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7404337酸化的脱水素触媒及び湿式ボールミリングによるその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】酸化的脱水素触媒及び湿式ボールミリングによるその調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/057 20060101AFI20231218BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231218BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 5/48 20060101ALI20231218BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
B01J27/057 Z
B01J35/10 301G
B01J37/08
C07C11/04
C07C5/48
C07B61/00 300
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021505836
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2019056574
(87)【国際公開番号】W WO2020026191
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】62/714,274
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513269848
【氏名又は名称】ノヴァ ケミカルズ(アンテルナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シマンゼンコフ、ワシリー
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、シャオリャン
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、マリー
(72)【発明者】
【氏名】サリバン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンヒ
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィット、ペリー
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017000861(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の実験式:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒であって、
XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし、
27±0.2のピークの強度と22±0.2のピークの強度の比が、0.55:1から0.65:1であ
酸化的脱水素触媒。
【請求項2】
27±0.2のピークの強度と22±0.2のピークの強度の比が、0.60:1である、請求項1に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項3】
28.3±0.1のピークの強度と27±0.2のピークの強度の比が、0.50:1から0.80:1であ、請求項1又は2に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項4】
28.3±0.1のピークの強度と27±0.2のピークの強度の比が、0.60:1から0.70:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項5】
28.3±0.1のピークの強度と27±0.2のピークの強度の比が、0.65:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項6】
前記触媒が、0.01cm/g~0.10cmgの細孔容積を有し、
ここで、細孔容積は、ASTM D3663を用いて、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積分析によって測定される、
請求項1~のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項7】
前記触媒が、0.06cm /g~0.08cm /gの細孔容積を有し、
ここで、細孔容積は、ASTM D3663を用いて、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積分析によって測定される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項8】
前記触媒が、0.07cm /gの細孔容積を有し、
ここで、細孔容積は、ASTM D3663を用いて、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積分析によって測定される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項9】
前記触媒が、15m/g~65m/gの表面積を有し、
ここで、表面積は、ASTM D3663を用いてBETによって決定され、これには、-196℃の液体窒素温度での窒素の吸着-脱着、及び吸着前に200℃で1時間の脱気が含まれる、請求項1~のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項10】
前記触媒が、35m /g~45m /gの表面積を有し、
ここで、表面積は、ASTM D3663を用いてBETによって決定され、これには、-196℃の液体窒素温度での窒素の吸着-脱着、及び吸着前に200℃で1時間の脱気が含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項11】
前記触媒が、40m /gの表面積を有し、
ここで、表面積は、ASTM D3663を用いてBETによって決定され、これには、-196℃の液体窒素温度での窒素の吸着-脱着、及び吸着前に200℃で1時間の脱気が含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項12】
前記触媒が、透過型電子顕微鏡によって決定される多方向結晶相を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項13】
前記触媒が、Nb0.50.5をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒を調製する方法であって、
前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物を提供する工程、並びに
前記混合物を湿式ボールミリングして酸化的脱水素触媒を提供する工程、
を含
前記前処理された酸化的脱水素触媒が、下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する、上記方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって
前記前処理された酸化的脱水素触媒を提供する工程をさらに含み、
記前処理された酸化的脱水素触媒を提供する工程が、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成する工程を含、上記方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記焼成する工程が、
(a)450℃~650℃の温度で、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成すること、又は
(b)600℃の温度で、不活性雰囲気中で前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成すること、
のいずれかを含む、上記方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法であって、
焼成する工程が、
(a)1時間~3時間、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成すること、又
(b)500℃~700℃の温度で1時間~3時間、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成すること、
のいずれかを含む、上記方法。
【請求項18】
前記前処理された酸化的脱水素触媒と比較して、前記触媒の非晶質相を5重量%~15重量%増加させる、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年8月3日に出願された米国仮出願第62/714,274号の出願日の利益を主張する。米国特許出願第62/714,274号の内容は、本出願の一部としてその全体が参照により援用される。
【0002】
本開示は、酸化的脱水素触媒及びその触媒の作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルカンのオレフィンへの転化は、多くの方法で達成することができる。最も広く実施されている方法は、熱分解技術である。この技術では、アルカンを、ミリ秒から数秒のオーダーの非常に短い時間、少なくとも700℃の温度にさらして、水素の損失を促進し、オレフィンに特徴的な1つ以上の不飽和結合の形成を促進する。しかしながら、現在の熱分解プロセスは、そのプロセスを構築して操作するのに費用がかかるだけでなく、吸熱分解反応にかなりの熱が必要なためエネルギーを大量に消費する。さらに、分解炉の運転により大量のCOが発生する。
【0004】
これに代えて、パラフィンの転化は、酸化的脱水素化プロセスを用いて達成することができる。このプロセスでは、1つ以上のアルカンの流れを、酸素又は酸素含有ガスの存在下、約300℃~750℃の温度で、酸化的脱水素触媒を通過させる。水蒸気分解に対する触媒的酸化的脱水素の利点は、より低い反応温度を使用しながら、より高いエタン転化率とより高いエチレン選択率を提供することである。しかしながら、オレフィンは、それが由来するアルカンよりも反応性が高く、望ましくない副生成物へとさらに酸化する可能性があるため、触媒を開発することは困難である。したがって、オレフィンよりもアルカンの酸化に対してより選択的である触媒を使用することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示で提供されるのは、酸化的脱水素触媒である。酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とする。
【0006】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される。
【0007】
いくつかの実施形態では、27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.55:1から0.65:1である。いくつかの実施形態では、27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、約0.60:1である。いくつかの実施形態では、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1である。いくつかの実施形態では、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.60:1から0.70:1である。いくつかの実施形態では、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、約0.65:1である。いくつかの実施形態では、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1.1:1である。いくつかの実施形態では、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.9:1から1:1である。いくつかの実施形態では、28.2±0.1のピークと28.4±0.2のピークのアスペクト比は、約0.95:1である。
【0008】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約0.01cm/g~約0.10cm/gの細孔容積を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約0.06cm/g~約0.08cm/gの細孔容積を有することができる。いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約0.07cm/gの細孔容積を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約15m/g~約65m/gの表面積を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約35m/g~約45m/gの表面積を有することができる。いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約40m/gの表面積を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定される多方向結晶相を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃の35%転化温度を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約355℃~約365℃の35%転化温度を有することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約90%を超えるエチレンへの選択性を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約92%を超えるエチレンへの選択性を有することができる。いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約93.5%を超えるエチレンへの選択性を有する。
【0013】
また、本開示で提供されるのは、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒である:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とする。27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.70:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1:1である。酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃の35%転化温度、及び約90%~約99%のエチレンへの選択性を有する。さらに、酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることによって調製される:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。
【0014】
さらに、本開示で提供されるのは、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒である:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とする。27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.55:1から0.65:1である。28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.60:1から0.70:1である。28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.9:1から1:1である。酸化的脱水素触媒は、約355℃~約365℃の35%転化温度、及び約92%~約99%のエチレンへの選択性を有する。さらに、酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることによって調製される:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。
【0015】
また、本開示で提供されるのは、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒の形成方法である:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。本方法は、前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物を提供することを含む。本方法は、混合物を湿式ボールミリングして酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含む。前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、前処理された酸化的脱水素触媒を提供するために、予備焼成された(pre-calcined)酸化的脱水素触媒を焼成することを含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約450℃~約650℃の温度で、不活性雰囲気中で焼成される。例えば、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約600℃の温度で、不活性雰囲気中で焼成することができる。いくつかの実施形態では、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で焼成される。例えば、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約2時間、不活性雰囲気中で焼成することができる。いくつかの実施形態では、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約500℃~約700℃の温度で約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で焼成される。例えば、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約600℃の温度で約2時間、不活性雰囲気中で焼成することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒と比較して、酸化的脱水素触媒の非晶質相を約5重量%~約15重量%増加させる。例えば、この方法は、酸化的脱水素触媒の非晶質相を約10重量%増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】湿式ボールミリング前の酸化的脱水素触媒(触媒1.1)の(走査型電子顕微鏡)SEM画像である。
図2】湿式ボールミリング前の酸化的脱水素触媒(触媒1.1)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図3】湿式ボールミリング前の酸化的脱水素触媒(触媒1.1)のTEM画像であり、100倍に拡大されている。
図4】湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.2)のTEM画像であり、多方向結晶相及びより小さなサイズのナノ粒子を示す。
図5】湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.2)のTEM画像であり、多方向結晶相を示す。
図6】湿式ボールミリングされ、遠心分離された酸化的脱水素触媒(触媒1.4)のSEM画像である。
図7】ブレードグラインダーによって粉砕された酸化的脱水素触媒(触媒1.6)のTEM画像であり、得られたナノサイズの材料の結晶縞を示す。
図8】ブレードグラインダーによって粉砕された酸化的脱水素触媒(触媒1.6)のTEM画像であり、得られたナノサイズの材料の結晶縞を示す。
図9】ブレードグラインダーによって粉砕された酸化的脱水素触媒(触媒1.6)のTEM画像であり、得られたナノサイズの材料の結晶縞を示す。
図10】酸化的脱水素触媒(触媒1.1)、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.2)、超音波処理された酸化的脱水素触媒(触媒1.5)、ブレードグラインダーによって粉砕された酸化的脱水素触媒(触媒1.6)、及び乾式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.7)のBETオーバーレイである。
図11】酸化的脱水素触媒(触媒1.1)、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.2)、超音波処理された酸化的脱水素触媒(触媒1.5)、ブレード粉砕された酸化的脱水素触媒(触媒1.6)、及び乾式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.7)のXRDパターンのオーバーレイである。
図12】酸化的脱水素触媒(触媒1.1)、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.2)、超音波処理された酸化的脱水素触媒(触媒1.5)、ブレード粉砕された酸化的脱水素触媒(触媒1.6)、及び乾式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.7)のXRDパターンのオーバーレイである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、開示された主題の特定の実施形態を詳細に参照する。その実施形態の例は、添付の図面に一部として示されている。開示された主題は、列挙した請求項に関連して説明されるが、例示された主題は、請求項を開示された主題に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0021】
範囲の形式で表される値は、範囲の限定として明示的に記載された数値を含むだけでなく、その範囲内に含まれるすべての個々の数値又は部分的な範囲を含むように(それぞれの数値と部分的な範囲とが明示的に記載されているかのように)、柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」の範囲は、約0.1%~約5%を含むだけでなく、その指定された範囲内の個々の値(例:1%、2%、3%、4%)と部分的な範囲(例:0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むように解釈されるべきである。「約XからY」という記述は、特に明記されていない限り、「約Xから約Y」と同じ意味である。同様に、「約X、Y、又は約Z」という記述は、特に明記されていない限り、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味である。
【0022】
本明細書では、「a」、「an」、又は「the」という用語は、文脈で明確に指示されていない限り、1つ又は複数を含むために使用される。「又は」という用語は、特に明記されていない限り、非排他的な「又は」を意味するために使用される。「A及びBの少なくとも1つ」という記述は、「A、B、又はA及びB」と同じ意味である。また、本明細書で使用され、他に定義されていない表現又は用語は、説明のみを目的としており、限定するものではないことを理解されたい。セクション見出しの使用は、本明細書の読み取りを支援することを目的としており、限定するものとして解釈されるべきではなく;セクション見出しに関連する情報は、その特定のセクションの内外で生じ得る。本明細書で言及されているすべての刊行物、特許、及び特許文献は、参照により個別に援用されるようにして、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書と参照により援用される文書とを用いる上で、これらの間に不整合が生じる場合、援用される参考文献は、本明細書を用いる上で補足的に用いることが考慮されるべきであり、調整できない不整合については、援用される文書ではなく本明細書の記載を用いる。
【0023】
本明細書に記載の製造方法では、時間的又は操作上の順序が明示的に記載されている場合を除いて、その複数の行為を任意の順序で実行することができる。さらに、特定の複数の行為については、それらが別々に実行されることを請求項の文言が明示的に記載していない限り、同時に実行することができる。例えば、Xを実行するという請求項に記載された行為と、Yを実行するという請求項に記載された行為は、単一の操作内で同時に実行することができ、結果として得られるプロセスは、請求項に記載されたプロセスの文言通りの範囲内に含まれる。
【0024】
本明細書で使用される「約」という用語は、値又は範囲において、ある程度の変動性を考慮に入れることができ、例えば、規定された値又は規定された範囲の限定の10%以内、5%以内、又は1%以内である。
【0025】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は少なくとも約99.999%以上の大部分を指す。
【0026】
本明細書で使用される「室温」という用語は、約15℃~約28℃の温度を指す。
【0027】
本開示で提供されるのは、酸化的脱水素触媒である。酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。さらに、この触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、少なくとも22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。
【0028】
いくつかの実施形態では、混合金属酸化物は、実験式Mo1.00.22-0.49Te0.10-0.17Nb0.14-0.17を有する。いくつかの実施形態では、混合金属酸化物は、実験式Mo1.00.25-0.38Te0.10-0.16Nb0.15-0.19を有する。実験式は、粒子線励起X線(PIXE)分析によって測定することができる。
【0029】
酸化的脱水素触媒は、湿式ボールミリングによって調製することができる。湿式ボールミリングは、材料を粒子に粉砕するために使用することができるメカノケミカル技術である。
【0030】
27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.70:1、又は0.55:1から0.65:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。例えば、27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、約0.60:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。
【0031】
本明細書に開示される酸化的脱水素触媒は、図に示されるXRDパターンと同一のXRDパターンを提供するものに限定されないこと、及び、図に示されているものと実質的に同じXRDパターンを提供する任意の触媒組成物は、対応する実施形態の範囲内にあることを理解されたい。XRDの当業者は、XRDパターンの実質的な同一性を判断することができる。一般に、XRDにおける回折角の測定誤差は、約2θ(±0.2°又は±0.1°)であって、図のX線回折パターンを検討する場合、及び本明細書に記載されている表に含まれるデータを読み取る場合に、そのような測定誤差の程度を考慮に入れる必要がある。
【0032】
28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1、又は0.60:1から0.70:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。例えば、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、約0.65:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。
【0033】
28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1.1:1、又は0.9:1から1:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。例えば、28.2±0.1のピークと28.3±0.1のピークのアスペクト比は、約0.95:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。
【0034】
いくつかの実施形態では、27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.70:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1.1:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。いくつかの実施形態では、27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.55:1から0.65:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.60:1から0.70:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.9:1から1:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。例えば、27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、約0.60:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、約0.65:1であり、28.2±0.1のピークと28.3±0.1のピークのアスペクト比は、約0.95:1であり、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。
【0035】
酸化的脱水素触媒は、約0.01cm/g~約0.10cm/g、約0.05cm/g~約0.10cm/g、又は約0.06cm/g~約0.08cm/gの細孔容積を有することができる。例えば、酸化的脱水素触媒は、約0.07cm/gの細孔容積を有することができる。酸化的脱水素触媒の細孔容積は、ASTM D3663を用いて、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積分析によって測定することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約15m/g~約65m/g、約25m/g~約55m/g、又は約35m/g~約45m/gの表面積を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約35m/g、40m/g、又は約45m/gの表面積を有することができる。本明細書で使用される場合、「表面積」という用語は、ASTM D3663を用いてBETによって決定される比表面積を指し、これには、-196℃の液体窒素温度での窒素の吸着-脱着、及び吸着前に200℃で1時間の脱気が含まれる。いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、BETによる窒素吸着(例えば、-196℃での窒素吸着)によって決定されるように、約15m/g~約65m/g、約25m/g~約55m/g、又は約35m/g~約45m/gの表面積を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、BETによる窒素吸着(例えば、-196℃での窒素吸着)によって決定されるように、約35m/g、約40m/g、又は約45m/gの表面積を有することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定される多方向結晶相を含む。例えば、酸化的脱水素触媒は、不規則な形状(例えば、非針状又は非棒状の形状)を有することができる。湿式ボールミリングによって生成された不規則な形状を有する酸化的脱水素触媒の例を、図4及び図5に示す。
【0038】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃、約345℃~約385℃、約355℃~約365℃の35%転化温度を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約355℃、360℃、又は約365℃の35%転化温度を有することができる。
【0039】
本開示で使用される場合、「35%転化温度」という句は、ガス流中の35%のエタンがエタン以外の生成物に転化される温度を指す。酸化的脱水素触媒の35%転化温度は、マイクロ反応器ユニット(MRU)を用いて決定することができる。マイクロ反応器ユニットでは、触媒の35%転化温度は、反応器管内の触媒床に供給ガスを通過させることによって決定することができる。MRU反応器管は、約0.5インチの外径及び約0.4インチの内径、並びに約15インチの長さを有する。例えば、反応器管は、壁厚が約0.049インチのステンレス鋼SWAGELOK(登録商標)管であってもよい。供給ガスは、70:30から90:10のモル比を有するエタンと酸素を含むことができる。例えば、供給ガスは、82:18のモル比を有するエタンと酸素を含むことができる。これに代えて、供給ガスは、エタン、酸素、及び窒素を含んでもよい。エタンと酸素と窒素のモル比は、18:18:64から54:18:28であってもよい。例えば、エタンと酸素と窒素のモル比は、36:18:46又は35:17.5:47.5であってもよい。供給ガスの流量は、約70標準立方センチメートル/分(sccm)から約80sccmにすることができる。例えば、供給ガスの流量は、約75sccm(例えば、74.6sccm)であってもよい。触媒床は、酸化的脱水素触媒と砂などの充填剤とが1対1の体積比で構成されており、酸化的脱水素触媒の総重量は1.96gである。反応器管内の残りのスペース(例えば、触媒床の下又は上)には、石英砂などの追加の充填剤が詰め込まれている。35%転化温度は、2.90h-1の重量時空間速度(WHSV)で決定され、WHSVは活性相に基づいており、ガス時空間速度(GHSV)は約2,000~3,000h-1である。典型的には、入口圧力は約1ポンド/平方インチゲージ(psig)から約2.5psigの範囲であり、出口圧力は約0psigから約0.5psigの範囲である。触媒床から出るガス供給物を、ガスクロマトグラフィーにより分析して、様々な炭化水素(例えば、エタン及びエチレン)、並びに任意選択でO、CO、及びCOなどの他のガスのパーセントが決定される。供給ガスの転化は、次の式を用いて、供給エタンの質量流量と比較した生成物中のエタンの質量流量の変化として計算される:
【数1】


(式中、Cは、エタンから別の生成物に転化された(すなわち、エタン転化)供給ガスのパーセントであり、Xは、反応器から出るガス状流出物中の対応する化合物のモル濃度である)。次に、エタン転化を温度の関数としてプロットして、線形代数方程式を取得する。エタン転化のための線形方程式を解いて、エタン転化が35%になる温度(すなわち、35%転化温度)を決定する。以下に説明するように、35%転化温度又はエタンへの選択性を計算するために考慮されなかったのは、限定されないが、酢酸、マレイン酸、プロピオン酸、エタノール、及びアセトアルデヒドなどの、水性流中において反応器から反応生成物であった。
【0040】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃、約345℃~約385℃、又は約355℃~約365℃の35%転化温度を有する(本明細書に記載のMRU試験下で、35:17.5:47.5のモル比でのエタン、酸素、及び窒素の供給ガスを、約75sccmの流量で使用した場合)。例えば、酸化的脱水素触媒は、約355℃、360℃、又は約365℃の35%転化温度を有することができる(本明細書に記載のMRU試験下で、35:17.5:47.5のモル比でのエタン、酸素、及び窒素の供給ガスを、約75sccmの流量で使用した場合)。
【0041】
酸化的脱水素触媒は、約90%を超えるエチレンへの選択性を有することができる。例えば、酸化的脱水素触媒は、約90%~約99%、又は約90%~約95%のエチレンへの選択性を有することができる。本開示で使用される場合、「エチレンへの選択性」という句は、エチレンを形成する転化又は反応したエタンのモル基準でのパーセンテージを指す。酸化的脱水素触媒のエチレンへの選択性は、上記のようにMRUを用いて決定することができる。酸化的脱水素触媒のエチレンへの選択性は、次の式を用いて決定することができる:
【数2】


(式中、Sエチレンはエチレンへの選択性であり、Xは反応器から出るガス状流出物中の対応する化合物のモル濃度である)。とりわけ、エチレンへの選択性は、特に明記されていない限り、35%転化温度で決定される。このように、35%転化温度が決定された後、選択性のための上記方程式は、35%転化温度でのXエチレン、XCO2、及びXCO の対応する値を用いて解かれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約92%を超えるエチレンへの選択性を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約92%~約99%、又は約92%~約95%のエチレンへの選択性を有することができる。いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約93.5%を超えるエチレンへの選択性を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約93.5%~約99%、又は約93.5%~約95%のエチレンへの選択性を有することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃の35%転化温度、及び約90%~約99%のエチレンへの選択性を有する(本明細書に記載のMRU試験下で、35:17.5:47.5のモル比でのエタン、酸素、及び窒素の供給ガスを、約75sccmの流量で使用した場合)。例えば、酸化的脱水素触媒は、約345℃~約385℃の35%転化温度、及び約92%~約99%のエチレンへの選択性を有することができる(本明細書に記載のMRU試験下で、35:17.5:47.5のモル比でのエタン、酸素、及び窒素の供給ガスを、約75sccmの流量で使用した場合)。酸化的脱水素触媒はまた、約355℃~約365℃までの35%転化温度、及び約92%~約99%のエチレンへの選択性を有することができる(本明細書に記載のMRU試験下で、35:17.5:47.5のモル比でのエタン、酸素、及び窒素の供給ガスを、約75sccmの流量で使用した場合)。
【0044】
また、本開示で提供されるのは、前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される酸化的脱水素触媒である。前処理された酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.70:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1:1である。酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃の35%転化温度、及び約90%~約99%のエチレンへの選択性を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃の35%転化温度、及び約90%~約99%のエチレンへの選択性を有することができる(本明細書に記載のMRU試験下で、35:17.5:47.5のモル比でのエタン、酸素、及び窒素の供給ガスを、約75sccmの流量で使用した場合)。
【0045】
本開示でさらに提供されるのは、前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される酸化的脱水素触媒である。酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし、XRDはCuKα放射線を使用して得られる。27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.55:1から0.65:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.60:1から0.70:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.9:1から1:1である。酸化的脱水素触媒は、約355℃~約365℃までの35%転化温度、及び約92%~約99%のエチレンへの選択性を有する。例えば、酸化的脱水素触媒は、約355℃~約365℃の35%転化温度、及び約92%~約99%のエチレンへの選択性を有することができる(本明細書に記載のMRU試験下で、35:17.5:47.5のモル比でのエタン、酸素、及び窒素の供給ガスを、約75sccmの流量で使用した場合)。
【0046】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素触媒は、約35m/g~約45m/gの表面積を有する。
【0047】
また、本開示で提供されるのは、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒を調製する方法である
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。本方法は、前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物を提供すること、並びに混合物を湿式ボールミリングして酸化的脱水素触媒を提供することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、前処理された酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する混合金属酸化物を含む:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。前処理された酸化的脱水素触媒は、米国公開第20170050178A1号に記載されているように調製することができ、その開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0049】
いくつかの実施形態では、前処理された酸化的脱水素触媒の混合金属酸化物は、実験式Mo1.00.22-0.49Te0.10-0.17Nb0.14-0.17を有する。いくつかの実施形態では、前処理された酸化的脱水素触媒の混合金属酸化物は、実験式Mo1.00.22-0.38Te0.10-0.16Nb0.15-0.19を有する。実験式は、粒子線励起X線(PIXE)分析によって測定することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物を提供することは、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含むことができる。前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、前処理された酸化的脱水素触媒を提供するために、予備焼成された(pre-calcined)酸化的脱水素触媒を焼成することを含み得る。予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約450℃~約650℃の温度で、不活性雰囲気中で焼成することができる。例えば、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約600℃の温度で、不活性雰囲気中で焼成することができる。いくつかの実施形態では、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で焼成される。例えば、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約2時間、不活性雰囲気中で焼成することができる。いくつかの実施形態では、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約500℃~約700℃の温度で約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で焼成される。例えば、予備焼成された酸化的脱水素触媒は、約600℃の温度で約2時間、不活性雰囲気中で焼成することができる。
【0051】
混合物中の水は、蒸留水、脱イオン水、脱塩水、ミネラルウォーター、又はそれらの組合せから選択することができる。いくつかの実施形態では、水は蒸留水を含む。
【0052】
湿式ボールミリング中の、焼成した酸化的脱水素触媒と水とボール(例:3mmジルコニアボール)の体積比は、0.5~3.0:0.25~2.0:1.0~3.0であってもよい。いくつかの実施形態では、湿式ボールミリング中の、焼成した酸化的脱水素触媒と水とボールの体積比は、1.0~2.0:0.5~2.5:1.5~2.5である。例えば、焼成した酸化的脱水素触媒と水とボール(例:3mmジルコニアボール)の体積比は、1.5:1.9:1.75であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、前処理された酸化的脱水素触媒は湿式ボールミリングされ、さらに湿式ボールミリングによる粉砕を行っても、粒子サイズ分布のさらなる変化をもたらさなくなるまで、湿式ボールミリングされる。いくつかの実施形態では、前処理された酸化的脱水素触媒は湿式ボールミリングされ、35%転化温度の所望の上昇が得られるまで、湿式ボールミリングされる。
【0054】
湿式ボールミリングを用いることより、酸化的脱水素触媒が調製される前処理された酸化的脱水素触媒と比較して、酸化的脱水素触媒の非晶質相を約5重量%~約15重量%増加させることができる。例えば、湿式ボールミリングを用いることにより、湿式ボールミリング前の前処理された酸化的脱水素触媒と比較して、酸化的脱水素触媒の非晶質相を約5重量%~約15重量%増加させることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、結合剤を、前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物に添加することができる。いくつかの実施形態では、結合剤を、湿式ボールミリングした後に、酸化的脱水素触媒に添加することができる。いくつかの実施形態では、結合剤を、前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物に添加することができ、湿式ボールミリング工程の後に再度添加することができる。
【0056】
結合剤は、アルミナ、チタン化合物、ジルコニア、又はそれらの組合せであってもよい。アルミナは、ベーマイトなどの酸化アルミニウム水酸化物、酸化アルミニウム、又はそれらの組合せであってもよい。いくつかの実施形態では、ベーマイトは、VERSAL(商標) 250などの疑似ベーマイトである。VERSAL(商標)250は、分散性指数(%<1mu)が20~30、かさ密度が1立方フィート当たり12~16ポンド(lbs/ft)、表面積が1グラム当たり約320平方メートル(m/g)、強熱減量(LOI)が約26重量%である。VERSAL(商標)250の分散性指数は、揮発性物質を含まない基準で8グラムの試料と、アルミナ100グラム(g)当たり約260ミリ当量の硝酸である96ミリリットル(mL)の0.22標準(N)硝酸溶液とを用いて決定することができ、酸性アルミナスラリーを、WARING(登録商標)ブレンダー中で低速(17000rpm)で5分間混合し、次いで、SEDIGRAPH(登録商標)PSAを用いて粒子サイズ分布を決定し、その結果は、サブミクロン粒子の重量%として報告される。補助剤(adjuvant)は、ベーマイトCATAPAL(登録商標)Bであってもよい。CATAPAL(登録商標)Bは、粗充填(loose)かさ密度が670~750g/L、充填(packed)かさ密度が800~1100g/L、粒子サイズ(d50)が60μm、550℃で3時間活性化した後の表面積(BET)が250m/g、550℃で3時間活性化した後の細孔容積が0.5ml/g、結晶サイズ(120)が約4.5nmである。
【0057】
また、本明細書に記載の任意の酸化的脱水素触媒を用いた酸化的脱水素反応器におけるエタンのエチレンへの酸化的脱水素化のための方法も、本明細書で提供される。
【0058】
続いて、エチレンを種々の生成物に転化することができる。例えば、エチレンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、二塩化エチレン、エチレンオキシド、エチルベンゼン、直鎖アルコール、酢酸ビニル、アルカン、アルファオレフィン、種々の炭化水素系燃料、エタノールなどを含む多くの種々の化合物に転化することができる。次いで、これらの化合物を、当業者に周知の方法を用いてさらに処理して、他の価値ある化学物質及び消費者製品を得ることができる。
【0059】
本明細書に開示される実施形態には以下の実施形態が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
実施形態A:下記の実験式:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒であって、
酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とする。
【0061】
実施形態Aは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組合せで有することができる。
【0062】
要素A1:触媒は、下記の実験式を有する前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。
【0063】
要素A2:27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.55:1から0.65:1である。
要素A3:27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、約0.60:1である。
要素A4:28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1である。
要素A5:28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.60:1から0.70:1である。
要素A6:28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、約0.65:1である。
要素A7:28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1.1:1である。
要素A8:28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.9:1から1:1である。
要素A9:28.2±0.1のピークと28.4±0.2のピークのアスペクト比は、約0.95:1である。
【0064】
要素A10:触媒は、約0.01cm/g~約0.10cm/gの細孔容積を有する。
要素A11:触媒は、約0.06cm/g~約0.08cm/gの細孔容積を有する。
要素A12:触媒は、約0.07cm/gの細孔容積を有する。
【0065】
要素A13:触媒は、約15m/g~約65m/gの表面積を有する。
要素A14:触媒は、約35m/g~約45m/gの表面積を有する。
要素A15:触媒は、約40m/gの表面積を有する。
【0066】
要素A16:触媒は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定される多方向結晶相を含む。
【0067】
要素A17:触媒は、約335℃~約395℃の35%転化温度を有する。
要素A18:触媒は、約355℃~約365℃の35%転化温度を有する。
【0068】
要素A19:触媒は、約90%を超えるエチレンへの選択性を有する。
要素A20:触媒は、約92%を超えるエチレンへの選択性を有する。
要素A21:触媒は、約93.5%を超えるエチレンへの選択性を有する。
【0069】
要素A22:触媒は、Nb0.50.5をさらに含む。
【0070】
非限定的な例として、実施形態Aに適用可能な例示的な要素の組合せには、以下が含まれる:A2、A4、及びA7;A10及びA13;A2、A4、A10、及びA13;等。
【0071】
実施形態B:下記の実験式:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒であって、酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし;27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.70:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1.1:1であり;酸化的脱水素触媒は、約335℃~約395℃の35%転化温度、及び約90%~約99%のエチレンへの選択性を有し;
触媒は、下記の実験式を有する前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。
【0072】
実施形態C:下記の実験式:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒であって、
酸化的脱水素触媒は、XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし;27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.55:1から0.65:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.60:1から0.70:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.9:1から1:1であり;酸化的脱水素触媒は、約355℃~約365℃の35%転化温度、及び約92%~約99%のエチレンへの選択性を有し;
酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。
【0073】
実施形態D:下記の実験式:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒を調製する方法であって、この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物を提供すること、並びに混合物を湿式ボールミリングして酸化的脱水素化触媒を提供することを含む。
【0074】
実施形態Dは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組合せで有することができる。
【0075】
要素D1:前処理された酸化的脱水素触媒は、下記の実験式を有する:
Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。
【0076】
要素D2:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含む。
【0077】
要素D3:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含み;前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、予備焼成された(pre-calcined)酸化的脱水素触媒を焼成することを含む。
【0078】
要素D4:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含み;前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含み;焼成は、約450℃~約650℃の温度で、不活性雰囲気中で、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む。
【0079】
要素D5:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含み;前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含み;焼成は、約600℃の温度で、不活性雰囲気中で、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む。
【0080】
要素D6:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含み;前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含み;焼成は、約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む。
【0081】
要素D7:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含み;前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含み;焼成は、約2時間、不活性雰囲気中で、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む。
【0082】
要素D8:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含み;前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含み;焼成は、約500℃~約700℃の温度で約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む。
【0083】
要素D9:この方法は、前処理された酸化的脱水素触媒を提供することをさらに含み;前処理された酸化的脱水素触媒を提供することは、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含み;焼成は、約600℃の温度で約2時間、不活性雰囲気中で、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む。
【0084】
要素D10:この方法は、触媒の非晶質相を約5重量%~約15重量%増加させる。
要素D11:この方法は、触媒の非晶質相を約10重量%増加させる。
【0085】
非限定的な例として、実施形態Dに適用可能な例示的な要素の組合せには、以下が含まれる:D1及びD2;D1及びD10;等。
【実施例
【0086】
[例1.1]
520グラム(g)の前処理された酸化的脱水素触媒(モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、及び酸素を含み、触媒のモル比は、PIXEによって決定されるように、Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20である)を、焼成のために触媒焼成炉(CCF)に移した。焼成は、加熱前に48時間の窒素パージを行う最初のステップを含み、焼成により、室温から600℃まで6時間かけて昇温し、600℃に温度を2時間維持して、焼成された酸化的脱水素触媒、触媒1.1(実験式 Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20を有する)を得た。
【0087】
触媒1.1の活性及び選択性は、本明細書に開示されるように、MRUを使用して決定した。活性及び選択性の結果を、例1.8の表1に示す。さらに、細孔容積及びBET表面積を測定し、その結果を例1.8の表1に示す。
【0088】
触媒1.1の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、図1に示す。触媒1.1の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を、図2及び図3に示す。
【0089】
[例1.2]
ボールミルジルコニウムチャンバー内で、150mLの触媒1.1を、100mLの水及び175mLの3mmジルコニアボールと組み合わせた。次に、触媒1.1を、400rpmで2時間湿式ボールミリングした。湿式ボールミリングした後、混合物を取り出し、ふるいにかけてジルコニアボールを分離し、より多くの水で洗浄した。次いで、触媒を含む約2リットル(L)の混合物をドラフトチャンバー内に入れ、室温で1ヶ月間放置して乾燥させて、触媒1.2を得た。
【0090】
触媒1.2の活性及び選択性は、本明細書に開示されるように、MRUを使用して決定した。活性及び選択性の結果を、例1.8の表1に示す。さらに、細孔容積及びBET表面積を測定し、その結果を例1.8の表1に示す。
【0091】
触媒1.2のTEM画像を、図4及び図5に示す。図4及び図5に見られるように、酸化的脱水素触媒は、不規則な形状(例えば、非針状又は非棒状の形状)を有する。
【0092】
[例1.3]
実験式Mo1.00.12-0.49Te0.05-0.17Nb0.10-0.20を有する、約145gの酸化的脱水素触媒を、粉砕チャンバーに加えた。約648gの3mm酸化ジルコニウムボールも、500mL酸化ジルコニウム粉砕チャンバー内に入れた。次に、400mLの水を粉砕チャンバーに加えて水っぽいペーストを作り、それを手動で撹拌して均一化させた。粉砕チャンバーをボールミル装置内に配置し、しっかりと固定した。粉砕チャンバーと内容物の重量は8.26キログラム(kg)であった。次いで、湿式ボールミリングを、400rpmで2時間行った(1時間後に30分間休止した)。運転が完了した後、粉砕チャンバーをドラフトチャンバー内で開いた。内容物を除去し、約800mLの水を加えて、ボールを触媒から分離した。続いて、湿った触媒を90℃でオーブン乾燥し、乾燥した触媒を乳鉢と乳棒を用いて手動で粉砕して、触媒1.3を得た。
【0093】
触媒1.3の活性及び選択性は、本明細書に開示されるように、MRUを使用して決定した。活性及び選択性の結果を、例1.8の表1に示す。
【0094】
[例1.4]
触媒1.3を撹拌し、20mLのハイポバイアルでサブサンプリングし、30分間遠心分離した。次に、液体をデカントし、真空ポンプで1時間、水分を除去して約3gを得、これを収集し、乳鉢と乳棒で粉砕して、触媒1.4を得た。
【0095】
触媒1.4の活性及び選択性は、本明細書に開示されるように、MRUを使用して決定した。活性及び選択性の結果を、例1.8の表1に示す。触媒1.4のSEM画像を、図6に示す。
【0096】
[例1.5]
10.48gの触媒1.1を遠心分離管に入れ、150mLの蒸留水を加えた。続いて、その管を超音波処理浴中で、60分間超音波処理した。超音波処理した後、粒子は水に完全に懸濁しているように見え、その水は濃い紫色になった。濃い紫色の懸濁固形物を、遠心分離機を用いて遠心分離した。次に、その粒子を高真空/窒素ラインで乾燥させて、触媒1.5を得た。
【0097】
酸化的脱水素触媒、触媒1.5の活性及び選択性は、本明細書に開示されるように、MRUを使用して決定した。活性及び選択性の結果を、例1.8の表1に示す。さらに、細孔容積及びBET表面積を測定し、その結果を例1.8の表1に示す。
【0098】
[例1.6]
約500gの触媒1.1を、ブレードグラインダーを用いて5回粉砕(1回の粉砕当たり1分間)して、触媒1.6を生成した。
【0099】
触媒1.6の活性及び選択性は、本明細書に開示されるように、MRUを使用して決定した。活性及び選択性の結果を、例1.8の表1に示す。細孔容積及びBET表面積を測定し、その結果を例1.8の表1に示す。
【0100】
触媒1.6のTEM画像を、図7図8及び図9に示す。
【0101】
[例1.7]
約175mL(648g)の3mm酸化ジルコニウムボールを、500mL酸化ジルコニウム粉砕チャンバーに入れた。約150mL(100g)の触媒1.1を、粉砕チャンバーに加えた。次に、粉砕チャンバーをボールミル装置内に配置し、しっかりと固定した。粉砕チャンバーと内容物の重量は8.12kgであった。ボールミルを、400rpmで2時間操作した(1時間後に30分間休止した)。操作が完了した後、粉砕チャンバーを室温まで冷却した。粉砕チャンバーをドラフトチャンバー内で開いた。生成物が粉砕チャンバーの外壁に堆積していた。この生成物を粉砕チャンバーから削り取り、触媒1.7を得た。
【0102】
[例1.8]
例1.1~例1.6の酸化的脱水素触媒の35%転化温度及び選択性は、本明細書に記載されるように、MRUを使用して決定した。反応器管に入る供給ガスの組成は、35%エタン、17.5%酸素、及び47.5%窒素であった。活性相に基づくWHSVは2.90h-1であった。供給ガスの流量は約74.6sccmであった。例1.1~例1.6の酸化的脱水素触媒の35%転化温度及び選択性を、表1に示す。
【0103】
例1.1、例1.2、及び例1.5~例1.7の触媒のBET表面(m/g)及び細孔容積(cm/g)を、以下のように測定した。ASTM D3663を用いて表面積を決定し、総細孔容積を相対圧力P/P=0.99でのN取り込みによって計算した。例1.1、例1.2、及び例1.5~例1.7の触媒のBET表面(m/g)及び細孔容積(cm/g)を、表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示すように、湿式ボールミリングすることにより、酸化的脱水素触媒の表面積と細孔容積が増加した。具体的には、表面積は、7m/g(ベースラインの酸化的脱水素触媒)から42m/g(湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒)に増加し、細孔容積は、0.02cm/g(ベースラインの酸化的脱水素触媒)から0.07cm/g(湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒)に増加した。さらに、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒の35%転化温度(360℃)は、ベースラインの酸化的脱水素触媒の35%転化温度(386℃)と比較して、より低い35%転化温度であった。比較したところ、超音波処理することにより、表面積も細孔容積も増加したが、35%転化温度は3℃上昇して389℃になった。
【0106】
ベースラインの酸化的脱水素触媒(触媒1.1)、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒(触媒1.2)、超音波処理されたベースラインの酸化的脱水素触媒(触媒1.5)、ブレード粉砕された酸化的脱水素触媒(触媒1.6)、及び乾式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒のBETオーバーレイを、図10に示す。驚くべきことに、図10に示すように、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒の細孔構造が変化した。さらに、図10から、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒が、湿式ボールミリングプロセス中に結晶変化及び物理的変化を受けたことが確認される。
【0107】
[例1.9]
例1.1、例1.2、及び例1.5~例1.7の触媒のXRDパターンは、以下のようにして求めた。XRD分析の準備として、各触媒の一部を乳鉢と乳棒を用いて細かく砕き、粉砕した。XRDを使用して、試料中に存在する相を同定し、定量化した。非晶質部分の重量百分率を決定するために、既知量のコランダムを内部標準として添加した。標準的な相の過剰推定から補正係数を計算し、これをすべての結晶相に適用した。(補正係数を適用した後の)100%までの残りの差は、欠落している相(すなわち、非晶質相)の重量百分率であると判定した。XRDデータは、PANalytical AerisX線回折計を使用して収集した。HighScore Plus XRD分析ソフトウェアを使用して、定性的XRD分析とリートベルト解析を行った。
【0108】
例1.1、例1.2、例1.5、例1.6、及び例1.7のXRDパターンのオーバーレイを、図11に示す。例1.1、例1.2、例1.5、例1.6、及び例1.7のXRDパターンの追加のオーバーレイを、図12に示す。
【0109】
22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1のピークの相対強度を比較した表を、以下の表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
とりわけ、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒のみが、27(2θ度)と22(2θ度)のピーク間のアスペクト比が0.59:1のXRD結果を示した。さらに、湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒では、28.04(2θ度)のピークが28.24(2θ度)のピークに比べてより強くなることが明らかであるため、28.04°(2θ度)と28.24°(2θ度)の間の二重ピークは、高活性(例えば、より低い35%転化温度)において重要な役割を果たすことができる。具体的には、湿式ボールミリングされた試料では、28.04°(2θ度)と28.24°(2θ度)のピーク間のアスペクト比は0.95:1.0であり、一方、他の湿式ボールミリングされていない酸化的脱水素触媒(例1.1、例1.5、例1.6、例1.7)のアスペクト比は0.50~69:1.0である。同様に、28.24(2θ度)と27(2θ度)の間のアスペクト比は、高活性(例えば、より低い35%転化温度)において重要な役割を果たすことができる。湿式ボールミリングされた酸化的脱水素触媒では、28.24(2θ度)と27(2θ度)の間のアスペクト比は、0.64:1であり(すなわち、ピークCはピークBの64%であり)、一方、湿式ボールミリングされていない酸化的脱水素触媒では、0.90~1.04:1の範囲であった。
【0112】
<他の実施形態>
本発明をその詳細な説明に関連して説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、以下の請求項の範囲内にある。
なお、本願の出願当初の特許請求の範囲に係る発明の内容は、以下の通りである。
[項1] 下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒であって、
XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とする、酸化的脱水素触媒。
[項2] 下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される、項1に記載の酸化的脱水素触媒。
[項3] 27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比が、0.55:1から0.65:1である、項1又は2に記載の酸化的脱水素触媒。
[項4] 27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比が、約0.60:1である、項1又は2に記載の酸化的脱水素触媒。
[項5] 28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比が、0.50:1から0.80:1である、項1~4のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項6] 28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比が、0.60:1から0.70:1である、項1~4のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項7] 28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比が、約0.65:1である、項1~4のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項8] 28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比が、0.8:1から1.1:1である、項1~7のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項9] 28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比が、0.9:1から1:1である、項1~7のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項10] 28.2±0.1のピークと28.4±0.2のピークのアスペクト比が、約0.95:1である、項1~7のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項11] 前記触媒が、約0.01cm /g~約0.10cm /gの細孔容積を有する、項1~10のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項12] 前記触媒が、約0.06cm /g~約0.08cm /gの細孔容積を有する、項1~10のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項13] 前記触媒が、約0.07cm /gの細孔容積を有する、項1~10のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項14] 前記触媒が、約15m /g~約65m /gの表面積を有する、項1~13のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項15] 前記触媒が、約35m /g~約45m /gの表面積を有する、項1~13のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項16] 前記触媒が、約40m /gの表面積を有する、項1~13のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項17] 前記触媒が、透過型電子顕微鏡によって決定される多方向結晶相を含む、項1~16のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項18] 前記触媒が、約335℃~約395℃の35%転化温度を有する、項1~13のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項19] 前記触媒が、約355℃~約365℃の35%転化温度を有する、項1~13のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項20] 前記触媒が、約90%を超えるエチレンへの選択性を有する、項1~19のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項21] 前記触媒が、約92%を超えるエチレンへの選択性を有する、項1~19のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項22] 前記触媒が、約93.5%を超えるエチレンへの選択性を有する、項1~19のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項23] 前記触媒が、Nb 0.5 0.5 をさらに含む、項1~22のいずれか一項に記載の酸化的脱水素触媒。
[項24] 下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒であって、
XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし、
27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.70:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.50:1から0.80:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.8:1から1:1であり、
約335℃~約395℃の35%転化温度、及び約90%~約99%のエチレンへの選択性を有し、
下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される、上記酸化的脱水素触媒。
[項25] 下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒であって、
XRD回折ピーク(2θ度)を、22±0.2、27±0.2、28.0±0.2、及び28.3±0.1に有することを特徴とし、
27±0.2のピークと22±0.2のピークのアスペクト比は、0.55:1から0.65:1であり、28.3±0.1のピークと27±0.2のピークのアスペクト比は、0.60:1から0.70:1であり、28.0±0.2のピークと28.2±0.1のピークのアスペクト比は、0.9:1から1:1であり、
約355℃~約365℃の35%転化温度、及び約92%~約99%のエチレンへの選択性を有し、
下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する前処理された酸化的脱水素触媒を湿式ボールミリングすることを含むプロセスによって調製される、上記酸化的脱水素触媒。
[項26] 下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する混合金属酸化物を含む酸化的脱水素触媒を調製する方法であって、
前処理された酸化的脱水素触媒及び水を含む混合物を提供する工程、並びに
前記混合物を湿式ボールミリングして酸化的脱水素触媒を提供する工程、
を含む、上記方法。
[項27] 前記前処理された酸化的脱水素触媒が、下記の実験式:
Mo 1.0 0.12-0.49 Te 0.05-0.17 Nb 0.10-0.20
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する、項26に記載の方法。
[項28] 前記前処理された酸化的脱水素触媒を提供する工程をさらに含む、項26又は27に記載の方法。
[項29] 前記前処理された酸化的脱水素触媒を提供する工程が、予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成する工程を含む、項28に記載の方法。
[項30] 焼成する工程が、約450℃~約650℃の温度で、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む、項29に記載の方法。
[項31] 焼成する工程が、約600℃の温度で、不活性雰囲気中で前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む、項29に記載の方法。
[項32] 焼成する工程が、約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む、項29~31のいずれか一項に記載の方法。
[項33] 焼成する工程が、約2時間、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む、項29~31のいずれか一項に記載の方法。
[項34] 前記触媒を焼成する工程が、約500℃~約700℃の温度で約1時間~約3時間、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む、項29~31のいずれか一項に記載の方法。
[項35] 焼成する工程が、約600℃の温度で約2時間、不活性雰囲気中で、前記予備焼成された酸化的脱水素触媒を焼成することを含む、項29~31のいずれか一項に記載の方法。
[項36] 前記触媒の非晶質相を約5重量%~約15重量%増加させる、項26~35のいずれか一項に記載の方法。
[項37] 前記触媒の非晶質相を約10重量%増加させる、項26~35のいずれか一項に記載の方法。
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