(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ガス絶縁変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/20 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
H01F27/20
(21)【出願番号】P 2021040137
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和磨
(72)【発明者】
【氏名】森 繁和
(72)【発明者】
【氏名】中澤 義基
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 聖也
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-017645(JP,A)
【文献】特開平09-153415(JP,A)
【文献】実開昭51-031016(JP,U)
【文献】実開昭50-086641(JP,U)
【文献】特開昭61-256613(JP,A)
【文献】中国実用新案第206340424(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/20
H01F 27/08
H01F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側筒と、
前記内側筒に対する径方向の外側に、前記内側筒と同軸に配置された外側筒と、
前記内側筒と前記外側筒との間に、前記内側筒と同軸に配置され、前記内側筒との間に内側隙間が形成されるとともに、前記外側筒との間に外側隙間が形成された巻線と、
前記巻線に対して、前記内側筒の軸線方向に並べて配置され、前記巻線との間に、前記内側隙間及び前記外側隙間にそれぞれ連なる軸側隙間が形成された仕切りと、
自身の内側内部空間に連なり、外部に開口する内側流出口が形成され、前記内側筒と前記外側筒との間の空間における前記径方向の内側の部分に配置されて、前記巻線及び前記仕切りを支持する内側管路と、
を備えるガス絶縁変圧器。
【請求項2】
自身の外側内部空間に連なり、外部に開口する外側流出口が形成され、前記内側筒と前記外側筒との間の空間における前記径方向の外側の部分に配置されて、前記巻線及び前記仕切りを支持する外側管路を備える、請求項1に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項3】
前記内側管路には、前記内側流出口が複数形成され、
前記複数の内側流出口の径は、前記軸線方向の一方側に向かうに従い長くなる、請求項1又は2に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項4】
前記内側流出口は、前記内側管路における前記軸線方向の一方側の端部に形成され、
前記内側管路における前記軸線方向の他方側の端部には、前記内側内部空間に連なり、外部に開口する内側流入口が形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項5】
請求項4に記載のガス絶縁変圧器全体としての温度上昇限度をT
0とし、
前記ガス絶縁変圧器の局所的な温度上昇限度をT
1とし、
前記巻線における前記軸線方向の長さをLとしたときに、
前記巻線における前記軸線方向の前記一方側の端面から、前記軸線方向の前記他方側に向かって、(LT
1/T
0)の式による長さの範囲内に、前記内側流出口が形成されているガス絶縁変圧器。
【請求項6】
前記内側管路の前記内側内部空間内に配置され、前記内側筒の周方向に前記内側内部空間を分割し、前記内側管路における前記内側内部空間の周縁部にそれぞれ連なる内部仕切りを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項7】
前記軸線方向に直交する断面において、前記内側管路における前記内側内部空間の周縁部と前記内部仕切りとの接続部分は、湾曲している、請求項6に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項8】
前記内部仕切りを、前記軸線方向に互いに間隔を空けて複数備える、請求項6又は7に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項9】
前記内部仕切りは、前記径方向に延びる筒状である、請求項6から8のいずれか一項に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項10】
前記内部仕切りは、前記径方向に見たときに6角形の外周縁状を呈する、請求項9に記載のガス絶縁変圧器。
【請求項11】
前記内側流出口は、前記内側隙間と前記軸側隙間との接続部分を向く、請求項1から10のいずれか一項に記載のガス絶縁変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス絶縁変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に不活性ガス等の絶縁ガスが封入されたガス絶縁変圧器が、知られている。ガス絶縁変圧器の小型化及び高性能化のため、ガス絶縁変圧器の内部に生じる電界を緩和させるとともに、ガス絶縁変圧器の冷却性能を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-153415号公報
【文献】特開2019-204883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電界を緩和させるとともに冷却性能を向上させたガス絶縁変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のガス絶縁変圧器は、内側筒と、外側筒と、巻線と、仕切りと、内側管路と、を持つ。前記外側筒は、前記内側筒に対する径方向の外側に、前記内側筒と同軸に配置される。前記巻線は、前記内側筒と前記外側筒との間に、前記内側筒と同軸に配置され、前記内側筒との間に内側隙間が形成されるとともに、前記外側筒との間に外側隙間が形成される。前記仕切りは、前記巻線に対して、前記内側筒の軸線方向に並べて配置され、前記巻線との間に、前記内側隙間及び前記外側隙間にそれぞれ連なる軸側隙間が形成される。前記内側管路は、自身の内側内部空間に連なり、外部に開口する内側流出口が形成され、前記内側筒と前記外側筒との間の空間における前記径方向の内側の部分に配置されて、前記巻線及び前記仕切りを支持する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態のガス絶縁変圧器の要部を斜視した断面図。
【
図6】比較例のガス絶縁変圧器において、レールと巻線の角部とが接触する部分を説明する断面図。
【
図7】実施例のガス絶縁変圧器において、レールと巻線の角部とが接触する部分を説明する断面図。
【
図8】一実施形態の第1変形例のガス絶縁変圧器におけるレールの正面図。
【
図10】一実施形態の第2変形例のガス絶縁変圧器におけるレールの正面図。
【
図11】一実施形態の第3変形例のガス絶縁変圧器におけるレールの断面図。
【
図12】一実施形態の第4変形例のガス絶縁変圧器におけるレールの断面図。
【
図13】一実施形態の第5変形例のガス絶縁変圧器におけるレールの斜視図。
【
図14】一実施形態の第6変形例のガス絶縁変圧器におけるレールの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のガス絶縁変圧器を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1から
図3に示すように、本実施形態のガス絶縁変圧器1は、内側筒10と、外側筒15と、複数の巻線20と、キースペーサ25と、ガス止めカラー(仕切り)30と、レール(内側管路)35と、ダクトピース(外側管路)45と、を持つ。
【0009】
内側筒10及び外側筒15は、プレスボード等の電気的絶縁性を有する材料で、それぞれ円筒状に形成される。外側筒15の内径は、内側筒10の外径よりも大きい。
外側筒15は、内側筒10と同軸に配置されている。以下では、内側筒10及び外側筒15が共通で有する軸線を、軸線Oと言う(
図1参照)。ガス絶縁変圧器1を軸線O方向から見て、軸線Oに直交する方向を径方向と言い、軸線O回りに周回する方向を周方向と言う。
本実施形態では、ガス絶縁変圧器1は、軸線方向の一方側(以下では、単に一方側と言う)が上方、軸線方向における一方側とは反対側の他方側(以下では、単に他方側と言う)が下方となるように配置される。しかし、ガス絶縁変圧器1が配置される向きは、これに限定されない。
【0010】
外側筒15は、内側筒10に対する径方向の外側に配置される。
巻線20は、円環状に形成される。巻線20は、素線導体を径方向及び周方向に巻いて構成される。複数の巻線20は、軸線O方向に重ねられる。複数の巻線20は、内側筒10と外側筒15との間に、内側筒10と同軸に配置される。複数の巻線20は、内側筒10及び外側筒15からそれぞれ離間する。このため、
図3に示すように、複数の巻線20と内側筒10との間に、内側隙間S1が形成される。複数の巻線20と外側筒15との間に外側隙間S2が形成される。
なお、隙間S1,S2は、周方向においてレール35及びダクトピース45が配置されない
図3に対応する断面に形成される。一方で、
図2に示すように、周方向においてレール35及びダクトピース45が配置される断面には、隙間S1,S2は形成されない。
【0011】
図1に示すように、キースペーサ25は、径方向に長い平板状である。キースペーサ25は、放射状に配置され、軸線O方向に隣り合う巻線20の間に配置される。すなわち、キースペーサ25は、周方向に互いに間隔を空けて配置される。
なお、
図1では、キースペーサ25を一部のみ示している。
図2及び
図3では、キースペーサ25を示していない。
キースペーサ25は、軸線O方向に隣り合う巻線20とガス止めカラー30との間、軸線O方向に隣り合う巻線20同士の間にも、それぞれ配置される。
図1から
図3に示すように、ガス止めカラー30は、円環状に形成される。ガス止めカラー30は、巻線20に対して、軸線O方向に並べて配置される。本実施形態では、複数(本実施形態では、2枚)の巻線20おきに、軸線O方向に隣り合う巻線20の間に、ガス止めカラー30が配置される。
【0012】
図2及び
図3に示すように、ガス止めカラー30は、第1ガス止めカラー31と、第2ガス止めカラー32と、を有する。第1ガス止めカラー31は、内側筒10、レール35との間でそれぞれ気密に封止される。第1ガス止めカラー31は、外側筒15との間に、第1カラー隙間S4が形成される。第2ガス止めカラー32は、外側筒15、ダクトピース45との間でそれぞれ気密に封止される。第2ガス止めカラー32は、内側筒10との間に、第2カラー隙間S5が形成される。
第1ガス止めカラー31及び第2ガス止めカラー32は、軸線O方向に交互に配置される。キースペーサ25及びガス止めカラー30は、内側筒10と同様の材料で形成される。
以下では、一方側(上方)に第1ガス止めカラー31が配置され、他方側(下方)に第2ガス止めカラー32が配置された複数の巻線20を、それぞれ巻線20Aともいう。一方側に第2ガス止めカラー32が配置され、他方側に第1ガス止めカラー31が配置された複数の巻線20を、それぞれ巻線20Bともいう。
【0013】
ガス止めカラー30と巻線20との間に、軸側隙間S7が形成される。軸側隙間S7は、軸線O方向に隣り合う巻線20同士の間にも形成される。軸側隙間S7は、内側隙間S1及び外側隙間S2にそれぞれ連なる。
キースペーサ25は、複数の巻線20及びガス止めカラー30を支持する。
【0014】
例えば、
図4及び
図5に示すように、レール35は、周壁36と、端壁37と、を持つ。周壁36は、周壁36の長手方向に見たときに、四角形の外縁状を呈する角筒状である。周壁36内の空間は、内側内部空間36aである。周壁36は、軸線O方向に延びる。周壁36における他方側の端部には、レール35の外部に開口する内側流入口36bが形成される。内側流入口36bは、内側内部空間36aに連なる。
図1及び
図2に示すように、レール35は、内側筒10と外側筒15との間の空間における径方向の内側の部分に配置される。周壁36における、互いに対向する一対の第1側壁39の一方は、内側筒10の外周面に接触する。
図5に示すように、周壁36における、互いに対向する一対の第2側壁40には、複数の内側流出口40aがそれぞれ形成される。
図4に示すように、例えば、各内側流出口40aは、第2側壁40の厚さ方向に見たときに矩形状を呈する。複数の内側流出口40aの軸線O方向の長さは互いに等しく、複数の内側流出口40aの周方向の長さは互いに等しい。
【0015】
複数の内側流出口40aは、レール35の外部に開口し、内側内部空間36aにそれぞれ連なる。
図2及び
図3に示すように、複数の内側流出口40aは、周方向を向き、内側隙間S1に向かって開口する。
複数の内側流出口40aにおける軸線O方向の位置については、後で詳しく述べる。
図5に示すように、端壁37は、周壁36における一方側の端部を塞ぐ。
【0016】
図1に示すように、ガス絶縁変圧器1は、レール35を複数備える。複数のレール35は、周方向に互いに間隔を空けて配置される。
レール35とキースペーサ25とは、公知の凹凸嵌合により互いに接続される。レール35は、キースペーサ25を介して、複数の巻線20及びガス止めカラー30を支持する。
【0017】
ダクトピース45は、レール35と同様に構成される。すなわち、ダクトピース45は、
図2に示すように、レール35の周壁36、端壁37と同一の構成の周壁46、端壁(不図示)を持つ。周壁46内の空間は、外側内部空間46aである。周壁46は、軸線O方向に延びる。周壁46における他方側の端部には、ダクトピース45の外部に開口する外側流入口(不図示)が形成される。外側流入口は、外側内部空間46aに連なる。
ダクトピース45は、内側筒10と外側筒15との間の空間における径方向の外側の部分に配置される。周壁46における一対の第1側壁49の一方は、外側筒15の内周面に接触する。周壁46における、互いに対向する一対の第2側壁50には、複数の外側流出口50aがそれぞれ形成される。複数の外側流出口50aは、ダクトピース45の外部に開口し、外側内部空間46aにそれぞれ連なる。複数の外側流出口50aは、周方向を向き、外側隙間S2に向かって開口する。
複数の外側流出口50aにおける軸線O方向の位置については、後で詳しく述べる。
【0018】
以上のように、レール35、ダクトピース45は、内側内部空間36a、外側内部空間46aが形成された中抜き構造である。レール35及びダクトピース45は、ポリエステル樹脂等の電気的絶縁性を有する樹脂材料で形成される。
図1に示すように、ガス絶縁変圧器1は、ダクトピース45を複数備える。複数のダクトピース45は、周方向に互いに間隔を空けて、レール35の径方向の外側に配置される。
ダクトピース45とキースペーサ25とは、公知の凹凸嵌合により互いに接続される。ダクトピース45は、キースペーサ25を介して、複数の巻線20及びガス止めカラー30を支持する。キースペーサ25は、レール35及びダクトピース45により、径方向及び軸線O方向に押さえ付けられる。
例えば、レール35及びダクトピース45は、射出成形により形成される。
内側筒10と外側筒15との間の空間には、高圧の絶縁ガスが封入される。
【0019】
次に、以上のように構成されたガス絶縁変圧器1の動作について説明する。
図示しない送風装置により、ガス絶縁変圧器1内で絶縁ガスが下方から上方に向かって流れる。
図3に示すように、第2カラー隙間S5を通して内側隙間S1を上方に向かって流れる絶縁ガスの一部は、第1ガス止めカラー31に、第1ガス止めカラー31の下方から当たる。第2カラー隙間S5を通して流れ込んだ絶縁ガスは、流れる向きを径方向の外側に変える。絶縁ガスは、第1ガス止めカラー31と巻線20Aとの間の軸側隙間S7、軸線O方向に隣り合う巻線20Aの間の軸側隙間S7、巻線20Aと第2ガス止めカラー32との間の軸側隙間S7をそれぞれ流れる。絶縁ガスは、外側筒15に、外側筒15の径方向の内側から当たる。軸側隙間S7を通して流れた絶縁ガスは、流れる向きを上方に変える。絶縁ガスは、第1カラー隙間S4を通して外側隙間S2を上方に向かって流れる。
【0020】
なお、巻線20Aの周囲を絶縁ガスが流れるとき、第1ガス止めカラー31に隣り合う、内側隙間S1と軸側隙間S7との接続部分R1、及び、第2ガス止めカラー32に隣り合う、外側隙間S2と軸側隙間S7との接続部分R2において、絶縁ガスが淀みやすい。
例えば、接続部分R1は、内側筒10、レール35との間でそれぞれ気密に封止され、外側筒15との間に、第1カラー隙間S4が形成された第1ガス止めカラー31に対して、この第1ガス止めカラー31に隣り合う、内側隙間S1と軸側隙間S7との接続部分である。
【0021】
この絶縁ガスの一部は、第2ガス止めカラー32に、第2ガス止めカラー32の下方から当たる。第1カラー隙間S4を通して流れ込んだ絶縁ガスは、流れる向きを径方向の内側に変える。絶縁ガスは、第2ガス止めカラー32と巻線20Bとの間の軸側隙間S7、軸線O方向に隣り合う巻線20Bの間の軸側隙間S7、巻線20Bと第1ガス止めカラー31との間の軸側隙間S7をそれぞれ流れる。絶縁ガスは、内側筒10に、内側筒10の径方向の外側から当たる。軸側隙間S7を通して流れた絶縁ガスは、流れる向きを上方に変える。絶縁ガスは、第2カラー隙間S5を通して内側隙間S1を上方に向かって流れる。
なお、巻線20Bの周囲を絶縁ガスが流れるとき、第2ガス止めカラー32に隣り合う、外側隙間S2と軸側隙間S7との接続部分R3、及び、第1ガス止めカラー31に隣り合う、内側隙間S1と軸側隙間S7との接続部分R4において、絶縁ガスが淀みやすい。
【0022】
このように、絶縁ガスは、上方に向かうに従い、流れる向きを径方向の外側、径方向の内側、と交互に変える。
前記複数の内側流出口40aの一部における軸線O方向の位置は、接続部分R1,R4の位置である。前記複数の内側流出口40aの残部おける軸線O方向の位置は、接続部分R1,R4の以外の位置である。前記複数の外側流出口50aの一部における軸線O方向の位置は、接続部分R2,R3の位置である。
レール35の内側流入口36bから流れ込んだ絶縁ガスは、上方に向かって流れ、複数の内側流出口40aから周方向に向かって吹き出す。吹き出した絶縁ガスは、接続部分R1,R4で淀みやすくなっている絶縁ガスを、流れやすくする。
一方で、ダクトピース45の外側流入口から流れ込んだ絶縁ガスは、上方に向かって流れ、複数の外側流出口50aから周方向に向かって吹き出す。吹き出した絶縁ガスは、接続部分R2,R3で淀みやすくなっている絶縁ガスを、流れやすくする。
【0023】
複数の巻線20に電流が流れると、例えば、フレミングの法則により、巻線20に径方向の内側に向かう力が作用する。このため、複数の巻線20に対して径方向の内側に配置されたレール35が、複数の巻線20により、レール35の径方向の外側からこの力を受ける。
電流が流れることにより、複数の巻線20が発熱する。発熱した複数の巻線20は、隙間S1,S2,S7を流れる絶縁ガスにより冷却される。複数の巻線20を冷却するため、隙間S1,S2,S7を流れる絶縁ガスの温度は、上方に向かうに従い高くなる。レール35及びダクトピース45は、周囲を流れる絶縁ガスにより加熱される。このため、レール35の内側内部空間36a、及びダクトピース45の外側内部空間46aを流れる絶縁ガスの温度は、上方に向かうに従いそれぞれ高くなる。
ガス絶縁変圧器1は、入力された電圧を変換して出力する。
【0024】
なお、
図2に示すように、巻線20の角部とレール35とが接触する部分R7には、微小なギャップが形成される。同様に、巻線20の角部とダクトピース45とが接触する部分R8には、微小なギャップが形成される。巻線20に電流が流れると、これらの部分R7,R8近傍では、電界が集中し、放電発生の起点となりやすい。
【0025】
ここで、レール35の内側内部空間36aが電界集中に与える影響を検討した結果について説明する。
図6に示す、比較例のガス絶縁変圧器におけるレール35Aには、内側内部空間36aは形成されない。巻線20の角部とレール35Aとが接触する部分R9には、微小なギャップが形成される。レール35Aは、接地されている。巻線20に電流を流したときに、この部分R9に生じる電界の大きさを、解析により求めた。この電界の大きさを、100%とする。
図7に示す、実施例のガス絶縁変圧器1におけるレール35には、内側内部空間36aが形成される。内側内部空間36aには、絶縁ガスがある。周壁36の外周縁内の断面積に対して、内側内部空間36aの断面積は、64%であるとした。巻線20に電流を流したときに、巻線20の角部とレール35とが接触する部分R7に生じる電界の大きさを、解析により求めた。この電界の大きさは、比較例のガス絶縁変圧器における電界の大きさに対して、78%に低減される。この理由は、レール35は、レール35Aに比べて、内側内部空間36aが配置された位置における比誘電率が低くなり、この位置で電位を分担できたためである。
【0026】
すなわち、レール35に内側内部空間36aを形成して中抜き構造にすることにより、内側内部空間36aが形成されない場合に比べて、電界の大きさが22%低減される。
ダクトピース45についても、レール35と同様である。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のガス絶縁変圧器1では、内側筒10と外側筒15との間において、巻線20及びガス止めカラー30はレール35により支持される。レール35の内側内部空間36aに流れ込んだ絶縁ガスは、内側内部空間36aに連なる内側流出口40aからレール35の外部に吹き出す。巻線20に電流が流れると、巻線20が発熱する。発熱した巻線20は、内側隙間S1、外側隙間S2、及び軸側隙間S7を流れる絶縁ガスにより冷却される。
例えば絶縁ガスが淀みやすい接続部分R1,R4があっても、内側流出口40aから吹き出す絶縁ガスにより、接続部分R1,R4における絶縁ガスが効率的に流れる。従って、ガス絶縁変圧器1の冷却性能を向上させることができる。
レール35には、内側内部空間36aが形成される。このため、内側内部空間36aにおいて電位を分担でき、巻線20に電流が流れたときにレール35に生じる電界を緩和させることができる。
【0028】
ガス絶縁変圧器1は、ダクトピース45を持つ。このため、ダクトピース45により、巻線20及びガス止めカラー30を支持することができる。そして、ダクトピース45の外側内部空間46aに流れ込んだ絶縁ガスが外側流出口50aから吹き出すことにより、接続部分R2,R3における絶縁ガスが効率的に流れる。従って、ガス絶縁変圧器1の冷却性能を、さらに向上させることができる。
内側流出口40aは、内側隙間S1と前記軸側隙間S7との接続部分R1を向く。このため、絶縁ガスが淀みやすい接続部分R1に、内側流出口40aから絶縁ガスを効率的に吹き付け、絶縁ガスが流れやすくすることができる。
【0029】
本実施形態のガス絶縁変圧器1は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図8及び
図9に示す第1変形例のガス絶縁変圧器1Aのように、レール35Aの複数の内側流出口40aの径は、一方側(上方)に向かうに従い長くなってもよい。例えば、内側流出口40aの径は、内側流出口40aの軸線O方向の長さであってもよいし、内側流出口40aの軸線O方向の長さ及び内側流出口40aの周方向の長さの平均値であってもよい。
レール35Aの内側内部空間36aを流れる絶縁ガスの温度は、上方に向かうに従い高くなる。このため、上方に位置する内側流出口40aから吹き出す絶縁ガスほど、巻線20を冷却し難くなる。複数の内側流出口40aの径が上方に向かうに従い長くなるため、上方の内側流出口40aほど、吹き出す絶縁ガスの流量が増加し、上方の巻線20をより冷却しやすくなる。従って、ガス絶縁変圧器1Aの冷却性能を、さらに向上させることができる。
【0030】
図10に示す第2変形例のガス絶縁変圧器1Bのように、レール35Bの内側流出口40aは、レール35Bにおける一方側(上方)の端部のみに形成されてもよい。例えば、レール35Bにおける一方側の端部とは、レール35Bの全長に対する30%の長さの範囲である。
より詳しく説明するために、以下のように値を規定する。ガス絶縁変圧器1B全体としての温度上昇限度を、T
0とする。例えば、温度上昇限度T
0は、複数の巻線20が発熱する前に比べた、複数の巻線20が発熱する際の複数の巻線20の温度上昇の限度である。ガス絶縁変圧器1Bの局所的な温度上昇限度を、T
1とする。例えば、温度上昇限度T
1は、複数の巻線20Aが発熱する際の複数の巻線20Aの温度上昇の限度である。温度上昇限度T
1は、複数の巻線20Bが発熱する際の複数の巻線20Bの温度上昇の限度でもある。
【0031】
例えば、温度上昇限度T0,T1は、JIS C 4003に規定された耐熱クラスに応じて定められる。温度上昇限度T0を超えると、内側筒10等の電気的絶縁性を有する材料で形成された部材が、早期に劣化してしまう。
複数の巻線20全体における軸線O方向の長さを、Lとする。
このとき、複数の巻線20における一方側の端面から、他方側に向かって、(LT1/T0)の式による長さの範囲B1内に、複数の内側流出口40aがそれぞれ形成されている。
【0032】
レール35Bの内側流出口40aが一方側の端部のみに形成されている場合には、隙間S1,S2,S7に他方側から絶縁ガスが流れ込むときに、複数の巻線20における温度が高くなりやすい一方側の巻線20に、絶縁ガスを集中的に吹き付けられる。このため、ガス絶縁変圧器1Bの冷却性能を、さらに向上させることができる。
内側流出口40aが範囲B1内に形成されているため、劣化しやすい内側筒10等の部分を、効率的に冷却させることができる。
なお、第2変形例のガス絶縁変圧器1Bでは、レール35Bの一方側の端部における範囲B1以外の部分に、内側流出口40aが形成されてもよい。
【0033】
図11に示す第3変形例のガス絶縁変圧器1Cのように、本実施形態のガス絶縁変圧器1の各構成に加えて、内部仕切り55を持ってもよい。内部仕切り55は、周方向が厚さ方向となる平板状である。なお、
図11は、軸線O方向に直交する断面図である。
内部仕切り55は、レール35Cの内側内部空間36a内に配置され、内側内部空間36aを周方向に分割する。内部仕切り55は、レール35Cにおける内側内部空間36aの周縁部である一対の第1側壁39にそれぞれ連なる。第3変形例のガス絶縁変圧器1Cでは、内部仕切り55は、一対の第1側壁39を径方向に連結する。内部仕切り55は、内側内部空間36aの軸線O方向の全長にわたって延びる。
【0034】
第3変形例のガス絶縁変圧器1Cでは、複数の巻線20に電流が流れると、レール35Cに、複数の巻線20により、径方向の内側に向かう力F1が作用する。内部仕切り55が一対の第1側壁39間を支持する部材となり、レール35Cが力F1に耐えやすい。
第3変形例のガス絶縁変圧器1Cが内部仕切り55を持つことにより、レール35Cが力F1に耐えやくなり、レール35Cの機械的強度が向上する。
【0035】
図12に示す第4変形例のガス絶縁変圧器1Dのように、第3変形例のガス絶縁変圧器1Cの各構成に加えて、レール35Dにおける隅部36c、及び、レール35Dにおける内側内部空間36aの周縁部と内部仕切り55との接続部分36dは、それぞれ湾曲してもよい。
隅部36cは、第1側壁39と第2側壁40との接続部分における、周壁36の外側の部分である。隅部36cの表面は、周壁36の外側に向かって凸となる曲面状に湾曲する。
接続部分36dは、第1側壁39と内部仕切り55との接続部分のうち、周壁36の内側の部分である。接続部分36dの表面は、周壁36の外側に向かって凸となる曲面状に湾曲する。
隅部36cの表面及び接続部分36dの表面は、それぞれR面取りである。
【0036】
接続部分36dが湾曲していることにより、この表面が直角に形成されている場合に比べて、割れの起点が生じにくい。従って、レール35Dの機械的強度が向上する。さらに、接続部分36dに放電発生の起点となる部分が無くなり、レール35Dが放電し難くなる。
【0037】
図13に示す第5変形例のガス絶縁変圧器1Eのように、第3変形例のガス絶縁変圧器1Cにおける内部仕切り55に代えて、複数の柱(内部仕切り)60を持ってもよい。なお、
図13では、複数の巻線20を二点鎖線で示す。端壁37及び複数の内側流出口40aは、示していない。
例えば、柱60は、径方向に延びる円柱状である。柱60は、一対の第1側壁39を径方向に連結する。柱60と第2側壁40との間には、隙間が形成される。複数の柱60は、軸線O方向に互いに間隔を空けて配置される。複数の柱60は、全体として梯子状である。
柱60は、軸線O方向において巻線20と同じ位置に配置されることが好ましい。
例えば、レール35E及び複数の柱60は、3D(次元)プリンタにより形成される。
【0038】
第5変形例のガス絶縁変圧器1Eのレール35Eでは、ガス絶縁変圧器1C,1Dのレール35C,35Dに比べて、周壁36内の電気的絶縁性を有する部材が減る。このため、レール35Eに生じる電界を、さらに緩和させることができる。
なお、柱60の形状は、円柱状に限定されず、多角形の柱状でもよい。
【0039】
図14に示す第6変形例のガス絶縁変圧器1Fのように、第5変形例のガス絶縁変圧器1Eの複数の柱60に代えて、複数の柱(内部仕切り)65を有してもよい。柱65は、径方向に延びる筒状である。より詳しく説明すると、
図14及び
図15に示すように、柱65は、径方向に見たときに6角形の外周縁状を呈する。
柱65が筒状であるため、柱65の内部空間において電位を分担でき、巻線20に電流が流れたときに柱65に生じる電界を緩和させることができる。
なお、複数の柱65を、軸線O方向に隙間無く配置してもよい。この場合、複数の柱65はハニカム構造を構成するため、複数の柱65が軸線O方向に互いに間隔を空けて配置される場合に比べて、複数の柱65全体として、力F1に対する強度を高めることができる。
柱を径方向に見たときの形状は、6角形以外の多角形の外周縁状を呈してもよいし、円形又は楕円形の外周縁状を呈してもよい。
【0040】
ガス絶縁変圧器1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fのダクトピース45には、外側内部空間46a及び複数の外側流出口50aが形成されなくてもよい。
ダクトピース45が、レール35A,35B,35C,35D,35E,35Fのように構成されてもよい。
ガス絶縁変圧器が持つ巻線20の数は、1つでもよい。
【0041】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、レール35,35A,35B,35C,35D,35E,35Fを持つことにより、電界を緩和させるとともに冷却性能を向上させることができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F…ガス絶縁変圧器、10…内側筒、15…外側筒、20…巻線、30…ガス止めカラー(仕切り)、35,35A,35B,35C,35D,35E,35F…レール(内側管路)、36a…内側内部空間、36b…内側流入口、36d…接続部分、40a…内側流出口、45…ダクトピース(外側管路)、46a…外側内部空間、50a…外側流出口、55…内部仕切り、60,65…柱(内部仕切り)、B1…範囲、O…軸線、S1…内側隙間、S2…外側隙間、S7…軸側隙間