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  • 特許-プレス装置およびプレス装置の制御方法 図1
  • 特許-プレス装置およびプレス装置の制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】プレス装置およびプレス装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/22 20060101AFI20231218BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20231218BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B30B15/22 B
F04B49/06 321
F15B11/02 B
F15B11/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021121515
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017319
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉川 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓郎
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-040601(JP,A)
【文献】特開2003-200300(JP,A)
【文献】特開2002-178200(JP,A)
【文献】特開2015-132335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/16-15/22
B30B 15/34
F04B 49/06
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧シリンダにより熱板および熱板に載置された成形物を上盤に取り付けられた熱板に向けて上昇させ、熱板間で加圧するプレス装置において、
加圧シリンダに作動油を供給するポンプは、
サーボモータ以外のモータにより駆動される大容量ポンプと、
サーボモータにより駆動され前記大容量ポンプよりも吐出量の小さい小容量ポンプとを備え
前記大容量ポンプと前記小容量ポンプを接続する管路から、前記加圧シリンダに接続する管路にのみ、圧力センサが設けられている、プレス装置。
【請求項2】
加圧シリンダにより熱板および熱板に載置された成形物を上盤に取り付けられた熱板に向けて上昇させ、熱板間で加圧するプレス装置において、
加圧シリンダに作動油を供給するポンプは、
サーボモータ以外のモータにより駆動される大容量ポンプと、
サーボモータにより駆動される可変容量型ポンプとを備え、
前記大容量ポンプと前記可変容量型ポンプを接続する管路から、前記加圧シリンダを接続する管路にのみ、圧力センサが設けられている、プレス装置。
【請求項3】
加圧シリンダにより熱板および熱板に載置された成形物を上盤に取り付けられた熱板に向けて上昇させ、熱板間で加圧するプレス装置の制御方法において、
加圧シリンダに作動油を供給するポンプは、
サーボモータ以外のモータにより駆動される大容量ポンプと、サーボモータにより駆動され前記大容量ポンプよりも吐出量の小さい小容量ポンプの両方のポンプを用いて熱板を上昇させ、
前記大容量ポンプと前記小容量ポンプを接続する管路から、前記加圧シリンダを接続する管路にのみ設けられた圧力センサは、前記加圧シリンダの圧力を検出し、
前記加圧シリンダに作動油を供給するポンプは、
上盤に取り付けられた熱板と成形物とが当接直前、当接、当接後所定時間経過、当接後加圧シリンダが所定圧力まで上昇のいずれかのタイミングで前記大容量ポンプを停止し、
前記大容量ポンプ停止後は前記小容量ポンプのみにより加圧シリンダに作動油を供給して成形物の加圧保持制御を行う、
プレス装置の制御方法。
【請求項4】
前記加圧シリンダ、前記小容量ポンプ、または前記加圧シリンダから前記小容量ポンプの間の管路のいずれかの1つにのみ圧力センサが配置され、
加圧保持制御時には、前記圧力センサにより検出される作動油の圧力により前記小容量ポンプの制御が行われる
請求項3に記載のプレス装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧シリンダにより熱板および熱板に載置された成形物を上盤に取り付けられた熱板に向けて上昇させ、熱板間で加圧するプレス装置およびプレス装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加圧シリンダにより熱板および熱板に載置された成形物を上盤に取り付けられた熱板に向けて上昇させ、熱板間で加圧するプレス装置には、一つのポンプでプレス時の加圧制御を行うものと複数のポンプでプレス時の加圧制御を行うものがある。複数のポンプでプレス時の加圧制御を行うものとしては特許文献1に記載されたものと特許文献2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1は、可動盤を上昇させる際は大容量ポンプと小容量ポンプを駆動させて加圧シリンダに送油し、油圧が所定圧以上となると大容量ポンプを停止することが記載されている。また特許文献2は一定の回転数で回転するモータを使用する移動用ポンプとインバータを使用し吐出量を制御可能な加圧用ポンプを設け、加圧モードでは移動用ポンプを停止し、加圧用ポンプの回転数を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-200300号公報
【文献】特開2015-132335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1、特許文献2のプレス装置はいずれも省エネ性能や加圧開始時の圧力上昇を滑らかに切替する成形性能において十分なものではなかった。
【0006】
そこで本発明では上記の問題を鑑みて、省エネ性能または成形性能の向上を図ることができるプレス装置およびプレス装置の制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のプレス装置は、加圧シリンダにより熱板および熱板に載置された成形物を上盤に取り付けられた熱板に向けて上昇させ、熱板間で加圧するプレス装置において、加圧シリンダに作動油を供給するポンプは、サーボモータ以外のモータにより駆動される大容量ポンプと、サーボモータにより駆動され前記大容量ポンプよりも吐出量の小さい小容量ポンプとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレス装置は、加圧シリンダにより熱板および熱板に載置された成形物を上盤に取り付けられた熱板に向けて上昇させ、熱板間で加圧するプレス装置において、加圧シリンダに作動油を供給するポンプは、サーボモータ以外のモータにより駆動される大容量ポンプと、サーボモータにより駆動され前記大容量ポンプよりも吐出量の小さい小容量ポンプとを備えるので、省エネ性能または成形性能の向上を図ることができる。また本発明のプレス装置の制御方法についても同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のプレス装置の熱板下降時の概略図である。
図2】本実施形態のプレス装置の加圧時の概略図である。
図3】本実施形態のプレス装置の制御説明図である。
図4】本実施形態のプレス装置の制御フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態のプレス装置について図1および図2を参照して説明する。本実施形態のプレス装置11は、多段のホットプレスであり、加圧シリンダ15により熱板18,21および熱板18,21に載置された成形物Pを上盤に取り付けられた熱板19に向けて上昇させ、熱板間で加圧するものである。プレス装置11は、フロア上にレイアウトされたプレス装置11の他、制御装置29、真空ポンプ、油圧装置、熱媒体油加熱冷却装置を含み、成形物の搬入・搬出装置等と共にプレス成形システムを構成する。
【0012】
プレス装置11の構造について説明すると、プレス装置11の上部に固定的に設けられた上盤12と下部に固定的に設けられた下盤13の間は、タイバ14により接続されている。下盤13の下部には加圧シリンダ15が取付けられている。加圧シリンダ15にはシリンダ部15aに対して昇降するラム16が備えられ、前記ラム16の前面は可動盤17の背面に固定されている。またシリンダ部15aの内部であってラム16の後面側には加圧油室15bが設けられている。本実施形態の加圧シリンダ15は単動シリンダである。
【0013】
可動盤17の上面には熱板18(下熱板)が固定的に取り付られている。上側の上盤12の下面にも熱板19(上熱板)が取り付けられている。本実施形態では熱板19は、上盤12に固定的に取り付けられた保持部20により保持されている。従って熱板19は上盤12に対してごく僅かに移動可能である。ただし熱板19は上盤12に固定されたものでもよい。熱板18(下熱板)と熱板19(上熱板)の間には図示しない載置段部に載置され熱板21(中間熱板)が配置されている。前記熱板21は、可動盤17に取り付けられた熱板18の昇降とともに昇降される。図1の例では、中間熱板21は4枚であるが、中間熱板21の数は限定されず、中間熱板21を備えないものでもよい。熱板18,19,21は加圧面がそれぞれ平滑に形成された矩形の所定板厚の金属板であり、内部には熱媒油、蒸気または水等の温度制御用媒体が流通されるための通路が形成されている。また熱板18,19,21は盤内にヒータを設けて直接加熱するものでもよい。
【0014】
上盤12の内部には下方に向けてリミットスイッチ22が取り付けられている。そして加圧シリンダ15の作動により最上部の成形物Mが熱板19に当接して熱板19が持ち上げられたことが前記リミットスイッチ22により検出可能となっている。なおリミットスイッチ22は、上盤12の側面や熱板19の側面に取り付けられ、中間熱板21が接触位置まで上昇したことを検出するものでもよい。更に本実施形態ではプレス装置11は、外界と区画可能なチャンバ(図示せず)の中に収容され、前記チャンバには真空装置の真空ポンプ(図示せず)が接続されている。ただしプレス装置11は、チャンバを備えず、大気下で加圧されるものでもよい。
【0015】
次にポンプを含めた油圧回路について説明する。プレス装置11の加圧シリンダ15に作動用を供給するポンプは、サーボモータ以外のモータにより駆動される大容量ポンプ23とサーボモータ24により駆動され、前記大容量ポンプ23よりも吐出量の小さい小容量ポンプ25とを備えている。
【0016】
より具体的には大容量ポンプ23は、三相モータ26(交流三相誘導モータ)により回転駆動される固定容量型ポンプである。本実施形態では大容量ポンプ23の種類はギアポンプが使用されているが、スクリュポンプ、ベーンポンプ等の偏芯ポンプ、固定容量型のピストンポンプなどを使用したものでもよい。また大容量ポンプ23に使用されるモータは三相モータ26の他、他の交流誘導モータ、交流同期モータ、ブラシレスモータを含む直流モータであってもよい。前記大容量ポンプ23のポンプとモータの組み合わせは主に時間当たりの吐出量とコスト重視で選定され、高圧対応性能は求められない。
【0017】
大容量ポンプ23の三相モータ26は電力線27およびモータ駆動ユニット28を介して制御装置29に接続されている。また大容量ポンプ23は、タンク30に接続されるともに吐出側の管路31が接続されている。管路31には逆止弁32が設けられ、大容量ポンプ23と逆止弁32の間から分岐した管路にはリリーフ弁33が設けられている。
【0018】
小容量ポンプ25は、サーボモータ24により回転駆動される可変容量型ポンプである。本実施形態では小容量ポンプ25の種類はアキシャルピストンポンプが使用されるが、ラジアルピストンポンプ等の他の可変容量型ポンプを使用したものでもよい。小容量ポンプ25をアキシャルピストンポンプシステム50は公知のものであるが、斜板駆動部34と、斜板駆動部34を切換えるための電磁切換弁35と圧力制御弁36を備えている。なおアキシャルピストンポンプシステムを圧力補償型のみとする場合は、電磁切換弁35を設けずに圧力補償型の圧力制御弁36のみを設けてもよい。なお本実施形態ではこれに限定されるものではないが、一例として小容量ポンプ25の最大吐出量は大容量ポンプの固定吐出量の5%ないし30%とすることが望ましい。ただし小容量ポンプ25は最高圧力(定格圧力)が8MPa以上の高圧対応性能が必要となる。
【0019】
小容量ポンプ25のサーボモータ24はロータリエンコーダ37を備えており、電力線38および信号線39を介してサーボアンプ40に接続され、サーボアンプ40は制御装置29に接続されている。小容量ポンプ25は、タンク30に接続されるともに吐出側の管路41が接続されている。管路41には電磁開閉弁42が設けられている。なお管路41のいずれかの部分かまたはアキシャルピストンポンプ内に圧力センサを設けてもよい。
【0020】
小容量ポンプ25側の管路41の延長部分は大容量ポンプ23側の管路31の延長部分と合流して加圧シリンダ15に作動油を供給する管路43となっている。管路43は圧力センサ44が設けられ、加圧シリンダ15の圧力が検出可能となっている。更に管路43からはドレン用の管路45が分岐している。管路45にはパイロット管46を介してカートリッジ弁47を開閉するための電磁弁48が設けられている。カートリッジ弁47の一方は管路45に接続され他方は管路49を介してタンク30に接続されている。本実施形態のプレス装置11の油圧回路の概要を説明したが、油圧回路はこれに限定されず、同様の機能を備えた異なる回路であってもよい。また本実施形態の油圧回路は複数のプレス装置11へ作動油を供給するものや他の搬送装置へ作動油を供給するものでもよい。
【0021】
次にプレス装置11の制御方法について、図3のプレス装置の制御説明図、および図4の制御フローチャート図を参照して説明する。最初に成形物Pが熱板18,21に載置後に行われる熱板上昇制御時には、制御装置29からの信号により大容量ポンプ23の三相モータ26と小容量ポンプ25のサーボモータ24の双方のポンプが駆動される(s1)。この際に小容量ポンプ25であるアキシャルピストンポンプは、電磁切換弁35および斜板駆動部34が制御されポンプ1回転当たりの吐出量が最大吐出量となるように駆動される。またサーボモータ24の回転数は最高回転数となるように制御される。これらのポンプ23,25の作動より加圧シリンダ15の加圧油室15bに作動油が急速に供給されてラム16が上昇される。またラム16の上昇とともに熱板18と成形物Pが上昇され、更には中間の熱板21とその上に載置された成形物Pも順に押し上げていく。
【0022】
そして最上位の中間の熱板21とその上に載置された成形物Pが、上盤12に保持された熱板19に当接して、更に熱板19を押し上げるとリミットスイッチ22が検出される(s2)。すると熱板上昇制御は終了し、昇圧制御に移行する。昇圧制御では制御装置29から送られる信号により三相モータ26が停止され、大容量ポンプ23から加圧シリンダ15への作動油の供給が停止される(s3)。また同時に制御装置29から送られる信号により電磁切換弁35が作動され斜板駆動部34も作動することによりアキシャルピストンポンプの斜板の角度が大傾転角から小傾転角に変更され、アキシャルピストンポンプ1回転当たりの作動油の吐出量が最小量に切り替えられ、必要圧力(所定の設定圧力)となるように吐出が行われる(s4)。ただしサーボモータ24の回転数は最高回転数のまま駆動される。
【0023】
このことにより最上位の中間の熱板21とその上に載置された成形物Pが、上盤の保持された熱板19に当接してから開始される昇圧制御時の作動油の供給量が制限されるので、加圧開始時に急速に加圧シリンダ15が昇圧されることによる衝撃を無くすか抑制することができる。なお大容量ポンプ23の三相モータ26の停止は、成形物Pと熱板19の当接された際以外に、当接直前、当接後タイマにより所定時間経過が計時された際、当接後加圧シリンダが所定圧力まで上昇したことが圧力センサ44等により検出されたときに停止するようにしてもよい。成形物Pと熱板19の当接直前の状態をセンサにより検出して大容量ポンプ23を停止し、小容量ポンプ25のみの作動で成形物Pと熱板19の当接を行うことにより成形物Pへの当接時の衝撃を軽減することができる。これは熱板18、21に載置された成形物Pが上方の熱板21,19に当接する直前に毎回行ってもよく、最上位の中間の熱板21の成形物Pが上盤12に取り付けられた熱板19に当接する直前のみに行ってもよい。
【0024】
次に図3にも示されるように圧力センサ44により検出される加圧シリンダ15の圧力が所定の設定圧力に到達する(s5)と、昇圧制御から加圧保持制御に移行する。加圧保持制御は、加圧シリンダ15の圧力を設定圧力に保つための制御であり、サーボモータ24により小容量ポンプ25を作動させることによるクローズドループ制御が行われる。小容量ポンプ25のみを使用して加圧シリンダ15および油圧回路からリークした分の作動油が補われる。より具体的には制御装置29からサーボアンプ40を介して小容量ポンプ25を駆動可能な範囲で極低速回転数の指令信号がサーボモータ24に送られる(s6)。
【0025】
図3においてはこの部分は破線と矢印で示されている。なおこの際、制御装置29からサーボモータ24に送られる極低速回転数の指令値は、小容量ポンプ25の駆動可能な最低回転数の指令値であってもよく、最低所定の極低速回転数の指令値であってもよい。または加圧保持制御時にサーボモータ24の駆動を停止して小容量ポンプ25を停止する区間を含むものでもよい。更にはアキシャルピストンポンプの吐出量をゼロにした状態でサーボモータ24の回転は継続させるものでもよい。なお加圧補正制御時に圧力を検出する圧力センサは、加圧シリンダ15、小容量ポンプ25、または加圧シリンダ15から小容量ポンプ25の間の管路41のいずれかに配置されたものでもよい。
【0026】
そして小容量ポンプ25の1回転当たりの吐出量が最小量に切り替えられた上で、小容量ポンプ25の回転数も極低速回転数に変更されることにより、加圧シリンダ15または油圧回路からのリーク量が小容量ポンプ25から加圧シリンダ15に送られる作動油の供給量を上回ることにより圧力センサ44により検出される作動油の圧力(加圧シリンダ15の圧力)が降下する。または小容量ポンプ25を駆動させるサーボモータ24が一定時間停止されることにより圧力センサ44により検出される作動油の圧力が降下する。そして前記圧力センサ44により検出される作動油の圧力が設定圧力よりも僅かに下側に設定された設定圧力下限値に到達したことが検出される(s7)と、制御装置29から予め定めた昇圧用のリーク分補填回転数の指令信号をサーボアンプ40を介してサーボモータ24に送信し、サーボモータ24の回転数を変更し増速する(s8)。
【0027】
この際のリーク分補填回転数は、小容量ポンプ25の最大回転数と最小回転数の間において中間よりも低速側の回転数が設定される。そのことにより小容量ポンプ25から加圧シリンダ15への作動油の供給量が加圧シリンダ15または油圧回路からの作動油のリーク量を上回ることにより圧力センサ44により検出される作動油の圧力が設定圧力に向けて上昇する。図3においてはこの部分は実線と矢印で示されている。これらの加圧保持制御は、加圧保持制御の間、継続的に行われる(s9)。即ち(s9)において図示しないタイマが終了時間を計時しない間は、(s5)に戻って制御が繰り返される。なお図3の例はデフォルメして記載されているが、実際の制御においては設定圧力と設定圧力下限値の差がごく僅かである。またポンプ増速回数もプレス装置11の成形時間や加圧圧力に応じて変化するので一律ではない。またこれらの加圧保持制御の間の熱板18,19,21の温度制御については従来のプレス装置と同様にクローズドループ制御により昇温または降温が行われる。
【0028】
また図3および図4の実施形態において加圧保持制御は、1つの設定圧力に制御する例が記載されているが、1サイクルのプレス制御工程において、2段階または3段階以上の設定圧力の加圧保持制御により圧力制御されるものでもよい。その際に低い方の設定圧力から高い方の設定圧力に昇圧する際には小容量ポンプ25のサーボモータ24の回転数を最高回転数にしてポンプ1回転当たりの吐出量は低吐出量としたまま昇圧をする。また高い方の設定圧力から低い方の設定圧力に降圧する際は、小容量ポンプ25のサーボモータ24を逆回転制御して加圧シリンダ15の加圧油室15bからタンク30へ作動油を戻すことにより降圧を行う。
【0029】
更に図3および図4の実施形態において加圧保持制御の小容量ポンプ25の吐出量の制御は、大容量吐出量から最小吐出量へ変更する2値制御を行っているが、それ以外に複数の吐出量により制御を行うものでもよい。特にアキシャルピストンポンプを圧力補償型におより使用する場合は、加圧シリンダ15や小容量ポンプ25から吐出された管路41の作動油の圧力を検出し、圧力に応じて斜板駆動部34を制御してアキシャルピストンポンプの斜板の角度を制御することにより無段階に吐出量を変更することもできる。
【0030】
そして予め設定された加圧保持制御の時間が経過したことが図示しないタイマにより検出されると(s9)、次に圧抜制御に移行する(s10)。圧抜制御においては、小容量ポンプ25のサーボモータ24をクローズドループ制御により逆回転制御させ、加圧シリンダ15の加圧油室15bの作動油をタンク30に戻す。このことにより加圧シリンダ15の圧抜時のショックを無くすことができる。そして圧抜制御が完了すると次に電磁弁48を作動させてパイロット圧によりカートリッジ弁47を開放し、ドレン回路の管路45,49からタンク30に向けて大量の作動油を高速で戻す(s11)。この熱板下降制御により各熱板18,21およびラム16が急速に下降される。そして各熱板18,21が図1に示される最下方の位置に到達すると、プレス装置11が真空チャンバ内にある場合は真空チャンバ内を大気圧に戻した上で扉を開放して成形物Pを取り出す。
【0031】
なお図3および図4の実施形態においては、熱板上昇制御時に小容量ポンプ25のアキシャルピストンポンプは1回転当たりの吐出量を最大としている。しかしながら熱板上昇制御時の小容量ポンプ25のピストンポンプの1回転当たりの吐出量も最小または最大ではない吐出量として使用してもよい。小容量ポンプ25の吐出量を変更しないことにより、小容量ポンプ25を含めたピストンポンプシステムを廉価なものとすることができるか、制御を容易にすることができる。
【0032】
また小容量ポンプ25にギアポンプなどの固定容量型ポンプを使用した場合についても説明する。小容量ポンプ25が固定容量型ポンプの場合、ポンプ1回転当たりの吐出量に対して出力が大きなサーボモータ24が使用され一例として最高圧力(定格圧力)が8MPa以上の高圧対応のポンプが使用される。このことにより昇圧制御時や加圧保持制御時のクローズドループ制御による圧力制御が良好に行える。小容量ポンプ25を固定容量型ポンプとすることにより一概には言えないが、廉価やポンプを使用することができる場合も多くなる。
【0033】
本発明のプレス装置11は、これに限定されるものではないが、比較的大型のプレス装置に使用される。一例としては成形物Pを載置する熱板18,21(下部の熱板と中間の熱板)の枚数が5枚以上のプレス装置に用いられる。またプレス装置11の加圧時間についても、一定時間以上(これに限定されるものではないが一例として20分ないし24時間)加圧成形するようなケースにおいて有効である。逆に加圧時間が非常に短いプレス装置への本発明の採用は不可能ではないにしても好適ではない。
【0034】
そして本発明によれば、従来の三相モータにより回転駆動される固定容量型ポンプまたは可変容量型ポンプが1基だけ配置されたプレス装置のように加圧保持制御時にポンプから送られた作動油がリリーフ弁からタンクに戻されることがないために作動油の昇温が抑制される。その結果、作動油を冷却するオイルクーラーの設置をしなくてもよくなる場合も多い。また作動油の劣化が抑制される。
【0035】
また本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態やその他のバリエーションのものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや、本実施形態やバリエーションの各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。プレス装置11においてプレス成形される成形物は、各種の回路基板の他、半導体、プリプレグ、樹脂板、繊維樹脂板、木材合板、セラミックスといった成形物であってもよく、限定されない。
【0036】
11 プレス装置
12 上盤
13 下盤
15 加圧シリンダ
18、19,22熱板
23 大容量ポンプ
24 サーボモータ
25 小容量ポンプ
26 三相モータ
29 制御装置
44 圧力センサ
図1
図2
図3
図4