部32は、演算した無効電力Qopを制御量演算部34に入力する。
【0029】
制御量演算部34は、無効電力演算部32から入力された無効電力Qopと、計測装置22から入力された現在の無効電力値Qと、を基に、電源設備5から電力系統4に供給する無効電力の制御量MVを演算する。制御量MVは、換言すれば、連系点LPの無効電力を演算された無効電力Qopに近付けるために、電源設備5から電力系統4に供給する無効電力である。制御量演算部34は、例えば、演算された無効電力Qopと現在の無効電力値Qとの差分を演算し、演算した差分に対してPI制御を行うことにより、制御量MVを演算する。制御量MVの演算方法は、例えば、上記の特許文献1、2などに、より詳細に説明されている。制御量演算部34は、演算した制御量MVを補正演算部36に入力する。
【0030】
補正演算部36は、制御量MVに応じた無効電力を電源設備5から電力系統4に供給した際に、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲を超過するか否かを演算により確認する。補正演算部36は、超過しないことを確認した場合には、制御量演算部34から入力された制御量MVをそのまま出力値設定部38に入力する。一方、補正演算部36は、超過することを確認した場合には、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲内となるように制御量MVを補正し、補正後の制御量MVを出力値設定部38に入力する。
【0031】
出力値設定部38は、補正演算部36から入力された制御量MVを基に、電力変換装置8から電力系統4に供給する無効電力の出力値を演算し、演算した出力値を電力変換装置8に入力することにより、電力変換装置8に出力値を設定する。電源設備5が複数の電力変換装置8を有する場合、出力値設定部38は、補正演算部36から入力された制御量MVを基に、複数の電力変換装置8のそれぞれから電力系統4に供給する無効電力の出力値を演算し、演算した出力値を複数の電力変換装置8のそれぞれに入力する。出力値の演算方法は、例えば、上記の特許文献1、2などに、より詳細に説明されている。
【0032】
電力変換装置8は、電圧値Vdc及び電流値Idcに基づくMPPT方式の制御によって有効電力を決定し、決定した有効電力を電力系統4に供給するとともに、制御装置10から入力された出力値に対応する無効電力を電力系統4に供給する。
【0033】
図3は、実施形態に係る制御装置の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
計測装置22及び制御装置10の系統インピーダンス推定部30は、定期的に有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを取得する。系統インピーダンス推定部30は、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを取得する毎に、各推定値^R、^X、^Vrを演算(予測)する(図3のステップS101)。
【0034】
無効電力演算部32は、系統インピーダンス推定部30から各推定値^R、^X、^Vrが入力される毎に、無効電力Qopを演算する(図3のステップS102)。
【0035】
制御量演算部34は、無効電力Qopが入力される毎に、制御量MVを演算する(図3のステップS103)。
【0036】
補正演算部36は、制御量MVが入力される毎に、制御量MVの補正の演算を行う(図3のステップS104)。
【0037】
出力値設定部38は、制御量MVが入力される毎に、出力値の演算を行い、電力変換装置8に出力値を設定する(図3のステップS105)。電力変換装置8は、出力値が入力される毎に、出力値に応じた無効電力を電力系統4に供給する。
【0038】
電力変換装置8及び制御装置10は、上記の処理を繰り返すことにより、分散型電源6に応じた有効電力を電力系統4に供給するとともに、電力系統4の系統特性に応じた無効電力を電力系統4に随時供給する。
【0039】
このように、有効電力及び無効電力を電力系統4に供給することにより、電源設備5から電力系統4への有効電力の供給などの影響による連系点LPの電圧の変動を抑制することができる。例えば、連系点LPの電圧値Vsの変動を±2%以内に抑えることができる。
【0040】
図4は、実施形態に係る補正演算部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図4に表したように、補正演算部36は、制御量演算部34から制御量MVが入力された際に、まず、連系点LPの現在の有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを計測装置22から計測情報として取得するとともに、電力変換装置8の現在の有効電力値、無効電力値、及び出力端の電圧値を電力変換装置8から計測情報として取得する(図4のステップS201)。電源設備5が複数の電力変換装置8を有する場合、補正演算部36は、複数の電力変換装置8のそれぞれから計測情報を取得する。
【0041】
補正演算部36は、電源設備5内に設けられた機器を表すモデル情報を有する。補正演算部36は、取得した計測情報とモデル情報とを基に潮流計算を行うことにより、制御量MVに応じた無効電力を電源設備5から電力系統4に供給した際の、電源設備5内の機器の電圧の予測値を演算する(図4のステップS202)。
【0042】
モデル情報は、例えば、電源設備5に含まれる機器の接続形態の情報、機器の定格電圧の情報、機器の特性の情報、及び機器の電圧変動の許容範囲の情報などを含む。
【0043】
例えば、この例では、モデル情報は、連系点LPに接続された変圧器14、変圧器14に接続された複数の変圧器12、複数の変圧器12に接続された複数の電力変換装置8、複数の電力変換装置8に接続された複数の分散型電源6の接続形態を、機器の接続形態の情報として有する。電源設備5内に設けられた機器とは、例えば、複数の分散型電源6、複数の電力変換装置8、複数の変圧器12、及び変圧器14などである。但し、電源設備5内に設けられる機器は、これらに限定されるものではない。電源設備5内に設けられる機器は、例えば、遮断器などをさらに有してもよい。
【0044】
モデル情報は、例えば、電力変換装置8、変圧器12、14の定格電圧の情報を有する。モデル情報は、例えば、変圧器12、14のインピーダンス(インダクタンス)の情報を機器の特性の情報として有する。モデル情報は、例えば、電力変換装置8、変圧器12、14の電圧変動の許容範囲の情報を有する。
【0045】
補正演算部36は、計測情報とモデル情報とを基に潮流計算を行うことにより、例えば、制御量MVに応じた無効電力を電源設備5から電力系統4に供給した際の、電力変換装置8の出力端の電圧の予測値と、変圧器12の電力系統4側(変圧器14側)の電圧の予測とを、電源設備5内の機器の電圧の予測値として演算する。
【0046】
なお、モデル情報に含まれる情報は、上記に限定されるものではない。モデル情報に含まれる情報は、電源設備5内の機器の電圧の予測値を潮流計算によって演算するために必要な任意の情報でよい。
【0047】
補正演算部36は、電源設備5内の機器の電圧の予測値を演算した後、演算した電圧の予測値が機器の電圧変動の許容範囲内か否かを確認する(図4のステップS203)。
【0048】
例えば、電力変換装置8の出力端の電圧の電圧変動は、電力変換装置8の定格電圧の±10%以内に許容範囲が設定される。変圧器12の電力系統4側の電圧の電圧変動は、変圧器12の定格電圧の±5%以内に許容範囲が設定される。補正演算部36は、演算した電圧の予測値が、これらの許容範囲内か否かを確認する。
【0049】
補正演算部36は、許容範囲を超過しないことを確認した場合には、確認した制御量MVを出力値設定部38に入力する。
【0050】
一方、補正演算部36は、超過することを確認した場合には、電圧の予測値が許容範囲内に入る方向に制御量MVを補正する(図4のステップS204)。
【0051】
補正演算部36は、例えば、1kvarなどの所定の補正量を有する。補正演算部36は、例えば、電圧の予測値が許容範囲の上限側を超える場合には、制御量MVから補正量を減算することにより、制御量MVを補正する。これにより、機器の電圧を低下させる側に制御量MVを補正することができる。そして、補正演算部36は、例えば、電圧の予測値が許容範囲の下限側を超える場合には、制御量MVに補正量を加算することにより、制御量MVを補正する。これにより、機器の電圧を上昇させる側に制御量MVを補正することができる。
【0052】
補正演算部36は、制御量MVを補正した後、ステップS202の処理に戻る。すなわち、補正演算部36は、補正後の制御量MVを基に、電源設備5内の機器の電圧の予測値を再度演算する。
【0053】
補正演算部36は、演算した電圧の予測値が機器の電圧変動の許容範囲内となるまで、ステップS202~S204の処理を繰り返す。これにより、連系点LPの電圧変動を抑制するために、電源設備5から電力系統4に無効電力を供給した際にも、電源設備5内の機器の電圧変動を許容範囲内に抑えることができる。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態に係る分散型電源システム2では、制御装置10が、制御量MVに応じた無効電力を電源設備5から電力系統4に供給した際の電源設備5内の機器の電圧の予測値が許容範囲を超過する場合に、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲内となるように制御量MVを補正する補正演算部36を有する。これにより、連系点LPの電圧変動を抑制しつつ、電源設備5内の機器の電圧変動も許容範囲内に抑えることができる。
【0055】
図5は、実施形態に係る分散型電源システムの制御装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明を省略する。
図5に表したように、制御装置10aでは、補正演算部36が省略され、別の補正演算部40が設けられている。
【0056】
制御装置10aにおいて、制御量演算部34は、演算した制御量MVを出力値設定部38に入力する。出力値設定部38は、制御量演算部34から入力された制御量MVを基に、電力変換装置8から電力系統4に供給する無効電力の出力値を演算し、演算した出力値を補正演算部40に入力する。
【0057】
補正演算部40は、出力値に応じた無効電力を電力変換装置8に設定し、電源設備5から電力系統4に供給した際に、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲を超過するか否かを演算により確認する。
【0058】
補正演算部36は、超過しないことを確認した場合には、出力値設定部38から入力された出力値をそのまま電力変換装置8に入力する。補正演算部36は、例えば、超過しないことを確認した場合には、出力値設定部38から入力された複数の出力値を複数の電力変換装置8のそれぞれに入力する。
【0059】
一方、補正演算部40は、超過することを確認した場合には、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲内となるように出力値を補正し、補正後の出力値を電力変換装置8に入力する。補正演算部40は、例えば、超過することを確認した場合には、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲内となるように複数の出力値を補正し、補正後の複数の出力値を複数の電力変換装置8のそれぞれに入力する。
【0060】
補正演算部40は、出力値設定部38から出力値が入力された際に、まず、連系点LPの現在の有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを計測装置22から計測情報として取得するとともに、電力変換装置8の現在の有効電力値、無効電力値、及び出力端の電圧値を電力変換装置8から計測情報として取得する。
【0061】
補正演算部40は、取得した計測情報とモデル情報とを基に潮流計算を行うことにより、出力値に応じた無効電力を電力変換装置8に設定し、電源設備5から電力系統4に供給した際の、電源設備5内の機器の電圧の予測値を演算する。
【0062】
補正演算部40は、計測情報とモデル情報とを基に潮流計算を行うことにより、例えば、出力値に応じた無効電力を電力変換装置8から電力系統4に供給した際の、電力変換装置8の出力端の電圧の予測値と、変圧器12の電力系統4側(変圧器14側)の電圧の予測とを、電源設備5内の機器の電圧の予測値として演算する。
【0063】
補正演算部40は、電源設備5内の機器の電圧の予測値を演算した後、演算した電圧の予測値が機器の電圧変動の許容範囲内か否かを確認する。
【0064】
補正演算部40は、許容範囲を超過しないことを確認した場合には、確認した出力値を電力変換装置8に入力する。
【0065】
一方、補正演算部40は、超過することを確認した場合には、電圧の予測値が許容範囲内に入る方向に出力値を補正する。
【0066】
補正演算部40は、例えば、1kvarなどの所定の補正量を有する。補正演算部40は、例えば、電圧の予測値が許容範囲の上限側を超える場合には、出力値から補正量を減算することにより、出力値を補正する。これにより、機器の電圧を低下させる側に出力値を補正することができる。そして、補正演算部40は、例えば、電圧の予測値が許容範囲の下限側を超える場合には、出力値に補正量を加算することにより、出力値を補正する。これにより、機器の電圧を上昇させる側に出力値を補正することができる。
【0067】
補正演算部40は、補正後の出力値を基に、電源設備5内の機器の電圧の予測値を再度演算する。補正演算部40は、演算した電圧の予測値が機器の電圧変動の許容範囲内となるまで、電圧の予測値の演算、許容範囲内か否かの確認、及び出力値の補正の処理を繰り返す。これにより、連系点LPの電圧変動を抑制するために、電源設備5から電力系統4に無効電力を供給した際にも、電源設備5内の機器の電圧変動を許容範囲内に抑えることができる。
【0068】
このように、補正演算部40は、出力値に応じた無効電力を電力変換装置8に設定し、電源設備5から電力系統4に供給した際の電源設備5内の機器の電圧の予測値が許容範囲を超過する場合に、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲内となるように出力値を補正する構成としてもよい。この場合にも、上記と同様に、連系点LPの電圧変動を抑制しつつ、電源設備5内の機器の電圧変動も許容範囲内に抑えることができる。
【0069】
補正演算部40は、例えば、出力値に応じた無効電力を電力変換装置8に設定し、電源設備5から電力系統4に供給した際の電源設備5内の機器の電圧の予測値が許容範囲を超過する場合に、電源設備5内の機器の電圧変動が許容範囲内となるように制御量MVを補正する構成としてもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
2…分散型電源システム、 3…無限大母線電力系統、 4…電力系統、 5…電源設備、 6…分散型電源、 8…電力変換装置、 10、10a…制御装置、 12、14…変圧器、 20、22…計測装置、 30…系統インピーダンス推定部、 32…無効電力演算部、 34…制御量演算部、 36、40…補正演算部、 38…出力値設定部
図1
図2
図3
図4
図5