(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】手術室用コーティングアプリケータ及び手術室用コーティングの方法
(51)【国際特許分類】
A61B 90/00 20160101AFI20231218BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20231218BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20231218BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20231218BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20231218BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20231218BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20231218BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20231218BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20231218BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20231218BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
A61B90/00
A61L27/34
A61L27/44
A61L27/54
A61L29/08 100
A61L29/12 100
A61L29/16
A61L31/04
A61L31/10
A61L31/12 100
A61L31/16
(21)【出願番号】P 2021530895
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 IB2019060229
(87)【国際公開番号】W WO2020110028
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】チチョッキ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】オウ・デュアン
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-113332(JP,A)
【文献】特表2012-521862(JP,A)
【文献】特表2006-501975(JP,A)
【文献】特開2006-181368(JP,A)
【文献】特開2003-070883(JP,A)
【文献】特開2002-355296(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050744(WO,A1)
【文献】特表2002-512086(JP,A)
【文献】特表2013-512080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-90/98
A61L 2/20
A61L 2/24
A61L 27/34
A61L 27/44
A61L 27/54
A61L 29/08
A61L 29/12
A61L 29/16
A61L 31/04
A61L 31/10
A61L 31/12
A61L 31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬のコーティングを適用するためのコーティング装置であって、
開放可能かつ封止可能なデバイス区画と、
前記デバイス区画と連通するように位置付けられた治療薬と、
前記治療薬を気化させるための熱源と、
前記デバイス区画と流体連通している真空源と、
を備
え、
前記治療薬は担体に取り込まれ、
前記治療薬はトリクロサンであり、前記担体は、シリコーン製のシート若しくはパッド若しくはフィルム、又は吸収性ポリマーから作製されたシート若しくはパッド若しくはフィルムである、コーティング装置。
【請求項2】
前記デバイス区画は剛性壁を有する、請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記デバイス区画はベースに接続され、前記ベースは前記真空源を組み込んでいる、請求項2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記デバイス区画は、前記ベースに取り外し可能かつ封止可能に連結されており、前記ベースと前記デバイス区画との間に電気的接続部及び真空接続部が延びている、請求項3に記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記吸収性ポリマーは、ラクチドグリコリドコポリマーである、請求項
1に記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記担体は、前記熱源に隣接して位置付けられる、請求項
1に記載のコーティング装置。
【請求項7】
治療薬のコーティングを適用するためのコーティング装置であって、
開放可能かつ封止可能なデバイス区画と、
前記デバイス区画と連通するように位置付けられた治療薬と、
前記治療薬を気化させるための熱源と、
前記デバイス区画と流体連通している真空源と、
を備え、
前記デバイス区画は、可撓性側面を有する
、コーティング装置。
【請求項8】
前記熱源は、前記デバイス区画内に配置された蛇行した電気抵抗箔の形態の電気抵抗ヒータである、請求項
7に記載のコーティング装置。
【請求項9】
前記デバイス区画の前記
可撓性側面と前記熱源との間に熱絶縁を提供するために、前記熱源の上方の前記デバイス区画内に位置付けられた第1のスペーサメッシュと、前記デバイス区画の前記
可撓性側面と前記熱源との間に位置付けられた第2のスペーサメッシュと、を更に備える、請求項
8に記載のコーティング装置。
【請求項10】
前記治療薬は、前記第1のスペーサメッシュ上にコーティングされる、請求項
9に記載のコーティング装置。
【請求項11】
前記治療薬は、前記熱源上にコーティングされる、請求項
9に記載のコーティング装置。
【請求項12】
前記治療薬は、前記熱源に隣接して配置された担体上に又は前記担体内に装填される、請求項
9に記載のコーティング装置。
【請求項13】
前記デバイス区画は、第1の端部上で開放可能かつ封止可能であり、前記真空源は、前記デバイス区画の封止された第2の端部に流体接続される、請求項
7に記載のコーティング装置。
【請求項14】
前記真空源及び電源は、前記デバイス区画とは別個のベースに組み込まれている、請求項
13に記載のコーティング装置。
【請求項15】
前記熱源は、前記デバイス区画内に配置された蛇行した電気抵抗箔の形態の電気抵抗ヒータであり、
前記ベースの前記真空源は、可撓性ホースを介して前記デバイス区画に流体接続され、前記電源は、真空リード及び/又は電力リードをバッグ内の前記
電気抵抗ヒータに運ぶように構成されたワイヤリードを介して前記熱源に電気的に接続されている、請求項
14に記載のコーティング装置。
【請求項16】
物体に治療薬をコーティングするための方法であって、
コーティングされる物体を開放可能かつ封止可能なデバイス区画内に置くステップと、
前記デバイス区画を封止するステップと、
前記デバイス区画に真空源から真空を適用するステップと、
治療薬で前記デバイス区画を満たし、コーティングされる前記物体にコーティングするために、前記治療薬を気化させるステップと、
コーティングされた前記物体を前記デバイス区画から除去するステップと、
を含
み、
前記治療薬は担体に取り込まれ、
前記治療薬はトリクロサンであり、前記担体は、シリコーン製のシート若しくはパッド若しくはフィルム、又は吸収性ポリマーから作製されたシート若しくはパッド若しくはフィルムである、方法。
【請求項17】
前記真空源は、前記デバイス区画と流体連通している、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記気化させるステップは、熱源を用いて行われる、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記デバイス区画は剛性壁を有する、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
前記デバイス区画はベースに接続され、前記ベースは
前記真空源を組み込んでいる、請求項
16に記載の方法。
【請求項21】
前記デバイス区画は、前記ベースに取り外し可能かつ封止可能に連結されており、前記ベースと前記デバイス区画との間に電気的接続部及び真空接続部が延びている、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記吸収性ポリマーは、ラクチドグリコリドコポリマーである、請求項
16に記載の方法。
【請求項23】
前記気化させるステップは、熱源を用いて行われ、
前記担体は、前記熱源に隣接して位置付けられる、請求項
16に記載の方法。
【請求項24】
物体に治療薬をコーティングするための方法であって、
コーティングされる物体を開放可能かつ封止可能なデバイス区画内に置くステップと、
前記デバイス区画を封止するステップと、
前記デバイス区画に真空源から真空を適用するステップと、
治療薬で前記デバイス区画を満たし、コーティングされる前記物体にコーティングするために、前記治療薬を気化させるステップと、
コーティングされた前記物体を前記デバイス区画から除去するステップと、
を含み、
前記デバイス区画は可撓性側面を有
する、方法。
【請求項25】
前記気化させるステップは、熱源を用いて行われ、
前記熱源は、前記可撓性側面内に位置付けられ、かつ、前記可撓性側面から熱的に絶縁された抵抗加熱トレースを備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記デバイス区画は、第1の端部上で開放可能かつ封止可能であり、前記真空源は、前記デバイス区画の封止された第2の端部に流体接続される、請求項
24に記載の方法。
【請求項27】
前記真空源及び電源は、前記デバイス区画とは別個のベースに組み込まれている、請求項
16または24に記載の方法。
【請求項28】
前記気化させるステップは、熱源を用いて行われ、
前記ベース内の前記真空源は、可撓性ホースを介して前記デバイス区画に流体接続され、前記電源は、ワイヤリード介して前記熱源に電気的に接続されている、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記物体が気化した前記治療薬より
も50℃
~150℃低温になるように、前記物体
と気化した
前記治療薬との間に温度勾配を確立することによって、前記物体上への気化した前記治療薬の堆積を促進するステップと、前記物体
を気化した
前記治療薬と接触させるステップと、を更に含む、請求項
16または24に記載の方法。
【請求項30】
前記接触させるステップは
、1分
~15分の範囲の期間にわたって継続される、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
接触させる前記期間中に、前記物体の温度が15℃未満だけ上昇する、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
埋め込み可能な医療用デバイス上に治療薬を堆積させる方法であって、
前記医療用デバイス上への気化した治療薬の堆積を、前記医療用デバイス
と気化した
前記治療薬との間に温度勾配を確立することによって促進するステップと、前記
医療用デバイスを気化した
前記治療薬と接触させるステップと、を含み、
前記治療薬は担体に取り込まれ、
前記治療薬はトリクロサンであり、前記担体は、シリコーン製のシート若しくはパッド若しくはフィルム、又は吸収性ポリマーから作製されたシート若しくはパッド若しくはフィルムである、方法。
【請求項33】
前記医療用デバイスは
、気化した
前記治療薬より
も50℃
~150℃低温である、請求項
32に記載の方法。
【請求項34】
デバイス区画を開放し、前記医療用デバイスを前記デバイス区画内に置き、前記デバイス区画を閉じるステップと、
閉じた前記デバイス区画を排気するステップと、
気化した
前記治療薬
を閉じた
前記デバイス区画と連通させるステップと、
前記デバイス区画を開放し、前記医療用デバイスを除去するステップと、
を更に含む、請求項
32に記載の方法。
【請求項35】
気化した
前記治療薬が加熱された状態にある間、前記医療用デバイス
を気化した
前記治療薬と接触させるステップ、
を更に含む、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
前記接触させるステップ中に、前記医療用デバイスの温度が15℃未満だけ上昇する、請求項
35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年11月29日出願の米国仮特許出願第62/773,102号に基づく利益を主張するものであり、その内容は全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、同時に提出され、共通の譲受人を有する、PCT出願番号________号(代理人整理番号ETH6020WOPCT2)及びPCT出願番号________号(代理人整理番号ETH6020WOPCT3)に関連している。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、概して、物体に治療薬をコーティングするための装置及び方法に関し、より具体的には、手術を行う過程で外科用器具又は外科用インプラントに治療薬をコーティングするために手術室で使用するのに好適な装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
環境
米国では、毎年、約2700万件の外科手術が行われる。術後又は手術部位感染(「SSI」)は、全事例のうちの約2~3%に生じている。この率は、毎年、675,000件を超えるSSIの発生に相当する。
【0005】
SSIの発生は多くの場合、手術において使用される埋め込み可能な医療用デバイス上にコロニーを形成し得る細菌に関連するものである。外科手術中、周囲大気の細菌が手術部位に侵入し、医療用デバイスに付着することがある。特に、細菌は、埋め込み型医療用デバイスを周囲組織への経路として使用することによって拡散し得る。医療用デバイスへのこのような細菌定着は、患者の感染及び外傷につながることがある。したがって、SSIは、患者の治療費を著しく増大させることがある。
【0006】
内部に適用された又は組み込まれた抗菌剤を含む埋め込み可能な医療用デバイスが、当技術分野において開示及び/又は例示されてきた。そのようなデバイスの例が、欧州特許出願公開第EP0761243号に開示されている。この出願で例示される実際のデバイスには、French Percuflexカテーテルが含まれる。これらのカテーテルは、2,4,4’-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(Ciba Geigy Irgasan(DP300))及び他の添加剤を含有するコーティング浴中でディップコーティングされたものである。これらのカテーテルは次いで、エチレンオキシドで滅菌され、30日間にわたって保管された。そのような溶液でコーティングされたカテーテルは抗菌特性を呈した。すなわち、これらのカテーテルは、コーティングされた後の30日間にわたり、増殖培地に置かれ微生物の攻撃を受けたときに阻害ゾーンを生じた。
【0007】
ほとんどの埋め込み可能医療用デバイスは、製造され、滅菌され、外科手術で使用するために開封されるまでパッケージに収容される。手術中、医療用デバイスを収容した開封済みパッケージ、中に収容されたパッケージ構成要素、及び医療用デバイスは手術室の大気にさらされ、ここで空気中の細菌が取り込まれ得る。パッケージ及び/又はその中に収容されるパッケージ構成要素に抗菌特性を組み込むことにより、パッケージが開封された後の、パッケージ及び構成要素への細菌定着が実質的に防止される。抗菌パッケージ及び/又はパッケージ構成要素は、医療用デバイス自体に抗菌特性を組み込むことと相まって、滅菌された医療用デバイスの周りにおける抗菌環境を実質的に確保する。
【0008】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Scalzoらによる、米国特許出願公開第2004/0220614号には、抗菌剤がその上に配置された1つ以上の表面を備える封じ込め区画を備える抗菌性縫合糸アセンブリが記載されている。該抗菌剤は、ハロゲン化ヒドロキシルエーテル、アシルオキシジフェニルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、該封じ込め容器上の細菌定着を実質的に阻害するのに十分な量である。縫合糸は、該封じ込め容器内に位置付けられ、該縫合糸は、抗菌剤がその上に配置された1つ以上の表面を備える。該抗菌剤は、ハロゲン化ヒドロキシルエーテル、アシロキシジフェニルエーテル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、殺生物剤、消毒剤、防腐剤、抗生物質、抗菌ペプチド、溶解性バクテリオファージ、界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1つの活性剤、接着阻害剤、オリゴヌクレオチド、排出ポンプ阻害剤、感光性色素、免疫調整剤、キレート剤からなる群より選択される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある態様は、治療薬のコーティングを適用するためのコーティング装置であって、開放可能かつ封止可能なデバイス区画と、デバイス区画と連通するように位置付けられた治療薬と、治療薬を気化させるための熱源と、デバイス区画と流体連通している真空源と、を備える、コーティング装置を提供する。
【0010】
一形態では、デバイス区画は剛性壁を有し、ベースに接続されてもよく、ベースは真空源を組み込んでいる。
【0011】
別の形態では、デバイス区画は、ベースに取り外し可能かつ封止可能に連結されており、ベースとデバイス区画との間に電気的接続部及び真空接続部が延びている。
【0012】
有利には、治療薬は担体に取り込まれ、例えば、治療薬はトリクロサンであり、担体は、シリコーン製のシート若しくはパッド若しくはフィルム、又は吸収性ポリマー、例えばラクチドグリコリドコポリマーから作製されたシート若しくはパッド若しくはフィルムである。
【0013】
更に別の形態では、担体は、熱源に隣接して位置付けられる。
【0014】
代替的には、デバイス区画は、可撓性側部を有し、デバイス区画は、第1の端部上で開放可能かつ封止可能であり、真空源は、その封止された第2の端部に流体接続される。
【0015】
この形態では、熱源は、デバイス区画内に配置された蛇行した電気抵抗箔の形態の電気抵抗ヒータであり得る。
【0016】
有利には、コーティング装置は、デバイス区画の側面と熱要素との間に熱絶縁を提供するために、熱要素の上方のデバイス区画内に位置付けられた第1のスペーサメッシュと、デバイス区画の側面と熱要素との間に位置付けられた第2のスペーサメッシュと、を更に備えることができる。
【0017】
また、この形態では、治療薬は、第1のスペーサメッシュ上に、又は熱要素上にコーティングされてもよく、あるいは更には、熱要素に隣接して配置された担体上に又はその担体内に充填されてもよい。
【0018】
更に別の形態では、真空源及び電源は、デバイス区画とは別個のベースに組み込まれている。
【0019】
この形態では、ベース内の真空源は、可撓性ホースを介してデバイス区画に流体接続されてもよく、電源は、真空リード及び/又は電力リードをバッグ内のヒータに運ぶように構成されたワイヤリードを介して熱源に電気的に接続され得る。
【0020】
また、本明細書には、物体に治療薬をコーティングするための方法であって、コーティングされる物体を開放可能かつ封止可能なデバイス区画内に置くステップと、デバイス区画を封止するステップと、デバイス区画に真空源から真空を適用するステップと、治療薬でデバイス区画を満たし、コーティングされる物体にコーティングするために、治療薬を気化させるステップと、コーティングされた物体をデバイス区画から除去するステップと、を含む、方法が提示される。
【0021】
この形態では、真空源は、デバイス区画と流体連通していてもよく、気化させるステップは、熱源を用いて行われる。
【0022】
一形態では、デバイス区画は、剛性壁を有し、ベースに接続され、ベースは真空源を組み込んでいる。
【0023】
有利には、デバイス区画は、ベースに取り外し可能かつ封止可能に連結されており、ベースとデバイス区画との間に電気的接続部及び真空接続部が延びている。
【0024】
この形態では、治療薬は担体に取り込まれてもよく、例えば、治療薬はトリクロサンであり、担体はシリコーン製のシート若しくはパッド若しくはフィルム、又は吸収性ポリマー、例えばラクチドグリコリドコポリマーから作製されたシート若しくはパッド若しくはフィルムである。吸収性ポリマーは、ラクチドグリコリドコポリマーであり得る。
【0025】
この形態では、担体は、熱源に隣接して位置付けられる。
【0026】
更に別の形態では、デバイス区画は可撓性側面を有し、熱源は、可撓性側面内に位置付けられ、かつ、可撓性側面から熱的に絶縁された抵抗加熱トレースを備える。
【0027】
有利には、デバイス区画は、第1の端部上で開放可能かつ封止可能であり、真空源は、その封止された第2の端部に流体接続される。
【0028】
この形態では、真空源及び電源は、デバイス区画とは別個のベースに組み込まれている。
【0029】
別の形態では、ベース内の真空源は、可撓性ホースを介してデバイス区画に流体接続されてもよく、電源は、ワイヤリードを介して熱源に電気的に接続され得る。
【0030】
更に別の形態では、本方法は、物体が気化した治療薬よりも約50℃~約150℃低温になるように、物体と気化した治療薬との間に温度勾配を確立することによって、物体上への気化した治療薬の堆積を促進するステップと、物体を気化した治療薬と接触させるステップと、を更に含むことができる。
【0031】
この形態では、接触させるステップは、約1分~約15分の範囲の期間継続され、接触させる期間中に、物体の温度が15℃未満だけ上昇する。
【0032】
更に、本明細書では、埋め込み可能な医療用デバイス上に治療薬を堆積させる方法であって、医療用デバイス上への気化した治療薬の堆積を、医療用デバイスと気化した治療薬との間に温度勾配を確立することによって促進するステップと、物体を気化した治療薬と接触させるステップと、を含む、方法が提示される。
【0033】
一形態では、医療用デバイスは、気化した治療薬よりも約50℃~約150℃低温であり得る。
【0034】
別の形態では、本方法は、デバイス区画を開放し、医療用デバイスをデバイス区画内に置き、デバイス区画を閉じるステップと、閉じたデバイス区画を排気するステップと、気化した治療薬を閉じたデバイス区画と連通させるステップと、デバイス区画を開放し、医療用デバイスを除去するステップと、を更に含むことができる。
【0035】
更に、本方法は、気化した治療薬が加熱された状態にある間、医療用デバイスを気化した治療薬と接触させるステップ、を更に含むことができる。接触させるステップ中に、医療用デバイスの温度が15℃未満だけ上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
添付図面の各図に示され、本明細書で後述される実施形態は、限定としてではなく、例示として提示される。図中、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【
図1】本開示の一実施形態に従って構築された手術室用コーティングアプリケータの斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る、底部カバープレートが除去された状態の、
図1に示す手術室用コーティングアプリケータのベース部分の底部平面図である。
【
図3A】本開示の別の実施形態に従って構築された手術室用コーティングアプリケータの斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示す手術室用コーティングアプリケータの斜視図であるが、その真空蓋が開放されている。
【
図3C】
図3Aに示す手術室用コーティングアプリケータのベースユニットの斜視図であり、真空蓋とデバイス区画ボックスの両方がベースユニットから除去されている、
【
図4A】本開示の更に別の実施形態に従って構築された手術室用コーティングアプリケータの斜視図であり、
図4Aは、本実施形態のアクセサリユニットの斜視図である。
【
図4B】本開示の更に別の実施形態に従って構築された手術室用コーティングアプリケータの斜視図であり、
図4Bは、
図4Aに示すアクセサリユニットに連結された本実施形態のデバイス区画バッグの斜視図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る、バッグが開放された状態の、
図4Bに示すデバイス区画バッグの上面図である。
【
図6】デバイス構成要素バッグが開放された状態の、
図5に示すデバイス区画バッグの形態に折り畳まれる前の、電気抵抗ヒータ要素の可能なパターンの上部平面図である。
【
図7A】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。手術室の滅菌ゾーンの外側の位置において、アクセサリユニットとデバイス区画バッグを収容する封止されたパケットとを取り出す例を示す。
【
図7B】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。デバイス区画バッグを手術室の滅菌野に移し、パケットを開放する例を示す。
【
図7C】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。外科用インプラントを、滅菌野内の位置にある開放されたデバイス区画バッグ内に挿入する例を示す。
【
図7D】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。滅菌野内の位置にある間にデバイス区画バッグを再封止する例を示す。
【
図7E】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。再封止されたデバイス区画バッグを手術室の滅菌野から移す例を示す。
【
図7F】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。滅菌野の外側の位置において、再封止されたデバイス区画バッグとアクセサリユニットとを接続する例を示す。
【
図7G】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。コーティング適用サイクルを実行するためにアクセサリユニットを始動させる例を示す。
【
図7H】
図4A~
図4Bに示す手術用コーティングアプリケータを使用して物体をコーティングする方法の例示的実施形態の斜視図である。コーティング適用サイクルの完了後に、コーティングされたインプラントを手術室の滅菌野に移し、再封止されたデバイス区画バッグを滅菌野内に戻す例を示す。
【
図8A】本開示の更に別の実施形態に係る、デバイス区画の複数の封止されたパケットを分配し、その上にアクセサリユニットを固定的に支持するように構成されたディスペンサの例の斜視図である。
【
図8B】
図8Aに示す実施形態のアプリケータバッグの封止されたパケットのある例の平面側面図である。
【
図9A】本開示の更に別の実施形態に係る、アプリケータの封止されたパケットが充填された別のディスペンサのある例の斜視図である。
【
図9B】内部に収容されているデバイス区画バッグの滅菌性を確保するために使用される外側の一次パッケージが除去された状態の、
図9Aに示す封止されたパケットのアプリケータの例の平面側面図である。
【
図10】本明細書に開示される手術室用コーティングアプリケータの様々な実施形態によって実行可能なコーティングサイクルのグラフ表示である。
【
図11】実施例に記載されるトリクロサンの阻害ゾーン試験の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で言及する外科用デバイスは、外科用器具及び埋め込み可能な医療用デバイスを含むことができ、後者には、外傷再建又は関節再建用の整形外科用インプラント、乳房インプラント、胸骨閉鎖デバイス、ペースメーカ、単繊維縫合糸及び多繊維縫合糸、ヘルニア修復メッシュなどの外科用メッシュ、ヘルニアプラグ、ブラキーシードスペーサ、縫合糸クリップ、縫合糸アンカー、癒着防止メッシュ及びフィルム、縫合糸ノットクリップなどが含まれ得るが、これらに限定されない。埋め込み可能な医療用デバイスは、吸収性ポリマー若しくは非吸収性ポリマー、又はステンレス鋼、チタンなどの好適な金属から作製されてもよい。
【0038】
吸収性ポリマーは、生理学的条件にさらされると、ある期間にわたって分解し、体に吸収される。吸収性医療用デバイスは通常、グリコリド、ラクチド、グリコリドのコポリマー、又は、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びそれらの等価物などのポリマーの混合物を含めて、周知の通常の吸収性ポリマーから形成されるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、これらのポリマーとしては、約70%超の重合化グリコリド、約70%超の重合化ラクチド、重合化1,4-ジオキサン-2-オン、約70%超のポリペプチド、グリコリドとラクチドのコポリマー、約70%超のセルロース及びセルロース誘導体からなる群から選択されるポリマー材料が挙げられる。吸収性医療用デバイスの例には、単繊維縫合糸及び多繊維縫合糸が含まれ得る。多繊維縫合糸には、複数の繊維が編み上げ構造に形成された縫合糸が含まれ得る。
【0039】
非吸収性医療用デバイスの例としては、外傷再建又は関節再建用の整形外科用インプラント、乳房インプラント、胸骨閉鎖デバイス、ペースメーカ、単繊維縫合糸及び多繊維縫合糸、ヘルニア修復メッシュなどの外科用メッシュ、ヘルニアプラグ及びブラキーシードスペーサなどを挙げることができ、これらはポリマーであっても、又は非ポリマーであってもよい。非吸収性ポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、及びポリカーボネートなどが挙げられる。
【0040】
本プロセスに適した抗菌剤は、ハロゲン化ヒドロキシエーテル、アシルオキシジフェニルエーテル、又はそれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。具体的には、抗菌剤は、ハロゲン化2-ヒドロキシジフェニルエーテル及び/又はハロゲン化2-アシルオキシジフェニルエーテルであってもよく、あるいは、分解することなく約300℃までの温度で昇華可能又は気化可能な抗菌活性を有する任意の材料であってもよい。
【0041】
特に好ましい抗菌剤の1つは、一般にトリクロサンと呼ばれる2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(Ciba Geigy社製の商標名IrgasanDP300又はIrgacare MP)であってもよい。トリクロサンは、様々な製品に使用されている広域性抗菌剤であり、一般にSSIに関連した多数の生物に対して効果的である。そのような微生物には、ブドウ球菌属、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
製造プロセス中、医療用デバイスに、抗菌剤を含む組成物をコーティングしてもよい。このコーティングは、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、サスペンドドロップコーティング、又は任意の他の通常のコーティング手段でデバイスに適用されてもよい。しかしながら、製造中又は製造後に、パッケージ化された外科用デバイス(インプラント及び/又は器具)上にコーティングを確立するためのこのような技術は、問題を提示し得る。例えば、化学的要因及び他の要因に応じて、いくつかのコーティングは、コーティングされたデバイスからそのパッケージへと経時的に移動する傾向を有し、それによって、デバイス自体上のコーティングの量を減少させ得る。この化学的要因及び他の要因に再び応じて、いくつかのコーティングは経時的に劣化し、したがって、限定された貯蔵寿命を有し得る。ガンマ線照射、電子ビーム照射、熱又は蒸気など、抗菌剤の完全性を損なう可能性がある堅牢な滅菌プロセスは、一次滅菌プロセスで使用されることが多い。最後に、コーティングされパッケージ化されたデバイスは、いくつかのコーティングを不注意で機械的に劣化させ得る取り扱いを受ける。更に、これらの技術は、サイクル時間がかなり長くなる可能性があり、多くの場合、コーティングを適用するために、時間とスペースが限られている手術室の限られたスペースでの操作には役立たないかなり大きな機械を必要とする可能性がある。
【0043】
表皮ブドウ球菌属の微生物は、デバイス関連の手術部位感染に関連した全ての細菌のうちで、最も多く見られるものである。黄色ブドウ球菌及び表皮ブドウ球菌は、患者の皮膚に広く存在し、したがって容易に創傷部に導入される。ブドウ球菌に対して最も効果的な抗菌剤の1つが、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテルである。この化合物は、Bhargava,H.らによって、American Journal of Infection Control(1996年6月、209~218ページ)に記載されているように、黄色ブドウ球菌に対して、好適な増殖培地で測定して、0.01ppmの最小阻害濃度(MIC)を有する。特定の抗菌剤及び特定の微生物に対するMICは、増殖培地をその微生物にとって不適切なものにするために、さもなくば、その微生物にとって好適となる増殖培地に存在しなければならない抗菌剤の最小濃度、すなわち、微生物の増殖を阻害するための最小濃度として定義される。本明細書で用いる「細菌定着を実質的に阻害するのに十分な量」という語句は、黄色ブドウ球菌の最小阻害濃度以上として定義される。
【0044】
このMICの実証例が、感受性のディスク拡散法に見出される。特定の抗菌剤を含浸させた濾紙ディスク又は他の物体が、試験微生物を接種した寒天培地に当てられる。抗菌剤が媒体を通じて拡散する場合、また抗菌剤の濃度がMICを上回る限りにおいて、感受性微生物は、ある距離にわたってディスクの上又は周りで増殖しない。この距離を阻止ゾーンという。抗菌剤が培地中である拡散速度を有すると仮定すると、抗菌剤を含浸させたディスクの周りに阻害ゾーンが存在することから、さもなくば良好となる増殖培地に抗菌剤が存在することによって生物が阻害されると示唆される。阻止ゾーンの直径はMICに反比例する。
【0045】
有利には、コーティングされた縫合糸などの医療用デバイスの表面に存在するトリクロサンの有効濃度は、約0.01ppm超(重量/重量コーティング)又は約30ppm~5,000ppm(重量/重量縫合糸)であってもよい。パッケージ又は封じ込め区画の表面上におけるトリクロサンの濃度は、約5ppm~5,000ppm(重量/重量パッケージ又は区画)であってもよい。しかし、他の特定の用途では、より多量の抗菌剤が有用となる可能性があり、本開示の範囲内で十分に考慮されるべきである。
【0046】
ここで
図1を参照すると、例示的実施形態によれば、本開示は、真空蓋14がベースユニット(「ベース」)16と重ね合わせ関係で係合されるときに閉鎖される空間によって少なくとも部分的に画定され得るデバイス区画12を備える手術室用コーティングアプリケータ10を提供する。本実施形態及び他の様々な実施形態において、熱源18は、熱源18からの出力がデバイス区画12に伝達されるように、ベース16から支持されてもよい。熱源18の動作時に、トリクロサンなどの選択された治療薬を加熱して、担体のシート、パッド、カートリッジ、又はフィルム28の上/中に装填され得る治療薬の蒸気を生成することができる。加熱されると、有意な気化が発生し、治療薬はデバイス区画12の領域を満たす。
【0047】
ベース16は、コーティングされる物体22を受容するためのデバイス区画12の領域内に、格子又はスクリーンなどのデバイス支持プラットフォーム20も収容してもよい。様々な実施形態において、物体22は、1つ以上の外科用インプラント及び/又は外科用器具、並びに/あるいは医療動作の実施に有用な他の物品を備えてもよい。一実施形態では、デバイス支持プラットフォーム20は、格子状の格子細工の形態であり、これは、プラットフォーム20の上方の、下方の、及びプラットフォームを通る蒸気の循環を容易にし、デバイス22の存在下でデバイス区画12内で生成された気化した治療薬への、コーティングされる物体22の表面の露出を促進する。真空蓋14は、デバイス支持プラットフォーム20上のコーティングされる物体22の配置を容易にするように、ベース16に対して容易に上昇及び下降させることができる。設けられて、真空蓋14とベースユニット16との間に封止をもたらすために、真空蓋14の縁部17とベースの対向部分との間に弾性Oリング24を設けることができる。蓋14とベース16との間に封止をもたらすための他の好適な構成が、Oリング封止24の代わりに、又はOリング封止24と組み合わせて用いられてもよいことが想定される。
【0048】
本実施形態では、ベースユニット16は、真空源を収容し、真空源の支持を提供してもよく、真空は、真空ポート25(この図ではプラットフォーム20の下に配置されているため、
図1では破線で描かれている)を介してデバイス区画12に伝達されてもよい。真空ポート25を介したデバイス区画12への真空の連通時、治療薬の気化は、デバイス区画12内の減圧によって増強される。したがって、治療薬を気化させるのに必要な温度を低下させることができる。治療薬の気化の増強は、デバイス区画12全体に一貫して薬剤を分散させ、コーティングされる物体22の表面上にも均一に分配するのに役立つ。
【0049】
適用サイクルが完了すると、コーティングされた外科用物体22は、手術室などの滅菌野内で行われている外科手術において即座に使用するのに許容可能な状態で、デバイス区画12の領域から除去される。様々な実施形態において、外科用物体22上への治療薬のコーティングは、微視的に均一であってもよく、あるいは微視的に均一でなくてもよい。コーティングは、インプラントの表面にわたって分散された個別の微細な島の形態であってもよく、約0.05~5マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
【0050】
本実施形態及び他の実施形態では、熱源18は、治療薬を含有する担体のシート、パッド、カートリッジ、又はフィルム28を、治療薬の昇華又は気化を引き起こすのに十分高い温度まで加熱するように構成された、加熱カートリッジ、フィルムヒータ、シリコーンヒータ、又はワイヤベースのヒータであってもよい。熱源18の位置は、デバイス区画12の内部と流体連通し、治療薬を昇華させるか、又はさもなくば気化させるのに十分に担体に近い限り、重要ではない。例えば、担体28は、トリクロサンを含浸させたシリコーンポリマーのシート、パッド、又はフィルムであってもよく、担体28は、デバイス支持プラットフォーム20の下に配置される。本実施形態では、熱源18は、担体28の下に位置する。他の実施形態では、熱源18及び担体28は、ダクト又はビアを介してデバイス区画12と流体連通する、ベース16内の封止された区画内に位置することができる。
【0051】
様々な実施形態では、ベース16には、1つの動作プログラムから別のプログラム(異なる乾燥サイクル又は浸漬時間を提供するプログラムの間など)に切り替えるための、及び/又は1つの動作モードから別のモードへの切り替え、及び/又は単純に手術室用コーティングアプリケータ10をオン及びオフにするためのセレクタスイッチ30が設けられてもよい。
【0052】
図2を参照すると、本実施形態及び他の様々な実施形態において、ベースユニット16は、コーティングサイクルのタイミング、デバイス区画12との真空の連通、気化器18の動作、及び他のいくつかの実施形態ではデバイス区画12内での熱の適用を制御するためのマイクロプロセッサ又は他の好適な電子構成の形態であるコントローラ32を内部に収容し、その支持を提供してもよい。本実施形態及び様々な他の実施形態では、コントローラ32は、本明細書の
図10を参照して説明される例示的なコーティングサイクルなどのコーティングサイクルを実行するように構成されてもよい。コーティングサイクルを開始するための信号を受信すると、コントローラ32は、熱源18をオンにし、所定の期間にわたって、又は検出されたレベルの治療薬が担体28から気化されるまで、熱源18に電力を供給してもよい。熱源18の動作期間を管理する目的で、他の検出可能因子がコントローラ32に伝達され得ることが想定される。コントローラ32も、所定の期間にわたって、及び/若しくは、デバイス区画12内の特定の所定の状態の達成時に、並びに/又は、各々が共通のサイクル時間及び若しくは異なるサイクル時間を有する、真空の繰り返し適用のプログラムに従って、デバイス区画12から真空を吸引するように構成されてもよい。
【0053】
ベースユニット16は、真空源をデバイス区画12に連通するための真空システム34の支持を更に提供してもよく、これは、真空ポンプ36と、真空ポンプ36の吸引作用をデバイス区画12に伝達するための導管38とを備えてもよい。真空システム34は、コントローラ32の指示の下、導管38を開閉する1つ以上のソレノイドバルブ40又は他の好適なバルブを更に備えてもよい。デバイス区画12の排気中、デバイス区画12から引き出される空気及び他の構成物質(過剰な気化した治療薬)は、気化した治療薬が収集され得る蒸気トラップ42を通って方向付けられてもよい。真空システム34の様々な構成要素の動作は、所定の動作サイクルを繰り返し実行するようにコントローラ32によって制御されてもよい。このような動作中に、真空ポンプ36の吸引作用は、デバイス区画12を排気することができ、その結果、サイクルの実行後にデバイス区画12の開放時に、残留する治療薬がデバイス区画12から周囲環境へと逃げることができるように、デバイス区画12を排気し得ることを理解されたい。
【0054】
様々な実施形態において、コントローラ32は、220秒サイクルの最初の30秒間などの、適用サイクルの所定の時間又は一部分にわたって熱源18を動作させるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ32は、適用サイクルの終了時に真空ポンプ36をオンにするように構成されてもよい。もちろん、適用サイクルのレイアウト及び順序は、他の要因の中でも、コーティングされる物体22の性質、適用される治療薬、真空ポンプ36の効率及び/又は熱源18の効率などに応じて変わる可能性があることを理解されたい。
【0055】
ここで
図3A及び
図3Bを参照すると、別の実施形態の例では、手術室用コーティングアプリケータ10は、開閉可能なボックス状のデバイス区画15’を備えてもよく、このデバイス区画は、取り外し可能な外側真空蓋14’及びベースユニット16’によって囲まれた空間46内に嵌合し位置するように構成されてもよい。本実施形態では、デバイス区画15’は、ボックス本体上部50にヒンジ留めされる下部ボックス本体48を備えてもよい。様々な他の実施形態では、ボックス本体上部50は、ボックス本体48から完全に取り外し可能であってもよく、及び/又はボックス本体48とネジ止めにより接続されてもよい。したがって、デバイス区画15’は、ベース16’からほぼ独立して移動することができ、それにより、ベース16’は手術室の滅菌ゾーンの外側に位置することができ、デバイス区画15’は滅菌ゾーン内で別々に利用され得る。
【0056】
デバイス区画15’は、デバイス区画15’内の、及び真空蓋14’とベース16’との間に画定される空間46内の圧力の均等化を可能にするように、通気口26’を備えてもよい。いくつかの実施形態では、デバイス区画15’が排気されると、空間46もまた、通気口26’を介して排気される。通気口26’はTyvek(登録商標)材料で構築され、デバイス区画15’内の圧力を、デバイス区画15’の外側で真空蓋14’の下の空間46に均等化させるように機能し得る。Tyvek(登録商標)材料又は同等の機能を有する他の好適な材料を用いて、気化した治療薬は、デバイス区画15’の外側の空間46に入るのを完全ではないにしても、実質的に防止することができ、代わりに、真空システム34の動作によって排気されるまで、デバイス区画15’内に留まることができる。
【0057】
本実施形態では、ボックス本体48の壁49、51及びボックス本体50の蓋は、それぞれ、取り扱いに耐えるのに十分に剛性であり得る。しかしながら、壁49、51の反対側の圧力を均等化する通気口26の能力を理由に、壁49、51は、さもなくば真空システム34の動作によって誘発される力に耐える必要はない。したがって、壁49、51は、その廃棄時に材料の廃棄物を最小限に抑えるように、薄いプラスチック又は他の好適な材料から構築されてもよい。
【0058】
本実施形態及び他の様々な実施形態では、熱源18’の動作部分は、全体がデバイス区画15’内に配置されてもよい。
【0059】
ここで
図3Cも参照すると、ベースユニット16’は、熱源18’の動作部分が、ベース16’ではなくデバイス区画12’に位置し得ることを除いて、
図1及び
図2に示されているベース16を参照して上記の教示に従って構築されてもよく、この場合、ベース16’は、熱源18’に、かつデバイス区画12’内に配置された他の電気デバイス(単数他又は複数)に電力を伝達するための第1の(電気的)接続部52を備えてもよい。同様に、デバイス区画15’は、ベース16’の第1の電気的接続部52の電気接点と電気的に接続する、相補的な第1のレシーバ54(
図3B)を備えてもよい。いくつかの実施形態では、第1の電気的接続部52及び/又はレシーバ54は、ピン(、ばね負荷されてもよい)又は他の好適な解放可能な電気コネクタを含んでもよい。
【0060】
ベースユニット16’は、第2の(真空)接続部56も備えてもよく、これは、デバイス区画15’の下側部分60に位置する対応する真空ポート58と封止的に係合するように構成された真空ポート57を備えてもよい。真空ポート57は、真空接続部56において真空封止を確立するためにOリング又は他の好適な封止を備えてもよく、それにより、ベース16’の真空ポンプ36は、デバイス区画15’の内部と連通し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、デバイス区画15’は使い捨てであってもよく、デバイス区画15’とベース16’の両方には、デバイス区画15’とベース16’が一緒になったときに電気接点52及び54の適切な位置合わせを確実にするように相互に配置された磁気片が提供されてもよい。
【0062】
上述の実施形態及びその変形形態のいずれかを利用して、物体22に治療薬をコーティングすることができ、この場合、その薬剤は、熱源と共に使用するのに好適であり、薬剤の熱による分解が発生し得る温度よりも低い温度で比較的高い蒸気圧を示す。このタイプの物体に治療薬をコーティングするステップは、
デバイス区画15を開放するステップと、
コーティングされる物体22をデバイス支持プラットフォーム20上に置くステップと、
デバイス区画15のそれぞれの蓋(14、50)を閉じるステップと、
真空蓋14をベース16に封止するステップと、
デバイス区画15の内部を排気するために、デバイス区画15内で真空を約2~3分間吸引し、治療薬を気化させるために、熱源18を作動させるステップと、
真空を解放するステップと、
ベース16から真空蓋を除去するステップと、
デバイス区画15を開放するステップと、
コーティングされた物体を除去するステップと、
を含む。
【0063】
この形態では、治療薬は、デバイス区画内の熱源18に隣接して位置付けられた担体28上に又は担体28内に予め堆積されることを理解されたい。
【0064】
ここで
図4A、
図4B、及び
図5を参照すると、本開示の別の実施形態に従って構築された手術室用コーティングアプリケータ10の例は、デバイス区画バッグ112及びアクセサリベースユニット116(「アクセサリ」)を備え、後者は、前述の実施形態を参照して説明されるベースユニット16、16’の機能の多くを有する。前述の実施形態のデバイス区画15、15’の剛性(又は半剛性壁)とは対照的に、デバイス区画バッグ112の壁117は可撓性であってもよく、デバイス区画バッグ112の領域(内部)118内におけるコーティングされる物体22の配置に適応するためにリブ付き閉鎖部119に沿って開放されてもよい。デバイス区画バッグ112の内部118は、デバイス区画として機能する。デバイス区画バッグ112の内部118は、熱源(図示せず)などのアプリケータ10の特定の構成要素を収容することもできる。デバイス区画バッグ112は、アクセサリ116上に設けられ得る第2の対応するアダプタ(「コネクタ」)152と解放可能に接続するように構成されたアダプタ(「コネクタ」)150も備えてもよい。アダプタ150とアダプタ152との係合は、それらの間の摺動嵌合又は爪及び戻り止め係合、あるいは他の好適な解放可能な構成で達成され得る。
図4Bでは、デバイス区画バッグ112のアダプタ150は視界から隠されており、したがって、破線で表されていることを理解されたい。
【0065】
アダプタ150、152は、アクセサリ116の真空源136とデバイス区画バッグ112の内部118との間の連通を確立するための対応する真空ポート154a、154bを備えてもよい。アダプタ150、152は、対応する一対の電気コネクタ156a、156bを備えてもよく、これらの電気コネクタは、ばね負荷された金属ピン又は他の好適な解放可能な電気接続デバイスから構成されていてもよい。他のデバイスをアクセサリ116の電源133と接続するために、アダプタ150、152上に追加の電気コネクタを確立してもよい。様々な実施形態では、電源133は、アクセサリ116内に配置された電池若しくは電池のパックを備えてもよく、又は代わりに若しくは追加的に、外部電気壁ソケット若しくは外部電池などとの接続のための電気コード133’を備えてもよい。
【0066】
代替的には、アクセサリ116のアダプタ152は、その位置158aに、温度測定用及び/又は圧力測定用の及び/又は熱源に電力を伝達するためのプローブとして機能し得る、ばね負荷されたピンを含んでもよい。これらのピンは、デバイス区画バッグ112のアダプタ150の対応する位置158bに確立されたポートを介して延び得る。
【0067】
ここで
図5を参照すると、電気接点156bは、熱源200と、この場合には、デバイス区画バッグ112内に配置された、本例ではアルミニウム/PET積層体から構成される可撓性の電気加熱要素である蛇行した導電箔202を備える抵抗ヒータと、密接に接触する。抵抗ヒータ200は、コントローラ32’(
図4A)の指示の下で動作し、治療薬な基材から気化させるための熱ドライバとして機能する。具体的に
図6を参照すると、いくつかの実施形態では、抵抗ヒータは、デバイス区画バッグ112の可撓性(外側)壁117から絶縁された蛇行した電気抵抗箔202から構成されてもよく、例えば、抵抗箔202は2つのスペーサ層212の間に挟まれる。
【0068】
様々な実施形態では、蛇行した導電箔202には、156bのピン(
図5)を当接させることができるタブの形態の電気端子204a、204bを設けることができる。抵抗ヒータ200を構築する際、蛇行した箔202は、自立するように十分に堅牢であってもよく、又はPET又はポリイミド製の基材209上に最初に設けられ、次いで中央横方向折り畳み線208に沿って折り畳まれてもよい。いくつかの実施形態では、基材209は、トリクロサンなどの治療薬をドープされた担体を備えてもよく、及び/又は、代わりに若しくは追加的に、デバイス区画バッグ112の可撓性壁117を含む材料のシートを備えてもよい。様々な実施形態において、壁117は、PET又はポリイミドなどの可撓性耐熱材料から構築されてもよく、前述の蛇行したアレイ又は他のパターンの導電性材料の印刷層を含んでもよい。様々な他の実施形態では、蛇行したヒータアレイ200とデバイス区画バッグ112の壁117との間にスペーサ層212が挿入されてもよい。このようなポリマーメッシュのスペーサ材料は、当該技術分野において周知である。
【0069】
図4A及び
図4Bに戻って参照すると、前述の折り畳みの後、デバイス区画バッグ112は、折り畳まれた壁117の3つの側部に沿って外周210を封止することによって形成されてもよく、再封止可能なリブ付き封止119は、デバイス区画バッグ112の残りの端部部分にわたって設けられてもよい。いくつかの実施形態では、デバイス区画バッグ112のアダプタ150はリブ付き封止119に隣接して位置してもよく、他の実施形態では、アダプタ150は、再封止可能なリブ付き封止119に対して離間した関係に位置してもよい。
【0070】
再び
図5を参照すると、デバイス区画バッグ112は、ポリマーメッシュの層から構築され得る第2の内側スペーサ層212を更に備えてもよい。様々な実施形態では、内側スペーサ層212(スタンドオフスペーサ)は、閉じたデバイス区画バッグ112のデバイス区画12内に配置されたときに、コーティングされる物体22の外側表面が、デバイス区画バッグ112内に置かれた担体のパッド、シート、カートリッジ、又はフィルム(図示せず)の形態で、熱源18の動作によって確立された気化した治療薬にさらされ、接触することを保証するのに役立つ。スタンドオフスペーサ212は、コーティングされる物体22と蛇行した抵抗箔202との間に約0.5~2mmの間隔を提供し得る。様々な他の実施形態では、スタンドオフスペーサ層212は、プラスチック製のリボンなどの他の離間措置を追加又は置換してもよい。
【0071】
アクセサリ116の電源133は、1つ以上の電池及び/又は壁ソケット133用のプラグインコネクタを備えてもよい。
【0072】
ここで
図7A~
図7Hを参照すると、デバイス区画バッグ112及びアクセサリユニット116を備えるような実施形態について、治療薬を外科用インプラント又は外科用器具などの医療用デバイス22に適用する方法は、例として、
ディスペンサ312からパケット310及びアクセサリ116を取り外し、そのパケット310からデバイス区画バッグ112を除去するステップであって、除去は手術室の滅菌野内で実施されてもよい(
図7A、
図7B参照)、ステップと、
手術室の滅菌野でデバイス区画バッグ112を開放し、コーティングされる物体22(医療用デバイスなど)をデバイス区画バッグ112に挿入するステップ(
図7C参照)と、
デバイス区画バッグ112を閉じ、再封止するステップ(これは滅菌野で行われてもよい)ステップ(
図7D参照)と、
封止されたデバイス区画バッグ112を、滅菌野の外にあってもよいアクセサリユニット116の位置に移す(
図7E参照)ステップと、
封止されたデバイス区画バッグ112のアダプタ150をアクセサリユニット116のアダプタ152に一時的に取り付け、アダプタ152を作動させて、以下を含み得るコーティングサイクルを実行する(
図7F、
図7G参照)ステップと、
真空を吸引し、熱源を封止されたデバイス区画バッグ112内で所望の時間加熱して、デバイス区画バッグ112内の治療薬を気化させ、物体22をコーティングするステップと、
真空を解放するステップと、
を実施することによって実施され得る。
封止されたバッグ112内のコーティングされた物体22を手術室の滅菌野に移す。
デバイス区画バッグ112を開放し、滅菌野内で、コーティングされた物体22をバッグ112から除去する(
図7H参照)。
【0073】
図8A及び
図8Bを参照すると、デバイス区画バッグ112は、開放可能な封止されたパケット(「一次パッケージ」)310の領域内において滅菌状態で個別にパッケージ化されてもよい。複数のパケット310をディスペンサ312に積み重ねてもよく、ディスペンサ312から個々のパケット310を引き出してもよい。アクセサリベースユニット116は、ディスペンサ312に取り付けられてもよく、パケット310がディスペンサ312から除去され、パケット310が開放された後に、デバイス区画バッグ112のうちのいずれか1つに取り外し可能に取り付け可能であってもよい。他の実施形態において、デバイス区画バッグ112は、単回使用用に構成されてもよい。
【0074】
アクセサリユニット116は、個々のパケット310が収容されたものと同じカートン/ディスペンサ312に支持されてもよい。アクセサリユニット116のアダプタ152は、アダプタ152及び150を一緒に押圧したときに、アクセサリユニット116へのデバイス区画バッグ112の一時的な取り付けを容易にする方法で配置されてもよい。必要な電力及び真空は、電気壁ソケットなどの外部電力源及び外部真空源への接続部又はテザー314を介して、アクセサリユニット116に伝達されてもよい。他の様々な実施形態において、アクセサリユニット116は、アクセサリユニット116内の真空ポンプ36などのデバイスを駆動するために、それ自身のバッテリ316を含んでもよい。また、コントローラ32’(
図4A)は、アクセサリ116内に位置してもよく、代わりに、テザー314を介して遠隔通信されてもよい。熱源18は、デバイス区画バッグ112の領域内に位置してもよい。
【0075】
ここで、別の実施形態の
図9A及び
図9Bを参照すると、アクセサリ116’は、単回使用後に廃棄可能な一体の完全ユニットを形成するように、デバイス区画バッグ112と一体化されてもよい。アクセサリ116’は、単独で電池駆動されてもよく、又は、電気壁ソケットなどの外部電気源へのテザー314を介した接続によって単独で電力供給されてもよく、あるいは、その両方であってもよい。様々な実施形態では、統合されたデバイス区画バッグ112’及びアクセサリ116’は、テザー314と一緒に、全て個々のパケット310’内にパッケージ化されてもよい。本実施形態及び他の様々な実施形態では、真空源(ポンプ)36は、テザー314を介してアクセサリ116’及び/又はデバイス区画バッグ112に伝達される外部真空源36であってもよい。
【0076】
ここで
図10を参照すると、ベース又はアクセサリのコントローラは、トリクロサンを気化させるために熱源18、200をオンにする期間を含む適用サイクルを実行するように構成されてもよい。
図10に示すように、コーティングサイクル中に真空レベルが低下するにつれて、デバイス区画12、112内のランプアップ温度が上昇し得る。コーティングサイクルに続いて、デバイス区画の温度及び圧力を周囲に戻す。
【0077】
コールドフィンガ効果
インプラントは、スタンドオフメッシュ212によって熱源202から部分的に熱的に絶縁されており、また、プロセスが急速に発生し、インプラントの熱質量が加熱要素の熱質量に対して大きいという事実によって、熱源とインプラントとの間の熱平衡は決して起こらない。その結果、インプラントは通常、熱源よりも著しく低温になる。インプラントなどの医療用デバイスにトリクロサンをコーティングするように設計されたコーティングデバイスでは、温度差(又は温度勾配)は約50℃~約150℃になり得る。このように、インプラントの比較的冷たい表面に高温の蒸気を凝縮させるための非常に大きな熱力学的駆動力が存在する。これにより、さもなくば活性剤が好ましく吸収されないような様々な表面に活性剤を凝縮させることができる。したがって、現在開示されているデバイス及び方法は、Scalzoらよる米国公開特許出願第2004/0220614号に開示されているような、トリクロサンを含浸させた吸収性縫合糸を作製するために使用される以前のプロセスとは著しく異なる。
【実施例】
【0078】
図1及び
図2のデバイスを用いて、0.5’’の研磨された316ステンレス鋼のクーポンに、
図10のサイクルに従ってトリクロサンコーティングを適用した。次いで、このステンレス鋼クーポンを、1立方センチメートルの溶液当たり10
5個の細菌の初期黄色ブドウ球菌接種物を含む寒天プレート上で、38℃で24時間インキュベートした。
図11に示す画像は、約40mmの阻害保護ゾーンが、直径80mmのプレート全体にわたって形成されたことを示す。特に、プレート全体が保護された。
【0079】
産業上の利用可能性
本明細書に開示されるシステム及び方法は、医療用デバイス産業に適用可能である。
【0080】
上記の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を包含すると考えられる。これらの発明のそれぞれは、その好ましい形態で開示されているが、本明細書に開示及び例示されるこれらの特定の実施形態は、多くの変形形態が可能であるため、限定的な意味で考慮されるべきではない。本発明の主題は、本明細書に開示される様々な要素、特徴、機能、及び/又は特性の全ての新規かつ非自明のコンビネーション及びサブコンビネーションを含む。同様に、「特許請求の範囲」が「a」又は「第1の」要素又はその等価物を列挙する場合、このような「特許請求の範囲」は、1つ以上のそのような要素の組み込みを含むものであり、2つ又はそれ以上のそのような要素を必須とすることも除外することもないことを理解すべきである。
【0081】
以下の「特許請求の範囲」は、開示される発明の1つを対象とする特定のコンビネーション及びサブコンビネーションを具体的に指摘し、新規かつ非自明であると考えられる。特徴、機能、要素、及び/又は特性の他のコンビネーション及びサブコンビネーションで具現化された発明は、本特許請求の範囲の修正、又は本願若しくは関連出願における新規の特許請求の範囲の提示によって主張され得る。また、そのような修正又は新規の特許請求の範囲は、それらが異なる発明を対象とするか、又は同一の発明を対象としているかに関わらず、元の特許請求の範囲と異なるか、より広いか、より狭いか、又は同一の範囲であるかに関わらず、本開示の発明の主題に含まれるものと見なされる。
【0082】
本開示が特定の実施形態を参照することによって以下に例示及び説明されているが、当業者であれば、本発明には必ずしも本明細書に例示されない変形形態を容易に行いうることを理解するであろう。このため、次いで、本発明の真の範囲を決定する目的で、添付の特許請求の範囲のみを参照する必要がある。
【0083】
〔実施の態様〕
(1) 治療薬のコーティングを適用するためのコーティング装置であって、
開放可能かつ封止可能なデバイス区画と、
前記デバイス区画と連通するように位置付けられた治療薬と、
前記治療薬を気化させるための熱源と、
前記デバイス区画と流体連通している真空源と、
を備える、コーティング装置。
(2) 前記デバイス区画は剛性壁を有する、実施態様1に記載のコーティング装置。
(3) 前記デバイス区画はベースに接続され、前記ベースは前記真空源を組み込んでいる、実施態様2に記載のコーティング装置。
(4) 前記デバイス区画は、前記ベースに取り外し可能かつ封止可能に連結されており、前記ベースと前記デバイス区画との間に電気的接続部及び真空接続部が延びている、実施態様3に記載のコーティング装置。
(5) 前記治療薬は担体に取り込まれる、実施態様1に記載のコーティング装置。
【0084】
(6) 前記治療薬はトリクロサンであり、前記担体は、シリコーン製のシート若しくはパッド若しくはフィルム、又は吸収性ポリマーから作製されたシート若しくはパッド若しくはフィルムである、実施態様5に記載のコーティング装置。
(7) 前記吸収性ポリマーは、ラクチドグリコリドコポリマーである、実施態様6に記載のコーティング装置。
(8) 前記担体は、前記熱源に隣接して位置付けられる、実施態様5に記載のコーティング装置。
(9) 前記治療薬はトリクロサンである、実施態様1に記載のコーティング装置。
(10) 前記デバイス区画は、可撓性側面を有する、実施態様1に記載のコーティング装置。
【0085】
(11) 前記熱源は、前記デバイス区画内に配置された蛇行した電気抵抗箔の形態の電気抵抗ヒータである、実施態様10に記載のコーティング装置。
(12) 前記デバイス区画の前記側面と前記熱源との間に熱絶縁を提供するために、前記熱源の上方の前記デバイス区画内に位置付けられた第1のスペーサメッシュと、前記デバイス区画の前記側面と前記熱源との間に位置付けられた第2のスペーサメッシュと、を更に備える、実施態様11に記載のコーティング装置。
(13) 前記治療薬は、前記第1のスペーサメッシュ上にコーティングされる、実施態様12に記載のコーティング装置。
(14) 前記治療薬は、前記熱源上にコーティングされる、実施態様12に記載のコーティング装置。
(15) 前記治療薬は、前記熱源に隣接して配置された担体上に又は前記担体内に装填される、実施態様12に記載のコーティング装置。
【0086】
(16) 前記デバイス区画は、第1の端部上で開放可能かつ封止可能であり、前記真空源は、前記デバイス区画の封止された第2の端部に流体接続される、実施態様10に記載のコーティング装置。
(17) 前記真空源及び電源は、前記デバイス区画とは別個のベースに組み込まれている、実施態様16に記載のコーティング装置。
(18) 前記ベースの前記真空源は、可撓性ホースを介して前記デバイス区画に流体接続され、前記電源は、真空リード及び/又は電力リードをバッグ内の前記ヒータに運ぶように構成されたワイヤリードを介して前記熱源に電気的に接続されている、実施態様17に記載のコーティング装置。
(19) 物体に治療薬をコーティングするための方法であって、
コーティングされる物体を開放可能かつ封止可能なデバイス区画内に置くステップと、
前記デバイス区画を封止するステップと、
前記デバイス区画に真空源から真空を適用するステップと、
治療薬で前記デバイス区画を満たし、コーティングされる前記物体にコーティングするために、前記治療薬を気化させるステップと、
コーティングされた前記物体を前記デバイス区画から除去するステップと、
を含む、方法。
(20) 前記真空源は、前記デバイス区画と流体連通している、実施態様19に記載の方法。
【0087】
(21) 前記気化させるステップは、熱源を用いて行われる、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記デバイス区画は剛性壁を有する、実施態様19に記載の方法。
(23) 前記デバイス区画はベースに接続され、前記ベースは真空源を組み込んでいる、実施態様19に記載の方法。
(24) 前記デバイス区画は、前記ベースに取り外し可能かつ封止可能に連結されており、前記ベースと前記デバイス区画との間に電気的接続部及び真空接続部が延びている、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記治療薬は担体に取り込まれる、実施態様19に記載の方法。
【0088】
(26) 前記治療薬はトリクロサンであり、前記担体は、シリコーン製のシート若しくはパッド若しくはフィルム、又は吸収性ポリマーから作製されたシート若しくはパッド若しくはフィルムである、実施態様25に記載の方法。
(27) 前記吸収性ポリマーは、ラクチドグリコリドコポリマーである、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記担体は、前記熱源に隣接して位置付けられる、実施態様25に記載の方法。
(29) 前記デバイス区画は可撓性側面を有し、前記熱源は、前記可撓性側面内に位置付けられ、かつ、前記可撓性側面から熱的に絶縁された抵抗加熱トレースを備える、実施態様19に記載の方法。
(30) 前記デバイス区画は、第1の端部上で開放可能かつ封止可能であり、前記真空源は、前記デバイス区画の封止された第2の端部に流体接続される、実施態様29に記載の方法。
【0089】
(31) 前記真空源及び電源は、前記デバイス区画とは別個のベースに組み込まれている、実施態様19に記載の方法。
(32) 前記ベース内の前記真空源は、可撓性ホースを介して前記デバイス区画に流体接続され、前記電源は、ワイヤリード介して前記熱源に電気的に接続されている、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記物体が気化した前記治療薬よりも約50℃~約150℃低温になるように、前記物体と前記気化した治療薬との間に温度勾配を確立することによって、前記物体上への前記気化した治療薬の堆積を促進するステップと、前記物体を前記気化した治療薬と接触させるステップと、を更に含む、実施態様19に記載の方法。
(34) 前記接触させるステップは、約1分~約15分の範囲の期間にわたって継続される、実施態様33に記載の方法。
(35) 接触させる前記期間中に、前記物体の温度が15℃未満だけ上昇する、実施態様34に記載の方法。
【0090】
(36) 埋め込み可能な医療用デバイス上に治療薬を堆積させる方法であって、
前記医療用デバイス上への気化した治療薬の堆積を、前記医療用デバイスと前記気化した治療薬との間に温度勾配を確立することによって促進するステップと、前記物体を前記気化した治療薬と接触させるステップと、を含む、方法。
(37) 前記医療用デバイスは、前記気化した治療薬よりも約50℃~約150℃低温である、実施態様36に記載の方法。
(38) デバイス区画を開放し、前記医療用デバイスを前記デバイス区画内に置き、前記デバイス区画を閉じるステップと、
閉じた前記デバイス区画を排気するステップと、
前記気化した治療薬を前記閉じたデバイス区画と連通させるステップと、
前記デバイス区画を開放し、前記医療用デバイスを除去するステップと、
を更に含む、実施態様36に記載の方法。
(39) 前記気化した治療薬が加熱された状態にある間、前記医療用デバイスを前記気化した治療薬と接触させるステップ、
を更に含む、実施態様38に記載の方法。
(40) 前記接触させるステップ中に、前記医療用デバイスの温度が15℃未満だけ上昇する、実施態様39に記載の方法。