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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】複合材の加工装置及び複合材の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20231218BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20231218BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20231218BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C70/54
B29K101:12
B29K105:08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021133178
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023027855
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】可児 祐樹
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518904(JP,A)
【文献】特開2020-152091(JP,A)
【文献】特開2020-183111(JP,A)
【文献】国際公開第2006/028107(WO,A1)
【文献】特表2004-518165(JP,A)
【文献】特開2010-167588(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021488(WO,A1)
【文献】特開2009-113369(JP,A)
【文献】米国特許第05139407(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維と熱可塑性の樹脂とが複合している複合材の加工装置であって、
前記複合材に含まれる前記樹脂の融点以上まで前記複合材を加熱する加熱装置と、
前記複合材を押圧する金型と、
前記金型の温度を調整する温度調整部と、を備え、
前記温度調整部は、前記金型が前記複合材を押圧している間、前記金型の温度を前記複合材に含まれる前記樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持し、
前記金型は、前記複合材が前記金型に設置される前に、前記温度調整部によって前記所定温度まで加熱されていて、
前記所望の時間は、前記加熱装置によって前記複合材が加熱されることで前記複合材が凝固した際にボイドが発生する状態である十分に前記樹脂が含浸していない状態となった繊維に、再度、前記複合材が凝固した際にボイドが発生しない状態である前記樹脂が十分に含浸した状態となるのに要する時間である複合材の加工装置。
【請求項2】
前記所定温度は、前記樹脂の粘弾性に基づいて決定されている請求項1に記載の複合材の加工装置。
【請求項3】
前記所定温度は、前記樹脂の粘弾性と前記樹脂が凝固する時間である凝固所要時間との関係に基づいて決定されている請求項2に記載の複合材の加工装置。
【請求項4】
前記所定温度は、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点よりも40℃低い温度以上であって、前記樹脂の融点よりも20℃低い温度以下である請求項1から請求項3のいずれかに記載の複合材の加工装置。
【請求項5】
前記複合材は、複数の複合材基材を積層したものである請求項1から請求項4のいずれかに記載の複合材の加工装置。
【請求項6】
前記複合材は、連続繊維一方向材である請求項5に記載の複合材の加工装置。
【請求項7】
繊維と熱可塑性の樹脂とが複合している複合材の加工装置であって、
前記複合材に含まれる前記樹脂の融点以上まで前記複合材を加熱する加熱装置と、
前記複合材を押圧する金型と、
前記金型の温度を調整する温度調整部と、を備え、
前記温度調整部は、前記金型が前記複合材を押圧している間、前記金型の温度を前記複合材に含まれる前記樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持し、
前記金型は、前記複合材が前記金型に設置される前に、前記温度調整部によって前記所定温度まで加熱されていて、
前記所定温度は、前記樹脂の粘弾性と前記樹脂が凝固する時間である凝固所要時間との関係に基づいて決定されている複合材の加工装置。
【請求項8】
繊維と熱可塑性の樹脂とが複合している複合材の加工方法であって、
前記複合材に含まれる前記樹脂の融点以上まで前記複合材を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記複合材を金型で押圧する押圧工程と、
前記金型を前記複合材が設置される前に、前記金型の温度を調整する温度調整部によって所定温度まで加熱する予備加熱工程と、を備え、
前記押圧工程は、前記温度調整部によって、前記金型が前記複合材を押圧している間、前記金型の温度を前記複合材に含まれる前記樹脂が凝固する時間が所望の時間となる前記所定温度に維持し、
前記所望の時間は、前記加熱工程によって前記複合材が加熱されることで前記複合材が凝固した際にボイドが発生する状態である十分に前記樹脂が含浸していない状態となった繊維に、再度、前記複合材が凝固した際にボイドが発生しない状態である前記樹脂が十分に含浸した状態となるのに要する時間である複合材の加工方法。
【請求項9】
前記所定温度は、前記樹脂の粘弾性に基づいて決定されている請求項8に記載の複合材の加工方法。
【請求項10】
前記所定温度は、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点よりも40℃低い温度以上であって、前記樹脂の融点よりも20℃低い温度以下である請求項8または請求項9に記載の複合材の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材の加工装置及び複合材の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の胴体、主翼等の航空機部品は、例えば熱可塑性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の複合材が用いられる場合がある。このような熱可塑性の複合材を所望の形状に加工する方法として、金型等で複合材を加圧することで複合材を変形させ、さらに、加圧状態を保ったまま金型等の温度を徐々に降温することで複合材を凝固させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を圧縮成形する成形工程と、成形工程の後に熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を冷却固化する冷却工程と、を備える加工方法が記載されている。成形工程では、誘導加熱コイルに電流を通じて加熱板を高周波誘導加熱し、加熱板から伝熱で面盤を均一に加熱し、面盤からの伝熱により、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を加熱し、更に圧力をかけることによって圧縮成形する。また、冷却工程では、加熱板の高周波誘導加熱を停止し、面盤内の冷却回路に冷媒を流通させて面盤の成形面を冷却し、伝熱により熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を冷却固化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-154625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、冷却回路の配置や外気による外乱等に起因して、降温過程で金型に温度のバラつきが生じる。金型の温度にバラつきが生じると、金型の温度が伝達する複合材の温度にもバラつきが生じる。これによって、複合材の母材樹脂の凝固進行が場所によって不均一となり、複合材に凝固済みの箇所と凝固していない箇所(以下、「未凝固箇所」と称する)とが生じることとなる。複合材に凝固済みの箇所が生じると、凝固済みの箇所が、金型を支えるようになってしまい、未凝固箇所への圧力の印加を阻害する。これにより、未凝固箇所において、加圧不足や複合材と金型との接触不良を引き起こす可能性があった。よって、加圧不足や複合材と金型との接触不良が生じると、加工後の成形品に、ボイド等が発生し内部品質が悪化する可能性や、加工後の成形品の表面に繊維が露出し表面品質が悪化する可能性があった。
【0006】
また、複合材を所望の形状に加工する方法として、ヒータやオーブン等で予め融点以上まで加熱した熱可塑性複合材を、凝固が促進しやすい温度とされた金型まで速やかに搬送するとともに金型でプレスして変形させ、そのまま金型で凝固させる方法も考えられる。この方法では、金型の温度が樹脂の凝固が素早くかつ確実に進行する温度(例えば、複合材の母材樹脂の結晶化(凝固)が最も早く進む温度)とされているので、プレス時間は短く設定される。具体的には、プレス時間は、例えば、数秒から数十秒に設定される。
【0007】
しかしながら、この方法では、複合材をプレスする際に、金型を閉じている最中から閉じた直後までの間に複合材の母材樹脂の凝固が急速に進行する。このため、複合材に十分な圧力がかからないまま複合材が凝固してしまい、繊維に樹脂が十分に含浸しない可能性があった。このため、加工後の成形品にボイド等が発生し内部品質が悪化する可能性や、加工後の成形品の表面に繊維が露出し表面品質が悪化する可能性があった。特に、樹脂が全体に含浸するのに時間を要する大型の部品や複雑形状の部品では、この問題が顕著であったため、大型部品や複雑形状の部品にはこの方法が適用できなかった。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、加工後の成形品の品質を向上させることができる複合材の加工装置及び複合材の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の複合材の加工装置及び複合材の加工方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る複合材の加工装置は、繊維と熱可塑性の樹脂とが複合している複合材の加工装置であって、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点以上まで前記複合材を加熱する加熱装置と、前記複合材を押圧する金型と、前記金型の温度を調整する温度調整部と、を備え、前記温度調整部は、前記金型が前記複合材を押圧している間、前記金型の温度を前記複合材に含まれる前記樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持する。
【0010】
本開示の一態様に係る複合材の加工方法は、繊維と熱可塑性の樹脂とが複合している複合材の加工方法であって、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点以上まで前記複合材を加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記複合材を金型で押圧する押圧工程と、を備え、前記押圧工程は、前記金型の温度を調整する温度調整部によって、前記金型が前記複合材を押圧している間、前記金型の温度を前記複合材に含まれる前記樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、加工後の成形品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係る加熱装置を示す模式的な図である。
図2】本開示の実施形態に係る複合材及び金型を示す模式的な正面図であって、複合材を金型で押圧する前の状態を示している。
図3】本開示の実施形態に係る複合材及び金型を示す模式的な正面図であって、複合材を金型で押圧した後の状態を示している。
図4】本開示の実施形態に係る成形品を示す模式的な正面図である。
図5】本開示の実施形態に係る複合材の加工方法における時間当たりの金型の圧力及び温度を示すグラフである。
図6】本開示の実施形態に係る複合材に含まれる樹脂の時間当たりの粘弾性及び温度を示すグラフである。
図7】本開示の実施形態に係る加工方法における金型設定温度と評価との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る複合材の加工装置及び複合材の加工方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る加工装置10は、航空機構造体を構成する航空機部品であるストリンガ、スパー、フレーム、リブ等を製造するために、その材料となる平板状の複合材1を所望の形状へ成形するための装置である。複合材1の例として、例えば、熱可塑性の樹脂と炭素繊維とが複合した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が挙げられる。具体的には、複合材1は、繊維に樹脂(以下、「母材樹脂」と称する場合もある)が含浸している繊維強化シートを複数枚積層した積層体であってもよい。複合材1の含まれる樹脂の例として、例えば、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)が挙げられる。なお、複合材1の材料は、繊維と熱可塑性の樹脂とが複合した複合材であればよく、上記説明の複合材1に限定されない。
【0015】
本実施形態に係る加工装置10は、平板状の複合材1を加工することで、成形品2(図4参照)を製造する装置である。本実施形態に係る成形品2は、長尺状の部材であって、長手方向に直交する面で切断した際の断面の形状がハット形状を為している。また、成形品2は、板厚が2mm~3mm程度とされている。なお、成形品2の形状及び板厚は一例であって、これに限定されない。
【0016】
本実施形態に係る加工装置10は、図1及び図2に示すように、複合材1を加熱する加熱装置11(図1参照)と、複合材1を押圧する金型12(図2参照)と、金型12を押圧する押圧装置13と、金型12に内蔵され金型12の温度を調整する温度調整部(図示省略)と、を備えている。
【0017】
加熱装置11は、内部に収容した複合材1を加熱する。加熱装置11は、複合材1を、複合材1に含まれる樹脂の融点以上に加熱する。加熱装置11は、例えば、オーブンであってもよく、また、遠赤外線加熱炉であってもよい。
【0018】
金型12は、図2及び図3に示すように、複合材1の押圧方向の一方側に配置される第1金型14と、複合材1の押圧方向の他方側に配置される第2金型15と、を有している。第1金型14と第2金型15とは、複合材1を挟むように配置されている。第1金型14は、複合材1を押圧する押圧面14aの略中央領域が下方に突出している。第2金型15は、複合材1を押圧する押圧面15aの略中央領域が下方に凹んでいる。
【0019】
押圧装置13は、図3に示すように、第1金型14を第2金型15方向へ移動させる。すなわち、押圧装置13は、第1金型14が複合材1を押圧するように、第1金型14を移動させる。押圧装置13の駆動力によって、第1金型14と第2金型15との間で複合材1が押圧され変形する。なお、押圧装置13は、第1金型14及び第2金型15の両方を互いに近付くように移動させてもよい。
【0020】
温度調整部は、金型12の内部又は外部に配置されており、金型12の温度を調整可能とされている。温度調整部は、例えば、金型12に内蔵され金型12を加熱するヒータと、金型12に内蔵され金型12を冷却する冷却水が流通する冷却配管と、を有している。温度調整部は、ヒータを作動させることで、金型12を所定の温度まで加熱することができる。また、金型加熱装置は、ヒータ及び冷却配管によって、金型12の温度を所定の温度に保つことができる。
また、温度調整部は、金型12の温度を検出する温度検出部(図示省略)を備えていてもよい。また、温度調整部は、温度検出部が検出する金型12の温度に基づいて、金型加熱装置を制御する制御部(図示省略)を備えてもよい。制御装置は、金型加熱装置を制御することで、金型12を所定の温度まで加熱するとともに、金型12の温度を所定の温度に保つ。
【0021】
制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0022】
次に、上述の加工装置10等を用いて複合材1を加工し、成形品2を製造する方法について説明する。
【0023】
[複合材製造工程]
まず、平板状の複合材1を製造する方法について説明する。
最初に、複数の複合材基材(例えば、繊維強化シート)を積層し、平板状の積層体を製造する。次に、積層体をプレス機(図示省略)に設置する。このプレス機は、積層体を加熱する加熱機構(電熱ヒータ等)及び積層体を冷却する冷却機能(水冷配管等)を備えている。次に、プレス機を作動させて、積層体を加圧するとともに加熱する。このとき、積層体の温度が、積層体に含まれる樹脂の融点以上となるまで、積層体を加熱する。これにより、樹脂が溶融し、繊維に樹脂が含浸する。また、加圧により積層体を構成する基材同士の隙間が潰されることで積層体が脱気される。次に、冷却機構を作動させ、積層体を加圧しつつ冷却する。このとき、積層体の温度が、積層体に含まれる樹脂のガラス転位温度以下となるまで、積層体を冷却する。これにより、樹脂が固化する。次に、プレス機を停止させ、積層体(複合材1)を取り出す。このようにして、平板状の複合材1が製造される。
なお、平板状の複合材1を製造する方法は上記説明の方法に限定されない。例えば、オートクレーブ成形によって製造してもよい。
【0024】
次に、加工装置10を用いて平板状の複合材1を加工し、成形品2を製造する方法について説明する。
[加熱工程]
まず、図1に示すように、加熱装置11で複合材1を加熱(予熱)する。このとき、複合材1に含まれる樹脂の融点以上となるまで複合材1を加熱する。複合材1は、加熱装置11によって加熱されることで、積層体製造時に凝固した樹脂が再度溶融し、繊維に十分に樹脂が含浸していない状態となる。
【0025】
[設置工程]
次に、加熱装置11から複合材1を取出し、金型12まで搬送する。次に、図2に示すように、金型12まで搬送した複合材1を、金型12に設置する。複合材1の搬送及び設置は、数秒以内に行うことが望ましい。
【0026】
金型12は、複合材1が設置される前に、温度調整部によって、所定の温度まで加熱されている。所定の温度は、複合材1に含まれる樹脂が凝固する時間が所望の時間となるように設定される。所定の温度は、例えば、複合材1に含まれる樹脂の融点よりも40℃低い温度以上であって、融点よりも20℃低い温度以下である。具体的には、例えば、樹脂がPEEK系の樹脂であって、樹脂の融点が305℃である場合には、所定の温度は、265℃以上であって、285℃以下である。また、所定の温度は、複合材1に含まれる樹脂の粘弾性に基づいて決定されてもよい。また、所定の温度とは、例えば、樹脂の融点よりも低い温度であって、樹脂が急激に凝固する温度(図5の温度T5)よりも高い温度であってもよい。
【0027】
[押圧工程]
温度調整部によって予熱された金型12に複合材1を設置すると、次に、図3に示すように、押圧装置13によって、第1金型14を第2金型15方向へ移動させ、複合材1を押圧する。このように、複合材1を金型12に応じた形状へ成形する。このとき、複合材1から金型12への伝熱によって、複合材1は金型12の温度と同等の温度にまで冷却される。
次に、複合材1を加圧した状態を所定の時間維持する。このとき、温度調整部によって、金型12の温度は、上述の所定の温度に維持される。また、複合材1を加圧する時間は、樹脂の特性及び金型12の温度に応じた時間に設定される。複合材1を所定温度に維持することにより、所定時間経過時には複合材1の母材樹脂は、後述の取出工程で取出すのに十分な固さにまで固化される。複合材1を押圧する時間は、加熱工程で樹脂が含浸していない状態となった繊維に、再度樹脂が十分に含浸した状態となるのに要する時間であってもよい。具体的には、複合材1を加圧する時間は、例えば、15分から30分程度に設定されてもよい。
また、押圧装置13が金型12を押圧する押圧力は、0.3MPa以上、10.0MPa以下である。より好適には、押圧力は、0.3MPa以上、5.0MPa以下である。押圧力は、例えば、4.0MPaであってもよい。
このように、所定温度の金型12で所定の時間複合材1を加圧することで、加熱工程で樹脂が含浸していない状態となった繊維に、再度樹脂が十分に含浸した状態とするとともに、複合材1に含まれる樹脂を凝固させて緻密に固化された複合材1を得ることができる。
【0028】
[取出工程]
複合材1の加圧が終了すると、第1金型14を第2金型15から離れる方向へ移動させ、複合材1(成形品2)を金型12から取り出す。このようにして、図4に示すように、所望の形状の成形品2を製造する。
【0029】
各工程における複合材1の温度及び複合材1に作用する圧力の変化について図5のグラフを用いて説明する。図5は横軸が時間を示し、縦軸が圧力又は温度を示している。また、実線Tは、時間あたりの複合材1の温度を示している。また、実線Pは、時間あたりの複合材1に作用する圧力を示している。
実線Tに示すように、まず、複合材1は加熱されることで昇温する(加熱工程)。次に、複合材1は、加熱装置11内で所定の時間、一定の温度を維持する。次に、複合材1は加熱装置11から金型12へ搬送され、金型12に設置される(搬送工程)。金型12に設置された複合材1は、所定の温度(T4)に加熱された金型12で加圧される(押圧工程)。この際、金型12の温度は、加熱装置11で加熱された複合材1の温度よりも低い温度であるので、複合材1の温度は所定の温度(T4)まで降温する。その後、押圧工程が完了するまで、複合材1の温度は、所定の温度で一定に維持される。なお、図5では、取出工程における複合材1の温度を省略している。
また、実線Pで示すように、加熱工程及び搬送工程においては、複合材1に作用する圧力は低い値で一定である。押圧工程で複合材1に作用する圧力は上昇する。押圧工程において、複合材1は一定の圧力で押圧される。このため、複合材1に作用する圧力は高い値で一定である。取出工程で金型12から取り出されると、複合材1に作用する圧力は低下する。
【0030】
次に、樹脂の粘弾性に基づいて、金型12の温度を決定する方法について図6を用いて説明する。図6は、横軸が時間を示し、縦軸が樹脂の粘弾性又は樹脂の温度を示している。
また、実線Txは、樹脂の温度を徐々に低下させた場合を示し、実線Vxは、Txで示すように樹脂の温度を低下させた場合における樹脂の粘弾性の変化を示している。また、破線Taは、樹脂の温度を温度Thから瞬時に温度T1に冷却した後に温度T1で一定とした場合を示している。なお、温度Thは、母材樹脂の融点以上の温度とされている。また、破線Vaは、破線Taで示すように樹脂の温度を変化又は維持した場合における樹脂の粘弾性の変化を示している。また、一点鎖線Tbは、樹脂の温度を温度Thから瞬時に温度T2に冷却した後に温度T2で一定とした場合を示している。一点鎖線Vbは、一点鎖線Tbで示すように樹脂の温度を変化又は維持した場合における樹脂の粘弾性の変化を示している。また、二点鎖線Tcは、樹脂の温度を温度Thから瞬時に温度T3に冷却した後に温度T3で一定とした場合を示している。二点鎖線Vcは、二点鎖線Tcで示すように樹脂の温度を一定に維持した場合における樹脂の粘弾性の変化を示している。
【0031】
本実施形態では、粘弾性が所定の値(V)以上となった場合に、取出工程において成形品2を取出すのに十分な固さにまで複合材が固化されたとし、樹脂が凝固したと判断する。図6に示すように、樹脂の粘弾性がVに至るまでに要する時間(すなわち、樹脂が凝固するまでに要する時間)は、樹脂の温度によって異なる。
破線Ta及び破線Vaで示すように、樹脂の温度をT1に保った場合には、樹脂が凝固するまでに要する時間(以下、「凝固所要時間」と称する。)はt1となる。また、同様に、一点鎖線Tb及び一点鎖線Vbで示すように、樹脂の温度をT2(T1よりも高い温度)に保った場合には、凝固所要時間はt1よりも長いt2となる。また、同様に、二点鎖線Tc及び二点鎖線Vcで示すように、樹脂の温度をT3(T2よりも高い温度)に保った場合には、凝固所要時間はt2よりも長いt3となる。よって、凝固所要時間は、樹脂の温度が高いほど長くなり、樹脂の温度が低いほど短くなることがわかる。
【0032】
このように、樹脂の温度によって、凝固所要時間が変化することがわかる。この関係を用いて、好適な凝固所要時間となるように、金型12の温度を算出する。
具体的には、まず、実線Tx及び実線Vxにより、大まかに樹脂の凝固が開始される温度(凝固開始温度)を把握する。次に、把握した凝固開始温度に基づいて、仮設定温度範囲を決める。次に、図6のグラフ等を用いて、樹脂の仮設定温度の凝固所要時間を調べる。これにより、目標とする成形サイクルタイムを実現し得る凝固所要時間の温度を選定する。選定した温度を、金型12の温度として決定する。
具体的には、例えば、目標とする成形サイクルタイムを実現し得る凝固所要時間がt3である場合には、t3に対応する温度であるT3を選定する。そして、T3を金型12の温度として決定する。
【0033】
次に、金型12の温度と成形品2の評価との関係について図7を用いて説明する。
図7では、融点Tmが305℃のPEEK系の樹脂を用いた複合材1における金型12の温度(金型設定温度)と、加工後の成形品2の品質の評価との関係を示している。なお、品質の評価は、高い方から順に、「良い」「許容可能」「良くない」としている。
図7に示すように、金型設定温度を220℃、240℃及び260℃にした場合には、成形品2の内部にボイドが発生しており、また繊維への樹脂の含浸が不十分であり成形品2の表面に繊維が露出してしまっていた。このため、品質の評価は「良くない」に分類された。
金型設定温度を265℃にした場合には、ボイドの発生はほとんど見られず、内部の大部分において欠陥がなかった。また、成形品2の表面においても大部分において良好であった。このため、品質の評価は「許容可能」に分類された。
金型設定温度を270℃、275℃及び280℃にした場合には、成形品2の内部にボイドは発生しておらず、また繊維への樹脂の含浸が十分であり成形品2の表面に繊維が露出することもなかった。このため、品質の評価は「良い」に分類された。
金型設定温度を285℃にした場合には、成形品2の内部にボイドは発生しておらず、また、成形品2の表面においても大部分において良好であった。このため、品質の評価は「許容可能」に分類された。
金型設定温度を290℃にした場合には、成形品2の内部にボイドは発生していなかったものの、成形品2の表面において凝固が不十分であった。このため、品質の評価は「良くない」に分類された。
【0034】
このように、金型12の温度は、Tm-40℃(265℃)以上、Tm-20℃(285℃)以下の範囲が好ましい。金型12の温度は、Tm-35℃(270℃)以上、Tm-20℃(285℃)以下の範囲がより好ましい。金型12の温度は、Tm-35℃(270℃)以上、Tm-25℃(280℃)以下の範囲がより好ましい。
なお、粘弾性測定の結果、凝固所要時間は、金型12の温度が270℃で約5分であり、280℃で約15分であった。
【0035】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、押圧工程において、金型12の温度を一定に保ちつつ、複合材1を冷却している。すなわち、複合材1を冷却する際に、金型12の温度を積極的に低下させていない。これにより、複合材1の冷却過程において、金型12を冷却する冷却装置(例えば、冷却回路)の配置等に起因する金型12の温度のバラつきが生じ難い。これにより、複合材1を均一に冷却し易くすることができる。したがって、複合材1の一部が早く凝固することに起因して他の部分(未凝固部分)に作用する押圧力が低下する事態を抑制することができる。よって、複合材1に作用する押圧力を均一化することができるので、好適に複合材1を押圧することができる。よって、加工後の複合材1(成形品2)の品質を向上させることができる。
また、一般的に、熱可塑性樹脂のような高分子材料は、凝固点よりも低い一定の温度を維持した場合、数秒から数十分かけて凝固が進行する。凝固所要時間は、樹脂の温度に基づいて決まる。この点で、熱可塑性樹脂のような高分子材料は、凝固点を境にほとんど一瞬で凝固する水/氷などと異なる。
本実施形態では、温度調整部が、金型12が複合材1を押圧している間、金型12の温度を複合材1に含まれる樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持する。これにより、複合材1に含まれる樹脂の凝固所要時間を所望の時間とすることができる。
【0036】
複合材1は、加熱装置11によって加熱され樹脂が溶融することで、繊維に樹脂が含浸した状態から、繊維に樹脂が十分に含浸していない状態となる場合がある。このような場合であっても、本実施形態では、複合材1に含まれる樹脂の凝固所要時間を所望の時間とすることができるので、例えば、再度繊維に樹脂が十分に含浸するのに要する時間を見込んだ凝固所要時間とすることができる。すなわち、再度繊維に樹脂が十分に含浸した後に樹脂の凝固が完了するように凝固所要時間を設定することができる。このように凝固所要時間を設定することで、金型12において再度繊維に樹脂を十分に含浸させることができる。したがって、ボイドの発生等を抑制することができるので、加工後の成形品2の品質を向上させることができる。
【0037】
図5の破線で示す比較例のように、例えば、加工時間短縮のために凝固所要時間を可及的に短くすることも考えられる。具体的には、例えば、図5の破線T’で示すように、金型12の温度を樹脂の凝固が素早くかつ確実に進行する温度とし、破線P’で示すように加圧時間を短くすることも考えられる。具体的には、加圧時間を数秒から数十秒とすることが考えられる。なお、破線T’の保持温度T5は、実線Tの保持温度T4よりも低い温度である。
しかしながら、この場合には、金型12で複合材1が急激に冷却された後に短時間で樹脂が凝固してしまい、樹脂が流動可能な状態のうちに加圧して繊維に樹脂を含浸(再含浸)する時間を十分に確保することができない可能性があった。再含浸が十分になされない場合、複合材1の内部にボイドが残ってしまったり、複合材1の表面に樹脂がしみだしておらず、繊維がむき出しとなってしまったりする場合がある。よって、加工後の成形品2の品質が低下する可能性がある。特に、樹脂が全体に含浸するのに時間を要する大型の複合材や複雑形状の複合材を加工する場合には、加圧時間を十分に確保することができないので、成形品2の品質が低下する可能性があった。
【0038】
一方、本実施形態では、押圧工程における金型12の温度が、複合材1に含まれる樹脂の融点よりも40℃低い温度以上であって、樹脂の融点よりも20℃低い温度以下の一定の温度に維持されている。これにより、押圧工程において、複合材1は金型12への伝熱により所定温度まで瞬時に冷却されるものの、冷却直後の複合材1の母材樹脂の粘弾性は、加圧によって繊維に含浸される程度に十分低いため、凝固所要時間が経過し樹脂が凝固するまでの時間において、加圧により繊維へ樹脂を含浸することが可能である。これにより、図6等に示すように、樹脂の凝固所要時間を、再度繊維に樹脂が十分に含浸するのに要する時間とすることができる。これにより、金型12において再度繊維に樹脂を十分に含浸させることができる。したがって、ボイドの発生等を抑制することができるので、加工後の成形品2の品質を向上させることができる。
【0039】
また、樹脂が全体に含浸するのに時間を要する大型の複合材や複雑形状の複合材を加工する場合であっても、凝固所要時間を所望の時間に設定することができるので、再度繊維に樹脂が十分に含浸するのに要する時間とすることができる。したがって、大型の複合材や複雑形状の複合材を加工する場合であっても、ボイドの発生等を抑制することができるので、品質を向上させることができる。
【0040】
なお、本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、長手方向に直交する面で切断した際の断面形状がハット形状の成形品2を加工装置10で製造する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、長手方向に直交する面で切断した際の断面形状がC形状やL形状やZ形状の成形品を製造する場合に、本開示に係る加工装置及び加工方法を用いてもよい。この場合には、金型の押圧面が成形品の形状に応じた形状をしている。
また、長手方向に沿って湾曲又は屈曲する成形品を製造する場合に、本開示に係る加工装置及び加工方法を用いてもよい。また、長手方向又は短手方向に沿って板厚が変化する成形品を製造する場合に、本開示に係る加工装置及び加工方法を用いてもよい。また、全長が数メートルとなる大型の成形品を製造する場合に、本開示に係る加工装置及び加工方法を用いてもよい。また、板厚が5mm以上となる成形品を製造する場合に、本開示に係る加工装置及び加工方法を用いてもよい。また、繊維方向(繊維が延在する方向)が全て同方向である複合材基材からなる複合材に対して加工を施す際に本開示に係る加工装置及び加工方法を用いてもよい。このような複合材の例として、連続繊維一方向材(UD材)が挙げられる。また、繊維方向が複合材基材(例えば、繊維強化シート)によって異なる複合材に対して加工を施す際に本開示に係る加工装置及び加工方法を用いてもよい。このような複合材の例として、繊維織物材(ファブリックシート)やランダム材(不連続繊維のランダムシート)が挙げられる。
【0042】
また、例えば、上記実施形態では、金型12で複合材1を成形品2に応じた形状に成形する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、複合材1は、加熱装置11で加熱する前に、成形品2に応じた形状に成形されていてもよい。この場合に、複合材1を成形する方法は特に限定されない。例えば、板状の複合材1にローラ等を押圧することで成形してもよく、また、金型12とは別の成形用の金型で成形してもよい。
【0043】
以上説明した実施形態に記載の複合材の加工装置及び複合材の加工方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の一態様に係る複合材の加工装置は、繊維と熱可塑性の樹脂とが複合している複合材(1)の加工装置(10)であって、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点以上まで前記複合材を加熱する加熱装置(11)と、前記複合材を押圧する金型(12)と、前記金型の温度を調整する温度調整部と、を備え、前記温度調整部は、前記金型が前記複合材を押圧している間、前記金型の温度を前記複合材に含まれる前記樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持する。
【0044】
一般的に、熱可塑性樹脂のような高分子材料は、凝固点よりも低い一定の温度を維持した場合、数秒から数十分かけて凝固が進行する。すなわち、凝固するまでに所定の時間を要する。この場合、凝固に要する時間(以下、「凝固所要時間」と称する。)は、樹脂の温度に基づいて決まる。具体的には、樹脂の温度が高いほど凝固所要時間は長くなり、樹脂の温度が低いほど凝固所要時間は短くなる。この点で、熱可塑性樹脂のような高分子材料は、凝固点を境にほとんど一瞬で凝固する水/氷などと異なる。
上記構成では、温度調整部は、金型が複合材を押圧している間、金型の温度を複合材に含まれる樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持する。これにより、複合材に含まれる樹脂の凝固所要時間を所望の時間とすることができる。
複合材は、加熱装置によって加熱され樹脂が溶融することで、繊維に樹脂が含浸した状態から、繊維に樹脂が十分に含浸していない状態となる場合がある。このような場合であっても、上記構成では、複合材に含まれる樹脂の凝固所要時間を所望の時間とすることができるので、例えば、再度繊維に樹脂が十分に含浸するのに要する時間を見込んだ凝固所要時間とすることができる。すなわち、再度繊維に樹脂が十分に含浸した後に樹脂の凝固が完了するように凝固所要時間を設定することができる。このように凝固所要時間を設定することで、金型において再度繊維に樹脂を十分に含浸させることができる。したがって、ボイドの発生等を抑制することができるので、加工後の成形品の品質を向上させることができる。
なお、所望の時間とは、例えば、加熱装置によって複合材が加熱されることで十分に樹脂が含浸していない状態となった繊維に、再度樹脂が十分に含浸した状態となるのに要する時間であってもよい。繊維に樹脂が十分に含浸した状態とは、複合材が凝固した際にボイド等が発生しない状態であってもよい。
また、所定の温度とは、例えば、樹脂の融点よりも低い温度であって、樹脂が急激に凝固する温度よりも高い温度であってもよい。
【0045】
また、本開示の一態様に係る複合材の加工装置は、前記所定温度は、前記樹脂の粘弾性に基づいて決定されている。
【0046】
樹脂の凝固所要時間は、樹脂の粘弾性と樹脂の温度とによって決まる。上記構成では、粘弾性に基づいて温度を決定しているので、複合材に含まれる樹脂の凝固所要時間を、的確に所望の時間とすることができる。
【0047】
また、本開示の一態様に係る複合材の加工装置は、前記所定温度は、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点よりも40℃低い温度以上であって、前記樹脂の融点よりも20℃低い温度以下である。
【0048】
上記構成では、所定温度が、複合材に含まれる樹脂の融点よりも40℃低い温度以上であって、樹脂の融点よりも20℃低い温度以下である。これにより、樹脂の凝固所要時間を、再度繊維に樹脂が十分に含浸するのに要する時間とすることができる。これにより、金型において再度繊維に樹脂を十分に含浸させることができる。したがって、ボイドの発生等を抑制することができるので、加工後の成形品の品質を向上させることができる。
【0049】
また、本開示の一態様に係る複合材の加工方法は、繊維と熱可塑性の樹脂とが複合している複合材(1)の加工方法であって、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点以上まで前記複合材を加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記複合材を金型(12)で押圧する押圧工程と、を備え、前記押圧工程は、前記金型の温度を調整する温度調整部によって、前記金型が前記複合材を押圧している間、前記金型の温度を前記複合材に含まれる前記樹脂が凝固する時間が所望の時間となる所定温度に維持する。
【0050】
また、本開示の一態様に係る複合材の加工方法は、前記所定温度は、前記樹脂の粘弾性に基づいて決定されている。
【0051】
また、本開示の一態様に係る複合材の加工方法は、前記所定温度は、前記複合材に含まれる前記樹脂の融点よりも40℃低い温度以上であって、前記樹脂の融点よりも20℃低い温度以下である。
【符号の説明】
【0052】
1 :複合材
2 :成形品
10 :加工装置
11 :加熱装置
12 :金型
13 :押圧装置
14 :第1金型
14a :押圧面
15 :第2金型
15a :押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7