(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】熱交換システム
(51)【国際特許分類】
F28D 20/02 20060101AFI20231218BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231218BHJP
G05D 23/00 20060101ALI20231218BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F28D20/02 D
F25B1/00 321L
G05D23/00 A
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2021515878
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012293
(87)【国際公開番号】W WO2020217800
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2019081863
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】南谷 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】新田 慎一
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-038266(JP,A)
【文献】特開2019-009433(JP,A)
【文献】特開2014-063972(JP,A)
【文献】特表2011-501429(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1936425(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F25B 1/00
G05D 23/00
H01L 21/00 - 21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チラー装置と制御対象物との間に配設される熱交換システムであって、
前記チラー装置から前記制御対象物へ熱媒体を供給する往き回路と、
前記制御対象物から前記チラー装置へ前記熱媒体を戻す戻り回路と、
前記往き回路と前記戻り回路とをバイパスするバイパス回路と、
前記戻り回路のうち前記戻り回路と前記バイパス回路とが接続する第1接続点よりチラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱部材と、
前記往き回路と前記バイパス回路が接続する第2接続点、又は、前記往き回路のうち前記第2接続点より制御対象物側となる位置に設けられ、制御対象物側とバイパス回路側に前記熱媒体を分配する第1流量分配部と、を有すること、
前記戻り回路は、前記第1接続点より上流側に設けられた第1分岐点にて、第1分岐回路と第2分岐回路とに分岐していること、
前記第1分岐点に配設され、前記制御対象物から前記戻り回路に入力した前記熱媒体を前記第1分岐回路又は前記第2分岐回路に供給する流路切替部を有すること、
前記第1分岐回路は、前記第1接続点を備え、前記バイパス回路に接続すると共に、前記チラー装置に連通しており、更に、前記第1接続点よりチラー装置側となる位置に前記潜熱蓄熱部材が配設されていること、
前記第2分岐回路は、前記第1分岐回路に対して、前記潜熱蓄熱部材よりチラー装置側の位置に設けられた第3接続点に接続されていること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
請求項1に記載される熱交換システムにおいて、
前記戻り回路は、更に、前記第1分岐回路が前記第1接続点よりチラー装置側の位置にある第2分岐点にて、第3分岐回路と第4分岐回路に分岐していること、
前記第2分岐点に設けられ、前記バイパス回路から前記第1分岐回路に流入した前記熱媒体を、前記第3分岐回路と前記第4分岐回路に分配する第2流量分配部を有すること、
前記第3分岐回路は、前記第3接続点を備え、前記第2分岐回路に接続すると共に、前記チラー装置に連通していること、
前記第4分岐回路は、前記第2分岐回路に接続され、前記潜熱蓄熱部材が配設されていること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項3】
請求項1又は
請求項2に記載する熱交換システムにおいて、
前記熱媒体が前記制御対象物を冷却する低温媒体であること、
前記潜熱蓄熱部材は、
蓄熱温度が、前記制御対象物から前記戻り回路に入力する前記熱媒体の温度より低く設定されており、
前記流路切替部が前記熱媒体を前記第1分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記制御対象物から前記戻り回路に入力した熱媒体を蓄熱エネルギーにより冷却し、
前記流路切替部が前記熱媒体を前記第2分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記バイパス回路から前記第1分岐回路に流入した前記熱媒体によって再生されること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項4】
請求項1又は
請求項2に記載する熱交換システムにおいて、
前記熱媒体が前記制御対象物を加熱する高温媒体であること、
前記潜熱蓄熱部材は、
蓄熱温度が、前記制御対象物から前記戻り回路に入力する前記熱媒体の温度より高く設定されており、
前記流路切替部が前記熱媒体を前記第1分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記制御対象物から前記戻り回路に入力した熱媒体を蓄熱エネルギーにより加熱し、
前記流路切替部が前記熱媒体を前記第2分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記バイパス回路から前記第1分岐回路に流入した前記熱媒体によって再生されること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項5】
チラー装置と制御対象物との間に配設される熱交換システムであって、
前記チラー装置から前記制御対象物へ熱媒体を供給する往き回路と、
前記制御対象物から前記チラー装置へ前記熱媒体を戻す戻り回路と、
前記往き回路と前記戻り回路とをバイパスするバイパス回路と、
前記戻り回路のうち前記戻り回路と前記バイパス回路とが接続する第1接続点よりチラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱部材と、
前記往き回路と前記バイパス回路が接続する第2接続点、又は、前記往き回路のうち前記第2接続点より制御対象物側となる位置に設けられ、制御対象物側とバイパス回路側に前記熱媒体を分配する第1流量分配部と、を有すること、
前記制御対象物は、半導体製造装置の反応容器内に設置され、ウエハの温度を制御する温度制御部材であること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項6】
チラー装置と制御対象物との間に配設される熱交換システムであって、
前記チラー装置から前記制御対象物へ熱媒体を供給する往き回路と、
前記制御対象物から前記チラー装置へ前記熱媒体を戻す戻り回路と、
前記往き回路と前記戻り回路とをバイパスするバイパス回路と、
前記戻り回路のうち前記戻り回路と前記バイパス回路とが接続する第1接続点よりチラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱部材と、
前記往き回路と前記バイパス回路が接続する第2接続点、又は、前記往き回路のうち前記第2接続点より制御対象物側となる位置に設けられ、制御対象物側とバイパス回路側に前記熱媒体を分配する第1流量分配部と、を有すること、
前記潜熱蓄熱部材は、
前記熱媒体が流れる流路を備える配管部材と、
潜熱蓄熱材が充填され、前記配管部材に面接触した状態で配置される熱交換部材と、
を有する蓄熱ユニットであること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項7】
請求項6に記載する熱交換システムにおいて、
前記配管部材は、前記流路の内壁に接した状態で第1金属繊維シートが内設され、
前記第1金属繊維シートは、前記熱媒体が導入される空隙を有すること、
と特徴とする熱交換システム。
【請求項8】
請求項6又は
請求項7に記載する熱交換システムにおいて、
前記配管部材と前記熱交換部材は、薄い直方体形状をなし、積層されていること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項9】
請求項6乃至
請求項8の何れか1つに記載する熱交換システムにおいて、
前記熱交換部材は、
前記潜熱蓄熱材が充填される内部空間を備える収容体と、
前記内部空間に配置される第2金属繊維シートと、を有し、
前記第2金属繊維シートが、前記収容体に接していること、
を特徴とする熱交換システム。
【請求項10】
第1熱媒体を貯蔵する第1チラー装置と、前記第1熱媒体より高温の第2熱媒体を貯蔵する第2チラー装置と、温調用流体を用いて温度を制御される制御対象物と、の間に配設される熱交換システムであって、
前記制御対象物に前記温調用流体を循環させるメイン循環回路であって、合流部と、前記合流部と前記制御対象物との間に設けられた分流部と、を備える前記メイン循環回路と、
前記第1チラー装置から前記合流部へ前記第1熱媒体を供給する第1往き回路と、
前記分流部から前記第1チラー装置へ前記温調用流体を戻す第1戻り回路と、
前記第1往き回路と前記第1戻り回路とをバイパスする第1バイパス回路と、
前記第1戻り回路のうち前記第1戻り回路と前記第1バイパス回路とが接続する低温側接続点より第1チラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う第1潜熱蓄熱部材と、
前記第2チラー装置から前記合流部へ前記第2熱媒体を供給する第2往き回路と、
前記分流部から前記第2チラー装置へ前記温調用流体を戻す第2戻り回路と、
前記第2往き回路と前記第2戻り回路とをバイパスする第2バイパス回路と、
前記第2戻り回路のうち前記第2戻り回路と前記第2バイパス回路とが接続する高温側接続点より第2チラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う第2潜熱蓄熱部材であって、前記第1潜熱蓄熱部材より蓄熱温度が高い前記第2潜熱蓄熱部材と、
前記合流部に配設され、制御対象物側と第1バイパス回路側と前記第2バイパス回路側に前記温調用流体と前記第1熱媒体と前記第2熱媒体を分配する流量分配部と、 前記分流部に配設され、メイン循環回路側と第1戻り回路側と第2戻り回路側に前記温調用流体を分流させる分流制御部と、を有すること、
を特徴とする熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置は、載置台に載置されたウエハを静電チャックによりチャックした状態で、エッチング処理を施す。静電チャックは、チラー装置において所定温度に調整された温調用流体がチラー装置と静電チャックとの間で循環されることにより、指定された設定温度に制御され、ウエハを均一な温度に調節する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には次のような課題があった。すなわち、従来技術は、静電チャックを流れた温調用流体をそのままチラー装置に戻していたため、チラー装置に戻される温調用流体とチラー装置に貯蔵される温調用流体との温度差が大きく、チラー装置が温調用流体の温度を調整する負荷が大きかった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、省エネルギーでチラー装置にかかる負荷を軽減できる熱交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における熱交換システムは、次のような構成を有している。(1)チラー装置と制御対象物との間に配設される熱交換システムであって、前記チラー装置から前記制御対象物へ熱媒体を供給する往き回路と、前記制御対象物から前記チラー装置へ前記熱媒体を戻す戻り回路と、前記往き回路と前記戻り回路とをバイパスするバイパス回路と、前記戻り回路のうち前記戻り回路と前記バイパス回路とが接続する第1接続点よりチラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱部材と、前記往き回路と前記バイパス回路が接続する第2接続点、又は、前記往き回路のうち前記第2接続点より制御対象物側となる位置に設けられ、制御対象物側とバイパス回路側に前記熱媒体を分配する第1流量分配部と、を有すること、を特徴とする。
【0007】
上記構成の熱交換システムは、潜熱蓄熱部材の熱エネルギーを利用したり、チラー装置から制御対象物に供給する熱媒体を制御対象物からチラー装置に戻される熱媒体に合流させたりすることにより、制御対象物からチラー装置に戻す熱媒体とチラー装置に貯蔵されている熱媒体との温度差を小さくしているので、チラー装置にかかる負荷を軽減することができる。また、上記構成の熱交換システムは、例えば、第1流量分配部により、チラー装置から供給される熱媒体をバイパス回路側だけに流すことにより、熱媒体の熱により潜熱蓄熱部材を再生させることができるので、省エネルギーでチラー装置にかかる負荷を軽減することができる。
【0008】
(2)(1)に記載する熱交換システムにおいて、前記戻り回路は、前記第1接続点より上流側に設けられた第1分岐点にて、第1分岐回路と第2分岐回路とに分岐していること、前記第1分岐点に配設され、前記制御対象物から前記戻り回路に入力した前記熱媒体を前記第1分岐回路又は前記第2分岐回路に供給する流路切替部を有すること、前記第1分岐回路は、前記第1接続点を備え、前記バイパス回路に接続すると共に、前記チラー装置に連通しており、更に、前記第1接続点よりチラー装置側となる位置に前記潜熱蓄熱部材が配設されていること、前記第2分岐回路は、前記第1分岐回路に対して、前記潜熱蓄熱部材よりチラー装置側の位置に設けられた第3接続点に接続されていること、が好ましい。
【0009】
上記構成の熱交換システムによれば、チラー装置から制御対象物に供給する熱媒体だけを潜熱蓄熱部材に供給して潜熱蓄熱部材を再生させることができるので、潜熱蓄熱部材の再生効率が良い。
【0010】
(3)(2)に記載される熱交換システムにおいて、前記戻り回路は、更に、前記第1分岐回路が前記第1接続点よりチラー装置側の位置にある第2分岐点にて、第3分岐回路と第4分岐回路に分岐していること、前記第2分岐点に設けられ、前記バイパス回路から前記第1分岐回路に流入した前記熱媒体を、前記第3分岐回路と前記第4分岐回路に分配する第2流量分配部を有すること、前記第3分岐回路は、前記第3接続点を備え、前記第2分岐回路に接続すると共に、前記チラー装置に連通していること、前記第4分岐回路は、前記第2分岐回路に接続され、前記潜熱蓄熱部材が配設されていること、が好ましい。
【0011】
上記構成の熱交換システムは、潜熱蓄熱部材の無用な再生を回避し、省エネ効果を高めることができる。
【0012】
(4)(2)又は(3)に記載する熱交換システムにおいて、前記熱媒体が前記制御対象物を冷却する低温媒体であること、前記潜熱蓄熱部材は、蓄熱温度が、前記制御対象物から前記戻り回路に入力する前記熱媒体の温度より低く設定されており、前記流路切替部が前記熱媒体を前記第1分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記制御対象物から前記戻り回路に入力した熱媒体を蓄熱エネルギーにより冷却し、前記流路切替部が前記熱媒体を前記第2分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記バイパス回路から前記第1分岐回路に流入した前記熱媒体によって再生されること、が好ましい。
【0013】
上記構成の熱交換システムによれば、温度制御部材を熱媒体により冷却する場合でも、潜熱蓄熱部材の再生効率向上とチラー装置の負荷軽減とを実現できる。
【0014】
(5)(2)又は(3)に記載する熱交換システムにおいて、前記熱媒体が前記制御対象物を加熱する高温媒体であること、前記潜熱蓄熱部材は、蓄熱温度が、前記制御対象物から前記戻り回路に入力する前記熱媒体の温度より高く設定されており、前記流路切替部が前記熱媒体を前記第1分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記制御対象物から前記戻り回路に入力した熱媒体を蓄熱エネルギーにより加熱し、前記流路切替部が前記熱媒体を前記第2分岐回路に供給するように流路を切り替えた場合、前記バイパス回路から前記第1分岐回路に流入した前記熱媒体によって再生されること、が好ましい。
【0015】
上記構成の熱交換システムによれば、温度制御部材を熱媒体により加熱する場合でも、潜熱蓄熱部材の再生効率向上とチラー装置の負荷軽減とを実現できる。
【0016】
(6)(1)乃至(5)の何れか1つに記載する熱交換システムにおいて、前記制御対象物は、半導体製造装置の反応容器内に設置され、ウエハの温度を制御する温度制御部材であること、が好ましい。
【0017】
上記構成の熱交換システムでは、チラー装置が調整する熱媒体の温度と、温度制御部材の温度との差が大きい。しかし、潜熱蓄熱部材が、温度制御部材から戻される熱媒体の温度を、チラー装置に貯蔵される熱媒体の温度に近づけてから、熱媒体をチラー装置に戻す。よって、上記構成の熱交換システムによれば、チラー装置の負荷を軽減する効果をより一層高めることができる。
【0018】
(7)(1)乃至(6)の何れか1つに記載する熱交換システムにおいて、前記潜熱蓄熱部材は、前記熱媒体が流れる流路を備える配管部材と、潜熱蓄熱材が充填され、前記配管部材に面接触した状態で配置される熱交換部材と、を有する蓄熱ユニットであること、が好ましい。
【0019】
上記構成の熱交換システムは、熱媒体が配管部材を流れる際に熱交換部材と熱交換を行うので、熱媒体と熱交換部材との熱交換効率を良好にすることができる。
【0020】
(8)(7)に記載する熱交換システムにおいて、前記配管部材は、前記流路の内壁に接した状態で第1金属繊維シートが内設され、前記第1金属繊維シートは、前記熱媒体が導入される空隙を有すること、が好ましい。
【0021】
上記構成の熱交換システムは、熱媒体が第1金属繊維シートの空隙を通って配管部材を流れ、第1金属繊維シートと配管部材を介して熱交換部材と熱交換を行うので、熱媒体が蓄熱ユニットを流れる際に生じる圧損を抑制しつつ、熱媒体と熱交換部材との熱交換効率を良好にすることができる。
【0022】
(9)(7)又は(8)に記載する熱交換システムにおいて、前記配管部材と前記熱交換部材は、薄い直方体形状をなし、積層されていること、が好ましい。
【0023】
上記構成の熱交換システムは、熱媒体の流量を確保しつつ、配管部材と熱交換部材の熱交換効率を高めることができる。
【0024】
(10)(7)乃至(9)の何れか1つに記載する熱交換システムにおいて、前記熱交換部材は、前記潜熱蓄熱材が充填される内部空間を備える収容体と、前記内部空間に配置される第2金属繊維シートと、を有し、前記第2金属繊維シートが、前記収容体に接していること、が好ましい。
【0025】
上記構成の熱交換システムによれば、潜熱蓄熱材の熱エネルギーが金属繊維シートを介して収容体に伝わりやすく、熱媒体と潜熱蓄熱材とが効率良く熱交換するので、潜熱蓄熱部材をコンパクトにしても、チラー装置にかかる負荷を軽減できる。
【0026】
更に、本発明の他の態様の熱交換システムは、第1熱媒体を貯蔵する第1チラー装置と、前記第1熱媒体より高温の第2熱媒体を貯蔵する第2チラー装置と、温調用流体を用いて温度を制御される制御対象物と、の間に配設される熱交換システムであって、前記制御対象物に前記温調用流体を循環させるメイン循環回路であって、合流部と、前記合流部と前記制御対象物との間に設けられた分流部と、を備える前記メイン循環回路と、前記第1チラー装置から前記合流部へ前記第1熱媒体を供給する第1往き回路と、前記分流部から前記第1チラー装置へ前記温調用流体を戻す第1戻り回路と、前記第1往き回路と前記第1戻り回路とをバイパスする第1バイパス回路と、前記第1戻り回路のうち前記第1戻り回路と前記第1バイパス回路とが接続する低温側接続点より第1チラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う第1潜熱蓄熱部材と、前記第2チラー装置から前記合流部へ前記第2熱媒体を供給する第2往き回路と、前記分流部から前記第2チラー装置へ前記温調用流体を戻す第2戻り回路と、前記第2往き回路と前記第2戻り回路とをバイパスする第2バイパス回路と、前記第2戻り回路のうち前記第2戻り回路と前記第2バイパス回路とが接続する高温側接続点より第2チラー装置側となる位置に配設され、蓄熱及び放熱を行う第2潜熱蓄熱部材であって、前記第1潜熱蓄熱部材より蓄熱温度が高い前記第2潜熱蓄熱部材と、前記合流部に配設され、制御対象物側と第1バイパス回路側と前記第2バイパス回路側に前記温調用流体と前記第1熱媒体と前記第2熱媒体を分配する流量分配部と、前記分流部に配設され、メイン循環回路側と第1戻り回路側と第2戻り回路側に前記温調用流体を分流させる分流制御部と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、省エネルギーでチラー装置の負荷を軽減できる熱交換システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る熱交換システムの概略構成図である。
【
図8A】切替条件の具体例を示す表であり、温度制御部材の設定温度より低温の熱媒体を温度制御部材に供給して温度制御部材の温度を調節するユニットに適用される。
【
図8B】切替条件の具体例を示す表であり、温度制御部材の設定温度より高温の熱媒体を温度制御部材に供給して温度制御部材の温度を調節するユニットに適用される。
【
図9】比較例の動作の一例と冷媒温度変化を示すタイムチャートである。
【
図10】実施例の動作の一例と冷媒温度変化を示すタイムチャートである。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る熱交換システムの概略構成図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る熱交換システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る熱交換システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱交換システム1の概略構成を示す図である。例えば、半導体製造装置は、温度制御部材110とチラー装置120との間で冷媒を循環させる循環経路上に、熱交換システム1が設けられている。冷媒は、「熱媒体」の一例である。チラー装置120は冷媒を所定温度に調整して貯蔵する装置である。温度制御部材110は、チラー装置120から供給される冷媒が流れることによって温度が制御される対象である「制御対象物」の一例である。
【0031】
チラー装置120は、タンク122とポンプ124を備えている。タンク122は、所定温度に調整された冷媒を貯蔵している。ポンプ124は、タンク122に貯蔵された冷媒を所定流量で熱交換システム1に送り出す。本形態のチラー装置120は、冷媒の温度を、温度制御部材110の設定温度より低く制御するチラー能力を有する。
【0032】
温度制御部材110は、例えば、エッチング処理を行う図示しない反応容器に内設され、ウエハの温度を制御するものである。温度制御部材110は、ヒータ112と温度センサ114を備える。ヒータ112は、温度制御部材110を加熱する。温度センサ114は、温度制御部材110の温度を測定する。温度制御部材110は、温度センサ114が測定する温度に応じて、チラー装置120のタンク122から熱交換システム1を介して冷媒を供給され、設定温度に調整される。温度制御部材110を流れた冷媒は、熱交換システム1を介してチラー装置120のタンク122に戻される。
【0033】
熱交換システム1は、往き回路L1と、戻り回路L2と、バイパス回路L3を備える。また、熱交換システム1は、第1温度センサ6と、第2温度センサ7と、流路切替部2と、流量分配部3と、流量センサ5と、蓄熱ユニット4と、絞り弁8とを備えている。流量分配部3は、「第1流量分配部」の一例である。蓄熱ユニット4は、「潜熱蓄熱部材」の一例である。
【0034】
往き回路L1は、チラー装置120の出力ポート120bを温度制御部材110の入力部110aに連通させ、チラー装置120から温度制御部材110に冷媒を供給する。戻り回路L2は、分岐点P4において第1分岐回路L21と第2分岐回路L22に分岐している。分岐点P4は「第1分岐点」の一例である。戻り回路L2は、第1分岐回路L21を介して、温度制御部材110の出力部110bをチラー装置120の入力ポート120aに連通させ、温度制御部材110に供給された冷媒をチラー装置120に戻す。第2分岐回路L22は、第3接続点P3において、第1分岐回路L21に接続している。バイパス回路L3は、往き回路L1と戻り回路L2の第1分岐回路L21とを接続し、温度制御部材110を経由せずに冷媒を往き回路L1から戻り回路L2の第1分岐回路L21に供給する。
【0035】
第1温度センサ6は、戻り回路L2に配設されている。第1温度センサ6は、温度制御部材110から戻り回路L2に入力した冷媒の温度(第1温度)を測定する。戻り回路L2は、第1温度センサ6よりチラー装置側(下流側)に位置する分岐点P4において、第1分岐回路L21と第2分岐回路L22に分岐している。
【0036】
流路切替部2は、分岐点P4に配設されている。流路切替部2は、第1開閉弁21と第2開閉弁22とを備える。第1開閉弁21は、第1分岐回路L21に配置され、第2開閉弁22は、第2分岐回路L22に配置されている。
【0037】
第1分岐回路L21は、チラー装置120の入力ポート120aに連通している。第1分岐回路L21は、バイパス回路L3と接続する第1接続点P1と、第2分岐回路L22が接続する第3接続点P3との間に蓄熱ユニット4が配設されている。そして、第1分岐回路L21は、第3接続点P3よりチラー装置120側(下流側)に、絞り弁8が配設されている。蓄熱ユニット4は、固体と液体との間で相変化する際の熱エネルギーを蓄えるものである。蓄熱ユニット4は、第1分岐回路L21を流れる冷媒の温度に応じて、蓄熱エネルギーを利用して冷媒に放熱することによって冷媒を加熱する。また、蓄熱ユニット4は、冷媒から吸熱することによって蓄熱エネルギーが再生される。蓄熱ユニット4の具体的な構成は、後述する。絞り弁8は、温度制御部材110とチラー装置120との間で冷媒を循環させる系の中の圧損を調整する。つまり、絞り弁8によって、チラー装置120の入力ポート120aに入力する冷媒の圧力が調整される。
【0038】
第2分岐回路L22は、第1分岐回路L21の蓄熱ユニット4より下流側に設けられた第3接続点P3に接続され、蓄熱ユニット4を迂回する流路を形成している。
【0039】
バイパス回路L3は、往き回路L1に設けられた第2接続点P2と、第1分岐回路L21の蓄熱ユニット4より温度制御部材110側(上流側)に設けられた第1接続点P1に、接続している。第2接続点P2には、流量分配部3が設けられている。なお、流量分配部3は、往き回路L1のうち第2接続点P2より温度制御部材110側となる位置に設けられても良い。
【0040】
流量分配部3は、第1開度比例弁31と第2開度比例弁32を備える。第1開度比例弁31は、往き回路L1に配設され、第2開度比例弁32は、バイパス回路L3に配設されている。流量分配部3は、第1開度比例弁31と第2開度比例弁32が連動して動作することにより、流量分配部3は、第1開度比例弁31と第2開度比例弁32の合計開度が同じ状態、つまり、第2接続点P2にて生じる冷媒の圧損をほぼ一定にした状態で、温度制御部材110側とバイパス回路L3側に冷媒を分配する比率を相対的に変化させる。なお、流量分配部3は、1個のスプール弁により構成しても良い。
【0041】
往き回路L1は、流量分配部3より温度制御部材110側(下流側)に、流量センサ5と第2温度センサ7が配設されている。流量センサ5は、流量分配部3から温度制御部材110に流れる冷媒の流量を測定する。換言すると、流量センサ5は、温度制御部材110とチラー装置120との間を循環する冷媒の流量を測定する。第2温度センサ7は、流量分配部3から温度制御部材110に流れる冷媒の温度(第2温度)を測定する。尚、流量センサ5と第2温度センサ7の配置は逆でも良い。また、流量センサ5は省略されても良い。
【0042】
上述した蓄熱ユニット4の構成について、
図2~
図4を参照して説明する。
図2は、蓄熱ユニット4の外観斜視図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図3のB部拡大図である。尚、蓄熱ユニット4及びその構成部材は、形状や寸法割合などが
図2、
図3の記載に限定されない。
図4は、金属繊維シート412の空隙4123に冷媒が入り込んでいる状態を見やすくするめに模式化して記載したものであり、金属繊維4121や空隙4123の形状や密度などはこれに限定されない。本形態の蓄熱ユニット4は、例えば、特開2019-9433号公報に開示される技術を応用するものである。
【0043】
図2に示すように、蓄熱ユニット4は、例えば、箱形の外観をなし、流路形成部材41と、熱交換部材42と、断熱材43を備える。流路形成部材41は、冷媒が流れる流路を形成するものであり、第1分岐回路L21の一部を構成する。熱交換部材42は、流路形成部材41を介して冷媒と熱交換を行うものである。流路形成部材41と熱交換部材42は、薄い直方体形状をなし、外形寸法がほぼ同じにされている。そのため、流路形成部材41と熱交換部材42は、ブロック状に積み重ねることができる。尚、流路形成部材41と熱交換部材42は、当接する面の寸法が同じであれば、例えば、厚み方向の寸法が異なっていても良い。また、直方体形状は厳密な直方体形状に限らず、例えば、角部に面取り等が施されていてもよい。
【0044】
流路形成部材41と熱交換部材42は、その積層方向において、熱交換部材42が両端に配置されるように、交互に積み重ねて配置されている。本形態では、3個の熱交換部材42の間に流路形成部材41を1個ずつ配置しているが、熱交換部材42と流路形成部材41の数はこれに限定されない。断熱材43は、積み重ねられた流路形成部材41と熱交換部材42の外周を覆うように設けられている。流路形成部材41と熱交換部材42は、断熱材43によって外部の熱から遮断されている。以下、流路形成部材41、熱交換部材42、断熱材43について、詳細に説明する。
【0045】
図3に示すように、流路形成部材41は、配管部材411と、金属繊維シート412とを備えている。配管部材411は、図中上側に位置する上面と図中下側に位置する下面の面積が広く、上面と下面が一対の対向する側面により接続されたものであり、外観形状が薄い直方体形状をなす。配管部材411は、上面と下面と一対の側面によって、冷媒が流れる流路を形成されている。配管部材411は、流路断面積を大きくするために、流路軸線方向に対して直交する方向に切断したときの流路の断面形状を横長の四角形状とするように、流路面4111が形成されている。配管部材411は、ステンレス、銅、アルミ等、熱伝導性が高い材料により形成されている。尚、配管部材411は、全てを同一材料で形成しても良いが、別材料で形成してもよい。例えば、熱交換部材42と接触する面積の広い面(上面と下面)を熱伝導性が高い材料により形成し、一対の対向する側面をセラミックや樹脂などの別の材料により形成しても良い。
【0046】
図4に示すように、金属繊維シート412は、金属繊維4121をシート形状に形成したものである。金属繊維シート412は、例えば、特開2019-9433号公報に開示される技術を用いたものである。金属繊維シート412は、金属繊維4121単独で構成されていてもよいし、金属繊維4121以外の繊維と併用して構成されていても良い。金属繊維4121は、熱交換効率を高めるため、ステンレス、銅、アルミ等、熱伝導性が高い材料により形成されていることが好ましい。本形態の金属繊維4121は、剛直性と塑性変形性とのバランスに優れた銅繊維とする。金属繊維シート412では、金属繊維4121同士が物理的に固定されて結着部C1が構成されており、この結着部C1によって金属繊維4121の間に空隙4123が形成されている。金属繊維シート412では、金属繊維シート412の熱伝導性、均質性を安定させるために、結着部C1において金属繊維4121が焼結されている。また、配管部材411は、金属繊維シート412を収容した態様で焼結加工を施され、金属繊維シート412と流路面4111とが結着する結着部C2を備えている。尚、結着部C1は、金属繊維4121同士が直接結着されていてもよいし、他の物質を介して間接的に結着されていてもよい。また、結着部C2は、配管部材411と金属繊維4121が直接結着されていてもよいし、他の物質を介して間接的に結着されていてもよい。
【0047】
例えば、流路形成部材41は、
図3において図中左側に位置する開口部413に冷媒が流入すると、その冷媒が金属繊維シート412の空隙4123に導入され、図中右側に位置する開口部414から排出される。金属繊維シート412は、細い金属繊維4121の間に無数の空隙4123が形成されているので、冷媒が配管部材411を流れる際の圧損が小さい。冷媒と配管部材411は、流路面4111だけでなく、流路内に配置された金属繊維4121を介して熱伝達する。よって、流路形成部材41は、冷媒と熱交換部材42との間の熱交換効率が良く、配管部材411が速やかに冷媒と同程度の温度になりやすい。
【0048】
図3に示すように、熱交換部材42は、収容体421と潜熱蓄熱材422を備える。収容体421は、一対の面積の広い面を4つの側面により接続した薄い直方体形状をなし、潜熱蓄熱材422が充填される内部空間4211を備えている。収容体421は、金属などの熱伝導性が良い材料で形成してもよい。また例えば、収容体421は、セラミック樹脂等を薄く成形したものでもよい。更に、金属と金属以外の材料で収容体421を形成してもよい。
図2に示すように、収容体421は、内部空間4211に潜熱蓄熱材422を注入するための注入口4212が栓4213により密閉されている。尚、注入口4212の位置や形状はこれに限定されない。
【0049】
熱交換部材42の蓄熱温度や蓄熱エネルギーは、潜熱蓄熱材422の成分や成分割合によって変えることができる。例えば、n-パラフィン系潜熱蓄熱材のn-ペンタデカンを潜熱蓄熱材422として使用する場合、熱交換部材42は、蓄熱温度9.9℃、蓄熱量163.8kJ/kgとすることができる。本形態では、蓄熱温度がチラー装置120に貯蔵される冷媒の温度より高く、温度制御部材110の設定温度より低い潜熱蓄熱材422を使用している。
【0050】
図5は、熱交換システム1の電気ブロック図である。熱交換システム1は、コントローラ11によって動作を自動制御される。コントローラ11は、温度センサ114と、流量センサ5と、第1温度センサ6と、第2温度センサ7に接続し、流量や冷媒の温度などの情報を取得する。また、コントローラ11は、流路切替部2の第1開閉弁21及び第2開閉弁22に接続し、電圧を供給して弁開動作を行わせる一方、電圧の供給を停止して弁閉動作を行わせる。コントローラ11は、第1開閉弁21と第2開閉弁22に開閉動作を相対的に行わせ、戻り回路L2を第1分岐回路L21と第2分岐回路L22の何れかに連通させる。また、コントローラ11は、流量分配部3の第1開度比例弁31及び第2開度比例弁32と、絞り弁8に接続し、弁開度を制御するための指令信号を出力する。更に、コントローラ11は、通信インタフェース(通信IF)12に接続している。上位コントローラ130は、通信IF12を介してコントローラ11と通信可能に接続し、温度制御部材110の設定温度の変化に関する情報や、温度制御部材110の温度に関する情報や、プラズマ等による入熱に関する情報などを、コントローラ11に送信する。
【0051】
尚、コントローラ11が有する全機能を上位コントローラ130に持たせ、コントローラ11を省略してもよい。また、コントローラ11が有する機能の一部を上位コントローラ130が有してもよい。また、例えば、第1開閉弁21及び第2開閉弁22が空気圧等によって作動する場合、コントローラ11は、第1開閉弁21と第2開閉弁22に電圧を供給するとは限らない。指令信号は、指令電圧でも、指令電流でも、シリアル通信によって出力される信号でもよい。
【0052】
続いて、本形態の熱交換システム1の動作を説明する。熱交換システム1は、定常運転動作と熱交換動作とを行う。本明細書において、「定常運転動作」とは、蓄熱ユニット4の潜熱蓄熱材422が冷媒の熱を吸熱して再生される(蓄熱する)ように、熱交換システム1が冷媒の流れを制御する動作をいう。本明細書において、「熱交換動作」とは、蓄熱ユニット4の潜熱蓄熱材422が冷媒に放熱するように、熱交換システム1が冷媒の流れを制御する動作をいう。
【0053】
図6を用いて、定常運転動作を説明する。コントローラ11は、流路切替部2の第1開閉弁21を弁閉させ、第2開閉弁22を弁開させる。そして、コントローラ11は、例えば、上位コントローラ130から温度制御部材110の温度と設定温度との差分を取得し、その差分に応じて、流量分配部3の第1開度比例弁31と第2開度比例弁32の弁開度を連動して変化させる。
【0054】
例えば、コントローラ11は、ヒータ112によって加熱される分だけ温度制御部材110を冷却するように、第1開度比例弁31に弁開度を25%とする指令信号を出力し、第2開度比例弁32に弁開度を75%とする指令信号を出力する。この場合、チラー装置120の出力ポート120bから出力された冷媒は、温度制御部材110側に25%分配され、バイパス回路L3側に75%分配される。
【0055】
尚、熱交換システム1は、例えば、第1温度センサ6が測定する第1温度と第2温度センサ7が測定する第2温度との差分に応じて、第1開度比例弁31と第2開度比例弁32の弁開度を調整しても良い。
【0056】
流量分配部3から温度制御部材110側に分配された冷媒は、ヒータ112によって加熱された温度制御部材110を流れる際に温度制御部材110と熱交換するため、温度制御部材110の入力部110aに入力されるときより、温度制御部材110の出力部110bから出力されるときの方が、温度が高くなる。出力部110bから出力された冷媒は、戻り回路L2に入力する。戻り回路L2に配設された流路切替部2は、第1開閉弁21が弁閉され、第2開閉弁22が弁開されているため、第2分岐回路L22側へ流れ、蓄熱ユニット4を通らずにチラー装置120に戻される。
【0057】
これに対して、流量分配部3からバイパス回路L3側に分配された冷媒は、第1接続点P1を介して第1分岐回路L21に流入し、蓄熱ユニット4を通ってチラー装置120に戻される。
【0058】
このとき、冷媒は、配管部材411に内設された金属繊維シート412の空隙4123を通って蓄熱ユニット4を通過する。冷媒の熱は、流路面4111を介して配管部材411に伝達されると共に、金属繊維シート412の金属繊維4121に伝達され、結着部C1、C2を介して配管部材411に伝達される。そのため、配管部材411と金属繊維シート412は、速やかに、冷媒と同程度の温度になる。熱交換部材42と配管部材411は、面積の広い面同士を接触させている。そのため、熱交換部材42に充填された潜熱蓄熱材422は、収容体421を介して配管部材411と熱交換する面積が広く、配管部材411と金属繊維シート412を介して冷媒の熱を吸収し、再生される。尚、蓄熱ユニット4は、断熱材43により覆われているため、放熱損が生じ難い。
【0059】
第1分岐回路L21には、第1接続点P1と第3接続点P3の間に蓄熱ユニット4が配置されている。そのため、定常運転動作の時、蓄熱ユニット4には、チラー装置120から出力される冷媒を、温度制御部材110によって加熱された冷媒より多く流すことが可能である。よって、蓄熱ユニット4において、熱交換部材42の潜熱蓄熱材422が、チラー装置120のタンク122に貯蔵される冷たい冷媒から吸熱し、効率良く再生される。また、蓄熱ユニット4は、チラー装置120に貯蔵される冷媒を利用して再生されるので、省エネルギーで再生される。
【0060】
なお、第2分岐回路L22を流れる冷媒は、第3接続点P3にて、蓄熱ユニット4を流れた冷媒と合流し、温度を下げられてから、チラー装置120に戻される。よって、温度制御部材110から戻り回路L2に流入した冷媒を、蓄熱ユニット4を介さずにチラー装置120に戻しても、チラー装置120が入力ポート120aに入力した冷媒を冷却する負荷は、小さくて済む。
【0061】
図7を用いて、熱交換動作を説明する。コントローラ11は、流路切替部2の第1開閉弁21を弁開させ、流路切替部2の第2開閉弁22を弁閉させる。そして、コントローラ11は、上位コントローラ130から温度制御部材110の温度と設定温度との差分を取得し、その差分に応じて、流量分配部3の第1開度比例弁31と第2開度比例弁32の弁開度を連動して変化させる。この場合、温度制御部材110の温度を早く低下させる必要があるので、コントローラ11は、例えば、第1開度比例弁31に弁開度を95%とする指令信号を送信し、第2開度比例弁32に弁開度を5%とする指令信号を送信する。この場合、チラー装置120の出力ポート120bから出力された冷媒は、温度制御部材110側に95%分配され、バイパス回路L3側に5%分配される。
【0062】
流量分配部3から温度制御部材110側に分配された冷媒は、定常運転動作時と同様にして、戻り回路L2に流入する。戻り回路L2に流入する冷媒は、定常運転動作時より流量が多く、熱量が大きくなる。流路切替部2の第1開閉弁21が弁開され、流路切替部2の第2開閉弁22が弁閉されているため、戻り回路L2に流入した冷媒は、第1分岐回路L21側に流れ、蓄熱ユニット4を介してチラー装置120に戻される。
【0063】
流量分配部3が戻り回路L2側に冷媒を分配する場合、第1分岐回路L21には、蓄熱ユニット4より上流側の第1接続点P1に、流量分配部3からバイパス回路L3側に分配された冷媒が流入する。そのため、バイパス回路L3から第1分岐回路L21に流入する冷媒は、蓄熱ユニット4に流れ込む前に、第1開閉弁21から第1接続点P1に流入した冷たい冷媒と合流して、温度を下げられる。
【0064】
冷媒は、蓄熱ユニット4の流路形成部材41を流れ、チラー装置120の入力ポート120aに流入する。冷媒は、配管部材411に内設された金属繊維シート412の空隙4123を流れて、蓄熱ユニット4を通過する際に、金属繊維4121と配管部材411を介して熱交換部材42と熱交換する。配管部材411は、結着部C1、C2を介して金属繊維4121から冷媒の熱を伝達され、速やかに冷媒と同程度の温度になる。熱交換部材42は、収容体421を介して潜熱蓄熱材422の熱を配管部材411に伝達し、配管部材411と金属繊維シート412を介して冷媒を冷却する。このように、冷媒は、配管部材411と金属繊維4121を介して、潜熱蓄熱材422と効率良く熱交換することができるので、潜熱蓄熱材422と同程度の温度まで速やかに冷却される。なお、蓄熱ユニット4は、熱交換動作時、冷媒に熱を与えるのに応じて、蓄熱温度が上昇する。
【0065】
よって、チラー装置120は、温度制御部材110から戻り回路L2に流入したときの温度より低温にされた冷媒が、入力ポート120aに流入する。そのため、チラー装置120は、温度制御部材110との間で冷媒を循環させる場合でも、入力ポート120aに入力した冷媒を冷却する負荷が軽減される。
【0066】
熱交換システム1のコントローラ11は、例えば、チラー装置120に戻される冷媒の熱量、つまり、チラー装置120に戻される冷媒の温度と流量をかけ合わせた値に応じて、定常運転動作と熱交換動作を自動的に切り替える。動作を切り替える条件(以下「切替条件」とする)の具体例を、
図8に示す。本形態の熱交換システム1は、温度制御部材110の設定温度より低温の冷媒を温度制御部材110に供給して温度制御部材110の温度を調節するユニットに用いられている。そのため、コントローラ11は、例えば
図8Aに示す切替条件を用いて、熱交換システム1の動作を自動的に切り替える。
【0067】
図8Aにおいて、コントローラ11が定常運転動作を熱交換動作に切り替える切替条件としては、例えば、コントローラ11が、温度制御部材110の設定温度を現在の値から下げる設定温度低下情報を、上位コントローラ130から受信する場合がある。また例えば、コントローラ11が、温度センサ114から受信する温度測定値に基づいて、温度制御部材110が急峻な温度上昇を発生したことを検知した場合がある。また例えば、コントローラ11が、プラズマ等により温度制御部材110に熱を与えることを示す入熱オン情報を、上位コントローラ130から受信した場合がある。更に例えば、コントローラ11が、流量分配部3において、チラー装置120から出力された冷媒を温度制御部材110側に分配する流量分配率を、所定値以上とする場合がある。
【0068】
コントローラ11が熱交換動作を定常運転動作に切り替える切替条件としては、例えば、コントローラ11が、温度センサ114から受信する温度測定値に基づいて、温度制御部材110の温度が設定温度に安定していることを検知した場合がある。また例えば、コントローラ11が、時間を計測するタイマを内蔵し、熱交換動作を開始してから設定時間が経過した場合がある。更に例えば、コントローラ11が、流量分配部3において、チラー装置120から出力された冷媒を温度制御部材110側に分配する流量分配率を、所定値未満とする場合がある。
【0069】
尚、設定温度低下情報は、設定温度を下げる前に受信してもよいし、設定温度を下げた後に受信しても良い。入熱オン情報は、入熱前に受信しても良いし、入熱後に受信しても良い。コントローラ11は、上位コントローラ130が急峻な温度上昇を検知し、その検知結果を上位コントローラ130から受信することにより、定常運転動作を熱交換動作に切り替えてもよい。
【0070】
続いて、実施例と比較例の動作例を説明する。実施例は、本形態の熱交換システム1と同様に構成したものである。比較例は、第2分岐回路L22、流路切替部2、蓄熱ユニット4を備えない点を除き、本形態の熱交換システム1と同様に構成したものである。
【0071】
本動作例では、チラー装置120は、-20℃の冷媒をタンク122に貯蔵し、ポンプ124を用いてタンク122から往き回路L1に冷媒を35L/minの流量で送り出すこととした。実施例の蓄熱ユニット4は、蓄熱温度が-10℃の潜熱蓄熱材422を充填された熱交換部材42を使用するものとした。温度制御部材110の設定温度は、60℃又は0℃とし、ヒータ112と、流量分配部3が温度制御部材110側に分配する冷媒によって、温度制御部材110の温度を設定温度に調節するものとした。そして、温度制御部材110の温度が設定温度に安定しているときに、所定時間だけプラズマをONさせ、温度制御部材110に急峻な温度上昇を生じさせることにした。この条件において、チラー装置120の出力ポート120bから出力される冷媒の温度変化を、シミュレーションした。比較例の動作の一例と冷媒温度変化を
図9に示す。実施例の動作の一例と冷媒温度変化を
図10に示す。
【0072】
図9に示すように、比較例は、例えば、温度制御部材110側への流量分配比率が安定している、つまり、温度制御部材110の温度が安定しており、第1開度比例弁31に出力する指令信号の出力値が安定している場合(Y21、Y44、Y64、Y75、Y85、Y104)、図中Z2、Z4、Z6、Z10に示すように、チラー装置120の出力ポート120bから出力する冷媒の温度が-20℃に安定している。また、比較例は、温度制御部材110側への流量分配比率が急激に小さくなる、つまり、温度制御部材110の温度を上げるために、第1開度比例弁31への指令信号の出力値を急激に小さくした場合(Y74、Y84、Y114)も、図中Z6、Z10に示すように、チラー装置120の出力ポート120bから出力する冷媒の温度が-20℃に安定している。
【0073】
これは、温度制御部材110側に分配される冷媒より、バイパス回路L3側に分配される冷媒の方が、流量が多いため、チラー装置120の入力ポート120aに入力する冷媒の熱量が小さく、チラー装置120にかかる負荷が小さいためと考えられる。
【0074】
比較例は、例えば、温度制御部材110が設定温度を60℃から0℃に変更された、つまり、上位コントローラから温度制御部材110の設定温度を60℃から0℃に変更する情報を受信した場合(X3)、あるいは、プラズマがONされたことにより温度制御部材110が急峻な温度上昇を生じた、つまり、上位コントローラから入熱情報を受信した場合(X5、X9)、温度制御部材110側への流量分配比率が急激に大きくなる(Y34、Y54、Y94)。つまり、第1開度比例弁31への指令信号の出力値が急激に大きくなる。この場合、チラー装置120の出力ポート120bから出力する冷媒の温度は、図中Z3、Z5、Z9に示すように、急上昇する。
【0075】
これは、温度制御部材110と熱交換した冷媒の流量が増えると、チラー装置120の入力ポート120aに入力する冷媒の熱量が大きくなるが、チラー装置120は、その冷媒の熱量増加に対応できるチラー能力を備えていないためと考えられる。半導体製造装置では、チラー装置120の出力ポート120bから出力される冷媒の温度が-20℃に安定するのを待って、次の処理を行う。そのため、比較例のようにピーク値が大きいと、半導体製造装置はタクトタイム(takt time)が長くなる。チラー装置120のチラー能力を高くすれば、タクトタイムを短くできるが、チラー装置120が大型化する。半導体製造装置は、コンパクト化が要求されるため、チラー装置120を大型化するのは好ましない。なお、プラズマエネルギーが大きくなった場合も、チラー装置120のチラー能力が不足し、上記と同様の問題を生じうる。
【0076】
これに対して、
図10に示すように、実施例は、温度制御部材110側への流量分配比率が安定している場合(Y21、Y44、Y64、Y75、Y85、Y104)、或いは、温度制御部材110側への流量分配比率が急激に小さくなる場合(Y74、Y84、Y114)、第1開閉弁21を弁閉させ、第2開閉弁22を弁開させることにより、定常運転動作を行う(Y22、Y23、Y42、Y43、Y62、Y63、Y102、Y103)。蓄熱ユニット4は、定常運転動作時に、チラー装置120の出力ポート120bから出力される冷媒によって、潜熱蓄熱材422が再生される(Y28、Y48、Y68、Y108)。チラー装置120は、定常運転動作時、出力ポート120bから出力される冷媒の温度が-20℃に安定している(Z2、Z4、Z6、
Z10)。
【0077】
蓄熱ユニット4を流れる冷媒は、潜熱蓄熱材422と熱交換するため、チラー装置120の出力ポート120bから出力されたときより温度が高い。しかし、潜熱蓄熱材422の蓄熱温度が-10℃であるため、蓄熱ユニット4を流れた冷媒は、温度制御部材110を流れた冷媒より、出力ポート120bから出力される冷媒に対する温度差が小さい。よって、チラー装置120は、温度制御部材110を流れた冷媒を冷却するのに必要なチラー能力で、蓄熱ユニット4を十分に再生させることができる。
【0078】
実施例は、温度制御部材110が設定温度を60℃から0℃に変更された場合(X3)、あるいは、プラズマがONされたことにより温度制御部材110が急峻な温度上昇を生じた場合、第1開閉弁21が弁閉状態から弁開状態に切り替えられ、第2開閉弁22が弁開状態から弁閉状態に切り替えられることにより、定常運転動作を熱交換動作に自動で切り替えられる(Y32、Y33、Y52、Y53、Y92、Y93)。流量分配部3は、温度制御部材110の温度を下げるために、温度制御部材110側に供給する冷媒の流量を増加させるように動作する(Y34、Y54、Y94)。これに伴い、図中Z3x、Z5x、Z9xに示すように、チラー装置120の出力ポート120bから出力する冷媒の温度が上昇するが、そのピーク値は比較例より小さい。
【0079】
温度制御部材110から戻り回路L2に入力する冷媒は、比較例と同様、定常運転動作時より流量が増加し、熱量を増加させる。しかし、冷媒は、蓄熱ユニット4の潜熱蓄熱材422と熱交換することによって温度を下げられてから、チラー装置120に戻される。そのため、チラー装置120は、比較例より、入力ポート120aに入力した冷媒の熱量が小さくなる。よって、実施例は、比較例よりも、チラー装置120が入力ポート120aに入力した冷媒を-20℃近くまで冷却しやすく、出力ポート120bから出力する冷媒の温度のピーク値を抑制することができる。そして、実施例は、ピーク値発生時に冷媒の温度を安定させるのに要する時間(図中t3x、t5x、t9x)が、比較例の時間(t3、t5、t9)より短くなるため、実施例を使用する半導体製造装置は、比較例を使用する半導体製造装置よりタクトタイムを短くできる。また、チラー装置120を大型にしてチラー能力を変える必要がないので、半導体製造装置の大きさを維持できる。また、プラズマエネルギーが大きくなった場合にも、蓄熱ユニット4の潜熱蓄熱材422を変えれば、チラー装置120を交換する必要がない。
【0080】
尚、熱交換システム1は、熱交換動作の後、定常運転動作に自動で切り替えられるため、蓄熱ユニット4は、熱交換動作時に失った蓄熱エネルギーが、定常運転動作により、冷媒の熱を利用して自動的に回復される。よって、熱交換システム1は、省エネルギーで継続的に、チラー装置120にかかる負荷を軽減できる。
【0081】
以上、説明したように、本形態の熱交換システム1は、蓄熱ユニット4の熱エネルギーを利用したり、チラー装置120から温度制御部材110に供給する冷媒を温度制御部材110からチラー装置120に戻される冷媒に合流させたりすることにより、温度制御部材110からチラー装置120に戻す冷媒とチラー装置120に貯蔵されている冷媒との温度差を小さくしているので、チラー装置120にかかる負荷を軽減することができる。付随的効果とし、チラー装置120は、負荷が軽減されるので、温度制御部材110から出力される冷媒の温度に対してチラー能力が低いものでよく、小型化のものを使用できる。
【0082】
また、熱交換システム1は、例えば、流量分配部3により、チラー装置120から供給される冷媒をバイパス回路L3側に流すことにより、冷媒の熱により蓄熱ユニット4を再生させることができるので、省エネルギーでチラー装置120にかかる負荷を軽減することができる。
【0083】
しかも、熱交換システム1は、戻り回路L2を第1分岐回路L21と第2分岐回路L22に分岐させ、蓄熱ユニット4の再生を行う場合に、温度制御部材110から戻ってきた流体を、蓄熱ユニット4を通さずにチラー装置120に戻せるようにしているので、蓄熱ユニット4を効率良く再生できる。
【0084】
また、熱交換システム1は、冷媒が配管部材411を流れる際に熱交換部材42と熱交換を行うので、冷媒と熱交換部材42との熱交換効率を良好にすることができる。冷媒は、金属繊維シート412の空隙4123を通って配管部材411を流れ、金属繊維シート412と配管部材411を介して熱交換部材42と熱交換を行うので、冷媒が蓄熱ユニット4を流れる際に生じる圧損を抑制しつつ、冷媒と熱交換部材42との熱交換効率を良好にすることができる。更に、配管部材411と熱交換部材42は、薄い直方体形状をなし、積層されているので、熱媒体の流量を確保しつつ、配管部材411と熱交換部材42の熱交換効率を高めることができる。
【0085】
尚、チラー装置120が、冷媒に変えて、例えば、温度制御部材110の設定温度より高温の高温媒体を貯蔵し、その高温媒体を温度制御部材110に循環させて温度制御部材110を加熱するようにしても良い。この場合、熱交換システム1は、回路構成を変えず、蓄熱ユニット4の熱交換部材42を高温対応のもの、例えば、高温媒体の温度が90℃の場合には、蓄熱温度が80℃のものに交換すれば良い。この場合も、熱交換システム1は、上記冷媒と同様に定常運転動作を行うことにより、蓄熱ユニット4を高温媒体の放熱により効率良く再生できる。つまり、蓄熱ユニット4は、高温媒体から熱を吸収して蓄熱温度を上昇させる。一方、高温媒体は、蓄熱ユニット4に熱を奪われて、温度を低下させる。また、熱交換システム1は、上記と同様に熱交換動作を行うことにより、温度制御部材110及び配管部の放熱等によって温度を下げられた高温媒体を蓄熱ユニット4で温めてからチラー装置120に戻すことができるので、チラー装置120にかかる負荷を軽減できる。つまり、蓄熱ユニット4は、高温媒体に熱を与えて蓄熱温度を低下させる。一方、高温媒体は、蓄熱ユニット4から熱を与えられて、温度を上昇させる。
【0086】
この場合、コントローラ11は、温度制御部材110の設定温度より高温の高温媒体を温度制御部材110に供給して温度制御部材110の温度を調節するユニットに用いられている。そのため、コントローラ11は、例えば
図8Bに示す切替条件を用いて、熱交換システム1の動作を自動的に切り替える。
【0087】
図8Bにおいて、コントローラ11が定常運転動作を熱交換動作に切り替える切替条件としては、例えば、コントローラ11が、温度制御部材110の設定温度を現在の値から上げる設定温度上昇情報を、上位コントローラ130から受信する場合がある。また例えば、コントローラ11が、温度センサ114から受信する温度測定値に基づいて、温度制御部材110が急峻な温度低下を発生したことを検知した場合がある。また例えば、コントローラ11が、入熱オフ情報を上位コントローラ130から受信した場合がある。更に例えば、コントローラ11が、流量分配部3において、チラー装置120から出力された冷媒を温度制御部材110側に分配する流量分配率を、所定値未満とする場合がある。
【0088】
コントローラ11が熱交換動作を定常運転動作に切り替える切替条件としては、例えば、コントローラ11が、温度センサ114から受信する温度測定値に基づいて、温度制御部材110の温度が設定温度に安定していることを検知した場合がある。また例えば、コントローラ11が、時間を計測するタイマを内蔵し、熱交換動作を開始してから設定時間が経過した場合がある。更に例えば、コントローラ11が、流量分配部3において、チラー装置120から出力された冷媒を温度制御部材110側に分配する流量分配率を、所定値以上とする場合がある。
【0089】
尚、設定温度上昇情報は、設定温度を上げる前に受信してもよいし、設定温度を上げた後に受信しても良い。入熱オフ情報は、入熱停止前に受信しても良いし、入熱停止後に受信しても良い。
【0090】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図11は、本発明の第2実施形態に係る熱交換システム1001の概略構成図である。第2実施形態の熱交換システム1001は、第1分岐回路L21が更に分岐し、流路切替部1200によって流路を切り替えられる点が、第1実施形態と相違している。ここでは、第1実施形態と相違する点を説明し、第1実施形態と共通する構成については図面に第1実施形態と同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0091】
熱交換システム1001の第1分岐回路L21は、第1接続点P1よりチラー装置120側(下流側)に設けられた分岐点P5において、第3分岐回路L211と第4分岐回路L212に分岐している。第3分岐回路L211は、チラー装置120に連通し、絞り弁8が配設されている。第4分岐回路L212は、第2分岐回路L22に接続し、蓄熱ユニット4が配設されている。
【0092】
分岐点P5には、流路切替部1200が設けられている。流路切替部1200は、第1開閉弁1202と第2開閉弁1204を備える。第1開閉弁1202は、第3分岐回路L211に配設され、第2開閉弁1204は、第4分岐回路L212に配設されている。流路切替部1200は、チラー装置120から流量分配部3を介して第1分岐回路L21に流入した冷媒の流路を切り換える。流路切替部1200は、「第2流量分配部」の一例である。
【0093】
続いて、熱交換システム1001の動作について
図12~
図14を参照して説明する。
【0094】
熱交換システム1001は、
図12に示す再生動作と、
図13に示す未使用動作と、
図14に示す熱交換動作を行う。本明細書において、「再生動作」とは、チラー装置120から出力される冷媒を用いて蓄熱ユニット4の潜熱蓄熱材422を再生させる動作をいう。また、本明細書において、「未使用動作」とは、蓄熱ユニット4を使用しない動作をいう。
【0095】
図12に示すように、熱交換システム1001のコントローラ11は、再生動作を行う場合、流路切替部2の第2開閉弁22と流路切替部1200の第2開閉弁1204を弁開させ、流路切替部2の第1開閉弁21と流路切替部1200の第1開閉弁1202を弁閉させる。そして、コントローラ11は、温度制御部材110の温度を設定温度に安定させるように、流量分配部3を動作させる。
【0096】
流路切替部2の第1開閉弁21が弁閉され、第2開閉弁22が弁開されているため、流量分配部3から温度制御部材110側に分配された冷媒は、温度制御部材110と熱交換した後、戻り回路L2、第2分岐回路L22へと流れ、蓄熱ユニット4を通らずにチラー装置120に戻される。
【0097】
流量分配部3からバイパス回路L3側に分配された冷媒は、流路切替部1200の第1開閉弁1202が弁閉され、第2開閉弁1204が弁開されているため、第4分岐回路L212へ流れる。よって、冷媒は、蓄熱ユニット4を通ってチラー装置120に戻される。このとき、蓄熱ユニット4の熱交換部材42は、流路形成部材41を流れる冷媒と熱交換し、再生される。
【0098】
図13に示すように、熱交換システム1001のコントローラ11は、未使用動作を行う場合、流路切替部2の第2開閉弁22と流路切替部1200の第1開閉弁1202を弁開させ、流路切替部2の第1開閉弁21と流路切替部1200の第2開閉弁1204を弁閉させる。そして、熱交換システム1001は、温度制御部材110の温度を安定させるように、流量分配部3が温度制御部材110側とバイパス回路L3側に分配する冷媒の流量を調整する。流量分配部3から温度制御部材110側に供給された冷媒は、再生動作時と同様にして、チラー装置120に戻される。
【0099】
流量分配部3からバイパス回路L3側に供給された冷媒は、流路切替部1200の第2開閉弁1204が弁閉され、第1開閉弁1202が弁開されているため、第3分岐回路L211へ流れる。よって、冷媒は、蓄熱ユニット4の熱交換部材42と熱交換せず、チラー装置120から出力された温度を維持した状態でチラー装置120に戻される。
【0100】
上記に対して、
図14に示すように、熱交換システム1001は、熱交換動作を行う場合、流路切替部2の第1開閉弁21と流路切替部1200の第2開閉弁1204を弁開させ、流路切替部2の第2開閉弁22と流路切替部1200の第1開閉弁1202を弁閉させる。流量分配部3は、温度制御部材110側へ供給する冷媒の流量を大きくするように、動作する。
【0101】
流路切替部2の第2開閉弁22が弁閉され、第1開閉弁21が弁開されているため、流量分配部3から温度制御部材110側に供給された冷媒は、温度制御部材110を冷却した後、戻り回路L2、第1分岐回路L21へと流れる。そして、流路切替部1200の第1開閉弁1202が弁閉され、第2開閉弁1204が弁開されているため、冷媒は、第4分岐回路L212へ流入し、蓄熱ユニット4を通ってチラー装置120に戻される。
【0102】
蓄熱ユニット4を流れる冷媒は、流路形成部材41を流れる際に、熱交換部材42と熱交換する。そのため、チラー装置120には、熱交換部材42と同程度の温度に冷却された冷媒が戻される、よって、チラー装置120は、冷媒を冷却する負荷が軽減される。
【0103】
ここで、コントローラ11は、次のような切替条件に従って、熱交換システム1001の動作を切り替える。すなわち、コントローラ11は、
図8Aの熱交換動作を定常運転動作に切り替える何れかの切替条件に従って、熱交換動作を、再生動作又は未使用動作に自動的に切り替える。また、コントローラ11は、
図8Aの定常運転動作を熱交換動作に切り替える何れかの切替条件に従って、再生動作又は未使用動作を、熱交換動作に自動的に切り替える。
【0104】
更に、コントローラ11は、例えば、蓄熱ユニット4の熱量が所定熱量未満である場合に、再生動作を実行し、蓄熱ユニット4の熱量が所定熱量以上である場合に、未使用動作を実行する。また例えば、コントローラ11は、時間に応じて、未使用動作と再生動作を切り替える。
【0105】
以上説明したように、本形態の熱交換システム1001は、必要に応じて流路切替部1200を用いて流路を切り替え、蓄熱ユニット4の再生を行うことができるので、蓄熱ユニット4の無用な再生を回避し、省エネ効果を高めることができる。
【0106】
なお、上記説明では、流路切替部1200は、第1開閉弁1202と第2開閉弁1204を用いて第1分岐回路L21を第3分岐回路L211と第4分岐回路L212の何れかに、バイパス回路L3から第1分岐回路L21に流入した冷媒を全て供給した。これに対して、例えば、流路切替部1200を、流量分配部3と同様に構成した流量分配部としてもよい。すなわち、第3分岐回路L211に第1開度比例弁を配置し、第4分岐回路L212に第2開度比例弁を配置することにより、バイパス回路L3から第1分岐回路L21に流入した冷媒を、第3分岐回路L211と第4分岐回路L212に分配するようにしてもよい。この場合、熱交換システム1001は、蓄熱ユニット4の蓄熱量に応じた流量で蓄熱ユニット4に冷媒を流し、再生動作を行うことができ、無駄な再生動作を抑制できる。
【0107】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態に係る熱交換システムについて説明する。
図15は、本発明の第3実施形態に係る熱交換システム2001の概略構成図である。熱交換システム2001は、温度制御部材110と低温用チラー装置2120Aと高温用チラー装置2120Bとの間で温調用流体を循環させる循環経路上に設けられている。温調用流体は「熱媒体」の一例である。熱交換システム2001は、蓄熱温度が異なる2種類の低温用蓄熱ユニット4Aと高温用蓄熱ユニット4Bを備える点が、第1実施形態と相違している。低温用チラー装置2120Aは「第1チラー装置」の一例である。高温用チラー装置2120Bは「第2チラー装置」の一例である。
【0108】
温度制御部材110は、ヒータ112と温調用流体によって温度を調整される。なお、ヒータ112はなくても良い。
【0109】
低温用チラー装置2120Aは、温度制御部材110を循環する温調用流体より低温である低温流体を低温タンク2122Aに貯蔵し、低温用ポンプ2124Aを用いて低温流体を温度制御部材110側に送り出している。高温用チラー装置2120Bは、低温流体並びに温度制御部材110を循環する温調用流体より、高温である高温流体を、高温タンク2122Bに貯蔵し、高温用ポンプ2124Bを用いて高温流体を温度制御部材110側に送り出している。本形態では、低温用チラー装置2120Aは、低温流体の温度を-20℃に調整し、高温用チラー装置2120Bは、高温流体の温度を90℃に調整するものとする。尚、低温流体と高温流体は「熱媒体」の一例である。低温流体は「第1熱媒体」の一例である。高温流体は「第2熱媒体」の一例である。
【0110】
熱交換システム2001は、出力回路L51と、入力回路L52と、接続回路L53と、低温流体用往き回路L61と、低温流体用戻り回路L62と、低温流体用バイパス回路L63と、高温流体用往き回路L71と、高温流体用戻り回路L72と、高温流体用バイパス回路L73とを備えている。低温流体用往き回路L61は、往き回路、第1往き回路の一例であり、低温流体用戻り回路L62は、戻り回路、第1戻り回路の一例であり、低温流体用バイパス回路L63は、バイパス回路、第1バイパス回路の一例である。高温流体用往き回路L71は、往き回路、第2往き回路の一例であり、高温流体用戻り回路L72は、戻り回路、第2戻り回路の一例であり、高温流体用バイパス回路L73は、バイパス回路、第2バイパス回路の一例である。出力回路L51と、入力回路L52と、接続回路L53は、メイン循環回路の一例である。
【0111】
出力回路L51は、温度制御部材110に温調用流体を供給する。入力回路L52は、温度制御部材110から温調用流体を入力する。接続回路L53は、出力回路L51と入力回路L52とを接続する。入力回路L52には、循環ポンプ2002が配設されている。温調用流体は、循環ポンプ2002のポンプ動作により、温度制御部材110と熱交換システム2001との間を出力回路L51と、入力回路L52と、接続回路L53とを介して一定流量で循環することができる。尚、循環ポンプ2002は、熱交換システム2001の外部に設けても良い。
【0112】
低温流体用往き回路L61は、低温用チラー装置2120Aと出力回路L51とを接続し、低温用チラー装置2120Aから温度制御部材110に低温流体を供給する。低温流体用戻り回路L62は、入力回路L52と低温用チラー装置2120Aを接続し、温調用流体を低温用チラー装置2120Aに戻す。低温流体用戻り回路L62は、第1実施形態と同様、分岐点P4Aにおいて、低温流体用第1分岐回路L621と、低温流体用第2分岐回路L622に分岐している。分岐点P4Aには、第1実施形態と同様、低温用流路切替部2Aが設けられている。低温流体用往き回路L61と低温流体用第1分岐回路L621は、第1実施形態と同様、低温流体用バイパス回路L63を介して接続されている。低温流体用第1分岐回路L621は、低温流体用バイパス回路L63と接続する接続点P1Aより低温用チラー装置2120A側に、低温用蓄熱ユニット4Aが配設されている。本形態の低温用蓄熱ユニット4Aには、蓄熱温度が-10℃の熱交換部材42が使用されている。
【0113】
高温流体用往き回路L71は、高温用チラー装置2120Bと出力回路L51とを接続し、高温用チラー装置2120Bから温度制御部材110に高温流体を供給する。高温流体用戻り回路L72は、入力回路L52と高温用チラー装置2120Bを接続し、温調用流体を高温用チラー装置2120Bに戻す。高温流体用戻り回路L72は、第1実施形態と同様、分岐点P4Bにおいて、高温流体用第1分岐回路L721と、高温流体用第2分岐回路L722に分岐している。分岐点P4Bには、第1実施形態と同様、高温用流路切替部2Bが設けられている。高温流体用往き回路L71と高温流体用第1分岐回路L721は、第1実施形態と同様、高温流体用バイパス回路L73を介して接続されている。高温流体用第1分岐回路L721には、高温流体用バイパス回路L73と接続する接続点P1Bより高温用チラー装置2120B側に、高温用蓄熱ユニット4Bが配設されている。本形態の高温用蓄熱ユニット4Bには、蓄熱温度が80℃の熱交換部材42が使用されている。
【0114】
なお、分岐点P4A,P4Bは、それぞれ第1分岐点の一例であり、低温用流路切替部2Aと高温用流路切替部2Bは、それぞれ流路切替部の一例である。低温流体用第1分岐回路L621と高温流体用第1分岐回路L721は、それぞれ第1分岐回路の一例であり、低温流体用第2分岐回路L622と高温流体用第2分岐回路L722は、それぞれ第2分岐回路の一例である。低温用蓄熱ユニット4Aは、潜熱蓄熱部材、第1潜熱蓄熱部材の一例であり、高温用蓄熱ユニット4Bは、潜熱蓄熱部材、第2潜熱蓄熱部材の一例である。接続点P1Aは、第1接続点、低温側接続点の一例であり、接続点P1Bは、第1接続点、高温側接続点の一例である。
【0115】
熱交換システム2001は、接続回路L53と低温流体用往き回路L61と高温流体用往き回路L71が合流する合流点P6に、流量分配部2003が設けられている。合流点P6及び流量分配部2003は、低温流体用往き回路L61と低温流体用バイパス回路L63との接続点P2A、及び、高温流体用往き回路L71と高温流体用バイパス回路L73との接続点P2Bより、温度制御部材110側に設けられている。
【0116】
流量分配部2003は、例えば、スプール弁であって、接続回路L53と出力回路L51との連通状態を調整する第1開度比例部V1と、低温流体用往き回路L61と出力回路L51との連通状態を調整する第2開度比例部V2と、高温流体用往き回路L71と出力回路L51との連通状態を調整する第3開度比例部V3を備える。流量分配部2003は、出力回路L51に出力する温調用流体の流量を安定させた状態で、第1開度比例部V1~第3開度比例部V3を連動して動作させることにより、温調用流体と低温流体と高温流体の混合比を調整し、出力回路L51から温度制御部材110に出力する温調用流体の温度を制御する。つまり、流量分配部2003の分配割合に応じて、低温流体は、温度制御部材110側と低温流体用バイパス回路L63側に分配され、高温流体は、温度制御部材110側と高温流体用バイパス回路L73側に分配される。尚、流量分配部2003は、第1流量分配部、流量分配部の一例であり、合流点P6は、合流部の一例である。接続点P2A,P2Bは、それぞれ第2接続点の一例である。
【0117】
そして、接続回路L53と低温流体用戻り回路L62と高温流体用戻り回路L72が分岐する分岐点P7には、チェック弁CV1、CV2、CV3が配設されている。分岐点P7は、分流部の一例であり、チェック弁CV1、CV2、CV3は、分流制御部の一例である。チェック弁CV1は、接続回路L53に配設され、チェック弁CV2は、低温流体用戻り回路L62に配設され、チェック弁CV3は、高温流体用戻り回路L72に配設され、流量分配部2003の分配割合に応じて温調用流体が接続回路L53と低温流体用戻り回路L62と高温流体用戻り回路L72に流れるようになっている。
【0118】
このような熱交換システム2001のコントローラ11は、低温用チラー装置2120A側の熱交換動作と定常運転動作を、例えば、
図8Aの何れかの切替条件に従って切り替え、高温用チラー装置2120B側の熱交換動作と定常運転動作を、
図8Bの何れかの切替条件に従って切り替える。
【0119】
具体的に、例えば、温度制御部材110の温度が安定している場合、コントローラ11は、低温用流路切替部2A及び高温用流路切替部2Bの第1開閉弁21A、21Bを弁閉させ、第2開閉弁22A、22Bを弁開させる。コントローラ11は、例えば、ヒータ112の加熱分だけ温度制御部材110を冷却するように、温調用流体に低温流体を合流させ、高温流体を合流させないように、流量分配部2003を動作させる。これにより、低温用チラー装置2120A側でも高温用チラー装置2120B側でも、第1実施形態と同様に定常運転動作が行われ、低温用蓄熱ユニット4A及び高温用蓄熱ユニット4Bが再生される。
【0120】
一方、例えば、コントローラ11は、温度制御部材110の温度が安定しているときに、設定温度低下情報を受信した場合、低温用流路切替部2Aの第1開閉弁21Aを弁開させ、第2開閉弁22Aを弁閉させる。コントローラ11は、温調用流体に低温流体を合流させ、高温流体を合流させないように、流量分配部2003を動作させる。これにより、低温用チラー装置2120A側では、第1実施形態と同様に熱交換動作が行われ、低温用チラー装置2120Aの負荷が軽減される。一方、高温用チラー装置2120B側では、第1実施形態と同様に定常運転動作が行われ、高温用蓄熱ユニット4Bが再生される。
【0121】
また、例えば、コントローラ11は、温度制御部材110の温度が安定しているときに、設定温度上昇情報を受信した場合、高温用流路切替部2Bの第1開閉弁21Bを弁開させ、第2開閉弁22Bを弁閉させる。コントローラ11は、温調用流体に高温流体を合流させ、低温流体を合流させないように、流量分配部2003を動作させる。これにより、高温用チラー装置2120B側では、第1実施形態と同様に熱交換動作が行われ、高温用チラー装置2120Bの負荷が軽減される。一方、低温用チラー装置2120A側では、第1実施形態と同様に定常運転動作が行われ、低温用蓄熱ユニット4Aが再生される。
【0122】
よって、本形態によれば、温調用流体を低温用チラー装置2120Aに戻す低温流体用戻り回路L62の低温流体用第1分岐回路L621に蓄熱温度の低い低温用蓄熱ユニット4Aを設け、温調用流体を高温用チラー装置2120Bに戻す高温流体用戻り回路L72の高温流体用第1分岐回路L721に蓄熱温度の高い高温用蓄熱ユニット4Bを設けているので、温調用流体を低温流体の温度又は高温流体の温度に近づけてから低温用チラー装置2120A又は高温用チラー装置2120Bに戻すことができ、低温用チラー装置2120Aと高温用チラー装置2120Bの負荷を軽減できる。また、低温流体と高温流体の熱を利用して低温用蓄熱ユニット4A及び高温用蓄熱ユニット4Bを再生できるので、省エネルギーで低温用チラー装置2120Aと高温用チラー装置2120Bの負荷を軽減できる。
【0123】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。例えば、上記実施形態では、熱交換システム1、1001、2001を半導体製造装置に使用したが、チラー装置と制御対象物に熱媒体を循環させる他の装置に適用しても良い。
【0124】
戻り回路L2は、分岐させなくても良い。ただし、上記形態のように、戻り回路L2を第1分岐回路L21と第2分岐回路L22に分岐させた場合、チラー装置120から供給される冷媒を、温度制御部材110を経由せずに蓄熱ユニット4に流すことによって、蓄熱ユニット4の熱交換部材42を効率良く再生できる。
【0125】
第1分岐回路L21は、第3分岐回路L211と第4分岐回路L212に分岐させなくても良い。ただし、上記形態のように、第1分岐回路L21を第3分岐回路L211と第4分岐回路L212に分岐させることにより、例えば、蓄熱ユニット4の再生が不要な場合に、蓄熱ユニット4を迂回して冷媒を循環させることが可能になり、省エネ効果が高くなる。
【0126】
流路形成部材41は、金属繊維シート412を備えなくてもよい。また、流路形成部材41は、結着部C1、C2を備えず、圧接等により流路面4111に接した状態で金属繊維シート412が配管部材411に内設されても良い。但し、上記形態のように、流路形成部材41が結着部C1、C2を備えることにより、金属繊維シート412と配管部材411との間の熱伝導性が向上し、熱媒体と熱交換部材42との間の熱交換を促進させることができる。
【0127】
図16に示すように、熱交換部材42の内部空間4211に、金属繊維シート412と同様の金属繊維シート423(第2金属繊維シートの一例)を収容体421に接するように設けても良い。この場合、収容体421は、例えば、金属繊維シート423を収容した状態で焼結加工を施されることによって、内部空間4211の内側面に金属繊維シート423を結着させてもよい。これによれば、潜熱蓄熱材422が、金属繊維シート423の空隙に導入され、金属繊維シート423を介して収容体421と熱交換することができるので、熱交換部材42の熱交換効率を向上させることができる。
【0128】
金属繊維シートは、流路形成部材41と熱交換部材42の両方に設けられていてもよいし、流路形成部材41と熱交換部材42の何れか一方に設けられてもよいし、流路形成部材41と熱交換部材42の両方に設けられていなくてもよい。
【0129】
流路形成部材41と熱交換部材42は、直方体形状でなくても良い。例えば、流路形成部材41と熱交換部材42を大きさの異なる円筒形状に設け、入れ子状態で配置するようにしてもよい。この場合、径方向において最も内側に流路形成部材を配置し、最も外側に熱交換部材42を配置し、外周面を断熱材で覆うようにすると良い。但し、上記形態のように、流路形成部材41と熱交換部材42の外形を同じ直方体形状にすることで、流路形成部材41と熱交換部材42のストックを減らしつつ、熱媒体の流量などに応じて蓄熱ユニット4の構造や蓄熱能力を簡単に変更することができる。
【0130】
蓄熱ユニット4が断熱材43を備えなくても良い。また例えば、流路形成部材41と熱交換部材42とにより構成するユニット全体を密閉し、真空にすることによって、ユニットを真空断熱してもよい。
【0131】
第1温度センサ6と第2温度センサ7を省略し、温度センサ114のみで熱媒体の温度を調整してもよい。但し、第1温度センサ6と第2温度センサ7を設けた方が、熱媒体の温度を精度良く制御できる可能性が高い。
【0132】
上記形態の蓄熱ユニット4は、配管部材411と熱交換部材42の収容体421が独立しているが、配管部材411を省略し、収容体に熱媒体が流れる流路を形成し、収容体が配管部材411として機能するようにしてもよい。この場合、配管部材411と同様、収容体の流路に金属繊維シートを内設してもよい。
【0133】
例えば、配管部材411と金属繊維シート412と収容体421を、樹脂などのコストの安い材料で形成し、それらの表面に熱伝導率が高い金属膜を形成してもよい。また、配管部材411の流路面4111と金属繊維シート412の表面を、耐食性や耐薬品性を有する材料(例えばニッケルメッキ)でコーティングしてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 熱交換システム
2 流路切替部
3 流量分配部
110 温度制御部材(制御対象物の一例)
120 チラー装置
L1 往き回路
L2 戻り回路
L3 バイパス回路
L21 第1分岐回路
L22 第2分岐回路
P1 第1接続点
P2 第2接続点
P4 分岐点