(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20231218BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231218BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C09J175/06
B32B27/00 D
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2021529352
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2018116899
(87)【国際公開番号】W WO2020103072
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】シ、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウェンイ
(72)【発明者】
【氏名】ク、ツァオフイ
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/049672(WO,A1)
【文献】特表2019-532143(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117080(WO,A1)
【文献】特表2017-518400(JP,A)
【文献】特開2014-091770(JP,A)
【文献】特開2017-152349(JP,A)
【文献】特開2017-025287(JP,A)
【文献】特開2011-001484(JP,A)
【文献】特開2018-165324(JP,A)
【文献】国際公開第2019/045868(WO,A1)
【文献】特開2005-089712(JP,A)
【文献】特開昭58-122977(JP,A)
【文献】特表2020-521852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/06
B32B 27/00
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン接着剤組成物であって、
(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物を含む、少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、
(B)
(Bi)8,000グラム/モルを超える分子量(Mn)を有する、少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物と、
(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物と、を含む、少なくとも1つのポリオール成分と、を含み、
前記リン酸エステルポリオール化合物は、前記ポリオール成分中に0.3重量%から2重量%の量で存在する、組成物。
【請求項2】
成分(B)と成分(A)との乾燥重量による濃度比[B/A]は、1~20である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン接着剤組成物は、(i)1N/15mm~8N/15mmの結合強度を有し、(ii)85℃および85%の湿度で60時間を超えるエージング時間に合格し、および/または(iii)1ミリメートル~15ミリメートルの深絞り設定の深さを提供するのに十分な成形性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物の成分である成分(Bii)は、以下の構造(I)または構造(II)を有する化合物であり、
【化1】
上記構造(I)および構造(II)において、R’は有機基から選択され得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物である成分(Bii)は、(a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはこれらの混合物と、(b)ポリリン酸、またはポリリン酸と他の酸との混合物と、の反応生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
箔ベースの積層構造体を含むリチウムイオン電池を包装するためのパッケージであって、前記箔ベースの積層構造体は、(a)ナイロン層と、(b)箔層と、(c)ポリマー基材層と、(d)前記ナイロン層の一方の側と前記箔層の一方の側との間に配置された請求項1に記載の組成物を含む第1の上部接着剤層と、(e)前記箔層の他方の側と前記ポリマー基材層の一方の側との間に配置された請求項1に記載の組成物とは異なる第2の下部接着剤層と、の組み合わせを含む、パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関し、より具体的には、二成分ポリウレタン接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、様々な二成分(2K)タイプのポリウレタン接着剤組成物が、様々な用途で使用するために製造されている。当技術分野で公知であるが、2Kポリウレタン組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応混合物に基づいており、接着剤として長い間使用されている。2つの成分を混合すると、ポリイソシアネートとポリオールとが反応して、硬化ポリウレタン接着剤を形成し、当該反応により、多くの種類の基材に強力な接着性の結合を形成することができる。
【0003】
例えば、以下の参考文献は、良好な接着性を有する2K接着剤を開示している:米国特許第8,716,427B2号、CN104228210(A)、CN107614648A、US2014/0242333(A1)、US2015/0380695(A1)、US2016/0204395(A1)、およびWO2015/168670。
【0004】
様々な用途で使用するための2Kポリウレタン組成物に関して当技術分野ではいくらかの進歩があったが、接着剤、特に、例えば、箔ベースの複合構造積層物品のような積層複合フィルム構造体を製造するために、接着剤組成物を適切に使用することができるように、結合強度、成形性、および耐熱性を向上させた特性を示す積層接着剤の当該技術においては、依然として開発の余地がある。
【0005】
例えば、リチウムイオン電池(LIB)を包装するためのパッケージは、典型的には箔ベースの積層構造体を有し、箔ベースの積層構造体は、例えば、ナイロン、箔およびレトルト用無延伸ポリプロピレン(RCPP)の組み合わせ(ナイロン/箔/RCPP)であり得、箔ベースの積層構造体は、通常ナイロン/箔/RCPP積層フィルムの深絞り成形法によって生産される。これまで、このようなLIB用途に使用される公知の積層接着剤組成物は、深絞りおよび高温接着強さ試験(例えば、ナイロンと箔との間で120℃で15ミリメートル当たり2ニュートン[N/15mm]よりも大きい(>)結合強度を達成すること)に合格することができない。したがって、良好な結合強度、成形性、および耐熱性を有し、かつLIB用積層フィルムパッケージのような箔ベース構造の積層物品を生産するために使用することができる、2K溶媒ベースの積層接着剤組成物を提供することが所望される。
【発明の概要】
【0006】
一般に、本発明は、新規溶媒ベースの積層接着剤組成物に関する。一実施形態では、本発明の接着剤は、(1)イソシアネート末端化合物部分(NCO成分)である第1の部分と、(2)ヒドロキシル末端ポリオール(OH成分)である第2の部分と、を含む二成分溶媒ベースの積層接着剤組成物(すなわち、二液系)である。本発明の新規接着剤組成物は、(1)ポリエステルポリオールおよび(2)リン酸エステルポリオールの新規なポリオール混合物(すなわち、2K接着剤組成物の第2の部分)に基づく。リン酸エステルポリオール成分は、本発明の2K接着剤組成物において接着促進剤として提供される。
【0007】
好ましい一実施形態では、本発明は、(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物を含む少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、(B)(Bi)高分子量(例えば、>8,000グラム/モル[g/mol])を有する少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物と、(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物と、を含む少なくとも1つのポリオール成分と、を含む、2Kポリウレタン接着剤のようなポリウレタン積層接着剤組成物に関する。上記の実施形態では、成分(A)、成分(B)、または成分(A)および(B)の両方は、任意選択的に少なくとも1つの溶媒化合物を含むことができる。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、上記ポリウレタン積層接着剤組成物を作製するためのプロセスを含む。
【0009】
本発明の2K溶媒ベースの積層接着剤組成物は、有利なことに、様々な物品を生産するのに有用な箔ベースの積層構造体(例えば、ナイロン/箔/RCPP)について、結合強度、耐熱性および成形性などの特性の増強を提供する。例えば、本発明の2K接着剤は、様々な用途に使用され得るが、本発明の接着剤は、LIB用途に特に有用であり得る。
【0010】
さらに、本発明の接着剤組成物は、高分子量(Mn)ポリエステルポリオール、例えば、>8,000g/molのMnを有するポリエステルポリオールの使用を必要とする深絞り用途のために設計することができる。
【0011】
さらに、接着剤組成物中のリン酸エステルの含有量が多すぎると、組成物の性能の低下が深絞り用途において認められることが、当該技術分野において一般に知られている。しかしながら、本発明の接着剤組成物に使用されるリン酸エステルの量は、組成物の性能の低下が回避されるように、適切な所定量で使用される。
【0012】
本発明の接着剤組成物を使用することで、例えば、(1)最終的な積層接着剤中に金属化合物を塗布する必要性がないこと、(2)最終的な積層接着剤中にアクリルポリオールを塗布する必要性がないこと、(3)ポリエステルポリオール中に使用される脂肪族カルボン酸および/または芳香族カルボン酸の含有量に制限がないこと、(4)エポキシ末端ポリエステルを使用する必要性がないこと、ならびに(5)イソシアネート末端化合物中に使用される脂肪族イソシアネートおよび/または芳香族イソシアネートの含有量に制限がないこと、を含む、他の利点/強みがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】全体として数表示10で示される、LIB包装積層フィルムの典型的な5層構造体を示す概略図であり、その外側から、外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(14)、金属箔層(12)、内層側接着剤層(15)、ヒートシール層等からなる内面層(13)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般的な一実施形態では、本発明は二成分(2K)接着剤組成物を含み、より具体的には、本発明は、(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有成分、および(B)少なくとも1つのポリオール成分(またはヒドロキシル基含有成分)を含む、2K PU接着剤を含む。本発明の一例として、成分(A)を成分(B)と混合するとき、(B):(A)の比、すなわちOH/NCO乾燥重量指数は、一実施形態では1~20、別の実施形態では2~15、さらに別の実施形態では5~12であり得る。
【0015】
イソシアネート基含有成分である成分(A)は、例えば、1つ以上のポリイソシアネート化合物などの少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物を含む、1つ以上の化合物の混合物または調合物であり得る。イソシアネート基含有成分である成分(A)には、任意選択的な成分として、以下の本明細書に記載されるエチルアセテートなどの少なくとも1つの溶媒化合物も挙げられ得る。
【0016】
本発明の接着剤配合物に有用なイソシアネート基含有化合物には、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、またはこれらの混合物が挙げられ得る。本発明に有用な芳香族イソシアネートの実施形態には、例えば、4,4-MDI、2,4-MDIおよび2,2’-MDIなどのメチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)の異性体、カルボジイミド変性MDIまたはアロファネート変性MDIなどの変性MDI、2,4-TDIおよび2,6-TDIなどのトルエン-ジイソシアネート(「TDI」)の異性体、1,5-NDIなどのナフタレン-ジイソシアネート(「NDI」)の異性体、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
本発明に有用な脂肪族イソシアネート基含有化合物の実施形態には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)の異性体、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)の異性体、キシレンジイソシアネート(「XDI」)の異性体、水素化メチレンジフェニルジイソシアネート(「H12MDI」)の異性体、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
好ましい一実施形態では、本発明に有用なイソシアネート基含有化合物は、例えば、イソシアネートモノマー、ポリイソシアネート、イソシアネートプレポリマー、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択することができる。
【0019】
接着剤配合物に有用なイソシアネートモノマーの例としては、MDIの異性体、TDIの異性体などの芳香族ジイソシアネート、またはHDI、IPDIなどの脂肪族イソシアネート、およびこれらの混合物が挙げられ得る。
【0020】
接着剤配合物に有用なポリイソシアネート化合物の例としては、例えば、ポリイソシアネート付加物または三量体が挙げられ得る。例えば、ポリイソシアネート化合物には、TDI-トリメチロールプロパン付加物(TDI-TMP付加物)、およびIPDI-三量体が挙げられ得るが、これらに限定されない。ポリイソシアネート化合物は、2.8以上(≧)かつ5以下(≦)(すなわち、2.8≦f≦5)の平均NCO官能価(f)を有することができる。
【0021】
接着剤配合物に有用なイソシアネートプレポリマーの例としては、例えば、EO(エチレンオキシド)および/またはPO(プロピレンオキシド)ベースのジオールまたはトリオールに基づくMDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)末端保護プレポリマーなどの少なくとも1つのプレポリマー-ポリオール-連鎖延長剤化合物構造体が挙げられ得る。
【0022】
2K接着剤配合物中のイソシアネート化合物の量は、配合物中の成分の総乾燥重量に基づいて、一般に、一実施形態では1重量パーセント(wt%)~30wt%、別の実施形態では2wt%~25wt%、およびさらに別の実施形態では4wt%~15wt%の範囲であり得る。イソシアネート基含有成分である成分(A)の固形分は、例えば、30wt%~100wt%であり得る。
【0023】
ポリオール成分である成分(B)は、例えば、(Bi)少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物(例えば、>8,000g/molの分子量を有するポリエステルポリオール)、および(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物を含む、1つ以上の化合物の溶液、混合物、または調合物であり得る。
【0024】
本発明の接着剤配合物に有用なポリエステルポリオール化合物である成分(Bi)は、例えば、ポリカルボン酸およびポリオールから誘導されるポリエステルポリオールを含むことができる。一実施形態では、ポリオール成分(B)における使用に好適なポリエステルポリオール化合物は、例えば、少なくとも8,000g/molの数平均分子量を有するポリエステルポリオールから選択することができる。さらに、好適なポリエステルポリオールは、≧1.8~≦3(すなわち、1.8≦f≦3)のOH官能価(f)および15mgKOH/g未満(<)のOH数を有することができる。本明細書で使用される「OH数」は、1グラムのポリオール中のヒドロキシル含量に相当するミリグラムの水酸化カリウムを特徴とする。
【0025】
別の実施形態では、接着剤配合物における使用に好適なポリエステルポリオール化合物は、例えば、ジオールの重縮合物、さらには、任意選択的に、ポリオール(例えば、トリオール、テトラオール)、およびそれらの混合物、ならびにジカルボン酸の重縮合物、およびこれらの混合物を含むことができる。別の実施形態では、ポリエステルポリオール化合物はまた、ジカルボン酸、それらの対応する無水物、または低級アルコールの対応するエステルから誘導することができる。
【0026】
本発明に有用な好適なジオールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、およびこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。一実施形態では、>2のOH官能価を有するポリエステルポリオールを達成するために、3または>3のOH官能価を有するポリオールを、任意選択的に、接着剤組成物(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、またはペンタエリスリトール)中に含めることができる。
【0027】
本発明に有用な好適なジカルボン酸としては、脂肪酸、芳香族酸、およびこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。好適な芳香族酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な脂肪酸の例としては、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、トリメリット酸、およびこれらの混合物が挙げられる。このような酸の無水物もまた、使用され得る。さらに、安息香酸およびヘキサンカルボン酸などのモノカルボン酸は、最小限にすべきであるか、または本発明の組成物から除外すべきである。好ましい一実施形態では、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびこれらの混合物などの飽和脂肪族または飽和芳香族酸を、本発明において使用することができる。
【0028】
ポリエステルポリオール化合物である成分(Bi)は、-25℃~40℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することができる。-25℃~40℃のすべての個々の範囲および部分範囲は、本発明の範囲に含まれ、例えば、ポリエステルポリオール化合物は、一実施形態では-15℃~5℃の範囲のTg、および別の実施形態では-20℃~10℃の範囲のTgを有することができる。
【0029】
二成分接着配合物中のポリエステルポリオール化合物である成分(Bi)の量は、配合物中の成分の総乾燥重量に基づいて、一般に、一実施形態では70wt%~95wt%、別の実施形態では75wt%~90wt%、およびさらに別の実施形態では80wt%~90wt%の範囲であり得る。
【0030】
一般に、ポリエステルポリオール化合物の分子量(Mn)は、一実施形態では>8,000g/mol、別の実施形態では>10,000g/mol、さらに別の実施形態では>12,000g/mol、またさらに別の実施形態では>20,000g/molであり得る。また、ポリエステルポリオール化合物のMnは、一実施形態では>8,000g/mol~200,000g/mol、別の実施形態では10,000g/mol~150,000g/mol、さらに別の実施形態では20,000g/mol~100,000g/molであり得る。
【0031】
代替的に、ポリエステルポリオール化合物は、一実施形態では<15mgKOH/g、別の実施形態では<mgKOH/g、さらに別の実施形態では<5mgKOH/gであり得るポリエステルポリオール化合物のヒドロキシル価に基づいて選択することができる。
【0032】
一般的な一実施形態では、リン酸エステルポリオール化合物である成分(Bii)は、例えば、以下のような構造(I)または構造(II)の化合物を含むことができる。
【化1】
上記構造(I)および構造(II)において、R’は、任意の有機基から選択することができる。構造(I)および(II)に示されるペンダント基に加えて、R’は、1つ以上の追加のペンダント-OH基を有する場合があるか、または有しない場合があり、R’は、1つ以上の追加のペンダント-P(=O)(OH)
2を有する場合があるか、または有しない場合がある。別の実施形態では、リン酸エステルポリオールは、リン型の酸をポリオールと反応させることによって得ることができる。例えば、好適なリン酸としては、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸およびポリリン酸などの水の脱離によるオルトリン酸の縮合によって作製され得る一連の化合物のうちの任意のメンバ、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、好適なポリオールとしては、ジオール、トリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
別の実施形態では、接着剤配合物に有用なリン酸エステルポリオール化合物は、例えば、ポリリン酸とポリオールとの反応生成物を含むことができ、ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、および2つ以上のポリオールの組み合わせから選択される。好ましい一実施形態では、本発明に有用なリン酸エステルポリオール化合物は、例えば、ポリエステルポリオールと115パーセント(%)ポリリン酸との反応生成物から選択することができる。
【0034】
2成分接着剤配合物中のリン酸エステルポリオール化合物(Bii)の量は、配合物中の成分の総乾燥重量に基づいて、一般に、一実施形態では0.1wt%~7wt%、別の実施形態では0.5wt%~5wt%、およびさらに別の実施形態では1wt%~4wt%の範囲であり得る。
【0035】
ポリオール成分である成分(B)は、さらに溶媒を含有し得、好ましい実施形態では、ポリオール成分の各々は、成分(B)に使用される溶媒に可溶性である。例えば、ポリオール成分の各々は、溶媒の重量に基づく重量によると、1つの実施形態では10wt%以上、別の実施形態では50wt%以上、さらに別の実施形態では100wt%以上の量で可溶性であり得る。好ましい一実施形態では、溶媒は、炭化水素溶媒、極性非プロトン性溶媒、極性プロトン性溶媒、およびこれらの混合物から選択され得る。別の好ましい実施形態では、溶媒は、極性非プロトン性溶媒であり得る。さらに別の好ましい実施形態では、溶媒は、エチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、およびこれらの混合物から選択され得る。溶媒が成分(B)において使用されるとき、溶媒の量は、成分Bの総重量に基づく重量によると、一実施形態では10wt%以上、別の実施形態では20wt%以上、さらに別の実施形態では40wt%以上であり得る。溶媒が成分(B)において使用されるとき、溶媒の量は、成分Bの総重量に基づく重量によると、一実施形態では90%以下、および別の実施形態では80%以下であり得る。
【0036】
本発明は二成分系に関しているが、本発明の接着剤配合物は、本接着剤生成物の優れた利点/特性を維持しながら、特定機能の性能を利用可能にするために、多種多様な任意選択的な添加剤と共に配合することができる。ポリウレタン接着剤の任意選択的な成分である成分(C)は、第1のイソシアネート基含有成分(A)に添加され得、またはポリウレタン接着剤の任意選択的な成分は、第2のポリオール成分(B)に添加され得る。例えば、一実施形態では、任意選択的な溶媒化合物は、本発明の接着剤配合物の成分(A)に添加され得、別の実施形態では、任意選択的な溶媒化合物は、本発明の接着剤配合物の成分(B)に添加することができる。さらに別の実施形態では、同一または異なる任意選択的な溶媒化合物は、接着剤配合物の成分(A)および成分(B)の両方に添加することができる。
【0037】
任意選択的な溶媒化合物としては、使用されるとき、例えば、エチルアセテート、ブタノン、アセトン、メチルベンゼン、および成分(A)、ポリエステル、エポキシ、シラン、リン酸エステル、およびこれらの任意の混合物を溶解し得る他のウレタングレードの有機溶媒が挙げられ得る。別の実施形態では、成分(A)および(B)を一緒に混合した後に、上記と同じ溶媒を組成物に添加することができる。
【0038】
他の実施形態では、配合物に有用な任意選択的な化合物または添加剤としては、例えば、他の溶媒;シラン、エポキシおよびフェノール樹脂などの接着促進剤;グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロパンジオール、および2-メチル-1,3-プロパンジオールなどの連鎖延長剤;ならびに、ジオクチルスズメルカプチドなどの潜在性スズ触媒のような触媒;ビスマス(III)-ネオデカノアートなどの非スズベースの有機金属触媒;またはDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]ウンデカ-7-エン)などの感熱性アミン触媒;、二酸化ケイ素などの充填剤;ならびにこれらの混合物が挙げられ得る。
【0039】
任意選択的な添加剤である成分(C)の量は、2K接着剤配合物において使用されるとき、配合物中の成分の総重量に基づいて、一般に、一実施形態では0wt%~20wt%、別の実施形態では0.01wt%~10wt%、さらに別の実施形態では1wt%~5wt%の範囲であり得る。
【0040】
広範な一実施形態では、本発明の接着剤配合物を作製するためのプロセスは、(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物;および溶媒化合物などの所望の上記の任意選択的な化合物のうちのいずれか、を含む、少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、(B)(Bi)少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物;(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物;および、溶媒化合物などの所望の上記の任意選択的な化合物のうちのいずれか、を含む、少なくとも1つのポリオール成分と、を混合、混和、または調合することを含む。1つ以上の追加の任意選択的な成分は、所望に応じて接着剤配合物に添加され得る。例えば、成分(A)および(B)は、上述の所望の濃度で、ならびに、一実施形態では20℃~25℃、および別の実施形態では15℃~35℃の温度で、共に混合することができる。成分の混合順は重要ではなく、2つ以上の成分が共に混合され、続いて残存成分を添加することができる。接着剤配合成分は、任意の公知の混合プロセスおよび装置によって共に混合され得る。
【0041】
一般に、2つの成分(A)および(B)は、互いに別々に調製することができ、成分は、各々、別個の容器に保存することができる。ポリウレタン接着剤配合物の他の成分および任意選択的な添加剤は、第1の成分(A)または第2の成分(B)の一部分として存在し得る。各成分の保存のための好適な容器は、例えば、ドラム、ホボック、袋、バケツ、缶、カートリッジ、またはチューブであり得る。接着剤組成物を塗布する前に、2つの成分(A)および(B)は別々に保存され、塗布中または塗布前にのみ互いに混合させる。
【0042】
本発明のプロセスによって製造される本発明の接着剤配合物は、従来の接着剤配合物と比較して、いくつかの有利な特性および利点を有する。例えば、接着剤配合物によって示される特性のいくつかは、増大した結合強度、成形性、および耐熱性を含み得、特性は、LIB用パッケージを製造するための積層フィルムなどの箔ベース構造の積層物品を生産するためのプロセスにおいて有益である。
【0043】
例えば、接着剤配合物によって示されるナイロン層とアルミニウム箔層との間の120℃での結合強度は、結合強度が高いほど接着剤配合物の接着性能が良好であるので、一般に1N/15mm以上であり得る。例えば、接着剤の結合強度は、一実施形態では≧1N/15mm、別の実施形態では≧1.5N/15mm、別の実施形態では≧2.5N/15mmであり得る。接着結合強度の好ましい他の実施形態は、一実施形態では1N/15mm~8N/15mm、別の実施形態では2.5N/15mm~8N/15mm、さらに別の実施形態では1.5N/15mm~5.5N/15mm、またさらに別の実施形態では1N/15mm~5N/15mmの範囲を含むことができる。接着剤の結合強度は、以下の実施例の試験方法に記載される一般的な手順によって測定することができる。
【0044】
別の実施形態では、成形性は、本発明の接着剤によって示される有益な特性である。接着剤の成形性は、このような深絞りプロセスの深絞り設定の深さによって測定することができる。および、接着剤の成形性は、深絞りの深さが深いほど、接着剤配合物の成形性能が良好であるため、一般に1ミリメートル(mm)以上であり得る。例えば、接着剤の成形性は、一実施形態では≧1mm、別の実施形態では≧3mm、および別の実施形態では≧4mmであり得る。接着成形性の他の好ましい実施形態は、1mm~15mm、別の実施形態では3mm~8mm、および、さらに別の実施形態では4mm~6mmの深絞り設定の深さ範囲を含むことができる。接着剤の成形性は、以下の実施例の試験方法に記載される一般的な手順によって測定することができる。
【0045】
さらに別の実施形態では、本発明の接着剤配合物の耐熱性は、配合物の別の有益な特性である。接着剤の耐熱性は、当技術分野で公知の従来のエージング試験から選択されるエージング試験に合格するかまたは不合格となる接着剤によって作製される積層構造体によって判定することができる。通常、積層構造体が特定の数時間に実施されるエージング試験を受けて、次に、接着剤によって作製された積層構造体は、剥離、トンネリング、またはいかなるタイプの構造破損のどんな兆候によっても、試験に合格するかまたは不合格であるかを視覚的に観察され得る。一般に、エージング試験は、例えば、以下の本明細書の実施例の試験方法に記載される手順によって測定され得るように、所望の期間実施することができる。一般に、接着剤組成物は、85℃および85%湿度で>60時間(hr)のエージング時間に合格しなければならない。
【0046】
一般に、本発明の接着剤を使用した2つの基材の結合は、大量の積層製品の製造のために工業規模で実施することができる。有利なことに、2つの成分(A)および(B)は、成分が使用される準備ができるまで、ドラムまたはホボックに別々に充填され、保存される。上述のように、接着剤組成物の塗布前に、2つの成分は別々に保存され、接着剤の塗布中または塗布前にのみ、2つの成分が互いに混合される。塗布の間、成分は、供給ポンプを用いて保存容器から押し出され、工業生産において2K接着剤に一般的に使用されるような混合装置のラインを介して計量される。
【0047】
2つの成分(A)および(B)の混合は、静的ミキサを介して、または動的ミキサを用いて行うことができる。成分(A)および(B)を混合するとき、2つの成分が可能な限り均質に混合されることを確実にするように注意しなければならない。2つの成分が十分に混合されなければ、有利な混合比から局所的な偏りが存在することになり、これは、接着剤を使用して作製される、結果として得られる生成物の機械的特性の悪化に関して影響を有し得る。
【0048】
少なくとも1つの基材の表面への接着剤の塗布は、ロールコータ、ドクターブレード、または押し出し装置およびプロセスを使用するなどの従来の手段によって実施することができる。接着剤組成物は、1平方メートル当たりの乾燥組成物のグラムで、一実施形態では1以上、別の実施形態では2以上の水準で塗布することができる。接着剤組成物は、1平方メートル当たりの乾燥組成物のグラムで、一実施形態では10以下、別の実施形態では7以下の水準で塗布することができる。
【0049】
本発明の別の実施形態は、(a)ポリウレタン接着剤を形成するために上記のように2つの成分(A)および(B)を混合する工程と、(b)結合される基材表面のうち少なくとも1つに工程(a)のポリウレタン接着剤を塗布し、溶媒がある場合には溶媒を蒸発させる工程と、(c)ポリウレタン接着剤と結合させるために第1および第2の基材と共に接触させる(または接合させる)工程と、(d)ポリウレタン接着剤を硬化させる工程と、を含む、少なくとも第1の基材を少なくとも第2の基材に結合させるためのプロセスに関する。例えば、接着剤は、加熱されて、接着剤を完全に硬化させることができ、接着剤の加熱は、一般的な一実施形態では25℃~80℃の温度で行うことができる。
【0050】
上記プロセスでは、イソシアネート基(NCO成分)を有する第1の成分(A)と、ヒドロキシル基(OH成分)を有する第2の成分(B)との接触により、ポリウレタン系接着剤が形成されると、化学反応によって硬化が始まる。一般に、成分(B)中に存在するヒドロキシル基は、成分(A)中に存在するイソシアネート基と反応する。上記反応の結果として、ポリウレタン接着剤は、硬化して固体物質を形成し、次いで、2つの基材を互いに結合する。この硬化プロセスは、架橋とも称される。
【0051】
2つの基材は、同一または異なる材料からなり得る。上記プロセスで使用することができる好適な基材としては、例えば、織布および不織布、金属箔、ポリマー、および金属被覆ポリマーが挙げられ得る。フィルムは任意選択的に、画像がインクで印刷される表面を有し、インクが接着剤組成物と接触し得る。いくつかの実施形態では、フィルムは高分子フィルムおよび金属箔である。好ましい実施形態では、ナイロンフィルムとアルミ箔との組み合わせは、互いに結合される2つの基材をとして使用することができる。
【0052】
本発明の2Kポリウレタン接着剤は、例えば、以下の用途にあるように、LIB用パッケージを生産するためのLIB用途、および、缶または容器、ポーチ、包装用トレーなどのような食品包装用途といった様々な他の包装用途において使用することができる。
【0053】
好ましい一実施形態では、LIBパッケージフィルム材料は、本発明に従って製造することができる。例えば、
図1を参照すると、第1の外層側接着剤14および第2の内層側接着剤15によって互いに結合された3つの基材フィルム層11、12、および13を含む、全体として数表示10で示される積層フィルム構造体が示されている。第1の工程では、外層側樹脂フィルム層11と金属箔層12は、本発明の外層側ポリウレタン接着剤14を使用することによって互いに積層されて、第1の中間積層体を形成し得る。次に、第2の工程では、内面層13は、内層側接着剤15を使用することによって中間積層体の金属箔層12表面に積層され得る。
【0054】
代替的に、第1の工程では、金属箔層12および内面層13が、内層側接着剤15を使用することによって積層されて、第1の中間積層体を形成し得る。次に、第2の工程では、中間積層体の金属箔層12および外層側樹脂フィルム層11が、本発明のポリウレタン接着剤14を使用することによって、互いに積層され得る。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。他に指示がない限り、すべての部およびパーセンテージは重量による。
【0056】
本発明の実施例(Inv.Ex.)および比較実施例(Comp.Ex.)で使用される様々な原料を以下の表Iに記載する。
【表1】
【0057】
再び
図1を参照すると、LIBパッケージ積層フィルムの5層構造体の概略図が示されており、全体として数表示10で示されている。構造体10の層は、ナイロン基材層11(厚さ25ミクロン[μ])、本明細書では「接着剤A」と称される第1の接着剤層14、アルミニウム基材層12(厚さ40μ)、本明細書では「接着剤B」と称される第2の接着剤層15、およびレトルト用無延伸ポリプロピレン(RCPP)基材層13(厚さ20μ)を含む。
図1に示される基材はまた、表IIに記載されている。
【表2】
【0058】
リン酸エステルポリオールの合成のための一般的な手順
本発明の実施例および比較実施例で使用されるリン酸エステルポリオールは、表IIIの一覧にある配合物に従って合成される。原料の化合物PA115およびBester648を、1,000ミリリットル(mL)のガラス反応器に入れ、注意深く混合して配合物を形成する。すべての上記原料を供給した後、配合物の加熱を開始する。配合物が60℃付近になったら、回転速度を毎分50回転(RPM)に上げ、昇温速度を制御し、全プロセスを通じて反応を監視する。温度上昇プロセスの間、PA115はBester648から分離し、PA115は配合物の底部で濃縮する。一方、PA115の色も暗くなる。反応温度が約100~103℃までに達すると、反応生成物は透明で均一になる。反応生成物を、約100~103℃で2時間維持する。配合物のヒドロキシル価が理論値に達すると、反応器を可能な限り早く冷却する。反応器を、60℃~70℃まで冷却される。次に、最終生成物を、配合物を汚染から保護するために、窒素雰囲気にある十分に密封されたスチールボトルに充填する。
【表3】
【0059】
実施例で使用されたNCO成分およびOH成分は、表IVに記載した配合物に従って合成される。実施例で使用されるNCO成分は、触媒Fである。実施例で使用されるOH成分は、表IVに記載されるようにすべて有機溶媒に溶解された高分子量ポリエステルポリオール、シランおよびリン酸エステルの溶液である。原料を反応器に投入する前に、すべての原料の水分含量を<500百万分率(ppm)に設定する。合成プロセス中の原料を撹拌する間に、水分汚染を回避するために窒素雰囲気を使用する。
【表4】
【0060】
実施例1~7および比較実施例A~J
本発明の実施例および比較実施例を調製するために、イソシアネート成分およびポリオール成分は、表Vに示す組み合わせ(サンプル指定として)および混合比に従って混合して、実施例の接着剤組成物を形成する。次に、実施例の接着剤組成物を使用して、ナイロンフィルムおよび事前積層されたアルミニウム(Al)箔(すなわち、Al箔/RCPP積層体)を含む積層体を形成する。
【表5】
【0061】
コーティングおよび積層プロセスのための一般的な手順
実施例で使用されるコーティングおよび積層プロセスは、Nordmeccanica groupから入手可能なLabo-Combi400積層機で実行される。接着剤はナイロンフィルム上に塗布され、次いで、ナイロンフィルム/接着剤は事前積層されたAl箔/RCPPのアルミ箔表面に積層される。積層機のニップロールの温度は70℃に保たれ、塗布速度は積層プロセス中100メートル/分(m/min)である。ドライコーティング量は、4~4.5グラム/平方メートル(g/m2)に制御される。次いで、得られた積層フィルムを、試験前にオーブン中で硬化させる(例えば、60℃の温度で)。
【0062】
試験方法
ナイロン層と箔層との間の120℃でのT-剥離(90°)結合強度(手動アシストT-剥離)
硬化後、積層フィルムは、250ミリメートル/分(mm/分)のクロスヘッド速度を有するInstron5965U5974機でT-剥離試験用のための15mm幅の試験片サンプルに切断される。次に、3つの試験片を120℃の温かいオーブンで試験し、試験した3つの試験片の平均値を記録する。試験中、小片の尾部は、小片の尾部が剥離方向に向かって90°の状態を確実に維持するために、指によってわずかに引っ張られる。結合強度試験の結果は、N/15mmの単位で測定される。この結合強度試験に合格するためには、積層フィルムの結合強度は>2N/15mmであるべきである。
【0063】
エージング耐性試験
積層体(積層フィルム)を4cm×4cmサイズの正方形試験サンプルに切断し、次いでサンプルにエージング耐性試験を受けさせる。サンプルは、60時間の間、85℃および85%の相対空気湿度下で、恒温湿潤チャンバーのLHU-213中でエージングさせる。エージング耐性試験の間、1つの積層フィルムの中で6つの片を評価のために選択する。積層体のすべての片を周囲空気と完全に接触させる。エージング耐性試験後、最終的な積層フィルムの外観を評価する。エージング耐性試験に合格するためには、フィルム中に気泡が観察されるべきではなく、かつ積層フィルムの剥離が検出されるべきではない。
【0064】
深絞り試験(DDT)
硬化した積層フィルムは、8cm×12cmサイズの矩形試験サンプルに切断され、次いで、サンプルを、評価のために、自動深絞り装置(SDCK-004A)のプラットフォームに配置する。装置は空気圧を0.5メガパスカル(MPa)に調整し、モールドのパンチ速度を100mm/分に維持する深絞り用途用の特定パラメータで操作される。深絞り成形の深さは、試験したすべての積層体に対して5mmに設定される。深絞り成形の際に、積層体の表面のナイロン側は、外層として凸面を形成する。異なる接着剤が積層体に使用される。深絞り成形後の積層体の外観は、気泡、トンネル、および/または剥離について視覚的に検査される。また、積層体は、破壊された基材のいかなる兆候についても検査される。一方、パンチ後の積層体も温かいオーブンで100℃まで1時間加熱し、その後、積層体の外観は、上記のように欠陥に対して視覚的に再度検査される。
【0065】
一般に、深絞り試験後に積層体の破損箔の観点から破損したLIB用積層パッケージフィルムは、消費者の使用に適した品質試験に合格せず、深絞り試験後に積層体のナイロン/箔積層複合フィルムの剥離の観点から破損したLIB用積層パッケージフィルムも、消費者の使用に適した品質試験に合格しない。
【表6】
【0066】
表VIにまとめられた性能結果から、一定量のリン酸エステルポリオール(例えば、0.3%~2%)を使用することで、120℃の温度でナイロン/箔積層体の結合強度を大幅に改善し得、(a)積層体の深絞り試験、および(b)二成分接着剤によって作製された積層体の100℃エージング試験後の積層体の外観を含むナイロン/箔/RCPP積層体の深絞りの性能を大幅に改善し得る。
【0067】
本発明の他の例示的な実施形態はまた、以下を含み得る。
(1)ポリウレタン接着剤組成物であって、(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物を含む少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、(B)少なくとも1つのポリオール成分と、を含み、少なくとも1つのポリオール成分(B)が、(Bi)>8,000g/molの分子量(Mn)を有する少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物、および(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物を含む、組成物。
【0068】
(2)さらに溶媒を含む、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0069】
(3)成分(B)と成分(A)との乾燥重量による濃度比[B:A]が1~20である、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0070】
(4)(1)ポリウレタン接着剤組成物は、(i)ナイロン/箔積層体が120℃で1N/15mm~8N/15mmの結合強度を有し、(ii)85℃および85%の湿度で、>60時間のエージング時間に合格し、および/または(iii)1ミリメートル~15ミリメートルの深絞り設定の深さを提供するのに十分な成形性を有する、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0071】
(5)少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物は、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびこれらの混合物を含むジカルボン酸から誘導される、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0072】
(6)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物は、ポリリン酸とポリオールとの反応生成物であり、ポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、および2つ以上のポリオールの組み合わせから選択される、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0073】
(7)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物の成分である成分(Bii)は、以下の構造(I)または構造(II)を有する化合物であって、
【化2】
上記構造(I)および構造(II)において、R’は、有機基から選択され得る、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0074】
(8)R’は、アルキル部分またはアルキル化したアルキル部分であり得る、上記実施形態(7)に記載の組成物。
【0075】
(9)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物である成分(Bii)は、ポリエステルポリオールとポリリン酸との反応生成物である、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0076】
(10)さらに成分(C)を含み、(C)は、少なくとも1つのエポキシ、少なくとも1つのシラン、またはこれらの混合物であり得る、上記実施形態(1)に記載の組成物。
【0077】
(11)ポリウレタン接着剤組成物を作製するためのプロセスであって、(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物を含む少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、(B)(Bi)少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物と、(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物と、を含む、少なくとも1つのポリオール成分と、を混和することを含む、プロセス。
【0078】
(12)少なくとも第1の基材および少なくとも第2の基材を接着するためのプロセスであって、
(I)少なくとも第1の基材の1つの表面の少なくとも一部分、または少なくとも第2の基材の1つの表面の少なくとも一部分を、実施形態(1)の接着剤組成物と接触させることと、(II)結合された第1の基材、第2の基材、および工程(I)の接着剤を、接着剤組成物を硬化させるのに十分な温度まで加熱することと、を含む、プロセス。
【0079】
(13)加熱工程(II)は、25℃~80℃の温度で実施される、上記実施形態(12)に記載のプロセス。
【0080】
(14)上記実施形態(12)に記載のプロセスを使用することによって作製される、多層複合フィルム構造体。
【0081】
(15)上記実施形態(14)に記載の多層複合フィルム構造体を含む、包装物品。
【0082】
(16)リチウムイオン電池を含む、上記実施形態(15)に記載の物品。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
ポリウレタン接着剤組成物であって、
(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物を含む、少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、
(B)
(Bi)8,000グラム/モルを超える分子量(Mn)を有する、少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物と、
(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物と、を含む、少なくとも1つのポリオール成分と、を含む、組成物。
項2.
成分(B)と成分(A)との乾燥重量による濃度比[B:A]は、1~20である、項1に記載の組成物。
項3.
前記ポリウレタン接着剤組成物は、(i)1N/15mm~8N/15mmの結合強度を有し、(ii)85℃および85%の湿度で60時間を超えるエージング時間に合格し、および/または(iii)1ミリメートル~15ミリメートルの深絞り設定の深さを提供するのに十分な成形性を有する、項1に記載の組成物。
項4.
前記少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物の成分である成分(Bii)は、以下の構造(I)または構造(II)を有する化合物であり、
【化1】
上記構造(I)および構造(II)において、R’は有機基から選択され得る、項1に記載の組成物。
項5.
前記少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物である成分(Bii)は、(a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはこれらの混合物と、(b)ポリリン酸、またはポリリン酸と他の酸との混合物と、の反応生成物である、項1に記載の組成物。
項6.
ポリウレタン接着剤組成物を作製するためのプロセスであって、
(A)少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物を含む、少なくとも1つのイソシアネート基含有成分と、
(B)
(Bi)少なくとも1つのポリエステルポリオール化合物と、
(Bii)少なくとも1つのリン酸エステルポリオール化合物と、を含む、少なくとも1つのポリオール成分と、を混和することを含む、プロセス。
項7.
少なくとも第1の基材および少なくとも第2の基材を接着するためのプロセスであって、
(I)前記少なくとも第1の基材の1つの表面の少なくとも一部分、または前記少なくとも第2の基材の1つの表面の少なくとも一部分を、項1に記載の接着剤組成物と接触させることと、
(II)工程(I)の前記組み合わされた第1の基材、第2の基材、および前記接着剤を、前記接着剤組成物を硬化させるのに十分な温度まで加熱することと、を含む、プロセス。
項8.
前記加熱工程(II)は、25℃~80℃の温度で実施される、項7に記載の方法。
項9.
項8に記載のプロセスによって作製される、多層複合積層フィルム構造体。
項10.
箔ベースの積層構造体を含むリチウムイオン電池を包装するためのパッケージであって、前記箔ベースの積層構造体は、(a)ナイロン層と、(b)箔層と、(c)ポリマー基材層と、(d)前記ナイロン層の一方の側と前記箔層の一方の側との間に配置された項1に記載の組成物を含む第1の上部接着剤層と、(e)前記箔層の他方の側と前記ポリマー基材層の一方の側との間に配置された項1に記載の組成物とは異なる第2の下部接着剤層と、の組み合わせを含む、パッケージ。