IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】延性吸引装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/24 20060101AFI20231218BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61B 1/233 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61B17/24
A61M1/00 161
A61B1/233
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021518477
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2019058077
(87)【国際公開番号】W WO2020070583
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】62/741,402
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/552,132
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビークラー・クリストファー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】オカルスキ・ケビン・マーク
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】グリナー・バディム
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534832(JP,A)
【文献】実開昭60-180411(JP,U)
【文献】特開平11-290265(JP,A)
【文献】特表2014-501557(JP,A)
【文献】特表2017-511187(JP,A)
【文献】国際公開第2006/123398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
A61M 1/00
A61B 1/233
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ツールであって、
ハンドルと、
前記ハンドルに連結された近位端と、生体の身体の開口に挿入されるように構成された遠位端と、を有する可撓性挿入管と、
内管であって、曲げ力に応答して0~120度の角度の範囲にわたって破断することなく屈曲可能であり、屈曲形状に曲げられた後、前記曲げ力が取り除かれた後に前記屈曲形状を保持するように構成されており、前記可撓性挿入管内に位置し、かつ前記可撓性挿入管の前記遠位端に近接した遠位終端部を有する、内管と、
可撓性管であって、ルーメンを画定し、かつ前記内管内に収容されている、可撓性管と、
作業先端部であって、開口部を有しており、かつ前記身体内の組織と接触し、前記内管の前記遠位終端部と当接するように構成されている、作業先端部と、
剛性外管であって、前記作業先端部の前記開口部が前記可撓性管のルーメンと連通している状態を維持するように、前記作業先端部の外面及び前記内管の外面をそれぞれ把持する内面を有する、剛性外管と、を備え
前記可撓性挿入管の遠位部の内面内に、前記剛性外管の近位部が位置し、前記剛性外管の前記近位部は、前記内管および前記可撓性挿入管間に挟み込まれている、外科用ツール。
【請求項2】
前記作業先端部に近接して位置する少なくとも1つの磁気センサを備える、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項3】
前記少なくとも1つの磁気センサが、第1の対称軸を有する第1のコイルと、前記第1の対称軸に直交する成分を含む第2の対称軸を有する第2のコイルと、を備える、請求項2に記載の外科用ツール。
【請求項4】
前記第2の対称軸が、前記第1の対称軸と60°~120°の非直交角度をなす、請求項3に記載の外科用ツール。
【請求項5】
前記少なくとも1つの磁気センサが、前記少なくとも1つの磁気センサを横断する磁場に応答して、前記身体内の前記作業先端部の位置及び向きを示す信号を生成するように構成されている、請求項2に記載の外科用ツール。
【請求項6】
ケーブル線を備え、前記ケーブル線は、前記少なくとも1つの磁気センサに接続されており、前記磁気センサからの信号を伝達するように構成されており、前記内管と前記可撓性挿入管との間に位置している、請求項2に記載の外科用ツール。
【請求項7】
前記可撓性挿入管が、前記剛性外管を少なくとも部分的に覆っている、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項8】
前記内管が、屈曲可能なアルミニウムから形成されている、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項9】
吸引ツールとして動作可能である、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項10】
前記作業先端部内に位置付けられ、前記作業先端部の外部にある前記身体の部分を撮像するように構成されているカメラを備える、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項11】
前記作業先端部が剛性管状要素として形成され、前記カメラが前記剛性管状要素内に位置している、請求項10に記載の外科用ツール。
【請求項12】
方法であって、
ハンドルを提供することと、
熱可塑性エラストマーをリフローすることによって可撓性挿入管を形成することと、
前記可撓性挿入管の近位端を前記ハンドルに連結することであって、前記可撓性挿入管は、生体の身体の開口に挿入されるように構成された遠位端を有する、連結することと、
前記可撓性挿入管内に内管を配置することであって、前記内管は、曲げ力に応答して0~120度の角度の範囲にわたって破断することなく屈曲可能であり、屈曲形状に曲げられた後、前記曲げ力が取り除かれた後に前記屈曲形状を保持するように構成されており、前記内管が、前記可撓性挿入管の前記遠位端に近接した遠位終端部を有する、内管を配置することと、
前記内管内に可撓性管を配置することであって、前記可撓性管はルーメンを画定する、可撓性管を配置することと、
前記身体内の組織と接触するように構成されており、開口部を有する作業先端部を、前記内管の前記遠位終端部と当接させることと、
前記作業先端部の前記開口部が前記可撓性管のルーメンと連通している状態を維持するように、前記作業先端部の外面及び前記内管の外面をそれぞれ剛性外管の内面で把持することと、を含み、
前記可撓性挿入管の遠位部の内面内に、前記剛性外管の近位部が位置し、前記剛性外管の前記近位部は、前記内管および前記可撓性挿入管間に挟み込まれている、方法。
【請求項13】
前記作業先端部に近接して少なくとも1つの磁気センサを配置すること、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの磁気センサが、第1の対称軸を有する第1のコイルと、前記第1の対称軸に直交する成分を含む第2の対称軸を有する第2のコイルと、を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の対称軸が、前記第1の対称軸と60°~120°の非直交角度をなす、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの磁気センサからの信号を伝達するために、ケーブル線を前記少なくとも1つの磁気センサに接続することを含み、前記ケーブル線は、前記内管と前記可撓性挿入管との間に位置する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記可撓性挿入管が、前記剛性外管を少なくとも部分的に覆っている、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記内管を屈曲可能なアルミニウムから形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記作業先端部内にカメラを位置付けることと、前記カメラを、前記作業先端部の外部にある前記身体の部分を撮像するように構成することと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記熱可塑性エラストマーをリフローすることが、熱収縮チューブを前記熱可塑性エラストマーの上に配置することと、前記熱収縮チューブを加熱して、前記熱収縮チューブを収縮させ、かつ前記熱可塑性エラストマーを溶融させることと、次いで前記熱収縮チューブを除去することと、を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年10月4日出願の米国仮特許出願第62/741,402号の利益を主張するものであり、なおこの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して外科用ツールに関し、特に、調節可能である形状を有する剛性外科用ツールに関する。
【背景技術】
【0003】
副鼻腔は、人によって異なる複雑な三次元構造体であるため、特定の腔及び腔の選択された領域にアクセスするには、かかるアクセスを達成するための非常に特殊な形状を有する剛性ツールが必要となり得る。更に、ツールの最適な形状は、患者のコンピュータ断層撮影(CT)画像の検査後にのみ明らかとなり得る。内視鏡、把持器具、及び/又は吸引装置などの腔のための外科用ツールは、典型的には医師が利用可能な様々な形状で製造される。したがって、手術をする耳鼻咽喉科(ear nose throat、ENT)の医師は、腔内の特定の仕事に最も適した特定の形状を選択することができる。しかしながら、医師が利用可能な様々なツール形状が存在し得るにもかかわらず、これらの形状はいずれも最適ではない場合がある。加えて、複数の剛性ツール(異なる形状を有する)を医師に提供することは、費用がかかる。
【0004】
米国特許第9,226,800号(Burgら)は、第1の構成から第2の屈曲構成に屈曲させることができ、かつ屈曲構成を維持することができる、延性の外科用器具について記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、外科用ツールであって、
ハンドルと、
ハンドルに連結された近位端と、生体の身体の開口に挿入されるように構成された遠位端と、を有する可撓性挿入管と、
内管であって、曲げ力に応答して0~120度の角度の範囲にわたって破断することなく屈曲可能であり、屈曲形状に曲げられた後、曲げ力が取り除かれた後に屈曲形状を保持するように構成されており、挿入管内に位置し、かつ挿入管の遠位端に近接した遠位終端部を有する、内管と、
可撓性管であって、ルーメンを画定し、かつ内管内に収容されている、可撓性管と、
作業先端部であって、開口部を有しており、かつ身体内の組織と接触し、内管の遠位終端部と嵌合するように構成されている、作業先端部と、
剛性外管であって、作業先端部の開口部が可撓性管のルーメンと連通している状態を維持するように、作業先端部の外面及び内管の外面をそれぞれ把持する、剛性外管と、を備える、外科用ツール、を提供する。
【0006】
典型的には、作業先端部に近接して位置する少なくとも1つの磁気センサが存在する。
【0007】
開示される実施形態では、少なくとも1つの磁気センサは、第1の対称軸を有する第1のコイルと、第1の軸に直交する成分を含む第2の対称軸を有する第2のコイルと、を備える。第2の対称軸は、第1の軸と60°~120°の非直交角度をなしてもよい。
【0008】
更に開示される実施形態では、少なくとも1つの磁気センサは、少なくとも1つの磁気センサを横断する磁場に応答して、身体内の作業先端部の位置及び向きを示す信号を生成するように構成されている。
【0009】
なお更に開示される実施形態では、ツールはケーブル線を有し、ケーブル線は、少なくとも1つの磁気センサに接続され、かつ磁気センサからの信号を伝達するように構成されており、内管と可撓性挿入管との間に位置している。
【0010】
代替実施形態では、可撓性挿入管は、外管を少なくとも部分的に覆っている。
【0011】
更なる代替実施形態では、内管は、屈曲可能なアルミニウムから形成されている。
【0012】
ツールは、吸引ツールとして動作可能であり得る。
【0013】
なお更なる代替実施形態では、ツールは、作業先端部に位置付けられ、先端部の外部にある身体の部分を撮像するように構成されているカメラを備えていてもよい。作業先端部は剛性管状要素として形成されてもよく、カメラは剛性管状要素内に配置されてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態により、方法が更に提供され、本方法は、
ハンドルを提供することと、
熱可塑性エラストマーをリフローすることによって可撓性挿入管を形成することと、
可撓性挿入管の近位端をハンドルに連結することであって、可撓性挿入管は、生体の身体の開口に挿入されるように構成された遠位端を有する、連結することと、
挿入管内に内管を配置することであって、内管は、曲げ力に応答して0~120度の角度の範囲にわたって破断することなく屈曲可能であり、屈曲形状に曲げられた後、曲げ力が取り除かれた後に屈曲形状を保持するように構成されており、内管が、挿入管の遠位端に近接した遠位終端部を有する、内管を配置することと、
内管内に可撓性管を配置することであって、可撓性管はルーメンを画定する、可撓性管を配置することと、
身体内の組織と接触するように構成されており、開口部を有する作業先端部を、内管の遠位終端部と嵌合させることと、
作業先端部の開口部が可撓性管のルーメンと連通している状態を維持するように、作業先端部の外面及び内管の外面をそれぞれ剛性外管で把持することと、を含む。
【0015】
典型的には、エラストマーをリフローすることは、熱収縮チューブをエラストマーの上に配置することと、熱収縮チューブを加熱して、熱収縮チューブを収縮させ、かつエラストマーを溶融させることと、次いで熱収縮チューブを除去することと、を含む。
【0016】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるENT(耳鼻咽喉)用システムの概略図である。
図2A】本発明の一実施形態による、屈曲していない状態の剛性ツールの概略図である。
図2B】本発明の一実施形態による、屈曲していない状態の剛性ツールの概略図である。
図3A】本発明の一実施形態による、例示的な屈曲状態にある剛性ツールの概略図である。
図3B】本発明の一実施形態による、例示的な屈曲状態にある剛性ツールの概略図である。
図3C】本発明の一実施形態による、例示的な屈曲状態にある剛性ツールの概略図である。
図3D】本発明の一実施形態による、例示的な屈曲状態にある剛性ツールの概略図である。
図4A】本発明の一実施形態による、剛性ツールの構造を示す概略図である。
図4B】本発明の一実施形態による、剛性ツールの構造を示す概略図である。
図5A】本発明の一実施形態による、ツールの一部分の概略断面図である。
図5B】本発明の一実施形態による、ツールの一部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概論
患者の腔などの患者の内部器官へのアクセスを必要とする医療処置において、典型的には、処置を行う医師が利用可能な複数のツールが存在する。医師は、アクセスに最も適したツールを選択することができる。しかしながら、多数のツールを用意しておくことは費用がかかり、ツールのいずれもが、医師が望むとおりのものではない場合がある。
【0019】
本発明の実施形態は、医師が所望の形状に屈曲させることができる単一の剛性ツールを有することによってこれらの問題を克服する。屈曲させた後、ツールは依然として、その使用目的に好適であるほど十分に剛性である。一実施形態では、単一の剛性ツールは、副鼻腔処置で使用するように構成された吸引ツールである。
【0020】
本発明の一実施形態では、単一の剛性ツールは、可撓性挿入管に連結されるハンドルを備える。可撓性挿入管は、管が包囲するツールの要素の保護カバーとして機能する。管の近位端はハンドルに連結され、管の遠位端は、生体の開口に挿入されるように構成されている。
【0021】
内管は、内管の遠位終端部が可撓性挿入管の遠位端に近接するように可撓性挿入管内に配置される。内管は、内管ルーメンを画定する。内管は、延性である特性を有するので、曲げ力に応答して破断することなく屈曲可能である。したがって、内管は、ある角度範囲内で屈曲されることができる。内管の更なる特性は、曲げ力が除去された後にその屈曲形状を保持することである。
【0022】
ツールは、ルーメンを画定し、かつ内管内に収容される、可撓性管を備える。
【0023】
ツールはまた、内管の遠位終端部と嵌合し、かつ開口部を有する、作業先端部を備える。作業先端部は、典型的には、剛性ツールが吸引ツールである場合には吸引先端部であり、生体の組織と接触するように構成されている。
【0024】
ツールは、剛性外管を更に備え、剛性外管は、作業先端部の開口部が可撓性管のルーメンと連通している状態を維持するように、作業先端部の外面及び内管の外面を把持する。
【0025】
典型的には、剛性ツールは、作業先端部に近接して配置された少なくとも1つの磁気センサを備える。少なくとも1つのセンサは、作業先端部の位置及び向きが追跡されるのを可能にする。一実施形態では、少なくとも1つのセンサは、互いに対して60°~120°の対称軸を有する一対のセンサコイルを備える。
【0026】
詳細な説明
以下の説明において、図面中の同様の要素は、同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別用の数字に文字を添えることにより、区別される。
【0027】
ここで図1を参照すると、図1は、本発明の一実施形態による、ENT(耳鼻咽喉)用システム20の概略図である。システム20は、1つ又は2つ以上のメモリ42と通信するシステムプロセッサ40で動作する。以下の説明では、システム20は、医師54が患者22に対して副鼻腔処置を行うために使用することが想定される剛性外科用ツール21を備える。以下により詳細に説明するように、ツール21は、処置中に磁気追跡システム23によって追跡される磁気センサ32を備える。追跡を有効にするため、システム20において、患者22及び磁気追跡システム23のCT(コンピュータ断層撮影)画像の座標系が位置合わせされる。CT画像は通常、磁気共鳴撮像(MRI)画像又は透視画像を含むことができるが、本明細書の説明では、画像は、一例として透視CT画像を含むと想定される。
【0028】
副鼻腔処置前及び処置の間に、磁気追跡システムに含まれる磁気放射体アセンブリ24は、患者の頭部の下に位置付けられる。アセンブリ24は磁場放射体26を備え、磁場放射体26は、定位置に固定されるものであり、また患者22の頭部が位置する領域30に交番正弦波磁場を伝送するものである。一例として、アセンブリ24の放射体26は、患者22の頭部の周りに、ほぼ蹄鉄形に配置される。しかしながら、領域30内に放射するアセンブリ24の放射体の代替的な構成もまた、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0029】
放射体26をはじめとするシステム20の要素は、システムプロセッサ40により制御される。プロセッサ40は、典型的には、キーパッド、及び/又はマウス若しくはトラックボールなどのポインティングデバイスを備える、動作制御装置58を含むコンソール50内に搭載され得る。コンソール50は、ケーブルを介して、及び/又は無線で放射体に接続する。医師54は、システム20を用いるENT処置を実行しつつ、プロセッサと相互作用する動作制御装置58を用いる。処置を実行している間、プロセッサはスクリーン56に処置の結果を提示してもよい。
【0030】
プロセッサ40は、メモリ42に保存されたソフトウェアを用いてシステム20を操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、プロセッサ40に電子形態でダウンロードすることができ、代替的に若しくは追加的に、ソフトウェアは、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体で提供し、かつ/又は保存することができる。
【0031】
プロセッサ40は、とりわけアセンブリ24の磁気放射体26を操作するためにソフトウェアを使用する。上述したように、放射体は、種々の周波数の正弦波交番磁場を患者22の頭部を含む領域30に伝達し、放射体からの磁場はセンサ32内に信号を誘導する。信号、及び/又は信号から得られたデータは、プロセッサに有線及び/又は無線で送信されてもよく、プロセッサは、受信したデータ及び/又は信号を解析して、アセンブリによって定義された座標系に対して測定される、センサの位置の値及び向きの値を導出する。
【0032】
本明細書の説明において、剛性外科用ツール21は、装置のルーメンを通る流体の排液を可能にするために使用される吸引装置であると想定される。しかしながら、この説明は、変更すべきところは変更して、内視鏡又は把持器具などの他のタイプの外科用ツールに適合されてもよく、そのようなツールは全て、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0033】
図2A及び図2Bは、本発明の一実施形態による、屈曲していない状態の剛性ツール21の概略図であり、図3A図3B図3C、及び図3Dは、例示的な屈曲状態の剛性ツールの概略図である。図2Aはツール21の上面図を示し、図2Bはツールの側面図を示す。ツール21は、曲げられていない形態で中心軸66を画定する屈曲可能な管状部材60を備える。部材60は遠位端61を有し、部材及びその遠位端については共に以下により詳細に記載される。屈曲可能な管状部材60は、その近位端においてハンドル62に接続される。吸引が適用されたときに部材60から排出される流体を受容する目的で、ハンドル62は、管59(図2A及び図2Bには示されていないが、図1に概略的に示されている)をハンドルに接続することが可能になる連結部64を備える。いくつかの実施形態では、ハンドル62は、医師が部材60を介して吸引を制御することを可能にする制御装置を組み込んでもよい。
【0034】
図3A図3B図3C、及び図3Dは、ツール21の異なる実施例をそれぞれ概略的に示しており、ツール21A、21B、21C、及び21Dのそれぞれは、部材60をその屈曲していない状態から曲げることによって形成される。したがって、ツール21A、21B、21C、及び21Dは、実質的に同様の連結具64A、64B、64C、及び64D、並びに実質的に同様のハンドル62A、62B、62C、及び62Dを備える。ツールはそれぞれ、異なる屈曲部材60A、60B、60C、及び60Dを有する。
【0035】
図4A及び図4Bは、本発明の一実施形態による、ツール21の構造を示す概略図であり、図5A及び図5Bは、ツールの一部分の概略断面図である。図4Aは遠位端61の外観図であり、図4Bは、その内部要素を示す遠位端の部分切欠図である。図5Aは、線I-Iに沿って取られた遠位端61の近位部の断面図であり、図5Bは、線II-IIに沿って取られた遠位端の中央部の断面図である。
【0036】
遠位端61は、本明細書では吸引先端部とも呼ばれる作業先端部70で終端し、作業先端部70は、部材60のルーメン73につながる開口部72を有する。吸引先端部は、典型的には、部材60の中心軸66と直交しない角度θを成し、一実施形態では、角度θは約40°である。吸引先端部70は、典型的には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、ポリアミド、又はUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)などの剛性の生体適合性プラスチックから形成される。いくつかの実施形態では、生体適合性プラスチックは、強度を加えるために、ガラス又は炭素繊維を添加することによって強化されてもよい。いくつかの実施形態では、θを90°にして、回転対称の吸引先端部を形成してもよい。
【0037】
吸引先端部70は、剛性管74によって定位置に保持される。剛性管74は、典型的には押出成形部であり、本明細書では押出成形部74とも呼ばれ、一実施形態ではPEEKなどの剛性の生体適合性プラスチックである。
【0038】
押出成形部74は、吸引先端部の近位端が屈曲可能な内管の遠位端に接触し、吸引先端部の開口部72が屈曲可能な内管内のルーメン73と連通するように、吸引先端部の外面及び屈曲可能な内管の外面を把持することによって、吸引先端部70を屈曲可能な内管82に連結する。ルーメン73については以下でも言及している。屈曲可能な内管82は、典型的には、屈曲可能なアルミニウムから形成され、屈曲可能な内管の特性については以下に記載する。
【0039】
屈曲可能な内管82は、可撓性挿入管75によって覆われている。一実施形態では、挿入管75は、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などの熱可塑性エラストマーから形成され、挿入管は、エラストマーを内管の上にリフローすることによって形成されてもよい。リフローは、熱可塑性エラストマーの隙間嵌めされた押出成形部を内管82の上に配置し、熱収縮チューブを押出成形部の上に配置し、このアセンブリを、熱収縮チューブを収縮させかつ熱可塑性エラストマーを溶融させるのに十分な温度まで加熱し、アセンブリを冷却して挿入管75を形成することによって達成され得る。アセンブリが冷却されてから、熱収縮チューブを除去する。
【0040】
いくつかの実施形態では、可撓性挿入管75はまた、押出成形部74の一部又は全部を覆う。管75は、内管82の全てを覆い、ハンドル62に連結され、部材60の保護カバーとして機能する。管75はまた、屈曲可能な内管82の外側のケーブル線84(以下でより詳細に記載される)を覆って保護する働きをする。
【0041】
その近位端において、吸引先端部70は管状であり、一実施形態では、管状近位端の外側表面上に磁気センサ32が巻き付けられる。したがって、押出成形部74は、先端部70を把持しかつ先端部70を屈曲可能な内管82に接合する剛性コネクタとして機能することに加えて、外部環境からセンサ32を遮蔽及び絶縁するように機能する。押出成形部74とコイル32との間には、ポリウレタン接着剤又はエポキシなどの保持材料が存在し得る。センサ32からの信号は、ケーブル線84を介してハンドル62に、及びハンドルからプロセッサ40(図1)に伝達される。ケーブル線84(図5Aに断面図として概略的に示される)は、屈曲可能な内管82の外面に螺旋状に巻き付けられる。
【0042】
部材60の長さに延びる可撓性管80は、屈曲可能な内管82内に、管遠位端からハンドル62に至るまで配置される。一実施形態では、管80はポリイミドから形成される。管80はルーメン73を画定し、管のルーメンは、吸引先端部の開口部72と嵌合し、かつこれと連通する。管80はまた、管がよじれることなく、そうでない場合よりも小径の屈曲部とすることができるように、編組を含んでもよい。
【0043】
代替実施形態では、管80は、管82の内面を裏打ちする薄いPTFEコーティングの形態であってもよい。
【0044】
一実施形態では、センサ32は、典型的にはフレキシブルプリント回路基板上の平面螺旋として形成されている、1つの単軸センサ(single axis sensor、SAS)コイルである。代替実施形態では、センサ32は、典型的には、互いに平行ではない対称軸を有する矩形螺旋として形成されている、2つのSAS平面螺旋コイルを備える。2つの軸は、最適には互いに90°であるが、軸のうちの1つが他方の軸に直交する成分を有するように、互いに対して約60°~約120°であってもよい。本発明者らは、互いに対して約60°~約120°の軸を有する場合であっても、非直交コイルは依然として、十分な信号、すなわち、コイルが直交している場合の信号の87%をプロセッサ40に提供することで、磁気追跡システム23が、3つの直線寸法における遠位端61の位置、並びに3つの角度寸法における遠位端の向きを決定することが可能になることを見出した。
【0045】
上述のように、屈曲可能な内管82は、可撓性管80と可撓性挿入管75との間に位置する。内管82は、その遠位端が吸引先端部70の近位端と嵌合し、その近位端がハンドル62で終端する。部材60がその長さの実質的に全てにわたって屈曲可能である一方で、比較的強い力にさらされた場合を除いて、当該部材が剛性であるように、屈曲可能な内管82は、部材60の脊柱として機能する。内管82が屈曲可能であるように構成することにより、医師は、所望のとおりに及び図3A図3Dに例示されるように、部材60を成形することができる。
【0046】
本開示及び特許請求の範囲では、内管82などの実体は、実体を屈曲させることができる場合には、曲げ力に応答して、破断することなく、0~120°の角度の範囲にわたって屈曲可能であると想定される。屈曲可能な実体は、屈曲形状に曲げられた後、曲げ力が除去された後に屈曲形状を保持する特性を更に有する。内管82は屈曲可能であり、したがって、本明細書では屈曲可能な管82とも称される。
【0047】
一実施形態では、屈曲可能な管82は、3003などの軟質強化アルミニウム合金から形成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、吸引先端部70の遠位端は、開口部88を有し、開口部88は、内部にメラ90を固定的に受け入れるように構成されている。必要に応じて、開口部88を収容するために、吸引先端部の厚さを増加させることができる。カメラ90は、吸引先端部に近い物体の画像を提供し、画像はスクリーン56上で医師54に提示されてもよい。
【0049】
スクリーン56上に提示される画像は、吸引先端部の回転に関係なく、医師によって選択される固定された向きに維持され得る。プロセッサ40は、上述したSASの姿勢計測を使用して、吸引先端部のあらゆる回転を相殺することによって、固定された向きを維持するように構成されてもよい。プロセッサは、剛性ツール21が屈曲後に取る形状にかかわらず、固定された向きを維持し得ることが理解されるであろう。
【0050】
一実施形態では、部材60は、約166mmの長さ及び約3.6mmの外径を有する。また、センサ32は、約3.2mmの長さを有し、センサの中心は、吸引先端部70の遠位先端部から約8.3mmである。しかしながら、これらの寸法は例としてのものであり、過度の実験を行わずに他の好適な寸法が決定され得ることが理解されるであろう。
【0051】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、患者22のCT画像と磁気追跡システム23との位置合わせは、上述した処置の前にシステム20を使用して実施される。位置合わせのために、吸引先端部70の遠位先端部を、患者22の皮膚の選択された異なる領域に触れさせる。選択された異なる領域は、CT画像において識別可能な患者の鼻先端又は患者の目の間の点などである。アセンブリ24により生成される磁場との相互作用に応答してセンサ32内に誘導される信号は、アセンブリ24が較正されてから、磁気システムの座標系内で遠位先端部の位置を追跡するのを可能にする。(いくつかの実施形態では、ハンドル62は、遠位先端部が皮膚に触れたときに医師がセンサ32からの信号の取得を制御することを可能にする制御装置を組み込んでもよい。)プロセッサ40は、2つの座標系を位置合わせするために、磁気システムの座標系内の遠位先端部の位置を、CT画像座標系内の位置と相関させる。
【0052】
Biosense Webster(31 Technology Drive,Irvine,CA 92618 USA)製のCarto(登録商標)システムは、磁場によって照射される領域内のコイルの位置及び向きを見つけるために、本明細書に記載されるのと同様の追跡システムを使用しており、このシステムを使用して2つの座標系を位置合わせしてもよい。代替的には、当該技術分野で既知である位置合わせのための1つ以上の他の方法が、位置合わせを実行するために用いられてもよい。
【0053】
上に記載される実施形態は例として挙げたものであり、本発明は本明細書において上に具体的に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書において上に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0054】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ツールであって、
ハンドルと、
前記ハンドルに連結された近位端と、生体の身体の開口に挿入されるように構成された遠位端と、を有する可撓性挿入管と、
内管であって、曲げ力に応答して0~120度の角度の範囲にわたって破断することなく屈曲可能であり、屈曲形状に曲げられた後、前記曲げ力が取り除かれた後に前記屈曲形状を保持するように構成されており、前記挿入管内に位置し、かつ前記挿入管の前記遠位端に近接した遠位終端部を有する、内管と、
可撓性管であって、ルーメンを画定し、かつ前記内管内に収容されている、可撓性管と、
作業先端部であって、開口部を有しており、かつ前記身体内の組織と接触し、前記内管の前記遠位終端部と嵌合するように構成されている、作業先端部と、
剛性外管であって、前記作業先端部の前記開口部が前記可撓性管のルーメンと連通している状態を維持するように、前記作業先端部の外面及び前記内管の外面をそれぞれ把持する、剛性外管と、を備える、外科用ツール。
(2) 前記作業先端部に近接して位置する少なくとも1つの磁気センサを備える、実施態様1に記載の外科用ツール。
(3) 前記少なくとも1つの磁気センサが、第1の対称軸を有する第1のコイルと、前記第1の軸に直交する成分を含む第2の対称軸を有する第2のコイルと、を備える、実施態様2に記載の外科用ツール。
(4) 前記第2の対称軸が、前記第1の軸と60°~120°の非直交角度をなす、実施態様3に記載の外科用ツール。
(5) 前記少なくとも1つの磁気センサが、前記少なくとも1つの磁気センサを横断する磁場に応答して、前記身体内の前記作業先端部の位置及び向きを示す信号を生成するように構成されている、実施態様2に記載の外科用ツール。
【0055】
(6) ケーブル線を備え、前記ケーブル線は、前記少なくとも1つの磁気センサに接続されており、前記磁気センサからの信号を伝達するように構成されており、前記内管と前記可撓性挿入管との間に位置している、実施態様2に記載の外科用ツール。
(7) 前記可撓性挿入管が、前記外管を少なくとも部分的に覆っている、実施態様1に記載の外科用ツール。
(8) 前記内管が、屈曲可能なアルミニウムから形成されている、実施態様1に記載の外科用ツール。
(9) 吸引ツールとして動作可能である、実施態様1に記載の外科用ツール。
(10) 前記作業先端部内に位置付けられ、前記先端部の外部にある前記身体の部分を撮像するように構成されているカメラを備える、実施態様1に記載の外科用ツール。
【0056】
(11) 前記作業先端部が剛性管状要素として形成され、前記カメラが前記剛性管状要素内に位置している、実施態様10に記載の外科用ツール。
(12) 方法であって、
ハンドルを提供することと、
熱可塑性エラストマーをリフローすることによって可撓性挿入管を形成することと、
前記可撓性挿入管の近位端を前記ハンドルに連結することであって、前記可撓性挿入管は、生体の身体の開口に挿入されるように構成された遠位端を有する、連結することと、
前記挿入管内に内管を配置することであって、前記内管は、曲げ力に応答して0~120度の角度の範囲にわたって破断することなく屈曲可能であり、屈曲形状に曲げられた後、前記曲げ力が取り除かれた後に前記屈曲形状を保持するように構成されており、前記内管が、前記挿入管の前記遠位端に近接した遠位終端部を有する、内管を配置することと、
前記内管内に可撓性管を配置することであって、前記可撓性管はルーメンを画定する、可撓性管を配置することと、
前記身体内の組織と接触するように構成されており、開口部を有する作業先端部を、前記内管の前記遠位終端部と嵌合させることと、
前記作業先端部の前記開口部が前記可撓性管のルーメンと連通している状態を維持するように、前記作業先端部の外面及び前記内管の外面をそれぞれ剛性外管で把持することと、を含む、方法。
(13) 前記作業先端部に近接して少なくとも1つの磁気センサを配置すること、を含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記少なくとも1つの磁気センサが、第1の対称軸を有する第1のコイルと、前記第1の軸に直交する成分を含む第2の対称軸を有する第2のコイルと、を備える、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記第2の対称軸が、前記第1の軸と60°~120°の非直交角度をなす、実施態様14に記載の方法。
【0057】
(16) 前記少なくとも1つの磁気センサからの信号を伝達するために、ケーブル線を前記少なくとも1つの磁気センサに接続することを含み、前記ケーブル線は、前記内管と前記可撓性挿入管との間に位置する、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記可撓性挿入管が、前記外管を少なくとも部分的に覆っている、実施態様12に記載の方法。
(18) 前記内管を屈曲可能なアルミニウムから形成することを含む、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記作業先端部内にカメラを位置付けることと、前記カメラを、前記先端部の外部にある前記身体の部分を撮像するように構成することと、を含む、実施態様12に記載の方法。
(20) 前記エラストマーをリフローすることが、熱収縮チューブを前記エラストマーの上に配置することと、前記熱収縮チューブを加熱して、前記熱収縮チューブを収縮させ、かつ前記エラストマーを溶融させることと、次いで前記熱収縮チューブを除去することと、を含む、実施態様12に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B