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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】分析物センサのための酵素固定化接着層
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20231218BHJP
   A61B 5/1468 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G01N27/327 353J
A61B5/1468
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021190160
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2018515510の分割
【原出願日】2016-12-29
(65)【公開番号】P2022028855
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】62/273,155
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/273,142
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/273,219
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504016422
【氏名又は名称】デックスコム・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャンガー・ワン
(72)【発明者】
【氏名】テッド・タン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジオン・ジョウ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534483(JP,A)
【文献】特表2015-508425(JP,A)
【文献】特表2009-540889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0080691(US,A1)
【文献】特開2011-162522(JP,A)
【文献】特開2004-314405(JP,A)
【文献】Sang-Ho Ye et al.,Nonthrombogenic, Biodegradable Elastomeric Polyurethanes withVariable Sulfobetaine Content,ACS Applied Materials & Interfaces,2014年,Vol.6,pp.22796-22806
【文献】中島 智 他,ホスホリルコリン基含有ポリ(ウレタン-ウレア)の合成と生体適合性,東海大学紀要工学部,2004年,Vol.44, No.2,pp.1-8
【文献】Guangzhi Wang et al.,Development of Robust and Recoverable Ultralow-Fouling CoatingsBased on Poly(carboxybetaine) Ester Analogue,ACS Applied Materials & Interface,2015年07月,Vol.7,pp.16938-16945
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26 - 27/49
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物濃度の測定のためのデバイスであって、前記デバイスが、
分析物の濃度と関連した信号を生成するように構成された経皮センサと、
前記センサ上に位置する検知膜であって、酵素層を含む検知膜と、を備え、前記酵素層が、酵素及び酵素層ポリマーを含み、前記ポリマーが、その骨格に、1つ以上の双性イオン繰り返し単位を含み、前記ポリマーが、ポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメントをさらに含む、デバイス。
【請求項2】
前記1つ以上の双性イオン繰り返し単位が、ベタイン単位を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記双性イオン繰り返し単位が、第1のベタイン単位及び第2のベタイン単位を含み、前記第1のベタイン単位が、前記第2のベタイン単位とは異なる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記酵素層ポリマーが、10kDa~500,000kDaの分子量を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記酵素層ポリマーが、10kDa~100,000kDaの分子量を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記酵素層ポリマーが、100,000kDa~500,000kDaの分子量を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記酵素層ポリマーが、1.4~3.5の多分散性指数を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記酵素層ポリマーが、10°~90°の接触角を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記1つ以上の双性イオン繰り返し単位が、前記ポリマーの総重量に基づいて少なくとも1重量%である、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照による組み込み
出願データシートにおいて特定される任意かつ全ての優先権主張、またはそれに対するいかなる訂正も、37 CFR 1.57の下で参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、2015年12月30日に出願された米国仮出願第62/273,155号、2015年12月30日に出願された米国仮出願第62/273,142号、及び2015年12月30日に出願された米国仮出願第62/273,219号の利益を主張する。前述の出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、各々が、これによって明示的に本明細書の一部となる。
【0002】
本明細書に開示される主題は、宿主における生物学的分析物を測定するためのデバイス、及びそのようなデバイスのコンポーネントに関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学センサは、血中グルコースなどの生物学的分析物の存在または濃度を決定するために有用である。そのようなセンサは、例えば、糖尿病患者におけるグルコース及び救命救急事象中の乳酸塩のモニタリングにおいて有効である。血中グルコースレベルなどの血液分析物を連続して検出し、定量化するために、様々な血管内、経皮、及び埋め込み可能なセンサが開発されている。
【0004】
そのような分析物センサには、分析物の測定可能な信号として登録され得る薬剤への変換に関与する酵素を含有する膜層またはドメインがある。例えば、グルコースセンサは、グルコースをヒドロペルオキシドに変換する酵素を含有し、これがセンサ信号にさらに変換される。そのため、酵素変換に依存する他のセンサのような酵素グルコースセンサの性能は、センサの膜層に組み込まれる活性酵素の量によって影響され得る。
【0005】
多くの場合、分析物反応(例えば、グルコース対過酸化水素)を効率的に触媒するために、十分な活性酵素を膜に組み込み、維持することは困難である。酵素は、水和状態で膜から浸出し得る。浸出した酵素はまた、深刻な異物応答(FBR)をもたらし得る。これらの事象は、センサ感度を変化させ、抵抗層を分解し、最終的にセンサの精度及び寿命を減少させることになる。さらに、酵素分解は、酵素の不可逆的または可逆的不活性化につながる多くの異なる機序によって起こり得る。酵素は、例えば、温度変化、pH変化、またグルタルアルデヒド及びカルボジイミドなどの酵素の固定化に用いられることの多い架橋剤を含む反応化学物質、ならびに過酸化水素及びグルコン酸などの酸化還元反応からの副産物、及び内因性副産物への曝露を含む環境条件に敏感であり得る。酵素分解は、インビボでの分析物センサの機能寿命を厳しく制限し、段階的センサ感度の低下及びセンサ寿命終了の早期発生をもたらし得る。
【0006】
酵素層を作るための、ポリマー、ゾルゲル、粒子、及びそれらの混合物を含む様々な担体または結合剤への酵素の組み込み及び固定化が、分析物センサ中の酵素の浸出を防止するために試みられている。しかしながら、これらの層には、水性環境中で膨張及び分解し、膜システム内の隣接した層への接着が不良になる問題がある。結果として、これらの副産物は、膜から浸出する可能性もあり、またFBRの一因となり、センサの感度及び精度に影響を及ぼし得る。接着の不良は、インビボでの低減した機械的安定性及び膜層の剥離をさらにもたらし得る。
【0007】
故に、酵素が、酵素とベースポリマー材料との間の強力な分子レベルの相互作用を介して膜内に固定化される、改変された酵素層が所望される。そのような層は、酵素の浸出を低減(または防止)することができ、これがFBRを減少させ、センサの寿命、感度、及び精度を改善する。水性環境における生理化学的安定性及び触媒性能安定性により改変され、センサの膜システムにおける他の層への良好な接着を有する、酵素層も必要とされる。本明細書に開示される組成物、方法、及びデバイスは、これら及び他の必要性に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許公開第US-2011-0027127-A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示される材料及び方法の目的に従い、本明細書において具体化され、広く説明されるように、開示される主題は、一態様において、化合物、組成物、ならびに化合物及び組成物の作製及び使用方法、また化合物及び組成物を含有するデバイスに関する。
第1の態様では、分析物濃度(例えば、グルコース)を決定するためのデバイスであって、分析物の濃度と関連した信号を生成するように構成されたセンサと、該センサ上に位置する検知膜と、を備える、デバイスを提供する。検知膜は、酵素層を含み、該酵素層は、酵素と、ポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメント、ならびに1つ以上の双性イオン繰り返し単位を含むポリマーと、を含む。酵素層は、酵素を保護し、酵素の活性に悪影響を及ぼすことなく、それが検知膜から宿主に浸出するのを防止する。酵素層は、0.01μm~約250μmの厚さであり得る。
【0010】
第2の態様では、分析物濃度(例えば、グルコース)を決定するためのデバイスであって、分析物濃度と関連した信号を生成するように構成されたセンサと、該センサ上に位置する検知膜と、を備える、デバイスを提供する。検知膜は、酵素層を含み、該酵素層は、酵素と、ポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメント、ならびに1つ以上の双性イオン繰り返し単位を含むポリマーと、を含む。酵素層は、酵素を保護し、内因性及び外因性化合物、ならびに温度及びpHを含む他のストレス因子によって引き起こされる、その環境における動的変化によってそれが不活性化するのを防止する。酵素層は、0.01μm~約250μmの厚さであり得る。開示されるデバイスのデバイスのさらなる実施例において、酵素は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、及びウリカーゼからなる群から選択され得る。ある特定の実施例において、酵素は、グルコースオキシダーゼである。
【0011】
本態様のデバイスの実施例において、1つ以上の双性イオン繰り返し単位は、ベタイン化合物またはその誘導体を含む。本態様のデバイスの実施例において、1つ以上の双性イオン繰り返し単位は、ベタイン化合物またはその前駆体を含む。
【0012】
本態様のデバイスの実施例において、1つ以上の双性イオン繰り返し単位は、カルボキシルベタイン、スルホベタイン、リンベタイン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む。
【0013】
本態様のデバイスの実施例において、1つ以上の双性イオン繰り返し単位は、以下からなる群から選択されるモノマーから誘導され、
【化1】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R、R、及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換される。
【0014】
本態様のデバイスの実施例において、1つ以上の双性イオン繰り返し単位は、以下からなる群から選択されるモノマーから誘導され、
【化2】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換される。
【0015】
本態様のデバイスの実施例において、1つ以上の双性イオン繰り返し単位は、以下からなる群から選択されるモノマーから誘導され、
【化3】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換される。
【0016】
本態様のデバイスの実施例において、重合基は、アルケン、アルキン、エポキシド、ラクトン、アミン、ヒドロキシル、イソシアネート、カルボン酸、無水物、シラン、ハロゲン化物、アルデヒド、及びカルボジイミドから選択される。
【0017】
本態様のデバイスの実施例において、1つ以上の双性イオン繰り返し単位は、ポリマーの総重量に基づいて少なくとも約1重量%である。
【0018】
本態様のデバイスの実施例において、ポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメントは、ポリマーの総重量に基づいて約15重量%~約75重量%である。
【0019】
本態様のデバイスの実施例において、酵素層中のポリマーは、エポキシド、ポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つのセグメントをさらに含む。
【0020】
本態様のデバイスの実施例において、酵素層中のポリマーは、ポリエチレンオキシドセグメントをさらに含み、いくつかの実施例において、酵素層ポリマーの総重量に基づいて約5重量%~約60重量%である。
【0021】
本態様のデバイスの実施例において、酵素層中のポリマーは、約10kDa~約500,000kDaの分子量、約1.4~約3.5の多分散性指数、及び/または約10°~約90°の接触角を有する。
【0022】
第2の態様では、酵素層が、ベースポリマーと、酵素安定化及び/または固定化ポリマーとをさらに含む、デバイスが提供され、酵素安定化及び/または固定化ポリマーは、親水性領域及び疎水性領域の両方、ならびに1つ以上の双性イオン繰り返し単位を有するポリマー鎖を含み、ベースポリマーは、シリコーン、エポキシド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリウレタン、及びポリウレタン尿素から選択される。
【0023】
第3の態様では、酵素層が酵素安定化試薬をさらに含む、デバイスが提供される。ある特定の実施例において、酵素安定化試薬は、コカミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オクチルスルホベタイン、カプリルスルホベタイン、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、パルミチルスルホベタイン、ステアリルスルホベタイン、ベタイン(トリメチルグリシン)、オクチルベタイン、ホスファチジルコリン、グリシンベタイン、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルホベタイン)、及びそれらの誘導体からなる群から選択される1つ以上の双性イオンからなる群から選択され得る。
【0024】
本明細書に開示されるデバイスの全てにおいて、それらは、分析物濃度の連続測定のために構成され得る。
【0025】
追加の利点は、以下の説明において一部記載され、その説明から一部明らかとなるか、または下記の態様の実施によって学習され得る。下記の利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される要素及び組み合わせによって認識され、達成される。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、単に例示的かつ説明的であり、制限的でないことを理解されたい。
【0026】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、下記のいくつかの態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】宿主に取り付けられ、他のデバイスと通信する、連続分析物センサシステムの概略図である。
図2】膜システムの様々な実施形態を示すセンサの全体断面図である。
図3A】一実施形態における、連続分析物センサのインビボ部分を示す側面概略図である。
図3B】一実施形態における、連続分析物センサのインビボ部分を示す斜視概略図である。
図3C】一実施形態における、連続分析物センサのインビボ部分を示す側面概略図である。
図3D】一実施形態における、連続分析物センサのインビボ部分を示す断面/側面概略図である。
図4】ベタインを含有しない親水性ポリマー添加剤との対照ポリマーブレンド(P3)の200μm厚フィルムから、または本明細書に開示されるポリマー骨格にベタインを含有する親水性ポリマー添加剤とのポリマーブレンドから水中に経時的に浸出した活性酵素の%を示すグラフである。
図5】(P3)において使用されるものと同じポリマー結合剤で形成されるが、酵素固定化ポリマー添加剤として30重量%のベタイン含有ポリマーを有する酵素層で構成されたグルコースセンサと、上記の30重量%ベタイン含有ポリマーを有しない酵素層で構成されたグルコースセンサ(P3)とについて、様々なセンサ測定基準を比較するグラフである。
図6】ベタインを有しない対照ポリマー、製剤に付加された小分子ベタインを有する対照ポリマー、または本明細書に開示されるポリマー骨格にベタインを有するポリマーの200μm厚フィルムから、水中への経時的な総タンパク質酵素の正規化溶出を示すグラフである。
図7】WB-7、及びベタインを有しない対照ポリマー(P3)から調製された酵素層について、経時的な吸水を示すグラフである。
図8】酵素層にベタイン含有ポリマーを有するセンサ、及びそのようなポリマーを有しないセンサの感度を示すグラフである。酵素層でコーティングされたセンサを、70℃及び95%湿度で処理した。この加速時効処理の後に、抵抗層を付加し、感度を測定した。データは、ベタイン含有ポリマーを有しないセンサについて、感度の一定の低下を示し、これは熱ストレス及び/または高湿度に起因する酵素不活性化の結果である。
図9】酵素層にベタイン含有ポリマーを有するセンサ、及びそのようなポリマーを有しないセンサの精度を示すグラフである。センサを酵素層でコーティングし、70℃及び95%湿度で処理した。この加速時効処理の後に、抵抗層を付加し、センサ精度の形態でセンサ性能を測定し、平均絶対相対差異(MARD)として表し、これは最小二乗線形フィッティングからの計算値及び実測値の絶対相対差異の平均から計算される。グルコース濃度の各ステップに対する|(V計算-V実測)/V実測|の平均。
図10】酵素層ポリマーのある特定の実施形態を示す概略である。
図11A】複数のポリカチオン層及びポリアニオン層を含む干渉ドメインの一実施形態の一部分の概略図である。
図11B】ポリカチオン及びポリアニオンの交互吸着を用いて図11Aに示される構造を作る、交互積層法の一実施形態を示す。
図12】接着引抜試験からの結果を示すグラフである。
図13】接着引抜試験からの他の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載される方法、組成物、及びデバイスは、開示される主題の特定の態様に関する以下の詳細な説明、ならびにそこに含まれる実施例及び図面を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0029】
方法、組成物、及びデバイスが開示され、説明される前に、下記の態様が、特定の合成方法または特定の試薬に限定されず、そのようなものとして、当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の態様のみを説明する目的のためであり、限定的であることを意図しないことも理解されたい。
【0030】
また、本明細書全体で、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、開示される事柄が属する技術水準をより完全に説明するために、それら全体がここで参照により本出願に組み込まれる。開示される参考文献はまた、それらに含有される材料について、参照により本明細書に個々に、かつ特異的に組み込まれ、その参考文献が依存する文章において論じられる。
【0031】
定義
本明細書において、及び以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多くの用語を参照する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それが修飾する数値を認定することが意図され、そのような値を誤差内で変動可能であるとして示す。データのチャートまたは表に示される平均値に対する標準偏差などの特定の誤差が列挙されない場合、「約」という用語は、有効数字を考慮して、列挙される値を包含する範囲及びその数字に切り上げるかまたは切り下げることによって含まれる範囲も同様に意味することが理解されるべきである。
【0033】
本明細書で使用される場合、「分析物」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、分析され得る生体液(例えば、血液、間質液、脳脊髄液、リンパ液、尿、汗、唾液など)中の物質または化学成分を指すが、これに限定されない。分析物は、自然発生物質、人工物質、代謝産物、及び/または反応生成物を含み得る。いくつかの実施形態において、検知領域、デバイス、及び方法による測定のための分析物は、グルコースである。しかしながら、他の分析物も同様に企図され、アカルボキシプロトロンビン、アシルカルニチン、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、アミノ酸プロファイル(アルギニン(クレブス回路)、ヒスチジン/ウロカニン酸、ホモシステイン、フェニルアラニン/チロシン、トリプトファン)、アンドレノステンジオン、アンチピリン、アラビニトールエナンチオマー、アルギナーゼ、ベンゾイルエクゴニン(コカイン)、ビオチニダーゼ、ビオプテリン、c反応性タンパク質、カルニチン、カルノシナーゼ、CD4、セルロプラスミン、ケノデオキシコール酸、クロロキン、コレステロール、コリンエステラーゼ、共役1-βヒドロキシコール酸、コルチゾール、クレアチンキナーゼ、クレアチンキナーゼMMアイソザイム、サイクロスポリンA、d-ペニシラミン、デ-エチルクロロキン、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート、DNA(アセチル化多型、アルコール脱水素酵素、α1-抗トリプシン、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘモグロビンA、ヘモグロビンS、ヘモグロビンC、ヘモグロビンD、ヘモグロビンE、ヘモグロビンF、Dパンジャブ、β-サラセミア、B型肝炎ウイルス、HCMV、HIV-1、HTLV-1、レーベル遺伝性視神経症、MCAD、RNA、PKU、三日熱マラリア原虫、性分化、21-デオキシコルチゾール)、デスブチルハロファントリン、ジヒドロプテリジン還元酵素、ジフテリア/破傷風抗毒素、赤血球アルギナーゼ、赤血球プロトポルフィリン、エステラーゼD、脂肪酸/アシルグリシン、遊離β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、遊離赤血球ポルフィリン、遊離チロキシン(FT4)、遊離トリ-ヨードチロニン(FT3)、フマリルアセトアセターゼ、ガラクトース/gal-1-リン酸塩、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ゲンタマイシン、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルタチオン、グルタチオンペリオキシダーゼ、グリココール酸、グリコシル化ヘモグロビン、ハロファントリン、ヘモグロビン変異体、ヘキソサミニダーゼA、ヒト赤血球炭酸脱水酵素I、17-α-ヒドロキシプロゲステロン、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、免疫反応性トリプシン、乳酸塩、鉛、リポタンパク質((a)、B/A-1、β)、リゾチーム、メフロキン、ネチルマイシン、フェノバルビトン、フェニトイン、フィタン酸/プリスタン酸、プロゲステロン、プロラクチン、プロリダーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、キニン、逆位トリ-ヨードチロニン(rT3)、セレン、血清膵臓リパーゼ、シソマイシン、ソマトメジンC、特異的抗体(アデノウイルス、抗核抗体、抗ゼータ抗体、アルボウイルス、オーエスキー病ウイルス、デング熱ウイルス、メジナ虫、単包条虫、赤痢アメーバ、エンテロウイルス、ランブル鞭毛虫(Giardia duodenalisa)、ヘリコバクターピロリ、B型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIV-1、IgE(アトピー性疾患)、インフルエンザウイルス、ドノバンリーシュマニア、レプトスピラ、麻疹/流行性耳下腺炎/風疹、らい菌、肺炎マイコプラズマ、ミオグロビン、回旋糸状虫、パラインフルエンザウイルス、熱帯熱マラリア原虫、ポリオウイルス、緑膿菌、呼吸系発疹ウイルス、リケッチア(ツツガムシ病)、マンソン住血吸虫、トキソプラズマ原虫、梅毒トレポネーマ(Trepenoma pallidium)、クルーズ/ランゲルトリパノソーマ、水疱性口炎ウイルス(vesicular stomatis virus)、バンクロフト糸状虫、黄熱病ウイルス)、特異的抗原(B型肝炎ウイルス、HIV-1)、スクシニルアセトン、スルファドキシン、テオフィリン、チロトロピン(TSH)、チロキシン(T4)、チロキシン結合グロブリン、微量元素、トランスフェリン、UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ、尿素、ウロポルフィリノーゲンIシンターゼ、ビタミンA、白血球、及び亜鉛プロトポルフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。血液または間質液中で自然に発生する塩、糖、タンパク質、脂肪、ビタミン、及びホルモンもまた、ある特定の実施形態における分析物を構成し得る。分析物、例えば、代謝産物、ホルモン、抗原、抗体などは、生体液中に自然に存在し得るか、または内因性であり得る。あるいは、分析物、例えば、画像診断のための造影剤、放射性同位体、化学薬剤、フッ化炭素ベースの人工血液、または薬物もしくは医薬組成物が体内に導入され得るか、または外因性であり得、インスリン、エタノール、大麻(マリファナ、テトラヒドロカンナビノール、ハシシ)、吸入剤(亜酸化窒素、亜硝酸アミル、亜硝酸ブチル、クロロ炭化水素、炭化水素)、コカイン(クラックコカイン)、刺激剤(アンフェタミン、メタンフェタミン、Ritalin、Cylert、Preludin、Didrex、PreState、Voranil、Sandrex、Plegine)、抑制剤(バルビツール酸塩、メタカロン、精神安定剤、例えば、Valium、Librium、Miltown、Serax、Equanil、Tranxene)、幻覚剤(フェンシクリジン、リゼルギン酸、メスカリン、ペヨーテ、サイロシビン)、麻薬(ヘロイン、コデイン、モルヒネ、アヘン、メペリジン、Percocet、Percodan、Tussionex、Fentanyl、Darvon、Talwin、Lomotil)、デザイナードラッグ(フェンタニル、メペリジン、アンフェタミン、メタンフェタミン、及びフェンシクリジンの類似体、例えば、Ecstasy)、アナボリックステロイド、ならびにニコチンが挙げられるが、これらに限定されない。薬物及び医薬組成物の代謝産物もまた、分析物として企図され得る。例えば、アスコルビン酸、尿酸、ドーパミン、ノルアドレナリン、3-メトキシチラミン(3MT)、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、ホモバニリン酸(HVA)、5-ヒドロキシトリプタミン(5HT)、及び5-ヒドロキシインドール酢酸(FHIAA)など、体内で生成される神経化学物質及び他の化学物質などの分析物も分析され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ベースライン」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、分析物濃度に関連しない分析物センサ信号のコンポーネントを指すが、これに限定されない。グルコースセンサの一実施例において、ベースラインは、実質的に、グルコース以外の因子(例えば、干渉種、非反応関連過酸化水素、または過酸化水素と重複する酸化電位を有する他の電気活性種)に起因する信号寄与で構成される。等式y=mx+bを解くことによって較正が定義されるいくつかの実施形態において、bの値は、信号のベースラインを表す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「連続(または継続)分析物検知」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、分析物濃度のモニタリングが、例えば約5~10分毎に、連続的、継続的、及びまたは断続的(しかし規則的)に実施される期間を指すが、これに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「カウント」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、デジタル信号の測定の単位を指すが、これに限定されない。一実施例において、カウントで測定された未加工のデータ流は、電圧に直接関連し(例えば、A/Dコンバータによって変換される)、これは作用電極からの電流に直接関連する。別の実施例において、カウントで測定されたカウンタ電極電圧は、電圧に直接関連する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「双極子」または「双極性化合物」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、化合物の中性分子が、分子内の異なる位置で正及び負の電荷を有する化合物を指すが、これに限定されない。分子内の正及び負の電荷は、フル単位電荷を含むそれ以下の任意の非ゼロ電荷であり得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「遠位の」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、特定の基準点と比較して様々な素子間の空間関係を指すが、これに限定されない。例えば、センサのいくつかの実施形態は、バイオインターフェースドメイン及び酵素ドメインを有する膜システムを含む。センサが基準点であるとみなされ、バイオインターフェースドメインが、酵素ドメインよりもセンサから離れて位置付けられる場合、バイオインターフェースドメインは、酵素ドメインよりもセンサの遠位にある。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ドメイン」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、均一もしくは不均一勾配(すなわち、異方性)の層であり得るか、または膜の部分として提供され得る膜の領域を指すが、これに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「電位」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、電流の流れの原因である回路内の2点間の電位差を指すが、これに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される場合、「電気化学反応表面」または「電気活性表面」という用語は、広義語であり、それらの通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、電気化学反応が起こる電極の表面を指すが、これに限定されない。一実施例として、作用電極において、検出される分析物の酵素触媒反応によって生成されるH(過酸化水素)が反応し、それにより測定可能な電気回路を創出する。例えば、グルコースの検出において、グルコースオキシダーゼは、Hを副産物として生成する。Hは、作用電極の表面と反応して2つの陽子(2H)、2つの電子(2e)、及び1つの酸素分子(O)を生成し、これが検出される電流を生成する。カウンタ電極の場合、還元可能な種、例えば、Oは、作用電極によって生成される電流を均衡させるために、電極表面において還元される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「宿主」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、動物(例えば、ヒト)及び植物を指すが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、宿主には、飼育動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験室動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)、及び鳥類が含まれ得る。他の実施例において、宿主には、霊長類またはヒトなどの哺乳動物が含まれ得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「干渉物質」及び「干渉種」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、センサにおける関心対象の分析物の測定を干渉して、分析物測定値を正確に表していない信号を生成する効果または種を指すが、これに限定されない。例示的な電気化学センサにおいて、干渉種には、測定される分析物の酸化電位と重なる酸化電位を有する化合物が含まれ得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「非双性イオン双極子」及び「非双性イオン双極性化合物」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、化合物の中性分子が、分子内の異なる位置で正及び負の電荷を有する化合物を指すが、これに限定されない。分子内の正及び負の電荷は、フル単位未満であるが、任意の非ゼロ電荷であり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「動作可能な接続」、「動作可能に接続された」及び「動作可能に連結された」という用語は、広義語であり、それらの通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、コンポーネント間の信号の送信を可能にする様式で、別のコンポーネント(複数可)に連結されている1つ以上のコンポーネントを指すが、これに限定されない。例えば、1つ以上の電極を使用して、試料中の分析物の量を検出し、その情報を信号に変換することができ、この信号は、次いで、回路に送信され得る。この場合、電極は、電子回路に「動作可能に連結」されている。
【0046】
「任意の」または「任意に」という用語は、後に記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、及びその説明が、その事象または状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含むことを意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「両性高分子電解質ポリマー」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、カチオン基及びアニオン基の両方を含むポリマーを指すが、これに限定されない。そのようなポリマーは、ほぼ等しい数の正及び負の電荷を有するように調製され得、故にそのようなポリマーの表面は、ほぼ正味で電荷的に中性であり得る。あるいは、そのようなポリマーは、過剰な正または負いずれかの電荷を有するように調製され得、故にそのようなポリマーの表面は、それぞれ正味で電荷的に正または負であり得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ポリ双性イオン」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、ポリマー鎖の繰り返し単位が、双性イオン部分であるポリマーを指すが、これに限定されない。ポリ双性イオンはまた、ポリベタインとしても知られる。ポリ双性イオンは、カチオン基及びアニオン基の両方を有するため、それらは両性高分子電解質ポリマーの一種である。しかしながら、カチオン基及びアニオン基の両方が、同じ繰り返し単位の一部であるため、それらは固有であり、これはポリ双性イオンが、同数のカチオン基及びアニオン基を有するが、他の両性高分子電解質ポリマーは、あるイオン基を、その他よりも多く有し得ることを意味する。またポリ双性イオンは、カチオン基及びアニオン基を繰り返し単位の一部として有する。両性高分子電解質ポリマーは、アニオン基に接続されたカチオン基を有する必要はなく、それらは異なる繰り返し単位上にあり得、故にランダム間隔で互いから離れて分配され得るか、または1つのイオン基が、その他よりも数で勝る場合がある。
【0049】
本明細書で使用される場合、「近位の」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、特定の基準点と比較して様々な素子間の空間関係を指すが、これに限定されない。例えば、デバイスのいくつかの実施形態は、バイオインターフェース層及び酵素層を有する膜システムを含む。センサが基準点であるとみなされ、酵素層が、バイオインターフェース層よりもセンサの近くに位置付けられる場合、酵素層は、バイオインターフェース層よりもセンサの近位にある。
【0050】
本明細書で使用される場合、「未加工のデータ流」及び「データ流」という用語は、広義語であり、それらの通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、グルコースセンサからの測定されたグルコース濃度に直接関連したアナログまたはデジタル信号を指すが、これに限定されない。一実施例において、未加工のデータ流は、アナログ信号からA/Dコンバータによって変換された「カウント」でのデジタルデータ(例えば、電圧またはアンペア数)であり、グルコース濃度を表す。これらの用語は、実質的に連続的なグルコースセンサからの複数の時間を置いたデータ点を広く包含し、これは、1秒未満から例えば最大1、2、または5分以上に及ぶ時間間隔で行われる個々の測定を含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「検知膜」及び「膜システム」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、1つ以上のドメインまたは層を含み得、酸素に対して透過性であり、関心対象の分析物に対して透過性であってもなくてもよい、数ミクロン以上の厚さの材料から構成される、透過性または半透過性の膜を指すが、これに限定されない。一実施例において、検知膜または膜システムは、固定化グルコースオキシダーゼ酵素を含み得、これは、グルコースの濃度を測定するために電気化学反応が生じることを可能にする。
【0052】
本明細書で使用される場合、「検知領域」、「センサ」、及び「検知機序」という用語は、広義語であり、それらの通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、特定の分析物の検出に関与するモニタリングデバイスの領域または機序を指すが、これに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される場合、「感度」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、既定量(単位)の測定分析物によって生成された信号の量(例えば、電流及び/または電圧の形態)を指すが、これに限定されない。例えば、一実施形態において、センサは、1mg/dLのグルコース分析物毎に約1~約100ピコアンペアの電流の感度(または傾斜)を有する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「双性イオン」及び「双性イオン化合物」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、化合物の中性分子が、分子内の異なる位置で単位正電荷及び単位負電荷を有する化合物を指すが、これに限定されない。そのような化合物は、双極性化合物の一種であり、「内塩」と称される場合もある。
【0055】
本明細書で使用される場合、「双性イオン前駆体」または「双性イオン化合物前駆体」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、それ自体は双性イオンではないが、化学反応を通じて最終または移行状態の双性イオンになり得る任意の化合物を指すが、これに限定されない。本明細書に記載のいくつかの実施形態において、デバイスは、そのデバイスのインビボ埋め込みの前に双性イオンに変換され得る双性イオン前駆体を含む。あるいは、本明細書に記載のいくつかの実施形態において、デバイスは、そのデバイスのインビボ埋め込みの後に起こるいくつかの化学反応によって双性イオンに変換され得る双性イオン前駆体を含む。そのような反応は、当業者に既知であり、開環反応、マイケル付加などの付加反応を含む。この方法は、分子量及び機械的強度などの所望の物理特性を達成するために、ベタインモノマーの可溶度などの技術的困難に起因してベタイン含有モノマーの重合が困難である場合に特に有用である。ベタイン前駆体の重合後修飾または変換は、所望のポリマー構造及び組成物を達成するための実践的な方法であり得る。そのような前駆体の例には、第三級アミン、第四級アミン、ピリジン、及び他の本明細書に詳述されるものが含まれる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「双性イオン誘導体」または「双性イオン化合物誘導体」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、それ自体は双性イオンではないが、むしろ双性イオンが非双性イオンに変換される化学反応の生成物である任意の化合物を指すが、これに限定されない。そのような反応は可逆的であり得るため、ある特定の条件下で、双性イオン誘導体は、双性イオン前駆体として作用し得る。例えば、双性イオンベタインから形成される加水分解可能なベタインエステルは、適切な条件下で加水分解を受けて双性イオンベタインに戻ることが可能なカチオン双性イオン誘導体である。
【0057】
本明細書で用いられるように、以下の略語が適用される。Eq及びEqs(当量)、mEq(ミリ当量)、M(モル)、mM(ミリモル)、μM(マイクロモル)、N(規定)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、μmol(マイクロモル)、nmol(ナノモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、Kg(キログラム)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、dL(デシリットル)、μL(マイクロリットル)、cm(センチメートル)、mm(ミリメートル)、μm(マイクロメートル)、nm(ナノメートル)、h及びhr(時間)、min(分)、ならびにsec(秒)、℃(摂氏)。
【0058】
センサシステム
図1は、宿主に取り付けられ、多くの他の例示的なデバイス110~113と通信している、連続分析物センサシステム100の概略図である。使い捨て筐体(図示せず)を介して宿主の皮膚に固定される、オンスキン(on-skin)センサアセンブリ600を備える経皮分析物センサシステムが示される。このシステムには、経皮分析物センサ200、及び分析物情報を受信機に無線送信するための電子機器ユニット(「センサ電子機器」または「トランスミッタ」と交換可能に称される)500が含まれる。使用中、センサ200の検知部分は、宿主の皮膚の下にあり、センサ200の接触部分は、電子機器ユニット500に操作可能に接続されている(例えば、電気的に接続されている)。電子機器ユニット500は、宿主の皮膚に固定された接着パッチに取り付けられた筐体と係合される。
【0059】
オンスキンセンサアセンブリ600は、便利かつ安全な適用を提供するために適応されたアプリケータを使用して宿主に取り付けられてもよい。そのようなアプリケータを、宿主の皮膚を通じてセンサ200を挿入するために使用することもできる。一旦センサ200が挿入されると、アプリケータは、センサアセンブリから引き離される。
【0060】
一般に、連続分析物センサシステム100は、分析物の濃度を示す出力信号を提供する任意のセンサ構成を含む。出力信号(例えば、未加工データ流、フィルタリングされたデータ、平滑化されたデータ、及び/または他の方法で変換されたセンサデータなどのセンサデータを含む)は、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、専用デバイスなどであり得る、受信器に送信される。一実施形態では、分析物センサシステム100は、米国特許公開第US-2011-0027127-A1号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるような経皮グルコースセンサを含む。いくつかの実施形態では、センサシステム100は、連続グルコースセンサを含み、例えば、Sayらの米国特許第6,565,509号に記載されるような経皮センサを含む。別の実施形態において、センサシステム100は、連続グルコースセンサを含み、例えば、Bonnecazeらの米国特許第6,579,690号及びSayらの米国特許第6,484,046号を参照して記載されるような皮下センサを含む。別の実施形態において、センサシステム100は、連続グルコースセンサを含み、例えば、Colvinらの米国特許第6,512,939号を参照して記載されるような皮下センサを含む。別の実施形態において、センサシステム100は、連続グルコースセンサを含み、例えば、Schulmanらの米国特許第6,477,395号を参照して記載されるような血管内センサを含む。別の実施形態において、センサシステム100は、連続グルコースセンサを含み、例えば、Mastrototaroらの米国特許第6,424,847号を参照して記載されるような血管内センサを含む。本明細書に記載される実施形態と共に使用するのに好適な他の信号処理技術及びグルコースモニタリングシステムの実施形態は、米国特許公開第US-2005-0203360-A1号及び米国特許公開第US-2009-0192745-A1号に記載され、それらの内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。センサは、皮膚上にセンサを維持する筐体を通じて延在し、電子機器ユニットにおいて提供されて、センサとセンサ電子機器との電気接続を提供する。
【0061】
一実施形態において、センサは、ワイヤから形成されるか、またはワイヤの形態である。例えば、センサは、裸の細長い導電コア(例えば、金属ワイヤ)、または各々が導電性であってもなくてもよい、1層、2層、3層、4層、5層、またはそれ以上の材料の層でコーティングされた細長い導電コアなどの細長い導電体を含み得る。細長いセンサは、長く薄いが、可撓性かつ強力であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、細長い導電体の最小寸法は、約0.1インチ未満、約0.075インチ未満、約0.05インチ未満、約0.025インチ未満、約0.01インチ未満、約0.004インチ未満、または約0.002インチ未満である。センサは、円形断面を有し得る。いくつかの実施形態において、細長い導電体の断面は、卵形、矩形、三角形、多角形、星形、C形、T形、X形、Y形、不規則などであり得る。一実施形態において、導電ワイヤ電極は、コアとして用いられる。そのようなクラッド電極に、1つまたは2つの追加の導電層が付加されてもよい(例えば、電気分離のために提供される絶縁層を介在させることで)。導電層は、任意の好適な材料で構成され得る。ある特定の実施形態において、ポリマーまたは他の結合剤中に導電粒子(すなわち、導電性材料の粒子)を含む導電層を用いることが望ましい場合がある。
【0062】
ある特定の実施形態において、細長い導電体を形成するために使用される材料(例えば、ステンレス鋼、チタン、タンタル、白金、白金-イリジウム、イリジウム、ある特定のポリマー、及び/または同様のもの)は、強力かつ硬質であり得るため損傷を防ぐ。例えば、いくつかの実施形態において、細長い導電体の最大引張強度は、約80kPsi~約500kPsiである。別の実施例では、いくつかの実施形態において、細長い導電体のヤング率は、約160GPa~約220GPaである。さらに別の実施例では、いくつかの実施形態において、細長い導電体の収率強度は、約60kPsi~約2200kPsiである。いくつかの実施形態において、センサの小径は、これらの材料に、したがって全体としてセンサに可撓性を提供する(例えば、付与する、可能にする)。故に、センサは、周囲組織によってそれに加えられる繰り返し力に耐えることができる。
【0063】
構造支持、弾性、及び可撓性を提供することに加えて、いくつかの実施形態において、コア(またはそのコンポーネント)は、作用電極からセンサ電子機器(図示せず)への電気信号のための電導を提供する。いくつかの実施形態において、コアは、ステンレス鋼、チタン、タンタル、導電性ポリマー、及び/または同様のものなどの導電性材料を含む。しかしながら、他の実施形態において、コアは、非導電性ポリマーなどの非導電性材料から形成される。さらに他の実施形態において、コアは、複数の材料層を含む。例えば、一実施形態において、コアは、内部コア及び外部コアを含む。さらなる実施形態において、内部コアは、第1の導電性材料で形成され、外部コアは、第2の導電性材料で形成される。例えば、いくつかの実施形態において、第1の導電性材料は、ステンレス鋼、チタン、タンタル、導電性ポリマー、合金、及び/または同様のものであり、第2の導電性材料は、コアと第1層との間に電導を提供するように、及び/または第1層をコアに付着させるように選択される導電性材料である(例えば、第1層が、コア材料に良好に付着しない材料で形成される場合)。別の実施形態において、コアは、非導電性材料(例えば、非導電性金属及び/または非導電性ポリマー)で形成され、第1層は、ステンレス鋼、チタン、タンタル、導電性ポリマー、及び/または同様のものなどの導電性材料である。コア及び第1層は、単一(または同じ)材料、例えば、白金であり得る。当業者であれば、追加の構成が可能であることを理解する。
【0064】
示される実施形態において、電子機器ユニット500は、センサ200に取り外し可能に取り付け可能である。電子機器ユニット500は、連続分析物センサデータの測定及び処理と関連した電子機器回路を含み、センサデータの処理及び較正と関連したアルゴリズムを実行するように構成される。例えば、電子機器ユニット500は、米国特許公開第US-2009-0240120-A1号及び2011年9月28日に出願された「ADVANCED CONTINUOUS ANALYTE MONITORING SYSTEM」という表題の米国特許出願第13/247,856号に記載される(それらの内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)、センサ電子機器モジュールの機能性に関する様々な態様を提供することができる。電子機器ユニット500は、分析物センサ200などのグルコースセンサを介して分析物のレベルの測定を可能にする、ハードウェア、ファームウェア、及び/またはソフトウェアを含み得る。例えば、電子機器ユニット500は、ポテンショスタット、センサ200に電力を提供するための電源、信号処理及びデータ記憶に有用な他のコンポーネント、及び好ましくは電子機器ユニット500と1つ以上の受信器、中継器、及び/またはデバイス110~113などのディスプレイデバイスとの間の一方向または双方向データ通信のためのテレメトリモジュールを含み得る。電子機器は、プリント回路基板(PCB)または同様のものに固定することができ、様々な形態をとり得る。例えば、電子機器は、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、及び/またはプロセッサなどの集積回路(IC)の形態をとり得る。電子機器ユニット500は、センサ情報を処理する、例えばデータを記憶する、データ流を分析する、分析物センサデータを較正する、分析物値を推定する、推定分析物値を、時間対応する測定分析物値と比較する、様々な推定分析物値を分析するように構成されたセンサ電子機器を含み得る。センサ分析物データを処理するためのシステム及び方法の例は、本明細書において、ならびに米国特許第7,310,544号、米国特許第6,931,327号、米国特許公開第2005-0043598-A1号、米国特許公開第2007-0032706-A1号、米国特許公開第2007-0016381-A1号、米国特許公開第2008-0033254-A1号、米国特許公開第2005-0203360-A1号、米国特許公開第2005-0154271-A1号、米国特許公開第2005-0192557-A1号、米国特許公開第2006-0222566-A1号、米国特許公開第2007-0203966-A1号、及び米国特許公開第2007-0208245-A1においてより詳細に記載されており、それらの内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0065】
1つ以上の中継器、受信器、及び/またはディスプレイデバイス、例えばキーフォブ中継器110、医療デバイス受信器111(例えば、インスリン送達デバイス及び/もしくは専用グルコースセンサ受信器)、スマートフォン112、ポータブルコンピュータ113などは、電子機器ユニットに動作可能に接続され、これが本明細書ではトランスミッタ及び/またはセンサ電子機器本体とも称される、電子機器ユニット500からデータを受信し、いくつかの実施形態において、データを電子機器ユニット500に送信する。例えば、センサデータは、センサ電子機器ユニット500からキーフォブ中継器110、医療デバイス中継器111、スマートフォン112、ポータブルコンピュータ113などのうちの1つ以上に送信され得る。一実施形態において、ディスプレイデバイスは、電子機器ユニット500からのデータ流を送信、受信、及び同期するように一緒に機能する、RFトランシーバ(図示せず)に動作可能に接続された水晶結晶を有する入力モジュールを含む。しかしながら、入力モジュールは、電子機器ユニット500からデータを受信することができる任意の様式で構成され得る。一旦受信されると、入力モジュールは、データ流を、下でより詳細に記載されるように、そのデータ流を処理するプロセッサに送信する。プロセッサは、データを記憶する、データ流を分析する、分析物センサデータを較正する、分析物値を推定する、推定分析値を時間対応する測定分析値と比較する、推定分析値の変動を分析する、データをダウンロードする、及び分析物値、プロンプト、メッセージ、警告、アラームなどを提供することによってユーザインターフェースを制御するなどの処理を行う中央制御ユニットである。プロセッサは、本明細書に記載の処理を行うハードウェアを含み、例えば、読み出し専用メモリ(ROM)は、データの永久的または半永久的記憶、センサID(センサ識別子)、受信器ID(受信器識別子)などのデータの記憶、ならびにデータ流を処理するためのプログラミング(例えば、本明細書の別の場所に記載される推定及び他のアルゴリズムを行うためのプログラミング)を提供し、ランダムアクセスメモリ(RAM)は、システムのキャッシュメモリを記憶し、データ処理に役立つ。プロセッサと統合され得る、及び/または動作可能に接続され得る出力モジュールは、電子機器ユニットから受信したセンサデータに基づいて出力を生成するためのプログラミング(及びプロセッサ内で発生した任意の処理)を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、分析物値は、ディスプレイデバイス上に表示される。いくつかの実施形態において、プロンプトまたはメッセージは、ディスプレイデバイス上に表示されて基準外れ値、基準分析物値の要求、治療推薦、推定分析物値からの測定分析物値の偏差などの情報をユーザに伝達することができる。さらに、較正または較正のトラブルシューティングを通じてユーザをガイドするために、プロンプトが表示され得る。
【0067】
さらに、出力モジュールからのデータ出力は、受信器と外部デバイスとの間に有線または無線の一方向または双方向通信を提供することができる。外部デバイスは、受信器とインターフェースするまたは通信する任意のデバイスであり得る。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、コンピュータであり、受信器は、例えば、医師によって遡及的分析のための現在または過去のデータをダウンロードすることができる。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、モデムであり、受信器は、アラート、警告、緊急メッセージなどを、通信回線を介して医師または家族などの相手に送信することができる。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、インスリンペンであり、受信器は、インスリン量及び時間などの治療推薦をインスリンペンに通信することができる。いくつかの実施形態において、外部デバイスは、インスリンポンプであり、受信器は、インスリン量及び時間などの治療推薦をインスリンポンプに通信することができる。外部デバイスは、例えば、ペースメーカー、埋め込み型分析物センサパッチ、他の注入デバイス、テレメトリデバイスなどの他の技術または医療デバイスを含み得る。受信器は、外部デバイス及び/または任意の数の追加のデバイスと、無線周波数、Bluetooth(登録商標)、ユニバーサルシリアルバス(USB)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)通信基準(IEEE802.11、802.15、802.20、802.22、及び他の802通信プロトコルを含む)、ZigBee、無線(例えば、セルラー)電気通信、ページングネットワーク通信、磁気誘導、衛星データ通信、GPRS、ANT、及び/または専売の通信プロトコルを含む、任意の好適な通信プロトコルを介して通信することができる。
【0068】
本明細書に記載の実装は、概して、1つ以上のセンサワイヤによって構成されたセンサについて論じる。しかしながら、センサは、そのようなワイヤ形状または線形の配置に限定されないことが理解されるであろう。むしろセンサは、平面センサ、体積センサ、点センサとして、または本説明を考慮して理解される他の形状で実装され得る。
【0069】
膜システム
本明細書に開示される膜システムは、生体液と接触した埋め込み可能なデバイスと共に使用するのに好適である。例えば、膜システムは、生体液中の分析物レベルをモニタリングし、決定するためのデバイス、例えば、糖尿病を有する個体のグルコースレベルをモニタリングするためのデバイスなどの埋め込み可能なデバイスと共に利用され得る。いくつかの実施形態において、分析物測定デバイスは、連続デバイスである。分析物測定デバイスは、任意の好適な検知素子を用いて、限定されないが、酵素的、化学的、物理的、電気化学的、分光光度的、旋光分析的、熱量測定的、放射測定的、免疫化学的、または同様の素子を伴うものを含む未加工信号を提供する。
【0070】
以下の説明の一部は、記載の膜システム及びそれらの仕様方法を含めてグルコース測定デバイスに向けられているが、これらの膜システムは、グルコースを測定またはモニタリングするデバイスにおける使用に限定されない。これらの膜システムは、例えば、生体液中に存在する他の分析物(例えば、コレステロール、アミノ酸、アルコール、ガラクトース、及び乳酸塩)を検出し、定量化するデバイス、細胞移植デバイス(例えば、米国特許第6,015,572号、米国特許第5,964,745号、及び米国特許第6,083,523号を参照されたい)、薬物送達デバイス(例えば、米国特許第5,458,631号、米国特許第5,820,589号、及び米国特許第5,972,369号を参照されたい)などを含む、様々なデバイスのうちのいずれかにおける使用に好適である。
【0071】
一実施形態において、分析物測定デバイスは、米国特許第6,001,067号及び米国特許公開第US-2005-0027463-A1号(参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)を参照して記載されるような埋め込み可能なグルコースセンサである。別の実施形態において、分析物測定デバイスは、米国特許公開第US-2006-0020187-A1号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照して記載されるようなグルコースセンサである。さらに他の実施形態において、センサは、米国特許公開第US-2007-0027385-A1号、米国特許公開第US-2008-0119703-A1号、米国特許公開第US-2008-0108942-A1号、及び米国特許公開第US-2007-0197890-A1号(参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、宿主血管に埋め込まれるように、または体外的に構成される。いくつかの実施形態において、センサは、米国特許公開第US-2005-0143635-A1号、米国特許公開第US-2007-0027385-A1号、米国特許公開第US-2007-0213611-A1号、及び米国特許公開第US-2008-0083617-A1号(参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、二重電極センサとして構成される。1つの代替実施形態において、連続グルコースセンサは、例えば、Sayらの米国特許第6,565,509号に記載されるようなセンサを含む。別の代替実施形態において、連続グルコースセンサは、例えば、Bonnecazeらの米国特許第6,579,690号、またはSayらの米国特許第6,484,046号を参照して記載されるような皮下センサを含む。別の代替実施形態において、連続グルコースセンサは、例えば、Colvinらの米国特許第6,512,939号を参照して記載されるような詰め替え可能な皮下センサを含む。さらに別の代替実施形態において、連続グルコースセンサは、例えば、Schulmanらの米国特許第6,477,395号を参照して記載されるような血管内センサを含む。別の代替実施形態において、連続グルコースセンサは、Mastrototaroらの米国特許第6,424,847号を参照して記載されるような血管内センサを含む。いくつかの実施形態において、電極システムは、様々な既知のインビボ分析物センサまたはモニターのうちのいずれか、例えばWardの米国特許第7,157,528号、Wardらの米国特許第6,212,416号、Schulmanらの米国特許第6,119,028号、Leshoの米国特許第6,400,974号、Bernerらの米国特許第6,595,919号、Kurnikらの米国特許第6,141,573号、Sunらの米国特許第6,122,536号、Varallらの欧州特許公開第EP1153571号、Colvinらの米国特許第6,512,939号、Slateらの米国特許第5,605,152号、Bessmanらの米国特許第4,431,004号、Goughらの米国特許第4,703,756号、Hellerらの米国特許第6,514,718号、Goughらの米国特許第5,985,129号、CaduffのPCT国際公開第WO4/021877号、Maleyらの米国特許第5,494,562号、Hellerらの米国特許第6,120,676号、及びGuyらの米国特許第6,542,765号と共に使用され得る。一般に、開示の実施形態は、様々な連続分析物測定デバイス構成に適用可能である。
【0072】
いくつかの実施形態において、長期センサ(例えば、完全に埋め込み可能であるかまたは血管内)は、約30日以下~約1年以上の期間(例えば、センサセッション)にわたって機能するように構成され、配置される。いくつかの実施形態において、短期センサ(例えば、経皮的または血管内であるもの)は、約数時間~約30日の期間、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29日の期間(例えば、センサセッション)を含む)にわたって機能するように構成され、配置される。本明細書で使用される場合、「センサセッション」という用語は、広義の用語であり、センサが宿主に適用される(例えば、埋め込まれる)、またはセンサ値を得るために使用される期間を指すが、これに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、センサセッションは、センサ埋め込み(例えば、皮下組織へのセンサの挿入、及びセンサを宿主の循環系と流体連通するように配置することを含む)の時点からセンサが除去される時点に及ぶ。
【0073】
一般に、膜システムは、複数のドメイン、例えば、電極ドメイン、干渉ドメイン、酵素ドメイン、抵抗ドメイン、及びバイオインターフェースドメインを含む。膜システムは、既知の薄膜技法(例えば、蒸着、スプレー、電着、浸漬、刷毛コーティング、フィルムコーティング、液滴コーティングなど)を使用して、曝露された電気活性表面上に堆積され得る。膜材料堆積に続いて、追加のステップ、例えば、乾燥、焼成、及び硬化(例えば、UV硬化、熱硬化、湿気硬化、放射線硬化など)を適用して、機械特性、信号安定性、及び選択性などのある特定の特性を強化することができる。典型的なプロセスにおいて、干渉層膜の堆積時に、酵素層は、約0.05μm~約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16μmの「ドライフィルム」厚さを有する。「ドライフィルム」厚さは、標準コーティング技法によるコーティング製剤からの硬化フィルム流延の厚さを指す。
【0074】
ある特定の実施形態において、酵素層は、酵素層ポリマー及び活性酵素で形成され、酵素層ポリマーは、ポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメント、ならびに1つ以上の双性イオン繰り返し単位を含む。いくつかの実施形態において、酵素層コーティングは、ポリマーに組み込まれたカルボキシルベタイン基、及び非イオン親水性ポリエチレンオキシドセグメントを有するポリウレタン尿素で形成され、このポリウレタン尿素ポリマーは、既定のコーティング製剤による有機または非有機溶媒系に溶解され、イソシアネート架橋剤で架橋され、約50℃の中温で硬化する。溶媒系は、ポリマーの溶解または分散を助ける単一溶媒または溶媒の混合であり得る。溶媒は、重合媒質として選択されるもの、または重合が完了した後に付加されるものであり得る。溶媒は、好ましくは、乾燥を促進するためにより低い沸点を有し、酵素を変性させる能力が低く、埋め込み適用に対する毒性の低いものから選択される。これらの溶媒の例には、水、脂溶性ケトン、エステル、エーテル、アルコール、炭水化物などが含まれる。酵素層の最終厚さ及び溶液粘度(ポリマー固体のパーセントに関連した)に応じて、コーティングは、所望の厚さを構築するための浸漬などの選択されたプロセスの単一ステップまたは複数の繰り返しステップで適用され得る。なおも他の実施形態において、酵素層ポリマーは、ポリマーに組み込まれたカルボン酸基及びカルボキシルベタイン基、ならびに非イオン親水性ポリエチレンオキシドセグメントを有するポリウレタン尿素で形成され、このポリウレタン尿素ポリマーは、コーティング製剤中の有機または非有機溶媒系に溶解され、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)で架橋され、約50℃の中温で硬化される。多機能アジリジンなどの他の架橋剤も同様に使用され得る。
【0075】
他の実施形態において、酵素層は、ポリマーに組み込まれたスルホベタイン基、及び非イオン親水性ポリエチレンオキシドセグメントを有するポリウレタン尿素で形成され、このポリウレタン尿素ポリマーは、所定のコーティング製剤による有機または非有機溶媒系に溶解され、イソシアネート架橋剤で架橋され、約50℃の中温で硬化する。溶媒系は、ポリマーの溶解または分散を助ける単一溶媒または溶媒の混合であり得る。溶媒は、重合媒質として選択されるもの、または重合が完了した後に付加されるものであり得る。溶媒は、好ましくは、乾燥を促進するためにより低い沸点を有し、埋め込み適用に対する毒性の低いものから選択される。これらの溶媒の例には、脂溶性ケトン、エステル、エーテル、アルコール、炭水化物などが含まれる。酵素層の最終厚さ及び溶液粘度(ポリマー固体のパーセントに関連した)に応じて、コーティングは、所望の厚さを構築するための浸漬などの選択されたプロセスの単一ステップまたは複数の繰り返しステップで適用され得る。なおも他の実施形態において、酵素層ポリマーは、ポリマーに組み込まれた不飽和の炭化水素基及びスルホベタイン基、ならびに非イオン親水性ポリエチレンオキシドセグメントを有するポリウレタン尿素で形成され、このポリウレタン尿素ポリマーは、コーティング製剤中の有機または非有機溶媒系に溶解され、開始剤の存在下でUV、LED光、電子線などを含む熱及び照射により架橋され、約50℃の中温で硬化される。不飽和の炭化水素の例には、アリル基、ビニル基、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アルキンなどが含まれる。
【0076】
図3A~3Cは、細長い導電体402を含む、連続分析物センサ400のインビボ部分の実施形態を示す。細長い導電体402は、コア410(図3Bを参照されたい)と、そのコアを少なくとも部分的に取り囲む第1層412と、を含む。第1層は、作用電極(例えば、窓406内に位置する)と、その作用電極上に位置する膜408と、を含む。いくつかの実施形態において、コア及び第1層は、単一材料(例えば、白金など)であり得る。いくつかの実施形態において、細長い導電体は、少なくとも2つの材料の複合体、例えば2つの導電性材料の複合体、または少なくとも1つの導電性材料及び少なくとも1つの非導電性材料の複合体である。いくつかの実施形態において、細長い導電体は、複数の層を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも2つの同心層または環状層、例えば第1の材料で形成されたコア及び第2の材料で形成された第1層がある。しかしながら、いくつかの実施形態において、追加の層が含まれ得る。いくつかの実施形態において、層は、同軸である。
【0077】
細長い導電体は、長く薄いが、可撓性かつ強力であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、細長い導電体の最小寸法は、約0.1インチ、0.075インチ、0.05インチ、0.025インチ、0.01インチ、0.004インチ、または0.002インチ未満である。細長い導電体は、図3A~3Cにおいて、円形断面を有するとして示されるが、他の実施形態において、細長い導電体の断面は、卵形、矩形、三角形、多角形、星形、C形、T形、X形、Y形、不規則などであり得る。一実施形態において、導電ワイヤ電極は、コアとして用いられる。そのようなクラッド電極に、2つの追加の導電層が付加されてもよい(例えば、電気分離のために提供される絶縁層を介在させることで)。導電層は、任意の好適な材料で構成され得る。ある特定の実施形態において、ポリマーまたは他の結合剤中に導電粒子(すなわち、導電性材料の粒子)を含む導電層を用いることが望ましい場合がある。
【0078】
細長い導電体を形成するために使用される材料(例えば、ステンレス鋼、チタン、タンタル、白金、白金-イリジウム、イリジウム、ある特定のポリマー、及び/または同様のもの)は、強力かつ硬質であり得るため破損を防ぐ。いくつかの実施形態において、センサの小径は、これらの材料に、したがって全体としてセンサに可撓性を提供する。故に、センサは、周囲組織によってそれに加えられる繰り返し力に耐えることができる。
【0079】
構造支持、弾性、及び可撓性を提供することに加えて、いくつかの実施形態において、コア410またはそのコンポーネントは、作用電極からセンサ電子機器(図示せず)への電気信号のための電導を提供する。いくつかの実施形態において、コア410は、ステンレス鋼、チタン、タンタル、導電性ポリマー、及び/または同様のものなどの導電性材料を含む。しかしながら、他の実施形態において、コアは、非導電性ポリマーなどの非導電性材料から形成される。さらに他の実施形態において、コアは、複数の材料層を含む。例えば、一実施形態において、コアは、内部コア及び外部コアを含む。さらなる実施形態において、内部コアは、第1の導電性材料で形成され、外部コアは、第2の導電性材料で形成される。例えば、いくつかの実施形態において、第1の導電性材料は、ステンレス鋼、チタン、タンタル、導電性ポリマー、合金、及び/または同様のものであり、第2の導電性材料は、コアと第1層との間に電導を提供するように、及び/または第1層をコアに付着させるように選択される導電性材料である(すなわち、第1層が、コア材料に良好に付着しない材料で形成される場合)。別の実施形態において、コアは、非導電性材料(例えば、非導電性金属及び/または非導電性ポリマーなど)で形成され、第1層は、ステンレス鋼、チタン、タンタル、導電性ポリマー、及び/または同様のものなどの導電性材料で形成される。コア及び第1層は、単一(または同じ)材料、例えば、白金であり得る。当業者であれば、追加の構成が可能であることを理解する。
【0080】
図3A~3Cを再び参照して、第1層412は、導電性材料で形成され得、作用電極は、第1層412の表面の曝露部分であり得る。したがって、第1層412は、作用電極に好適な電気活性表面を提供するように構成された材料であって、限定されないが、白金、白金-イリジウム、金、パラジウム、イリジウム、グラファイト、炭素、導電性ポリマー、合金、及び/または同様のものなどの材料で形成され得る。
【0081】
図3B及び図3Cに示されるように、第2層404は、第1層412の少なくとも一部分を取り囲み、それにより作用電極の境界を定義する。いくつかの実施形態において、第2層404は、絶縁体として機能し、ポリイミド、ポリウレタン、パリレン、または任意の他の既知の絶縁材料などの絶縁材料で形成される。例えば、一実施形態において、第2層は、第1層上に配設され、作用電極が窓406を介して曝露されるように構成される。いくつかの実施形態において、コア、第1層、及び第2層を含む細長い導電体が提供される。第2層の一部分を除去して窓406を形成することができ、それによって作用電極の電気活性表面(すなわち、第1層412の曝露表面)が曝露される。いくつかの実施形態において、第2層及び(任意に)第3層の一部分を除去して窓406を形成することができ、そのようにして作用電極を曝露する。細長い導電体の1つ以上の層からのコーティング材料の除去(例えば、作用電極の電気活性表面を曝露する)は、手、エキシマレーザー処理、化学エッチング、レーザーアブレーション、グリットブラスト処理などによって行うことができる。
【0082】
センサは、導電性材料を含む第3層414をさらに含み得る。例えば、第3層414は、銀含有材料で形成され得る基準電極を含み得、第2層404(すなわち、絶縁体)の上に適用される。
【0083】
細長い導電体402は、コア410と第1層412との間に位置する1つ以上の中間層(図示せず)をさらに含み得る。例えば、中間層は、絶縁体、導体、ポリマー、及び/または接着剤のうちの1つ以上であり得る。
【0084】
銀/塩化銀層の厚さと絶縁体(例えば、ポリウレタンまたはポリイミドなど)層の厚さとの比は、欠陥センサ(例えば、意図したより深く切り込み、それにより電気活性表面を意図せず曝露するエッチングプロセスから生じる欠陥に起因する)、ある特定の誤差(すなわち、エッチングプロセスと関連した誤差)を許容にするように制御され得ることが企図される。この比は、使用されるエッチングプロセスの種類に応じて、それがレーザーアブレーションであるか、グリットブラスト処理であるか、化学エッチングであるか、またはいくつかの他のエッチング方法であるかによって異なり得る。レーザーアブレーションを行って銀/塩化銀層及びポリウレタン層を除去する一実施形態において、銀/塩化銀層の厚さとポリウレタン層の厚さとの比は、約1:5~約1:1、または約1:3~約1:2であり得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、コア410は、非導電性ポリマーを含み、第1層412は、導電性材料を含む。そのようなセンサ構成は、典型的に高価な材料を安価な材料で置き換えるという点で、低減した材料コストを有利に提供する。例えば、コア410は、白金、白金-イリジウム、金、パラジウム、イリジウム、グラファイト、炭素、導電性ポリマー、及び合金などの導電性材料、またはそれらの組み合わせでコーティング及び/またはメッキされ得る、ナイロンまたはポリエステルのフィラメント、ストリング、またはコードなどの非導電性ポリマーで形成され得る。
【0086】
図3C及び図3Dに示されるように、センサは、例えば図2A~2Cを参照して、本明細書の別の場所で論じられるものなどの膜408も含み得る。膜408は、本明細書の別の場所に記載される酵素層(図示せず)を含み得る。例えば、酵素層は、分析物と反応するように構成された触媒または酵素を含み得る。例えば、酵素層は、グルコースオキシダーゼを含む固定化酵素層であり得る。他の実施形態において、酵素層に、例えば、ガラクトースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、またはウリカーゼを含む他のオキシダーゼを含浸させることができる。
【0087】
図3Bは、細長い導電体402または細長い本体の実施形態を示す概略図であり、細長い導電体は、本明細書の別の場所でより詳細に説明されるように、少なくとも2つの材料及び/または導電性材料の層から形成される。「電極」という用語は、本明細書において、分析物を検出する電気活性表面を含む、細長い導電体を指すように使用され得る。いくつかの実施形態において、細長い導電体は、電気活性表面(すなわち、作用電極)とセンサ電子機器(図示せず)との間に電気接続を提供する。ある特定の実施形態において、各電極(すなわち、上に電気活性表面が位置する細長い導電体)は、約0.001インチ以下~約0.01インチ以上の直径を有する細いワイヤから形成される。各電極は、例えば、メッキ絶縁体、メッキワイヤ、またはバルク導電性材料から形成され得る。例えば、いくつかの実施形態において、作用電極を形成するために使用されるワイヤ及び/または細長い導電体は、直径約0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、または0.045インチである。
【0088】
さらに、第1層は、電気活性表面(すなわち、窓406を通じて曝露された部分)を含み得る。曝露された電気活性表面は、作用電極であり得る。例えば、センサが酵素的電気化学分析物センサである場合、分析物は、電気活性表面の少なくとも一部分を被覆する膜内で酵素と酵素的に反応する。この反応は、電気活性表面において測定可能な電流として検出される、電子(e)を生成することができる。例えば、グルコースオキシダーゼが過酸化水素を副産物として生成するグルコースの検出において、過酸化水素は、2つの陽子(2H)、2つの電子(2e)、及び1つの酸素分子(O)を生成する作用電極の表面と反応し、これが検出される電流を生成する。
【0089】
図3Aを参照して前述され、図3Cに示されるように、絶縁体404は、細長い導電体402の少なくとも一部分に配設される。いくつかの実施形態において、センサは、細長い本体が、コア410及び第1層412を含み、第1層412の一部分が、絶縁体404の窓406を介して曝露されるように構成され、配置される。他の実施形態において、センサは、細長い本体402が、絶縁体404に埋め込まれたコア410を含み、コア410の一部分が、絶縁体404の窓406を介して曝露されるように構成され、配置される。例えば、絶縁材料は、第1層412の表面(またはコア410の表面)の少なくとも一部分が曝露されたままであるように設計された構成で、細長い本体402に(例えば、スクリーンプリント、インクジェットプリント、及び/またはブロックプリントによって)適用され得る。例えば、絶縁材料は、細長い本体402の一部分を被覆しないパターンでプリントされ得る。あるいは、細長い本体402の一部分は、絶縁材料の適用前にマスクされ得る。絶縁材料適用後のマスクの除去は、細長い本体402の一部分を曝露し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、絶縁材料404は、ポリマー、例えば、非導電性(すなわち、誘電)ポリマーを含む。浸漬コーティング、スプレーコーティング、蒸着、プリント、ならびに/または他の薄膜及び/もしくは厚膜コーティングもしくは堆積技法を使用して、絶縁材料を細長い本体402及び/またはコア410上に堆積させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、絶縁材料は、約5μm未満、または約5、約10、もしくは約15μm~約20、約25、約30、もしくは約35μm以上の厚さの層として適用される。絶縁体は、本明細書の別の場所に記載されるように、単一材料層として、または同じもしくは異なる材料で構成された2つ以上の層として適用され得る。あるいは、導電性コアは、絶縁体のコーティングを必要としない。いくつかの実施形態において、絶縁材料は、分析物センサ(すなわち、作用電極)の電気活性表面を定義する。例えば、導電性コアの表面(例えば、第1層412の一部分など)は、絶縁体適用の間に曝露されたままであり得るか、または上記のように、適用された絶縁体の一部分が除去されて、導電性コアの表面の一部分を曝露することができる。
【0091】
センサが絶縁された細長い本体または導電性構造上に配設された絶縁体を有するいくつかの実施形態において、絶縁材料の一部分は、電気活性表面を曝露するために、例えば、手、エキシマレーザー処理、化学エッチング、レーザーアブレーション、グリットブラスト処理(例えば、重炭酸ナトリウムまたは他の好適なグリットを用いる)などによって剥離され得るかまたは他の方法で除去され得る。例示的な一実施形態において、グリットブラスト処理を実装して、例えば、ポリマー材料を切断するのに十分に硬いが、下にある金属電極(例えば、白金電極)への損傷を最小限に抑えるまたは回避するのに十分に柔らかい、グリット材料を利用することによって電気活性表面(複数可)を曝露する。様々な「グリット」材料(例えば、砂、タルク、クルミ殻、粉砕したプラスチック、海塩など)を使用することができ、いくつかの実施形態において、重炭酸ナトリウムは、例えば下にある白金導体を損傷することなく、例えばパリレンコーティングを切断するのに十分に硬いため、有利なグリット材料である。重炭酸ナトリウムブラスト処理の付加的な利点には、それがポリマー層を剥離するため、金属に対するその研磨作用が含まれ、それにより、他の方法では必須であり得る洗浄ステップを排除する。あるいは、電極または他の導電体の一部分は、曝露された電気活性表面積を維持するために、絶縁体を堆積させる前にマスクされ得る。
【0092】
作用電極の電気活性表面は、絶縁体404における窓406の形成によって曝露され得る。作用電極の電気活性窓406は、分析物の濃度を測定するように構成され得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、銀ワイヤは、センサの上に形成される、及び/またはその中に製造され、後に塩化されて銀/塩化銀基準電極を形成する。有利に、本明細書に記載される銀ワイヤの塩化は、良好なインビボ性能を有する基準電極の製造を可能にする。銀/塩化銀を形成するための銀の塩化の分量及び量を制御することにより、いくつかの実施形態において、改善された間断、基準電極の安定性、及び延長された寿命を得ることができる。さらに、上述される塩化銀の使用は、基準電極の比較的安価かつ簡単な製造を可能にする。
【0094】
図3B及び図3Cを参照して、基準電極414は、本明細書の別の場所でより詳細に論じられるように、絶縁材料404の少なくとも一部分にわたって適用された銀含有材料(例えば、銀/塩化銀)を含み得る。例えば、銀含有材料は、本明細書の別の場所に記載されるように、浸漬、スプレー、プリント、電着、蒸着、スピンコーティング、及びスパッタ堆積などであるが、それらに限定されない薄膜及び/または厚膜技法を使用して適用され得る。例えば、銀または塩化銀含有塗料(または類似製剤)を、絶縁された導電コアのリールに適用することができる。あるいは、絶縁された細長い本体(またはコア)のリールは、単一ユニット片に切断され(すなわち、「単一化」)、銀含有インクがその上にパッドプリントされる。さらに他の実施形態において、銀含有材料は、銀箔として適用される。例えば、接着剤を、絶縁された細長い本体に適用することができ、次いでその周りに銀箔を巻き付けることができる。あるいは、センサをAg/AgCl粒子で巻き、それにより十分な量の銀が、粒子が基準電極として機能するように、接着剤に固着する、及び/または埋め込まれる、及び/または他の方法で接着する。いくつかの実施形態において、センサの基準電極は、センサが分析物を少なくとも3日間測定及び/または検出するのに十分な量の塩化銀を含む。
【0095】
図2Aは、膜システム32の一実施形態を示すセンサを通じた断面図である。この特定の実施形態において、膜システムは、電極層42、酵素層44、拡散抵抗層46、及びバイオインターフェース層48を含み、これらの全ては、センサ38の作用電極の周りに位置し、これらの全ては、本明細書の別の場所でさらに詳細に説明される。いくつかの実施形態において、一体型拡散抵抗ドメイン及びバイオインターフェース層が、膜システムに含まれ得る(例えば、両方の層の機能性が1つのドメインに組み込まれる)。いくつかの実施形態において、センサは、短期埋め込み(例えば、約1~30日)のために構成される。しかしながら、膜システム32は、例えば、ドメインのうちの1つ以上のみ、または追加のドメインを含むことによって、他のデバイスでの使用のために修飾され得る。
【0096】
図2Bは、膜システム32の別の実施形態を示す、センサの一実施形態を通じた断面図である。この特定の実施形態において、膜システムは、干渉低減または遮断層43、酵素層44、拡散抵抗層46、及びセンサ38の作用電極の周りに位置するバイオインターフェース層48を含み、これらの全ては、本明細書の別の場所でより詳細に説明される。
【0097】
図2Cは、膜システム32のさらに別の実施形態を示す、センサの一実施形態を通じた断面図である。この特定の実施形態において、膜システムは、干渉低減または遮断層43、酵素層44、及びセンサの作用電極の周りに位置する一体型拡散抵抗/バイオインターフェース層47を含み、これらの全ては、本明細書の別の場所でより詳細に説明される。
【0098】
いくつかの実施形態において、膜システムは、本明細書の別の場所でより詳細に説明される表面修飾バイオインターフェースポリマーを含む、バイオインターフェース層48を含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態の検知膜32は、例えば、電極ドメイン(例えば、図2Aに示される)、干渉低減もしくは遮断ドメイン(例えば、図2B及び2Cに示される)、または本明細書の別の場所で、及び米国特許公開第US-2006-0036145-A1号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)でより詳細に説明される、細胞破砕ドメイン(図示せず)を含む、複数のドメインまたは層を含み得る。
【0099】
例えば、他のセンサに対して修飾される検知膜は、より少ない層または追加の層を含み得ることが理解される。例えば、いくつかの実施形態において、膜システムは、1つの電極層、1つの酵素層、及び2つのバイオインターフェース層を含み得るが、他の実施形態において、膜システムは、1つの電極層、2つの酵素層、及び1つのバイオインターフェース層を含み得る。いくつかの実施形態において、バイオインターフェース層は、拡散抵抗ドメインとして機能するように構成され、下にある膜層への分析物(例えば、グルコース)の流動を制御することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、検知膜の1つ以上のドメインは、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン-コ-テトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、生体安定性ポリテトラフルオロエチレン、ホモポリマー、コポリマー、ポリウレタンのターポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、セルロースポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)ならびにそれらのコポリマー及びブレンド、ポリスルホン及びそのブロックコポリマー(例えば、ジブロック、トリブロック、交互、ランダム、及びグラフトコポリマーを含む)などの材料から形成され得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、検知膜は、既知の薄膜または厚膜技法(例えば、スプレー、電着、浸漬など)を使用して、電極材料の電気活性表面上に堆積され得る。作用電極上に位置する検知膜は、基準電極上に位置する検知膜と同じ構造を有する必要がないことが理解されるべきであり、例えば、作用電極上に堆積された酵素ドメインは、必ずしも基準電極または対電極上に堆積される必要はない。
【0102】
図2A~2Cに示される例示的な実施形態は、膜システムを周方向に延在させることを伴うが、本明細書に記載される膜は、任意の平面または非平面表面に適用され得る。
【0103】
センサ電子機器
一般に、分析物センサシステムは、宿主における分析物レベルと関連したデータの測定及び処理を可能にするハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアを含み得る、「コンピュータシステム」とも称される、それと関連した電子機器を有する。電気化学センサの例示的な一実施形態において、電子機器は、ポテンショスタット、電力をセンサに提供するための電源、及び信号処理に有用な他のコンポーネントを含む。追加の実施形態において、電子機器のうちの一部または全ては、センサまたは電子機器の他の部分と有線または無線で通信し得る。例えば、デバイス上に配設されたポテンショスタットは、ベッドサイドにある残りの電子機器(例えば、プロセッサ、レコーダ、トランスミッタ、受信器など)に配線され得る。別の実施例において、電子機器のある部分が、例えば赤外線(IR)または無線周波数(RF)によって電子機器(例えば、受信器)の別の部分に無線接続される。電子機器の他の実施形態は、米国特許公開第US-2005-0192557-A1号、米国特許公開第US-2005-0245795-A1号、米国特許公開第US-2005-0245795-A1号、米国特許公開第US-2005-0245795-A1号、米国特許公開第US-2008-0119703-A1号、及び米国特許公開第US-2008-0108942-A1号(それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどのセンサデータ出力を提供するために有用であり得ることが企図される。
【0104】
好ましい一実施形態において、ポテンショスタットは、電極(複数可)(例えば本明細書の別の場所に記載される)に動作可能に接続され、宿主における(アナログ部分とも称される)分析物濃度を示す電流信号の測定を可能にするようにセンサを偏向させる。いくつかの実施形態において、ポテンショスタットは、電流を電圧に変換する抵抗器を含む。いくつかの代替実施形態において、例えば、電荷カウントデバイスを使用して、測定電流を連続的に統合するように構成された電流・周波数変換器が提供される。いくつかの実施形態において、電子機器は、処理用の「カウント」とも称される、アナログ信号をデジタル信号にデジタル化するA/D変換器を含む。したがって、結果として得られるカウントでの未加工データ流(未加工センサデータとも称される)は、ポテンショスタットによって測定された電流に直接関連する。
【0105】
一般に、電子機器は、センサシステムの処理を制御する中央制御ユニットを含む、プロセッサモジュールを含む。いくつかの実施形態において、プロセッサモジュールは、マイクロプロセッサを含むが、マイクロプロセッサ以外のコンピュータシステムを使用して、本明細書に記載されるデータを処理することができ、例えばASICを、センサの中央処理の一部または全てに使用することができる。プロセッサは、典型的に、データの半永久的記憶、例えば、センサ識別子(ID)などのデータの記憶及びデータ流を処理するためのプログラミング(例えば、米国特許公開第US-2005-0043598-A1号に記載されるようなデータ平滑化または信号アーチファクトの置換のためのプログラミング)を提供する。さらにプロセッサは、システムのキャッシュメモリ、例えば最近のセンサデータを一時的に記憶するために使用され得る。いくつかの実施形態において、プロセッサモジュールは、メモリ記憶コンポーネント、例えばROM、RAM、動的RAM、静的RAM、非静的RAM、EEPROM、上書き可能なROM、フラッシュメモリなどを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、プロセッサモジュールは、未加工データ流を平滑化するように構成されたデジタルフィルタ、例えば、無限インパルス応答(IIR)または有限インパルス応答(FIR)フィルタを含む。概して、デジタルフィルタは、所定時間間隔でサンプリングされるデータをフィルタリングするようにプログラムされる(サンプリングレートとも称される)。ポテンショスタットが、別個の時間間隔で分析物を測定するように構成されるいくつかの実施形態において、これらの時間間隔は、デジタルフィルタのサンプリングレートを決定する。ポテンショスタットが、例えば、上記の電流・周波数変換器を使用して分析物を連続的に測定するように構成されるいくつかの代替実施形態において、プロセッサモジュールは、収集時間とも称される既定の時間間隔でA/D変換器からデジタル値を要求するようにプログラミングされ得る。これらの代替実施形態において、プロセッサによって入手される値は、電流測定の継続性に起因して、収集時間にわたって有利に平均化される。したがって、収集時間は、デジタルフィルタのサンプリングレートを決定する。
【0107】
いくつかの実施形態において、プロセッサモジュールは、外部ソースへの送信、例えば、受信器へのRF送信のためのデータパケットを構築するように構成される。一般に、データパケットは、電子機器ユニット、受信器、または両方を識別するプリアンブルな固有の識別子(例えば、センサIDコード)、データ(例えば、未加工データ、フィルタリングデータ、もしくは積分値)またはエラー検出もしくは訂正を含み得る、複数のビットを含む。好ましくは、データ(送信)パケットは、約8ビット~約128ビット、好ましくは約48ビットの長さを有するが、ある特定の実施形態において、より大きいまたは小さいパケットが望ましい場合がある。プロセッサモジュールは、未加工データまたはフィルタリングデータの任意の組み合わせを送信するように構成され得る。例示的な一実施形態において、送信パケットは、電子機器ユニットの固定されたプリアンブルな固有ID、単一の5分平均(例えば、積分)センサデータ値、及び巡回冗長符号(CRC)を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、データを記憶する、データ流を分析する、分析物センサデータを較正する、分析物値を推定する、推定分析値を時間対応する測定分析値と比較する、推定分析値の変動を分析する、データをダウンロードする、及び分析物値、プロンプト、メッセージ、警告、アラームなどを提供することによってユーザインターフェースを制御するなどの処理をさらに行う。そのような場合、プロセッサは、本明細書に記載の処理を行うハードウェアを含み、例えば、フラッシュメモリは、データの永久的または半永久的記憶、センサID、受信器IDなどのデータの記憶、ならびにデータ流を処理するためのプログラミング(例えば、本明細書の別の場所に記載される推定及び他のアルゴリズムを行うためのプログラミング)を提供し、ランダムアクセスメモリ(RAM)は、システムのキャッシュメモリを記憶し、データ処理に役立つ。あるいは、データ処理のある部分(例えば、本明細書の別の場所にプロセッサを参照して記載される)は、別の(例えば、遠隔)プロセッサにおいて達成することができ、それと有線または無線接続されるように構成され得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、プロセッサと統合されるかまたは動作可能に接続される出力モジュールは、センサシステムから受信したデータ流に基づいて出力を生成するためのプログラミング、及びプロセッサ内で発生したその処理を含む。いくつかの実施形態において、出力は、ユーザインターフェースを介して生成される。
【0110】
干渉物質
干渉物質は、センサに偽陽性または偽陰性の分析物信号(例えば、非分析関連信号)を生成させ得る分子または他の種である。いくつかの干渉物質は、センサの電気化学的反応表面において還元または酸化されるが、他の干渉物質は、使用される酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)が測定される分析物と反応する能力を干渉する。さらに他の干渉物質は、酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)と反応して、電気化学的に活性である副産物を生成する。干渉物質は、応答信号を誇張またはマスクする場合があり、それにより虚偽のまたは誤解を招く結果につながる。例えば、偽陽性信号は、宿主の分析物濃度(例えば、グルコース濃度)を真の分析濃度より高く見せ得る。偽陽性信号は、いくつかの従来センサにおいて臨床的に重要な問題をもたらし得る。例えば、宿主が干渉物質(例えば、アセトアミノフェン)を摂取した深刻な低血糖状況において、結果として生じる人工的に高いグルコース信号は、宿主に正常血糖または高血糖であると信じさせる可能性がある。それに応答して、宿主は、適切な一連の行動が食事を始めることである場合に、過剰なインスリンを注入することによって、または何もしないことによって、不適切な治療決定を下し得る。順に、この不適切な行動または行動しないことが、宿主にとって危険な低血糖エピソードにつながり得る。したがって、本明細書において企図されるある特定の実施形態は、分析物測定に対する干渉物質の効果を実質的に低減または排除する膜システムを含む。これらの膜システムは、電極の電気活性表面上への干渉物質の流れを遮断または実質的に低減することができる1つ以上のドメインを含み得、米国特許公開第US-2009-0247856-A1においてより詳細に記載されるように、ノイズを低減し、センサ精度を改善し得る。
【0111】
ドリフト
本明細書で使用される場合、「ドリフト」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、経時的なセンサの感度の変化を指すが、これに限定されない。ドリフトは、ポリウレタン拡散抵抗ドメインを使用する実施形態において特に明らかであり得る、センサ膜システムの透過性の変化によって駆動され得る。理論に束縛されるものではないが、そのようなシステムにおける透過性の変化は、表面に対してより親水性のコンポーネントをもたらす拡散抵抗ドメインポリウレタンポリマー鎖の再配置、またはそうでなければ膜システムの水和中に親水性ポリマーコンポーネントへのより優れたアクセスを可能にするような再配置から生じると考えられる。このため、水和速度の増加または膜システムの湿潤性の増加は、システムドリフトを低減する。
【0112】
静電的に誘導された水和に起因して、双性イオン化合物のポリマー及び架橋コーティングは、ほぼ瞬間的な湿潤性を有する。下でより詳細に論じられるように、1つ以上の双性イオン化合物、その前駆体または誘導体(加水分解性カチオンエステル)を膜システムの最外ドメインに含めるか、またはそのような化合物のコーティングを膜システムの表面に適用することは、低減したセンサドリフトをもたらす。
【0113】
膜製造
好ましい実施形態のポリマーは、スプレー、浸漬、流延、電界紡糸、蒸着、スピンコーティング、コーティングなどの溶液系技法によって処理され得る。水系ポリマーエマルジョンは、溶媒系材料に使用されるものと同様の方法によって膜を形成するように製造され得る。両方の場合において、揮発性液体(例えば、有機溶媒または水)の蒸発は、ポリマーのフィルムを残す。堆積されたフィルムまたは層の架橋は、多くの方法によって多機能反応性成分の使用を通じて行われ得る。液体系は、熱、水分、高エネルギー照射、紫外線によって、またはコーティングされる型内もしくは基材上に最終ポリマーを生成する反応を完了させることによって硬化し得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、膜の(及びセンサによって示されるセンサドリフトの程度を拡大することによる)湿潤性は、表面活性基含有ポリマー、官能基含有ポリマー、双性イオン基を有するポリマー(またはその前駆体もしくは誘導体)、及びそれらの組み合わせとの間の共有結合架橋を作ることによって調整及び/または制御され得る。架橋は、フィルム構造に対して実質的な効果を有し得、これが順にフィルム表面の湿潤性に影響を及ぼし得る。架橋は、フィルム引張強度、機械的強度、吸水速度、及び他の特性にも影響を及ぼし得る。
【0115】
架橋ポリマーは、異なる架橋密度を有し得る。ある特定の実施形態において、架橋を使用して、層間の架橋を促進する。他の実施形態において、上記の架橋技法の代わりに(またはそれに加えて)、熱を使用して架橋を形成する。例えば、いくつかの実施形態において、イミド及びアミド結合は、高温の結果として2つのポリマー間に形成され得る。いくつかの実施形態において、光架橋を行い、ポリカチオン層(複数可)とポリアニオン層(複数可)との間に共有結合を形成する。光架橋に対する1つの主な利点は、それがパターン形成の可能性を提供することである。ある特定の実施形態において、光架橋を使用するパターン形成を行い、フィルム構造を修飾し、そのようにして膜の湿潤性を調整する。
【0116】
架橋を許容するように機能化されるドメインまたはセグメントを有するポリマーは、当該技術分野において既知の方法によって作製され得る。例えば、求電子性官能基(例えば、カルボニル、アルデヒド、無水物、エステル、アミド、イソシアノ、エポキシ、アリル、またはハロ基)を有する芳香族または脂肪族セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求核基(例えば、ヒドロキシル、アミン、尿素、ウレタン、またはチオ基)を有する架橋剤で架橋され得る。さらなる実施形態において、求核性官能基を有する芳香族または脂肪族セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求電子基を有する架橋剤で架橋され得る。なおもさらに、求核性または求電子性官能基を有する親水性セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求電子基または求核基を有する架橋剤で架橋され得る。ポリウレタン尿素上の不飽和官能基はまた、多価遊離ラジカル剤と反応させることによって架橋に使用することもできる。好適な架橋剤の非限定例には、イソシアネート、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、アジリジン、シラン、または他のアルデヒド、エポキシ、アクリレート、フリーラジカル系剤、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEGDE)、またはジクミルペルオキシド(DCP)が含まれる。一実施形態において、架橋剤の総乾燥重量に対して約0.1%~約15% w/wの架橋剤が付加され、成分をブレンドするときにポリマーが付加される(一実施例において、約1%~約10%)。硬化プロセスの間、架橋剤の実質的に全てが反応すると考えられ、最終フィルムに検出可能な未反応の架橋剤を実質的に残さない。
【0117】
本明細書に開示されるポリマーは、当該技術分野において既知の任意の方法(例えば、スプレー、塗装、浸漬コーティング、蒸着、成型、3Dプリント、リソグラフィ技法(例えば、フォトリソグラフ)、マイクロ及びナノピペッティングプリント技法、シルクスクリーンプリントなど)を使用してフィルムに引き込まれ得るか、または表面に適用され得る混合物中に配合され得る。次いで、混合物は、高温(例えば、50~150℃)で硬化され得る。他の好適な硬化方法には、例えば、紫外線またはγ照射が含まれ得る。
【0118】
バイオインターフェースドメイン
バイオインターフェース層は、宿主に埋め込まれるかまたは宿主に接続されたときに(例えば、血管への対体アクセスを提供する血管内アクセスデバイスを介して)、生体液とインターフェースする(すなわち、接触する)ように構成された埋め込み可能なデバイスのドメインまたは層である。分析物センサ、例えば、宿主に埋め込まれた連続分析物センサ上に存在する場合、バイオインターフェース層は、生体材料関連炎症応答を低減することによってセンサの寿命を増加させ、センサの不正確性を減少させることができる。バイオインターフェース層の防汚性は、センサ上の細胞、タンパク質、及び他の生物学的種の蓄積を阻害し得る。いくつかの実施形態において、バイオインターフェースドメインは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2015年12月20日に出願された米国仮出願第62/273,142号に記載されるバイオインターフェースドメインで形成されてもよい。
【0119】
本明細書に開示されるバイオインターフェース層は、機械的に頑強であり、埋め込み時の損傷を防ぎ、センサ埋め込み中の分解に耐え得る。さらに、開示されるバイオインターフェース層は、センサの応答時間または拡散抵抗層の特性に影響を及ぼさない。また、開示されるバイオインターフェース層は、大量の吸水、速い吸水、及び迅速な安定化を有し得る親水性を有し得、それによりセンサの始動に悪影響を及ぼさない。開示されるバイオインターフェース層はまた、分析物(例えば、グルコース)に対して透過性であるが、タンパク質の吸着を防ぐ。
【0120】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、バイオインターフェース層48を含む膜を含み得る(図2A~2Cを参照されたい)。
【0121】
さらに、開示されるバイオインターフェース層は、バイオインターフェース層から局所組織への放出時に、炎症を効果的に低減または遅延することができる医薬品または生物活性剤の宿主であり得る。抗炎症剤は、ステロイド系または非ステロイド系の薬物であり得、活性酸素種(ROS)の捕捉剤であり得る。好適な抗炎症剤には、限定されないが、例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)、例えばアセトメタフェン、アミノサリチル酸、アスピリン、セレコキシブ、コリンマグネシウムトリサリチル酸塩、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、インターロイキン(IL)-10、IL-6ムテイン、抗IL-6iNOS阻害剤(例えば、L-NAMEまたはL-NMDA)、インターフェロン、ケトプロフェン、ケトロラク、レフルノミド、メレナム酸、ミコフェノール酸、ミゾリビン、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサレート、スリンダク、及びトリメチン;ならびにコルチコステロイド、例えばコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、フルチカゾンプロピオネート、パクリタキセル、タクロリムス、トラニラスト、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、フルオシノロン、ベタメタゾンジプロピオネート、吉草酸ベタメタゾン、デソニド、デソキシメタゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、クロベタゾールプロピオネート、及びデキサメタゾンが含まれる。
【0122】
いくつかの実施形態において、バイオインターフェース層は、少なくともセンサ膜内の生体保護層に関するその教示について、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014-0094671号において生体保護層として記載されるポリマーを含み得る。
【0123】
他の実施形態において、バイオインターフェース層は、バイオインターフェースポリマーを含み得る。バイオインターフェースポリマーは、ポリ双性イオンである。ポリ双性イオンは、ポリマー鎖の繰り返し単位が、組成イオン部分であるポリマーである。そのようなものとして、これらのポリマーは、正電荷及び負電荷の両方を有する各双性イオン繰り返し単位に起因して、同数のカチオン基及びアニオン基を有し、故に多くの場合、広いpH範囲を通じて全体ゼロ電荷を有する。
【0124】
ポリ双性イオンは、高分子両性電解質がアニオン基及びカチオン基を含むが、イオン基が同じ繰り返し単位の一部として互いに相関しないという点において、他の高分子両性電解質から区別される。そのため、アニオン基及びカチオン基が、互いに離れてランダム間隔で分布され得るか、または一方のイオン基がもう一方のイオン基より多くてもよい。故に、恐らくいくらか狭いpH範囲であることを除いて、高分子両性電解質が正味電荷を有することは典型的である。
【0125】
開示されるポリ双性イオンは、下でi~vii)として示される、様々な繰り返し単位を有し得、nは、2~1000のある整数である。
【化4】
【0126】
構造i~iv)において、双性イオン単位は、骨格(~~~~)に接続され、電荷は、鎖に吊り下げられた側基上にある。構造v)~vii)において、双性イオン単位は、一方または両方の電荷が鎖自体の上にあるようなものである。
【0127】
構造i)~vii)のうちのいずれかのポリ双性イオンを生成するために使用され得る好適な双性イオンモノマーの例には、
アンモニオホスフェート(ホスホベタインもしくはレシチン類似体)、アンモニオホスホネート(ホスホノベタイン)、またはアンモニオホスフィネート(ホスフィノベタイン)が含まれ、それぞれ以下の構造を有し、
【化5】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R、R、及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換される。
【0128】
「重合基」とは、ホモポリマーを形成するためのモノマーとそれ自体との重合、またはコポリマーを形成するための異なるモノマーとの重合を許容する官能基を意味する。用いられる重合方法の種類に応じて、重合基は、アルケン、アルキン、エポキシド、ラクトン、アミン、ヒドロキシル、イソシアネート、カルボン酸、無水物、シラン、ハロゲン化物、アルデヒド、及びカルボジイミドから選択され得る。ステップ成長重合において、官能基のマッチング対が、重合を促進するために、例えば、双性イオンモノマーを担持するジヒドロキシル基を重合するために選択され、ジイソシアネート、エポキシド、またはジカルボン酸基を含有するコモノマーが、ウレタン、エーテル、及びエステル結合で形成されたポリマーを供給するために選択され得る。
【0129】
構造i)~vii)のうちのいずれかのポリ双性イオンを生成するために使用され得る好適な双性イオンモノマーのさらなる例には、アンモニオスルホネート(スルホベタイン)、アンモニオスルフェートが含まれ、それぞれ以下の構造を有し、
【化6】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換され、
アンモニオカルボキシレートは、以下の構造を有し、
【化7】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換される。
【0130】
これらのモノマーのそれぞれにおいて、Zは、1~12個の原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の原子の長さを有し得、これらの値のうちのいずれかが、ある範囲の上端点または下端点を形成し得る。
【0131】
これらのモノマーは、例えば、Laschewsky,″Structures and synthesis of zwitterionic polymers,″Polymers 6:1544-1601,2014において詳述されるように、当業者に既知の方法によって調製され得る。ある特定の実施例において、開示されるポリ双性イオンは、上に開示される双性イオンモノマーのうちのいずれかから得られる繰り返し双性イオン単位を有し得る。
【0132】
バイオインターフェースポリマーはまた、ポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメントを含み得る。例えば、バイオインターフェースポリマーは、ポリウレタンコポリマー、例えばポリエーテル-ウレタン-尿素、ポリカーボネート-ウレタン、ポリエーテル-ウレタン、シリコーン-ポリエーテル-ウレタン、シリコーン-ポリカーボネート-ウレタン、ポリエステル-ウレタン、ポリウレタン-尿素などを含み得る。これらのポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメントは、水素結合を多く含む部分であるポリイソシアネート及び短鎖ポリオールまたはポリアミンから形成された尿素及び/またはウレタン結合を含むため、これらのセグメントは、本明細書において「ハードセグメント」と称される。これらのセグメントはまた、比較的疎水性であり得る。
【0133】
ポリウレタン及び/またはポリ尿素ハードセグメントに加えて、開示されるバイオインターフェースポリマーは、比較的不良な水素結合を有するソフトセグメントも含み得る。ソフトセグメントは、通常はポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアリーレン、及びポリアルキレンなどのポリオールで構成される。ソフトセグメントは、疎水性または親水性のいずれかであり得る。
【0134】
ある特定の実施形態に有用なバイオインターフェースポリマーは、ポリマーの骨格構造上に線形または分岐ポリマーを含み得る。故に、ハードまたはソフトセグメントのいずれかは、分岐または線形骨格を含み得る。
【0135】
双性イオンモノマーは、本明細書に記載されるように、ハードもしくはソフトセグメントのいずれか、または両方の一部であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、バイオインターフェースポリマーのハードセグメント部分は、約5重量%~約50重量%のポリマー、時には約15重量%~20重量%、また他の時には約25重量%~40重量%を含み得る。ハードセグメントは、約160ダルトン~約10,000ダルトン、また時には約200ダルトン~約2,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ソフトセグメントの分子量は、約200ダルトン~約10,000,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約5,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約2,000ダルトンであり得る。
【0137】
記載のとおり、ハードセグメントは、ポリウレタンまたはポリ尿素であり得る。ポリウレタンは、ジイソシアネート及び二官能性ヒドロキシル含有材料の縮合反応によって生成されたポリマーである。ポリ尿素は、ジイソシアネート及び二官能性アミン含有材料の縮合反応によって生成されたポリマーである。好ましいジイソシアネートには、約4~約9メチレン単位を含有する脂肪族ジイソシアネートが含まれる。ジイソシアネートを含有する脂環式部分はまた、好ましい実施形態の膜のポリマー及びコポリマーコンポーネントの調製において有用であり得る。
【0138】
バイオインターフェースポリマーの調製において使用されるソフトセグメントは、それを通る分析物(例えば、グルコース)の透過性をもたらすのに有用であり得る、多官能性脂肪族ポリオール、多官能性脂肪族または芳香族アミンなどであり得、例えば、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド、ポリイミン、ポリプロピレンオキシド(PPO)、PEG-コ-PPOジオール、シリコーン-コ-PEGジオール、シリコーン-コ-PPOジオール、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びそれらの変型(例えば、PVP酢酸ビニル)を含み得、ここでPEG及びその変型は、それらの親水性のために好適であり得る。
【0139】
実施形態のうちのいくつかにおいて、バイオインターフェースポリマーのソフトセグメント部分は、約5重量%~約50重量%、時には約15重量%~20重量%、また他の時には約25重量%~40重量%のポリマーを含み得る。ソフトセグメントは、約160ダルトン~約10,000ダルトン、また時には約200ダルトン~約2,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ソフトセグメントの分子量は、約200ダルトン~約10,000,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約5,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約2,000ダルトンであり得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、ハード及びソフトセグメント、ならびに双性イオン繰り返し単位を含むバイオインターフェースポリマーは、約10kDa~約500,000kDa、例えば、約10kDa~約100,000kDa、約1000kDa~約500,000kDa、約10,000kDa~約100,000kDa、及び約100,000kDa~約500,000kDaの分子量を有し得る。
【0141】
ハード及びソフトセグメントはそれぞれ、限定されないが、引張強度、屈曲寿命、弾性率などのそれらの特性のために選択され得る。例えば、ポリウレタンは、比較的強く、多くの反応経路を提供し、その特性は、連続センサの膜ドメインに対するバルク特性として有利であり得る。
【0142】
上記のとおり、バイオインターフェースポリマーは、1つ以上の双性イオン繰り返し単位を含み、故にこれらの基は、ポリマー骨格関して「内部」である。そのような「内部」繰り返し単位は、そのような部分が1つの位置でポリマー鎖に結合されるにすぎないため、ポリマー鎖の端部において見出される材料から区別される。開示されるバイオインターフェースポリマーは、いくつかの実施形態において、ポリマー鎖の終端において1つ以上の双性イオン基を有し得るが、そのような基は、鎖において唯一の双性イオン基ではなく、骨格に少なくとも1つの内部双性イオン基がある。
【0143】
いくつかの好ましい実施形態において、双性イオン部分は、例えば、非定常ノイズ遮断能力、間断(低減した)、電荷種を退ける能力、カチオン性またはイオン性遮断、表面湿潤性、防汚性などの望ましい特性のために選択される。いくつかの実施形態において、双性イオンまたは双性イオン前駆体は、双性イオン基として存在するが、デバイスはインビボである。そのようなものとして、これらの基は、周囲環境に対するデバイス表面の混合電荷面積を提示し、それにより、デバイスの表面水和を増加させ、非特異的タンパク質吸着及び細胞付着を潜在的に低減する。
【0144】
いくつかの実施形態において、バイオインターフェースポリマーは、ポリマーの少なくとも約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%~約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、または約55重量%の双性イオン繰り返し単位を含む。
【0145】
双性イオン繰り返し単位は、カルボキシル、スルホ、またはリンベタイン化合物などのベタイン、その前駆体または誘導体(例えば、アルキルベタインまたはアミノベタイン)であり得る。これらのセグメントまたは部分は、ハードセグメント、ソフトセグメント、または両方において、バイオインターフェースポリマーに、例えば、バイオインターフェースポリマーの最大約55重量%で組み込まれ得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、2つ以上の異なる双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分が使用されるが、他の実施形態において、単一の双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分が、バイオインターフェースポリマー中で使用され得る。
【0147】
バイオインターフェースポリマーのいくつかの例は、図10において概略的に図示される。一般に、バイオインターフェースポリマーは、1つ以上のハードセグメント及び1つ以上のソフトセグメントを含む。ハードセグメントは、脂肪族または芳香族モノマーであり得る。ソフトセグメントは、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリンなどの親水性または疎水性オリゴマーであり得る。双性イオン基(例えば、ベタイン)は、ソフトセグメント、ハードセグメント、または両方の一部であり得る。図10に示されるように、様々なハード及びソフトセグメントが存在し得、これがある特定のセグメント上で異なるセグメント、異なるセグメント長、官能化を使用すること、ある特定のセグメントを架橋することなどによって、バイオインターフェースポリマーの特性を調整するのを許容する。いくつかの実施形態において、ハード及びソフトセグメントを含む生体適合性セグメント化ブロックポリウレタンコポリマーを、バイオインターフェース層に使用することができる。
【0148】
これらの双性イオン繰り返し単位の、ポリマーへの組み込みは、ジオールまたはジアミンを(例えば、Z位に)有する双性イオンモノマーを使用することによって達成され得るか、またはR~Rのうちのいずれかにおいてジオールまたはジアミンに付着され得る。R~Rにおけるジオールまたはジアミンへの付着は、対応する前駆体をハロ置換ジアミンまたはハロ置換ジオールと反応させることによって達成され得る。そのようなモノマーの例が下に示され、
【化8】
式中、W、Y、及びZが独立して、分岐鎖または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、O、OH、ハロゲン、アミノ、またはアルコキシルで任意に置換され得、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R、R、及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択される。特定の実施例において、Wは、C~Cアルキルである。特定の実施例において、Yは、C~Cアルキルである。他の実施例において、Zは、C~Cアルキルである。
【0149】
これらの化合物は、ジイソシアネートと反応して、ポリウレタンまたはポリ尿素を形成し得る。あるいは、カルボキシレート、スルホネート、ホスフィネート、またはホスホネート部分を保護することができ、次いで重合後に保護基を除去することができる。別の代替例において、アミンは、第三級アミンであり得、次いで重合後にアルキル化によって四級化される。
【0150】
別の方法は、上に示されるモノマーにおいてZ位で置換された不飽和部分を有する双性イオンモノマーのラジカル重合を伴う。他の実施例において、不飽和部分がアンモニウム基に付着される双性イオンモノマーを、ラジカル重合において使用することができる。そのようなモノマーの例が下に示され、
【化9】
式中、Xが、O、NH、またはNRであり、Y及びZが独立して、分岐鎖または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、OH、ハロゲン、またはアルコキシルで任意に置換され得、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択される。特定の実施例において、Rは、HまたはCHである。他の実施例において、Xは、Oである。さらに他の実施例において、Xは、NHまたはNCHである。特定の実施例において、Yは、C~Cアルキルである。他の実施例において、Zは、C~Cアルキルである。
【0151】
好適な双性イオンモノマーの追加の例には、N-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート、N-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファチジルコリン、及び3-(2′-ビニル-ピリジノ)プロパンスルホネートが含まれる。
【0152】
他の実施形態において、バイオインターフェースポリマーは、架橋される。例えば、求電子性官能基(例えば、カルボニル、アルデヒド、無水物、エステル、アミド、イソシアネート、エポキシ、アリル、またはハロ基)を有する芳香族または脂肪族セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求核基(例えば、ヒドロキシル、アミン、尿素、ウレタン、またはチオ基)を有する架橋剤で架橋され得る。さらなる実施形態において、求核性官能基を有する芳香族または脂肪族セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求電子基を有する架橋剤で架橋され得る。なおもさらに、求核性または求電子性官能基を有する親水性セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求電子基または求核基を有する架橋剤で架橋され得る。ポリウレタン尿素上の不飽和官能基はまた、多価遊離ラジカル剤と反応させることによって架橋に使用することもできる。
【0153】
好適な架橋剤の非限定例には、イソシアネート、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、または他のアルデヒド、アジリジン、シラン、エポキシ、アクリレート、フリーラジカル系剤、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEGDE)、またはジクミルペルオキシド(DCP)が含まれる。一実施形態において、架橋剤の総乾燥重量に対して約0.1%~約15% w/wの架橋剤が付加され、成分をブレンドするときにポリマーが付加される(一実施例において、約1%~約10%)。硬化プロセスの間、架橋剤の実質的に全てが反応すると考えられ、最終層に検出可能な未反応の架橋剤を実質的に残さない。
【0154】
さらに、開示されるバイオインターフェース層は、非共有結合相互作用によってポリマーネットワーク内に捕捉されたまたは埋め込まれた双性イオンを有し得る。故に、さらなる実施形態において、開示されるバイオインターフェース層は、バイオインターフェースポリマー及びそれとブレンドされた追加のベタインを含み得る。例えば、バイオインターフェースポリマーは、コカミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オクチルスルホベタイン、カプリリルスルホベタイン、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、パルミチルスルホベタイン、ステアリルスルホベタイン、ベタイン(トリメチルグリシン)、オクチルベタイン、ホスファチジルコリン、グリシンベタイン、ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)、及びポリ(スルホベタイン)(pSB)とブレンドされ得る。さらに多くの双性イオン化合物またはその前駆体もしくは誘導体が、適用可能であり得ること、及びこの例示的なベタインの一覧が、実施形態の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
【0155】
バイオインターフェース層は、ベースポリマーに付加された表面修飾ポリマーを含むドメインをさらに含み得、ここで表面修飾ポリマーは、親水性領域及び疎水性領域の両方を有するポリマー鎖を含み、1つ以上の双性イオン化合物は、ポリマーの内部領域に共有結合され、ベースポリマーは、シリコーン、エポキシ、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリアクリル、ポリメタクリル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリウレタン、及びポリウレタン尿素から選択され得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、バイオインターフェース層は、1つ以上のバイオインターフェースポリマー(複数可)の組み合わせ、例えば、ポリウレタンまたはポリウレタン尿素及び1つ以上の親水性ポリマー、例えば、PVA、PEG、ポリアクリルアミド、ポリアセテート、ポリ双性イオン、PEO、PEA、PVP、及びそれらの変型(例えば、PVP酢酸ビニル)を、例えば、物理的ブレンドまたは混和物として含み得、ここで各ポリマーは、その固有の化学的性質を維持する。
【0157】
いくつかの実施形態において、バイオインターフェース層48は、検知領域に対して最も遠位に位置付けられ、それによりその最外ドメインは、インビボで挿入されたときに生体液と接触する。いくつかの実施形態において、バイオインターフェース層は、細胞付着に抵抗性、細胞に不透過性であり、生体安定性材料で構成され得る。理論に束縛されるものではないが、バイオインターフェースドメイン48が、細胞付着に抵抗性である場合(例えば、マクロファージなどの炎症性細胞による付着、したがって他のドメイン、例えば酵素ドメインから十分な距離で保持される)、次亜塩素酸塩及び他の酸化種は、インビボで短命の化学種であり、生分解は一般に起こらない。さらに、バイオインターフェースドメイン48を形成するために好ましい材料は、これらの酸化種の効果に抵抗性であり得るため、生体耐久性と呼ばれている。いくつかの実施形態において、バイオインターフェースドメインは、酸素及び他の分析物(例えば、グルコース)の、下にある酵素ドメインへの流動を制御する(例えば、拡散抵抗ドメインの機能性が、バイオインターフェースドメインに組み込まれ、それにより別個の拡散抵抗ドメインが必要とされない)。
【0158】
いくつかの実施形態において、膜システムの表面に適用される1つ以上の双性イオン化合物またはその前駆体は、双性イオン化合物の加水分解性カチオンエステルである。これらの実施形態において、加水分解性カチオンエステルは、カチオンエステルの、非汚染性双性イオン基への加水分解が、微生物(細菌など)を殺滅し得るか、またはDNAを縮合し得るという追加の利得を提供する。さらに、結果として得られる双性イオン基の混合電荷性質は、センサの表面上の非特異的タンパク質吸着の阻害をもたらす。これらの実施形態において、カチオン性ベタインエステル、例えばカチオン性pCBエステルが好ましい。
【0159】
ある特定の実施形態において、バイオインターフェースポリマーは、さらなる官能化に使用可能であり得る反応基を含み得る。例えば、アルキンなどの不飽和官能基を使用して、アジドのような双極性基に付着される様々な部分を様々な部分に付着して、共有結合を形成することができる。そのようなヒュスゲン環化付加化学反応は、多くの場合、クリック化学反応と称される。故に、本明細書におけるある特定の実施形態において、バイオインターフェース層は、ポリマー骨格に吊り下がるアルキン官能基を含み得る。アジドのような双極性基に付着される、タンパク質などの防腐剤、サイトカイン、抗炎症剤、ステロイド、及び本明細書に開示される他の生物活性剤は、ポリマーに便利に付着され得、トリアゾール基をもたらす。故に、バイオインターフェース層、アルキン、トリアゾール、または両方を含むそのような層を含むセンサが、本明細書に開示される。これらの反応基は、双性イオン繰り返し単位で(例えば、ZまたはY上の置換基として)存在し得る。
【0160】
ポリマー骨格の内部に双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分を組み込むことは、その双性イオンまたは双性イオン前駆体のモノマーと関連した可溶度の問題に起因して困難であり得る。そのような基は、典型的に、いくつかのバイオインターフェースポリマー(例えば、ポリウレタン)の合成に好ましくないメタノール及び水などの高度に極性の溶媒にだけ溶解することができる。故に、溶液系重縮合合成によってバイオインターフェースポリマーの骨格に化学的に組み込まれて使用され得る、使用可能な官能基は限定されていた。双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分をベースポリマーの骨格に組み込む代替方法として、その双性イオンまたは双性イオン前駆体の前駆体または誘導体を使用することができる。例えば、低極性有機溶媒中でより望ましい可溶度特徴を有する双性イオン前駆体及び/または双性イオン誘導体を、モノマーとして使用することができる。バイオインターフェースポリマー(例えば、ポリウレタン尿素)は、重縮合反応によって合成され、高い分子量及び低い多分散性指数を有する明確なポリマーを形成することができる。次いでこれらのポリマーは、化学反応(加水分解、脱保護、熱により誘発される再配置、及びUVにより誘発される分解)またはデバイスのインビボ埋め込み後に生物学的に誘発される反応を介して、ポリマーを含有する双性イオン基に変換され得る。
【0161】
ある特定の実施形態において、バイオインターフェースドメインの厚さは、約0.1、約0.5、約1、約2、約4、約6、約8μm以下~約10、約15、約20、約30、約40、約50、約75、約100、約125、約150、約175、約200、または約250μm以上であり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、バイオインターフェースドメインの厚さは、時には約1~約5μm、また時には約2~約7μmであり得る。他の実施形態において、バイオインターフェースドメインは、約20または約25μm~約50、約55、または約60μmの厚さであり得る。いくつかの実施形態において、グルコースセンサは、経皮または短期皮下埋め込みのために構成され得、約0.5μm~約8μm、また時には約4μm~約6μmの厚さを有し得る。宿主の循環系と流体連通するように構成された1つのグルコースセンサにおいて、厚さは、約1.5μm~約25μm、また時には約3~約15μmであり得る。いくつかの実施形態において、バイオインターフェース層または電極の任意の他の層が、一貫した厚さを有し得るが、他の実施形態において、厚さは異なり得ることも企図される。例えば、いくつかの実施形態において、バイオインターフェース層の厚さは、電極端部の長手方向軸に沿って異なり得る。
【0162】
バイオインターフェース層は、接触角によって測定して、親水性であり得る。例えば、バイオインターフェース層は、約20°~約90°、約60~約90°、約70~約90°、約80~約90°、約60~約80°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、または少なくとも約70°の接触角を有し得る。
【0163】
バイオインターフェース層はまた、低い多分散性指数を有し得る。例えば、ポリマーは、約1.4~約3.5、約1.75~約2.25、約1.75~約2.5、または約2の分散性指数を有し得る。
【0164】
バイオインターフェース層はまた、センサのT95応答時間に実質的に影響を及ぼすことができない。例えば、本明細書に開示されるバイオインターフェース層を有するセンサは、バイオインターフェース層を有しないこと以外は同一であるセンサのT95応答時間と同じまたはその5%以内であるT95応答時間を有し得る。
【0165】
拡散抵抗ドメイン
いくつかの実施形態において、拡散抵抗層とも称される拡散抵抗ドメイン46を使用することができ、バイオインターフェース層に対して埋め込み可能なデバイスのより近位に位置付けられる。いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメインの機能性は、ポリ双性イオンバイオインターフェースポリマーを含むバイオインターフェース層に組み込まれ得る。したがって、拡散抵抗ドメインに関する本明細書の記載は、バイオインターフェース層にも適用し得ることに留意されたい。拡散抵抗ドメインは、酸素及び他の分析物(例えば、グルコース)の、下にある酵素ドメインへの流動を制御するように機能する。本明細書の別の場所により詳細に記載されるように、血中の酸素量に対してモル過剰のグルコースが存在し、すなわち細胞外液中の遊離酸素分子毎に、典型的に100個超のグルコース分子が存在する(Updike et al.,Diabetes Care 5:207-21(1982)を参照されたい)。しかしながら、酸素を共因子として用いる固定化酵素系センサには、グルコース濃度の変化に線形的に応答するが、酸素分圧の変化に応答しないように、非レート制限過剰で酸素が供給される。より具体的には、グルコースモニタリング反応が酸素制限される場合、線形性は、最小より上のグルコース濃度で達成されない。グルコース及び酸素の流動を制御するために酵素ドメイン上に位置する半透過性膜なしに、グルコースレベルに対する線形応答は、わずか最大約40mg/dLで得ることができる。しかしながら、臨床設定において、グルコースレベルに対する線形応答は、少なくとも最大約500mg/dLが望ましい。いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメインは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2015年12月20日に出願された米国仮出願第62/273,219号に記載される拡散抵抗ドメインで形成され得る。
【0166】
拡散抵抗ドメイン46は、酸素及びグルコースの、下にある酵素ドメイン42への流動を制御し、好ましくは酸素を非レート制限過剰にする、半透過性膜を含む。結果として、グルコース測定の線形性の上限は、拡散抵抗ドメインなしに達成される値よりはるかに高い値に拡張される。いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメインは、およそ200:1の酸素対グルコース透過性比を呈するが、他の実施形態において、酸素対グルコース透過性比は、およそ100:1、125:1、130:1、135:1、150:1、175:1、225:1、250:1、275:1、300:1、または500:1であり得る。高い酸素対グルコース透過性比の結果として、1次元反応物質拡散は、皮下マトリックスにおいて見出される全ての妥当なグルコース及び酸素濃度で十分な過剰酸素を提供し得る(Rhodes et al.,Anal.Chem.,66:1520-1529(1994)を参照されたい)。いくつかの実施形態において、より低い酸素対グルコースの比は、高い酸素可溶性ドメイン(例えば、シリコーン材料)を使用することによって過剰酸素を提供して、酵素膜または電気活性表面への酸素の供給/輸送を強化するのに十分であり得る。シリコーン組成物の使用を通じて酸素供給を強化することによって、例えば、グルコース濃度は、さほど制限因子ではない。換言すれば、より多くの酸素が酵素または電気活性表面に供給される場合、次いでより多くのグルコースもまた、酸素レート制限過剰をもたらすことなく酵素に供給され得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメインは、分析物センサへのグルコース及び酸素の拡散を制御するために、親水性領域及び疎水性領域の両方を有するポリウレタン膜を含むように合成されたベースポリマーで形成される。好適な疎水性ポリマーコンポーネントは、ポリウレタンまたはポリエーテルウレタン尿素であり得る。ポリウレタンは、ジイソシアネート及び二官能性ヒドロキシル含有材料の縮合反応によって生成されたポリマーである。ポリ尿素は、ジイソシアネート及び二官能性アミン含有材料の縮合反応によって生成されたポリマーである。好ましいジイソシアネートには、約4~約8メチレン単位を含有する脂肪族ジイソシアネートが含まれる。ジイソシアネートを含有する脂環式部分はまた、好ましい実施形態の膜のポリマー及びコポリマーコンポーネントの調製において有用であり得る。拡散抵抗ドメインの疎水性マトリックスの基礎を形成する材料は、センサデバイス内の膜としての使用に適切であるとして、関連化合物がそれを通過するのを可能にする、例えば、活性酵素または電気化学電極に到達するために、酸素分子が審査中の試料から膜を通過するのを可能にするのに十分な透過性を有するとして、当該技術分野において既知のもののうちのいずれかであり得る。非ポリウレタン型膜を作製するために使用され得る材料の例には、ビニルポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、無機ポリマー(ポリシロキサン及びポリカルボシロキサンなど)、天然ポリマー(セルロース及びタンパク質系材料など)、ならびにそれらのコポリマー、混合物、または組み合わせが含まれる。
【0168】
ポリウレタン系抵抗ドメインの一実施形態において、親水性ソフトセグメントポリマーコンポーネントは、ポリエチレンオキシドであり得る。例えば、1つの有用な親水性コポリマーコンポーネントは、約20%の親水性ポリエチレンオキシドを含むポリウレタンポリマーである。コポリマーのポリエチレンオキシド部分は、熱力学的に駆動されてコポリマーの疎水性部分及び疎水性ポリマーコンポーネントから分離する。最終ブレンドを形成するために使用されるコポリマーの20%ポリエチレンオキシド系ソフトセグメント部分は、吸水及び後続の膜のグルコース透過性に影響を及ぼす。
【0169】
あるいは、いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメインは、ベースポリマー(例えば、ポリウレタン)及び1つ以上の親水性ポリマー(例えば、PVA、PEG、ポリアクリルアミド、アセテート、PEO、PEA、PVP、ならびにそのコポリマー、ブレンド、及び/または変型)の組み合わせを含み得る。様々なポリマーの組み合わせのうちのいずれかを使用して、所望のグルコースとのブレンド、酸素、及び干渉透過性特性をもたらし得る。例えば、いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメインは、シリコーンポリカーボネート-ウレタンベースポリマー及びPVP親水性ポリマーのブレンドから形成され得るが、他の実施形態において、ポリウレタン、または別のベースポリマー、及び1つ以上の親水性ポリマーのブレンドを代わりに使用することができる。PVPの使用を伴う実施形態のうちのいくつかにおいて、ポリマーブレンドのPVP部分は、ポリマーブレンドの約5重量%~約50重量%、時には約15重量%~約20重量%、また他の時には約25重量%~約40重量%を含み得る。様々な分子量のPVPが使用され得ることが企図される。例えば、いくつかの実施形態において、使用されるPVPの分子量は、約25,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、時には約50,000ダルトン~約2,000,000ダルトン、また他の時には約6,000,000ダルトン~約10,000,000ダルトンであり得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメイン46は、バイオインターフェースドメイン48を有する一体構造として形成され得、すなわち、拡散抵抗ドメイン46の固有特性は、バイオインターフェースドメイン48に組み込まれ、それによりバイオインターフェースドメイン48は、拡散抵抗ドメイン46として機能する。
【0171】
ある特定の実施形態において、拡散抵抗ドメインの厚さは、約0.05μm以下~約200μm以上であり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、拡散抵抗ドメインの厚さは、約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約6、約8μm~約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約19.5、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約75、約80、約85、約90、約95、または約100μmであり得る。いくつかの実施形態において、拡散抵抗ドメインの厚さは、経皮的に埋め込まれたセンサの場合、約2、約2.5、もしくは約3μm~約3.5、約4、約4.5、もしくは約5μm、または全体的に埋め込まれたセンサの場合、約20もしくは約25μm~約40もしくは約50μmである。
【0172】
酵素ドメイン
酵素ドメインとも称される酵素層は、活性酵素を固定化するように構成された埋め込み可能なデバイスのドメインまたは層であり、宿主に埋め込まれるかまたは宿主に接続されたときに(例えば、血管への体外アクセスを提供する血管内アクセスデバイスを介して)、分析物と反応する。一実施形態において、酵素ドメインは、グルコースオキシダーゼを含む。他の実施形態において、酵素ドメインに、他のオキシダーゼ、例えば、ガラクトースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、またはウリカーゼを含浸させることができる。例えば、酵素系電気化学グルコースセンサが良好に動作するために、センサの応答は、酵素活性によっても共因子濃度によっても制限されてはならない。他の実施形態において、酵素は、グルコースデヒドロゲナーゼなどのデヒドロゲナーゼであってもよい。
【0173】
本明細書に開示される酵素層は、機械的に頑強であり、埋め込み時の生理化学的分解を防ぎ、センサ埋め込み中の接着剤分解に耐え得る。さらに、開示される酵素層は、分析物に対して透過性であるセンサの応答時間に影響を及ぼさず、抵抗層によってグルコースレート制限制御を変更しない。開示される酵素層は、乾燥重量に対して10%を超える吸水、ならびに速い吸水及び迅速な安定化到達を有する親水性特性を有し得、それによりセンサ始動は負の影響を受けない。
【0174】
本明細書に開示される酵素層は、酵素層ポリマーを含む。酵素層ポリマーは、ポリ双性イオンである。ポリ双性イオンは、ポリマー鎖の繰り返し単位が、双性イオン部分であるポリマーである。そのようなものとして、これらのポリマーは、正電荷及び負電荷の両方を有する各双性イオン繰り返し単位に起因して、同数のカチオン基及びアニオン基を有し、故に多くの場合、広いpH範囲を通じて全体ゼロ電荷を有する。理論に束縛されるものではないが、酵素層ポリマー中の双性イオン基は、酵素中のイオン基との強い電荷-電荷相互作用のための電荷中心を提供し、酵素層中の酵素の固定化及び酵素層からの(またときには宿主への)酵素の漏出の減少を助け得ると考えられる。さらに、双性イオン基は、高度に親水性であり、水を保持して酵素の変性の防止を助ける。
【0175】
酵素層ポリマーは、高分子両性電解質がアニオン基及びカチオン基を含むが、イオン基が同じ繰り返し単位の一部として互いに相関しないという点において、他の高分子両性電解質から区別される、ポリ双性イオンである。そのため、アニオン基及びカチオン基が、互いに離れてランダム間隔で分布され得るか、または一方のイオン基がもう一方のイオン基より多くてもよい。故に、恐らくいくらか狭いpH範囲であることを除いて、高分子両性電解質が正味電荷を有することは典型的である。
【0176】
開示されるポリ双性イオンは、下にi~vii)として示される、様々な繰り返し単位を有し得、nは、2~1000のある整数である。
【化10】
【0177】
構造iからiv)において、双性イオン単位は、骨格(~~~~)に接続され、電荷は、鎖に吊り下げられた側基上にある。構造v)~vii)において、双性イオン単位は、一方または両方の電荷が鎖自体の上にあるようなものである。
【0178】
構造i)~vii)のうちのいずれかのポリ双性イオンを生成するために使用され得る好適な双性イオンモノマーの例には、
アンモニオホスフェート(ホスホベタインもしくはレシチン類似体)、アンモニオホスホネート(ホスホノベタイン)、またはアンモニオホスフィネート(ホスフィノベタイン)が含まれ、それぞれ以下の構造を有し、
【化11】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R、R、及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換される。
構造i)~vii)のうちのいずれかのポリ双性イオンを生成するために使用され得る好適な双性イオンモノマーのさらなる例には、アンモニオスルホネート(スルホベタイン)、アンモニオスルフェートが含まれ、それぞれ以下の構造を有し、
【化12】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換され、
アンモニオカルボキシレートは、以下の構造を有し、
【化13】
式中、Zが、分岐または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択され、R、R、R、及びZのうちの1つ以上が、重合基で置換される。
【0179】
これらのモノマーのそれぞれにおいて、Zは、1~12個の原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の原子の長さを有し得、これらの値のうちのいずれかが、ある範囲の上端点または下端点を形成し得る。
【0180】
これらのモノマーは、例えば、Laschewsky,″Structures and synthesis of zwitterionic polymers,″Polymers 6:1544-1601,2014において詳述されるように、当業者に既知の方法によって調製され得る。ある特定の実施例において、開示されるポリ双性イオンは、上に開示される双性イオンモノマーのうちのいずれかから得られる繰り返し双性イオン単位を有し得る。
【0181】
酵素層ポリマーはまた、ポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメントを含み得る。例えば、酵素層ポリマーは、ポリウレタンコポリマー、例えばポリエーテル-ウレタン-尿素、ポリカーボネート-ウレタン、ポリエーテル-ウレタン、シリコーン-ポリエーテル-ウレタン、シリコーン-ポリカーボネート-ウレタン、ポリエステル-ウレタン、ポリウレタン-尿素などを含み得る。これらのポリウレタン及び/またはポリ尿素セグメントは、水素結合を多く含む部分であるポリイソシアネート及び短鎖ポリオールまたはポリアミンから形成された尿素及び/またはウレタン結合を含むため、これらのセグメントは、本明細書において「ハードセグメント」と称される。これらのセグメントはまた、比較的疎水性であり得る。
【0182】
ポリウレタン及び/またはポリ尿素ハードセグメントに加えて、開示される酵素層ポリマーは、比較的不良な水素結合を有するソフトセグメントも含み得る。ソフトセグメントは、通常はポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアリーレン、及びポリアルキレンなどのポリオールで構成される。ソフトセグメントは、疎水性または親水性のいずれかであり得る。
【0183】
ある特定の実施形態に有用な酵素層ポリマーは、ポリマーの骨格構造上に線形または分岐ポリマーを含み得る。故に、ハードまたはソフトセグメントのいずれかは、分岐または線形骨格を含み得る。
【0184】
双性イオンモノマーは、本明細書に記載されるように、ハードもしくはソフトセグメントのいずれか、または両方の一部であり得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、酵素層ポリマーのハードセグメント部分は、ポリマーの約5重量%~約50重量%、時には約15重量%~20重量%、また他の時には約25重量%~40重量%を含み得る。ハードセグメントは、約160ダルトン~約10,000ダルトン、また時には約200ダルトン~約2,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ソフトセグメントの分子量は、約200ダルトン~約10,000,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約5,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約2,000ダルトンであり得る。
【0186】
記載のとおり、ハードセグメントは、ポリウレタンまたはポリ尿素であり得る。ポリウレタンは、ジイソシアネート及び二官能性ヒドロキシル含有材料の縮合反応によって生成されたポリマーである。ポリ尿素は、ジイソシアネート及び二官能性アミン含有材料の縮合反応によって生成されたポリマーである。好ましいジイソシアネートには、約4~約9メチレン単位を含有する脂肪族ジイソシアネートが含まれる。ジイソシアネートを含有する脂環式部分はまた、好ましい実施形態の膜のポリマー及びコポリマーコンポーネントの調製において有用であり得る。
【0187】
酵素層ポリマーの調製において使用されるソフトセグメントは、それを通る分析物(例えば、グルコース)の透過性をもたらすのに有用であり得る、多官能性脂肪族ポリオール、多官能性脂肪族または芳香族アミンなどであり得、例えば、ポリオキサゾリン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド、ポリイミン、ポリプロピレンオキシド(PPO)、PEG-コ-PPOジオール、シリコーン-コ-PEGジオール、シリコーン-コ-PPOジオール、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びそれらの変型(例えば、PVP酢酸ビニル)を含み得、ここでPEG及びその変型は、それらの親水性のために好適であり得る。
【0188】
実施形態のうちのいくつかにおいて、酵素層ポリマーのソフトセグメント部分は、ポリマーの約5重量%~約70重量%、時には約15重量%~20重量%、また他の時には約25重量%~40重量%を含み得る。ソフトセグメントは、約160ダルトン~約10,000ダルトン、また時には約200ダルトン~約2,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ソフトセグメントの分子量は、約200ダルトン~約10,000,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約5,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約2,000ダルトンであり得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、ハード及びソフトセグメント、ならびに双性イオン繰り返し単位を含む酵素層ポリマーは、約10kDa~約500,000kDa、例えば、約10kDa~約100,000kDa、約1000kDa~約500,000kDa、約10,000kDa~約100,000kDa、及び約100,000kDa~約500,000kDaの分子量を有し得る。
【0190】
ハード及びソフトセグメントはそれぞれ、限定されないが、引張強度、屈曲寿命、弾性率などのそれらの特性のために選択され得る。例えば、ポリウレタンは、比較的強く、多くの反応経路を提供し、特性は、連続センサの膜ドメインに対して有利であり得る。
【0191】
上記のとおり、酵素層ポリマーは、1つ以上の双性イオン繰り返し単位を含有し、故にこれらの基は、ポリマー骨格関して「内部」である。そのような「内部」繰り返し単位は、そのような部分が1つの位置でポリマー鎖に結合されるにすぎないため、ポリマー鎖の端部において見出される材料から区別される。開示される酵素層ポリマーは、いくつかの実施形態において、ポリマー鎖の終端において双性イオン基を有し得るが、そのような基は、鎖において唯一の双性イオン基ではなく、骨格に少なくとも1つの内部双性イオン基がある。
【0192】
いくつかの実施形態において、酵素層ポリマーは、ポリマーの少なくとも約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%~約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、または約55重量%の双性イオン繰り返し単位を含む。好ましい実施例において、酵素層ポリマーは、ポリマーの少なくとも約20重量%の双性イオン繰り返し単位を含む。
【0193】
双性イオン繰り返し単位は、カルボキシル、スルホ、またはリンベタイン化合物などのベタイン、その前駆体または誘導体(例えば、アルキルベタインまたはアミノベタイン)であり得る。これらのセグメントまたは部分は、ハードセグメント中、ソフトセグメント中、または両方にかかわらず、例えば、酵素層ポリマーの最大約55重量%で酵素層ポリマーに組み込むことができる。
【0194】
いくつかの実施形態において、2つ以上の異なる双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分が使用されるが、他の実施形態において、単一の双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分が、酵素層ポリマー中で使用され得る。
【0195】
酵素層ポリマーのいくつかの実施例は、図10に概略的に示される。一般に、酵素層ポリマーは、1つ以上のハードセグメント及び1つ以上のソフトセグメントを含む。ハードセグメントは、脂肪族または芳香族モノマーであり得る。ソフトセグメントは、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリンなどの親水性または疎水性オリゴマーであり得る。双性イオン基(例えば、ベタイン)は、ソフトセグメント、ハードセグメント、または両方の一部であり得る。図10に示されるとおり、様々なハード及びソフトセグメントが存在し得、これがある特定のセグメント上で異なるセグメント、異なるセグメント長、官能化を使用すること、ある特定のセグメントを架橋することなどによって、酵素層ポリマーの特性を調整するのを許容する。いくつかの実施形態において、ハード及びソフトセグメントを含む生体適合性セグメント化ブロックポリウレタンコポリマーを、酵素層に使用することができる。
【0196】
これらの双性イオン繰り返し単位の、ポリマーへの組み込みは、ジオールまたはジアミンを(例えば、Z位に)有する双性イオンモノマーを使用することによって達成され得るか、またはR~Rのうちのいずれかにおいてジオールまたはジアミンに付着され得る。R~Rにおけるジオールまたはジアミンへの付着は、対応する前駆体をハロ置換ジアミンまたはハロ置換ジオールと反応させることによって達成され得る。そのようなモノマーの例が下に示され、
【化14】
式中、W、Y、及びZが独立して、分岐鎖または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、O、OH、ハロゲン、アミノ、またはアルコキシルで任意に置換され得、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R、R、及びRが独立して、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択される。特定の実施例において、Wは、C~Cアルキルである。特定の実施例において、Yは、C~Cアルキルである。他の実施例において、Zは、C~Cアルキルである。
【0197】
これらの化合物は、ジイソシアネートと反応して、ポリウレタンまたはポリ尿素を形成し得る。あるいは、カルボキシレート、スルホネート、ホスフィネート、またはホスホネート部分を保護することができ、次いで重合後に保護基を除去することができる。別の代替例において、アミンは、第三級アミンであり得、次いで重合後にアルキル化によって四級化される。
【0198】
別の方法は、上に示されるモノマーにおいてZ位で置換された不飽和部分を有する双性イオンモノマーのラジカル重合を伴う。他の実施例において、不飽和部分がアンモニウム基に付着される双性イオンモノマーを、ラジカル重合において使用することができる。そのようなモノマーの例が下に示され、
【化15】
式中、Xが、O、NH、またはNRであり、Y及びZが独立して、分岐鎖または直鎖アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらのうちのいずれかが、OH、ハロゲン、またはアルコキシルで任意に置換され得、Rが、H、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、R及びRが独立して、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールから選択される。特定の実施例において、Rは、HまたはCHである。他の実施例において、Xは、Oである。さらに他の実施例において、Xは、NHまたはNCHである。特定の実施例において、Yは、C~Cアルキルである。他の実施例において、Zは、C~Cアルキルである。
【0199】
好適な双性イオンモノマーの追加の例には、N-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート、N-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファチジルコリン、及び3-(2′-ビニル-ピリジノ)プロパンスルホネートが含まれる。
【0200】
他の実施形態において、酵素層ポリマーは架橋され得る。例えば、求電子性官能基(例えば、カルボニル、アルデヒド、無水物、エステル、アミド、イソシアネート、エポキシ、アリル、またはハロ基)を有する芳香族または脂肪族セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求核基(例えば、ヒドロキシル、アミン、尿素、ウレタン、またはチオ基)を有する架橋剤で架橋され得る。さらなる実施形態において、求核性官能基を有する芳香族または脂肪族セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求電子基を有する架橋剤で架橋され得る。なおもさらに、求核性または求電子性官能基を有する親水性セグメントを有するポリウレタン尿素ポリマーは、複数の求電子基または求核基を有する架橋剤で架橋され得る。ポリウレタン尿素上の不飽和官能基はまた、多価遊離ラジカル剤と反応させることによって架橋に使用することもできる。
【0201】
好適な架橋剤の非限定例には、イソシアネート、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、または他のアルデヒド、アジリジン、シラン、エポキシ、アクリレート、フリーラジカル系剤、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEGDE)、またはジクミルペルオキシド(DCP)が含まれる。一実施形態において、架橋剤の総乾燥重量に対して約0.1%~約15% w/wの架橋剤が付加され、成分をブレンドするときにポリマーが付加される(一実施例において、約1%~約10%)。硬化プロセスの間、架橋剤の実質的に全てが反応すると考えられ、最終層に検出可能な未反応の架橋剤を実質的に残さない。
【0202】
さらに、開示される酵素層は、非共有結合相互作用によってポリマーネットワーク内に捕捉されたまたは埋め込まれた双性イオンを有し得る。故に、さらなる実施形態において、開示される酵素層は、酵素層ポリマー及びそれとブレンドされた追加のベタインを含み得る。例えば、酵素層ポリマーは、コカミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オクチルスルホベタイン、カプリリルスルホベタイン、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、パルミチルスルホベタイン、ステアリルスルホベタイン、ベタイン(トリメチルグリシン)、オクチルベタイン、ホスファチジルコリン、グリシンベタイン、ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)、及びポリ(スルホベタイン)(pSB)とブレンドされ得る。さらに多くの双性イオン化合物またはその前駆体もしくは誘導体が、適用可能であり得ること、及びこの例示的なベタインの一覧が、実施形態の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
【0203】
ある特定の実施形態において、酵素層は、ポリ双性イオン酵素層ポリマー及び酵素を含み得る。他の実施形態において、酵素層は、ベースポリマーとブレンドされたポリ双性イオン酵素層ポリマー、及び酵素を含み得る。好適なベースポリマーには、限定されないが、シリコーン、エポキシ、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリアクリル、ポリメタクリル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリウレタン、及びポリウレタン尿素が含まれ得、ここでポリウレタン及びポリウレタン尿素には、ポリウレタンコポリマー、例えばポリエーテル-ウレタン-尿素、ポリカーボネート-ウレタン、ポリエーテル-ウレタン、シリコーン-ポリエーテル-ウレタン、シリコーン-ポリカーボネート-ウレタン、ポリエステル-ウレタンなどが含まれ得る。いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、限定されないが、引張強度、屈曲寿命、弾性率などのそれらのバルク特性のために選択され得る。例えば、ポリウレタンは、比較的強く、多くの反応経路を提供することが知られており、その特性は、連続センサの膜ドメインに対するバルク特性として有利であり得る。
【0204】
いくつかの実施形態において、ハード及びソフトセグメントを含む生体適合性セグメント化ブロックポリウレタンコポリマーを含むベースポリマーが使用されてもよい。いくつかの実施形態において、コポリマーのハードセグメントは、約160ダルトン~約10,000ダルトン、また時には約200ダルトン~約2,000ダルトンの分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ソフトセグメントの分子量は、約200ダルトン~約10,000,000ダルトン、また時には約500ダルトン~約5,000,000ダルトン、また時には約500,00ダルトン~約2,000,000ダルトンであり得る。コポリマーのハードセグメントの調製のために使用されるポリイソシアネートは、芳香族または脂肪族ジイソシアネートであり得ることが企図される。ポリウレタンの調製において使用されるソフトセグメントは、それを通る分析物(例えば、グルコース)の透過性をもたらすのに有用であり得る、多官能性脂肪族ポリオール、多官能性脂肪族または芳香族アミンなどであり得、例えば、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド、アセテート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(2-オキサゾリン(POX)、及びそれらの変型(例えば、PVP酢酸ビニル)を含み得、ここでPVP、POX、及びその変型は、いくつかの実施形態において、それらの加水分解安定性のために好適であり得る。
【0205】
いくつかの実施形態において、膜システムの表面に適用される1つ以上の双性イオン化合物またはその前駆体は、双性イオン化合物の加水分解性カチオンエステルである。これらの実施形態において、加水分解性カチオンエステルは、カチオンエステルの、非汚染性双性イオン基への加水分解が、微生物(細菌など)を殺滅し得るか、またはDNAを縮合し得るという追加の利得を提供する。さらに、結果として得られる双性イオン基の混合電荷性質は、センサの表面上の非特異的タンパク質吸着の阻害をもたらす。これらの実施形態において、カチオン性ベタインエステル、例えばカチオン性pCBエステルが好ましい。
【0206】
ポリマー骨格の内部に双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分を組み込むことは、その双性イオンまたは双性イオン前駆体のモノマーと関連した可溶度の問題に起因して困難であり得る。そのような基は、典型的に、いくつかの酵素層ポリマー(例えば、ポリウレタン)の合成に好ましくないメタノール及び水などの高度に極性の溶媒にだけ溶解され得る。故に、溶液系重縮合合成によって酵素層ポリマーの骨格に化学的に組み込まれて使用され得る、使用可能な官能基は限定されていた。双性イオンまたは双性イオン前駆体セグメントもしくは部分をベースポリマーの骨格に組み込む代替方法として、その双性イオンまたは双性イオン前駆体の前駆体または誘導体を使用することができる。例えば、低極性有機溶媒中でより望ましい可溶度特徴を有する双性イオン前駆体及び/または双性イオン誘導体を、モノマーとして使用することができる。酵素層ポリマー(例えば、ポリウレタン尿素)は、重縮合反応によって合成され、高い分子量及び低い多分散性指数を有する明確なポリマーを形成することができる。次いでこれらのポリマーは、化学反応(加水分解、脱保護、熱により誘発される再配置、及びUVにより誘発される分解)またはデバイスのインビボ埋め込み後に生物学的に誘発される反応を介して、ポリマーを含有する双性イオン基に変換され得る。
【0207】
いくつかの実施形態において、酵素層に含まれる酵素は、熱またはpHにより誘導される分解の影響を受けやすい。いくつかの関連実施形態において、酵素層はまた、1つ以上の酵素安定化剤を含み得る。そのような薬剤は、酵素が熱またはpHにより誘導された変性に耐える能力を改善する。故に、酵素安定化剤の包含は、そうでなければ酵素の活性を低下させる製造プロセスの使用を可能にすることによってデバイス製造を促進する。これらの薬剤の包含は、センサの使用可能な貯蔵寿命を延ばす追加の利得を有する。酵素層がセンサにおける使用に好適でなくなるまで、分析物または酵素層の酸素透過性に影響を及ぼすことなく、酵素の熱及び/またはpH安定性を改善する任意の材料が、酵素安定化剤として使用されてもよい。いくつかの実施形態において、酵素安定化剤は、双極性であり得る。理論に束縛されるものではないが、双極性酵素安定化剤は、酵素の三次構造を安定化する電荷局所環境を提供するような方法で酵素の周りに配向することによって酵素を安定化すると考えられる。
【0208】
双極性酵素安定化剤は、双性イオンまたは非双性イオンであり得る。すなわち、双極性酵素安定化剤は、異なる位置で正及び負の電荷を有する中性分子である。いくつかの実施形態において、正及び負の電荷は、フル単位電荷である(すなわち、分子は双性イオンである)。他の実施形態において、正及び負の電荷は、フル単位電荷未満である(すなわち、分子は双極性であるが、非双性イオンである)。
【0209】
いくつかの実施形態において、双性イオン酵素安定化剤は、ベタイン、例えばグリシンベタイン、ポリ(カルボキシベタイン)(pCB)、もしくはポリ(スルホベタイン)(pSB)、またはいくつかの他の双性イオン、例えばコカミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オクチルスルホベタイン、カプリリルスルホベタイン、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、パルミチルスルホベタイン、ステアリルスルホベタイン、ベタイン(トリメチルグリシン)、オクチルベタイン、ホスファチジルコリン、エクトイン、またはヒドロキシエクトインであり得る。好ましい実施形態において、双性イオン酵素安定化剤は、グリシンベタインである。いくつかの実施形態において、非双性イオン酵素安定化試薬は、アミンオキシドであり得る。
【0210】
酵素安定化試薬は、使用される場合、酵素層の最大約0.1、約0.2、約0.5、約1、約2、または約5重量%で存在し得る。さらに多くの双性イオン基、またはその前駆体もしくは誘導体が、適用可能であり得ること、及びこの例示的なベタインの一覧が、実施形態の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。いくつかの実施形態において、双性イオン基の加水分解性カチオンエステル(別の場所で論じられる)は、酵素層への組み込みのために同様の濃度で使用され得る。
【0211】
酵素層が酵素安定化試薬を含む実施形態において、酵素ドメイン中に存在する酵素安定化試薬の量は、酵素の熱及び/またはpH安定性の改善を提供するのに十分であるが、酵素層の透過性特徴を妨害せず、それによりセンサは高いグルコース感度を保持する。酵素層において使用される酵素安定化試薬の識別及び量は、センサにおいて使用される特定の酵素に基づいて異なり得るが、酵素安定化試薬の量は、一般に、酵素の量の約50重量%未満、例えば約25重量%未満、例えば約10重量%未満である。好ましい実施形態において、酵素は、グルコースオキシダーゼであり、酵素安定化試薬は、グリシンベタインなどのベタインである。
【0212】
いくつかの実施形態において、酵素及び酵素層ポリマー、ならびに任意の酵素安定化剤を、バイオインターフェース層または拡散抵抗ドメインに含浸させることができるか、または他の方法で固定化することができ、それにより別個の酵素層は必要とされない(例えば、ここで、バイオインターフェース層、拡散抵抗ドメイン、干渉ドメイン、及び酵素層の機能性を含む一体ドメインが提供される)。いくつかの実施形態において、酵素層は、ポリウレタン、例えば、酵素及び酵素安定化試薬を含むコロイド状ポリウレタンポリマーの水性分散剤から形成される。再度、いくつかの実施形態において、酵素層のポリマー系は、架橋されなくてもよいが、他の実施形態において、架橋が使用され、様々な方法のうちのいずれかによって、例えば、架橋剤を付加することによって達成されてもよいことが企図される。
【0213】
いくつかの他の実施形態において、2つ以上の表面活性基を含有するポリマーのブレンドは、負電荷を帯びた1つの表面活性基と、正電荷を帯びた1つの表面活性基と、を含む。いくつかの実施形態において、負電荷及び正電荷を帯びた表面活性基の数は、ブレンドから形成された酵素ドメインが、ほぼ正味で中性電荷を帯びるような数である。他の実施形態において、正電荷及び負電荷を帯びた表面活性基の数は、等しくない場合があり、正電荷または負電荷表面活性基のいずれかがより多く存在する。
【0214】
いくつかの実施形態において、酵素層44を含む膜が開示される(図2A~2Cを参照されたい)。本明細書に開示される酵素層は、酵素層ポリマー及び酵素を含み得るか、または代替実施形態において、酵素層は、酵素層ポリマー、及びポリマーブレンドを形成する1つ以上の他のポリマー、及び酵素を含み得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、酵素層44を使用することができ、拡散抵抗ドメイン46よりも電気化学的反応表面の近くに位置する。酵素層は、分析物と反応するように構成された酵素を含む。一実施形態において、膜は、グルコースオキシダーゼを含む固定化酵素層44を含む。他の実施形態において、酵素層44に、他のオキシダーゼ、例えば、ガラクトースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、またはウリカーゼを含浸させることができる。例えば、酵素系電気化学グルコースセンサが良好に動作するために、センサの応答は、酵素活性によっても共因子濃度によっても制限されてはならない。
【0216】
いくつかの実施形態において、酵素に、バイオインターフェースまたは拡散抵抗ドメインを含浸させることができるか、または他の方法で固定化することができ、それにより別個の酵素ドメイン44は必要とされない(例えば、ここで、バイオインターフェースドメイン、拡散抵抗ドメイン、及び酵素ドメインの機能性を含む一体ドメインが提供される)。いくつかの実施形態において、酵素ドメイン44は、ポリウレタン、例えば、酵素を含むコロイド状ポリウレタンポリマーの水性分散剤から形成される。
【0217】
ある特定の実施形態において、酵素層の厚さは、約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1、約2、約4、約6、約8μm~約10、約15、約20、約30、約40、約50、約75、約100、約125、約150、約175、約200、または約250μmであり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、酵素層の厚さは、時には約1~約5μm、また時には約2~約7μmであり得る。他の実施形態において、酵素層は、約20または約25μm~約50、約55、または約60μmの厚さであり得る。いくつかの実施形態において、グルコースセンサは、経皮または短期皮下埋め込みのために構成され得、約0.5μm~約8μm、また時には約4μm~約6μmの厚さを有し得る。宿主の循環系と流体連通するように構成された1つのグルコースセンサにおいて、厚さは、約1.5μm~約25μm、また時には約3~約15μmであり得る。いくつかの実施形態において、酵素層または電極の任意の他の層が、一貫した厚さを有し得るが、他の実施形態において、厚さは異なり得ることも企図される。例えば、いくつかの実施形態において、酵素層の厚さは、電極端部の長手方向軸に沿って異なり得る。
【0218】
別の態様において、酵素層は、拡散抵抗ドメイン及び干渉ドメインへの酵素層の接着を強化し、剥離を減少させるために酵素層にブレンドされる添加剤として、生物模倣型接着剤ポリマーを有し得る。本実施形態において使用され得る好適な生物模倣型接着ポリマーは、3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニン含有ポリマーである。海産イガイタンパク質中の活性成分である3,4-ジヒドロキシ-L-フェニルアラニン(DOPA)は、重合性モノマーに変換され、重合されて線形非分解性ホモポリマーまたはコポリマーを形成し得る。
【0219】
干渉ドメイン
いくつかの実施形態において、例えば図2Bに示されるセンサ構成において、干渉層とも称される干渉ドメイン43は、バイオインターフェース層に加えて(またはその代わりに)提供され得ることが企図される。干渉ドメイン43は、電気化学的反応表面への1つ以上の干渉物質の透過を実質的に低減し得る。干渉ドメイン43は、測定した種より干渉物質のうちの1つ以上に対してはるかに低い透過性であるように構成され得る。干渉遮断がバイオインターフェース層によって(例えば、バイオインターフェース層の表面活性基含有ポリマーを介して)提供され得るいくつかの実施形態において、別個の干渉ドメインは存在しない。他の実施形態において、膜は、干渉ドメイン及びバイオインターフェース層の両方を含み、両方のドメインは、1つ以上の干渉物質の透過を低減するように構成される。さらなる実施形態において、干渉ドメイン及びバイオインターフェース層は、それぞれ異なる干渉種の透過を低減するように構成される。例えば、干渉ドメインは、ある種の干渉種の透過を低減することに関して、バイオインターフェース層より優れた特異性を有し得るが、バイオインターフェース層は、別種の干渉種の透過を低減することに関して、干渉ドメインより優れた特異性を有し得る。いくつかの実施形態において、干渉ドメイン及びバイオインターフェース層の両方は、透過低減のためにある特定の干渉種を標的とするように構成される。
【0220】
ある特定の実施形態において、埋め込み可能なセンサは、抵抗ドメイン、酵素ドメイン、及び干渉ドメインを含む膜システムを用いる。干渉ドメインは、センサの近位にあり得、抵抗ドメインは、センサの遠位にあり得、その間に酵素ドメインがある。干渉ドメインは、単一層または同じ材料の複数の層からなり得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、干渉ドメインは、交互構成で2つ以上の異なる種の層を含む。例えば、第1種の層は、Xによって表すことができ、第2種の層は、Yによって表すことができ、第3種の層は、Zによって表すことができる。交互層を含む干渉ドメインは、以下の例示的な構成を有し得る。
【化16】
【0221】
単に例示的である上記構成は、様々な実施形態を示す。ある特定の実施形態において、第1層及び最後の層は同じであり(例えば、X及びX)、他の実施形態において、第1層及び最後の層は異なる(例えば、X及びY)。ドメインは、1つ以上の層を含み得、一体であるか(すなわち、単一層が堆積される、例えば、X)、または複合である(例えば、第1の材料層が堆積され、続いて同じ材料の第2及び第3などの層が第1層の上に堆積される、例えば、XXX)。交互層のパターンは、規則的(例えば、XYXYXYXYXY)または不規則的(例えば、ZYXZXYZYZ)であり得る。
【0222】
いくつかの実施形態において、交互層は、ポリアニオン層及びポリカチオン層を含む。以下は、例示的な干渉ドメイン構成であり、ここでポリアニオン層(一体、複合、及び/または同じポリアニオンもしくは異なるポリアニオンとの連続)は、Aによって表され、ポリカチオン層(一体、複合、及び/または同じポリアニオンもしくは異なるポリアニオンとの連続)は、Cによって表される。
【化17】
【化18】
【0223】
他の構成(例えば、追加の層及び/または追加の材料を含むもの)もまた、いくつかの実施形態に対して企図される。いくつかの実施形態において、各A層は、同じポリアニオンの一体または複合層であり、各C層は、同じポリカチオンの一体または複合層である。干渉ドメインの最外層の両方は、ポリカチオン層であり得、ポリアニオン層は、内部層としてのみ存在する。任意の好適な数の代替層、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の二重層(ポリアニオン層に隣接したポリカチオン層として定義される)が、干渉ドメインにおいて用いられ得る。いくつかの実施形態において、最終ポリカチオン層は、最外層としてポリカチオン層を有する干渉ドメインをもたらすように付加される。他の実施形態において、最終アニオン層は、最外層としてポリアニオン層を有する干渉ドメインをもたらすように付加される。
【0224】
ポリアニオン及びポリカチオンは、一般に高分子電解質-ポリマーと称されるポリマーのクラスに属し、ここで、繰り返し単位(またはモノマー)のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のイオン部分を含む。カチオン部分及びアニオン部分の両方を担持する高分子電解質は、一般に高分子両性電解質と称される。ある特定の高分子電解質は、自己組織化単層を形成し、ここで分子の一端は、基質に対して特定の可逆的親和性を示し、それにより高分子電解質の組織化された最密単層が堆積され得る。
【0225】
ポリカチオンは、任意の生体適合性ポリカチオンポリマーであり得る。いくつかの実施形態において、ポリカチオンは、生体適合性水溶性ポリカチオンポリマーである。ある特定の実施形態において、水溶性は、ポリカチオンポリマーを、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリ非イオン材料と共にグラフトすることによって強化され得る。代表的なポリカチオン材料は、例えば、中性pHで正味正電荷を有する天然及び非天然ポリアミノ酸、正電荷多糖類、及び正電荷合成ポリマーを含み得る。好適なポリカチオン材料の追加の例には、ポリマー骨格またはポリマー側鎖のいずれかにアミン基を有するポリアミン、例えばポリ-L-リジン及び天然もしくは合成アミノ酸またはアミノ酸の混合物の他の正電荷ポリアミノ酸(ポリ(D-リジン)、ポリ(オルニチン)、ポリ(アルギニン)、及びポリ(ヒスチジン)を含む)、ならびに非ペプチドポリアミン、例えばポリ(アミノスチレン)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(N-メチルアミノアクリレート)、ポリ(N-エチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノアクリレート)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリ(N-メチルアミノ-メタクリレート)、ポリ(N-エチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノメタクリレート)、ポリ(エチレンイミン)、第四級アミンのポリマー、例えばポリ(N,N,N-トリメチルアミノアクリレートクロリド)、ポリ(メチルアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)、ならびに天然または合成多糖類、例えばキトサン、ポリ(塩酸アリルアミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ビニルベンジルトリアメチルアミン)、ポリアニリンまたはスルホン酸ポリアニリン、(p型ドープ)、ポリピロール(p型ドープ)、ポリアリルアミングルコノラクトン、及びポリ(ピリジニウムアセチレン)が含まれる。
【0226】
ポリアニオン材料は、任意の生体適合性ポリアニオンポリマー、例えば、ペンダント基として付着したカルボン酸基を有する任意のポリマーであり得る。ポリイオン層は、親水性であり得る(例えば、脂質よりも水とより容易に会合するであろう材料またはその部分)。いくつかの実施形態において、ポリアニオンポリマーは、生体適合性水溶性ポリアニオンポリマーである。好適な材料には、限定されないが、アルギン酸塩、カラゲナン、フルセララン、ペクチン、キサンタン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸塩、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸塩、デキストラン硫酸塩、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(硫酸ビニル)、ポリ(チオフェン-3-酢酸)、ポリ(4-スチレンスルホネート)、ポリ(スチレンスルホネート)、(ポリ[1-[4-(3-カルボキシ-4-ヒドロキシ-フェニルアゾ)ベンゼンスルホンアミド]-1,2-エタンジイル、ナトリウム塩])、ポリ(4-[4-({4-[3-アミノ-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)プロピルカルバモイル]-5-オキソ-ペンチル-}-メチル-アミノ)-フェニルアゾ]-ベンゼンスルホン酸)、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、及びクロスマルメロース、合成ポリマー、ならびにペンダントカルボキシル基を含有するコポリマー、例えば骨格にマレイン酸またはフマル酸を含有するものが含まれる。主に負電荷のポリアミノ酸も好適である。これらの材料の例には、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ならびにそれらの他の天然及び非天然アミノ酸とのコポリマーが含まれる。タンニン及びリグニンなどのポリフェノール材料は、それらが十分に生体適合性である場合に使用され得る。
【0227】
ポリイオン材料の分子量は、コーティング厚さなどのコーティング特徴を変えるために異なり得る。分子量が増加されるにつれて、コーティング厚さは、一般に増加する。しかしながら、分子量の増加は、取り扱いをより困難にし得る。コーティング厚さ、材料の取扱い、及び他の設計考慮の均衡を達成するために、ポリイオン材料は、特定の平均分子量Mnを有し得る。いくつかの実施形態において、使用されるポリイオン材料の平均分子量は、約1,000、10,000、または20,000~約25,000、50,000、100,000、または150,000g/molである。
【0228】
いくつかの実施形態において、干渉ドメインは、交互積層法を使用して調製することができ、ここで、基質(例えば、センサまたはセンサ上の膜層、例えば抵抗層または酵素層)は、最初に1つの高分子電解質浴中、次いで逆電荷の高分子電解質浴中に浸漬される。場合によって、基質が高分子電解質浴中に浸漬される前または後に、基質は洗浄液浴中に浸漬され得る。各浸漬中に、少量の高分子電解質は吸着され、表面電荷は逆転され、それにより交互のポリカチオン-ポリアニオン層の静電気的に架橋されたフィルム(または水素結合されたフィルム)の段階的かつ制御された構築を可能にする。この方法は、機能性、ならびにフィルム厚さ及び機能性を制御するための技法を提供する。例えば、1つの単層と同じ薄さのフィルムを堆積させるため、またはより厚い層に用いられ得る。図11Bは、ポリカチオン及びポリアニオンの交互吸着を用いて図11Aに示される構造を作る、交互積層法の一実施形態を示す。動作的に、図11Bに示される実施形態は、ポリカチオン及びポリアニオン溶液への基質938の連続曝露を通じて起こり、各堆積ステップ後に洗浄して未吸着ポリマーを除去する。第1のステップにおいて、ポリカチオン942は、基質938の上に堆積され(例えば、電気活性表面を有するワイヤまたは平坦ウエハ基質)、ポリカチオン層942を形成する。本明細書の別の場所により詳細に記載されるように、層の堆積は、例えば、浸漬及び/またはスプレーなどの様々な技法のうちのいずれかを使用して行われ得る。第2のステップにおいて、ポリカチオン層942の堆積後に洗浄を行い、未吸着ポリマーを除去する。次に、第3のステップにおいて、ポリアニオン944は、ポリカチオン層942の上に堆積される。その後、第4のステップにおいて、ポリアニオン層944の堆積後に洗浄を行い、未吸着ポリマーを除去する。所望の干渉ドメイン構成及び/または構造が達成されるまで、これらのステップを繰り返すことができる。代替実施形態において、ポリカチオン層を第1層として基質938の上に堆積させる代わりに、ポリアニオン層が代わりに堆積される。その後、ポリカチオンで形成された第2層が、第1層、すなわちポリアニオン層の上に堆積される。ある特定の所望の干渉ドメイン構成及び/または構造が達成されるまで、このプロセスを継続する。
【0229】
いくつかの実施形態において、方法は、水素結合または共有結合などの他の相互作用を用いることもできる。高分子電解質の性質に応じて、高分子電解質架橋が起こり得、単一の高分子電解質鎖が、2つ(またはそれ以上の)逆電荷マクロイオンに吸着し、それにより分子架橋を確立する。各高分子電解質の単層のみが、各蒸着ステップで吸着する場合、静電気的に架橋したヒドロゲル型材料は、一度に数ミクロンだけ表面上に構築され得る。基質がポリイオンフィルムの適用の間に完全に洗浄されない場合、より厚いヒドロゲル様構造が堆積され得る。
【0230】
いくつかの実施形態において、交互のポリカチオン層(複数可)及びポリアニオン層(複数可)によって提供される干渉遮断能力は、ポリカチオン層(複数可)とポリアニオン層(複数可)との間に共有結合を作ることによって調整及び/または制御され得る。架橋は、フィルムの機械的特性及び構造に実質的な効果を有し得、順にフィルムの干渉遮断能力に影響を及ぼし得る。架橋ポリマーは、異なる架橋密度を有し得る。ある特定の実施形態において、架橋を使用して、層間の架橋を促進する。他の実施形態において、上記の架橋技法の代わりに(またはそれに加えて)、熱を使用して架橋を形成する。例えば、いくつかの実施形態において、イミド及びアミド結合は、高温の結果としてポリカチオン層とポリアニオン層との間に形成され得る。いくつかの実施形態において、光架橋を行い、ポリカチオン層(複数可)とポリアニオン層(複数可)との間に共有結合を形成する。光架橋に対する1つの主な利点は、それがパターン形成の可能性を提供することである。ある特定の実施形態において、光架橋を使用するパターン形成を行い、フィルム構造を修飾し、そのようにして干渉ドメインの干渉遮断能力を調整する。遮断能力は、限定されないが、ある特定の干渉種の輸送を低減する能力、または干渉種を超える所望の種(例えば、H2O2)の輸送の選択性に対応し得る。ナノ粒子を形成する金属イオンの架橋及び低減などの堆積後反応は、フィルム特性を修飾するためのさらなる方法を提供する。いくつかの実施形態において、架橋は、堆積後架橋プロセスの代わりに(またはそれに加えて)、隣接したポリカチオン層またはポリアニオン層の堆積の間に行われ得る。
【0231】
干渉層の全体厚さは、干渉物質に対するその透過性に影響し得る。干渉ドメインの全体厚さは、層の数及び/または層間の洗浄の程度を調整することによって制御され得る。スプレーを通じた層堆積によって、液滴サイズ及び密度の制御は、必ずしも層間の洗浄を必要とすることなく、所望の選択された厚さのコーティングを提供することができる。さらに、過剰な(未結合の)材料を、他の手段を介して、例えばエアジェットによって除去することができる。前の層からの残留高分子電解質が、後続層を付加する前に実質的に除去される場合、層当たりの厚さは減少する。したがって、一実施形態において、表面は、ポリカチオンで最初にコーティングされ、次いで過剰なポリカチオンが、表面を洗浄することによって除去され、その後にポリアニオンが付加され、次いで過剰分が除去され、必要に応じてこのプロセスが繰り返される。いくつかの実施形態において、異なる隣接した層からのポリカチオンまたはポリアニオンを絡み合わせてもよい。さらなる実施形態において、それらをいくつかの層にわたって絡み合わせることができる。
【0232】
いくつかの実施形態において、ポリイオンのイオン化のレベルは、例えば、ポリカチオンまたはポリアニオンを含む浸漬溶液中のpHを制御することによって制御され得る。これらのポリイオンのイオン化のレベルを変更することによって、ある特定の層の干渉遮断能力を変更及び/または制御してもよい。例えば、第2のポリカチオン層より高いレベルのイオン化を有する第1のポリカチオン層は、第1の干渉種とより良好に相互作用し、その輸送を低減するが、第2のポリカチオンは、第2の干渉種とより良好に相互作用し、その輸送を低減し得る。ポリイオンの電荷基のイオン化のレベルの変化はまた、機械的特性、構造特性、及び他のある特定の特性(たとえば、拡散特性)に影響を及ぼし得、それが干渉種の輸送を低減する(または全体的に遮断する)干渉ドメインの能力に影響を及ぼし得る。例えば、両方が高レベルのイオン化を有するポリカチオン及びポリアニオンを含む交互二重層は、低レベルのイオン化を有する対応する二重層よりも堅固に結合し得る。故に、機械的特性または他の特性(例えば、ドメインの厚さ)の形態であり得るこれらの2つの膜間の構造的差異は、干渉ドメインの性能に影響を及ぼし得る。
【0233】
いくつかの実施形態において、高分子電解質の線形電荷密度は、ポリイオン鎖に沿って平均電荷間隔により少なくとも部分的に制御され得る。干渉ドメインを形成するポリカチオンポリマー及び/またはポリアニオンポリマー上の電荷基間の空間は、高分子電解質ポリマー選択またはポリマー合成によって制御され得る。電荷基の間隔がどれだけ離れているかは、干渉ドメインの構造特性に大きく影響を及ぼし得る。例えば、互いの近くに間置された電荷基を有するポリイオンは、干渉ドメインに小径細孔をもたらし得、それにより、それを通る中分子径及び大分子径干渉種の通過除外するが、それを通る小径細孔の通過を可能にする構造をもたらす。逆に、互いから中度の距離で間置された電荷基を有するポリイオンは、大分子径干渉種を除外し、それを通る中分子径及び小分子径干渉種の通過を可能にする中径細孔をもたらし得る。ある特定の実施形態において、ポリアニオンポリマーの線形電荷密度は、約1~50e/Å、時には約10~25e/Å、時には約2~10e/Å、また時には2~3e/Åであり、ここでeは、電子/プロトンの素電荷であり、Åは、オングストロームでの距離である。いくつかの実施形態において、ポリアニオンポリマーの線形電荷密度は、約1~50e/Å、時には約10~15e/Å、時には約2~10e/Å、また時には2~3e/Åである。
【0234】
いくつかの実施形態において、ポリアニオンポリマーの線形電荷密度は、ポリカチオンポリマーの線形電荷密度と実質的に同様である。例えば、一実施形態において、ポリアニオン層は、(i)約2.5e/Åの平均線形電荷密度を有するポリ(アクリル酸)、及び(ii)同様に約2.5e/Åの平均線形電荷密度を有するポリ(塩酸アリルアミン)で形成される。ある特定の実施形態において、ポリカチオン層及びポリアニオン層は、互いに実質的に等しく、約1~50e/Å、時には約2~25e/Å、時には約5~10e/Å、他の時には約10~15e/Å、また他の時には約15~25e/Åである、平均線形電荷密度を有し得る。
【0235】
異なる線形電荷密度を有する干渉ドメインを提供することによって、標的とされる干渉種のある特定の特徴(例えば、分子径)に基づいて異なる干渉種を除外するように特異的に設計された異なるポリカチオン/ポリアニオン二重層を含む干渉ドメインが形成され得る。例えば、一実施形態において、干渉ドメインの最外二重層は、中間平均電荷間隔を有するように設計され、それにより大分子径種のみを除外するが、それを通る中分子径種及び小分子径種の通過を可能にする二重層をもたらす。逆に、干渉ドメインの最内二重層は、低い平均電荷間隔を有するように設計されてもよく、それにより非常に小さい分子径、例えばH2O2を有するものを除いて、全ての分子を除外する二重層をもたらす。
【0236】
いくつかの実施形態において、ポリカチオン層は、同じまたは実質的に同じ材料(例えば、ポリカチオンの場合はポリ(塩酸アリルアミン)(PAH)、またはポリアニオンの場合はポリ(アクリル酸)(PAA))で形成され得るが、異なるレベルのイオン化を有する。例えば、一実施形態において、干渉ドメインは、7つの交互の高分子電解質層を含み、第1、第3、第5、及び第7層は、ポリカチオン層であり、第2、第4、及び第6層は、ポリアニオン層であり、ここで第1及び第7層は、干渉ドメインの外側層を形成する。一実施形態において、ポリカチオン層のそれぞれまたはいくつかは、異なるレベルのイオン化を有し得る。例えば、一実施形態において、第1、第3、第5、及び第7層は、それぞれ異なるレベルのイオン化を有し得、第1層は、最高レベルのイオン化を有し、第7層は、最低レベルのイオン化を有するか、またはその逆である。代替実施形態において、ポリカチオン層のうちのいくつかは、実質的に同じレベルのイオン化を共有し得る。例えば、一実施形態において、第1層及び第7層は、実質的に同じレベルのイオン化を有し得るが、第3及び第5層は、他とは異なるイオン化のレベルを有し得る。本明細書の別の場所で記載されるように、ポリイオンのイオン化レベルは、ポリカチオンまたはポリアニオンを含む浸漬溶液中のpHを制御することによって制御され得る。これらのポリイオンのイオン化のレベルを変更することによって、ある特定の層の干渉遮断能力を変更及び/または制御してもよい。
【0237】
イオン化のレベルを有する層を有する干渉ドメインの設計は、ポリアニオン層にも同様に適用され得る。例えば、7つの交互の高分子電解質層を有する一実施形態において、第2、第4、第6層は、それぞれポリアニオン層であり、それぞれ異なるレベルのイオン化を有し得、第2層は、最高レベルのイオン化を有し、第6層は、最低レベルのイオン化を有するか、またはその逆である。代替実施形態において、ポリアニオン層のうちのいくつかは、実質的に同じレベルのイオン化を共有し得る。例えば、一実施形態において、第2層及び第4層は、実質的に同じレベルのイオン化を有し得るが、第6層は、他とは実質的に異なるレベルのイオン化を有し得る。
【0238】
ある特定の実施形態において、干渉層を形成するために選択される特定のポリカチオン層(複数可)及び/またはポリアニオン層(複数可)は、それを通る1つ以上の干渉物質の通過を遮断、低減、または妨害するそれらの能力に少なくとも一部依存し得る。例えば、ポリアニオン層は、第1の干渉物質の通過を遮断、低減、または妨害するその能力のために選択され得るが、ポリカチオン層は、第2の干渉物質の通過を遮断、低減、または妨害するその能力のために選択される。層は、それを通る干渉物質の通過を減速させるが遮断しないように設計され得るか、またはそこで干渉物質を実質的に遮断する(例えば、捕捉する)ように設計され得る。追加のポリイオン層は、依然として異なる干渉物質に対して特定の選択性を有する干渉ドメインに含まれ得る。センサの電極または電気活性表面に対する膜システムにおける干渉ドメインの位置に応じて、干渉物質以外の物質に対する層の透過性が重要であり得る。H2O2(過酸化水素)が、検出される分析物の酵素触媒化反応によって生成されるセンサシステムにおいて、干渉ドメインは、その干渉ドメインが電気活性表面と酵素層との間に位置付けられる場合、H2O2が最小インピーダンスで通過するのを可能にするように設計されるべきである。一方で、異なる膜設計において、干渉ドメインが酵素層に対して(電気活性表面に関して)遠位に位置付けられる場合、いくつかの実施形態において、干渉ドメインは、それを通過することからの酵素触媒化反応によって生成されないH2O2を遮断するように設計され得る。さらに、この特定の膜設計によって、干渉ドメインは、分析物及び酸素が最小インピーダンスで通過するのを可能にするように構成され得る。
【0239】
干渉ドメインを形成することにおける層の適用は、当該技術分野において既知の様々な方法によって達成され得る。1つのコーティングプロセスの実施形態は、単に浸漬コーティング及び浸漬洗浄ステップを伴う。別のコーティングプロセスの実施形態は、単にスプレーコーティング及びスプレー洗浄ステップを伴う。しかしながら、多くの代替実施形態は、スプレーコーティング、浸漬コーティング、及び/または洗浄ステップの組み合わせの様々な使用を伴う。例えば、1つの浸漬コーティング方法は、基質を第1のポリイオン材料の第1の溶液に浸漬することによって、第1のポリイオン材料のコーティングを基質に適用するステップと(例えば、センサまたはセンサの上の膜層、例えば、抵抗層または酵素層))、基質を洗浄溶液に浸すことによって基質を洗浄するステップと、任意に基質を乾燥させるステップとを伴う。次いで、ポリイオン二重層を形成するために、第2のポリイオン性材料を使用してこの手順を繰り返し、この第2のポリイオン性材料は、第1のポリイオン性材料の電荷と逆の電荷を有する。この二重層形成プロセスは、干渉ドメインを生成するために、複数回繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~約16二重層、時には1~約10二重層、また時には約3~約7二重層であり得る。ある特定の実施形態において、逆電荷ポリイオン性材料の最終層を堆積することができ、それにより第1層及び最終層は、同じ電荷を有する(両方が正または両方が負)。コーティング及び洗浄ステップのそれぞれの浸漬時間は、多くの因子に応じて異なり得る。例えば、ポリイオン性溶液への基質の浸漬は、約1~30分、または約2~20分、または約1~5分の期間にわたって起こり得る。洗浄は、1つのステップで達成され得るが、複数の洗浄ステップを用いることもできる。約2~5ステップの一連の洗浄を用いることができ、洗浄溶液への各浸漬は、例えば、約1~約3分かかる。いくつかの実施形態において、いくつかのポリカチオン溶液及び/またはいくつかのポリアニオン溶液が使用されてもよい。例えば、ある特定の実施形態において、浸漬コーティングシーケンスは、第1のポリカチオン性材料のコーティングを基質に適用して第1層を形成するステップ、次いで第1のアニオン性材料を第1層に適用して第2層を形成するステップ、次いで第2のポリカチオン性材料を第2層に適用して第3層を形成するステップ、次いで第2のポリアニオン性材料を適用して第4層を形成するステップ、次いで第1または第2のポリカチオン性材料を第4層に適用して第5層を形成するステップを必要とし得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記の浸漬コーティングシーケンスには、コーティングステップの間に行われる洗浄ステップを点在させることができる。記載されるステップ及び材料を伴う様々な順列のうちのいずれかが用いられ得る。代替実施形態において、ポリカチオン層及び/またはポリアニオン層を形成するために使用される材料は、実質的に同じであってもよい。しかしながら、個々のポリカチオン層は、干渉ドメインにおける1つ以上の他のポリカチオン層とは異なるレベルのイオン化を有し得、個々のポリアニオン層はまた、1つ以上の他のポリアニオン層とは異なるレベルのイオン化を有し得る。例えば、一実施形態において、浸漬コーティングシーケンス方法は、ポリカチオン性材料を含む第1のpHでの第1の溶液、ポリアニオン性材料を含む第2のpHでの第2の溶液、前述のポリカチオン性材料を含む第3のpHでの第3の溶液、前述のポリアニオン性材料を含む第4のpHでの第4の溶液、前述のポリカチオン性材料を含む第5のpHでの第5の溶液の使用を伴う。同じポリカチオン性材料を使用して第1層、第3層、及び第5層を形成する場合でも、その第1層、第3層、及び第5層を形成するために使用される溶液が異なるpHを有するため、第1層、第3層及び第5層のイオン化レベルは異なる。同様に、同じポリアニオン性材料を使用して第2層及び第4層を形成する場合でも、その第2層及び第5層を形成するために使用される溶液が異なるpHを有するため、第2層及び第4層のイオン化レベルは異なる。このイオン化レベルの差異は、とりわけフィルムの機械的特性、フィルムの構造特性(例えば、多孔性、粗雑性)、フィルムの拡散特性、及び別の干渉種を超えるある特定の干渉種に対するある特定の高分子電解質層の選択性に影響を及ぼし得る。これらの効果の全ては、個々の高分子電解質層及び干渉ドメインが様々な干渉種の輸送を低減する能力に影響する。ある特定の実施形態において、干渉ドメインの少なくとも2つのポリカチオン層及び/または2つのポリアニオン層は、同じポリカチオン性/ポリアニオン性材料から、但し異なるpHでの溶液の使用を通じて形成される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、第1のポリカチオン層は、他の干渉種よりも特定の干渉種に対して高い選択性を有するが、第2のポリカチオン層は、他の干渉種よりも異なる干渉種に対して高い選択性を有する。
【0240】
あるいは、またはさらに、スプレーコーティング技法が用いられ得る。一実施形態において、コーティングプロセスは、一般に、基質を第1のポリイオン性材料の第1の溶液と接触させることによって基質への第1のポリイオン性材料のコーティングを適用するステップと、基質に洗浄溶液をスプレーすることによって基質を洗浄するステップと、(任意に)基質を乾燥させるステップとを含む。浸漬コーティングプロセスと同様に、次いでスプレーコーティングプロセスを第2のポリイオン性材料で繰り返すことができ、第2のポリイオン性材料は、第1のポリイオン性材料の電荷とは逆の電荷を有する。基質の、ポリイオン性材料または洗浄溶液のいずれかの溶液との接触は、様々な方法を通じて起こり得る。例えば、基質は、両方の溶液に浸漬されてもよい。1つの代替例は、スプレーまたはミスト形態で溶液を適用することである。当然のことながら、様々な組み合わせが可能であり、かつ企図される実施形態の範囲内であり、例えば、基質をポリイオン性材料に浸漬した後に洗浄溶液をスプレーする。スプレーコーティング適用は、当該技術分野において既知の多数の方法を介して達成され得る。例えば、従来のスプレーコーティング配置が使用されてもよく、すなわち、液体材料は、上昇圧または低下圧であってもなくてもよいが、蒸着標的に向かって配向された小径ノズルを通じて、流体を適用することによってスプレーされる。別のスプレーコーティング技法は、超音波エネルギーの使用を伴い、これにより液体は、スプレー形成先端の超音波振動によって霧化され、それによりスプレーに変化する。
【0241】
さらに別の技法は、静電気スプレーコーティングを伴い、電荷が流体または液滴に運ばれ、コーティングの効率を増加させる。スプレーコーティングのために液体を霧化するさらなる方法は、例えば、液体を高速往復部材または高速回転ディスクと接触させることによる純粋な機械的エネルギーを必要とする。スプレーコーティングのための微小液滴を生成するさらに別の方法は、液体を霧化するための圧電素子の使用を伴う。これらの技法は、エアアシストと共にまたは上昇溶液圧で用いられ得る。さらに、2つ以上の技法の組み合わせは、ある特定の材料及び条件でより有用であると証明することができる。スプレー適用の方法は、計測ポンプを用いて、ポリアニオンまたはポリカチオン溶液を超音波分注ヘッドに分注することを伴う。ポリイオン層は、表面液滴が材料表面全体に癒合するのを可能にするようにスプレーされる。次いで、結果として得られる層は、ある期間にわたって相互作用することが可能になり得るか、または水もしくは生理食塩溶液(またはポリアニオンもしくはポリカチオンを含まない他の溶液)で即時に洗浄され得る。
【0242】
いくつかの実施形態において、干渉ドメインの層は、複合π系を有するポリマーを含み得る。複合π系を有するポリマーは、脱局在化電子系を含有し得、導電性であり得る。複合π系を有するポリマーの層は、分子間力、例えば静電的π-π相互作用(すなわち、π積層)を通じて互いに相互作用し得る。複合ポリマーは、ドメインの剛性、完全性、及び/または再現性を高めるなどの、干渉ドメインの有益な特性を提供し得る。いくつかの実施形態において、複合π系を有するポリマーは、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、またはポリ(カルバゾール)であり得る。干渉ドメインは、上述の複合ポリマーのうちのいずれかの交互層を含み得る。いくつかの実施形態において、複合ポリマーの層の数は、1~約20層、時には約3~約10層であり得る。
【0243】
いくつかの実施形態において、干渉ドメインの厚さは、約0.01ミクロン以下から約20ミクロ以上であり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、干渉ドメインの厚さは、約0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、1、1.5、2、2.5、3、または3.5ミクロン~約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または19.5ミクロンであり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、干渉ドメインの厚さは、約0.2、0.4、0.5、または0.6ミクロン~約0.8、0.9、1、1.5、2、3、または4ミクロンであり得る。
【0244】
ポリイミンフィルム
いくつかの実施形態において、ある特定のポリマーフィルムを使用して、干渉ドメインを形成することができる。例えば、2,2′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフェニルから調製されたある特定のポリイミド、及び対応する二無水物を、過酸化水素選択的膜として用いられ得るフィルムに流延することができる。例えば、Ekinci et al.,Turk.J.Chem.30(2006),277-285を参照されたい。一実施形態において、フィルムは、以下のステップを使用して調製される。第1に、n-メチル-2-ピロリデン(NMP)を、減圧下でCaH2上に蒸留し、約4Å分子篩上で保管する。試薬グレードピロメリト酸二無水物(PMDA)を、減圧下、約250℃で昇華させ、使用前に真空下、約120℃で乾燥させた。ジアミンを、再結晶化を介してエタノールから精製して光る結晶を得る。次に、2,20-ジメチル-4,40-ジアミノビフェニル(約1.06g、約5mmol)を、窒素ライン、オーバーヘッド撹拌器、キシレン充填したDean-Starkトラップ、及び凝縮器を備えた50mLのSchlenk管内でNMP(約15mL)に溶解する。次いで、PMDA(約1.09g、約5mmol)をアミン溶液に付加し、続いて一晩撹拌して粘性溶液を得る。約3時間撹拌した後、溶液を約200℃で約15時間、加熱還流する。重合プロセスの間に、イミド化から生成された水を、約1~2mLのキシレンと一緒に反応混合液から蒸留させる。周囲温度に冷却した後、溶液をNMPで希釈し、次いで95%エタノールの激しく撹拌された溶液にゆっくり付加する。沈殿したポリマーを濾過を介して収集し、エタノールで洗浄し、減圧下150℃で乾燥させる。コーティング前に、基質(例えば、Pt電極)を清浄し、任意に水性アルミナスラリーで約0.05μmに研磨する。次いで、約70mgのポリイミドを約2mLのNMPに溶解することによって調製された約20μLのポリマー溶液を、Pt電極の表面上に滴下し、室温で約3日間乾燥させる。
【0245】
自己組織化技法
自己組織化プロセスを用いて、連続して交互のアニオン及びカチオン高分子電解質を電荷表面上に含む、超薄多層フィルムを構築することができる。例えば、Decher et al.,Thin Solid Films,210-211(1992)831-835を参照されたい。逆電荷間のイオン誘引は、多層構築のための駆動力である。各層における表面機能的密度を維持するために約100%の反応収率を必要とする化学吸着技法とは反対に、共有結合が自己組織化プロセスで形成される必要はない。さらに、古典的なラングミュア・ブロジェット技法を超える利点は、溶液プロセスが、基質のサイズ及びトポロジーから独立していることである。そのようなプロセスにおける使用のための例示的な高分子電解質には、限定されないが、ポリスチレンスルホネートナトリウム塩、ポリビニルスルホネートカリウム塩、ポリ-4-ビニルベンジル-(N,N-ジエチル-N-メチル-)-ヨウ化アンモニウム、及びポリ(塩酸アリルアミン)が含まれる。多層フィルムの構築は、以下のように行われ得る。正電荷を帯びた平面表面を有する固体基質を、アニオン性高分子電解質を含有する溶液に浸漬させ、ポリアニオンの単層が吸着される。吸着は、比較的高い高分子電解質濃度で実行されるため、多数のイオン基は、溶液との界面に曝露されたままであり、故に表面電荷は逆転する。純水で洗浄した後、基質をカチオン性高分子電解質を含有する溶液に浸漬させる。再度、単層が吸着されるが、ここで元の表面電荷が回復される。両方のステップをサイクル様式で繰り返すことにより、両方のポリマーの交互の多層アセンブリが得られる。この多層形成のプロセスは、逆電荷の誘引に基づくため、最小2つの逆電荷分子を必要とする。結果として、電荷が層毎に逆になる限り、単に基質を所望されるだけ多くの高分子電解質溶液に浸漬させることによって、2つより多くの分子を多層に組み込むことができる。微振動多層アセンブリも容易に調製され得る。この点において、この技法は、むしろ周期的に交互する層系に限定されるラングミュア・ブロジェット技法よりも用途が広い。別の利点は、浸漬手順が、基質のサイズまたは連続プロセスにおける自動化に関して主たる制限を課さないことである。
【0246】
そのようなフィルムの調製の特定例は、以下のとおりである。ポリスチレンスルホネート(ナトリウム塩、Mr=100,000)及びポリビニルスルホネート(カリウム塩、Mr=245,000)、及びポリ(塩酸アリルアミン)、Mw=50,000~65,000)は、商用源から入手され、さらなる精製なしに用いられる。ポリ-4-ビニルベンジル-(N,N-ジエチル-N-メチル-)-ヨウ化アンモニウムは、Decher et al.,Ber.Bunsenges.Phys.Chem.,95(1992)1430に記載されるように合成され得る。全ての材料の交互多層アセンブリは、当該技術分野において既知の技法を使用する、UV/可視分光法及び小角X線散乱(SAXS)を特徴とし得る。直接光顕微鏡及びSAXS測定は、好適な基質上の多層アセンブリを用いて行われ得る。多層フィルムは、例えば、白金電極もしくは他の金属電極の上に堆積され得るか、または好適な介入層が電極の上に堆積され得る。第1層の吸着の場合、ポリスチレンスルホネートまたはポリビニルスルホネートの水性酸性溶液を使用することができる。その後、基質を水で洗浄する。第1層の吸着後、基質は、表面の顕著な劣化なしに数週間にわたって保管され得る。その後、カチオン性高分子電解質ポリアリルアミンは、水性溶液から吸着される。非四級化ポリアリルアミンの場合において、ポリカチオンは、酸性溶液から吸着される。アニオン性高分子電解質の全ての後続層(奇数層番号)は、水性溶液から吸着される。以前に吸着された層としてポリアリルアミンを含有する試料の場合において、ポリスチレンスルホネート層は、酸性溶液から吸着され得る。周囲温度で約20分の吸着時間が用いられ得るが、ある特定の実施形態において、より長いかより短い吸着時間が許容可能であり得る。ポリマー濃度の範囲(例えば、20~30mg/約10mLの水)は、許容可能な結果を提供し得る。
【0247】
高分子電解質:カリキサレン及び高分子電解質:シクロデキストリンホストの多層分子フィルムは、好適な基質の上に水性溶液中の電荷種を交互に吸着させることによって製造され得る。例えば、X.Yang,Sensors and Actuators B 45(1997)87-92を参照されたい。そのよう交互層分子堆積アプローチを使用して、分子認識試薬をポリマーフィルムに組み込むことができる。この堆積プロセスは、高度に再現可能であり、結果として得られるフィルムは均一かつ安定性がある。ポリアニオンに置き換えることで、高度に負電荷の分子種をフィルム製造に使用することができる。これらの分子試薬は、有機種を結合することができ、機能的コンポーネントとして薄いフィルムに堆積され得る。このアプローチは、ポリマー及び分子要素をフィルムに組み込み、故にポリマーの物理特性及び分子フィルムの選択性を有するフィルムをもたらす。フィルムは、以下のように調製され得る。基質(例えば、Pt電極)を、最初にクロロホルム中のアミノプロピルトリメトキシシランで処理することができ、続いてそれぞれ高分子電解質の水性溶液に浸漬させることによって、PSS、次いでPDDA高分子電解質を堆積させることができる。この後に、負電荷分子宿主種(例えば、calix[6]areneまたはp-t-butylcalix[4]arene)及びPDDAの交互堆積を、所望の数の二重層に到達するまで実行することができる。各堆積の間に、基質を脱イオン水で完全に洗浄する。高分子電解質及び分子イオンアセンブリは、UV-可視吸収分光法によってモニタリングされ得、質量負荷は、表面音響波(SAW)デバイスで測定され得る。
【0248】
いくつかの実施形態において、干渉ドメインは、1つ以上のセルロース誘導体から形成される。一般に、セルロース誘導体は、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、2-ヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロースなどのポリマー、またはそれらのブレンド及び組み合わせを含み得る。
【0249】
いくつかの代替実施形態において、干渉ドメインのベース材料として利用され得る他のポリマー種には、制御された細孔径を有するポリウレタン及び/またはポリマーを含む。1つのそのような代替実施形態において、干渉ドメインは、非膨張性の薄い疎水性膜を含み、低分子量種の拡散を制限する。干渉ドメインは、過酸化水素などの比較的低分子量の物質に対して透過性であるが、グルコース及びアスコルビン酸を含む、より高い分子量の物質の通過を制限する。好ましい実施形態の膜システムに適用され得る干渉種を低減または排除するための他のシステム及び方法は、米国特許第7,074,307号、米国特許公開第US-2005-0176136-A1、米国特許第7,081,195号、及び米国特許公開第US-2005-0143635-A1号に記載されており、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0250】
いくつかの実施形態において、干渉ドメインの厚さは、約0.01μm以下~約20μm以上であり得ることが企図される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、干渉ドメインの厚さは、約0.01、約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、または約3.5μm~約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約19.5μmであり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、干渉ドメインの厚さは、約0.2、約0.4、約0.5、または約0.6ミクロン~約0.8、約0.9、約1、約1.5、約2、約3、または約4ミクロンであり得る。
【0251】
一般に、本明細書に記載される膜システムは、既知の薄膜技法(例えば、流延、スプレーコーティング、伸ばし、電着、浸漬コーティングなど)を使用して、曝露された電気活性表面(例えば、作用電極及び基準電極のうちの1つ以上)の上に形成または堆積され得るが、流延または他の既知の適用技法を利用することもできる。いくつかの実施形態において、干渉ドメインは、スプレーまたは浸漬コーティングによって堆積され得る。例示的な一実施形態において、干渉ドメインは、約0.5インチ/分~約60インチ/分、時には約1インチ/分の挿入速度、約0.01分~約2分、時には約1分の滞留時間、及び約0.5インチ/分~約60インチ/分、時には約1インチ/分の引抜速度を使用して、センサを干渉ドメイン溶液に浸漬コーティングし、ドメインを約1分~約14時間、時には約3分~約15分硬化(乾燥)させることによって形成される(また室温でまたは真空下、例えば約20~約30mmHgで達成され得る)。酢酸酪酸セルロース干渉ドメインを含む例示的な一実施形態において、3分硬化(すなわち、乾燥)時間が、適用される各層の間に使用される。酢酸セルロース干渉ドメインを用いる別の例示的な実施形態において、15分硬化時間が、適用される各層の間に使用される。
【0252】
いくつかの実施形態において、浸漬プロセスは、少なくとも1回から最大10回以上繰り返すことができる。他の実施形態において、1回のみの浸漬が好ましい。繰り返し浸漬プロセスの好ましい数は、使用されるセルロース誘導体(複数可)、それらの濃度、堆積中の条件(例えば、浸漬)、及び所望の厚さ(例えば、ある特定の干渉物質の機能的遮断を提供するために十分な厚さ)などに依存し得る。一実施形態において、干渉ドメインは、3層の酢酸酪酸セルロースから形成される。別の実施形態において、干渉ドメインは、10層の酢酸セルロースから形成される。さらに別の実施形態において、干渉ドメインは、1層の酢酸セルロース及び酢酸酪酸セルロースのブレンドから形成される。代替実施形態において、干渉ドメインは、当業者に理解されるように、任意の既知の方法、ならびに酢酸セルロース及び酢酸酪酸セルロースの組み合わせを使用して形成され得る。
【0253】
電極ドメイン
図2Aに示される実施形態などのいくつかの実施形態において、電極層とも称される任意の電極ドメイン42は、バイオインターフェースドメイン及び酵素ドメインに加えて提供され得るが、他の実施形態において、電極ドメインの機能性は、バイオインターフェースドメイン、拡散抵抗ドメイン、酵素ドメイン、及び電極ドメインの機能性を含む一体ドメインに組み込まれ得る。
【0254】
いくつかの実施形態において、電極ドメインは、電気化学的反応表面の最も近位に位置する。電気化学反応を促進するために、電極ドメインは、センサインターフェースの電気化学的反応表面において親水性を維持する半透過性コーティングを含み得る。電極ドメインは、隣接したドメインを形成する材料を保護及び支持することによって隣接したドメインの安定性を強化することができる。電極ドメインはまた、不適切な電解質によって引き起こされる電極始動問題及びドリフト問題を克服することによって、デバイスの操作を安定化するのを助けることができる。電極ドメインに含有される緩衝電解質溶液は、電極の電気化学活性に起因する実質的に疎水性の干渉ドメインと電極との間の大きなpH勾配の形成から生じ得る、pH媒介による損傷から保護することもできる。
【0255】
いくつかの実施形態において、電極ドメインは、約0.05μm~約100μm、時には約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、または約1μm~約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約19.5、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、または約100μmの「ドライフィルム」厚さを有する、可撓性、水膨張性の実質的に固体のゲル様フィルム(例えば、ヒドロゲル)を含む。いくつかの実施形態において、電極ドメインの厚さは、経皮的に埋め込まれたセンサの場合、約2、約2.5、もしくは約3μm~約3.5、約4、約4.5、もしくは約5μm、または全体的に埋め込まれたセンサの場合、約6、約7、もしくは約8μm~約9、約10、約11、もしくは約12μmであり得る。本明細書で使用される場合、「ドライフィルム厚さ」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、標準コーティング技法による膜の表面上のコーティング製剤からの硬化フィルム流延の厚さを指すが、これに限定されない。コーティング製剤は、フィルム形成ポリマー及び架橋剤の予混合を含み得、中熱の適用時に硬化可能であり得る。
【0256】
ある特定の実施形態において、電極ドメインは、ウレタンポリマー及び親水性ポリマーの硬化性混合物で形成され得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、コーティングは、アニオン性カルボキシレート官能基及び非イオン親水性ポリエーテルセグメントを有するポリウレタンポリマーで形成され、これはポリビニルピロリドンの存在下で架橋され、約50℃の中温で硬化される。
【0257】
架橋性カルボキシル機能性(例えば、BAYBOND(商標)、Mobay Corporation)を有する完全に反応したコロイド状ポリウレタンポリマーの水性分散液が、この目的で特に好適である。これらのポリマーは、XW-121及びXW-123として特定されるカルボキシレート基を含有するポリカーボネート-ポリウレタン骨格、及びXW-110-2として特定されるカルボキシレート基を含有するポリエステル-ポリウレタン骨格を有する分散液グレードで供給される。いくつかの実施形態において、水及び共溶媒N-メチル-2-ピロリドン中の35重量%溶液として販売される脂肪族ポリカーボネートウレタンポリマーの水性アニオン分散液であるBAYBOND(商標)123が使用され得る。
【0258】
いくつかの実施形態において、電極ドメインは、電極ドメインを、上にあるドメイン(例えば、干渉ドメイン、酵素ドメイン)に等しいかまたはそれ以上に親水性にする親水性ポリマーから形成される。そのような親水性ポリマーには、例えば、ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタム、官能化ポリアミド、官能化ポリラクトン、官能化ポリイミド、官能化ポリラクタム、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0259】
いくつかの実施形態において、電極ドメインは、親水性ポリマーから主に形成され、これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、電極ドメインは、実質的にPVPから形成される。PVPは、親水性水溶性ポリマーであり、粘度グレード及び約18,000~約500,000の範囲の平均分子量の範囲で、BASF Wyandotte及びGAF CorporationによってPVP K(商標)ホモポリマーシリーズとして商業的に入手可能である。ある特定の実施形態において、PVP-K90(BASF Wyandotte)として識別される約360,000の平均分子量を有するPVPホモポリマーを使用して、電極ドメインを形成することができる。N-ビニルピロリドンの親水性フィルム形成コポリマー、例えばN-ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、N-ビニルピロリドン、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸モノマーのコポリマーなども好適である。
【0260】
ある特定の実施形態において、電極ドメインは、親水性ポリマーから全体が形成される。企図される有用な親水性ポリマーには、限定されないが、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリ-N-ビニル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、ポリ-N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ-N,N-ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリ-2-エチル-オキサゾリン、それらのコポリマー及びそれらの混合物が含まれる。2つ以上の親水性ポリマーのブレンドが、いくつかの実施形態において好適であり得る。
【0261】
ある特定の実施形態において、使用される親水性ポリマーは、架橋されなくてもよいが、他の実施形態において、架橋が使用され、様々な方法のうちのいずれかによって、例えば、架橋剤を付加することによって達成され得る。いくつかの実施形態において、ポリウレタンポリマーは、ポリマーの予混合を調製し、膜の生成直前に架橋剤を付加することによって、PVPの存在下で架橋され得る。企図される好適な架橋剤には、限定されないが、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、及びUCARLNK(商標)XL-25(Union Carbide))、エポキシド及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂が含まれる。あるいは、架橋は、親水性ポリマー分子間の架橋を促進するのに十分な波長での照射によって達成され得ることも企図され、これはドメインを通るより曲がりくねった拡散経路を作ると考えられる。
【0262】
コーティングの可撓性及び硬質性は、コーティング製剤中のコンポーネントの乾燥重量固体を変えることによって、必要に応じて変えることができる。本明細書で使用される場合、「乾燥重量固体」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、架橋剤が含められる時点後の総コーティング組成物に基づく乾燥重量パーセントを指すが、これに限定されない。一実施形態において、コーティング製剤は、約6~約20乾燥重量%、好ましくは約8乾燥重量%のPVP;約3~約10乾燥重量%、時には約5乾燥重量%の架橋剤;及び約70~約91重量%、時には約87重量%のポリウレタンポリマー、例えばポリカーボネート-ポリオレタンポリマーなどを含有し得る。そのようなコーティング製剤の反応生成物は、本明細書において、ポリウレタン及びPVPの水膨張性架橋マトリックスと称される。
【0263】
いくつかの実施形態において、電極ドメインの下には、電解質相があり、水和される場合は、少なくとも1つの化合物、典型的には電流を伝導する可溶性クロリド塩を含有する溶液を含む遊離液相である。膜システムが本明細書に記載されるようにグルコースセンサと共に使用される一実施形態において、電解質相は、電極の上を流れ、電極ドメインと接触している。ある特定の実施形態は、標準の商業的に入手可能な溶液を含む任意の好適な電解質溶液を使用できることが企図される。一般に、電解質相は、分析される試料と同じ浸透圧またはそれより低い浸透圧を有し得る。好ましい実施形態において、電解質相は、通常の生理食塩水を含む。
【0264】
生物活性剤
様々な生物活性(治療)剤のうちのいずれかが、本明細書に記載される分析物センサシステム、例えば図1に示される分析物センサシステムと共に使用され得ることが企図される。特定の実施形態において、生物活性剤は、開示されるデバイスのバイオインターフェース層中にあり得る。いくつかの実施形態において、生物活性剤は、抗凝固剤である。本明細書で使用される場合、「抗凝固剤」という用語は、広義語であり、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり(かつ特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではなく)、凝固を防止する(例えば、血液の塞栓を最小化、低減、または停止する)物質を指すが、これに限定されない。これらの実施形態において、分析物センサシステムに含まれる抗凝固剤は、センサ内またはセンサ上の凝固を防止することができる。センサシステムへの組み込みに好適な抗凝固剤には、限定されないが、ビタミンKアンタゴニスト(例えば、アセノクマロール、クロリンジオン、ジクマロール(Dicumarol、Dicoumarol)、ジフェナジオン、エチルビスクムアセテート、フェンプロクモン、フェニンジオン、チオクロマロール、またはワルファリン)、ヘパリン基抗凝固剤(例えば、血小板凝集阻害剤:アンチトロンビンIII、ベミパリン、ダルテパリン、ダナパロイド、エノキサパリン、ヘパリン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、ソルデキシド、チンザパリン)、他の血小板凝集阻害剤(例えば、アブシキシマブ、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アロキシプリン、ベラプロスト、ジタゾール、カルバサラートカルシウム、クロリクロメン、クロピドグレル、ジピリダモール、エポプロステノール、エプチフィバチド、インドブフェン、イロプロスト、ピコタミド、チクロピジン、チロフィバン、トレプロスチニル、トリフルサル)、酵素(例えば、アルテプラーゼ、アンクロド、アニストレプラーゼ、ブリナーゼ、ドロトレコギンα、フィブリノリシン、タンパク質C、レテプラーゼ、サルプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ)、直接トロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバン、ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、メラガトラン、キシメラガトラン)、他の抗血栓剤(例えば、ダビガトラン、デフィブロチド、硫酸デルマタン、フォンダパリヌクス、リバロキサバン)などが含まれる。
【0265】
一実施形態において、ヘパリンは、例えば浸漬またはスプレーによって分析物センサシステムに組み込まれる。理論に束縛されるものではないが、カテーテルまたはセンサ上にコーティングされたヘパリンは、分析物センサシステム上の血液の凝集及び塞栓を防止することができ、それにより血栓塞栓化(例えば、血栓または凝固による血流の防止)または後続の合併症を予防することができる。いくつかの実施形態において、ヘパリンは、浸漬またはスプレー前に1つ以上の双性イオン化合物またはその誘導体、例えばその加水分解可能なカチオンエステル(上述される)と混和され、したがってセンサシステムにヘパリン及び1つ以上の双性イオン化合物またはその誘導体の混合コーティングを提供する。
【0266】
いくつかの実施形態において、抗菌剤が、カテーテル(内径もしくは外径)またはセンサ上にコーティングされる。いくつかの実施形態において、抗菌剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。企図される抗菌剤には、限定されないが、抗生物質、防腐剤、殺菌剤、及び合成部分、ならびにそれらの組み合わせ、またアルコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、アセトニトリル、酢酸、塩化メチレン、及びクロロホルムなどの有機溶媒に可溶性である他の薬剤が含まれ得る。医療デバイスを含浸させるために使用される各抗菌剤の量は、ある程度異なるが、少なくとも細菌性及び真菌性生物、例えばブドウ球菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、及びカンジダの成長を阻害するのに有効な濃度である。
【0267】
いくつかの実施形態において、抗生物質が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。使用され得る抗生物質のクラスには、テトラシクリン(例えば、ミノシクリン)、リファミシン(例えば、リファムピン)、マクロリド(例えば、エリスロマイシン)、ペニシリン(例えば、ナフェイリン)、セファロスポリン(例えば、セファゾリン)、他のβ-ラクタム抗生物質(例えば、イミペネム、アズトレオナム)、アミノグリコシド(例えば、ゲンタミシン)、クロラムフェニコール、スルホンアミド(例えば、スルファメトキサゾール)、グリコペプチド(例えば、バンコマイシン)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン)、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、ムピロシン、ポリエン(例えば、アンフォテリシンB)、アゾール(例えば、フルコナゾール)、及びβ-ラクタム阻害剤(例えば、スルバクタム)が含まれ得る。
【0268】
使用され得る特定の抗生物質の例には、ミノシクリン、リファムピン、エリスロマイシン、ナフシリン、セファゾリン、イミペネム、アズトレオナム、ゲンタミシン、スルファメトキサゾール、バンコマイシン、シプロフロキサシン、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、テイコプラニン、ムピロシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、オフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、ナリジキシン酸、スパルフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、クリナフロキサシン、スルバクタム、クラブラン酸、アンフォテリシンB、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、及びニスタチンが含まれる。
【0269】
いくつかの実施形態において、防腐剤または殺菌剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。防腐剤及び殺菌剤の例は、ヘキサクロロフェン、カチオン性ビスイグアニド(例えば、クロルヘキシジン、シクロヘキシジン)ヨード及びヨードフォア(例えば、ポビドンヨード)、パラ-クロロ-メタ-キシレノール、トリクロサン、フラン医療調製物(例えば、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン)、メテナミン、アルデヒド(グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド)、及びアルコールである。防腐剤及び殺菌剤の他の例は、当業者自身が容易に提示するであろう。
【0270】
いくつかの実施形態において、抗バリア細胞剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。抗バリア細胞剤には、マクロファージ及び異物巨細胞(FBGC)に対して効果を示す化合物を含み得る。抗バリア細胞剤は、FBC成熟中にデバイス-組織界面においてマクロファージ及びFBGCによって提示される溶解物輸送に対するバリアの閉鎖を防止すると考えられる。抗バリア細胞剤は、創傷治癒プロセス、例えば、埋め込み可能なデバイスが挿入される切開によってもたらされる創傷の治癒に影響を及ぼす抗炎症または免疫抑制機構を提供することができる。生体材料の周りの非常に高レベルの血管新生を刺激するシクロスポリンは、好ましい実施形態のバイオインターフェース膜に組み込まれ得る(例えば、Martinsonらの米国特許第5,569,462号を参照されたい)。あるいは、組織-デバイス界面におけるFBC応答の強度を弱めるデキサメタゾンが、好ましい実施形態のバイオインターフェース膜に組み込まれ得る。あるいは、いくらかのマクロファージ炎症機能の強力な特異的阻害剤であるラパマイシンが、好ましい実施形態のバイオインターフェース膜に組み込まれ得る。
【0271】
いくつかの実施形態において、抗炎症剤は、埋め込み片に隣接した急性または慢性炎症を低減するため、またはFBCカプセルの形成を減少させて、例えばバリア細胞層の形成を低減するために、分析物センサシステムに組み込まれ得る。好適な抗炎症剤には、限定されないが、例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)、例えばアセトメタフェン、アミノサリチル酸、アスピリン、セレコキシブ、コリンマグネシウムトリサリチル酸塩、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、インターロイキン(IL)-10、IL-6ムテイン、抗IL-6iNOS阻害剤(例えば、L-NAMEまたはL-NMDA)、インターフェロン、ケトプロフェン、ケトロラク、レフルノミド、メレナム酸、ミコフェノール酸、ミゾリビン、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサレート、スリンダク、及びトリメチン;ならびにコルチコステロイド、例えばコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、フルチカゾンプロピオネート、パクリタキセル、タクロリムス、トラニラスト、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、フルオシノロン、ベタメタゾンジプロピオネート、吉草酸ベタメタゾン、デソニド、デソキシメタゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、クロベタゾールプロピオネート、及びデキサメタゾンが含まれる。
【0272】
いくつかの実施形態において、炎症応答における異なる細胞要素の関与に必須のいくつかの重要な機序を直接干渉するために、免疫抑制剤または免疫調節剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。好適な免疫抑制剤及び免疫調節剤には、限定されないが、抗増殖性細胞周期阻害剤(例えば、パクリタキセル、サイトカラシンD、インフィキシマブ)、タキソール、アクチノマイシン、ミトマイシン、トスプロモート(thospromote)VEGF、エストラジオール、NOドナー、QP-2、タクロリムス、トラニラスト、アクチノマイシン、エヴェロリムス、メトトレキサート、ミコフェノール酸、アンジオペプチン、ビンクリスチン、ミトマイシン、スタチン、C MYCアンチセンス、シロリムス(及び類似体)、RestenASE、2-クロロ-デオキシアデノシン、PCNAリボザイム、バチムスタット、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、PPARγリガンド(例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、ハロフジノン、C-プロテイナーゼ阻害剤、プロブコール、BCP671、EPC抗体、カトチン(catchin)、グリケート剤、エンドセリン阻害剤(例えば、アンブリセンタン、テソセンタン、ボセンタン)、スタチン(例えば、セリバスチン)、E.coli熱不安定性エンテロロキシン、及び高度コーティングが含まれる。
【0273】
いくつかの実施形態において、抗感染剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。一般に、抗感染剤は、感染物質の拡散を阻害することによって、または感染物質を即座に殺滅することによって、感染に対して作用可能な物質であり、例えば、埋め込み部位における炎症応答なしに免疫応答を低減するように機能し得る。抗感染剤には、限定されないが、駆虫剤(例えば、メベンダゾール)、抗生物質(例えば、アミノクリコシド、ゲンタミシン、ネオマイシン、トブラマイシン)、抗真菌抗生物質(例えば、アンフォテリシンb、フルコナゾール、グリセロフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ニスタチン、ミカチン、トルナフテート)、セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファゾリン、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン)、β-ラクタム抗生物質(例えば、セフォテタン、メロペネム)、クロラムフェニコール、マクロリド(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン)、ペニシリン(例えば、ペニシリンGナトリウム塩、アモキシシリン、アンピシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、ピペラシリン、チカルシリン)、テトラシクリン(例えば、ドキシシクリン、ミノシクリン、テトラシクリン)、バシトラシン、クリンダマイシン、コリスチンメタナトリウム、ポリミキシンbサルフェート、バンコマイシン、抗ウイルス剤(例えば、アシクロビル、アマンタジン、ジダノシン、エファビレンズ、ホスカルネット、ガンシクロビル、インジナビル、ラミブジン、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、銀、スタブジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ジドブジン)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン)、スルホンアミド(例えば、スルファジアジン、スルフィソキサゾール)、スルホン(例えば、ダプソン)、フラゾリドン、メトロニダゾール、ペンタミジン、スルファニルアミドムクリスタリナム(sulfanilamidum crystallinum)、ガチフロキサシン、及びスルファメトキサゾール/トリメトプリムが含まれる。
【0274】
いくつかの実施形態において、血管新生剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。血管新生剤は、一般に、直接または間接的血管新生特性を有する物質を含み得る。場合によって、血管新生剤は、インビボでのバリア細胞の形成に付加的に影響を及ぼし得る。間接的血管新生とは、血管新生が炎症性または免疫刺激性経路を通じて媒介され得ることを意味する。局所血管新生を誘導する薬剤がどのようにバリア細胞形成を阻害するかは完全に知られていないが、理論に束縛されるものではないが、いくらかのバリア細胞硬化が、血管新生剤の効果から間接的に生じ得ると考えられる。
【0275】
血管新生剤は、血管新生を促進し、膜の周囲の創傷治癒を加速させる、または組織-デバイス界面近くの血管新生を増加させることによって虚血期間を最小限にする機序を提供し得る。スフィンゴシン-1-ホスフェート(S1P)、強力な血管新生活性を有するリン脂質が、バイオインターフェース膜に組み込まれ得る。脂肪細胞の血管拡張及び血管新生脂質生成物であるモノブチリンもまた、バイオインターフェース膜に組み込まれ得る。別の実施形態において、血管新生を増加させることができるアンチセンス分子(例えば、トロンボスポンジン-2アンチセンス)が、バイオインターフェース膜に組み込まれる。
【0276】
血管新生剤は、炎症を促進する機序を提供し得、これがインビボでの血管新生及び創傷治癒を加速させると考えられる。一実施形態において、その外来性質が免疫応答を誘起する異種間担体、例えば、ウシコラーゲンが、血管新生を刺激し、いくつかの実施形態のバイオインターフェース膜に組み込まれる。別の実施形態において、免疫刺激剤であるリポ多糖が、バイオインターフェース膜に組み込まれ得る。別の実施形態において、タンパク質、例えば、組織中の骨治癒を調節する骨形成タンパク質(BMP)が、バイオインターフェース膜に組み込まれ得る。
【0277】
いくつかの実施形態において、血管新生剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。血管新生剤は、血管新生を刺激することができる物質であり、例えば、組織-デバイス界面における血管新生された組織床の発達を加速及び持続することができる。血管新生剤には、限定されないが、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)(ヘパリン結合成長因子-II及び線維芽細胞成長因子IIとしても知られる)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)(ヘパリン結合成長因子-I及び線維芽細胞成長因子-Iとしても知られる)、血管内皮成長因子(VEGF)、血小板由来内皮細胞成長因子BB(PDEGF-BB)、アンジオポエチン-1、形質転換成長因子β(TGF-β)、形質転換成長因子α(TGFα)、肝細胞成長因子、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、胎盤成長因子(PLGF)、アンジオゲニン、インターロイキン-8(IL-8)、低酸素誘導因子-I(HIF-1)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤キナプリラート、アンジオトロピン、トロンボスポンジン、ペプチドKGHK、低酸素圧、乳酸、インスリン、硫酸銅、エストラジオール、プロスタグランジン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、内皮細胞結合剤(例えば、デコリンまたはビメンチン)、グレニピン、過酸化水素、ニコチン、及び成長ホルモンが含まれる。
【0278】
いくつかの実施形態において、炎症促進剤が、分析物センサシステムに組み込まれ得る。炎症促進剤は、一般に、宿主組織において免疫応答を刺激することができる物質であり、成熟血管新生組織床の形成を加速または持続することができる。例えば、炎症促進剤は、一般に、刺激物質または創傷部位における慢性炎症及び慢性粒状応答を誘導する他の物質である。理論に束縛されるものではないが、高組織粒子の形成が、デバイス-組織界面への分析物の適切なまたは豊富な供給をもたらす血管を誘導すると考えられる。炎症促進剤には、限定されないが、異種間担体、リポ多糖類、S.aureusペプチドグリカン、及びタンパク質が含まれる。
【0279】
これらの生物活性剤は、単独でまたは組み合わせで使用され得る。生物活性剤は、センサの材料全体に分散され得、例えば、膜システムの少なくとも一部分に組み込まれるかまたはデバイス(例えば、筐体)に組み込まれ、膜を通じて拡散するように適応される。
【0280】
生物活性剤がセンサ膜に組み込まれ得る、様々なシステム及び方法がある。いくつかの実施形態において、生物活性剤が、膜システムの製造時に組み込まれ得る。例えば、生物活性剤は、膜システムを硬化する前、または膜システム製造に続いて、例えば膜システムへの生物活性剤のコーティング、吸込み、溶媒流延、または吸収によってブレンドされ得る。いくつかの実施形態において、生物活性剤は、膜システムに組み込まれるが、他の実施形態において、生物活性剤は、例えば、経口投与によるか、または局所的に埋め込み部位の近くの皮下注入によって、インビボでのデバイスの挿入と同時に、挿入前、または挿入後に投与され得る。膜システムに組み込まれる生物活性剤、及び局所的または全身的生物活性剤投与の組み合わせが、ある特定の実施形態において好適であり得る。
【0281】
一般に、生物活性剤は、膜に対する宿主のインビボ応答を修飾するために、膜システムに組み込まれ得るか、またはデバイスに組み込まれ、それから拡散するように適応され得る。いくつかの実施形態において、生物活性剤は、デバイスの検知領域に隣接した膜システムの一部分のみ、検知領域上を除くデバイスの表面全体にわたって、またはそれらの任意の組み合わせで組み込むことができ、これはインビボ応答(例えば、塞栓形成)の異なる機序または段階を制御するのに役立ち得る。しかしながら、いくつかの代替実施形態において、生物活性剤は、膜システムの近位にあるデバイスに組み込むことができ、それにより、生物活性剤は、膜システムを通じて宿主の循環系に拡散する。
【0282】
生物活性剤には、担体マトリックスを含み、ここでマトリックスは、コラーゲン、粒子マトリックス、吸収性もしくは非吸収性マトリックス、制御放出マトリックス、またはゲルのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、担体マトリックスは、受容器を含み、ここで生物活性剤は、マイクロカプセル内にカプセル化される。担体マトリックスは、生物活性剤がポリマーネットワーク内に物理的に捕捉されるシステムを含み得る。いくつかの実施形態において、生物活性剤は、膜システムと架橋されるが、他の実施形態において、生物活性剤は、例えば、吸着、吸収、または吸込みによって膜システムに吸収される。生物活性剤は、例えば、コーティング、充填、または溶媒流延によって、膜システム内またはその上に堆積され得る。ある特定の実施形態において、イオン性及び非イオン性界面活性剤、洗剤、ミセル、乳化剤、解乳化剤、安定化剤、水性及び油性担体、溶媒、保存剤、抗酸化剤、または緩衝剤を使用して、生物活性剤を膜システムに組み込む。
【0283】
いくつかの実施形態において、膜システムの表面は、生物活性剤が可逆的に結合するセンサ膜の最外表面上に見出される結束層を含む。いくつかの実施形態において、この結束層は、1つ以上の双性イオン化合物、またはその前駆体もしくは誘導体を含み、これらは膜システムの最外ドメインを含むポリマーの表面活性基に結合される。いくつかの実施形態において、双性イオン化合物、またはその前駆体もしくは誘導体は、上記のとおり、1つ以上の双性イオンベタインを含む。いくつかの実施形態において、双性イオン化合物、またはその前駆体もしくは誘導体は、上記のとおり、双性イオン化合物の加水分解性カチオンエステルを含む。好ましい実施形態において、結束層は、加水分解性カチオンpCBエステルなどの1つ以上の加水分解性カチオンベタインエステルを含む。
【0284】
生物活性剤はまた、上記のような技法を使用してポリマーに組み込むこともでき、このポリマーを使用して、膜システム、膜システム上のコーティング、膜システムの部分、またはセンサシステムの任意の部分を形成することができる。
【0285】
膜システムは、当該技術分野において既知の技法を使用して製造され得る。生物活性剤は、例えば、膜システムをある長さの時間にわたって(例えば、約1時間以下から約1週間、またはより好ましくは約4、約8、約12、約16、または約20時間~約1、約2、約3、約4、約5、または約7日間)浸漬することによって膜システムに吸収させることができる。
【0286】
生物活性剤は、膜システムを形成する前に、未硬化のポリマーにブレンドされ得る。次いで膜システムは硬化し、それにより生物活性剤は、架橋されるか、または膜システムを形成するポリマー内にカプセル化される。
【0287】
さらに別の実施形態において、微小球を使用して、生物活性剤をカプセル化する。微小球は、生分解性ポリマー、最も好ましくは合成ポリマーまたは天然ポリマー、例えばタンパク質及び多糖類で形成され得る。本明細書で使用される場合、ポリマーという用語は、合成ポリマー及びタンパク質の両方を指すように使用される。米国特許第6,281,015号は、好ましい実施形態と併せて使用され得るいくつかのシステム及び方法を開示している。一般に、生物活性剤は、(1)微小球を形成するポリマーマトリックス、(2)微小球を形成するポリマーによって取り囲まれる微粒子(複数可)、(3)タンパク質微小球内のポリマーコア、(4)ポリマー微小球の周りのポリマーコーティング、(5)より大きい形態に凝集される微小球との混合、または(6)それらの組み合わせに組み込まれ得る。生物活性剤は、粒子として、またはポリマーを有する因子を共溶解することによって組み込まれ得る。安定化剤は、微小球の形成前に、因子溶液への安定化剤の付加によって組み込まれ得る。
【0288】
生物活性剤は、ヒドロゲルに組み込まれ、コーティングされ得るか、または他の方法で膜システム内またはその上に堆積され得る。好ましい実施形態における使用に好適ないくつかのヒドロゲルは、生物活性剤に高度に透過性であり、刺激に基づいて生物活性剤を放出するように誘発される、架橋された親水性3次元ポリマーネットワークを含む。
【0289】
生物活性剤は、溶媒流延によって膜システムに組み込むことができ、ここで溶解した生物活性剤を含む溶液は、膜システムの表面上に堆積され、その後、溶媒を除去して膜表面上にコーティングを形成する。
【0290】
生物活性剤は、米国特許第4,506,680号及び米国特許第5,282,844号に記載されるように、デバイス内に配置される材料のプラグに化合され得る。いくつかの実施形態において、このプラグを膜システムの下に配置することが好ましく、このようにして、生物活性剤は、膜を通じた拡散によって制御され、宿主における生物活性剤の持続放出のための機序を提供する。
【0291】
生物活性剤の放出
多くの変数が、生物活性剤放出の薬物動態に影響を及ぼし得る。好ましい実施形態の生物活性剤は、短期または長期放出に最適であり得る。いくつかの実施形態において、好ましい実施形態の生物活性剤は、センサ挿入の短期効果と関連した因子(例えば、急性炎症または塞栓)を助けるまたは克服するように設計される。いくつかの実施形態において、好ましい実施形態の生物活性剤は、長期効果と関連した因子、例えば、慢性炎症または線維性組織もしくはプラーク材料の構築を助けるまたは克服するように設計される。いくつかの実施形態において、好ましい実施形態の生物活性剤は、短期及び長期放出を合わせて、両方の利益を利用する。
【0292】
本明細書で使用される場合、因子の「制御」、「持続」、または「長期」放出は、連続的または断続的、線形または非線形であり得る。これは、1種以上のポリマー組成物、薬物負荷、賦形剤もしくは分解強化剤の選択、または他の修飾を使用して達成することができ、単独で、組み合わせで、または連続して投与されて所望の効果をもたらす。
【0293】
好ましい実施形態における生物活性剤の短期放出は、一般に、約数分または数時間~約2、約3、約4、約5、約6、または約7日以上の期間にわたる放出を指す。
【0294】
生物活性剤の負荷
膜システムへの生物活性剤の負荷の量は、いくつかの因子に依存し得る。例えば、生物活性剤の投与量及び期間は、膜システムの意図される用途、例えば、意図されるデバイスの使用期間など、患者間の生物活性剤の有効用量の差異、生物活性剤を負荷する場所及び方法、ならびに生物活性剤及び任意にそれらの担体マトリックスと関連した放出速度によって異なり得る。そのため、当業者であれば、上記の理由で、生物活性剤を負荷するレベルの変動性を理解するであろう。
【0295】
生物活性剤が担体マトリックスなしに膜システムに組み込まれるいくつかの実施形態において、膜システムへの生物活性剤の負荷の好ましいレベルは、生物活性剤の性質に応じて異なり得る。生物活性剤の負荷レベルは、好ましくは生物学的効果(例えば、塞栓予防)が観察されるために十分に高い。この閾値より上で、生物活性剤は、固体部分の最大100%を同化するか、膜の全てのアクセス可能な表面をコーティングするか、またはアクセス可能な空洞空間の最大100%を充填するように、膜システムに負荷され得る。典型的に、負荷レベルは(生物活性剤(複数可)、膜システム、及び存在する他の物質の重量に基づいて)、約1ppm以下~約1000ppm以上、好ましくは約2、約3、約4、または約5ppm~最大約10、約25、約50、約75、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、または約900ppmである。ある特定の実施形態において、負荷レベルは、約1重量%以下~最大約50重量%以上、好ましくは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、または約20重量%~最大約25、約30、約35、約40、または約45重量%であり得る。
【0296】
生物活性剤が、ゲルなどの担体マトリックスと共に膜システムに組み込まれる場合、ゲル濃度は最適化され得、例えば、生物活性剤の1つ以上の試験負荷と共に負荷される。一般に、ゲルは、約0.1以下~約50重量%以上の生物活性剤(複数可)、好ましくは約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、または約0.9重量%~約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、または約45重量%以上の生物活性剤(複数可)、より好ましくは約1、約2、または約3重量%~約4または約5重量%の生物活性剤(複数可)を含有することが好ましい。生物活性でない物質もまた、マトリックスに組み込まれ得る。
【0297】
ここでマイクロカプセル化された生物活性剤を参照して、これらのポリマー系からの薬剤の放出は、一般に、2つの異なる機序によって起こる。生物活性剤は、薬剤の溶解による投与形態で生成された水性充填チャネルを通じた拡散によって、または元のマイクロカプセル化中にポリマー溶媒もしくは細孔形成剤の除去によって作られた空隙によって放出され得る。あるいは、放出は、カプセル化ポリマーの分解に起因して強化され得る。時間と共に、ポリマーは浸食し、デバイス内により多くの多孔質及び微小構造を生成する。これが、生物活性剤の放出のための追加の経路を作る。
【0298】
いくつかの実施形態において、センサは、例えば、生物不活性材料の使用によって、生物不活性であるように設計される。生物不活性材料は、宿主からいかなる応答も実質的に引き起こさない。結果として、細胞は、材料に隣接して生存し得るが、それとの結合を形成しない。生物不活性材料には、限定されないが、アルミナ、ジルコニア、チタンオキシド、または一般に「カテーテル/カテーテル化」技術分野において使用される他の生物不活性材料が含まれる。理論に束縛されるものではないが、生物不活性材料の、センサ内または上への包含は、血液細胞またはタンパク質のセンサへの付着、塞栓、またはセンサに対する他の宿主反応を低減し得ると考えられる。
【実施例
【0299】
実施例1:酵素層ポリマーの合成及びその特徴付け
ベタイン含有ポリウレタン尿素ポリマーを、有機溶媒中の2ステップ重縮合反応を介して合成した。第1のステップにおいて、両方の鎖にイソシアネート末端基を有する均質ポリウレタンプレポリマーを調製した。第2のステップにおいて、小分子ジアミン(複数可)を、鎖延長剤(複数可)として使用した。これらのジアミンは、希釈有機溶液中でプレポリマーと反応して、線形構造及び狭い分子量分泌を有する十分に定義されたポリウレタン尿素を得る。
【0300】
代表例として、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ポリエチレンオキシドジオール、ポリカーボネートジオール、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(Bis-MPA),及びスルホベタインプレポリマーを、窒素注入管及び機械的撹拌器を取り付けた乾燥200mL反応瓶に室温で付加することによって、プレポリマーを調製した。反応液を窒素下で30分間、機械的に撹拌しながら(200rpm)、全ての反応物質が溶解するまで65℃に加熱した。400ppmの触媒を反応液に付加し、これを65℃で1時間保持した。反応温度を85℃に上昇させて、反応混合液中に泡が観察されなくなるまで3時間保持した。反応混合液をさらに2時間、100℃で撹拌してプレポリマーの形成を完了させた。粘性プレポリマーを50℃に冷却し、酢酸エチルに溶解して透明な溶液を形成した。
【0301】
鎖延長ステップの場合、イソフォロンジアミンを鎖延長剤として使用し、機械的撹拌器を備えた乾燥700mL反応瓶に付加し、酢酸エチル/イソプロパノール溶媒混合物で希釈した。ポリウレタンプレポリマー溶液を、激しく撹拌しながら室温で鎖延長剤溶液に滴下添加した。鎖延長剤溶液の付加中に、ある特定の量の溶媒混合物(酢酸エチル/イソプロパノール)を反応混合液に付加して、反応混合液を好適な粘度で維持した。全てのプレポリマー溶液を反応混合液に付加した後、反応液を室温でさらに5時間撹拌し続けて鎖延長を完了させた。そのようにして形成されたポリマーを、窒素流下、50℃のオーブン内で乾燥させて、溶媒を除去し、酵素及び任意に架橋剤と共に、水媒介性ポリウレタン分散液に差異溶解または分散させた。酵素層フィルムを流延し、50℃でさらなる特徴付けのために乾燥させた。
【0302】
酵素活性を測定する活性酵素浸出アッセイを使用して、フィルムから浸出する活性酵素の量を決定した。フィルムを溶液に浸漬し、酵素活性について、特定の時点での浸出液のアリコートを測定する。酵素活性は、過剰グルコースの存在下で生成された過酸化水素の割合によって決定される。ペルオキシダーゼと併せた反応染料を、過酸化水素によって着色化合物に定量的に変換し、分光法的にモニタリングする。比色変化の割合は、試料の活性に関連し、これは活性酵素の負荷を反映する。50℃のコンベクションオーブン内で一晩乾燥させた200μm厚のフィルム上で実験を行う。
【0303】
図4は、対照フィルム(P3)及びP3において使用されるものと同じであるが、30重量%のベタイン含有ポリマーを酵素固定化ポリマー添加剤として含むポリマー結合剤から調製されたフィルムから浸出した酵素の%を、ベースラインから差し引いて示す。結果は、ベタイン含有ポリマーによる有効なGOX酵素固定化を示す。
【0304】
感度、ベースライン信号、酸素感度、線形性、及びアセトアミノフェン遮断を含むcalcheck測定基準でセンサを評価した。図5は、P3において使用されるものと同じポリマー結合剤で形成されるが、30重量%のベタイン含有ポリマーを酵素固定化ポリマー添加剤として含む酵素層を有するセンサについて、ある特定のセンサ測定基準(例えば、MARD及びグルコース傾斜)を示す。様々な測定基準下でのそれらの性能は、同等である。このcal-check試験において、以下の特徴を測定した。
i.グルコース傾斜(pA/mg/dL)-漸増するグルコース濃度の緩衝溶液中に配置された場合のセンサの電気応答の通常最小二乗線形回帰分析。グルコース感度とも称される。
ii.ベースライン同等(mg/dL)-非グルコース関連信号のmg/dL同等
iii.MARD(%)-平均絶体相対差異、理想線から離れた変化の尺度
iv.低酸素応答-大気条件下で得られる信号と比較して、低減した酸素条件下での電気応答の変化率として定義される(すなわち、0.25±0.05mg O/L)。酸素性能とも称される。
v.アセトアミノフェンバイアス-2mg/dL濃度のアセトアミノフェンからのmg/dL同等信号グルコース同等とも称される。
【表1】
【0305】
実施例2:酵素層ポリマーの合成及びその特徴付け
水性溶液中のベタイン含有ポリウレタン尿素ポリマーを、水中の2ステップ重縮合反応を介して合成した。第1のステップにおいて、両方の鎖にイソシアネート末端基を有する均質ポリウレタンプレポリマーを調製した。第2のステップにおいて、小分子ジアミン(複数可)を、鎖延長剤(複数可)として使用した。これらのジアミンは、希釈水性溶液中でプレポリマーと反応して、水媒介性ポリウレタン尿素溶液を得る。
【0306】
代表例として、ポリエーテルジオール、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を、窒素注入管及び機械的撹拌器を取り付けた乾燥200mL反応瓶に室温で付加することによって、プレポリマーを調製した。反応混合液を窒素下で30分間、機械的に撹拌しながら(200rpm)、全ての反応物質が溶解し、透明な液体を形成するまで90℃に加熱した。反応液を80℃に冷まし、カルボキシベタインジオールを付加し、80℃で1時間撹拌した。反応混合液を65℃に冷却し、次いでイソフォロンジイソシアネート(IPDI)を付加した。400ppmの触媒を反応液に付加し、反応液を、窒素下、85℃で4時間、機械的に撹拌しながら保持した。反応液をトリメチルアミンで中和し、次いで水に滴下添加してプレポリマー水性エマルジョンを形成した。
【0307】
鎖延長ステップの場合、エチレンジアミンを鎖延長剤として使用し、機械的撹拌器を備えた700mLの反応瓶に付加し、水で希釈した。ポリウレタンプレポリマー水性エマルジョンを、激しく撹拌しながら室温で鎖延長剤溶液に滴下添加した。全てのプレポリマー溶液を反応混合液に付加した後、反応液を室温でさらに5時間撹拌し続けて鎖延長を完了させた。
【0308】
実施例1に詳述されるものと異なるアッセイにおいて、酵素層フィルムからの総酵素浸出は、2つの別個の試験を使用して決定された。図4は、銅IIイオンの銅Iへのペプチド結合還元によって総タンパク質含有量を決定し、ビシンコニン酸と複合する銅Iの関連する色変化を伴う、ビシンコニン酸試験を使用する。この色変化は、UV分光法を使用し、562nmでの吸光測定を介して測定される。
【0309】
総溶出タンパク質もまた、ゲル電気泳動法によって測定し、続いて図6におけるタンパク質バンド定量化を行った。図6は、本実施例に開示されるように、標準製剤(対照、P3)、小分子ベタイン添加剤(Ralufon)の付加を伴う標準製剤から調製されたフィルム試料、及びベタインが構築ブロックとしてポリマーに組み込まれた水媒介性ポリウレタン分散から調製されたフィルムからの酵素浸出の比較を示す。室温で30分以内に、200μm厚の酵素製剤対照(P3)の試料は、水媒介性ポリウレタン分散ベタインフィルムよりはるかに多くの(2倍の程度)酵素を浸出し、酵素がフィルム内に固定化されることを示す。さらに、等量(3重量%)の小分子スルホベタインRalufonの、P3対照製剤への付加は、酵素保持を改善することができなかった。試験を24時間継続したところ、水媒介性ポリウレタン分散フィルムは、酵素を有効に保持し続ける。
【0310】
酵素層溶液から作製されたフィルムの水吸着を、厚さ25~50μmのフィルム上で水中、室温で行った。図7は、本実施例で調製されるようなベタイン含有ポリマー、WB-7及び標準(P3)酵素層フィルムの両方が、最初の5分以内に取り込む水の大部分を吸収することを示す。しかしながら、対照フィルムは、ほとんどが即時に大量の親水性分子を浸出し始め、24時間後に10重量%の水を喪失する。ベタインが内蔵されたベタイン含有ポリウレタン分散液から調製されたフィルムは、経時的に安定した水和状態を有し、より親水性であり、対照酵素製剤フィルムより多くの水を吸収する。
【0311】
酵素層を含有するハーフセンサ(抵抗層を除く全てのコンポーネントを有するセンサ)を、高熱及び湿度処理(70℃及び95%湿度)に供した。次いで、処理後に標準抵抗層を適用して、抵抗層に対する処理の効果を避け、感度を測定した(図8)。データは、酵素層においてベタイン含有ポリマーを使用した場合、より高い感度が維持されたことを示す。
【0312】
線形性も決定し、図9に示されるように、湿度処理後、対照(P3)酵素センサは、骨格にベタイン含有ポリマーを有するセンサと比較して、より不良な線形性を有していた。
【0313】
酵素層を含有するセンサWB-9及びWB-14を調製した。標準酵素層を有する対照センサ(P3)も使用した。グルコースの有り無しで加熱した干渉溶液に浸漬した後、膜コーティングされたセンサを、センサ固定具からゴムパッドを有するクランプ固定具に移した。シリンジ針を使用して、シリコーン管を膜コーティングされたセンサの後端に移した。シリコーン管を、シリンジ針上に置き、センサを針開口内部に挿入し(センサ上の膜コーティングされた領域を保護するため)、次いでシリコーン管を針の上で摺動してセンサの後端に到達させた。シリコーン管は、センサ上の所定の位置でしっかり保持されるのに十分小さい直径を有する。試験される全てのセンサに対してこれを繰り返した。センサがシリコーン管に挿入されたクランプを、同じ浸漬緩衝液に同温で7分間浸漬した。センサ浸漬器を使用して、対照P3及びカルボキシベタイン水媒介性ポリマーセンサWB-9及びWB-14を、固定した引抜速度で同時に引き、センサの先端及び切削領域をシリコーン管に通す。この力及び速度運動は、良好な層接着を有しないセンサ上の膜コーティングの折り畳みに関与する。引抜試験後にセンサを光学顕微鏡下で調べて、明らかな膜剥離を特定した。接着引抜試験に合格したセンサの割合は、試験に不合格であった(剥離を示した)センサの数を、試験したセンサの総数で割り、100を掛けることによって決定した。結果を図12及び図13に示す。両方の場合において、水媒介性ポリマーWB-9及びWB-14は、標準酵素層より優れた性能を示した。
【0314】
好ましい実施形態の態様と併せて使用するのに好適な方法及びデバイスは、米国特許第4,757,022号、米国特許第4,994,167号、米国特許第6,001,067号、米国特許第6,558,321号、米国特許第6,702,857号、米国特許第6,741,877号、米国特許第6,862,465号、米国特許第6,931,327号、米国特許第7,074,307号、米国特許第7,081,195号、米国特許第7,108,778号、米国特許第7,110,803号、米国特許第7,134,999号、米国特許第7,136,689号、米国特許第7,192,450号、米国特許第7,226,978号、米国特許第7,276,029号、米国特許第7,310,544号、米国特許第7,364,592号、米国特許第7,366,556号、米国特許第7,379,765号、米国特許第7,424,318号、米国特許第7,460,898号、米国特許第7,467,003号、米国特許第7,471,972号、米国特許第7,494,465号、米国特許第7,497,827号、米国特許第7,519,408号、米国特許第7,583,990号、米国特許第7,591,801号、米国特許第7,599,726号、米国特許第7,613,491号、米国特許第7,615,007号、米国特許第7,632,228号、米国特許第7,637,868号、米国特許第7,640,048号、米国特許第7,651,596号、米国特許第7,654,956号、米国特許第7,657,297号、米国特許第7,711,402号、米国特許第7,713,574号、米国特許第7,715,893号、米国特許第7,761,130号、米国特許第7,771,352号、米国特許第7,774,145号、米国特許第7,775,975号、米国特許第7,778,680号、米国特許第7,783,333号、米国特許第7,792,562号、米国特許第7,797,028号、米国特許第7,826,981号、米国特許第7,828,728号、米国特許第7,831,287号、米国特許第7,835,777号、米国特許第7,857,760号、米国特許第7,860,545号、米国特許第7,875,293号、米国特許第7,881,763号、米国特許第7,885,697号、米国特許第7,896,809号、米国特許第7,899,511号、米国特許第7,901,354号、米国特許第7,905,833号、米国特許第7,914,450号、米国特許第7,917,186号、米国特許第7,920,906号、米国特許第7,925,321号、米国特許第7,927,274号、米国特許第7,933,639号、米国特許第7,935,057号、米国特許第7,946,984号、米国特許第7,949,381号、米国特許第7,955,261号、米国特許第7,959,569号、米国特許第7,970,448号、米国特許第7,974,672号、米国特許第7,976,492号、米国特許第7,979,104号、米国特許第7,986,986号、米国特許第7,998,071号、米国特許第8,000,901号、米国特許第8,005,524号、米国特許第8,005,525号、米国特許第8,010,174号、米国特許第8,027,708号、米国特許第8,050,731号、米国特許第8,052,601号、米国特許第8,053,018号、米国特許第8,060,173号、米国特許第8,060,174号、米国特許第8,064,977号、米国特許第8,073,519号、米国特許第8,073,520号、米国特許第8,118,877号、米国特許第8,128,562号、米国特許第8,133,178号、米国特許第8,150,488号、米国特許第8,155,723号、米国特許第8,160,669号、米国特許第8,160,671号、米国特許第8,167,801号、米国特許第8,170,803号、米国特許第8,195,265号、米国特許第8,206,297号、米国特許第8,216,139号、米国特許第8,229,534号、米国特許第8,229,535号、米国特許第8,229,536号、米国特許第8,231,531号、米国特許第8,233,958号、米国特許第8,233,959号、米国特許第8,249,684号、米国特許第8,251,906号、米国特許第8,255,030号、米国特許第8,255,032号、米国特許第8,255,033号、米国特許第8,257,259号、米国特許第8,260,393号、米国特許第8,265,725号、米国特許第8,275,437号、米国特許第8,275,438号、米国特許第8,277,713号、米国特許第8,280,475号、米国特許第8,282,549号、米国特許第8,282,550号、米国特許第8,285,354号、米国特許第8,287,453号、米国特許第8,290,559号、米国特許第8,290,560号、米国特許第8,290,561号、米国特許第8,290,562号、米国特許第8,292,810号、米国特許第8,298,142号、米国特許第8,311,749号、米国特許第8,313,434号、米国特許第8,321,149号、米国特許第8,332,008号、米国特許第8,346,338号、米国特許第8,364,229号、米国特許第8,369,919号、米国特許第8,374,667号、米国特許第8,386,004号、及び米国特許第8,394,021号に開示されている。
【0315】
好ましい実施形態の態様と併せて使用するのに好適な方法及びデバイスは、米国特許公開第2003-0032874-A1号、米国特許公開第2005-0176136-A1号、米国特許公開第2005-0182451-A1号、米国特許公開第2005-0245799-A1号、米国特許公開第2005-0033132-A1号、米国特許公開第2005-0051427-A1号、米国特許公開第2005-0056552-A1号、米国特許公開第2005-0090607-A1号、米国特許公開第2006-0015020-A1号、米国特許公開第2006-0016700-A1号、米国特許公開第2006-0020188-A1号、米国特許公開第2006-0020190-A1号、米国特許公開第2006-0020191-A1号、米国特許公開第2006-0020192-A1号、米国特許公開第2006-0036140-A1号、米国特許公開第2006-0036143-A1号、米国特許公開第2006-0040402-A1号、米国特許公開第2006-0068208-A1号、米国特許公開第2006-0142651-A1号、米国特許公開第2006-0155180-A1号、米国特許公開第2006-0198864-A1号、米国特許公開第2006-0200020-A1号、米国特許公開第2006-0200022-A1号、米国特許公開第2006-0200970-A1号、米国特許公開第2006-0204536-A1号、米国特許公開第2006-0224108-A1号、米国特許公開第2006-0235285-A1号、米国特許公開第2006-0249381-A1号、米国特許公開第2006-0252027-A1号、米国特許公開第2006-0253012-A1号、米国特許公開第2006-0257995-A1号、米国特許公開第2006-0258761-A1号、米国特許公開第2006-0263763-A1号、米国特許公開第2006-0270922-A1号、米国特許公開第2006-0270923-A1号、米国特許公開第2007-0027370-A1号、米国特許公開第2007-0032706-A1号、米国特許公開第2007-0032718-A1号、米国特許公開第2007-0045902-A1号、米国特許公開第2007-0059196-A1号、米国特許公開第2007-0066873-A1号、米国特許公開第2007-0173709-A1号、米国特許公開第2007-0173710-A1号、米国特許公開第2007-0208245-A1号、米国特許公開第2007-0208246-A1号、米国特許公開第2007-0232879-A1号、米国特許公開第2008-0045824-A1号、米国特許公開第2008-0083617-A1号、米国特許公開第2008-0086044-A1号、米国特許公開第2008-0108942-A1号、米国特許公開第2008-0119703-A1号、米国特許公開第2008-0119704-A1号、米国特許公開第2008-0119706-A1号、米国特許公開第2008-0183061-A1号、米国特許公開第2008-0183399-A1号、米国特許公開第2008-0188731-A1号、米国特許公開第2008-0189051-A1号、米国特許公開第2008-0194938-A1号、米国特許公開第2008-0197024-A1号、米国特許公開第2008-0200788-A1号、米国特許公開第2008-0200789-A1号、米国特許公開第2008-0200791-A1号、米国特許公開第2008-0214915-A1号、米国特許公開第2008-0228054-A1号、米国特許公開第2008-0242961-A1号、米国特許公開第2008-0262469-A1号、米国特許公開第2008-0275313-A1号、米国特許公開第2008-0287765-A1号、米国特許公開第2008-0306368-A1号、米国特許公開第2008-0306434-A1号、米国特許公開第2008-0306435-A1号、米国特許公開第2008-0306444-A1号、米国特許公開第2009-0018424-A1号、米国特許公開第2009-0030294-A1号、米国特許公開第2009-0036758-A1号、米国特許公開第2009-0036763-A1号、米国特許公開第2009-0043181-A1号、米国特許公開第2009-0043182-A1号、米国特許公開第2009-0043525-A1号、米国特許公開第2009-0045055-A1号、米国特許公開第2009-0062633-A1号、米国特許公開第2009-0062635-A1号、米国特許公開第2009-0076360-A1号、米国特許公開第2009-0099436-A1号、米国特許公開第2009-0124877-A1号、米国特許公開第2009-0124879-A1号、米国特許公開第2009-0124964-A1号、米国特許公開第2009-0131769-A1号、米国特許公開第2009-0131777-A1号、米国特許公開第2009-0137886-A1号、米国特許公開第2009-0137887-A1号、米国特許公開第2009-0143659-A1号、米国特許公開第2009-0143660-A1号、米国特許公開第2009-0156919-A1号、米国特許公開第2009-0163790-A1号、米国特許公開第2009-0178459-A1号、米国特許公開第2009-0192366-A1号、米国特許公開第2009-0192380-A1号、米国特許公開第2009-0192722-A1号、米国特許公開第2009-0192724-A1号、米国特許公開第2009-0192751-A1号、米国特許公開第2009-0203981-A1号、米国特許公開第2009-0216103-A1号、米国特許公開第2009-0240120-A1号、米国特許公開第2009-0240193-A1号、米国特許公開第2009-0242399-A1号、米国特許公開第2009-0242425-A1号、米国特許公開第2009-0247855-A1号、米国特許公開第2009-0247856-A1号、米国特許公開第2009-0287074-A1号、米国特許公開第2009-0299155-A1号、米国特許公開第2009-0299156-A1号、米国特許公開第2009-0299162-A1号、米国特許公開第2010-0010331-A1号、米国特許公開第2010-0010332-A1号、米国特許公開第2010-0016687-A1号、米国特許公開第2010-0016698-A1号、米国特許公開第2010-0030484-A1号、米国特許公開第2010-0331644A1号、米国特許公開第2010-0036215-A1号、米国特許公開第2010-0036225-A1号、米国特許公開第2010-0041971-A1号、米国特許公開第2010-0045465-A1号、米国特許公開第2010-0049024-A1号、米国特許公開第2010-0076283-A1号、米国特許公開第2010-0081908-A1号、米国特許公開第2010-0081910-A1号、米国特許公開第2010-0087724-A1号、米国特許公開第2010-0096259-A1号、米国特許公開第2010-0121169-A1号、米国特許公開第2010-0161269-A1号、米国特許公開第2010-0168540-A1号、米国特許公開第2010-0168541-A1号、米国特許公開第2010-0168542-A1号、米国特許公開第2010-0168543-A1号、米国特許公開第2010-0168544-A1号、米国特許公開第2010-0168545-A1号、米国特許公開第2010-0168546-A1号、米国特許公開第2010-0168657-A1号、米国特許公開第2010-0174157-A1号、米国特許公開第2010-0174158-A1号、米国特許公開第2010-0174163-A1号、米国特許公開第2010-0174164-A1号、米国特許公開第2010-0174165-A1号、米国特許公開第2010-0174166-A1号、米国特許公開第2010-0174167-A1号、米国特許公開第2010-0179401-A1号、米国特許公開第2010-0179402-A1号、米国特許公開第2010-0179404-A1号、米国特許公開第2010-0179408-A1号、米国特許公開第2010-0179409-A1号、米国特許公開第2010-0185065-A1号、米国特許公開第2010-0185069-A1号、米国特許公開第2010-0185070-A1号、米国特許公開第2010-0185071-A1号、米国特許公開第2010-0185075-A1号、米国特許公開第2010-0191082-A1号、米国特許公開第2010-0198035-A1号、米国特許公開第2010-0198036-A1号、米国特許公開第2010-0212583-A1号、米国特許公開第2010-0217557-A1号、米国特許公開第2010-0223013-A1号、米国特許公開第2010-0223022-A1号、米国特許公開第2010-0223023-A1号、米国特許公開第2010-0228109-A1号、米国特許公開第2010-0228497-A1号、米国特許公開第2010-0240975-A1号、米国特許公開第2010-0240976 C1号、米国特許公開第2010-0261987-A1号、米国特許公開第2010-0274107-A1号、米国特許公開第2010-0280341-A1号、米国特許公開第2010-0286496-A1号、米国特許公開第2010-0298684-A1号、米国特許公開第2010-0324403-A1号、米国特許公開第2010-0331656-A1号、米国特許公開第2010-0331657-A1号、米国特許公開第2011-0004085-A1号、米国特許公開第2011-0009727-A1号、米国特許公開第2011-0024043-A1号、米国特許公開第2011-0024307-A1号、米国特許公開第2011-0027127-A1号、米国特許公開第2011-0027453-A1号、米国特許公開第2011-0027458-A1号、米国特許公開第2011-0028815-A1号、米国特許公開第2011-0028816-A1号、米国特許公開第2011-0046467-A1号、米国特許公開第2011-0077490-A1号、米国特許公開第2011-0118579-A1号、米国特許公開第2011-0124992-A1号、米国特許公開第2011-0125410-A1号、米国特許公開第2011-0130970-A1号、米国特許公開第2011-0130971-A1号、米国特許公開第2011-0130998-A1号、米国特許公開第2011-0144465-A1号、米国特許公開第2011-0178378-A1号、米国特許公開第2011-0190614-A1号、米国特許公開第2011-0201910-A1号、米国特許公開第2011-0201911-A1号、米国特許公開第2011-0218414-A1号、米国特許公開第2011-0231140-A1号、米国特許公開第2011-0231141-A1号、米国特許公開第2011-0231142-A1号、米国特許公開第2011-0253533-A1号、米国特許公開第2011-0263958-A1号、米国特許公開第2011-0270062-A1号、米国特許公開第2011-0270158-A1号、米国特許公開第2011-0275919-A1号、米国特許公開第2011-0290645-A1号、米国特許公開第2011-0313543-A1号、米国特許公開第2011-0320130-A1号、米国特許公開第2012-0035445-A1号、米国特許公開第2012-0040101-A1号
、米国特許公開第2012-0046534-A1号、米国特許公開第2012-0078071-A1号、米国特許公開第2012-0108934-A1号、米国特許公開第2012-0130214-A1号、米国特許公開第2012-0172691-A1号、米国特許公開第2012-0179014-A1号、米国特許公開第2012-0186581-A1号、米国特許公開第2012-0190953-A1号、米国特許公開第2012-0191063-A1号、米国特許公開第2012-0203467-A1号、米国特許公開第2012-0209098-A1号、米国特許公開第2012-0215086-A1号、米国特許公開第2012-0215087-A1号、米国特許公開第2012-0215201-A1号、米国特許公開第2012-0215461-A1号、米国特許公開第2012-0215462-A1号、米国特許公開第2012-0215496-A1号、米国特許公開第2012-0220979-A1号、米国特許公開第2012-0226121-A1号、米国特許公開第2012-0228134-A1号、米国特許公開第2012-0238852-A1号、米国特許公開第2012-0245448-A1号、米国特許公開第2012-0245855-A1号、米国特許公開第2012-0255875-A1号、米国特許公開第2012-0258748-A1号、米国特許公開第2012-0259191-A1号、米国特許公開第2012-0260323-A1号、米国特許公開第2012-0262298-A1号、米国特許公開第2012-0265035-A1号、米国特許公開第2012-0265036-A1号、米国特許公開第2012-0265037-A1号、米国特許公開第2012-0277562-A1号、米国特許公開第2012-0277566-A1号、米国特許公開第2012-0283541-A1号、米国特許公開第2012-0283543-A1号、米国特許公開第2012-0296311-A1号、米国特許公開第2012-0302854-A1号、米国特許公開第2012-0302855-A1号、米国特許公開第2012-0323100-A1号、米国特許公開第2013-0012798-A1号、米国特許公開第2013-0030273-A1号、米国特許公開第2013-0035575-A1号、米国特許公開第2013-0035865-A1号、米国特許公開第2013-0035871-A1号、米国特許公開第2013-0053665-A1号、米国特許公開第2013-0053666-A1号、米国特許公開第2013-0060112-A1号、米国特許公開第2013-0078912-A1号、米国特許公開第2013-0076531-A1号、米国特許公開第2013-0076532-A1号、米国特許公開第2013-0131478-A1号、米国特許公開第2013-150692-A1号、米国特許公開第2014-0094671-A1号、米国特許公開第2014-0005508-A1号、米国特許公開第2014-0118166-A1号、米国特許公開第2014-0118138-A1号、米国特許公開第2014-0188402-A1号、米国特許公開第2014-0182350-A1号、及び米国特許公開第2014-0275896-A1号に開示されている。
【0316】
好ましい実施形態の態様と併せて使用するのに好適な方法及びデバイスは、1999年11月22日に出願された「DEVICE AND METHOD FOR DETERMINING ANALYTE LEVELS」という表題の米国出願第09/447,227号、及び2012年5月1日に出願された「DUAL ELECTRODE SYSTEM FOR A CONTINUOUS ANALYTE SENSOR」という表題の米国出願第13/461,625号に開示されている。
【0317】
説明及び図示を容易にするために、いくつかの例において、詳細な説明は、連続グルコースモニタリング環境に関して例示的なシステム及び方法を記載するが、本発明の範囲は、その特定の環境に限定されないこと、及び当業者であれば、本明細書に記載されるシステム及び方法が様々な形態で実施され得ることを理解するであろうことを理解すべきである。したがって、本明細書に開示される任意の構造及び/または機能的詳細は、システム及び方法を限定するものとして解釈されてはならないが、むしろシステム及び方法を実装する1つ以上の方法を当業者に教示するために、他の設定において有利であり得る、代表的な実施形態及び/または配置の属性として提供される。
【0318】
例えば、限定されないが、記載されるモニタリングシステム及び方法は、宿主及び/または別の個体の、またはそれに関する1つ以上の分析物(例えば、グルコース、乳酸、カリウム、pH、コレステロール、イソプレン、及び/もしくはヘモグロビン)ならびに/または他の血液もしくは体液成分の濃度を測定するセンサを含み得る。
【0319】
例として、限定なしに、本明細書に記載されるモニタリングシステム及び方法の実施形態には、フィンガースティック血液サンプリング、血液分析物試験ストリップ、非侵襲性センサ、装着型モニター(例えば、スマートブレスレット、スマートウォッチ、スマートリング、スマートネックレスもしくはペンダント、ワークアウトモニター、フィットネスモニター、ヘルス及び/または医療用モニター、クリップオンモニターなど)、接着センサ、スマートテキスタイル及び/または衣服組み込みセンサ、靴挿入物及び/またはセンサを含むインソール、経皮(すなわち、transdermal、transcutaneous)センサ、ならびに/あるいは嚥下、吸入、または埋め込み可能なセンサが含まれ得る。
【0320】
いくつかの実施形態において、制限なしに、モニタリングシステム及び方法は、本明細書に記載されるセンサの代わりに、またはそれに加えて、加速計、ジャイロスコープ、磁力計、及び/またはバロメータを含む慣性測定ユニット;運動、高度、体位、及び/または場所センサ;バイオメトリックセンサ;例えば光学心拍モニター、フォトプレチスモグラム(PPG)/パルスオキシメータ、蛍光モニター、及びカメラを含む光学センサ;装着型電極;心電図(EKGまたはECG)、脳波測定(EEG)、及び/または筋電図(EMG)センサ;化学センサ;例えば伸長、移動、圧力、重量、または衝撃を測定するための可撓性センサ;宿主及び/または別の個体の、またはそれに関する情報を測定するためのガルバノメトリックセンサ、容量センサ、電磁場センサ、温度/熱センサ、マイクロフォン、振動センサ、超音波センサ、圧電/ピエゾ抵抗性センサ、及び/またはトランスデューサなどの他のセンサを含み得る。
【0321】
本開示は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されてきたが、そのような図示及び説明は、例証的または例示的であり、制限的でないと考慮される。本開示は、開示される実施形態に限定されない。開示される実施形態に対する変型は、請求される開示を実施する際に、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から当業者によって理解され、実行され得る。
【0322】
本明細書に列挙される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる出版物及び特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する程度まで、本明細書は、任意のそのような矛盾する材料に取って代わり、かつ/または優先するよう意図する。
【0323】
特に定義しない限り、全ての用語(専門用語及び科学用語を含む)は、その通常の、かつ慣例的な意味が当業者に示されるものであり、本明細書でそのように明示的に定義されない限り、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されるものではない。本開示のある特定の特徴または態様を記載するときの特定の用語の使用が、その用語が関連する本開示の特徴または態様の任意の特定の特性を含むように制限されると、その用語が本明細書で再定義されていることを暗示すると解釈されるべきではないことに留意されるべきである。特に添付の特許請求の範囲において、本出願で使用される用語及び句ならびにその変化形は、特に明示されない限り、限定的とは対照的に非限定的と解釈されるべきである。上記の例として、「含むこと」という用語は、「制限なく含むこと」、「挙げられるが、これらに限定されないこと」などを意味すると解釈されるべきであり、「備えること」という用語は、本明細書で使用される場合、「含むこと」、「含有すること」、または「特徴とすること」と同義的であり、包括的または非限定的であり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外せず、「有すること」という用語は、「少なくとも有すること」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「挙げられるが、これらに限定されない」と解釈されるべきであり、「実施例」という用語は、考察における事項の包括的または限定的なリストではなく、その例示的な例を提供するために使用され、「既知の」、「通常の」、「標準的な」、及び同様の意味の用語などの形容詞は、記載される事項を所与の期間に、または所与の時点において利用可能な事項に制限すると解釈されるべきではなく、むしろ、現在または今後いかなるときでも利用可能であり得るか、または既知であり得る既知の、通常の、または標準的な技術を包含すると解釈されるべきであり、「好ましくは」、「好ましい」、「所望の」、または「望ましい」、及び同様の意味の用語などの用語の使用は、ある特定の特徴が本発明の構造または機能にとって重大、本質的、または重要でさえあることを暗示すると理解されるべきではなく、むしろ、本発明の特定の実施形態で利用されても、またはされなくてもよい代替または追加の特徴を強調することを単に意図するべきである。同様に、「及び」という接続詞で連結された事項の群は、それらの事項の1つ1つがその群内に存在することを必要とすると解釈されるべきではなく、むしろ、特に明記しない限り、「及び/または」と解釈されるべきである。同様に、「または」という接続詞で連結された事項の群は、その群間の相互排他性を必要とすると解釈されるべきではなく、むしろ、特に明記しない限り、「及び/または」と解釈されるべきである。
【0324】
値の範囲が提供される場合、上限及び下限ならびにその範囲の上限及び下限の間の各介在値が実施形態内に包含されることが理解される。
【0325】
本明細書の実質的に任意の複数形及び/または単数形の用語に関して、当業者は、文脈及び/または用途に適切であるように、複数形から単数形に、及び/または単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置換は、明確にするために本明細書において明示的に記載され得る。不定冠詞「a」または「an」は、複数形を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、特許請求の範囲に記述されるいくつかの事項の機能を達成し得る。ある特定の基準が相互に異なる独立した請求項に記述されるという単なる事実は、これらの基準の組み合わせが利益を得るために使用され得ないことを示さない。特許請求の範囲の引用符号は、範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0326】
導入された請求項の記述において特定の数が意図される場合、そのような意図が、その請求項中に明確に記述され、かつそのような記述がない場合は、そのような意図が存在しないことが、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、理解を補助するために、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記述を導入するために、導入句「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」の使用を含み得る。しかしながら、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つ以上の」または「少なくとも1つの」及び「a」または「an」などの不定冠詞を含むときでさえ、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記述の導入が、そのような導入された請求項の記述を包含する特定の請求項を、そのような記述を1つのみ含む実施形態に制限することを暗示すると解釈されるべきではなく(例えば、「a」及び/または「an」は、典型的には、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきであり)、それは、請求項の記述を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。加えて、導入された請求項の記述の特定の数が明示的に記述される場合でさえ、当業者は、そのような記述が、典型的には、少なくともその記述された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語句なしの「2つの記述」の単なる記述は、典型的には、少なくとも2つの記述、または2つ以上の記述を意味する)。さらに、「A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ」に類似の慣習的表現が使用される場合、概して、そのような構造は、当業者がその慣習的表現を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、A及びB、A及びC、B及びC、ならびに/またはA、B、及びCなどを有するシステムを含むがこれらに限定されない)。「A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ」に類似の慣習的表現が使用される場合、概して、そのような構造は、当業者がその慣習的表現を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、A及びB、A及びC、B及びC、ならびに/またはA、B、及びCなどを有するシステムを含むがこれらに限定されない)。2つ以上の代替用語を示す実質的にいかなる離接語及び/または句も、説明、特許請求の範囲、または図面におけるかどうかにかかわらず、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、または両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0327】
本明細書で使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数が、いかなる場合も、「約」という用語によって修正されると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、取得されることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限でも、かつ本願に対する優先権を主張する任意の出願における任意の請求項の範囲の同等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有意な桁の数及び通常の四捨五入法を考慮して解釈されるべきである。
【0328】
さらに、上記が明確さ及び理解の目的で例示及び実施例としてある程度詳細に記載されてきたが、ある特定の変更及び修正が実施され得ることが、当業者には明らかである。したがって、説明及び実施例は、本発明の範囲を本明細書に記載される特定の実施形態及び実施例に制限すると解釈されるべきではなく、むしろ、本発明の真の範囲及び趣旨に入る全ての修正物及び代替物も包含すると解釈されるべきである。
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