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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20231218BHJP
   F16K 27/10 20060101ALI20231218BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16K27/00 C
F16K27/10
F16K31/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021068224
(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公開番号】P2022163350
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224708(JP,A)
【文献】特開2018-159433(JP,A)
【文献】特開2016-217408(JP,A)
【文献】特開2012-072799(JP,A)
【文献】特開2017-203509(JP,A)
【文献】特開2007-162735(JP,A)
【文献】特開2018-071643(JP,A)
【文献】特開2019-152246(JP,A)
【文献】特開2006-070990(JP,A)
【文献】特開2008-267464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00 - 27/12
F16K 31/00 - 31/05
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室および弁ポートを構成する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁体と、を備え、前記弁本体に対して径方向から第1継手が接続され、軸方向から第2継手が接続される弁装置であって、
前記弁本体は、前記軸方向に延びる全体筒状に形成され、前記弁室を構成する内部空間が設けられるとともに、前記弁本体の前記軸方向の一端側には、前記弁ポートと、前記第2継手を接合するための第2接合部と、が設けられ、前記弁本体の前記径方向の側面には、前記第1継手を接合するための第1接合部が設けられ、
前記弁本体の前記内部空間に露出する内部露出部のうち最も前記径方向の外側に位置する最外露出部は、前記第2接合部の最も前記径方向の外側の接合部最外縁と、前記軸方向に見て重なるか、前記接合部最外縁よりも前記径方向の内側に位置することを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記第2接合部の外縁は、軸線を中心とした円環状かつ凹溝状に形成された接合凹部で構成され、当該接合凹部に接合材であるろう材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記接合凹部に面取り部が形成され、当該面取り部の外縁によって前記接合部最外縁が構成されることを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記弁本体は、前記軸方向の他端側に蓋部材を接合するための蓋接合部を有し、
前記弁本体の前記最外露出部は、
前記弁室の内壁面における最も前記径方向の外側に位置する第1内部露出部と、
前記第1接合部における前記第1継手の内周縁に沿った部位のうち最も前記径方向の外側に位置する第2内部露出部と、
前記蓋接合部における前記蓋部材の内周縁に対向する外周縁に位置する第3内部露出部と、
の何れかで規定されていることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の弁装置。
【請求項5】
前記蓋接合部は、軸線を中心とした円環状に突出する円環突出部を有し、前記蓋部材が円環突出部に嵌合されて接合されていることを特徴とする請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記弁室の内径は、前記第1継手の内径よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1~5のうち何れか一項に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁ポートを有する弁本体(弁ハウジング)と、弁ポートの開度を変更する弁体と、弁体を進退駆動する駆動部と、を備えた弁装置が広く用いられている。このような弁装置の中に、弁本体として、ステンレスや真鍮等の金属材料を切削加工して形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような弁本体の成形手順としては、金属塊を押出しや引抜き等によって軸方向に引き延ばして金属棒を成形してから、この金属棒を切断して切削加工を行うことで、内部に弁室空間や弁座部を形成したり、継手を接続するための接続部を形成したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-044880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されたような従来の弁装置では、弁本体の成形時に、素材となる金属塊に微細な気泡が含まれている場合がある。このような金属塊を引き延ばして金属棒を成形すると、気泡も一緒に引き伸ばされ、軸方向に連続した連通路が形成されてしまう場合がある。そして、弁装置において、このような連通路によって弁本体の内部空間と外部空間とが連通されてしまうと、流体が外部に漏れ出る可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、流体の漏れ出し(外部リーク)を抑制することができる弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、弁室および弁ポートを構成する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁体と、を備え、前記弁本体に対して径方向から第1継手が接続され、軸方向から第2継手が接続される弁装置であって、前記弁本体は、前記軸方向に延びる全体筒状に形成され、前記弁室を構成する内部空間が設けられるとともに、前記弁本体の前記軸方向の一端側には、前記弁ポートと、前記第2継手を接合するための第2接合部と、が設けられ、前記弁本体の前記径方向の側面には、前記第1継手を接合するための第1接合部が設けられ、前記弁本体の前記内部空間に露出する内部露出部のうち最も前記径方向の外側に位置する最外露出部は、前記第2接合部の最も前記径方向の外側の接合部最外縁と、前記軸方向に見て重なるか、前記接合部最外縁よりも前記径方向の内側に位置することを特徴とする。
【0007】
まず、第1接合部及び第2接合部では、ろう付けにおけるろう材や、溶接や溶着等の接合方法における溶融物等といった接合材によって第1継手及び第2継手が弁本体と接合されることとなる。上述のような本発明によれば、最外露出部の径方向内側に上述したような軸方向の連通路が存在していたとしても、この最外露出部が、第2接合部の最も径方向の外側の接合部最外縁と軸方向に見て重なるか、接合部最外縁よりも径方向の内側に位置するので、連通路の軸方向端部が、接合材又は第2継手によって塞がれるか、あるいは第2継手内側の流路中に位置することになる。その結果、弁本体の内部空間と外部空間とが連通されることがなく、流体の漏れ出し(外部リーク)を抑制することができる。
【0008】
この際、前記第2接合部の外縁は、軸線を中心とした円環状かつ凹溝状に形成された接合凹部で構成され、当該接合凹部に接合材であるろう材が充填されていることが好適である。この構成によれば、接合凹部がろう溜めになり、上述したような連通路の軸方向端部が、ここに充填されたろう材によって効果的に塞がれることから、流体の漏れ出し(外部リーク)を効果的に抑制することができる。
【0009】
更に、前記接合凹部に面取り部が形成され、当該面取り部の外縁によって前記接合部最外縁が構成されることが好適である。この構成によれば、例えば濡れ性等によって面取り部の外縁までろう材を延在させることができる。その結果、第2接合部において、連通路の軸方向端部を閉塞可能な範囲を径方向の外側に広げることができるので、流体の漏れ出し(外部リーク)を一層効果的に抑制することができる。
【0010】
また、前記弁本体は、前記軸方向の他端側に蓋部材を接合するための蓋接合部を有し、前記弁本体の前記最外露出部は、前記弁室の内壁面における最も前記径方向の外側に位置する第1内部露出部と、前記第1接合部における前記第1継手の内周縁に沿った部位のうち最も前記径方向の外側に位置する第2内部露出部と、前記蓋接合部における前記蓋部材の内周縁に対向する外周縁に位置する第3内部露出部と、の何れかで規定されていることが好適である。この構成によれば、弁本体の最外露出部が、弁室の内壁形状、径方向から接続される第1継手との接合形状、及び蓋部材との接合形状、という、弁装置の構造として想定し得る形状の何れかで規定されている。そして、そのような想定の下での最外露出部が、第2接合部の最も径方向の外側の接合部最外縁と軸方向に見て重なるか、接合部最外縁よりも径方向の内側に位置するように構成されているので、流体の漏れ出し(外部リーク)を一層効果的に抑制することができる。
【0011】
また、前記蓋接合部は、軸線を中心とした円環状に突出する円環突出部を有し、前記蓋部材が円環突出部に嵌合されて接合されていることが好適である。この構成によれば、円環突出部との嵌合によって、軸線を中心としてバランス良く蓋部材が弁本体に接合されることとなるので、その弁本体の内部における弁体の軸方向の作動を安定させることができる。
【0012】
また、前記弁室の内径は、前記第1継手の内径よりも大きく形成されていることが好適である。この構成によれば、弁室内での圧力損失を抑えて流体を流すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弁装置によれば、流体の漏れ出し(外部リーク)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の弁装置の縦断面図と、V11-V11線に沿った軸断面図である。
図2図1に示されている弁室を構成する内部空間と、第2継手を接合するための第2接合部と、を拡大した拡大図である。
図3図2中の第1領域A11、第2領域A12、及び第3領域A13それぞれを拡大した拡大図である。
図4図1図3に示されている弁装置に対する第1比較例の弁装置の縦断面図と、V21-V21線に沿った軸断面図である。
図5図1図3に示されている弁装置に対する第2比較例の弁装置の縦断面図と、V31-V31線に沿った軸断面図である。
図6図1図3に示されている弁装置10に対する変形例の弁装置の縦断面図と、V41-V41線に沿った軸断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る弁装置を図1図4に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の弁装置の縦断面図と、V11-V11線に沿った軸断面図である。
【0017】
次に、図1に基づいて一実施形態の弁装置10について説明する。この弁装置10は、弁室111および弁ポート112を構成する弁本体11と、弁ポート112の開度を変更する弁体12と、を備えた電動弁である。この弁装置10では、弁本体11に対して径方向D11から第1継手131が接続され、軸線L11に沿った軸方向D12から第2継手132が接続されている。
【0018】
弁本体11は、ステンレスや真鍮等の金属塊を引き延ばして形成された金属棒の切削加工等により形成された部材であり、軸線L11を中心とし、軸方向D12に延びる全体円筒状に形成され、弁室111を構成する内部空間が設けられている。この弁本体11の軸方向D12の一端側には、弁室111に開口する円筒形状の弁ポート112と、円管状の第2継手132を接合するための第2接合部114と、が設けられている。また、弁本体11の径方向D11の側面には、円管状の第1継手131を接合するための第1接合部113が設けられている。本実施形態では、円筒状の弁室111の内径は、円管状の第1継手131の内径よりも大きく形成されている。流体は、第1継手131と第2継手132との相互間を、弁室111及び弁ポート112を介して流れ、その流量が、弁ポート112の開度を変更する弁体12によって調整される。
【0019】
弁体12は、先端部がテーパ状に形成された丸棒部材であり、軸方向D12について、弁ポート112とは反対側の端部から弁室111の内部に進入するように構成されている。そして、弁ポート112に対して先端部が接近したり離れたりするように弁体12が軸方向D12に動かされることで弁ポート112の開度が変更される。
【0020】
弁本体11には、弁ポート112とは反対側の端部から弁室111内に挿通されるように弁ガイド部材141が圧入及びかしめにより取り付けられている。弁体12は、この弁ガイド部材141の中心のガイド孔を通って先端部が軸方向D12に移動可能に弁室111へと進入している。そして、この弁体12の、弁ポート112とは反対側の端部が、弁ホルダ142を介して、弁体駆動用のステッピングモータ16のロータ軸162に連結されている。
【0021】
また、弁本体11における、弁ポート112とは反対側となる軸方向D12の他端側には、弁ガイド部材141の外周側を囲むように縦長キャップ状の蓋部材18の下端開口を接合するための蓋接合部115が設けられている。蓋部材18は、下端開口側で円筒状のケース181と、その上部を覆って溶接等によって気密に固定され、ステッピングモータ16のロータ軸162やマグネットロータ161を収容するキャン182と、を備えている。
【0022】
ケース181におけるキャン182の側の開口内縁には弁ホルダ142を軸方向D12に移動可能に支持する支持部材143が取り付けられている。この支持部材143は、軸方向D12の中間部でケース181の開口内縁に取り付けられ、弁本体11の側に、弁ホルダ142を収容して軸方向D12にガイドするガイド空間が形成されている。更に、その反対側に、ステッピングモータ16のロータ軸162の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部が形成されている。ロータ軸162は、雄ねじ部が雌ねじ部と螺合した状態で支持部材143における弁ホルダ142のガイド空間に進入し、その先端部が弁ホルダ142を介して弁体12の端部に連結されている。
【0023】
ステッピングモータ16は、ロータ軸162の他に、ロータ軸162に固着されたマグネットロータ161と、キャン182の外側においてマグネットロータ161に対応するように配置されたステータコイル163と、を備えている。ステータコイル163にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ161が回転されてロータ軸162が回転する。すると、そのロータ軸162の雄ねじ部と支持部材143の雌ねじ部とで構成されるネジ送り機構によって、ロータ軸162が軸方向D12に進退し、弁ホルダ142によって連結された弁体12がロータ軸162とともに進退する。これにより、弁体12の先端部と弁ポート112との距離が変わって弁ポート112の開度が変更されることとなる。
【0024】
また、ロータ軸162における弁体12とは反対側の端部は、キャン182の内面における軸方向D12の端面から垂下した円筒状のロータガイド171の内側に挿入されて支持されている。更に、このロータガイド171の外周にはマグネットロータ161に対する回転ストッパ機構172が設けられている。この回転ストッパ機構172によって、ロータ軸162、つまりは弁体12の、軸方向D12の移動上下限が規定されている。
【0025】
以上の構成により、ステッピングモータ16が駆動されると、マグネットロータ161及びロータ軸162が回転し、上記のねじ送り機構により、ロータ軸162が軸方向D12に進退する。この回転に伴うロータ軸162の進退によって弁ホルダ142と共に弁体12が軸方向D12に進退する。弁体12は、その先端部の軸方向D12の進退によって弁ポート112の開口面積、つまり開度を変更する。そして、第1継手131から第2継手132へ、あるいは第2継手132から第1継手131へ流れる流体の流量が、弁ポート112の開度に応じた流量に制御される。
【0026】
ここで、本実施形態では、弁本体11の弁室111を構成する内部空間と、軸方向D12における弁ポート112の側で第2継手132を接合するための第2接合部114と、は次のような関係にある。
【0027】
図2は、図1に示されている弁室を構成する内部空間と、第2継手を接合するための第2接合部と、を拡大した拡大図である。この図2には、弁本体11及びその周辺部についての拡大図と、V11-V11線に沿った軸断面の拡大図が示されている。また、図3は、図2中の第1領域A11、第2領域A12、及び第3領域A13それぞれを拡大した拡大図である。図3(A)に第1領域A11の拡大図が示され、図3(B)に第2領域A12の拡大図が示され、図3(C)に第3領域A13の拡大図が示されている。
【0028】
本実施形態では、弁本体11の弁室111は、第2継手132に至る弁ポート112と第1継手131の間を繋ぐ中空部分と、弁ガイド部材141が圧入されて蓋接合部115から蓋部材18の内部へと至る円筒部分と、を有する内部空間116で構成される。そして、この内部空間116に露出する内部露出部116aにおける最外露出部116bである、後述の第2内部露出部113aは、第2継手132が接合される第2接合部114における接合部最外縁114aと、軸方向D12に見て重なって位置する。
【0029】
ここで、本実施形態においては、内部露出部116aの最外露出部116bが、以下に説明する第1内部露出部111a、第2内部露出部113a、及び第3内部露出部115b、という3箇所の露出部境界に基づいて規定される。これらの露出部境界が、第2接合部114の最も径方向D11の外側の接合部最外縁114aと軸方向D12に見て重なるか、接合部最外縁114aよりも径方向D11の内側に位置するように構成されている。まず、第1内部露出部111aは、図2に示されているように、内部露出部116aにおいて弁ポート112と第1継手131を繋ぐ中空部分を区画する弁室111の、円筒形の内壁面における最も径方向D11の外側に位置する部位である。尚、本実施形態では、第1内部露出部111aは、接合部最外縁114aよりも、径方向D11の内側に位置している。
【0030】
第2内部露出部113aは、図3(C)に示されているように、第1継手131が接合される第1接合部113における第1継手131の内周縁に沿った部位のうち最も径方向D11の外側に位置する部位である。第1接合部113は、円筒型の弁本体11の側壁を貫通するように、大径円筒貫通孔113b及び小径円筒貫通孔113cで構成されている。大径円筒貫通孔113bは、第1継手131の外周に沿って形成された貫通孔である。また、小径円筒貫通孔113cは、大径円筒貫通孔113bに連通して弁室111に至り、第1継手131の内周に沿って第1継手131の厚み分小径となった貫通孔である。また、この大径円筒貫通孔113bと小径円筒貫通孔113cとの段差部で、第1継手131の弁室111側端部の位置決めがなされる。第1継手131は大径円筒貫通孔113bに嵌入されてろう付けされている。また、小径円筒貫通孔113cは、第1継手131の側の外周縁部が、第1継手131の内周縁と略一致するように面取り加工されているのが好ましい。第2内部露出部113aは、大径円筒貫通孔113b及び小径円筒貫通孔113cにおける上記の段差部を含む内周面において、第1継手131の内周縁に接する部位のうち最も径方向D11の外側の部位となっている。尚、本実施形態では上述の如く、第2内部露出部113aは、接合部最外縁114aと軸方向D12に見て重なって位置している。
【0031】
第3内部露出部115bは、図3(A)に示されているように、蓋接合部115における蓋部材18のケース181の内周縁181aに対向する外周縁115aに位置する。ケース181の軸方向D12の弁本体11側端部は円形の接合口が開口している。他方、蓋接合部115は、図2及び図3(A)に示されているように、軸線L11を中心とした円環状に突出する円環突出部115cを有して構成されている。そして、この円環突出部115cの開口端が接合口の内部に進入するように蓋部材18が円環突出部115cに嵌合されて接合されている。接合は、円環突出部115cの開口端が拡径されるようにかしめられ、更にろう材11aによってろう付けされることで行われている。円環突出部115cの外周縁115aはろう材11aによって覆われて露出することはないが、円環突出部115cの開口端側のかしめにより形成された拡径部分はケース181の内部と弁本体11の内部空間116との境界として内部空間116に露出している。そして、この円環突出部115cの拡径部分において外周縁115aの延長上の部位が、蓋接合部115における内部空間116への露出部のうちで最も径方向D11の外側に位置する部位であり、当該部位が上述の第3内部露出部115bとなっている。尚、本実施形態では、第3内部露出部115bは、接合部最外縁114aよりも、径方向D11の内側に位置している。また、ケース181や第1継手131、第2継手132は、薄板からのプレス成形等で形成されており、弁本体11の素材の金属棒とは異なるので、後述の気泡に起因した連通路がなく流体が外部に漏れ出る可能性はない。
【0032】
本実施形態では、以上に説明した第1内部露出部111a、第2内部露出部113a、及び第3内部露出部115bの中では、図2に示されているように、径方向D11について、第2内部露出部113aが最も外側に位置する最外露出部116bとなっている。そして、この最外露出部116bが、第2継手132が接合される第2接合部114における接合部最外縁114aと、図2及び図3(C)に示されているように、軸方向D12に見て重なって位置する。
【0033】
ここで、本実施形態では、図2及び図3(B)に示されているように、第2継手132の端部が嵌め込まれる円環状の嵌入溝117が弁本体11の軸端部に形成されている。そして、この嵌入溝117の外縁部にはC面取りによって面取り部114cが形成されている。第2継手132の端部が嵌入溝114bに嵌め込まれると、第2継手132の外周面と面取り部114cとで区画されて、弁本体11の軸端部に軸線L11を中心とした円環状かつ、径方向D11の断面が三角形の凹溝状に形成された接合凹部114bが構成される。この接合凹部114bに溶融したろう材11aが充填されると、ろう材11aは、第2継手132の外周面等を伝い、接合凹部114bにおける第2継手132の内周側まで流れる。このように流れたろう材11aが固化することで第2継手132は弁本体11に接続される。本実施形態における第2接合部114は、その外縁部が、上記のように面取り部114cが形成された接合凹部114bで構成されている。この接合凹部114bには、面取り部114cの外縁までろう材11aで覆われるようにろう材11aが充填されている。そして、この接合凹部114bの面取り部114cにおける外縁によって、第2接合部114の最も径方向D12の外側となる接合部最外縁114aが構成される。
【0034】
本実施形態の弁装置10は、以上に説明したように構成されており、この構成によって後述の効果を得ることができるが、この効果について説明する前に、本実施形態の弁装置10に対する比較例と、その比較例における問題点について説明する。
【0035】
図4は、図1図3に示されている弁装置に対する第1比較例の弁装置の縦断面図と、V21-V21線に沿った軸断面図である。また、図5は、図1図3に示されている弁装置に対する第2比較例の弁装置の縦断面図と、V31-V31線に沿った軸断面図である。尚、これらの図4及び図5では、両者間で共通の構成要素については同じ符号が付されて示されている。
【0036】
図4に示されている第1比較例の弁装置20及び図5に示されている第2比較例の弁装置30は、何れも、弁ポート212の開度を変更する弁体22が円筒状に形成され、その内側でステッピングモータ26のロータ軸262に連結された構造を有している。また、これらの比較例では、第2継手232が接合される第2接合部214は、弁ポート212と連通する円筒状の段差窪みとなっており、この第2接合部214に第2継手232の端部が嵌入され、ろう付けされて接合されている。
【0037】
ただし、図1図3に示されている弁装置10との比較点は、第1比較例及び第2比較例の相互間で共通の弁体22、ステッピングモータ26、及び第2接合部214の構造ではない。ここでの比較点は、弁本体21,31の弁室211,311を構成する内部空間216,316における最外露出部216b,316bと、両比較例で共通の第2接合部214の最も径方向D21の外側の接合部最外縁214aと、の位置関係にある。
【0038】
まず、図4に示されている第1比較例の弁装置20では、弁室211が、第1継手231が接合される円筒状の第1接合部213の小径円筒貫通孔213cに連続して円柱状の弁本体21に開けられた横孔となっている。そして、この弁室211を構成する内部空間216の内部露出部216aのうち、最も径方向D21の外側に位置する最外露出部216bが、弁室211の内壁面における最も径方向D21の外側に位置する第1内部露出部211aとなっている。そして、この第1比較例の弁装置20では、最外露出部216bである第1内部露出部211aが、縦断面図では第2接合部214における円形の接合部最外縁214aよりも径方向D21の内側にあるが、軸断面図では、軸方向D22に見て、第2接合部214における円形の接合部最外縁214aの外側に位置している。その結果、図4中に網目状のハッチングで示されているように、軸方向D22に見て矩形状となった弁室211の、第1接合部213とは反対側の2つの角部が、円形の接合部最外縁214aの外側に突出することとなっている。
【0039】
次に、図5に示されている第2比較例の弁装置30では、弁本体31の弁室311は、軸方向D22に見て、円形の接合部最外縁214aの内側に位置し、中ぐり加工等で円形となった円筒状に形成されている。他方、この第2比較例の弁装置30では、第1継手331が接合される円筒状の第1接合部313が、図4に示されている第1比較例の第1接合部213よりも弁室311側に浅い円筒状に形成されている。その結果、第2比較例の弁装置30では、第1接合部313における第1継手331の内周縁に沿った部位のうち最も径方向D21の外側に位置する第2内部露出部313aが、内部露出部316aにおける最外露出部316bとなっている。そして、この第2比較例の弁装置30では、最外露出部316bである第2内部露出部313aが、縦断面図では第2接合部214における円形の接合部最外縁214aよりも径方向D21の内側にあるが、軸断面図では軸方向D22に見て、第2接合部214における円形の接合部最外縁214aの外側に位置している。その結果、図5中に網目状のハッチングで示されているように、軸方向D22に見て矩形状の第1接合部313と円形の接合部最外縁214aとの間の2つの楔形の部分が、接合部最外縁214aの外側に突出することとなっている。即ち、縦断面図を見ただけでなく軸断面図も見ないと、最外露出部が、第2接合部の接合部最外縁と軸方向に見て重なるか、接合部最外縁よりも径方向の内側に位置しているかの判断は難しい。
【0040】
ここで、第1比較例及び第2比較例の2つとも、弁本体21,31は、図1図3に示されている弁装置10における弁本体11と同様に、ステンレスや真鍮等の金属塊を引き延ばして形成された金属棒の切削加工等により形成された部材となっている。このとき、弁本体21,31の成形時に、素材となる金属塊に微細な気泡が含まれている場合がある。このような金属塊を引き延ばして金属棒を成形すると、気泡も一緒に引き伸ばされ、軸方向D22に連続した連通路が形成されてしまう場合がある。
【0041】
上述したように、第1比較例及び第2比較例の2つとも、弁室211,311を構成する内部空間216,316の内部露出部216a,316aに、軸方向D22に見て第2接合部214における接合部最外縁214aの外側に突出した部位が存在する。このような突出部位に、上述した軸方向D22の連通路が形成されていると、弁本体21,31の内部空間216,316と外部空間とが連通されてしまい、流体が外部に漏れ出る可能性がある。このように、図4に示されている第1比較例の弁装置20及び図5に示されている第2比較例の弁装置30には、何れも、流体の漏出の可能性という問題が存在する。
【0042】
図1図3に示されている実施形態の弁装置10では、第1接合部113及び第2接合部114が、ろう材11aによって第1継手131及び第2継手132が弁本体11と接合されている。このとき、上述の比較例に対し、図3(C)に示されている弁本体11の内部空間116の最外露出部116bである第2内部露出部113aは、第2接合部114の接合部最外縁114aと、軸方向D12に見て重なって位置している。また、第1内部露出部111aと第3内部露出部115bは、接合部最外縁114aよりも径方向D11の内側に位置している。本実施形態によれば、上述したような軸方向D12の連通路が存在していたとしても、この最外露出部116b(第2内部露出部113a)が、軸方向D12に見て第2接合部114の接合部最外縁114aと重なって位置する。その結果、内部露出部116aの各所は、軸方向D12から見て、接合部最外縁114aと重なるか、その内側に位置することとなり、連通路の軸方向D12の端部は、ろう材11a又は第2継手114の軸方向D12の端部によって塞がれるか、当該第2継手114内側の流路中に位置することになる。従って、本実施形態によれば、弁本体11の内部空間116と外部空間とが連通されることがなく、流体の漏れ出し(外部リーク)を抑制することができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、第2接合部114は円環状で凹溝状の接合凹部114bで構成され、当該接合凹部114bにはろう材11aが充填されている。この構成によれば、接合凹部114bがろう溜めになり、上述したような連通路の軸方向D12の端部が、ここに充填されたろう材11aによって効果的に塞がれることから、流体の漏れ出し(外部リーク)を効果的に抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、接合凹部114bの外縁部に面取り部114cが形成され、当該面取り部114cの外縁によって接合部最外縁114aが構成される。この構成によれば、例えば濡れ性等によって面取り部114cの外縁までろう材11aを延在させることができる。その結果、第2接合部114において、連通路の軸方向D12の端部を閉塞可能な範囲を径方向D11の外側に広げることができるので、流体の漏れ出し(外部リーク)を一層効果的に抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、最外露出部116bは、弁室111の内壁面に係る第1内部露出部111aと、第1接合部113に係る第2内部露出部113aと、蓋接合部115に係る第3内部露出部115bという3箇所の露出部境界のうちの第2内部露出部113aで規定される。この構成によれば、弁本体11の最外露出部116bが、弁装置10の構造として想定し得る各部の形状が予め想定され、それらのうちの第1接合部113の形状に基づいて規定されている。そして、そのような想定の下での最外露出部116bが軸方向D12に見て接合部最外縁114aに重なるように構成されているので、流体の漏れ出し(外部リーク)を一層効果的に抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、蓋接合部115は円環突出部115cを有し、蓋部材18が円環突出部115cに嵌合されて接合されている。この構成によれば、円環突出部115cとの嵌合によって軸線L11を中心としてバランス良く蓋部材18が弁本体11に接合されることとなるので、その弁本体11の内部における弁体の軸方向D12の作動を安定させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、弁室111の内径は、第1継手131の内径よりも大きく形成されている。この構成によれば、弁室111内での圧力損失を抑えて流体を流すことができる。
【0048】
次に、図1図3に示されている弁装置10に対する変形例について説明する。
【0049】
図6は、図1図3に示されている弁装置10に対する変形例の弁装置の縦断面図と、V41-V41線に沿った軸断面図である。尚、この図6に示されている弁装置40は、図5に示されている第2比較例の弁装置30に対する変形例にもなっている。そこで、図6では、図5に示されている構成要素と同等な構成要素には図5と同じ符号が付されており、以下では、それら同等な構成要素についての重複説明を省略する。
【0050】
この変形例の弁装置40は、ステッピングモータ26のロータ軸262に内側で連結された円筒状の弁体22によって弁ポート212の開度が変更される装置である。この変形例の弁装置40では、第1継手431が接合される円筒状の第1接合部413が、図5に示されている第2比較例の第1接合部313よりも弁室411側に深い円筒状に形成されている。具体的には、変形例の弁装置40では、第1接合部413において最も径方向D21の外側の第2内部露出部413aが、第2接合部214における円形の接合部最外縁214aと重なる位置で第1接合部413が形成されている。その結果、変形例の弁装置40では、弁本体41の内部空間416の内部露出部416aのうち、最も径方向D21の外側に位置する最外露出部416bは、第2内部露出部413aであり、軸方向D22に見て、第2接合部214における円形の接合部最外縁214aと重なって位置している。
【0051】
以上に説明した変形例の弁装置40でも、弁本体41における最外露出部416bが軸方向D22に見て、第2接合部214の接合部最外縁214aと重なって位置する。その結果、上述した軸方向D12の連通路が存在していたとしても、弁本体41の内部空間416と外部空間とが連通されることがなく、流体の漏れ出し(外部リーク)を抑制することができる点は、図1図3に示されている実施形態の弁装置10と同様である。
【0052】
尚、以上に説明した実施形態や変形例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によっても尚本発明の弁装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0053】
例えば、上述の実施形態及び変形例の説明では、弁装置10,40の適用について特定していないが、これらの弁装置10,40は、電動弁、メカ式膨張弁、手動式開閉弁、及び電磁弁といった各種弁の本体部分に適用することができる。
【0054】
また、上述の実施形態及び変形例の説明では、最外露出部の一例として、第2接合部114,214の接合部最外縁114a,214aと、軸方向D12に見て重なる最外露出部116b,416bが例示されている。しかしながら、最外露出部は、これに限るものではなく、接合部最外縁よりも径方向D11の内側に位置するものであってもよい。
【0055】
また、上述の実施形態及び変形例の説明では、最外露出部の一例として、第1接合部113,413の第2内部露出部113a,413aで規定される最外露出部116b,416bが例示されている。しかしながら、最外露出部は、これに限るものではなく、例えば弁室における第1内部露出部や蓋接合部における第3内部露出部等であってもよく、弁本体の内部空間に露出する内部露出部のうち最も径方向の外側に位置する部位であれば、その具体的態様を問うものではない。
【0056】
また、上述の実施形態及び変形例の説明では、第1接合部や第2接合部における接合材の一例として、ろう材11aが例示されている。しかしながら、接合材は、これに限るものではなく、溶接や溶着等の接合方法における溶融物等であってもよい。
【0057】
また、本実施形態の説明では、第2接合部の一例として、円環状で凹溝状の接合凹部114bで構成されてろう材11aが充填される第2接合部114が例示されている。また、この例示においては、接合凹部114bの外縁部に面取り部114cが形成され、当該面取り部114cの外縁によって接合部最外縁114aが構成される。しかしながら、第2接合部は、これに限るものではなく、例えば図6に示されている変形例の第2接合部114のように、円筒状に形成されて第2継手の端部が嵌入されるもの等であってもよい。ただし、円環状で凹溝状の接合凹部114bで構成されてろう材11aが充填される第2接合部114によれば、ここに充填されたろう材11aによって流体の漏れ出し(外部リーク)を効果的に抑制することができる点は上述した通りである。また、接合凹部114bの外縁部に面取り部114cを設けることで、ろう材11aで閉塞可能な範囲を径方向D11の外側に広げて流体の漏れ出し(外部リーク)を一層効果的に抑制することができる点も上述した通りである。尚、本実施形態及び変形例の説明では、円環状かつ凹溝状の接合凹部の一例として、C面取りによる面取り部114cで外周側が区画されて径方向D11の断面が三角形となった接合凹部114bが例示されている。しかしながら、接合凹部は、断面が三角形の凹溝に限るものではなく、例えば断面が矩形状となった段差凹溝や、R面取りによる曲面状の面取り部で外周側が区画された凹溝等であってもよい。
【0058】
また、本実施形態及び変形例の説明では、最外露出部の一例として、上述の第1内部露出部111a,411a、第2内部露出部113a,413a、及び第3内部露出部115b、の何れかで規定される最外露出部116b,416bが例示されている。しかしながら、最外露出部は、これに限るものではなく、上述したように、弁本体の内部空間に露出する内部露出部のうち最も径方向の外側に位置する部位であれば、その具体的態様を問うものではない。ただし、上記のように弁装置の構造として想定し得る3つの内部露出部の何れかで最外露出部116b,416bを規定することで、流体の漏れ出し(外部リーク)を一層効果的に抑制することができる点は上述した通りである。
【0059】
また、本実施形態及び変形例の説明では、蓋接合部の一例として、円環突出部115cを有する蓋接合部115が例示されている。しかしながら、蓋接合部は、これに限るものではなく、蓋部材を接合可能であれば、その具体的態様を問うものではない。ただし、円環突出部115cを有する蓋接合部115によれば、弁体の軸方向D12の作動を安定させることができる点は上述した通りである。
【0060】
また、本実施形態及び変形例の説明では、弁室の一例として、その内径が第1継手131の内径よりも大きく形成された弁室111が例示されている。ただし、弁室は、これに限るものではなく、その内径が第1継手の内径と同じか、当該内径よりも小さく形成されたもの等であってもよい。ただし、内径が第1継手131の内径よりも大きく形成された弁室111によれば、弁室111内での圧力損失を抑えて流体を流すことができる点は上述した通りである。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10,40 弁装置
11,41 弁本体
11a ろう材
12,22 弁体
18 蓋部材
111,411 弁室
111a,211a,411a 第1内部露出部
113a,313a,413a 第2内部露出部
115 蓋接合部
115a 外周縁
115b 第3内部露出部
116,416 内部空間
116a,416a 内部露出部
116b,416b 最外露出部
113,413 第1接合部
114,214 第2接合部
131,431 第1継手
132,232 第2継手
D11,D21 径方向
D12,D22 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6