(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20231218BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/26
(21)【出願番号】P 2021532296
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 US2019068362
(87)【国際公開番号】W WO2020139841
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】スコット ローランズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ジェイ オケンファス
(72)【発明者】
【氏名】ティム グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】マリウス グリゴニス
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-534585(JP,A)
【文献】特表2018-504635(JP,A)
【文献】特開2018-200464(JP,A)
【文献】特開2003-262720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014838(US,A1)
【文献】特表2018-506076(JP,A)
【文献】特開2003-177237(JP,A)
【文献】特開2003-302521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0149781(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108873135(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタ層のセットを備え、
前記光学フィルタ層のセットは、
第1の屈折率を有する第1の材料を備える光学フィルタ層の第1のサブセットであって、前記第1の材料は少なくともシリコンおよび水素を備える、第1のサブセットと、
第2の屈折率を有する第2の材料を備える光学フィルタ層の第2のサブセットであって、
前記第2の材料は前記第1の材料とは異なり、前記第2の屈折率は前記第1の屈折率よりも小
さく、前記第2の材料は五酸化タンタル(Ta
2
O
5
)材料を含む、第2のサブセットと、
前記第1の材料および前記第2の材料とは異なる第3の材料を備える光学フィルタ層の第3のサブセット
であって、前記第3の材料はSiO
2
又はSiO
x
(0<x<2)を含む、第3のサブセットと、
少なくとも前記第1の材料および前記第2の材料とは異なる第4の材料を備える光学フィルタ層の第3のサブセットであって、前記第4の材料はSiO
2
又はSiO
x
(0<x<2)を含む、第4のサブセットと、を含
み、
前記第1のサブセット-前記第3のサブセット-前記第2のサブセット-前記第4のサブセットからなる層の単位が繰り返し積み重ねられる、
光学フィルタ。
【請求項2】
前記第1の材料は、
水素化シリコン(Si:H)材料、または
水素化シリコンゲルマニウム(SiGe:H)材料、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記光学フィルタ層のセットが配置される基板をさらに備える、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記光学フィルタ層のセットは、前記基板の第1の側に配置され、
ここで、コーティングは前記基板の第2の側に配置される、
請求項
3に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記第1の屈折率は
、800ナノメートル(nm)
~1100nmのスペクトル範囲で3より大きい、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記第1の屈折率は
、800ナノメートル(nm)
~1100nmの波長
で3.7である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記第2の屈折率は
、800ナノメートル(nm)
~1100nmのスペクトル範囲で3未満である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記第2の屈折率は
、800ナノメートル(nm)
~1100nmのスペクトル範囲で1.6~2.4である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記光学フィルタは、バンドパスフィルタである、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記第1のサブセット-前記第3のサブセット-前記第2のサブセット-前記第4のサブセットからなる層の単位は、Si:H-SiO
2
-Ta
2
O
5
-SiO
2
からなる単位である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
近赤外線(NIR)光を放出する光送信器と、
入力光信号をフィルタリングし、フィルタリングされた入力光信号を提供する光学フィルタであって、
前記入力光信号は前記光送信器からの前記NIR光と光源からの周囲光とを含み、
前記光学フィルタは誘電体薄膜層のセットを含み、
前記誘電体薄膜層のセットは、
第1の屈折率を有する第1の材料から形成された層の第1のサブセット
であって、前記第1の材料は少なくともシリコンおよび水素を備える、第1のサブセットと、
前記第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を有する第2の材料から形成された層の第2のサブセット
であって、前記第2の材料は五酸化タンタル(Ta
2
O
5
)材料を含む、第2のサブセットと、
前記第1の材料および前記第2の材料とは異なる第3の材料から形成された層の第3のサブセット
であって、前記第3の材料はSiO
2
又はSiO
x
(0<x<2)を含む、第3のサブセットと、
前記第1の材料
および前記第2の材料とは異なる第4の材料から形成された層の第4のサブセット
であって、前記第4の材料はSiO
2
又はSiO
x
(0<x<2)を含む、第4のサブセットと、
を含み、
前記フィルタリングされた入力光信号は、入力光信号と比較して低減された強度の周囲光を含む、
光学フィルタと、
前記フィルタリングされた入力光信号を受信し、出力電気信号を提供する光受信器と、
を備え、
前記第1のサブセット-前記第3のサブセット-前記第2のサブセット-前記第4のサブセットからなる層の単位が繰り返し積み重ねられる、
光学システム。
【請求項12】
前記光学フィルタは
、950ナノメートルで80%より大きい透過率
を有する、請求項
11に記載の光学システム。
【請求項13】
前記光学フィルタは
、950ナノメートルで90%より大きい透過率
を有する、請求項
11に記載の光学システム。
【請求項14】
前記光学フィルタは
、1550ナノメートルで80%より大きい透過率
を有する、請求項
11に記載の光学システム。
【請求項15】
前記光学フィルタは
、1550ナノメートルで90%より大きい透過率
を有する、請求項
11に記載の光学システム。
【請求項16】
前記第1のサブセット-前記第3のサブセット-前記第2のサブセット-前記第4のサブセットからなる層の単位は、Si:H-SiO
2
-Ta
2
O
5
-SiO
2
からなる単位である、請求項11に記載の光学システム。
【請求項17】
光学フィルタの光学フィルタ層の第1のサブセットを堆積し、
前記光学フィルタ層の第1のサブセットは第1の屈折率を有する第1の材料を備
え、前記第1の材料は少なくともシリコンおよび水素を備える、ステップと、
前記光学フィルタの光学フィルタ層の第2のサブセットを堆積し、
前記光学フィルタ層の第2のサブセットは前記第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する第2の材料を備え
、前記第2の材料は五酸化タンタル(Ta
2
O
5
)材料を含む、ステップと、
前記第1の材料および前記第2の材料とは異なる第3の材料を備える光学フィルタ層の第3のサブセットを堆積
し、
前記第3の材料はSiO
2
又はSiO
x
(0<x<2)を含む、ステップと、
前記第1の材料および前記第2の材料とは異なる第4の材料を備える光学フィルタ層の第4のサブセットを堆積し、
前記第4の材料はSiO
2
又はSiO
x
(0<x<2)を含む、ステップと
を含
み、
前記第1のサブセット-前記第3のサブセット-前記第2のサブセット-前記第4のサブセットからなる層の単位が繰り返し積み重ねられる、
光学フィルタを作製する方法。
【請求項18】
前記光学フィルタ層の第1のサブセット、前記光学フィルタ層の第2のサブセット、または前記光学フィルタ層の第3のサブセットのうちの1つ以上は、直流スパッタリングを介して堆積される、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のサブセット-前記第3のサブセット-前記第2のサブセット-前記第4のサブセットからなる層の単位は、Si:H-SiO
2
-Ta
2
O
5
-SiO
2
からなる単位である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年12月20日に出願された“OPTICAL FILTER”と題する米国特許出願(非仮出願)第16/722,325号および2018年12月27日に出願された“OPTICAL FILTER”と題する米国仮特許出願第62/785,487号に基づく優先権を主張し、これらを参照により本明細書に明示的に援用する。
【0002】
(背景技術)
光送信器は、1つ以上の物体に向けられた光を放出し得る。例えば、ジェスチャ認識システムでは、光送信器は、近赤外(NIR)光をユーザに向けて送信し得、NIR光は、ユーザから光受信器に向かって反射され得る。この場合、光受信器は、NIR光に関する情報を取得し得、その情報は、ユーザによって実行されているジェスチャを識別するために使用され得る。例えば、デバイスは、情報を使用して、ユーザの3次元表現を生成し、3次元表現に基づいてユーザによって実行されているジェスチャを識別し得る。
【0003】
NIR光のユーザへの送信中および/またはユーザから光受信器への反射中に、周囲光がNIR光と干渉し得る。したがって、光受信器は、バンドパスフィルタなどの光学フィルタに光学的に結合されて、周囲光をフィルタリングし、NIR光が光受信器に向かって通過することを可能にし得る。
【発明の概要】
【0004】
一実装形態によれば、光学フィルタは、光学フィルタ層のセットを含み得、光学フィルタ層は、第1の屈折率を有する第1の材料を備える光学フィルタ層の第1のサブセットであって、第1の材料は少なくともシリコンおよび水素を備える、第1のサブセットと;第2の屈折率を有する第2の材料を備える光学フィルタ層の第2のサブセットであって、第2の材料は第1の材料とは異なり、第2の屈折率は第1の屈折率よりも小さい、第2のサブセットと;第1の材料および第2の材料とは異なる第3の材料を備える光学フィルタ層の第3のサブセットと、を含む。
【0005】
一実装形態によれば、光学フィルタは、基板と;入射光をフィルタリングするために基板上に配置された1つ以上の高屈折率材料層および1つ以上の低屈折率材料層であって、ここで、第1のスペクトル範囲を有する入射光の第1の部分は、光学フィルタによって反射され、第2のスペクトル範囲を有する入射光の第2の部分は、光学フィルタによって通過され、1つ以上の高屈折率材料層は第1の材料であり、1つ以上の低屈折率材料層は第2の材料である、1つ以上の高屈折率材料層および1つ以上の低屈折率材料層と、基板上に配置された1つ以上の遷移材料層と、を含み得、1つ以上の遷移材料層は、第1の材料および第2の材料とは異なる第3の材料である。
【0006】
一実装形態によれば、光学システムは、近赤外線(NIR)光を放出する光送信器と;入力光信号をフィルタリングし、フィルタリングされた入力光信号を提供するための光学フィルタであって、入力光信号は光送信器からのNIR光と光源からの周囲光とを含み、光学フィルタは誘電体薄膜層のセットを含み、誘電体薄膜層のセットは、第1の屈折率を有する第1の材料から形成された層の第1のサブセットと、第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を有する第2の材料から形成された層の第2のサブセットと、第1の材料および第2の材料とは異なる第3の材料から形成された層の第3のサブセットと、第1の材料、第2の材料、および第3の材料とは異なる第4の材料から形成された層の第4のサブセットと、を含み;フィルタリングされた入力光信号は、入力光信号と比較して低減された強度の周囲光を含む、光学フィルタと;フィルタリングされた入力光信号を受信し、出力電気信号を提供する光受信器と、を含み得る。
【0007】
一実装形態によれば、光学フィルタを作製する方法は、光学フィルタの光学フィルタ層の第1のサブセットを堆積し、光学フィルタ層の第1のサブセットは第1の屈折率を有する第1の材料を備える、ステップと;光学フィルタの光学フィルタ層の第2のサブセットを堆積し、光学フィルタ層の第2のサブセットは第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する第2の材料を備える、ステップと;第1の材料および第2の材料とは異なる第3の材料を備える光学フィルタ層の第3のサブセットを堆積する、ステップと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本明細書で説明される1つ以上の例示的な実装形態の図である。
【
図1B】本明細書で説明される1つ以上の例示的な実装形態の図である。
【
図1C】本明細書で説明される1つ以上の例示的な実装形態の図である。
【
図2A】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学的特性および/または機械的特性の1つ以上の例の図である。
【
図2B】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学的特性および/または機械的特性の1つ以上の例の図である。
【
図2C】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学的特性および/または機械的特性の1つ以上の例の図である。
【
図2D】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学的特性および/または機械的特性の1つ以上の例の図である。
【
図3A】本明細書に記載の1つ以上の実装例を製造するためのスパッタ堆積システムの1つ以上の例の図である。
【
図3B】本明細書に記載の1つ以上の実装例を製造するためのスパッタ堆積システムの1つ以上の例の図である。
【
図3C】本明細書に記載の1つ以上の実装例を製造するためのスパッタ堆積システムの1つ以上の例の図である。
【
図3D】本明細書に記載の1つ以上の実装例を製造するためのスパッタ堆積システムの1つ以上の例の図である。
【
図4A】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学特性の1つ以上の例の図である。
【
図4B】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学特性の1つ以上の例の図である。
【
図5A】本明細書に記載の1つ以上の実装形態に関連する材料のセットの機械的特性の1つ以上の複数の例の図である。
【
図5B】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学特性の1つ以上の例の図である。
【
図6A】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学特性の1つ以上の例の図である。
【
図6B】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学特性の1つ以上の例の図である。
【
図6C】本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの機械的特性の1つ以上の例の図である。
【
図7A】本明細書記載の1つ以上の例示的な実装形態の図である。
【
図7B】本明細書記載の1つ以上の例示的な実装形態の図である。
【
図8A】水素化シリコン層の屈折率の例のプロットである。
【
図8B】水素化シリコン層の吸光係数の例のプロットである。
【
図9】本明細書に記載の光学フィルタの透過スペクトルの例のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実装形態例の詳細な説明は、添付の図面を参照して行う。異なる図面の同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を識別し得る。2017年11月23日に公開されたHendrixらの米国特許出願公開第20170336544号(U.S. Patent Application Publication No.20170336544)は、参照により本明細書に援用される。
【0010】
光受信器は、光送信器などの光源から光を受信し得る。例えば、光受信器は、光送信器から近赤外(NIR)光を受信し、ターゲットで反射させ得る。ターゲットには、人(例:ユーザと非ユーザ)、動物、無生物(例:車、木、障害物、家具、壁)などが含まれ得る。この場合、光受信器は、可視スペクトル光などの周囲光だけでなく、NIR光も受信し得る。周囲光は、太陽光、電球からの光など、光送信器とは別の1つ以上の光源からの光を含み得る。周囲光は、NIR光に関連する測定の精度を低下させ得る。例えば、ジェスチャ認識システムでは、周囲光は、NIR光に基づくターゲットの3次元画像の生成の精度を低下させ得る。いくつかの例では、NIR光に関する情報は、ユーザの個人識別、ユーザの特徴(例えば、身長または体重)、ユーザの状態(例えば、ユーザのまぶたの位置、ユーザが目覚めているかどうかなど)、ターゲットの別のタイプの特徴(例えば、物体までの距離、物体のサイズまたは物体の形状)などを認識するために使用され得る。したがって、光受信器は、バンドパスフィルタなどの光学フィルタに光学的に結合され、周囲光をフィルタリングし、NIR光を光受信器に向かって通過させ得る。
【0011】
例えば、光学フィルタは、特定の閾値未満の帯域外光の一部、例えば700ナノメートル(nm)など、を遮断し、特定の波長範囲、例えば約700nmから約1700nmの範囲、約800nmから約1100nmの範囲、約900nmから約1000nmの範囲、約920nmから約980nmの範囲、および/またはその他等、について光を通過させるために選択および堆積され得る誘電性薄膜層のセットを含み得る。いくつかの例では、通過帯域は、800nmから1100nmの範囲、約820nmから約880nmの範囲、約920nmから980nmの範囲、約870nmから約930nmの範囲などの、中心波長を有し得る。別の例では、誘電体薄膜層のセットを選択して、周囲光を除去し得る。加えて、または代わりに、誘電体膜層のセットを選択して、特定の閾値未満の帯域外光を遮断し、約1500nmから約1600nmの範囲、約1520nmから約1580nmの範囲、または中心波長が約1550nmである、などの別の波長範囲の光を通過させ得る。
【0012】
本明細書に記載のいくつかの実装形態は、シリコンおよび水素を備える材料、水素化シリコン(Si:H)ベースの材料、シリコンゲルマニウム(SiGe)ベースの材料、水素化シリコンゲルマニウム(SiGe:H)材料、および/または低角度シフト光学フィルタなどの光学フィルタ用の高屈折率層のセットなどを使用し得る。高屈折率層のセット内の材料には、少なくともシリコン(Si)および水素(H)、シリコン、およびHの任意の同位体(たとえば、プロチウム(A=1)、重水素(A=2)、トリチウム(A=3))および/またはそれらの任意の混合物を含み得る。このように、別の高屈折率層材料を使用する別のフィルタスタックと比較してより高い実効屈折率を有する高屈折率層のセットを有する光学フィルタに基づいて、光学フィルタは比較的低い角度シフトを提供し得る。さらに、これらの高屈折率層材料のいずれかを使用するフィルタは、周囲光を実質的に遮断または効果的に遮蔽し、NIR光を通過させ得る。
【0013】
図1A~1Cは、例示的な光学フィルタ100、100’、100’’の図である。
図1A~1Cは、3つ以上の異なる材料を使用する光学フィルタの例示的な積み重ねを示す。
さらに
図1A~1Cに示されるように、光学フィルタ100、100’、100’’は、光学フィルタコーティング部分110および基板120を含み得る。
【0014】
図1A~1Cに示されるように、光学フィルタコーティング部分110は、光学フィルタ層のセットを含む。例えば、光学フィルタコーティング部分110は、第1の層のセット130、第2の層のセット140、および第3の層のセット135を含む。第1の層のセット130は、高屈折率材料の層のセットを含み得、本明細書ではH層130と呼ばれ得る。例えば、一実装形態では、H層130は、水素およびシリコンを備える材料(例えば、シリコン(Si)および水素(H)を含み得る水素化シリコン(Si:H)層、Siおよびプロチウム(A=1)、重水素(A=2)、および/またはトリチウム(A=3)を含むHの任意の同位体、水素化シリコン-ゲルマニウム(SiGe:H)層および/またはその他など)を含み得る。一実装形態では、H層130は、シリコンおよびゲルマニウムを含む材料(例えば、シリコンゲルマニウム(SiGe)層および/またはその他など)を含み得る。
【0015】
これらの高屈折率材料は、少なくとも800ナノメートル(nm)から1100nmの範囲にわたって、3、3.2、3.5、3.6、4および/またはその他よりも高い屈折率を有し得る。例えば、Si:Hは、800nmから1100nmの波長範囲にわたって3より大きい屈折率を有し得る。一実装形態では、Si:H材料は、800nmから1100nmの波長範囲にわたって3.5より大きい屈折率を有する(例えば、3.64より大きい屈折率)。一実装形態では、Si:H材料は、約830nmの波長で約3.8の屈折率を有し得る。一実装形態では、屈折率は、800nmで3.87より大きくなり得る。一実装形態では、Si:H材料は、800nmから1100nmの波長範囲にわたって4.3未満の屈折率を有する。高屈折率層は、リン、ホウ素、窒化物、アルゴン、酸素、炭化物および/またはその他を含み得る。
【0016】
一実装形態では、第2の層のセット140は、低屈折率材料の層のセットを含み得、本明細書ではL層140と呼ばれ得る。例えば、L層140の屈折率は、一般に、H層130の屈折率よりも低い。一実装形態では、L層140は、シリコン、マグネシウム、フッ化物、酸素、タンタル、窒化物、ニオブ、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、L層140は、二酸化ケイ素(SiO2)層、窒化ケイ素(Si3N4)層、フッ化マグネシウム(MgF2)層、五酸化タンタル(Ta2O5)層、五酸化ニオブ(Nb2O5)層、二酸化チタン(TiO2)層、酸化アルミニウム(Al2O3)層、酸化ジルコニウム(ZrO2)層、酸化イットリウム(Y2O3)層、それらの組み合わせおよび/またはその他を含み得る。
【0017】
一実装形態では、第3のセットの層135は、遷移層に対応し得、本明細書では、O層135と呼ばれ得る。一実装形態では、O層135は、H層130および/またはL層140とは異なる第3の材料を含み得る。O層135は、酸化物を含む任意の材料であり得る。例えば、O層は、シリコン、(任意の濃度の)酸化ケイ素(例えばSiOx、ここで、0<x<2である)、二酸化ケイ素(SiO2)、それらの組み合わせおよび/またはその他を含み得る。
【0018】
図1Bに示されるように、光学フィルタコーティング部分110は、第4のセットの層145を含み得、これは、本明細書でP層145と呼ばれる第2のセットの遷移層に対応し得る。一実装形態では、P層145は、H層130、O層135、およびL層140とは異なる第4の材料を含み得る。あるいは、一実装形態では、P層145は、O層135と同じ材料または同様の材料であり得る。P層は、酸化物を含む任意の材料であり得る。例えば、P層145は、シリコン、(任意の濃度の)酸化ケイ素(例えばSiO
x、ここで、0<x<2である)、二酸化ケイ素(SiO
2)、それらの組み合わせおよび/またはその他を含み得る。一実装形態では、
図1Aは、層H-O-Lの繰り返し単位を示し、ここで、O層135は、それぞれのH層130ごとの前にある(空気界面から基板120に向かって数えるとき)。対照的に、
図1Bは、各H?O?L単位の間に配置されたP層145を有する層H?O?Lの繰り返し単位を示している。さらに対照的に、
図1Cは、各H?L単位の間に配置されたO層を有する層H?Lの繰り返し単位を示している。
【0019】
一実装形態では、最外層(例えば、空気界面に最も近い層)は、L層140以外の層であり得る。例えば、一実装形態では、最外層は、H層130、O層135、またはP層145であり得る。一実装形態では、機能層および/またはコーティングは、光学フィルタコーティング部分110の外部にあり得る。例えば、一実装形態では、機能層および/またはコーティングは、防汚コーティング、保護コーティング、耐久性コーティング、防曇コーティング、親水性コーティング、および/または疎水性コーティングを含み得る。一例では、最外層は窒化物であり得る。
【0020】
一実装形態では、層130、135、140、および145は、(H-O-L)
m順序、(H-O-L-O)
m順序、(H-L-O)
m順序、(H-O-L-P)
m順序、(H-O-L)
m-H順序、(H-O-L-P)
m-H順序、(H-O-L-P)
m-H-O-L順序、L-(H-O-L)
m順序、L-P-(H-O-L-P)
m順序、それらの組み合わせ、別の可能な順序、および/またはその他などの特定の順序で積み重ねられ得、mは層の単位の量であり、1以上の値を有する。例えば、
図1Aに示すように、層130、135、および140は、光学フィルタ100の表面に配置されるL層140および基板120の表面に配置されるH層130を有する、(H-O-L)
mの順序で配置される。さらに、
図1Bに示される例では、層130、135、140、および145は、光学フィルタ100’の表面に配置されるL層140および基板120の表面に配置されるH層130を有する、(H-O-L-P)
mの順序で配置される。
図1Cに示される例では、層130、135、および140は、光学フィルタ100’’の表面に配置されるL層140および基板120の表面に配置されるH層130を有する、(H-L-O)
mの順序で配置される。
【0021】
層の量、厚さ、および/または順序は、光学透過および角度シフトを含む、光学フィルタコーティング部分110および/または光学フィルタ100、100’、100’’の光学的品質に影響を及ぼし得る。一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110は、特定の量の層mに関連し得る。例えば、光学フィルタコーティング部分110は、2~200の層、10~100の層、または30~60の層を含み得る。光学フィルタコーティング部分110は、10~40のH層130を含み得る。いくつかの例では、SiGe:Hベースの光学フィルタは、2層~200層の範囲を含み得る。
【0022】
一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110の各層は、特定の厚さに関連し得る。例えば、層130および140は、それぞれ、1nm~1500nm、3nm~1000nm、6nm~1000nm、または10nm~500nmの厚さに関連し得、および/または光学フィルタコーティング部分110は、0.1μm~100μm、0.25μm~20μmおよび/またはその他の厚さに関連し得る。いくつかの例では、層130および140のうちの少なくとも1つは、1000nm未満、600nm未満、100nm未満、または20nm未満の厚さに関連し得、および/または光学フィルタコーティング部分110は、100μm未満、50μm未満、および/または10μm未満の厚さに関連し得る。一実装形態では、層130および140は、層130の第1の厚さおよび層140の第2の厚さ、層130の第1のサブセットの第1の厚さおよび層130の第2のサブセットの第2の厚さ、層140の第1のサブセットについての第1の厚さおよび層140の第2のサブセットについての第2の厚さ、および/またはその他、などの複数の厚さに関連し得る。この場合、層の厚さおよび/または層の量は、意図された通過帯域、意図された反射率および/またはその他などの意図された光学特性のセットに基づいて選択され得る。
【0023】
層135および145は、それぞれ、1nm~20nmの厚さに関連し得る。製造方法および/または光学フィルタコーティング部分110および/または光学フィルタ100、100’、100’’の所望の光学的品質に応じて、O層135およびP層145は、それぞれ10nm未満の厚さに関連し得る。いくつかの例では、O層135およびP層145は、それぞれ、1nm~10nmまたは2nm~6nm、または約5nmの厚さに関連し得る。一実装形態では、O層135およびP層145はそれぞれ、2nm~6nm、または約5nmの厚さに関連し得る。一実装形態では、O層135およびP層145は、O層135の第1の厚さおよびP層145の第2の厚さ、O層135の第1のサブセットの第1の厚さおよびO層135の第2のサブセットの第2の厚さ、P層145の第1のサブセットの第1の厚さおよびP層145の第2のサブセットの第2の厚さ、および/またはその他などの複数の厚さに関連し得る。この場合、層の厚さおよび/または層の量は、意図された通過帯域、意図された反射率および/またはその他などの意図された光学特性のセットに基づいて選択され得る。
【0024】
一実装形態では、特定のSiGeベースの材料が、H層130のために選択され得る。例えば、一実装形態では、H層130は、SiGe-50、SiGe-40、SiGe-60および/またはその他などの特定のタイプのSiGeを含むように選択および/または製造され得る(例えば、以下でさらに詳細に説明されるように、スパッタリング手順を介して)。
【0025】
一実装形態では、H層130は、本明細書に記載されるように、スパッタ堆積手順の結果として、アルゴンなどの別の材料を含み得る。別の例では、H層130は、シリコンまたはSiGeベースの材料を水素化する水素化手順、シリコンまたはSiGeベースの材料を窒素化する窒素化手順、シリコンまたはSiGeベースの材料をアニーリングする1つ以上のアニーリング手順、別のタイプの手順、シリコンまたはSiGeベースの材料をドープするためのドーピング手順(例えば、リンベースのドーピング、窒素ベースのドーピング、ホウ素ベースのドーピングおよび/またはその他)、または本明細書に記載されるような複数の手順の組み合わせ(例えば、水素化、窒素化、アニーリング、および/またはドーピングの組み合わせ)を使用して製造され得る。例えば、H層130は、例えば、約800nm~約1100nmのスペクトル範囲、約820nm~約1000nmのスペクトル範囲、約950nmなどの特定の波長、および/またはその他にわたって、L層140の屈折率より大きい屈折率を含むように選択され得る。別の例では、H層130は、例えば、約1400nm~約1700nmのスペクトル範囲、約1500nm~約1600nmのスペクトル範囲、約1550nmの特定の波長、および/またはその他にわたって、L層140の屈折率より大きい屈折率を含むように選択され得る。この場合、H層130は、3より大きい屈折率、3.5より大きい屈折率、3.8より大きい屈折率、または4より大きい屈折率と関連し得る。例えば、H層130は、H層130がSiGe:Hを含む場合、約950nmで4より大きい屈折率、H層がSi:Hを含む場合、約950nmで約3.74および/またはその他と関連し得る。
【0026】
一実装形態では、特定の材料がL層140のために選択され得る。例えば、L層140は、SiO2層のセット、Al2O3層のセット、TiO2層のセット、Nb2O5層のセット、Ta2O5層のセット、MgF2層のセット、Si3N4層のセットZrO2層のセット、Y2O3層のセットおよび/またはその他を含み得る。この場合、L層140は、H層130の屈折率よりも低い屈折率を含むように選択され得る。
【0027】
一実装形態では、H層130および/またはL層140は、特定の吸光係数に関連し得る。例えば、シリコンおよび水素を含むH層130の場合、吸光係数は、特定のスペクトル範囲にわたって約0.001未満であり得る。例えば、吸光係数は、約800nm~約1100nmのスペクトル範囲、約900nm~約1000nmのスペクトル範囲、約954nmの波長、および/またはその他にわたって約0.001未満であり得る。ゲルマニウムを含むH層130の場合、そのような吸光係数は、特定のスペクトル範囲にわたって、約0.007(800nmでのSi:Hについては0.004)未満、約0.003未満(800nmでのSi:Hについては0.002)の吸光係数、約0.001未満の吸光係数および/またはその他であり得る。例えば、吸光係数は、約800nm~約1100nmのスペクトル範囲、約900nm~約1000nmのスペクトル範囲、約954nmの波長および/またはその他にわたって定義され得る。さらに、または代わりに、吸光係数は、約1400nm~約1700nmのスペクトル範囲、約1500nm~約1600nmのスペクトル範囲、約1550nmの特定の波長および/またはその他にわたって定義され得る。一実装形態では、L層140に使用される特定の材料は、帯域外遮断スペクトル範囲の所望の幅、入射角(AOI)の変化に関連する所望の中心波長シフト、および/またはその他に基づいて選択され得る。
【0028】
一実装形態では、光学フィルタ100、100’、100’’は、基板の光学フィルタコーティング部分110とは反対側にコーティング180を含み得る。コーティング180は、単層または多層であり得る。いくつかの例では、コーティング180は、反射防止コーティング、ブロッキングフィルタ、および/またはバンドパスフィルタであり得る。コーティング180は、SiOx、SiO2、TiO2、Ta2O5および/またはその他を含む酸化物の少なくとも1つを含み得る。一例では、コーティング180は、SiO2とTiO2の交互の層であり得る。加えて、または代わりに、コーティング180は、光学フィルタコーティング部分110と同様の構造を有し得、3つ以上の材料を含み得る。一実装形態では、コーティング180は、光学フィルタコーティング部分110のH層130、L層140、O層135、および/またはP層145を含み得る。
【0029】
光学フィルタコーティング部分110は、任意のコーティングおよび/またはスパッタリングプロセスを含むがこれらに限定されない任意の方法によって製造され得る。例えば、
図1Aに示されるような光学フィルタコーティング部分110は、基板120上にH層130を堆積し、次にH層130上にO層135を堆積することによって製造され得る。次に、L層140をO層135上に堆積させ得、次いで、第2のH層130をL層140上に堆積させ得る。これは、所望の量の層が堆積されるまで繰り返され得る。
図1Bに示されるような光学フィルタコーティング部分110は、基板120上にH層130を堆積し、次にH層130上にO層135を堆積することによって製造され得る。次に、L層140をO層135上に堆積させ得、P層145をL層140上に堆積させ得る。次に、第2のH層130をP層145上に堆積させ得る。これは、所望の量の層が堆積されるまで繰り返され得る。同様に、
図1Cに示されるような光学フィルタコーティング部分110は、基板120上にH層130を堆積し、次にH層130上にL層140を堆積することによって製造され得る。次に、O層135をL層140上に堆積させ得、次いで、第2のH層130をO層135上に堆積させ得る。これは、所望の量の層が堆積されるまで繰り返され得る。場合によっては、層130、135、140、145および/またはその他のうちの1つ以上に、他の材料が存在し得る。例えば、堆積プロセス中に、堆積層を形成するために使用される材料は、下にある層に滲み得る。
【0030】
一実装形態では、特定の材料が製造プロセス中に堆積され得るが、光学フィルタコーティング部分110の最終的な組成は、堆積されたものとは異なり得る。例えば、Si:Hの第1のH層130を基板120上に堆積させ得る。SiO2の第1のO層135をSi:Hの第1のH層130上に堆積させ得る。Ta2O5の第1のL層140は、SiO2の第1のO層上に堆積され得る。Si:Hの第2のH層130は、Ta2O5の第1のL層140上に堆積され得る。SiO2の第2のO層135は、Si:Hの第2のH層130上に堆積され得る。Ta2O5の第2のL層140は、SiO2の第2のO層135上に堆積され得る。したがって、最終的な光学フィルタコーティング部分110は、基板-Si:H-SiO2-Ta2O5-Si:H-SiO2-Ta2O5が堆積されたときに現れ得る。しかしながら、一実装形態では、O層135は、遷移層として現れ得る(例えば、基板-Si:H-SiOx-Ta2O5-Si:H-SiOx-Ta2O5、ここで、0<x<2であり、例としてSiO1.3、SiO1.7および/またはその他)。一実装形態では、O層135は同じ材料ではない場合がある(例えば、第1のO層135はSiO2であり得、第2のO層135はSiO1.3であり得る)。加えて、または代わりに、1つ以上のH層130は、酸素または酸素ベースの材料(例えば、SiOH、SiGeOH、SiGeOおよび/またはその他)を含み得る。加えて、または代わりに、最終的な光学フィルタコーティング部分110は、基板上に堆積された第1のSi:H層、第1のSi:H層上に堆積された第1のSiO2層、第1のSiO2層上に堆積された第1のTa2O5層、第1のTa2O5層上に堆積された第2のSi:H層、第2のSi:H層上に堆積された第2のSiO2層、第2のSiO2層上に堆積された第2のTa2O5層、および第2のTa2O5層上に堆積された第3のSiO2層を含み得る。
【0031】
一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110は、スパッタリング手順を使用して製造され得る。例えば、光学フィルタコーティング部分110は、パルスマグネトロンベースのスパッタリング手順を使用して製造され、ガラス基板または別のタイプの基板であり得る基板120上に層130、135、140、および/または145をスパッタリングする。一実装形態では、シリコンをスパッタリングするための第1のカソードおよびゲルマニウムをスパッタリングするための第2のカソードなど、複数のカソードがスパッタリング手順に使用され得る。この場合、複数のカソードは、上記のように、シリコンに対するゲルマニウムの特定の濃度を保証するために選択された第2のカソードに対する第1のカソードの傾斜角に関連し得る。一実装形態では、シリコンまたはシリコンゲルマニウムを水素化するために、スパッタリング手順中に水素流を追加し得る。同様に、シリコンまたはシリコンゲルマニウムを窒素化するために、スパッタリング手順中に窒素流を加え得る。一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110は、摂氏約280度または摂氏約200度~摂氏約400度の温度での第1のアニーリング手順、摂氏約320度または摂氏約250度~摂氏約350度の間などの温度での第2のアニーリング手順、および/またはその他などの、1つ以上のアニーリング手順を使用してアニーリングされ得る。一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110は、
図1A~1Dに関して記載したように、ターゲットからコーティングされたSiGe:Hを使用して製造され得る。例えば、シリコン対ゲルマニウムの比率が選択されたSiGe化合物ターゲットをスパッタリングして、特定のシリコン対ゲルマニウム比を有する光学フィルタコーティング部分110を製造し得る。
【0032】
一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110は、別のタイプの光学フィルタによって引き起こされる角度シフトと比較して、減少した角度シフトを引き起こすことに関連し得る。例えば、L層140の屈折率に対するH層130の屈折率に基づいて、光学フィルタコーティング部分110は、別のタイプの高屈折率材料を備えた別のタイプの光学フィルタと比較して減少した角度シフトを引き起こし得る。
【0033】
一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110は、基板120などの、基板に取り付けられている。例えば、光学フィルタコーティング部分110は、ガラス基板または別のタイプの基板に取り付けられ得る。加えて、または代わりに、光学フィルタコーティング部分110は、検出器上に、または検出器のアレイを含むシリコンウェーハのセット上に直接コーティングされ得る(例えば、フォトリソグラフィ、リフトオフプロセスなどを使用して)。一実装形態では、光学フィルタコーティング部分110は、入射媒体に関連し得る。例えば、光学フィルタコーティング部分110は、入射媒体として空気媒体またはガラス媒体と関連し得る。一実装形態では、光学フィルタ100、100’、100’’は、プリズムのセットの間に配置され得る。別の例では、透明エポキシなどの別の入射媒体が使用され得、および/またはポリマー基板(例えば、ポリカーボネート基板、環状オレフィンコポリマー(COP)基板および/またはその他)などの、別の基板が使用され得る。
【0034】
一実装形態では、光学フィルタ100、100’、100’’は、90%より大きい透過率レベルを有する透過通過帯域を有する干渉フィルタであり得る。透過率レベルに関連する透過通過帯域の場合、透過通過帯域は、透過率が90%より大きい最低波長の低波長境界と、透過率が90%未満の最高波長の高波長境界とで定義される。いくつかの例では、透過通過帯域は、90%より大きい、94%より大きい、または95%より大きい平均透過率を有し得る。たとえば、通過帯域の平均透過率は94%より大きくなり得、通過帯域のピーク透過率は97%より大きくなり得、これは、波長範囲に依存し得る(たとえば、上記の値は、約840nmより大きい波長に適用され得、上記の値は、より短い波長で約2%低くなり得、SiGe:Hの透過率も低くなり得る)。
【0035】
一実装形態では、光学フィルタ100、100’、100’’は、400nm~1100nmの波長範囲にわたって、または300nm~1100nmの波長範囲にわたって、通過帯域の外側(例えば、通過帯域の片側または両側の阻止帯域)の遮断をもたらし得る。一実装形態では、光学フィルタ100、100’、100’’は、400nm~1100nmの波長範囲にわたって光学密度2(OD2)よりも大きい阻止帯域内の遮断レベル、300nm~1100nmの波長範囲にわたって光学密度3(OD3)より大きい阻止帯域内の遮断レベル、または300nm~1100nmの波長範囲にわたって光学密度4(OD4)より大きい遮断レベルを有し得る。いくつかの例では、光学フィルタ100、100’、100’’は、400nmから800nmのOD2より大きい、または400nmから800nmのOD3より大きい、遮断レベルを提供し得る。遮断レベルに関連する阻止帯域の場合、通過帯域より下の波長の阻止帯域は、遮断レベルが指定されたODレベル(たとえば、OD2またはOD3)より大きい最高波長による高い波長境界で定義され、および通過帯域より上の波長の阻止帯域は、遮断レベルが指定されたODレベル(たとえば、OD2またはOD3)より大きい最低波長によって定義される。いくつかの例では、阻止帯域の平均遮断レベルはOD2またはOD3より大きい。いくつかの例では、光学フィルタ100、100’、100’’は、400nmから800nmまでのOD2の平均遮断レベル、またはOD4より大きい平均遮断レベル、または400nmから800nmまでのOD3の平均遮断レベルを提供し得る。
【0036】
場合によっては、光学フィルタ100、100’、100’’は、長波長パスエッジフィルタであり得、通過帯域は、800nm~1100nmの波長範囲のエッジ波長を有する。しかしながら、ほとんどの場合、光学フィルタ100、100’、100’’は、ナローバンドパスフィルタなどのバンドパスフィルタである。通常、通過帯域の中心波長は800nm~1100nmの波長範囲である。通常、通過帯域の中心波長は800nm~1100nmの波長範囲である。いくつかの例では、通過帯域は、55nm未満、50nm未満、または45nm未満のFWHMを有し得る。通過帯域全体は、800nm~1100nmの波長範囲内にあり得る。いくつかの例では、FWHMは、用途、光源の熱管理、光学フィルタ100、100’、100’’の設計、角度範囲などを含む様々な要因に依存し得る。例えば、5nmでは、熱制御されたデバイスは、狭い角度範囲にわたって動作し得、光源および光学フィルタ100、100’、100’’は、閾値(例えば、1ナノメートル未満)を満たす製造公差を有する。別の例では、120nmで、デバイスは、光源波長の高温変化を伴う光源を有し得、大きな受容角に対して広い温度範囲(例えば、マイナス40°から120°C)にわたって動作し得る。この場合、光源はより柔軟な製造公差(例えば、+/-10ナノメートル)を有し得る。本明細書に記載の一実装形態では、通過帯域は、透過レベルが90%より大きい、94%より大きい、95%より大きい、および/またはその他の波長を含むものとして定義され得る。しかしながら、他の例では、通過帯域の別の適切な定義があり得ることが理解されたい。さらに、本明細書に記載の一実装形態では、阻止帯域は、透過レベルがOD2より大きい、OD3より大きい、OD4より大きい、および/またはその他の波長を含むものとして定義され得る。しかしながら、他の例では、阻止帯域の別の適切な定義があり得ることを理解されたい。
【0037】
一実装形態では、光学フィルタ100、100’、100’’は、入射角の変化に伴う低い中心波長シフトを有し得る。通過帯域のCWLは、入射角が0°から30°に変化すると、大きさが20nm未満でシフトする。いくつかの例では、通過帯域のCWLは、入射角が0°から30°に変化すると、15nm未満の規模でシフトし得る。通過帯域のCWLは、入射角が0°から30°に変化すると、大きさが20nmから6nmの間でシフトする。通過帯域のCWLは、入射角が0°から30°に変化すると、大きさが12nm未満でシフトする。通過帯域のCWLは、入射角が0°から30°に変化すると、大きさが12nmから6nmの間でシフトする。
【0038】
上に示されるように、
図1A~1Cは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は、
図1A~1Cに関して説明されたものとは異なり得る。
【0039】
図2A~2Dは、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学的特性および/または機械的特性の1つ以上の例の図である。
【0040】
図2Aおよびチャート200によって示されるような、図面および/または図面を参照して上記のように示される構成を有する光学フィルタである。
図1A~1Cは、H層130が高屈折率材料としてSi:Hを含みL層140が低屈折率材料として(例えば、二次スペーサを用いて)Ta
2O
5を含む設計を有し、H層130が高屈折率材料としてSi:Hを含みL層140が低屈折率材料としてSiO
2を含む設計に対して、より低い角度シフトを達成し得る。たとえば、
図2Aは、6つの異なる設計の波長の関数としての透過率を示すプロットを示している。特に、
図2Aに示すさまざまなプロットには、L層140が低屈折率材料としてSiO
2を含み、Si:Hを含む1次、2次、および3次のスペーサ層を有する3つの設計と、O層135およびP層145が(任意の濃度の)酸化ケイ素(例えば、SiO
x、0<x<2)、二酸化ケイ素(SiO
2)などの酸化物を含み、さらにL層140が、低屈折率材料としてTa
2O
5を含み、Si:Hを含む1次、2次、および3次のスペーサ層を有する、3つの設計と、が含まれる。示されているように、すべての設計は、0度のAOIで実質的に同様のパフォーマンスを示す。
【0041】
図2Bに、およびチャート210によって示されるように、
図1A~1Cを参照して上記に示されるおよび/または説明されるような構成を有する光学フィルタの厚さ(ナノメートル単位)は、L層140の低屈折率材料に使用される材料に依存し得る。たとえば、
図2Aを参照して前述したように、SiO
2およびTa
2O
5は、0度のAOIで実質的に同様の性能を提供するバンドパスを有する。しかしながら、チャート210に示されるように、L層140(または他の反射層)の低屈折率材料としてTa
2O
5を使用するおよび/または(任意の濃度の)酸化ケイ素(例えば、SiO
x、ここで0<x<2)または二酸化ケイ素(SiO
2)などの遷移層を含むことは、スペーサ層の次数に関係なく、低屈折率材料としてSiO
2を使用する設計と比較して全体的な設計の厚さを増加させる。たとえば、一次スペーサ層の場合、Ta
2O
5を含有する設計の物理的厚さは3500nmを超え、SiO
2を含有する設計の物理的厚さは3250nm未満であり、二次スペーサ層の場合、Ta
2O
5を含有する設計の物理的厚さは4000nmを超え、SiO
2を含有する設計の物理的厚さは約3600nmであり、三次スペーサ層の場合、Ta
2O
5を含有する設計の物理的厚さは約4500nm、SiO
2を含有する設計の物理的厚さは約4000nmである。一般に、Si:HとTa
2O
5の率比は、Si:HとSiO
2の場合よりも低いため、Ta
2O
5を含有する設計は設計全体の厚さを増加させ得る。
【0042】
図2Cおよびチャート220によって示されるように、低屈折率材料にTa
2O
5を使用すると、AOIが増加するために中心波長(CWL)の望ましくないダウンシフトが減少し得る。たとえば、チャート220は、Ta
2O
5を含有する設計と異なるバンドパススペーサ次数のSiO
2を含有する設計のCWLシフト(ナノメートル単位)の比較を示している。示されているように、Ta
2O
5はSiO
2よりも高い屈折率を有するため、CWLダウンシフトは一般に、任意のバンドパススペーサ次数でSiO
2を含有する設計と比較して、Ta
2O
5を含有する設計の方が少なくなる。したがって、
図1A~1Cを参照して上記に示されるおよび/または説明されるような構成を有する光学フィルタにおいて、L層140において比較的高い屈折率を有する材料(例えば、SiO
2ではなくTa
2O
5)を使用すると、一般に、バンドパス角度シフトを減少させ得る。
【0043】
図2Dに、およびチャート230によって示されるように、低屈折率材料にTa
2O
5を使用することは、コーティング(例えば、コーティング180)が基板(例えば、基板120)に加える望ましくない応力を減少させ得る。たとえば、チャート230は、コーティングにTa
2O
5とSiO
2のどちらが使用されているかに基づいて、バンドパスコーティングから加えられる総応力(メガパスカル(MPa))の比較を示している。示されているように、マグネトロンスパッタされたTa
2O
5によって加えられる応力は、マグネトロンスパッタされたSiO
2によって加えられる応力よりも実質的に低いので、総印加応力は、任意のバンドパススペーサ次数でSiO
2を含有する設計と比較して一般に少ない。したがって、
図1A~1Cを参照して上記に示されるおよび/または説明されるような構成を有する光学フィルタにおいて、比較的低応力の材料を使用すると、基板に加えられる応力を減少させ得る。
【0044】
このように、屈折率の低い材料(SiO
2など)を屈折率の高い材料(Ta
2O
5)に置き換えると、一般にバンドパス角度シフトが減少し、(より薄い)低次スペーサの使用が可能になり得る。たとえば、
図2Bに示すように、Ta
2O
5を含む1次スペーサは、SiO
2を含む2次スペーサと同様の厚さを有し得、Ta
2O
5を含む2次スペーサは、SiO
2を含む3次スペーサと同様の厚さを有し得る。さらに、
図2Cに示すように、Ta
2O
5を含む1次スペーサは、SiO
2を含む2次スペーサと同様の角度シフトを有し得、Ta
2O
5を含む2次スペーサは、SiO
2を含む3次スペーサと同様の角度シフトを有し得る。
図2Dにさらに示されているように、SiO
2を含む2次スペーサからTa
2O
5を含む1次スペーサに移動すると、より低い応力となり(同様の角度シフトと同様の厚さを提供しながら)、同様に、SiO
2を含む3次スペーサからTa
2O
5を含む2次スペーサまで移動すると、より低い応力となる。このように、スペーサ層の厚さによって基板に加えられる応力は、同様の角度シフトを達成しながら、より高い屈折率を有する材料を使用することによって低減し得る。たとえば、前述の説明では、屈折率の低い材料(SiO
2など)をTa
2O
5などの屈折率の高い材料に置き換えることの利点について説明しているが、同様の利点は、Nb2O5、TiO2および/またはその他などの、SiO
2よりも屈折率の高い他の材料で実現され得る。
【0045】
一実装形態では、Si:HとTa2O5を使用したバンドパス設計では、Si:HとTa2O5との界面での吸収により透過率が低くなる。Si:HとTa2O5との間に酸素をしっかりと結合する材料(例えば、SiO2、Al2O3および/またはその他)の非常に薄い層を追加すると、透過率を低下させる界面吸収を防ぎ得る。加えて、または代わりに、酸素と反応しない非常に薄い層(例えば、亜硝酸アルミニウム、Si3N4および/またはその他)をSi:HとTa2O5との間に追加すると、透過率を低下させる界面吸収を防ぎ得る。このようにして、界面吸収が低減され得、Si:HとTa2O5との間に追加される薄層を厳密に制御することなく、透過率を高め得る。これは、薄層が全体の設計の厚さに占める割合が小さいためである。さらに、低透過バンドと高透過Tバンドとの間のより急激な遷移の恩恵を受けることができるが、応力制限のためにより厚いコーティングに対応できない光学フィルタの場合、低応力アプローチを使用すると、より多くのファブリ・ペローキャビティの使用が可能になり得、これにより、応力限界を超えることなく、低透過帯域と高透過T帯域との間の遷移が急激になり得る。
【0046】
このようにして、L層140で使用される特定の材料を選択して、バンドパスコーティングの応力を低減することができ、これにより、ウェーハが反りにくくなり、したがって、単一化前の取り扱いが容易になる。それ以外の場合、より少ない反りが要求される場合は、ウェーハの裏側に追加の応力平衡コーティングが必要となり、これによりコストが増加し、取り扱い中にウェーハが破損する可能性が高くなる。さらに、バンドパスコーティングの応力が少ない場合は、より薄い基板を使用して光学フィルタを製造し得る。これにより、センサシステムをより薄い光学フィルタで薄くすることが可能となり、より薄い光学フィルタを使用すると、組み立て時の柔軟性が高まり、部品が接触する可能性が低くなり、これにより損傷や性能の低下および/またはその他を引き起こし得る。さらに、より多くのキャビティを使用して、応力許容値を超えずに遷移を急激にすることができる。これにより、信号対ノイズ比がより良くなり得る。バンドパスコーティングの角度シフトが小さいと、同じ光学光角度で帯域幅がより狭くなり、信号対ノイズ比がより良くなり得る。
【0047】
上記に示したように、
図2A~2Dは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は、
図2A~2Dに関して説明されたものとは異なり得る。
【0048】
図3A~3Dは、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態を製造するためのスパッタ堆積システムの1つ以上の例300の図である。
【0049】
図3Aに示されるように、例示的なスパッタ堆積システムは、真空チャンバ310、基板320、カソード330、ターゲット331、カソード電源340、アノード350、プラズマ活性化源(PAS)360およびPAS電源370を含み得る。ターゲット331は、シリコン材料、特定の濃度の光学特性に基づいて選択された特定の濃度のシリコンゲルマニウム材料および/またはその他を含み得る。別の例では、カソード330の角度は、本明細書に記載されるように、特定の濃度のシリコンおよび/またはシリコンゲルマニウムが基板320上にスパッタされるように構成され得る。PAS電源370は、PAS360に電力を供給するために利用され得、無線周波数(RF)電源を含み得る。カソード電源340は、カソード330に電力を供給するために利用され得、パルス直流(DC)電源を含み得る。この場合、スパッタ堆積システムは、1つ以上の層を、DCスパッタリングを介して基板320上にスパッタさせ得る。
【0050】
図3Aに示されるように、ターゲット331は、水素(H
2)、ならびにアルゴンなどの不活性ガスの存在下でスパッタされ得、水素化シリコン(Si:H)材料、水素化シリコン-ゲルマニウム(SiGe:H)材料、および/またはその他などの層を、基板320上に堆積する。不活性ガスは、アノード350および/またはPAS360を介してチャンバに提供され得る。水素は、水素を活性化するのに役立つPAS360を介して真空チャンバ310に導入される。加えて、または代わりに、カソード330は水素活性化を引き起こし得、その場合、水素は別の部分の真空チャンバ310から導入され得、またはアノード350は水素活性化を引き起こし得、その場合、アノード350は水素を真空チャンバ310に導入し得る。一実装形態では、水素は、水素ガス、水素ガスと希ガス(例えば、アルゴンガス)との混合物などの形態をとり得る。PAS360は、カソード330の境界近接内に配置され得、PAS360からのプラズマとカソード330からのプラズマとがオーバーラップすることを可能にする。PAS360の使用は、Si:Hおよび/またはSiGe:H層が比較的高い堆積速度で堆積されることを可能にし得る。一実装形態では、Si:Hおよび/またはSiGe:H層は、約0.05nm/秒~約2.0nm/秒の堆積速度で、約0.5nm/秒~約1.2nm/秒の堆積速度、約0.8nm/秒および/またはその他の堆積速度で堆積される。
【0051】
スパッタリング手順は、特定の形状および特定の実装形態に関して本明細書で説明されているが、他の形状および他の実装形態が可能である。例えば、水素は、別の方向から、カソード330に近接した境界にあるガスマニホールドから、および/またはその他から、注入され得る。
【0052】
図3B~3Cに示されるように、同様のスパッタ堆積システムは、真空チャンバ310、基板320、第1のカソード380、第2のカソード390、第1のターゲット381、第2のターゲット391、カソード電源340、アノード350、PAS360、およびPAS電源370を含む。この場合、第1のターゲット381はシリコンターゲットであり得、第2のターゲット391はゲルマニウムターゲットであり得る。したがって、本明細書に記載されるように、第1のターゲット381は、シリコンターゲット381と呼ばれ得、第2のターゲット391は、ゲルマニウムターゲット391と呼ばれ得る。しかしながら、第1のターゲット381および/または第2のターゲット391は、高屈折率材料層を形成するために他の適切な材料から作製され得ることが理解されるであろう。
【0053】
図3Bに示されるように、シリコンターゲット381は、基板320に対して約0度に配向され(例えば、基板320にほぼ平行に)、ゲルマニウムターゲット391は、基板320に対して約120度に配向される。この場合、シリコンおよびゲルマニウムは、それぞれ、カソード380およびカソード390によって、シリコンターゲット381およびゲルマニウムターゲット391から、それぞれ、基板320上にスパッタリングされる。
【0054】
図3Cに示すように、同様のスパッタ堆積システムにおいて、シリコンターゲット381およびゲルマニウムターゲット391は、それぞれ、基板320に対して約60度に配向され、シリコンおよびゲルマニウムは、それぞれシリコンターゲット381およびゲルマニウムターゲット391から、それぞれカソード380およびカソード390によって、基板320上にスパッタされる。
【0055】
図3Dに示されるように、同様のスパッタ堆積システムにおいて、シリコンターゲット381は、基板320に対して約120度に配向され、ゲルマニウムターゲット391は、基板320に対して約0度に配向される。この場合、シリコンおよびゲルマニウムは、それぞれカソード380およびカソード390によって、それぞれシリコンターゲット381およびゲルマニウムターゲット391から、基板320上にスパッタされる。
【0056】
図3A~3Dに関して、シリコンスパッタ堆積システムにおける構成要素の各構成は、シリコン、シリコンおよびゲルマニウム、および/またはその他の異なる相対濃度をもたらし得る。構成要素の異なる構成に関して本明細書に記載されているが、シリコンおよびゲルマニウムの異なる相対濃度もまた、異なる材料、異なる製造プロセス、および/またはその他を使用して達成され得る。
【0057】
上記に示したように、
図3A~3Dは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は、
図3A~3Dに関して説明されたものとは異なり得る。
【0058】
図4A~4Bは、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの光学特性の1つ以上の例の図である。
【0059】
図4Aに、およびチャート410によって示されるように、特性のセットが、例えばSiGe層(例えば、光学フィルタで使用するためのSiGe:H層)について測定される。一般に、カソードスパッタリングシリコンのカソード角度の増加は、
図3B~3Dに関してさらに詳細に説明されるように、シリコン含有量に対する光学フィルタ中のゲルマニウム含有量の増加に対応し得る。例えば、30度で堆積された光学フィルタの高屈折率層の場合、高屈折率層は、約7.5%のゲルマニウム含有量と関連し得る。同様に、35度での堆積の場合、光学フィルタは、約22%のゲルマニウム含有量に関連し得、50度での堆積の場合、光学フィルタは、約90%のゲルマニウム含有量に関連し得る。
【0060】
図4Aに、およびチャート410によってさらに示され、950nmの波長での屈折率nが、材料をスパッタして高屈折率材料層のセットを形成するためにスパッタされるカソード角度(度単位)に基づいて、層のセットに提供される。示されているように、シリコンゲルマニウム(SiGe)およびアニーリングされたシリコンゲルマニウム(SiGe-280C)(たとえば、アニーリング手順が摂氏280度(C)で実行されたシリコンゲルマニウム)の場合、カソード角度の増加は屈折率の増加に対応する。さらに、ゲルマニウムを含むシリコン層の屈折率は、シリコン(Si)ベースの光学フィルタおよびアニーリングされたシリコン(Si-280C)ベースの光学フィルタなどの、ゲルマニウムを含まないシリコンよりも大きいため、SiGe層を含む光学フィルタの性能が向上する。
【0061】
図4Bに、およびチャート420によって示されるように、高屈折率材料層のセットについて別の光学特性のセットが測定される。示されるように、950nmの波長での吸収は、高屈折率材料層のための材料のタイプ、および高屈折率層を堆積するためのスパッタリング手順で使用されるカソード角度に関連して測定され得る。例えば、ゲルマニウム含有量の増加(例えば、カソード角度の増加)は、一般に、吸収(または損失)の増加と関連している。ただし、アニーリングされたSiGe(SiGe-280C)は、アニーリングされていないSiGeと比較して、同様のカソード角度に関連した光学フィルタの吸収の低下に関連している。例えば、アニーリングされたSiGeは、光学フィルタの低角度シフトで利用するための屈折率閾値を満たす屈折率に対応するカソード角度で、光学フィルタで利用するための吸収閾値を満たす損失値に関連し得る。このように、SiGe(またはSiGe:H)をアニーリングすることにより、SiGe(またはSiGe:H)を、比較的高い屈折率を有するおよびNIR光を過度に吸収しない低角度シフトコーティングとして使用し得る。
【0062】
上記に示すように、
図4Aおよび4Bは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例であり、
図4Aおよび4Bに関して説明されているものとは異なり得る。
【0063】
図5A~5Bは、本明細書に記載の1つ以上の実装形態に関連する材料のセットの特性の1つ以上の例の図である。
【0064】
図5Aに、およびチャート510によって示されるように、機械的特性のセットが、高屈折率材料層のセットについて測定される。示されるように、応力値(メガパスカル(MPa)で)は、高屈折率材料層の材料のタイプ、および高屈折率材料層を堆積するためのスパッタリング手順に使用されるカソード角度に関連して測定され得る。応力値は、スパッタリング手順の結果としての高屈折率材料層への圧縮応力であり得る。たとえば、ゲルマニウム含有量の増加(たとえば、カソード角度の増加)は、SiGe層の応力の減少に関連している。示されているように、同様のカソード角度で、アニーリングされたSiGeは、アニーリングされていないSiGeと比較して、減少した応力値と関連している。例えば、アニーリングされたSiGeは、光学フィルタで利用するための屈折率閾値を満たす屈折率に対応するカソード角度で、光学フィルタで利用するための応力閾値を満たす応力値に関連し得る。製造手順に複数の光学フィルタ用にウェーハを複数の部分に切断することが含まれる場合、応力値を下げると製造の困難さが軽減され得る。さらに、応力値を下げると、応力値が大きい別のタイプの材料と比較して、基板の厚さを減少させ得る。このように、SiGe(またはSiGe:H)をアニーリングすることにより、SiGe(またはSiGe:H)を比較的高い屈折率で過度の応力値なしに低角度シフトコーティングとして使用できるようになり得、それにより、アニーリングされていない光学フィルタと比較して、特に純粋なシリコンを使用する光学フィルタと比較した場合、光学フィルタの製造性が向上し、光学フィルタの厚さを減少させる。
【0065】
図5Bに、およびチャート520によって示されるように、光学特性のセットが、950nmの波長を中心とするバンドパスフィルタのセットについて測定される。示されるように、第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタの透過率は、アニーリングの利用および光の波長に関連して測定される。例えば、
図5Bにおいて、参照番号522は、第1の光学フィルタに対応し得、参照番号524は、第2の光学フィルタに対応し得、これらのそれぞれは、一般に同様のパラメータ(例えば、4つのキャビティのセット、3.1マイクロメートルの厚さ、SiGeを含む高屈折率層のセット、二酸化ケイ素(SiO
2)を含む低屈折率層のセット、第2の側に反射防止コーティングなし、47.5度のカソード角度(例えば、これは、高屈折率層のセットの約80%のゲルマニウムに対応し得る))に関連し得る。しかしながら、
図5Bでは、参照番号522は、アニーリングを使用して1つ以上の高屈折率層が形成される第1の光学フィルタに対応し得、参照番号524は、アニーリングが利用されない第2の光学フィルタに対応し得る。
【0066】
したがって、
図5Bに、および参照番号522および524によって示されるように、アニーリングの利用は、約950nmでの透過率を、光学フィルタのアニーリングを利用しない場合に対して、約7%(たとえば、約950nmで80%より大きいまたは約85%より大きい)向上させる。例えば、参照番号524によって示されるように、約950nmでの透過率は、アニーリングが利用されない場合、80%未満であり得る。このように、アニーリングSiGe(またはSiGe:H)により、SiGe(またはSiGe:H)を、アニーリングされていない光学フィルタと比較して透過率が改善された低角度シフトコーティングとして使用され得る。別の例では、反射防止コーティング(例えば、光学フィルタの裏側表面上)を含むことにより、反射防止コーティングのない第1の光学フィルタと比較して、透過率がさらに約5%改善され得る。
【0067】
図5Bは、第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタの特定の特性セットに関する例を示しているが、本明細書に記載の他の例は、光学フィルタの他の特性について、アニーリングで同様に改善された性能を示し得る。
【0068】
図5Bは、バンドパスフィルタの光学特性に関する例を示しているが、同様に改善された光学特性は、短波通過フィルタ、長波通過フィルタ、反射防止コーティング、非偏光ビームスプリッタ、偏光ビームスプリッタ、誘電反射器、マルチバンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、マルチノッチフィルタ、中性濃度フィルタ、および/またはその他の製造に関連し得る。
【0069】
上記に示すように、
図5Aおよび5Bは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は、
図5Aおよび5Bに関して説明されたものとは異なり得る。
【0070】
図6A~6Cは、本明細書に記載の1つ以上の例示的な実装形態に関連する材料のセットの特性の1つ以上の例600の図である。
【0071】
図6Aに、およびチャート610によって示されるように、水素化シリコン(Si:H)ベースの光学フィルタおよび水素化シリコンゲルマニウム(SiGe:H)ベースを含む光学フィルタのセットについての光学特性のセットが示されている。この場合、光学フィルタのセットは、低屈折率材料として二酸化ケイ素(SiO
2)を利用され得る。示されるように、波長のセットでの透過率は、光学フィルタのセットについて測定される。この場合、SiGe:H光学フィルタは950nmで3.871の屈折率に関連し、Si:H光学フィルタは950nmで3.740の屈折率に関連する。Si:H光学フィルタよりも高い屈折率を有するSiGe:H光学フィルタの結果として、SiGe:H光学フィルタは、物理的厚さの減少と関連し得る。例えば、Si:H光学フィルタは6.3マイクロメートルの厚さに関連し得、SiGe:H光学フィルタは5.4マイクロメートルの厚さに関連し得る。さらに、SiGe:H光学フィルタは、より大きな遮断効率と関連し得る(たとえば、SiGe:H光学フィルタはSi:H光学フィルタよりも約700nmでより吸収性が高く、結果として700nmを含む波長範囲を遮断する4分の1波長スタックコーティングが減少する)。
【0072】
図6Bに示されるように、チャート620は、950ナノメートルから1000ナノメートルの波長範囲でのチャート610の一部を示している。チャート620に示すように、角度シフトは、0度から30度までの入射角(AOI)でのSi:H光学フィルタでは16.5nm、0度から30度までの入射角でのSiGe:H光学フィルタでは13.0nmであることが示されている。この場合、SiGe:H光学フィルタは、Si:H光学フィルタに比べて角度シフトが小さく、光学性能が向上していることが示されている。
【0073】
図6Cに、およびチャート630によって示されるように、Si:H光学フィルタおよびSiGe:H光学フィルタの設計、例えば、
図1A~1Cの光学フィルタなど、および光学特性のセットが示されている。示されるように、光学フィルタのセットは、200mm~300mmの基板サイズおよび0.15mm~0.7mmの基板厚さに関連している。ウェーハサイズとウェーハ厚さごとに、SiGe:H光学フィルタはSi:H光学フィルタと比較して基板のたわみが減少する。このようにして、光学フィルタの耐久性および製造可能性が改善される。さらに、応力値の低減に基づいて、より高い応力値を有する他の基板設計と比較して破損の可能性を低減することに基づいて、他の基板設計と比較して同様の基板厚さに対して基板サイズを増加させ得る。
【0074】
上記に示すように、
図6A~6Cは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は
図6A~6Cに関して説明されているものとは異なり得る。
【0075】
図7A~7Bは、本明細書で説明される1つ以上の例示的な実施形態700の図である。
図7Aに示されるように、例示的な実装形態700は、センサシステム710を含み得る。センサシステム710は、光学システムの一部であり得、センサ測定に対応する電気出力を提供し得る。センサシステム710は、光学フィルタ730を含む光学フィルタ構造720と、光学センサ740とを含む。例えば、光学フィルタ構造720は、通過帯域フィルタリング機能を実行する光学フィルタ730または別のタイプの光学フィルタを含み得る。センサシステム710は、ターゲット760(例えば、人、物体など)に向けて光信号を送信する光送信器750を含む。
【0076】
実装形態は、センサシステム内の光学フィルタに関して本明細書に記載され得るが、本明細書に記載される実装形態は、別のタイプのシステムで使用され得、センサシステムの外部および/またはその他で使用され得る。一実装形態では、光学フィルタ730は、光に対して偏光ビームスプリット機能を実行し得る。例えば、光学フィルタ730は、本明細書に記載されるように、第2の偏光が光学センサ740によって受信されることが望ましい場合、第1の偏光で光の第1の部分を反射し、第2の偏光で光の第2の部分を通過させ得る。加えて、または代わりに、光学フィルタ730は、光に対して逆偏光ビームスプリット機能(例えば、ビーム結合)を実行し得る。
【0077】
図7Aに、および参照番号770によってさらに示されるように、入力光信号は、光学フィルタ構造720に向けられる。入力光信号は、光送信器750によって放出されたNIR光、およびセンサシステム710が利用されている環境からの周囲光を含み得る。例えば、光学フィルタ730がバンドパスフィルタである場合、光送信器750は、ジェスチャ認識システム(例えば、ターゲット760によって実行されるジェスチャ)のために近赤外(NIR)光をユーザに向け得、NIR光は光学センサ740がNIR光の測定を実行することを可能にするために、光学センサ740に向かってターゲット760(例えば、ユーザ)から反射され得る。この場合、周囲光は、1つ以上の周囲光源(例えば、電球または太陽)から光学センサ740に向けられ得る。別の例では、複数の光ビームがターゲット760に向けられ得、複数の光ビームのサブセットが、示されるように、光学センサ740に対して傾斜角で配置され得る光学フィルタ構造720に向けて反射され得る。一実装形態では、別の傾斜角が使用され得る(例えば、バンドパスフィルタの場合は0度の傾斜角)。いくつかの実装形態では、光学フィルタ構造720は、光学センサ740から離れて配置されるのではなく、光学センサ740上に直接配置および/または形成され得る。例えば、光学フィルタ構造720は、例えば、フォトリソグラフィを使用して、光学センサ740上にコーティングおよびパターン化され得る。いくつかの例では、光学フィルタ構造720は、基板120、コーティング180および/またはその他を含む、上記の光学フィルタ100、100’、100’’の任意の要素を含み得る。別の例では、光送信器750は、例えば、車両に近接する物体を検出するため、視覚障害者に近接する物体を検出するため、物体への近接を検出するため(例えば、LIDAR技術を使用して)、および/またはその他のために、NIR光を別のタイプのターゲット760に向け得る。NIR光および周囲光は、結果として、光学センサ740に向けられ得る。
【0078】
図7Aに、および参照番号780によってさらに示されるように、光信号の一部は、光学フィルタ730および光学フィルタ構造720を通過する。例えば、光学フィルタ730は、上記の光学フィルタ100、100’、100’’の光学フィルタコーティング部分110のいずれかを含み得、光の第1の偏光を第1の方向に反射させ得る。この場合、光学フィルタ730は、NIR光を過度に遮断することなく、また、入力光信号の入射角の増加に伴う過度の角度シフトを生じさせることなく、入力光信号の可視光を遮断する。
【0079】
図7Aに、および参照番号790によってさらに示されるように、光学センサ740を通過する光信号の部分に基づいて、光学センサ740は、ユーザのジェスチャの認識または物体の存在の検出に使用するためなど、センサシステム710に出力電気信号を提供し得る。一実装形態では、光学フィルタ730および光学センサ740の別の配置を利用し得る。例えば、光信号の第2の部分を入力光信号と同一直線上に通過させるのではなく、光学フィルタ730は、光信号の第2の部分を、異なる位置にある光学センサ740に向けて別の方向に向け得る。別の例では、光学センサ740は、アバランシェフォトダイオード、インジウム-ガリウム-ヒ素(InGaAs)検出器、赤外線検出器、および/またはその他などであり得る。
【0080】
図7Bに示されるように、同様の例示的な実装形態700は、センサシステム710、光学フィルタ構造720、光学フィルタ730、光学センサ740、光送信器750、およびターゲット760を含み得る。
図7Bは、本明細書に記載の光学フィルタ730を含む特定の例示的な実装形態700を示している。
【0081】
光送信器750は、800nm~1100nmの波長範囲の発光波長で光を放出する。光送信器750は、調光(例えば、光パルス)を放出する。光送信器750は、発光ダイオード(LED)、LEDアレイ、レーザーダイオード、またはレーザーダイオードアレイであり得る。光送信器750は、ターゲット760に向かって光を放出し、これは放出された光をセンサシステム710に向けて反射して戻す。センサシステム710がジェスチャ認識システムである場合、ターゲット760はジェスチャ認識システムのユーザである。センサシステム710はまた、近接センサシステム、三次元(3D)イメージングシステム、距離感知システム、深度センサ、および/または別の適切なセンサシステムであり得る。
【0082】
光学フィルタ730は、ターゲット760による反射後に放出された光を受信するように配置されている。光学フィルタ730は、発光波長を含み、800nm~1100nmの波長範囲と少なくとも部分的に重なる通過帯域を有する。光学フィルタ730は、ナローバンドパス通過フィルタなどのバンドパスフィルタである。光学フィルタ730は、周囲光を実質的に遮断しながら、光送信器750から放出された光を透過する。
【0083】
光学センサ740は、光学フィルタ730による透過後に放出された光を受信するように配置されている。一実装形態では、光学フィルタ730は、光学センサ740上に直接形成される。例えば、光学フィルタ730は、ウェーハレベル処理(WLP)において、センサ(例えば、近接センサ)上にコーティングおよびパターン化(例えば、フォトリソグラフィによって)され得る。
【0084】
センサシステム710が近接センサシステムである場合、光学センサ740は近接センサであり、放出された光を検出して、ターゲット760の近接を感知する。センサシステム710が3Dイメージングシステムまたはジェスチャ認識システムである場合、光学センサ740は、3D画像センサ(例えば、電荷結合素子(CCD)チップまたは相補型金属酸化物半導体(CMOS)チップ)であり、これは、放出された光を検出して、例えばユーザである、ターゲット760の3D画像を提供する。3Dイメージセンサは、処理システム(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)チップまたはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)チップなど)での処理のために、光学情報を電気信号に変換する。例えば、センサシステム710がジェスチャ認識システムである場合、処理システムは、ユーザの3D画像を処理して、ユーザのジェスチャを認識する。
【0085】
上記に示すように、
図7A~7Bは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は、
図7A~7Bに関して説明されたものとは異なり得る。
【0086】
このようにして、水素化シリコン(Si:H)層のセット、SiGeベースの層のセット、水素化SiGe(SiGe:H)層のセット、および/またはその他を、可視光の帯域外遮断、NIR光の透過、および/または高屈折率層のセットに使用される別のタイプの材料と比較して角度シフトが低減された光のフィルタリングを提供する光学フィルタの光学フィルタコーティングのための、高屈折率材料として使用し得る。さらに、Si:H、SiGe、SiGe:Hなどの使用および/またはアニーリング手順に基づいて、帯域外遮断および帯域内透過は、別のタイプの材料と比較して改善される。
【0087】
図8Aは、堆積されたままのSi:H層の水素流量に対する800nm~1120nmの波長での屈折率のプロットを示している。示されているように、屈折率は一般に水素流量の増加とともに減少する。一般に、屈折率は水素の流量にほぼ比例して変化する。特に、80標準立方センチメートル/分(sccm)の水素流量で生成されたSi:H層の屈折率は、800nm~1120nmの波長範囲で3.55より大きい。一実装形態では、屈折率は、800nmで3.65より大きい、3.7より大きい、3.75より大きい、および800nmで約3.8である。
【0088】
図8Bは、堆積ままのSi:H層の水素流量に対する800nm~880nmの波長での吸光係数のプロットを示していうる(吸収係数は、920nm~1120 nmの波長で0.0001未満である)。吸光係数(例えば、吸収係数)は、一般に、水素流量の増加とともに減少する。一般に、吸光係数は水素の流量に応じてほぼ指数関数的に変化する。特に、80sccmの水素流量で生成された水素化シリコン層の吸光係数は、800nm~1120nmの波長範囲にわたって0.0004未満である。
【0089】
上記に示すように、
図8A~8Bは、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は、
図8A~8Bに関して説明されたものとは異なり得る。
【0090】
図9は、本明細書に記載の光学フィルタの透過スペクトルの例示的な900のプロットである。たとえば、
図9は、参照番号910で示されているSiO
2とSi:Hとが交互に並んだ2つの材料スタックの例の透過スペクトルと比較した3つの材料スタックの例の透過スペクトルを示している。参照番号920に対応する3つの材料スタックを製造するために、
図1Aに示されるように層を堆積させ得る。たとえば、O層135はSiO
2の3nm層として堆積され得、H層130はSi:H層として堆積され得、L層140はTa
2O
5層として堆積され得、SiO
2層は各Si:H層の前に堆積され得る。しかしながら、上記のように、参照番号120に対応する例示的なスタックの深さ分析は、SiOHおよび/またはSiO
x(ここで、0<x<2である)を含むフィルタオプションを含み得る。これらの層は、3つの異なる層としてではなく、Si:HからTa
2O
5への遷移として表示され得る。
【0091】
参照番号930に対応する3材料スタックを製造するために、
図1Bに示されるように層を堆積させ得る。この場合、O層135およびP層145はSiO
2の3nm層として堆積され得、H層130はSi:H層として堆積され得、L層はTa
2O
5層として堆積され得、それによってSiO
2層は各Si:H層の前後に堆積され得る。しかしながら、上記のように、参照番号930に対応する例示的なスタックの深さ分析は、SiOHおよび/またはSiO
x(ここで、0<x<2)を含むフィルタオプションを含み得る。例には、基板-Si:H-SiO
2-Ta
2O
5-SiO
2-Si:H-SiO
2-Ta
2O
5-SiO
2、基板-Si:H-SiO
x-Ta
2O
5-SiO
x-Si:H-SiO
x-Ta
2O
5;基板-SiOH-SiO
x-Ta
2O
5-SiO
x-SiOH-SiO
x-Ta
2O
5、またはそれらの組み合わせが含まれ、ここで、xはO層135および/またはP層145ごとに等しくない場合があり得、0<x<2(例:SiO
1.3、SiO
1.7、Siおよび/またはその他など)であり得る。これらの層は、4つの異なる層としてではなく、Si:HからTa
2O
5への遷移として表され得る。
【0092】
参照番号940に対応する3つの材料スタックを製造するために、
図1Aに示されるように層を堆積させ得る。たとえば、O層135はSiO
2の6nm層として堆積され得、H層130はSi:H層として堆積され得、L層140はTa
2O
5層として堆積され得、SiO
2層は各Si:H層の前に堆積され得る。しかしながら、上記のように、参照番号940に対応する例示的なスタックの深さ分析は、SiOHおよび/またはSiO
x(ここで、0<x<2)を含むフィルタオプションを含み得る。これらの層は、3つの異なる層としてではなく、Si:HからTa2O5への遷移として表示され得る。
【0093】
参照番号950に対応する3つの材料スタックを製造するために、
図1Bに示されるように層を堆積させ得る。この場合、O層135およびP層145は、SiO
2の6nm層として堆積され得、H層130は、Si:H層として堆積され得、L層140は、Ta
2O
5層として堆積され得、それにより、SiO
2層は各Si:H層の前後に堆積され得る。しかしながら、上記のように、参照番号950に対応する例示的なスタックの深さ分析は、SiOHおよび/またはSiO
x(ここで、0<x<2)を含むフィルタオプションを含み得る。例には、基板-Si:H-SiO
2-Ta
2O
5-SiO
2-Si:H-SiO
2-Ta
2O
5-SiO
2;基板-Si:H-SiO
x-Ta
2O
5-SiO
x-Si:H-SiO
x-Ta
2O
5;基板-SiOH-SiO
x-Ta
2O
5-SiO
x-SiOH-SiO
x-Ta
2O
5、またはそれらの組み合わせが含まれ、ここで、xはO層135および/またはP層145ごとに等しくない場合があり得、0<x<2(例:SiO
1.3、SiO
1.7、Si、および/またはその他)であり得る。これらの層は、4つの異なる層としてではなく、Si:HからTa2O5への遷移として表され得る。
【0094】
参照番号960に対応する3つの材料スタックを製造するために、Si:HとTa2O5との層が交互に堆積され得る(たとえば、SiO2層なしで)。しかしながら、上記のように、参照番号960に対応する例示的なスタックの深さ分析は、SiOHおよび/またはTa2OY(ここで、0<Y<5である)を含むフィルタオプションを含み得る。これらの層は、2つの異なる層としてではなく、Si:HからTa2O5への遷移として表され得る。
【0095】
参照番号970に対応する3つの材料スタックを製造するために、
図1Cに示されるように層を堆積させ得る。例えば、O層135は、3nmのSiO
2層として堆積され得、H層130は、Si:H層として堆積され得、L層140は、Ta
2O
5層として堆積され得、そしてSiO
2層は、各Si:H層の後に堆積され得る。しかしながら、上記のように、参照番号970に対応する例示的なスタックの深さ分析は、SiOHおよび/またはSiO
x(ここで、0<x<2)を含むフィルタオプションを含み得る。これらの層は、3つの異なる層としてではなく、Si:HからTa
2O
5への遷移として表され得る。例には、基板-Si:H-Ta
2O
5-SiO
2-Si:H-Ta
2O
5-SiO
2;基板-Si:H-Ta
2O
5-SiOx-Si:H-Ta
2O
Y;基板-SiOH-Ta
2O
5-SiO
x-SiOH-Ta
2O
Y、またはそれらの組み合わせが含まれ、ここで、xはO層435ごとについて等しくない場合があり得、および0<x<2(たとえば、SiO
1.3、SiO
1.7、Si、および/またはその他で)あり得、Yは、L層140ごとに等しくない場合があり得、および0<Y<5であり得る。
【0096】
上記の様々な例において、構造がSi:H?SiO2-Ta2O5-SiO2-Si:Hおよび/またはその他として配置された層を含む場合、SiOxは、Si:H層からSiO2層へ、SiO2層からSi:H層へ、および/またはその他などの、Si:H層とSiO2層との間の界面での遷移材料として使用され得る。さらに、構造がSi:H-SiO2-Ta2O5および/またはその他として配置された層を含み、Si:H層とSiO2層との間の1つ以上の界面で遷移材料として使用されるSiOxを有する場合、上部のSiOx部分は完全よりも少ない酸化状態であり得、シリコンベースの層がTa2O5層から酸素を奪うのを防ぐのに十分な量だけ酸化され得る。さらに、上記のように、構造がSi:H-Ta2O5-Si:Hおよび/またはその他として配置された層を含む場合、Si:HからTa2O5への1つ以上の遷移材料、Ta2O5からSi:Hおよび/またはその他へ1つ以上の遷移材料が存在し得る。
【0097】
上記に示すように、
図9は、単に1つ以上の例として提供されている。他の例は、
図9に関して説明されているものとは異なり得る。
【0098】
前述の開示は、例示および説明を提供するが、網羅的であること、または実装形態を開示された正確な形式に限定することを意図するものではない。上記の開示に照らして修正および変形が可能であるか、または実装の手法から取得され得る。
【0099】
いくつかの実装形態は、閾値に関連して本明細書で説明されている。本明細書で使用される場合、閾値を満たすことは、文脈に応じて、閾値を超える、閾値より大きい、閾値より高い、閾値以上、閾値未満、閾値より小さい、閾値より低い、閾値以下、閾値に等しい、および/またはその他の値を指し得る。
【0100】
機能の特定の組み合わせが特許請求の範囲に記載されている、および/または明細書に開示されているとしても、これらの組み合わせは、様々な実装形態の開示を制限することを意図するものではない。実際、これらの特徴の多くは、特許請求の範囲に具体的に記載されていない、および/または明細書に開示されていない方法で組み合わせ得る。以下に列挙された各従属請求項は、1つの請求項のみに直接依存する場合があり得るが、さまざまな実装形態の開示には、請求範囲内の他のすべての請求項と組み合わせた各従属請求項が含まれる。
【0101】
本書で使用されている要素、行為、または指示は、明示的に説明されていない限り、不可欠または必須であると解釈されるべきではない。また、本明細書で使用される場合、冠詞「a」および「an」は、1つ以上の項目を含むことを意図しており、「1つ以上(one or more)」と交換可能に使用され得る。さらに、本明細書で使用される場合、冠詞「the」は、冠詞「the」に関連して参照される1つ以上の項目を含むことを意図し、「1つ以上(the one or more)」と交換可能に使用され得る。さらに、本明細書で使用される場合、「セット/組(set)」という用語は、1つ以上のアイテム(例えば、関連アイテム、非関連アイテム、関連アイテムと非関連アイテムの組み合わせおよび/またはその他)を含むことを意図し、「1つ以上(one or more)」と交換可能に使用され得る。1つのアイテムのみが意図されている場合、「1つのみ」というフレーズまたは同様の言語が使用される。また、本明細書で使用される場合、「有する(has)」、「有する(have)」、「有する(having)」、および/またはその他の用語は、自由形式の用語であることが意図されている。さらに、「に基づく(based on)」という句は、特に明記しない限り、「少なくとも部分的に~に基づく(based, at least in part,on)」を意味することを意図している。また、本明細書で使用される場合、「または(or)」という用語は、一連で使用される場合に包括的であることを意図し、特に明記されていない限り(たとえば、「いずれか(either)」または「~のうちの1つのみ(only one of)」と組み合わせて使用する場合)「および/または(and/or)」と交換可能に使用され得る。